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海自潜水艦、5分で壊滅? 現実に起きかねない最悪のシナリオとは
https://trafficnews.jp/post/64474/
2017.02.11 関 賢太郎(航空軍事評論家) 乗りものニュース
海上自衛隊の潜水艦が、ほんのわずかな時間で壊滅しかねない可能性があります。その最悪のシナリオとは、どのようなものなのでしょうか。
■増強進む海自潜水艦隊
海上自衛隊では2017年現在、他国の止まらぬ軍拡、海洋進出に対処すべく、潜水艦隊の増強が進んでいます。しかしその増強とは裏腹に、潜水艦隊は最悪、戦わずして総崩れになりかねないという致命的弱点がそのまま放置されているという、大きな矛盾を抱えています。
海上自衛隊観艦式にて観閲を受けるそうりゅう型「こくりゅう」。2015年に就役したばかりの新鋭ディーゼル潜水艦(関 賢太郎撮影)。
もともと海上自衛隊の潜水艦は保有数を16隻(+2隻の練習潜水艦)と定められていましたが、政府は2010(平成22)年、これを22隻(+2隻の練習潜水艦)にまで拡張することを決定しました。
日本において潜水艦を建造できるメーカーは川崎重工と三菱重工の2社のみであり、いずれの造船所も神戸に所在。防衛装備庁は、それぞれに定期的に仕事を与えノウハウを継承させるため、1年に1隻ペースで交互に随意契約を行っています。
つまり、海上自衛隊には必ず1年に1隻新しい潜水艦が就役することになりますから、同時に1年に1隻ずつ退役することで定数を維持し続けています。よってこれまでは艦齢16年で一線を退いていたわけですが、これは世界的に見ても異例なほど短命であり、本来まだまだ現役で使える状態のものを定数があるから廃棄するという、もったいない使い方でした。今後は現役期間を22年に延長することで、定数22隻を実現する予定になっています。
■海自潜水艦隊、5分で総崩れの可能性とは
潜水艦は発見することが極めて困難であるため、水上を航行する船舶に対してほぼ一方的に攻撃を仕掛けられる、彼我にとって脅威度の高い兵器です。ですから定数が増加すること自体は、それにより抑止力が大きく強化されることを期待できるといえるでしょう。
ところが冒頭に記したように、万一の有事の際に敵国がその気になれば、虎の子とも言える海上自衛隊の潜水艦隊を、5分とたたずにほぼ総崩れへ追い込むことができる可能性があります。
2017年1月現在、海上自衛隊はおやしお型潜水艦10隻、より新しいそうりゅう型潜水艦7隻を実戦配備し、そして練習潜水艦2隻を保有します。これらの潜水艦は潜水艦隊司令部のある横須賀基地(神奈川県)、ないし呉基地(広島県)のいずれかを母港としており、どちらの基地も公園に面した岸壁や桟橋に、無防備な状態で停泊しています。
公道に隣接する呉基地の潜水艦桟橋。遮るのはこの門のみであり、脚立で簡単に乗り越えられる。奥に潜水艦が見えるがこの日は7隻が停泊していた(関 賢太郎撮影)。
外から丸見えの場所で魚雷の装填なども行っており、呉基地などはひとりの歩哨もいないので、一般人ですらその気になれば柵を破壊して突入し、潜水艦に到達することが不可能ではない状態にあります。
そのため、もし敵国の特殊部隊が民間のバスなどで接近、一気に突入した場合、これを阻止することはまずできません。基地内部に進入せずとも、横須賀基地ならば隣のヴェルニー公園か大型商業施設の屋上から対戦車ミサイルを打ち込めば、まず間違いなく5分とたたずに停泊中のすべての潜水艦は破壊されてしまうことになるでしょう。また、数日間の足止めでよければもっと簡単に、自爆型ドローンを使うだけで損傷を与えることさえ可能です。
もし日本に対して本格的な侵略があった場合、敵国の輸送船や艦艇を阻止することができる潜水艦は専守防衛の主力となることが期待されます。とはいえ広大な四方の海をカバーするにはおのずと限界があり、もし奇襲攻撃によって潜水艦隊が半壊となってしまえば、それも困難になってしまいます。
■最悪の事態が現実になりかねない、もっともな理由とは
とある現役警察官は「この奇襲攻撃の恐ろしいところは、実行側にリスクがほとんどないことにある」と言い、次のように話します。
「破壊活動の最中なら、正当防衛として自衛隊が個々人で武器使用して反撃することは可能でしょう。しかし、実際は反撃する前に破壊活動は終了します。そののち降参(投降)され、しかも堂々と『○○国の兵士』と名乗られたら、交戦する法的根拠は消滅します。そのあとは彼らが本当に兵士かどうか分かららないので、いったんは自衛隊か警察が殺人、殺人未遂、銃刀法、建造物侵入などの容疑で逮捕することになるでしょう。勾留延長で最大23日の間に兵士と裏付けが取れたら、自衛隊が管理する捕虜収容所に引き渡すことになるのではないでしょうか。警察は国際法における『戦闘員の要件を満たしておらず、捕虜の資格はない犯罪者』として起訴しようとするでしょうが、彼らがそののち捕虜として祖国へ返されるかは時の政権の意向が影響すると思われます。実際、小泉政権や野田政権のころ、尖閣諸島に上陸した中国人活動家が逮捕されていますが、そのあとは起訴されることなく強制送還されました」
ヴェルニー公園は「軍港めぐり」の出港地でもあり常に賑わう。この日は潜水艦3隻が停泊していた。なお米軍の潜水艦は見えない位置に停泊している(関 賢太郎撮影)。
もちろん他国が実際にこうした強硬手段を取るかどうかは分かりません。ただ、歴史を紐解くと「相手が強硬手段に出るわけがない」という侮りが戦争を引き起こした例は数多とあります。ここ数十年に限ってもイラク戦争、湾岸戦争、フォークランド戦争、第4次中東戦争などがあり、そして太平洋戦争もそのひとつです。
1941(昭和16)年、当時のルーズベルト大統領は日本の奇襲攻撃の可能性について報告を受けておきながら、日本を小国と侮り、結果として真珠湾攻撃で太平洋艦隊の主力を失いました。
呉や横須賀が第2の真珠湾にならないという保証はどこにもなく、そしてそれは容易に可能な状態で何十年も放置され続けています。
【了】
【写真】空飛ぶ魚雷
対潜水艦戦闘における兵器のひとつ、アスロック(Anti Submarine ROCket)は、魚雷に飛翔用のロケットを組み合わせたもの(写真出典:アメリカ海軍)。
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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