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トランプ政権の経済政策はいずれ行き詰まる 求められるのは「雇用増」より「所得増」だ(東洋経済)
http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/460.html
投稿者 赤かぶ 日時 2017 年 1 月 30 日 03:24:05: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

       1月20日、ワシントン各所で反トランプの抗議運動が行われ警察と衝突した(写真:REUTERS/Adrees Latif)
 


トランプ政権の経済政策はいずれ行き詰まる 求められるのは「雇用増」より「所得増」だ
http://toyokeizai.net/articles/-/155636
2017年01月29日 高橋 浩祐 :国際ジャーナリスト 東洋経済


日本に対するトランプ米大統領の強硬なレトリックを見聞きすると、時はあたかも1980年代後半の日米貿易摩擦が激化していた頃に戻ったかのようだ。トランプ大統領は「日本との自動車貿易は不公正だ」などと日本を名指しで強く批判している。日本のほか、中国やメキシコの2カ国も貿易不均衡の相手国としてやり玉に挙げられることが多い。トランプ大統領は、自らの主な支持層である白人労働者の受けを狙い、大統領就任後もナショナリスティックな強い指導者であり続けている。

「1980年代の貿易摩擦再燃のおそれ」などと日米の先行きを心配する新聞見出しが連日登場するなか、その1980年代後半から1990年代初めの日米経済摩擦とはどんなものであったのか。この拙稿では、それを知らない若い読者も増えていると思われるので簡単に説明し、その後、トランプ政権の経済政策の根本的な矛盾を指摘したい。

■ジャパンバッシングの時代

筆者は日米経済摩擦が深刻化し、米国でジャパンバッシング(日本たたき)が吹き荒れていた1988年、川崎市代表青年研修員として、その姉妹都市の米国メリーランド州ボルティモア市に短期派遣された。

初めての米国留学。研修テーマはずばり当時ホットな話題となっていた「日米の経済問題」だった。ボルティモアは川崎と同様、港湾部に大きな工業地帯があり、鉄鋼業や造船業などに従事するブルーカラーが多く住む都市だ。治安もそんなに良くない。

海外留学初体験に意気揚々としているなか、ボルティモアに到着した翌日、市内の観光名所インナーハーバーの舗道を歩いていると、タクシーの運転手から「Get out of here!(ここから出て行け!)」といきなり大声で怒鳴られ、面食らった。えらい所に来たものだと率直に思った。今と違い、当時は日本人をはじめとするアジア系の人種はボルティモアでは少なく、運転手は私を見て日本人だと直感し、そのような罵声を浴びせたと思った。

      
1988年に米国ボルティモア市の書店で購入した日本関連の本。ジャパンマネーの脅威や日本の異質性を説明している(筆者撮影)

そのような日本たたきの理由は、近くの大きな書店に行ってすぐにわかった。”The Emerging Power of Japanese Money(台頭する日本マネーのパワー)”や“YEN!”、“The Japanese Negotiator(日本人交渉者)”といった、バブル経済絶頂で世界を席巻する日本の脅威を訴える本が所狭しと店頭に並んでいた。日本人や日本社会は欧米と基本的な価値観や民主主義を共有できない異質なものと説く「日本異質論」(リビジョニズム)がまさに隆盛を極めていた。

そんななか、翌1989年にはさらに対日感情を悪化させる出来事が相次いだ。ソニーが米映画会社コロンビア・ピクチャーズを買収(ニューズウィーク誌が着物を着た自由の女神像の画を表紙に載せ、大きな話題になった)。そして、不動産王・トランプ氏の地元ニューヨークでも三菱地所がロックフェラーセンターを買収した。ハリウッドとニューヨーク・マンハッタンの象徴とも見なされるものを次々と日本企業が買い占め、日米文化摩擦が生じ、政治問題化していった。

1980年代は、全米自動車労働組合(UAW)日本車をハンマーでたたき壊すパフォーマンスもよく放映されていた。

日本のナショナリストも負けてはいなかった。政治家である石原慎太郎氏とソニー会長だった盛田昭夫氏が『「NO(ノー)」と言える日本』を出版し、日本側の主張を展開したのもこの頃だ。残念ながら、この本の出版によって誤解を解くどころか、日米間の不信は強まり、両国の関係はさらに悪化した。

トランプ大統領は当時から日本たたきの論陣を張ることでも有名だった。大統領選出馬を模索していたとされる1987年9月にはニューヨークタイムズ紙などに意見広告を出し、「日本、サウジアラビアなどに米国が提供している防衛のための費用を払わせよう」と、米国民に呼び掛けていた。

