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ポピュリスト大統領で米国の時代は終わる あまりに過大な期待 反動は大 最大のリスクは低支持率 中国は世界のリーダーとなる
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投稿者 軽毛 日時 2017 年 1 月 24 日 01:12:40: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

ポピュリスト大統領で米国の時代は終わる

岡部直明「主役なき世界」を読む

「米国第一」で「世界の悪役」に
2017年1月24日(火)
岡部 直明
 「すべては今日始まる」とはよく言ったものだ。たしかにそうだろう。就任演説で「米国第一」(アメリカ・ファースト)を繰り返すドナルド・トランプ大統領の登場で、皮肉にも「米国の時代」は終わりを告げた。欧州の極右にも通じるこのポピュリスト(大衆迎合主義)大統領は米国の分裂を決定的にしただけでなく、世界中を不安に陥れた。米欧同盟に亀裂が走り、中東危機を深め、中国、ロシアの台頭を許しかねない。トランプ流保護主義は相互依存で成り立つグローバル経済を危険にさらす。トランプ大統領は「世界の悪役」に映っている。第2次大戦後、覇権国の座を維持してきた米国の信頼は大きく揺らいでいる。


1月20日、米ワシントンの連邦議会議事堂前で就任演説を行った後、聴衆に手を振るトランプ米新大統領。(写真:UPI/アフロ)
欧州極右と見まがう排外主義

 トランプ大統領に、全米で異例ともいえる抗議活動が広がっている。反トランプの抗議活動は欧州連合(EU)離脱を決めた英国を含め欧州全域、そして、排外主義の照準になったメキシコなど世界80カ国に連鎖した。

 世界中の批判がトランプ大統領に集まるなかで、トランプ登場に勢いづいているのは、反EUを掲げる欧州の極右勢力だろう。フランスのマリーヌ・ルペン国民戦線(FN)党首をはじめオランダ、ドイツなどの極右の代表はドイツのコブレンツに集結し気勢を上げた。ルペン党首は「今度は我々が目覚める番だ」と意気込んだ。

 みればみるほど、トランプ大統領の「米国第一主義」は欧州にはびこる極右ポピュリストにそっくりだ。大統領就任演説に歴代大統領が掲げた人権や民主主義の理想はまったくなかった。その代わりに「今日から新しいビジョンがこの国を支配する。今日から米国第一主義を実施する」と宣言した。それは、移民、難民の流入を規制し自国優先の排外主義を掲げる欧州極右と通じる思想である。トランプ氏には女性や少数民族などへの差別意識も強く、単なるポピュリストを超えた極右思想の範疇といえる。

米国の分裂が招く大混乱

 トランプ大統領の登場による米国の分裂は深刻だ。トランプ大統領の支持率は40%と異例なほど低く、就任式には60人もの民主党議員が欠席した。就任式への参加者数をめぐる主要メディアとの対立は異常でさえある。指名した閣僚の議会承認も進まず、実際に政策を動かす各省の幹部クラス(ポリティカル・アポインティ)起用も大幅に遅れている。あまりの不人気に、政権入りをためらう専門家が多いとみられる。

 これでは、政権運営が機能不全に陥る恐れすらある。共和党主流にはなおトランプ氏は共和党の大統領ではなく、共和党はトランプ氏に乗っ取られたという意識が強い。

 就任演説でもトランプ氏は大統領選の暴言路線から君子豹変できなかった。中低所得の白人男性など支持層だけを向いており、米国全体を率いる大統領としてふさわしくないと受け取る向きが多い。米国社会の亀裂は深く、修復は簡単ではないだろう。人種、所得階層、地域間の米国社会のあつれきは米国を大混乱に陥れる恐れがある。

きしむ米欧同盟、深まる中東危機

 超大国・米国による「米国第一主義」は世界を揺さぶる。とくに継続性、安定性が欠かせない外交の分野でも米国第一主義を貫く姿勢を鮮明にしたのは危険である。オバマ政権の国際協調路線から自国本位への大転換である。それは米国に根付くモンロー主義、孤立主義への回帰だけでは片づけられない偏狭なナショナリズム(国家主義)である。

