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中銀、低金利下で高リスク資産に食指  理不尽なトランプ円高に備えよ  円安は幻想、進む「米国の日本化」 ドル113円前半
http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/241.html
投稿者 軽毛 日時 2017 年 1 月 23 日 19:54:20: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

中銀、低金利下で高リスク資産に食指
スイスなど先進国の中銀の一部が外貨準備を積み上げているのは、自国通貨が高くなりすぎて、輸出業者に打撃を与え、物価を下げないようにするために他ならない

By CHRISTOPHER WHITTALL, JON SINDREU AND BRIAN BLACKSTONE
2017 年 1 月 23 日 17:40 JST

 中央銀行は金利を低水準に維持し、マイナス金利を導入しているところもある。これを受けて、最も保守的な投資家の一部が高いリターンを追求する動きに加わっている。他国の中銀だ。

 スイスや南アフリカなどの中銀は、増加する外貨準備の投資先として、株式や社債、その他の高リスク資産の割合を高めている。

 米国債など極めて安全な国債に主に投資するという中銀の慣行から逸脱することは、より多くのリスクを負うことを意味する。しかし世界経済の成長率や金利、潜在的リターンがいずれも低い中で、多くの中銀は投資リターンの最大化にますます力を入れている。

 フィンランド銀行(中央銀行)の投資責任者、ヤルノ・イルベス氏は「2014年に利回りが低下し始め、ゼロに近づいた時、株式投資を始めることを決めた」と述べ、株式への配分比率を引き上げる計画を明らかにした。

 インベスコは先ごろ、16年に欧州、中東、アフリカの18人の外貨準備運用担当者を対象に実施した中銀の投資状況に関する報告書を発表した。それによると、資産配分についての質問で、株式の比率を引き上げると回答したのは全体の80%、社債の比率を引き上げると回答したのは43%だった。運用先を多様化する理由について、15人の回答者のうち12人が国債利回りの低さを挙げ、3人は回答を拒否した。

 アナリストらは、こうした動きは市場と世界経済に重要な影響を及ぼすと指摘する。多くの中銀は、ポートフォリオ内の非伝統的資産の運用を外部の資産運用会社に任せ、収入が伸び悩んでいる金融業界にチャンスを与えている。

 同時に、外貨準備の運用先の多様化は、中銀の「ゆがみ」とも称される事態の影響を受ける市場が増えることを意味する。なぜなら、価格をあまり気にしない大規模な買い手が価格を押し上げ、他の市場参加者の期待リターンを下げるリスクを冒すからだ。

 投資家、アナリスト、政策担当者は長年、中国や日本、一部の主要石油輸出国の中銀と外貨準備運用担当者による米国債の購入が13兆ドル規模の米国債市場に与える影響について議論してきた。オーストラリアドルやニュージーランドドルなど、中銀が最近、手を広げているとされる小規模の市場での取引による潜在的な影響に注目している人々もいる。

 アリアンツ・グローバル・インベスターズのグロース・マーケッツ担当責任者、マーティン・ケイル氏は、一部の市場は「それほど大規模な投資を受け入れられるほど厚みがない」と述べた。

 世界の外貨準備はこの15年間、増え続けている。市場が不利な方向に動き、痛みを伴う通貨切り下げを余儀なくされた国もあった新興国市場の危機の教訓などが反映されている。外貨準備の増加を受けて、中銀の運用担当者は運用先の多様化を迫られている。

 南アフリカ準備銀行(中央銀行)のダニエル・ミネル副総裁は、外貨準備の増加によって「流動性管理から投資運用に軸足を移した」と述べた。

 国際通貨基金(IMF)によると、16年7-9月期の世界の外貨準備高は計11兆ドルと、1995年末時点の1兆4000億ドルから大幅に増えた。

 外貨の購入と量的緩和を混同してはならない。米連邦準備制度理事会(FRB)などの中銀は量的緩和として数兆ドル相当の資産を購入し、成長とインフレを押し上げようとしている。最近、欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行、日本銀行も量的緩和の一環でリスクの高い資産を購入しているが、いずれも自国通貨建てだ。

 先進国の中銀は、こうした投資の収益性について比較的関心が薄い。政治的には重要だが、中銀は常に紙幣を増刷できるからだ。そのためリスクもさほど重視されない、とアナリストらは指摘する。

