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塵と放射能と私
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投稿者 お天道様はお見通し 日時 2017 年 6 月 14 日 21:18:49: I6W6mAZ85McLw gqiTVpO5l2yCzYKojKmSyoK1
 




塵と放射能と私WAYBACKMACHINE




【対談】「塵と放射能と私」 真室哲雄:溝畑朗・松並忠男



  松並氏より真室、溝畑両氏の紹介があり、その後、以下のとおり両氏の対談が行なわれた。


 <注>誌面の関係で、対談内容を大幅に簡略化し、要点を記述した箇所については、文語体を用いた。


【溝畑】「先ず、大放研(大阪府立放射線中央研究所)御在職中の印象的な思い出についてお伺いしたいと思います」


【真室】「本日のお話のタイトルを『塵と放射能と私』ということにしてみました」
 ソ連は1958年10月から暫くの間、核爆発実験を停止していたが、1961年9月に突如核爆発実験再開を宣言し、シベリヤで一連の大型核爆発実験を2月にわたって行った。その頃、大放研は建設の最中だった。当時、関西地区でも、放射性降下物の観測が数カ所で行われていたが、大気や雨水の放射能濃度測定値が桁違いの相異を示すことがしばしばあり、関係者は当惑していた。ときどき、とてつもなく高い放射能濃度が新聞報道されて、全国的に人心に不安をかき立てていた。私は、このような異常は、わが国のような爆発地から遠隔の地域にも放射能の強い粒子が飛来して来るからではないかと推測し、これを確認するために大気浮遊塵を直径18cmの濾紙上に吸引捕集する装置を急速製作した。集塵濾紙をX線フィルムに密着して現像してみたところ(オートラジオグラフ)、夜空の星のような写真が得られた。なかには直径7〜8mmのスポットもあった。この写真は強放射性粒子の飛来を確認するものであった。大放研構内の葛の葉のオートラジオグラフからは、粒子が付着した所で放射能の葉面吸収が認められた。これらの写真は英国の学術雑誌『Nature(ネイチャー)』にも掲載された。屋外に一晩放置されたビニールシートのオートラジオグラフにも点々と大きいスポットが現れた。


 当時、新潟大学の故小山誠太郎教授もいち早く強放射性粒子をGM計数管で検出され、giant particleと命名し、大々的に新聞報道された。このような粒子を、英国ではhot particleと呼ぶようになった(ドイツ語ではheisse Teilchen)。


 顕徴鏡下でhot particleを単独分離してカラーの顕徴鏡写真を撮影した。直径10ミクロン程度のものは比較的容易に単離することができた。このようなhot particleの写真は『科学読売』(現在は廃刊)の表紙になったし、同様なカラー写真が中日新聞の第1面に掲載された。そのようなこともあって、私はNHKの『私の秘密』などのテレビ番組に出演した。


1962年の60メガトンの水爆実験による大気圧徴小変動は気圧記録計に記録されていた。


hot particleの物理化学的性状に関する研究を行った。走査型電子顕微鏡で粒子の拡大写真を撮ったり、母体物質(matrix material)の元素分析を行った。黒色ないし茶褐色の粒子は鉄成分が高く、白色ないし黄金色の粒子はアルミニウムの成分が高い傾向が認められた。


 hot particle、大気浮遊塵、雨水についてNaI(Tl)検出器でガンマ線スペクトルを頻繁に収集し、放射化学的分析を試みたが、hot particleに顕著な fractional effect(分溜効果)が認められることに気づいた。核分裂におけるfission yield(核分裂収率)はほぼ決まっているのであるが、hot
particleではrefactory(難熔融性)な核種(95Zr+95Nbなど)に富み、volatile(揮発性)な核種(131Iや放射性Ruなど)が欠失していた。このような事情を論文にして『ネイチャー』に投稿した。


 当時、わが国のすべての観測者は、放射性降下物は微細で放射化学的に均一であると信じていたのである。hot particle及ぴ雨水からプルトニウムを抽出し、電着試料を調製し、アルファ線スペクトルを収集した(この仕事は松並さんの労作。スペクトル収集には表面障壁型シリコン半導体検出器使用)。


hot particleは非常に溶けにくく、アルカリ・フュージョンなどでやっと溶ける代物だった。アルファ線スペクトルには239Puと240Puによるピークが重畳して現れるが、それより少しエネルギーの高い所に238Puによるピークが認められた。hot particle及ぴ雨水について、放射能比238pu/(239pu+240Pu)を経時的に調べた結果は、米国の学術誌『Science(サイエンス)』に掲載された。当時、米国の人工衛星SNAP‐9Aがインド洋上空でburn‐upし、原子力電池の238Puが成層圏にばら撤かれていた。これに関連づけて論じた。日本では大放研が初めて環境中のプルトニウムの分析を行った。


 米国もソビエトも空中核爆発を控えるようになった。venting underground burstによる放射性降下物中に放射性タングステンを検出したことがある。また、南半球で行われたフランスの核爆発実験に由来する放射性塵が赤道を越えて我が国に到達する時間(40〜60日)を塵の放射化学的分析結果(放射能比95Zr/95Nb)から推測した。