 とりわけ、第2次大戦後の米国外交の基本である米欧同盟を疑問視し、北大西洋条約機構(NATO)を批判しているのは大きな問題である。NATOの亀裂は国際社会を根底から揺さぶることになる。

 トランプ氏がEU解体に言及していることに、EU各国首脳は神経をとがらせている。英国のEU離脱を称賛し、離脱国が続くと予言したことに、オランド仏大統領は「EUのことはEUで決める」と強い不快感を示した。EUでは反EUを掲げる極右の台頭に頭を痛めているだけに、トランプ氏のEU解体論はがまんがならないのだろう。

 第2次大戦後の欧州統合は、独仏和解と米国の支援が相乗効果を発揮して実現した。歴代の米政権はEU統合を全面的に支持してきており、トランプ氏のEU解体論は、EU内の極右ポピュリズムと連携するものと受け止められても仕方がない。

 トランプ氏の中東政策は中東危機に拍車をかける危険がある。オバマ政権下でようやくまとめたイランの核合意を反故にすることになれば、中東の混乱をさらに深めることになりかねない。イスラエルの米大使館をテルアビブからエルサレムに移転するというのも新たな火種になりかねない。アラブ諸国は強く警戒している。トランプ政権がイスラエル寄りに傾斜すれば、中東危機はさらに深刻化しかねない。

中ロの台頭許す

 トランプ政権が国際協調路線を止めて自国本位になれば、中国とロシアの台頭を許すことになるだろう。とくにロシアのプーチン政権はトランプ大統領の誕生を歓迎している。ウクライナ危機で米欧の経済制裁を受けているロシアは、トランプ大統領による政策転換に期待をかけている。トランプ大統領がウクライナ危機と米ロの核軍縮をてんびんにかけようとしているのは誤った選択だ。外交の基本を商売のディール(取引)並みに扱うのは危険である。

 トランプ政権は中国への強硬姿勢を鮮明にしている。中国の核心的利益である「一つの中国」にあえて疑問を呈し、台湾問題を遡上にのぼらせている。それを中国との貿易不均衡是正の交渉材料と考えるなら筋違いである。「一つの中国」問題を提起するトランプ政権に対して、習近平政権は空母遼寧のデモ行動など海洋進出の姿勢を強化している。中国の海洋進出はアジア太平洋の緊張を高めるのは事実だ。法と秩序を守るよう日本など同盟国や東南アジア諸国連合(ASEAN)と連携して、中国に強く警告するのが筋である。習近平国家主席が今秋の共産党大会で再任をめざす政治の季節に、台湾問題をからめるのは危険である。

 中国の台頭を鮮明にしたのは、世界経済フォーラム(ダボス会議)に初めて出席した習近平主席が自由貿易の重要性を説き、「貿易戦争は共倒れになる」と警告したことだ。米国第一の保護主義に傾斜するトランプ政権を意識したもので、自由貿易の盟主は米国から中国に移ったのかと思わせたほどだ。

「米国第一」の不経済学

 トランプ政権ほど保護主義を全面に打ち出した政権は米国にかぎらず戦後の民主世界でみたことがない。就任演説で「(自国産業の)保護こそが素晴らしい繁栄と強さにつながる」と恥ずかしげもなく保護主義を鮮明に主張したのは驚かされた。

 さっそく環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱し、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉に乗り出すことをした。貿易不均衡是正のため、事実上の輸出補助金や特定国の輸入への高関税など、世界貿易機関(WTO)のルールに反する措置がまじめに検討されている。

 金融政策運営でトランプ・ラリーの恩恵を受ける日銀の黒田東彦総裁は「保護主義の可能性は低い」と楽観論を取るが、トランプ政権の言動は保護主義そのものである。自動車産業を中心にメキシコの工場を建設しようとする個別企業に計画の撤回まで強要するのは、中国顔負けの「国家資本主義」といえる。こうした強権政治が資本主義と民主主義の最先進国で白昼堂々とまかり通るのは、驚きといわざるをえない。

