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AIが決算記事を完全自動配信、日経が開始 AI記者の登場で人間の業務が変わっていく アマゾンが目指すソフトの覇権 
http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/310.html
投稿者 軽毛 日時 2017 年 1 月 26 日 00:30:30: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

AIが決算記事を完全自動配信、日経が開始

ニュースを斬る

“AI記者”の登場で人間の業務が変わっていく
2017年1月26日(木)
井上 理
 1月25日午後3時30分、東京・渋谷の複合ビル「ヒカリエ」27階のLINE本社で出澤剛社長らが出席する決算説明会が始まろうとしていた。「ちょうど決算短信が開示されたようなので、皆さんにもお配りします」。広報担当がそう言って紙を配る。

 その3分前の午後3時27分。日本経済新聞の電子版には既に、「LINEの16年12月期、最終損益75億円の黒字」と題された記事が公開されていた。上場会社が適時開示に使う「TDネット」でLINEの決算短信が配信されたのは記事配信のわずか2分前。記事を“書き”、“投稿”したのは人間ではなく、「AI(人工知能)」である。


AIによるLINE決算の記事は、TDネットの開示から2分後に公開された
 ついに、“AI記者”が活躍する時代が訪れた。日本経済新聞社は25日、企業決算の要点を完全自動配信するサービス「決算サマリー」を開始した。TDネットでの決算公表後、売上高や利益などの情報とその背景をまとめ、記事の体裁にし、数分で日経電子版や会員制情報サービス「日経テレコン」に配信するまでを、AIを備えたシステムが担当する。

 決算の数字だけではなく要因までもを記述し、人の手を介さず完全自動で配信する恒常的なサービスとしては、国内初の試み。海外では既に米AP通信やロスアンゼルス・タイムス紙、ワシントン・ポスト紙などがAIによる一部記事の自動配信を実現している。

「本来やるべき仕事に集中してもらう」

 今回のAIによる決算サマリーが対象とするのは、約3600社ある上場企業が年4回公表する決算短信。TDネットに公表するデータ形式によってはAIが処理できないものもあり、現状のシステムでは約3000社ほどに対応できる見込みという。

 日経は今回、徳島大学発のベンチャー、言語理解研究所と東京大学松尾豊研究室と共同でAI記事のシステムを開発。ともにAI技術や研究で実績があり、元文章の日本語分析や記事生成などに役立てている。今後は、記事の質の向上に務め、本格的な「AI記事」への進化も視野にプロジェクトを進めていくとしている。

 人間の記者が決算短信の公表後、2分で記事を書き、公開することは不可能。AIの活用で効率性や即時性が高まる一方、記者を生業とする者として、「AIに仕事を奪われるのでは」との思いも頭をもたげる。


1月25日、LINEの出澤剛社長は決算説明会に登場。その10分以上前に、AI記者の記事は公開されていた
 「記者の仕事がなくなる」というイノベーションのジレンマを前に、あえて一歩先へと踏み出した理由や狙いとは何か。プロジェクトを担当したデジタル編成局編成部の関根晋作氏は、こう語る。

 「本プロジェクトの真の狙いは、人間の記者に、本来やるべき仕事に集中してもらうという点にあります。対象が約3600社もある上場企業の決算記事をすべて人手でやっていては、カバーしきれません。同時に電子版の普及で記者の負担は増大しており、付加価値の高い記事の質を高めるためにも、一部作業をAI化することが不可欠と考えました」

 これまで日経では、主に証券部や子会社の日経QUICKニュース社(NQN)の記者が決算の速報記事を担当していた。決算サマリーのサービスがまだベータ版(試用版)ということもあり、現状は記者の既存業務に変更はないというが、今後、編集の現場を中心に検討を進めていくという。

「進化の過程を見ていただきたい」

 関根氏が「出来上がった記事をご覧になってもらえば分かりますが、AI記者による記事品質は、まだまだ人間にとって代わるとは言いがたい」と話すように、日本語表現の違和感など多少の粗も残る。

 例えば、冒頭に紹介したLINE決算の記事中にある要因部分は、「純利益は、MixRadio事業の終了に伴う解雇費用などから構成される非継続事業に係る純損失の計上が影響した」とあり、よく読めば分かるが、頭に入りにくい文章だ。

 それでもサービスの公開に踏み切ったのは、「お客様に進化の過程を見ていただきたい」(日経幹部)との思いからという。AIがどう日経記者の働き方を変えていくのか。壮大な実験が始まった。


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日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
http://busine ss.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/012500553


 