 一方、巨額の外貨準備を抱える発展途上国の当局者らは、外国資産を購入するために紙幣を増刷する傾向がある。このように、自国通貨の下落という犠牲を払って、万一の場合に備えている。主にスイス国立銀行など先進国の中銀の一部が外貨準備を積み上げているのは、自国通貨が高くなりすぎて、輸出業者に打撃を与え、物価を下げないようにするために他ならない。

 後日、自国通貨が急落した場合、中銀はこれらの外貨準備で自国通貨を買い戻し、輸入業者を助けたり、債務者に流動性を提供したりすることができる。

 しかし中銀は外貨を印刷できず、外貨準備は限られるため、それを一定に保ち、利用しやすい状態にしておくことが極めて重要だ。銀行が選んだ資産の利回りがマイナスに転じたら、そうすることは難しくなる。

 バンクオブアメリカ・メリルリンチによると、昨年末時点で世界の債券資産のうち11兆ドル弱(全体の約4分の1)相当の利回りがマイナスとなった。

 中銀は通常、新規の投資を外部の資産運用会社に委託する。

 欧州最大の資産運用会社アムンディで中銀の資金を運用するジャンジャック・バルベリス氏は「リスクの高い戦略に対する中銀の意欲は高まっている」と指摘した。

 中銀内の資産運用業務も拡大している。スイス国立銀行は13年、シンガポールにアジア太平洋地域の資産を運用する支店を開設した。対象資産は15年時点で新興国の株式や中国の国債だった。

 スイス国立銀行は現在、6450億スイスフラン相当の外貨準備を運用しているため、支店開設は必要だった。外貨準備がこれほど積み上がったのは、同行がデフレと闘い、輸出業者を支援するために、自国通貨の価値を下げようとしたからだ。

 スイス国立銀行の外貨準備の運用先で株式の割合は09年時点で7%だったが、その4年後、株式を購入し始めたことで現在は20%に上昇している。米証券取引委員会(SEC)への7-9月期分の届け出によると、米アップルに17億ドル、米エクソンモービルに10億8000万ドル、米マイクロソフトに12億ドル投資している。

 しかしリターンが大きくなればリスクも大きくなる。

 スイス国立銀行は15年、233億フランの損失を計上した。ユーロに対するフランの上限撤廃が響いた。フランがユーロに対して22%も上昇したため、同行の外国資産の価値が目減りした。昨年は株式投資が240億フランの利益をもたらし、これらの損失を相殺した。

 中銀はこれまでに運用先の多様化でやけどを負ったことがある。

 チェコ国立銀行(中央銀行)は、金融危機の直前の08年6月に株式を購入し始めた。その後の株式市場の暴落で、同年の株式投資額の3分の1(当時の外貨準備の約2.5%)が吹き飛んだが、国債投資で得た多額の利益がその損失を十二分に補った。

 それでも、イスラエル銀行(中央銀行)の市場部門トップ、アンドルー・アビール氏は、外貨準備が増加するにつれて「リターンの重要性が今までよりはるかに高まっている」と述べた。

https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjS3KW78dfRAhWMzLwKHcouCmsQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10852398588237353609804582576702700727344&usg=AFQjCNHdeAOvXyTqYBoQv4NPkRKkKO8d8w

 

 

コラム:理不尽なトランプ円高に備えよ

唐鎌大輔みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト
[東京 23日] - 市場参加者にとって、具体的な政策内容がベールに包まれたトランプ米大統領はまだ得体(えたい)の知れぬ存在である。だが、為替市場参加者にとって最も重要な通貨・通商政策に限って言えば、新大統領の姿勢は明白だ。ここまで強烈な保護主義志向をあらわにしてきた同氏が自国通貨高をいつまでも放置するのは誰が見ても不自然である。

19日に上院で行われた指名承認公聴会でムニューチン次期財務長官候補が長期的にドル高を維持することが重要と述べた一方、短期的な評価について言明を避けたのはドル安志向の強い大統領への配慮だったのだろう。上司が通貨安を好む以上、部下の発言もこれに制約を受けるのは致し方ない。

市場ではいったん消化された格好となっているが、1月半ばに米紙に掲載されたトランプ大統領へのインタビュー記事は、やはり今後の為替相場を占う上で多くの示唆に富むものとして留意しておく必要がある。