 トランプ氏の経済観は「輸出は善・輸入は悪」というものだ。グローバル経済の相互依存、網の目のようなサプライチェーンなどといった経済の現実を無視した、時代遅れの経済観だといわざるをえない。まともな政治家なら中国を含めて世界中のどの政治家も採らない誤った経済観である。この誤った経済観に基づいて、保護主義が発動されるのは危険極まりない。それは世界経済を分断し、貿易と成長を抑制する。結局、トランプ氏の支持層である中低所得の白人の雇用増にもつながらず、新たな不満を生むだけだろう。

「世界の悪役」でいいのか

 「米国を再び偉大な国にしよう」とトランプ大統領は呼びかけたが、トランプ大統領の登場そのものが「偉大な国」だった米国の信認を傷つけているのは間違いない。「米国第一」を掲げるトランプ大統領はいまや「世界の悪役」とみられている。当初勝ち目はないとみられていた大統領選では、「悪役」でも目立てばいいと考えたのだろう。その悪役ぶりを面白がり持ち上げた米国メディアの責任は重い。大統領になれば、それらしくなるという見立ては完全に間違っていた。三権分立の米国政治で大統領の独走は許されないという見方もあるが、米国企業に対する強権発動を見る限り、やはり米大統領の権限は大きいといわざるをえない。

 「米国第一」への傾斜を防ぐには、日欧など同盟国の友情ある説得が欠かせない。保護主義の不経済学を粘り強く説くうえで、安倍晋三首相の役割は大きい。


このコラムについて

岡部直明「主役なき世界」を読む
 世界は、米国一極集中から主役なき多極化の時代へと動き出している。複雑化する世界を読み解き、さらには日本の針路について考察する。
 筆者は日本経済新聞社で、ブリュッセル特派員、ニューヨーク支局長、取締役論説主幹、専務執行役員主幹などを歴任した。
 現在はジャーナリスト/明治大学 研究・知財戦略機構 国際総合研究所 フェロー。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/071400054/012300016/

 

トランプ政権への「あまりにも過大な期待感」
上野泰也のエコノミック・ソナー
その反動は必ず大きくなる
2017年1月24日(火)
上野 泰也

米首都ワシントンの連邦議会議事堂前で、新大統領としての宣誓を行ったドナルド・トランプ氏(写真:Abaca USA/アフロ)
事業者のマインドを高揚させた、と自画自賛
 米国のトランプ大統領は就任前の1月10日、NFIB(全米独立事業者連盟)がこの日発表した中小企業の景況感を示す指数(中小企業景気楽観度指数)が105.8に急上昇して(前月比+7.4ポイント)、2004年12月以来の水準になったことを、ツイッターで複数回取り上げた。選挙戦を通じて盛り上げ続けた自らの経済政策への期待感が中小の事業者のマインドを高揚させていることを、自画自賛した形である<■図1>。
■図1:米NFIB中小企業景気楽観度指数

(出所)米NFIB
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/011900078/ZU01.jpg

 企業マインドの指数では他に、ニューヨークとフィラデルフィアの地区連銀製造業景況指数の昨年12月分で、6か月先見通しの指数が+50前後まで急上昇したことが目を引く<■図2>。トランプ政権の政策運営への強い期待感が、大幅なドル高が売上・収益に及ぼすデメリットを覆い隠したのだろう。
■図2:米地区連銀製造業景況指数 ニューヨーク、フィラデルフィア 6か月先見通し指数


(出所)米ニューヨーク連銀、フィラデルフィア連銀
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/011900078/ZU02.jpg

 また、消費者のマインドを調べている主要な2つの経済指標でも、期待指数の急上昇が足元で観察されている<■図3>。
■図3:米消費者信頼感指数 コンファレンスボード、ミシガン大学 期待指数

(出所)米コンファレンスボード、ミシガン大学
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/011900078/ZU03.jpg

 消費マインドを示す別のややマイナーな経済指標に、ミシガン大学消費者センチメント指数の中旬速報よりもさらにデータが早く出てくるものとして、米インベスターズ・ビジネス・デーリーとテクノメトリカが発表している米IBD/TIPP景気楽観度指数がある<■図4>。
■図4:米IBD/TIPP景気楽観度指数