アマゾンが目指すソフトの覇権

The Economist

2017年1月26日(木)
The Economist


米フォードはアマゾンのAlexaを採用すると決めた。提携を発表するフォードのマーク・フィールズCEO(写真:ロイター/アフロ)
 出足こそ覚束なかったが、米アマゾンの音声認識技術「Alexa」がテクノロジーの世界で大きな成功を収めようとしている。

 米電子商取引大手のアマゾンが人工知能に基づく音声アシスタント「Alexa」を市場投入したのは、同社が大きな躓きを経験した直後のことだった。同社は「Fire」を引っ提げてスマートフォン市場での成功を目指した。だが、その目論見は外れ、2014年末には1億7000万ドル(約194億6000万円)に上る損失処理 を強いられた。アナリストはFireを史上最悪のスマホだと酷評した。

 Fireの失敗は、自社のモバイル・プラットフォームを開発するとのアマゾンの夢を打ち砕くかに見えた。アップルがiPhoneを世に送り出し、アルファベット(旧グーグル)が検索エンジンGoogleで世間を席巻するのを見て、アマゾンは、ライバル企業の技術を介すことなくユーザーと直接つながる方法を必死に探した。

 アマゾンはFireでやろうとしていたことをまさにAlexaで実現した。Fireと異なるのは形態だけ。これは、Alexa が発表された時にはほとんど誰も予想しなかったことだ。画面で操作する必要はない。Alexaは完全に音声で操作できる。

 Alexaを採用した初めての製品「Echo」をアマゾンが市場投入したのは、Fireの損失を処理した2週間後のことだ。Echoは音声で制御でき、一般大衆に広く訴求する力を持つスピーカーの第1号となった。発売後2年の間に、Alexaは山火事のごとく猛烈な勢いで普及した。今やこの音声技術は冷蔵庫をはじめとする何十もの家電製品に組み入れられている。自動車に搭載される日も近い。

 アマゾンの願いは、Alexaの背後で稼働するデジタルマインド「Alexa Voice Services(AVS)」が、音声による操作が必要とされるあらゆる領域で活躍することだ。

Alexa普及のためには損失もいとわない

 アマゾンはこれまでも、以前には考えられなかったビジネス分野で成功してきた。その最たるものが、クラウドコンピューティング・サービスのAWS(Amazon Web Services)だ。10年前に同サービスを導入して以降、アマゾンは先行者利益を余すところなく活用し、今やクラウドコンピューティングを提供する世界最大の企業にのし上がった。

 Alexaでこれと同様の成功を収めるのはさほど容易ではない。だが、アマゾンはすでに莫大な経営資源をこのプロジェクトに投入している。米投資銀行エバコアによれば、アマゾンはAlexaの普及を促すため、Alexaが稼働する端末の価格を損益分岐点を下回る水準――ハードウエアのコストを1〜2割下回る水準――に設定している。同社はAlexa端末がどのくらい売れたのか、明らかにしていない。

 アマゾンはまた、AVSの無償利用を許可している。開発者は、スピーカーやマイクを内蔵するさまざまな機器にAlexaを組み込むことができるわけだ。Alexa Fundを設立し、Alexaを利用する新しいアプリの開発を進める開発者に資金まで提供している。

 さらに、アマゾンはAlexaに膨大な経営資源を注ぎ込んでいる。再びエバコアの推定によれば、アマゾンは2016年にAlexa関連で3億3000万ドル(約377億8000万円)の損失を計上した。この額には、端末に関わる純損失や、人件費などが含まれる。さらに2017年には、損失額はほぼ2倍の6億ドル(約687億円)超に膨らむと、エバコアはみている。

音声OS分野のウィンドウズ目指す

 アマゾンは現在、事業の拡大に伴い、Alexaチームの新たなメンバーを500人以上募集している(同社は2018年年央までに米国内で新たに10万人の雇用を創出すると約束している。その多くは倉庫要員などだ)。アマゾンにとって、Alexaが持つ戦略的な意義は明白だ――Alexaによってアマゾンは、音声という新たな手段を使う基本ソフト(OS)を手にすることができる可能性がある。

 「アマゾンの狙いは、音声操作の世界でグーグルやウィンドウズのような存在となることにあるようだ」。RBC(カナダロイヤル銀行) のアナリスト、マーク・マヘイニー氏はこう語る。「アマゾンは市場の覇者となりつつある」(同氏)。

 マヘイニー氏の指摘によれば、音声サービスが最も役に立つ分野が2つある。一つは家庭、もう一つはクルマだ。家庭において、アマゾンはユーザーとのつながりを強めることが可能だ。そして当然ながら、ユーザーはより容易にアマゾンのサイトで買い物をし、Amazon Musicで音楽を聴けるようになる。