米メディアは、トランプ大統領が、日米貿易摩擦が吹き荒れたレーガン政権時代からのこうした対日観を今も引きずっていると指摘している。ニューヨークタイムズ紙は「1980年代の貿易観で日本を批判している」と報じた。

■実は歴史的に低水準の米失業率

トランプ大統領は米史上、最も雇用を創出する大統領になると宣言している。しかし、統計を見ると、2016年の米国の失業率は4.9%で、歴史的な低水準にある。2008年のリーマンショック後、2010年の9.6%をピークにして減少の一途だ。

米連邦準備制度理事会(FRB)がつねに重要視してきた長期失業者の数も大幅に改善している。長期失業者とは、職を得ようにも職に就けない期間が27週以上の失業者だ。この失業数も2010年4月に戦後最悪の680万人に達したものの、昨年12月には183万人に減少し、リーマンショック前の2008年7月以来の低水準となっている。つまり、米経済はすでに完全雇用に近い状態にあるのだ。

では、統計的には雇用情勢が実際には良いのに、なぜ米国の中所得者層がトランプ氏を大統領選で熱烈に支持したのか。

慶応義塾大学総合政策学部の神保謙准教授は、雇用そのものではなく、米国や英国などの先進国の中間層で募っている不満や滞留を指摘する。具体的には、神保准教授はエコノミストのブランコ・ミラノビッチ氏が示した「グローバル化の象のカーブ」(横軸を世界の人々の所得階層、縦軸を1998〜2008年の所得の伸び率とする折れ線グラフ)を挙げる。

■「象のカーブ」とは?

      
出所: Branko Milanovic, Global Inequality: New Approach for the Age of Globalization (Cambridge: The Belknap Press of Harvard University Press, 2016)

この「象のカーブ」によって、この間の所得がどう伸びたかを比較すると、最も所得変動がプラスに作用して勝者となったのは、新興国で台頭する中間層(象の背中)の所得と、先進国の富裕者層(象の鼻先)だった。それに比べ、先進国の中低所得層(象の鼻の付け根)の伸びはわずかにとどまり、実際、米国の実質賃金や家計所得の中央値は長期にわたり停滞が続いているという。

神保准教授は「最大の敗者は事実上、グローバリズムの恩恵を受けていない人々、つまり、先進国の中低所得者層の人々だった。彼らが現代のグローバリズムやそれを推進する政治に対し、最も強い形で異議申し立てをする手段こそがまさにブレグジットであり、米大統領選挙であった」と指摘する。

フォードやトヨタなど大手企業はツイッターなどでのトランプ大統領の攻撃を受け、血眼になって米国内で雇用を増やす計画を相次いで発表している。しかし、前述のように米経済はすでに完全雇用に近いところまできている。

そして、本来は、海外に工場を移した米企業に国境税などを課すのではなく、米労働者の生産性を技術革新などを通じて上げることしかない。労働者が、安い生産コストで、より良い製品を製造しなくてはいけない。高い生産コストで、劣悪なものを米国内で売るなら、米国の消費者がツケを払うことになる。

今は国際分業や国際協業の時代だ。それぞれの国際競争力を踏まえて、シリコンバレーはITの新興企業、バングラデシュはアパレル、と分業している。経済学者のリカードの比較優位の理論にもあるが、得意な分野で勝負するのが当たり前だ。これに対し、トランプの政策は「移民を排斥せよ」とか「国境に壁を作れ」といった感情レベルの政策にしかなっておらず、これではグローバル主義の是正も格差社会の是正もおぼつかない。大型法人減税や金融の規制緩和も、富裕層をさらに利するだけで、格差社会が広がる可能性が大きい。

神保准教授は「(トランプの経済政策は)短期的に成功するかもしれない。株価は上昇し、雇用は改善し、多くの労働者がトランプ政権による変化を肯定的に受け止めるかもしれない」と指摘するものの、長期的には行き詰まる可能性を示した。「自由貿易の制限がもたらすのは、物価の上昇や生産性の低下。中長期的に考えると、米国の製造業や中間層はトランプ政権のせいで大きな負担を長期的に抱え込むことも考えられる」(神保准教授)。



 

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コメント
 
1. 中川隆[6461] koaQ7Jey 2017年1月30日 05:55:28 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[6915]
>トランプの政策は「移民を排斥せよ」とか「国境に壁を作れ」といった感情レベルの政策にしかなっておらず、これではグローバル主義の是正も格差社会の是正もおぼつかない。大型法人減税や金融の規制緩和も、富裕層をさらに利するだけで、格差社会が広がる可能性が大きい。