(出所)米インベスターズ・ビジネス・デーリー、テクノメトリカ
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/011900078/ZU04.jpg

 昨年12月6日に発表された12月分(調査期間:11月28日〜12月4日)は、54.8に上昇した(前月比+3.4ポイント)。
トランプ政権への期待感が反映された
 その構成要素である@向こう6か月の景気見通し、A向こう6か月の家計の資金繰り見通し、B連邦政府の現在の政策運営への信頼度は、いずれも上昇。それらの中で目立つのは、Bが48.3(同+5.2ポイント)に急上昇したことである(2007年8月以来の水準)。オバマ大統領がまだ在任している中で行われた調査であるにもかかわらず、トランプ次期政権への期待感が一定範囲内で反映されたことがうかがえる。
 ちなみに、支持党派別のデータを見ると、当たり前だが共和党支持者のマインドの高揚が際立っており、@向こう6か月の景気見通しは86.6に急上昇した。一方、民主党支持者では28.2に急低下。無党派層は58.5になった。
 さらに、悪天候のため当初の予定よりも1日遅れて1月11日に発表された1月のIBD/TIPP景気楽観度指数(調査期間:1月3日〜9日)は、小幅上昇して55.6になった(前月比+0.8ポイント)。06年11月以来の水準である。内訳では、Bが48.5に水準を切り上げた(同+0.2ポイント)。金融市場で株高を主軸とする「トランプラリー」が続いたことも、高い水準の維持に寄与した可能性が高い。
トランプ大統領への「期待バブル」か
 急角度で上向いたこれらの経済指標を眺めていて、筆者だけでなく、おそらくかなり多くの日本の市場関係者が考えるのは、トランプ政権の政策運営への期待感が、米国内であまりにも過大になっていはしないかという点だろう。
 新たな政治指導者の登板による大胆な政策転換によって、あたかもオセロゲームのように局面が大転換するのではないかという期待感が、現実の分厚いカベに阻まれて失望に変わるというのは、十分に考えられるシナリオである。そして、膨らんだ期待が大きければ大きいほど、その反動もまた大きなものになりやすい。
ドル高放置ならレーガン時代の「双子の赤字」再び?
 市場はトランプ政権の経済政策への過大な期待を原動力にして、株高・ドル高・債券安に大きく動いた。だが、大幅なドル高は、すでに触れたようにグローバル展開している米国の企業の収益悪化に着実に結び付くわけであり、「ユーフォリア(陶酔状態)」的な相場形成は、遅かれ早かれ行き詰まらざるを得ない。また、ドル高を放置すれば、トランプ政権は「双子の赤字」に苦しんだ「レーガノミクス」の轍を踏むことになりかねない。
 就任前の記者会見を含め、トランプ大統領のこのところの発言内容やツイッターでの記述内容を見ていると、この政権は今後の各種政策運営に関し、確固とした「見取り図(マップ)」、ストラテジー、あるいは工程表のようなものを、実は全く有していないのではないかと考えざるを得ない。
数か月以内に、トランプ政権は迷走する
 発足したばかりの政権の支持率は初期段階では高いのが通常で、そのパフォーマンスをマスコミはあまり叩かず「お手並み拝見」を決め込むのが漠とした慣例になっている。そうした「最初の100日」の間は目立たないのかもしれないが、おそらく数か月以内に、「トランプ政権が迷走」「トランプ政権への失望感高まる」といった類の見出しが、マスコミ報道のあちこちに現れるのではないかと、筆者はにらんでいる。
知っておきたい「トランプ用語集」
 最後に、トランプ政権の発足に際して知っておきたい「トランプ用語」の数々をご紹介して、本稿の締めくくりとしたい。