 家庭への一段の浸透を目指すアマゾンの試みは、生鮮食料品の宅配サービスAmazon Fresh の最近の拡大と軌を一にしている。「冷蔵庫の中にトロイの馬がいるようなものだ」とマヘイニー氏は言う。

 マヘイニー氏は直近の四半期――クリスマス・シーズンを含む――にAlexa端末の販売が1000万台に達したとみている。だが、個人にAlexa端末を直接販売してその勢力を拡大する取り組みは、アマゾンが思い描く全体像の一部に過ぎない。音声OSを手中に収めることで、アマゾンは強力な立ち位置を手に入れる。ゲートキーパーとしてサードパーティー・アプリと顧客データにアクセスすることが可能になるのだ。

中立ゆえに力を持つ

 これまでのところ、アマゾンはサードパーティー・アプリや、それを開発するスキルを持つ技術者に対してオープンな姿勢を示している。例えば音楽サービスの分野では、アマゾンのライバルであるSpotifyやPandoraにAlexaを通じてアクセスすることができる。またAlexaを使って、Domino’s Pizzaに注文することもできる。Domino’s Pizzaはアマゾンのレストラン・デリバリー・サービスと競合するにもかかわらずだ。

 このアプローチは、Alexaとの提携を考えている企業に安心感を与える。自動車メーカーの米フォードは、大きなテクノロジー企業と提携する際のシンプルな基準を決めた。直接的なライバルとなる可能性の小さい企業を選ぶというものだ。

 フォードは1月、今年後半には車内でAlexaを操作できるようにすると発表した。この発表も、「直接的なライバルとなる可能性の小さい企業を選ぶ」との考えに基づく。この発表はAlexaにとって突破口となるものだ。クルマのダッシュボード上がAlexaの居場所となるにとどまらない。音声インテリジェント・エージェントの覇権争いで、グーグルやマイクロソフトを出し抜いて、まず先頭に立ったことを意味する。

 より重要なのは恐らく、将来の競争において、フォードとの提携が示唆するものだ。つまり、シリコンバレーの野心的な企業が(本誌注:自動運転などをはじめとする)様々な業界に進出し脅威を与えているまさにその時に、アマゾンはニュートラルなパートナーとして、ハードメーカーに受け入れられることだろう。

 他の自動車メーカーも、フォードと同様の思いを抱いている。日産自動車および仏ルノーで社長やCEO(最高経営責任者)を務めるカルロス・ゴーン氏は、アップルおよびアルファベットに言及し「目的が理解できない相手と協力するのは困難だ」と述べた。

 これに対してアマゾンは、その意図を明白にしている。ゴーン氏は「アマゾンやウーバーなど一部の企業はすでにその目標を定めている――自身が目指すところを理解している。彼らとは協力したいと思う」と語った。「そして彼らが目指すところは、自分たちの脅威とはならない」(同氏)。

 アマゾンはまた、エコシステムを拡大するための重要な技を学んだ――開発者がAlexaを容易に組み込めるようにすることだ。このことはテクノロジーのプラットフォーム企業にとって極めて重要な意味を持つ。

 人間型ロボット・メーカーのUBTechで北米部門のゼネラルマネージャーを務めるジョン・リー氏は「Alexaのエコシステムは、2年前と比べて一段と強靭なものになった」と語る。UBTechは、Alexaを搭載するロボットを1月5日にお披露目 した。

アマゾンを追うサムスン

 しかしながら、アマゾンがAlexaを携えてリードを奪ったと言っても、より幅広いラインナップを持つAWSサービスを広める機会を得たと判断するのは時期尚早だ。さらに、アマゾンがAlexaで勝ち取った緩やかな提携は、いつまでも続くとは限らない。独占契約でもない。ハードメーカーはライバルの音声アシスタントにいつでも乗り替えることができる。

 Alexaの成功を受けて、同様のネットワーク構築を目指すサムスンなどの企業が、開発に改めて拍車をかけている。同社のファンド、ネクストベンチャーズを率いるブレンドン・キム氏は、アマゾンは「新たな会話型音声インターフェースが持つ潜在力を人々に知らしめることに貢献している」と述べた。ネクストベンチャーズはシリコンバレーを拠点としており、1億5000万ドル(約172億ドル)規模の資金力を持つ。


このコラムについて

The Economist
Economistは約400万人の読者が購読する週刊誌です。
世界中で起こる出来事に対する洞察力ある分析と論説に定評があります。
記事は、「地域」ごとのニュースのほか、「科学・技術」「本・芸術」などで構成されています。
このコラムではEconomistから厳選した記事を選び日本語でお届けします。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/224217/012500117