この人はアメリカの現状を何も知らないんだよ:


「しょぼくれたアメリカ」への怒りが、より過激なトランプ新大統領を生み出した
http://diamond.jp/articles/-/115783


 団塊の世代はもとより、それよりひとまわり若い私の世代にとってもアメリカは「夢の国」だった。1976年にマガジンハウスの雑誌『POPEYE』が創刊されたときは高校生で、はじめて知った西海岸の文化やファッション、ライフスタイルに大きな衝撃を受けた。しかしそれよりもっと衝撃的だったのが、もはやタイトルも忘れてしまったが、深夜テレビで見たアメリカ映画だった。

 ロサンゼルスに住む母子家庭の物語で、ストーリーもほとんど覚えていないが、母親も高校生の息子もそれぞれが恋人との関係に悩む、という設定だったと思う。映画の最後で、男に捨てられた母親が妊娠を知り、泣きながらそのことを息子に打ち明ける。その当時、カリフォルニア州では中絶は違法だったが、母親に子どもを産む余裕はなかった。すると高校生の息子(彼は私と同い年だった)は母親を慰め励まし、車の助手席に乗せて、中絶が合法化されている隣のネバダ州ラスベガスまで運転していくのだ――。

 当時の私には、そもそもなぜアメリカの高校生が当たり前のように車を運転しているのかがわからなかった。しかしより信じがたかったのは、母親が18歳の息子に自分の失恋や望まぬ妊娠を赤裸々に語り、息子がそんな母親に、対等な個人として手を差し伸べようとすることだった。そこには、私には想像もできない価値観で生きているひとたちがいた。

 その後、80年代にはじめて北米を旅したが、そのゆたかさに圧倒され、なにもかもきらきらと輝いてみえた。これは私だけの感想ではなく、帰国便を待つ空港では若い日本人女性のグループが、「この自由な空気を知ったら、もう日本なんかで暮らせないよね」と大声で話しあっていた。

 しかしそれから、私のアメリカに対する印象は徐々に変わっていった。昨年末にニューヨークの夜の街を歩いたのだが、街頭は暗く、建物は古く、道はあちこちが工事中だった。久しぶりにタイムズスクエアも訪れたが、六本木や銀座、あるいは香港やシンガポール、北京や上海と比べても、なにもかも古ぼけて見えた。ひとことでいえば、街がしょぼくれているのだ。

 私はこれが、自分が年をとったせいだと思っていたのだが、

トーマス・フリードマンとマイケル・マンデルバウムの『かつての超大国アメリカ』(日本経済新聞出版社)
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を読むとそうでもないらしい。当のアメリカ人が、自分たちの国はすっかりしょぼくれてしまったと思っているのだ。

ニューヨークのタイムズスクエア            (Photo:©Alt Invest Com)


ニューヨーク5番街のトランプタワー           (Photo:©Alt Invest Com)


アメリカはもっとも早くインフラの老朽化に直面している

 トーマス・フリードマンはニューヨーク・タイムズの名物コラムニストで、世界的なベストセラーとなった

『フラット化する世界』
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『レクサスとオリーブの木』
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で知られる。マイケル・マンデルバウムはジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究所大学院教授で、『フォーリン・アフェアーズ』やニューヨーク・タイムズなどに寄稿する国際問題の専門家だ。

『かつての超大国アメリカ』
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は、そんな2人が世界金融危機後のアメリカに向けて(本の発売は2011年)、グローバル化する世界の中で政治や経済、社会をどのように変えていくべきかを提言したものだ。

 この本は、中国の天津とワシントンD.C.の地下鉄から始まる。

 世界経済フォーラムの年次総会(サマー・ダボス)に参加したフリードマンは、5年前には存在しなかった超モダンな北京南駅から高速鉄道に乗り、115キロをわずか29分で走り抜けて超モダンな天津駅に着く。会議が行なわれた天津梅津会議・展示センターは延床面積23万平方メートルの巨大施設だが、案内によれば2009年9月15日から2010年5月までの8カ月で完成した。

 ひるがえって2人が仕事をするワシントンD.C.の地下鉄メトロレールのベセズダ駅は、短いエスカレーター2本が6カ月ちかく修理中のままになっている。1本が修理のため通行できないので、もう1本が上下両方向の階段代わりに使われ、ラッシュアワーのときは大混乱が起こる。