■「トランポノミクス(Trumponomics)」
 1980年代前半に大統領を2期務めた故ロナルド・レーガン氏がそれまでとは異なる発想の経済政策を展開したことを「レーガノミクス」(人物名Reaganとeconomicsのうちnomicsという部分を重ねた造語)と呼んだ事例にならい、トランプ氏の経済政策を英語メディアはこう表現している。ただし、レーガン時代と異なり、今回はブレーンや理論的な支柱がはっきりせず、議会共和党との関係も微妙であるため、実際に何が実行されるのかが明確になっていない。なお、日本では「トランプノミクス(英文ならTrumpnomics)」と表記する場合もあるが、子音が2つ続いてしまうため、語呂が良くない。
■「3G政権(3G Cabinet)」
 米民主党のクレア・マカスキル上院議員がトランプ政権が発足する前にをこのように命名し話題になった。3つのGとは、@「大富豪(Gazillionaire 〜 百万長者millionaireや億万長者billionaireよりもはるかに大金持ちを意味する言葉)」、A「将軍(General)」、B米国の大手投資銀行「ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)」の頭文字。これら出身の閣僚がやたらと多いことが、トランプ政権の大きな特徴である。
■「オルト・ライト(alt-right)」
 インターネット上で排外主義的・反リベラルの主張を展開してトランプ候補当選を後押しした、新しいタイプの右翼。「オルタナ右翼」と訳される場合もある。トランプ政権で首席戦略官・大統領上級顧問としてホワイトハウス入りしたスティーブン・バノン氏(右派ニュースサイト「ブライトバート・ニュース」会長)が代表格。バノン氏はプリ―バス大統領首席補佐官とは「平等なパートナー」になると、トランプ氏は政権発足前に説明していた。
■「クローニー・キャピタリズム(crony capitalism)」
 親族など縁故関係者や親しい仲間を中心に国家の経済運営が行われる体制を、批判的に形容する用語。「縁故資本主義」と訳されることもある。もともとは開発独裁の末に1990年代後半に通貨危機に見舞われたアジア諸国の関連で用いられたが、トランプ政権の関連で引き合いに出される機会が最近増えている。トランプ氏本人を含め、富豪を多数登用する政権になったため、利益相反の問題が関心を集めやすい。また、トランプ大統領の娘婿で実業家のジャレッド・クシュナー氏が上級顧問としてホワイトハウス入りした。
■「トランプ砲」
 ツイッターによる短文の情報発信(ツイートする際に140字という文字数制限があるため2〜3回に分かれることもある)で、市場がしばしば大きく揺り動かされることを、スクープ報道を昨年連発した日本の週刊誌について言われた「文春砲」になぞらえた言い回し。
■「ポスト・トゥルース(post-truth)」
 英オックスフォード大学辞書部門によって、2016年の言葉(Oxford Dictionaries Word of the Year 2016)に選ばれた。直訳は「真実の後」。「客観的事実が重視されず、感情的な訴えが政治的に影響を与える状況」を意味している。英国民投票ではEU(欧州連合)離脱派が、真実ではない主張も交えながら、理性ではなく感情・情念に訴えて勝利した。米大統領選ではSNS経由で偽の情報も流される中で、トランプ候補が勝利した。そして今年は4〜5月のフランス大統領選挙など、欧州の数々の重要な政治イベントの行方が、世界経済全体やマーケットの行方を大きく左右することになる。