 


アマゾンが目指すソフトの覇権

FINANCIAL TIMES

2017年1月26日(木)
FINANCIAL TIMES


米フォードはアマゾンのAlexaを採用すると決めた。提携を発表するフォードのマーク・フィールズCEO(写真:ロイター/アフロ)
 出足こそ覚束なかったが、米アマゾンの音声認識技術「Alexa」がテクノロジーの世界で大きな成功を収めようとしている。

 米電子商取引大手のアマゾンが人工知能に基づく音声アシスタント「Alexa」を市場投入したのは、同社が大きな躓きを経験した直後のことだった。同社は「Fire」を引っ提げてスマートフォン市場での成功を目指した。だが、その目論見は外れ、2014年末には1億7000万ドル(約194億6000万円)に上る損失処理 を強いられた。アナリストはFireを史上最悪のスマホだと酷評した。

 Fireの失敗は、自社のモバイル・プラットフォームを開発するとのアマゾンの夢を打ち砕くかに見えた。アップルがiPhoneを世に送り出し、アルファベット(旧グーグル)が検索エンジンGoogleで世間を席巻するのを見て、アマゾンは、ライバル企業の技術を介すことなくユーザーと直接つながる方法を必死に探した。

 アマゾンはFireでやろうとしていたことをまさにAlexaで実現した。Fireと異なるのは形態だけ。これは、Alexa が発表された時にはほとんど誰も予想しなかったことだ。画面で操作する必要はない。Alexaは完全に音声で操作できる。

 Alexaを採用した初めての製品「Echo」をアマゾンが市場投入したのは、Fireの損失を処理した2週間後のことだ。Echoは音声で制御でき、一般大衆に広く訴求する力を持つスピーカーの第1号となった。発売後2年の間に、Alexaは山火事のごとく猛烈な勢いで普及した。今やこの音声技術は冷蔵庫をはじめとする何十もの家電製品に組み入れられている。自動車に搭載される日も近い。

 アマゾンの願いは、Alexaの背後で稼働するデジタルマインド「Alexa Voice Services(AVS)」が、音声による操作が必要とされるあらゆる領域で活躍することだ。

Alexa普及のためには損失もいとわない

 アマゾンはこれまでも、以前には考えられなかったビジネス分野で成功してきた。その最たるものが、クラウドコンピューティング・サービスのAWS(Amazon Web Services)だ。10年前に同サービスを導入して以降、アマゾンは先行者利益を余すところなく活用し、今やクラウドコンピューティングを提供する世界最大の企業にのし上がった。

 Alexaでこれと同様の成功を収めるのはさほど容易ではない。だが、アマゾンはすでに莫大な経営資源をこのプロジェクトに投入している。米投資銀行エバコアによれば、アマゾンはAlexaの普及を促すため、Alexaが稼働する端末の価格を損益分岐点を下回る水準――ハードウエアのコストを1〜2割下回る水準――に設定している。同社はAlexa端末がどのくらい売れたのか、明らかにしていない。

 アマゾンはまた、AVSの無償利用を許可している。開発者は、スピーカーやマイクを内蔵するさまざまな機器にAlexaを組み込むことができるわけだ。Alexa Fundを設立し、Alexaを利用する新しいアプリの開発を進める開発者に資金まで提供している。

 さらに、アマゾンはAlexaに膨大な経営資源を注ぎ込んでいる。再びエバコアの推定によれば、アマゾンは2016年にAlexa関連で3億3000万ドル(約377億8000万円)の損失を計上した。この額には、端末に関わる純損失や、人件費などが含まれる。さらに2017年には、損失額はほぼ2倍の6億ドル(約687億円)超に膨らむと、エバコアはみている。

音声OS分野のウィンドウズ目指す

 アマゾンは現在、事業の拡大に伴い、Alexaチームの新たなメンバーを500人以上募集している(同社は2018年年央までに米国内で新たに10万人の雇用を創出すると約束している。その多くは倉庫要員などだ)。アマゾンにとって、Alexaが持つ戦略的な意義は明白だ――Alexaによってアマゾンは、音声という新たな手段を使う基本ソフト(OS)を手にすることができる可能性がある。

 「アマゾンの狙いは、音声操作の世界でグーグルやウィンドウズのような存在となることにあるようだ」。RBC(カナダロイヤル銀行) のアナリスト、マーク・マヘイニー氏はこう語る。「アマゾンは市場の覇者となりつつある」(同氏)。