 たんなる“設備改善”になぜこんな時間がかかるのか調べたところ、ワシントン首都圏交通局のコメントが見つかった。そこには次のように書かれていた。
「修理には約6カ月かかる予定で、予定どおり進んでいる。作業員はエスカレーター1本の修理に10週間ないし12週間かかる」

 インフラが老朽化して手に負えなくなっているのはワシントンD.C.だけではない。2009年、米国土木学会(ASCE)が“アメリカのインフラ成績表”を発表したが、「C」を平均として、「固形ゴミ処理が最高点でCプラスだった。つぎに高いのが橋梁でC。つづいて、線路と公園及び娯楽施設の2項目がCマイナス。航空、ダム、有蓋(ママ)廃棄物、内陸部水路、堤防、道路、学校、公共輸送機関、下水など、その他のインフラは全種DもしくはDマイナスだった」。

 さらに問題なのは、インフラが老朽化すればするほど補修費がかさみ、政府や自治体が修繕に及び腰になることだ。ASCEの推計では、アメリカのインフラ補修費は2005年に1兆6000億ドルだったが、それが2009年には2兆2000億ドルになった。わずか4年で40%近くもコストが上昇するのなら、いまはいくらになっているか考えるだけで恐ろしい。――だからアメリカの政治家は考えることをやめたのだろう。

 世界でもっとも早く近代化に成功したアメリカは、もっとも早くインフラの老朽化に直面した。アメリカの都市がどんどんしょぼくれていくのは、私の偏見というわけではなさそうだ。

サンフランシスコのゴールデンゲート・ブリッジ。徒歩でも渡れるようになっており、自殺の名所としても知られる              (Photo:©Alt Invest Com)
http://diamond.jp/articles/-/115783


アメリカの高校生の四分の一が読み書きができない
http://diamond.jp/articles/-/115783?page=2

 アメリカは世界でもっとも優れた大学教育を提供しており、ハーバード、MIT、スタンフォードなどの有名大学には世界じゅうから優秀な若者が集まってくる。彼らはその後、ウォール街の金融機関やシリコンバレーのIT企業に就職し、アメリカを金融、テクノロジー、イノベーションの中心地に押し上げた。

 だがその一方で、当のアメリカ人の教育水準は惨憺たるレベルにあると、フリードマンとマンデルバウムは嘆く。『かつての超大国アメリカ』には、驚くべき数字が列挙される。

 ワシントンD.C.を本拠とする学生支援組織エデュケーション・トラストが行なった調査によれば、アメリカ陸軍に入隊を希望する高卒者の23%が入隊テストに必要な最低点がとれない。その問題は、「2+x=4のとき、xの値は?」というような初歩的なものだ。

 ブルッキングス研究所の教育問題専門家によれば、2009年、高校の最上級生の26%が、全国統一テスト(NAEP)で基本リーディング・レベル以下の成績だった。これはかんたんにいうと、読み書きができないということだ。

 外交問題評議会(CFR)におけるスピーチでアーン・ダンカン教育長官は、「わずか一世代前には、アメリカは世界一大卒者の割合が多かった。現在では、成人期初期の若者が大学を終える割合で、韓国を含む8カ国がアメリカをしのいでいる」と述べたあとで、こうつけ加えた。

「それと同じくらい問題なのは、アメリカの高校生の4分の1――25パーセント――が、中退するか所定の年数で卒業できていないことだ。じつに毎年100万人近くの学生が、学校をやめて世間に出ている。これは経済的に持続不可能だし、道義的に受け入れられない」

「(退役将官のグループによれば)17歳から24歳のアメリカの若者の75パーセントに、高校を卒業していない、前科がある、あるいは体に故障があるなど、軍隊に入隊するのに不適格な理由がある」

 こうした状況は、OECDが行なう学習到達度調査(PISA)を見ても明らかだ。PISAは先進工業国数十カ国の15歳の生徒が未来の仕事に備えてどう学習しているかを、「リーディング」「数学」「科学」で3年ごとに調査しているが、アメリカの成績は、リーディングではアイスランドとポーランドと同点で全体の中程度、数学では国際平均以下でアイルランドやポルトガルとほぼ同じ、科学は全体の中程度で東アジア諸国やフィンランドに大きく遅れをとった。これを受けて教育省はアメリカの公教育の現状に危機感を表明したが、メディアでは束の間報道されすぐに消えた。