トランプ大統領は「もちろん、彼ら(中国)は為替操作国である」との認識を明示し、「我々の企業は通貨が強いがために、彼らの企業と競争できない。(ドル高に)してやられている」とまで述べた。ここまで言い放つ人物が大統領である以上、ドル買いで攻め続けるのは相当勇気が要る。

また、このインタビューの中では通貨・通商政策をめぐるトランプ大統領の直情的な危うさも垣間見えた。トランプ大統領は「彼らは人民元が下がっていると言うが、それは下がっているのではない。彼らが意図的にそうしているのだ」と揶揄している。

だが、これは完全に誤認だ。少なくとも2015年夏以降の中国は意図的に通貨安誘導を行っているわけではなく、むしろその下落スピードの抑制に躍起になっている。過去2年半で約1兆ドルも減少した外貨準備はその証左であり、そうした通貨政策の結果として中国経済が軟着陸できるか否かが真の注目点だ。

つまり、中国はどちらかと言えば通貨高方向の調整に腐心しており、トランプ大統領からすれば評価に値する政策運営とさえ言えそうなものだが、正しい現状理解がされないまま批判が展開されている。

<新大統領が名指しする「悪の枢軸」4通貨>

こうした「通貨・通商政策をめぐる直情的な危うさ」の矛先は中国以外にも向かっている。これまでの言動を見る限り、トランプ大統領の通貨・通商政策の評価軸は「対米貿易黒字の大きさ」だ。今後は米国に対し多くの黒字を稼ぐ国が「悪」のレッテルを貼られそうであり、その枢軸のごとく名指しされているのが黒字額の大きい順に中国、日本、メキシコである。

もちろん、貿易黒字は収益ではないし、貿易赤字も損失ではない。ゆえに赤字だから悪いという話では全くない。だが、そもそも理屈が通じる相手ではないのは周知の通りであり、そうした正論はここでは脇に置く。

なお、対米貿易黒字の大きさが「悪」だと言うのならば、中国の次にはドイツが入るべきだ。トランプ大統領とメルケル独首相の相性の悪さを踏まえれば、近い将来、ドイツの対米貿易黒字の大きさをめぐる対立が注目される局面は来るだろう。

すでにトランプ大統領は「欧州連合(EU)はドイツのための乗り物」などと反EUスタンスを隠しておらず、ドイツと友好的な関係を築く姿は想像し難い。また、ユーロ圏という単位で見れば、対米貿易黒字はドイツの倍近くまで膨れ上がるため、米中貿易摩擦と同じくらい、欧米貿易摩擦はトランプ政権下で有力なテーマとなりそうだ。

ところで、米財務省の為替政策報告書では、1)対米貿易黒字が年200億ドル超、2)経常黒字が名目国内総生産(GDP)比3%超、3)年間の純外貨購入(外貨買い・自国通貨売り介入)が名目GDP比2%超、という3項目の判断基準が設けられ、2項目抵触で監視リスト、3項目抵触で為替操作国という立て付けになっている。

だが、トランプ大統領の関心はもっぱら1番目であるため、この在り方も少し変わってくるのかもしれない。例えば現在、日本と概ね同額の対米貿易黒字を稼ぐメキシコは新たに監視リスト(あるいは、それに類する措置)の対象になってくる可能性がある。

また、中国は昨年10月時点で1番目のみしか抵触しておらず、監視リストから除外される可能性が指摘されていたが、その圧倒的な対米貿易黒字の大きさやこれに対するトランプ大統領の言動を見る限り、やはり監視リストに居残るだろう。

そもそも為替操作国かどうかが争点になっている状況で中国に対する通貨政策の手綱が緩むことは考えにくい。いずれにせよ、今年4月公表の為替政策報告書は例年に増して重要な材料になる。

<円は「優等生」だからこそ安心できない>

普通に考えれば、トランプ政権の通商政策において目の敵にされそうな中国、ドイツ、日本、メキシコの通貨は対ドルで下落しにくい通貨となる。

ちなみに、ドルの名目実効為替相場を見た場合、最も大きなウエイトを占めるのが中国(21.7%)で、これにユーロ圏(16.6%)、カナダ(12.9%)、メキシコ(12.5%)、そして少し離れて日本(8.0%)が続く。つまり、「悪の枢軸」のごとく名指しされた(もしくはされそうな)国がドルの実効相場において強い影響を持つのである。