 やがて、中国による核爆発実験が年末年始にかけて盛んに行われるようになった。このときにも、hot particleが飛来した。直径が20〜30ミクロンに達するものもあった。しかし、比放射能はソビエト粒子に比べてかなり低かった。中国の爆発はほとんど地表面爆発であったようで、火球が地表面物質を巻き込み、hot particleの色彩も、母体物質の元素組成も多様であった。また、fractionation effectもソビエト粒子とは異なって、複雑であった。


【溝畑】「海外増視察察旅行をされたときSSD(solid state detector)の有用性に気づかれたと承っていますが、そのあたりについてお話をお願いします」


【真室】「私は1カ月間でスエーデン、西ドイツ、英国、米国をさっと駆け回りました。見学したのは保健物理間係でした。いろいろと収穫はありましたが、最大の収穫はまさしくSSDへの思い入れを深めたことでしょうか。スエーデンと米国の研究所で初めて小型ゲルマニウム半導体検出器(planer型)の現物を見て、エネルギー分解能の素晴らしさに、予想通りではあったが、驚きました。帰国してから、ゲルマニウム半導体検出器によるガンマ線スペクトロメトリー装置の整備に取り組みました」


【溝畑】「ゲルマニウム半導体検出器を環境放射能や放射性降下物の研究に使い始めましたが、私が関わりました中性子放射化分析はどのようなきっかけで始めたのでしょうか」


【真室】「私は時々東京に出張することがありましたが、日比谷公園に佇んで北の空を見ますと青いのですが、南の空は何と黄色なんです。さて、大阪ではどうかというと、生駒の上空は青いのですが、大阪湾の方は黄色です。これは大変だと恩い、誰かが警鐘を鳴らさなければなるまいと思いました。


 このとき、放射線研究所に職を得ている者として、大気浮遊塵の放射化分析による多元素分析をやろうと決心を固めたのです。当時の日本は諸外国から公害実験国と目されていたのです」


 われわれの努力もさることながら、多くの方々の御支援を得て、?試料の中性子照射、?ゲルマニウム半導体検出器とマルチチャンネル波高分析器によるガンマ線スペクトロメトリー、?コンピュータによるデータ解析を結合させた多元素分析法のハードとソフトが大放研で確立された。米国ではこの方式を、instrumental neutron activation analysis(INAA、機器的中性子放射化分析法)と呼んでいる。溝畑さんには特に?の部分の責任者として活躍して頂き、私の所期の目的達成のために大いに力を発揮してくれた。


 大気浮遊塵試料は直径47mmのミリポアフィルタ上に産を吸引濾過して作成した。集塵量は数mgである。中性子放射化については、最初は京都大学原子炉実験所の御世話になったが、委託研究費などを得てからは、横須賀市長坂の立教大学原子炉及ぴ川崎市王禅寺の武蔵工業大学原子炉を使用料金を支払って利用させて頂いた。ガンマ線スペクトルは、短時間照射試料については照射直後に1回とることにした(原子炉近くの測定器を借用)。長時間照射試料は日本アイソトーブ協会が大放研へ空輪してくれた。この試料のスペクトルは放射能冷却時間を変えて2〜3回とることとした。このようにすれば、うまくいけば、最高36種くらいの元素が分析できる。


 夜間の無人測定のため、オートマチックサンプルチェンジャを製作した。INAA法で分析できない鉛や硫黄などの元素について、蛍光X線分析法を利用することにした。励起には環状の密封線源(241Am、55Fe、238Pu、109Cdなど)を用い、蛍光X線のスペクトルはシリコン半導体検出器で収集した。この分析法はenergy dispersive X‐ray nuorescence analysis(エネルギー分散型蛍光分析法)と呼ばれている。この方法とINAA法を併用すると四十数種の元素が分析できる。


 大阪府17地点と兵庫県3地点で大気浮をサンプリングして分F析した結果、地域差が顕著に出た(ある新聞記者は大気の指紋を捕えたと表現した)。大気汚染の特に激しい地区の大気浮遊塵の分析結果が読売新聞の第1面に出たことがある。このときには、私は環境庁の担当官にお叱りを受けたが、そのうち、われわれの多元素分析法を環境庁が正式に採用し、全国あちこちの地域の大気浮遊塵の多元素分析を委託するようになった。私は長く大気保全局の委員や検討員を務めた。私の定年退職後は溝畑さんが引き継いだ。
 この分析法を大気浮遊塵に限らず、工業材料その他いろいろな物質に適用した。


「申し上げたいことは、なお、たくさんございますが、この辺で私のお話を打ち切らせて頂きます」


********** 引用ここまで **********


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ホット・パーティクルを知る第一歩/放射性物質はいかに飛散し人体に入り込むのか(1)(2) 私設原子力情報室


何を今更 〜新事実でもない既知のこと〜


 

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