 マヘイニー氏の指摘によれば、音声サービスが最も役に立つ分野が2つある。一つは家庭、もう一つはクルマだ。家庭において、アマゾンはユーザーとのつながりを強めることが可能だ。そして当然ながら、ユーザーはより容易にアマゾンのサイトで買い物をし、Amazon Musicで音楽を聴けるようになる。

 家庭への一段の浸透を目指すアマゾンの試みは、生鮮食料品の宅配サービスAmazon Fresh の最近の拡大と軌を一にしている。「冷蔵庫の中にトロイの馬がいるようなものだ」とマヘイニー氏は言う。

 マヘイニー氏は直近の四半期――クリスマス・シーズンを含む――にAlexa端末の販売が1000万台に達したとみている。だが、個人にAlexa端末を直接販売してその勢力を拡大する取り組みは、アマゾンが思い描く全体像の一部に過ぎない。音声OSを手中に収めることで、アマゾンは強力な立ち位置を手に入れる。ゲートキーパーとしてサードパーティー・アプリと顧客データにアクセスすることが可能になるのだ。

中立ゆえに力を持つ

 これまでのところ、アマゾンはサードパーティー・アプリや、それを開発するスキルを持つ技術者に対してオープンな姿勢を示している。例えば音楽サービスの分野では、アマゾンのライバルであるSpotifyやPandoraにAlexaを通じてアクセスすることができる。またAlexaを使って、Domino’s Pizzaに注文することもできる。Domino’s Pizzaはアマゾンのレストラン・デリバリー・サービスと競合するにもかかわらずだ。

 このアプローチは、Alexaとの提携を考えている企業に安心感を与える。自動車メーカーの米フォードは、大きなテクノロジー企業と提携する際のシンプルな基準を決めた。直接的なライバルとなる可能性の小さい企業を選ぶというものだ。

 フォードは1月、今年後半には車内でAlexaを操作できるようにすると発表した。この発表も、「直接的なライバルとなる可能性の小さい企業を選ぶ」との考えに基づく。この発表はAlexaにとって突破口となるものだ。クルマのダッシュボード上がAlexaの居場所となるにとどまらない。音声インテリジェント・エージェントの覇権争いで、グーグルやマイクロソフトを出し抜いて、まず先頭に立ったことを意味する。

 より重要なのは恐らく、将来の競争において、フォードとの提携が示唆するものだ。つまり、シリコンバレーの野心的な企業が(本誌注:自動運転などをはじめとする)様々な業界に進出し脅威を与えているまさにその時に、アマゾンはニュートラルなパートナーとして、ハードメーカーに受け入れられることだろう。

 他の自動車メーカーも、フォードと同様の思いを抱いている。日産自動車および仏ルノーで社長やCEO(最高経営責任者)を務めるカルロス・ゴーン氏は、アップルおよびアルファベットに言及し「目的が理解できない相手と協力するのは困難だ」と述べた。

 これに対してアマゾンは、その意図を明白にしている。ゴーン氏は「アマゾンやウーバーなど一部の企業はすでにその目標を定めている――自身が目指すところを理解している。彼らとは協力したいと思う」と語った。「そして彼らが目指すところは、自分たちの脅威とはならない」(同氏)。

 アマゾンはまた、エコシステムを拡大するための重要な技を学んだ――開発者がAlexaを容易に組み込めるようにすることだ。このことはテクノロジーのプラットフォーム企業にとって極めて重要な意味を持つ。

 人間型ロボット・メーカーのUBTechで北米部門のゼネラルマネージャーを務めるジョン・リー氏は「Alexaのエコシステムは、2年前と比べて一段と強靭なものになった」と語る。UBTechは、Alexaを搭載するロボットを1月5日にお披露目 した。

アマゾンを追うサムスン

 しかしながら、アマゾンがAlexaを携えてリードを奪ったと言っても、より幅広いラインナップを持つAWSサービスを広める機会を得たと判断するのは時期尚早だ。さらに、アマゾンがAlexaで勝ち取った緩やかな提携は、いつまでも続くとは限らない。独占契約でもない。ハードメーカーはライバルの音声アシスタントにいつでも乗り替えることができる。

 Alexaの成功を受けて、同様のネットワーク構築を目指すサムスンなどの企業が、開発に改めて拍車をかけている。同社のファンド、ネクストベンチャーズを率いるブレンドン・キム氏は、アマゾンは「新たな会話型音声インターフェースが持つ潜在力を人々に知らしめることに貢献している」と述べた。ネクストベンチャーズはシリコンバレーを拠点としており、1億5000万ドル(約172億ドル)規模の資金力を持つ。

Leslie Hook, Richard Waters and Tim Bradshaw — San Francisco
( ©Financial Times, Ltd. Jan. 18, 2017)

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