2014年1月以降の約2年半でドルの名目実効相場は22.2%上昇しているが、これに対する寄与度が最も大きいのがメキシコペソの4.6%ポイントであり、次にユーロの3.8%ポイント、人民元の2.7%ポイントが続く。この3通貨だけで過去2年半のドル高の半分を説明できる。

トランプ大統領の経済政策(トランプノミクス)をかつてのレーガン大統領の経済政策(レーガノミクス)と重ね合わせ、その結末として第2次プラザ合意的な動きを予見する向きは少なくないが、その場合、標的となり得る通貨はユーロや円だけではなく、メキシコペソや人民元を意図的に巻き込んだ枠組みになるだろうし、そうならなければ意味がない。

他方、円は、前述した通り、ドルの名目実効相場に占める割合は比較的小さく、ドル高への寄与という意味でも他の3通貨とは比較にならないほど小さい(上述した例ではわずか0.6%ポイントだ)。正直、これらと比較されるのは腑(ふ)に落ちない。

しかし、繰り返しになるが、トランプ大統領に正論が通用する雰囲気はない。ドル相場における円の影響力が微小なものであるとしても、「対米黒字は許せないから、円高」という単純な論法でドル円相場が押し下げられる展開は十分考えられる。

また、名指しされた国の通貨の中で円はそもそも優等生であり、円高圧力も高まりやすい。苛烈な資本流出に悩む人民元やトランプノミクスによって実体経済の勢いが削がれているメキシコペソはファンダメンタルズに照らせば通貨安になる道理がある。ユーロに関しても、世界最大の経常黒字が支えになりそうとはいえ、2017年は慢性的に政治リスクが重しとならざるを得まい。

これに対し、政治リスクが低く、実体経済は堅調、大きな経常黒字を稼ぎ、世界最大の対外純資産を保持し、低めの物価水準を維持している円の磐石さは際立つ。名指しされる4通貨の中で対米貿易黒字が特に大きいわけでもなく、実効相場におけるウエイトも最小なのだが、そうした諸要因に鑑みれば、トランプノミクスの下で「理不尽な円高」が盛り上がる展開にはやはり警戒が必要と考えられる。

*唐鎌大輔氏は、みずほ銀行国際為替部のチーフマーケット・エコノミスト。日本貿易振興機構(ジェトロ)入構後、日本経済研究センター、ベルギーの欧州委員会経済金融総局への出向を経て、2008年10月より、みずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。欧州委員会出向時には、日本人唯一のエコノミストとしてEU経済見通しの作成などに携わった。2012年J-money第22回東京外国為替市場調査ファンダメンタルズ分析部門では1位、13年は2位。著書に「欧州リスク:日本化・円化・日銀化」(東洋経済新報社、2014年7月)

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(こちら)

(編集:麻生祐司)
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視点:トランプ円安は幻想、進む「米国の日本化」=青木大樹氏

青木大樹 UBS証券ウェルス・マネジメント本部 日本地域CIO兼チーフエコノミスト

[東京 21日] - トランプ米国新政権の経済政策には潜在成長率の向上を促すような具体策が乏しいため、リーマン・ショック以降進行している米国経済の「日本化」(高貯蓄・低生産性・高齢化)に歯止めがかかることは期待しにくいと、UBS証券ウェルス・マネジメント本部の最高投資責任者(CIO)兼チーフエコノミストの青木大樹氏は指摘する。

そのため金利上昇は抑制され、ドル安方向にむしろ振れる可能性が高いと読む。ドル円レートについては、6月末110円、12月末105円と予想する。

同氏の見解は以下の通り。

<米家計・企業マインドも保守化>

当社では、11月の米大統領選挙におけるドナルド・トランプ氏の勝利後、従来の市場見通しを大幅に見直すべきか否か議論してきたが、最終的には現時点でその必要はないとの結論に達した。その論拠を端的に整理すれば、1)トランプ大統領でも米国経済の日本化を容易には食い止められない、2)ゆえに長期金利の上昇ペースは抑制される、というものだ。

ここで言う日本化とはすなわち、貯蓄率の上昇、生産性の伸び悩み、高齢化の進行を背景に、低成長・低インフレ(そして潜在成長率の低下傾向)が続くことである。あまり知られていないが、米国も高齢化の進行などを受け、2010―15年近辺に生産年齢人口比率(15―64歳人口が総人口に占める割合)がピークを迎え、減少局面に入っている。今後、トランプ大統領が移民コントロールを強化するならば、こうした傾向に拍車がかかる可能性がある。