このコラムについて
上野泰也のエコノミック・ソナー
景気の流れが今後、どう変わっていくのか?先行きを占うのはなかなか難しい。だが、予兆はどこかに必ず現れてくるもの。その小さな変化を見逃さず、確かな情報をキャッチし、いかに分析して将来に備えるか?著名エコノミストの上野泰也氏が独自の視点と勘所を披露しながら、経済の行く末を読み解いていく。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/011900078/

 


 

トランプ政権、最大のリスクは「低支持率」

ニュースを斬る

日本も避けられそうにない「対外強硬路線」の影
2017年1月24日(火)
安藤 毅
 始動直後に経済・外交政策などの転換を打ち出したトランプ米政権。日本政府は出方を冷静に見極める構えだが、今後の波乱要素となりそうなのが米国内でのトランプ大統領の不人気ぶりだ。事態打開へ対外強硬路線を強めれば、日本経済への影響も避けられそうにない。

20日、米ワシントンの連邦議会議事堂前で就任演説をするトランプ新大統領。(写真:AP/アフロ)
 トランプ米政権が発足初日、早々とTPP(環太平洋経済連携協定)の離脱やNAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉など経済・外交政策の転換を打ち出した。

吹き飛んだ「希望的観測」

 いざ大統領に就けば、過激な言動や大統領選時に掲げた政策は穏当かつ現実的なものになるはずだ──。

 事前のこうした希望的観測をあざ笑うかのように、内向き志向の「米国第一主義」をあくまで行動原理の柱に据えると高らかに宣言してみせたトランプ大統領。安倍晋三政権やグローバル企業の間には警戒感が広がっている。

 米製造業の復活と雇用増を最重要課題に据えるトランプ氏。政策の柱に掲げる大型減税、インフラ投資の拡大、規制緩和などを通じて米経済の成長が加速するとの期待が日米などでの「トランプ相場」の原動力となっていた。  

 だが、保護主義への傾斜や内向き志向によるアジアの安全保障環境の悪化懸念といった米国第一主義の負の側面が早くも表出したことで、経済界や市場の楽観ムードは急速にしぼんだ格好だ。

 今後、トランプ政権が実際に米にとって最大の貿易赤字相手国である中国との貿易摩擦を強め、NAFTAから離脱する事態となれば、企業のサプライチェーンは大混乱に陥り、日本も含む世界経済は大きな痛手を被るだろう。

 また、TPP発効の見通しが立たなくなったことで日本の経済連携や成長戦略が修正を迫られることは間違いない。

 その一方で、政府・自民党内では「ほぼ想定内の動きで一喜一憂すべきではない」(安倍首相に近い自民党議員)などと冷静に受け止める声も挙がっている。

 外務省幹部は「当面はトランプ政権の出方を見極めるのが大事」と語る。

「実害」は先のこと

 トランプ政権の本格稼働まで一定の時間がかかるうえ、今回トランプ政権が打ち出した保護主義的な政策方針で直ちに日本経済や企業が被害を受けるわけではないことが主な理由だ。

 「NAFTAについてはカナダもメキシコも再交渉に応じる姿勢を示しており、結果が出るまでは現状に変化はない。TPPについても未発効である以上、現時点で直ちに実害が生じるものではない」

 通商政策が専門のみずほ総合研究所の菅原淳一主席研究員もこうした見方に同調する。

 さらにトランプ氏は就任演説や政策方針で中国を名指しした批判は避け、為替操作国指定も見送っている。

 こうした状況を踏まえると、トランプ政権が発足早々に打ち出した一連の施策については「支持層向けのメッセージと現実的対応のバランスに腐心し、よく練られたものだ」(政府関係者)との見方が説得力を持つと言えそうだ。

 菅原氏はトランプ政権の当面の出方として、特に中国製品を念頭に「アンチダンピング(不当廉売)措置」など世界貿易機関(WTO)協定上認められている貿易救済措置や、紛争処理への申し立ての積極的な活用などで実利を取りにくる可能性があると指摘する。

 もちろん、トランプ政権がこうした「穏当な手段」を採用した場合でも、米中間の貿易摩擦が激化すれば日本経済への直接的・間接的な影響が現実味を帯びる。トランプ政権がいずれその矛先を日本に向けてくる可能性もある。

 トランプ氏は最初の外国首脳との会談にメイ英首相を選んだ。背景には米英のFTA(自由貿易協定)交渉を加速させるなど今後、2国間での貿易自由化交渉を重視する狙いが透ける。

 このため日本政府内では、トランプ政権がTPPに代えて日米2国間のFTA交渉を打診してくることへの警戒感が高まっている。日本が守る立場の農産物についてTPPより厳しい自由化要求を突き付けられることは必至で、かつての日米貿易摩擦の再来を懸念する見方も根強い。

 安倍首相は2月前半で調整しているトランプ氏との首脳会談で日米の同盟関係の重要性を再確認し、TPPについても米の国益にかなうとして引き続き再考を促す方針だ。

 安倍首相は周辺に「TPPの本質は単に経済面だけでなく、アジア太平洋地域での安保強化だ。中国に対抗するうえで重要な意味合いを持つということもしっかり伝えたい」と語っている。