また、民間部門全体の貯蓄率(対国内総生産)にしてもここ数年で、1%台から3%台へと上昇している。リーマン・ショック直後の11%超の水準に比べれば、過剰貯蓄体質はだいぶ解消されたが、かつて貯蓄率がマイナスのときもあったことを考えれば、米国の家計・企業のマインドはかなり保守化したと言えよう。家計は可処分所得の拡大を貯蓄に回してしまっているし、企業も自社株買いや配当にばかり資金を割り当て、将来に向けた設備投資に積極的になっていないことが読み取れる。

さらに、労働生産性の伸びも、過去の景気回復局面と比べ、かなり低い状態が続いている。インターネットを活用したサービス分野でイノベーションが起こっているのは事実だが、産業全体の生産性向上につながることで低成長脱却の道筋が見えてきたとは言えない状況だ。

<財政政策の限界露呈へ>

こうした経済環境下、大統領に就任したトランプ氏が掲げているのは、周知の通り、「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」であり、保護主義的・機会主義的な政策である。イノベーションによって経済を底上げする政策アイデアが示されているわけではなく、減税やインフラ投資など旧来型の景気刺激策が語られている。

拡張的な財政政策で企業や家計のマインドが一時的に大きく回復することはあっても、潜在成長率が高まらなければ、いずれ効果は剥落する(あるいは、アニマルスピリッツが刺激され、投資や消費の回復が持続し、生産性上昇すらもたらすのだろうか。その可能性はかなり低いように思える)。

また、財政拡大と言っても、均衡予算主義者の多い共和党議会との調整の難しさを考えれば、規模は当初期待より大きく縮小し、予算執行のタイミングもかなり遅くなる可能性がある。現段階で明らかになっている材料では、とても米国経済の日本化が食い止められるとは思えないのが実情だ。

このような前提に立つと、米国経済の回復はこれまで通り、緩やかなものとなり、2017年2.4%、18年2.5%の成長を見込んでいる。よって、米連邦準備理事会(FRB)による今年と来年の政策金利引き上げも年2回ずつにとどまるだろう。

このペースは、昨年12月に連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーが示した見通しとも整合的だ。結果的に、長期金利の押し上げ効果は約50ベーシスポイント(bp)にとどまり、米10年債利回りも年内は引き続き2.5%近辺が天井となろう。

ただし、これは米国経済にとって決して悪いシナリオではない。期待先行の危うさは、アベノミクス下の日本が示してきたことだ。米国の場合、緩やかとはいえ、インフレ率(消費者物価)は食品とエネルギーを除いたコアベースで前年比2%を上回るなど回復しており、成長率も国際通貨基金(IMF)の予想では、今年、来年と主要7カ国(G7)内では最も高くなると見込まれている。

経済の日本化は先進国全体に共通する現象だが、米国は欧州諸国に比べて、ましてや日本よりも、はるかにましな状況にある。長期金利の上昇が抑制されれば、ドル高の進展にもブレーキがかかる。企業収益にとってもプラスに作用しよう。

要するに、潜在成長率を引き上げる「決め手」を欠く中で、無理な財政出動によって不均衡(バブル)を作り出し、数年後にその後処理に困るよりも、現在の巡航速度を維持した方が米国にとって持続可能な成長につながる最善のシナリオと言えるだろう。

<トランプ時代の投資戦略>

では、こうした状況を見越して、どのような投資戦略を取るべきなのか。まず先進国に関しては、ドル安で企業収益の拡大が見込める米国株に引き続き期待が持てるだろう。金利が急激に上がらないので、米国の物価連動債やシニアローンも狙い目だ。

また、米金利高・ドル高が進まないとすれば、新興国危機が引き起こされることもない。よって、新興国(中国・インド・ブラジルなど)の株式も、一時的な下落局面では、押し目買いの対象となり得る。むろん、新興国とひとくくりで言っても経済ファンダメンタルズや政治情勢によって千差万別だが、世界の成長センターが先進国から新興国へとシフトしていく流れは、トランプ政権下でも不変だと考える。

最後に、ドル円についてはどうか。前述した通り、米国側の要因は下落(ドル安)方向に働くが、実は日本側の要因でも下落(円高)方向に作用すると考えている。最大の根拠は、日銀が年内に量的緩和のテーパリング(段階的縮小)に乗り出す可能性が高いとみているためだ。

日銀の大量購入の影響で、国内金融機関(預金取扱機関)の国債保有率は年々下がり、金融取引の担保や規制対応のために最低限必要と試算される5%水準に近づきつつある。このままのペースで日銀が国債購入を続けていけば、金融機関の経営を揺さぶることになりかねない。現在「年80兆円増」の購入ペースは恐らく年内に70兆円台、来年は60兆円台へと減額されていくのではないか。

加えて、今後の物価上昇見通しを考えると、早晩、日銀は現在ゼロ%としている長期金利誘導目標を引き上げざるを得なくなる可能性も出てくる。すなわち、日米金融政策のダイバージェンス(かい離)は、さほど広がらない可能性が高い。

このように米金利、日本のマネタリーベースの伸び、加えて経常収支動向などに照らして考えると、現状のドル円レート(20日のニューヨーク市場では114―115円台)が割高であることが分かる。6月末には110円程度、年末には105円近辺へとドル安円高方向に動く可能性が高いとみる。日本株についても、円高による企業収益圧迫を考えれば、下落方向に圧力がかかりやすい。日本株は、選別投資を一段と進めるべき局面だろう。

*本稿は、青木大樹氏へのインタビューをもとに、同氏の個人的見解に基づいて書かれています。

(聞き手:麻生祐司)

*青木大樹氏は、UBS証券ウェルス・マネジメント本部の日本における最高投資責任者(CIO)兼チーフエコノミスト。2001年より内閣府で政策企画・経済調査に携わった後、2010年にUBS証券入社。2016年、インスティテューショナル・インベスター誌による「オールジャパン・リサーチチーム」調査の日本経済エコノミスト部門にて5位(外資系1位)に選ばれる。


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ロイター企業調査:トランプ政権の円安容認、半数が120円まで

 1月23日、1月のロイター企業調査では、日米両政府ともドル高/円安は1ドル=120円程度まで許容するとの見方が半数近くを占め、それ以上の円安には警戒感が強まるとの見方が多いことがわかった。写真は都内で昨年11月撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai )

[東京 23日 ロイター] - 1月のロイター企業調査では、日米両政府ともドル高/円安は1ドル=120円程度まで許容するとの見方が半数近くを占め、それ以上の円安には警戒感が強まるとの見方が多いことがわかった。
トランプ大統領の保護主義的な政策への懸念が広がる中、日本企業は安倍晋三首相に対し、「日米安全保障関係の維持」と「自由貿易維持」を働きかけるよう要望している。
この調査は、資本金10億円以上の中堅・大企業400社を対象に1月4日─17日に実施。回答社数は250社程度。
<トランプ氏は120円超は許容せず>
トランプ氏の大統領就任が決まった後の円安進行で、日本企業の景況感は一気に改善しているが、トランプ大統領が必ずしもドル高を志向しているとは見ていない。
トランプ新政権が許容する円安は1ドル120円程度までとの見方が51%を占め、それより円安を予想する声は27%にとどまった。「保護主義政策を推進するために行き過ぎたドル高は阻止していくと思われる」(機械)、「米国産業界、農業界の輸出競争力の低下懸念もあるはず」(卸売)といった見方から、115─120円程度が限界との見方が多い。

日米両政権、どの程度までドル高円安を容認するか
http://static.reuters.com/resources/media/editorial/20170118/survey0123wXY8AM-2.gif

安倍政権については120円までなら許容するとの見方が45%ある一方、それより円安でも許容するとの見方も42%と見方が分かれている。120円程度が限界との見方の背景には「企業は円安を好むが、一般国民は必ずしも歓迎しない。衆議院を解散する頃には安倍政権は円安回避に走るだろう」(運輸)との見方がある。
安倍首相はトランプ氏の大統領就任後、なるべく早い時期の会談に意欲を示しているが、首相からトランプ氏に働きかけてほしいテーマとしては「日米安全保障関係の維持」が全体の31%を占めた。

トランプ米政権に働きかけてほしいテーマ
http://static.reuters.com/resources/media/editorial/20170118/survey0123wXY8AM-1.gif