試される安倍首相のかじ取り

 当面、トランプ氏の一挙手一投足に各国も市場も振り回される展開が続くことになるが、先行きの大きなリスク要因となりそうなのがトランプ氏の不人気ぶりだ。

 トランプ氏の就任前支持率は軒並み40%程度にとどまり過去最低水準。全米ばかりか世界各国で反トランプ派のデモが相次ぐなど異例の事態が続いている。

 「安倍首相が積極的な外交を展開し、真珠湾訪問や韓国との慰安婦問題での合意など政治決断が可能になったのも政権基盤が安定しているからこそ。世論の支持を欠いた政権はどうしても政策の推進力を失ってしまうのが常だ」。自民のベテラン議員はこう指摘する。

 時の為政者が国内の不満を和らげ、支持率を回復する手立てとして対外強硬路線を選択しがちなことは枚挙にいとまがない。

 仮に自らが掲げた政策にブレーキが掛かり、米国内の期待が剥げ落ちれば、保護主義に一層傾斜し、2国間交渉で幅広い分野の「取引」に乗り出そうとする──。トランプ氏のそんな近未来像は決して絵空事ではないかもしれない。

 トランプ政権の通商政策、外交・安保政策、為替政策などはしばらく見通しにくい。日本政治も経済も、そして企業活動も不確実性の高まりに翻弄されることは確実だ。

 そうした状況下で大切なのは、自分たちでやるべきことを粛々と進め、あらゆるリスクに即応できる基盤づくりだろう。

 トランプ氏に自由貿易体制や経済連携の重要性を示し、TPPに回帰させるためにも、日米同盟関係の重要性を再確認するとともに、EU(欧州連合)とのEPA(経済連携協定)交渉の大枠合意や日中韓印などが参加するRCEP(東アジア地域包括的経済連携)の交渉加速を急ぐことが欠かせない。

 海外要因のショックに耐えうる国内経済の持続的な成長に向け、構造改革を着実に進めることも重要だ。

 今後もフランス大統領選など国際情勢の不安定化につながるイベントが相次ぐ。世界有数の安定政権を維持する安倍首相のかじ取りが試される一年となりそうだ。


このコラムについて

ニュースを斬る
日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/012300545/


 


 
必要なら、中国は世界のリーダーシップ取る=外務省国際経済局長

[北京 23日 ロイター] - 中国外務省国際経済局の張軍局長は23日、同国としては世界のリーダーとなることを望んでいないが、他国がその地位から退く場合は引き受けざるを得ないこともあるとの見解を示した。

張局長は「中国が世界のリーダーシップを取っていると言う人がいるなら、中国が前面に出ようとしているのではなく、前面に出ていた国々が後退して中国に立場を明け渡しているからだと言いたい」と言明。「リーダーシップを取ることが求められるのなら、中国はその責任を引き受けるだろう」と述べた。

さらに局長は、中国は世界第2位の経済大国であり、他国は経済成長を中国に依存していると主張。「われわれは、米国や他の西側諸国が世界経済の回復に対する寄与を引き続き増やすことができるよう願っている。トランプ新大統領は、米国が4%の経済成長を達成できると宣言したそうだが、われわれは非常に満足している」と語った。

他方で、トランプ大統領が貿易戦争を闘おうとするなら、成長目標は達成できないだろうとも指摘。「貿易戦争や外為戦争は、どの国にも利益をもたらさない」と述べた。
http://jp.reuters.com/article/china-usa-politics-idJPKBN1571FV


 

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コメント
 
1. 2017年1月24日 03:47:52 : Xgx5TpZPts : Xk0DdSWC3ZQ[2]
市場原理主義ゴリゴリの日経新聞が書きそうなこと。経団連、金融資本言いなり。

2. 2017年1月24日 21:40:33 : UzMuEv4khI : pzFC3IWA1@E[49]
摩訶不思議 低支持率の ポピュリスト

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