背景には「中国、ロシア、北朝鮮、韓国といった日本を囲む東アジア情勢の不安定化」(サービス)への懸念があり、「日米安保関係が崩れた途端、経済どころの話ではなくなる」(建設)といった危機感が企業の間で強まっている。
なかでも「中国に関わるリスクは政治・経済ともに大きい。米国との協働は不可欠」(ゴム)といった視点から、「シーレーン防衛強化」(金属)など「中国けん制」を働きかけてほしいとの回答も13%を占めた。
自由貿易に関する制度維持への働きかけを要望する声も多い。
「TPP(環太平洋連携協定)合意」への働きかけを求める回答は21%を占めた。「世界全体が保護主義に傾斜しているのを防ぐため」(紙・パルプ)など、自社のメリットに限定せず、自由貿易制度を維持するためにも必要との見方だ。
メキシコに工場を構える製造業も多いことから「NAFTA(北米自由貿易協定)維持」を上げる企業も10%を占めた。特に輸送用機器は「NAFTAが維持できないと想像を絶する悪影響が及ぶ」といった懸念が強い。
米国における「輸入関税全般の維持」も14%を占め、米国市場の輸入障壁が高まらないよう要望している。
<商品市況上昇、値上げ予定企業が増加>
原油価格など国際商品市況が上昇傾向となる中で、主要製品・サービスの「値上げ」を予定・検討している企業が22%と、昨年2月調査より4ポイント増加した。一方で「値下げ」を予定しているとの回答は昨年の12%から6%に半減した。
値上げを予定している企業の多くは「原材料価格の上昇」(金属)が理由と回答。他方で「商品の高機能化、人件費上昇」(小売)、「他社が模倣できない高付加価値品による値上げ(を予定)。単なる人手不足による値上げでは、敗者の論理になる可能性がある」(運輸)との指摘もある。
価格据え置きや値下げを予定する企業からは「競争力の維持」(多数)のためとする回答が目立った。企業は「安易な値上げは商圏を失うリスクが高い」(紙・パルプ)とみていることがうかがえる。

 
事業利益にどう影響し始めているか
http://static.reuters.com/resources/media/editorial/20170118/survey0123wXY8AM-3.gif

*見出しを修正して再送します。

(中川泉 梶本哲史 編集:石田仁志)





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http://jp.reuters.com/article/japan-survey-jan-idJPKBN15703F?sp=true

 

ドル113円前半に下落、米新大統領の保護主義を警戒

[東京 23日 ロイター] - 午後3時のドル/円は、前週末ニューヨーク市場午後5時時点と比べ、ドル安/円高の113.34/36円だった。20日のトランプ氏の大統領就任演説に具体的な財政政策への言及がなかった一方、保護主義的な側面が強調されたことで、ドル売り/円買いが先行した。

午後のドル/円は113円半ばから後半を軸にしたもみ合いが続き、午後3時前には下押しが強まって113円前半に下落した。

トランプ米大統領の就任演説では、具体的な政策に言及するとの期待は高まっていなかったが、一方で環太平洋連携協定(TPP)から離脱する方針の表明や北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉へのコミットメントを明らかにする声明を出したことで、「保護主義傾斜への警戒が強まった」(国内金融機関)との声が聞かれた。

投機筋の円売り越しが積み上がっていたこともあって、「目先の調整は自然な動き」(別の国内金融機関)とみられている。米商品先物取引委員会(CFTC)が20日発表したIMM通貨先物の非商業(投機)部門の取組(1月17日までの1週間)によると、円の売り越しは7万7830枚(前の週は7万9839枚)だった。

朝方のドルは114.20─40円台で推移していたが、午前8時過ぎから下押し圧力が強まった。下落の勢いが加速した場面では調整的な売りにストップロスを狙う動きが重なったとの指摘があった。

仲値付近にかけていったん持ち直したが、その後はじり安に回帰し、一時113.43円まで弱含んだ。輸入企業のドル買い/円売りが観測されたものの、「それほどフローは大きくない」(国内金融機関)という。

昨年末以降、トランプ氏の政策期待でドルが買われていたが、今や具体的な中身を確認する局面に変わってきている。減税やインフラ投資の内容が出てくればドル買いとなりそうだが、具体策が出てこなければ将来的に「110円割れもあり得る」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ為替ストラテジスト、植野大作氏)との指摘もある。

ドル/円JPY=  ユーロ/ドルEUR=  ユーロ/円EURJPY=

午後3時現在 113.34/36 1.0746/50 121.80/84

午前9時現在 113.80/82 1.0711/15 121.90/94

NY午後5時 114.62/64 1.0699/07 122.64/68

(為替マーケットチーム)

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