 公教育の崩壊は、当然、成人の知識レベルにも反映されることになる。

 デトロイトの地域労働力基金が2011年5月に発表した調査で、デトロイト住民の成人の47%、約20万人に、日常生活に必要とされる読み書き能力がないことが判明した。これはデトロイト市の大人の半数ちかくが、取扱説明書や、パッケージや機械のラベルを読むことができず。就職の申込書を書くことができない、ということだ。――それにもかかわらず、彼らのうちの10万人が高校の卒業証書を持っているか、GED(高卒資格)を得ている。

 トランプは「アメリカに雇用を取り戻す」と公約したが、彼がそれを実現してデトロイトにふたたび自動車工場が戻っても、企業は仕事に必要な読み書き能力を持つ労働者を雇うことができないのだ。

 こうして、かつて光り輝いていたアメリカは、人材面でもしょぼくれてしまったのだ。

ラスベガスのトランプホテル

「グローバル化」に適応できなくなったアメリカへの処方箋

『かつての超大国アメリカ』を書いたフリードマンとマンデルバウムはリベラルなコスモポリタンで、政治的にはトランプの対極にいる。同書ではアメリカ再生の条件として、優秀な移民に広く門戸を開くことを掲げており、トランプが「アメリカ・ファースト」の名のもとに進めようとする国境の壁や移民排斥などの「新政策」はぜったいに認めないだろう。

 しかしそれでも、両者には明白な共通点がある。それは、しょぼくれてしまったアメリカへの怒りだ。

 フリードマンとマンデルバウムは、劣悪な公教育や機能しない政治など、アメリカ社会が抱えるさまざまな深刻な問題を指摘しながらも、「それでもアメリカをもういちど偉大な国にすることは可能だ」と繰り返し述べる。これが彼らの本のテーマなのだが、それはトランプの標語“Make America Great Again”とまったく同じだ。

 ところで、「偉大さ(Great)」とはいったいなんだろうか?

 アメリカの歴史には、3つの大きな成功体験がある。独立戦争、第二次世界大戦、冷戦の終焉だ。この“偉業”によってアメリカは神に選ばれた「偉大な国家」となった、というのが彼らの歴史観だ。

 このなかで、ファシズムに勝利した第二次世界大戦(1945年)と、共産主義を打ち破った冷戦の終焉(1990年)は現代史に属する。この2つの勝利に貢献したのが「偉大な世代」で、大統領としては、第二次世界大戦に招集されたロナルド・レーガンとジョージH.W.ブッシュ(父ブッシュ)がこれに属し、その後のビル・クリントンやジョージW.ブッシュ、ドナルド・トランプは戦後生まれのベビーブーマーだ。

“Make America Great Again”の背景には、冷戦終焉によってアメリカは唯一の超大国としての地位を不動のものにしたにもかかわらず、20年たって振り返ってみると、もはや世界の国々はアメリカを「偉大な国」と見なしていない、という落胆がある。だとしたら、アメリカはどこかで道を間違えたにちがいない。

 冷戦の終焉と前後して「偉大な世代」は引退したのだから、間違えたのはベビーブーマーのリーダーたちだ。だが、いったいどこで?

 この問いに対して、リベラルなコスモポリタンである2人の著者は、「アメリカがグローバル化に適応できなくなったときからだ」とこたえる。それに対する処方箋は、教育への投資によってアメリカ人労働者の知識とスキルを向上させ、優秀な移民を呼び込むことでイノベーションを起こし、増税と歳出削減の抜本的な改革によって財政赤字から脱却し、事実を直視して「地球温暖化」という人類の危機に立ち向かうことだ。

 だが、いったいどうしたらこんなことが可能になるのか。それは「ショック療法」だと彼らはいう。

 来るべき大統領選で、民主党からも共和党からも距離を置き、まっとうな政策を説く第三の候補が現われ、当選できないまでも一定の票を獲得すれば、新大統領は4年後の再選を見越して第三の候補の政策を取り入れようとするはずだ、というのが著者たちの見立てだった。なぜなら、第三の候補と同じことをすれば、次の選挙では労せず彼が獲得した票を上積みできるのだから。

 そして現実に、政治経験も行政経験もまったくない「第三の候補」が現われた。大方の予想に反し、「アメリカをふたたび偉大にする」と叫んだ彼は大統領に当選したが、その政策は企業を恫喝して国内に工場をつくらせ、移民を追い出して「アメリカ人」に仕事をあてがい、財政支出の大幅拡大によって景気を回復させ、化石燃料による地球温暖化を否認する――同じ「しょぼくれたアメリカ」への怒りから出発したにもかかわらず、処方箋はまったく逆だったのだ。

トランプホテルの土産物店で売られている“Make America Great Again”のベースボールキャップ                   (Photo:©Alt Invest Com)


赤ちゃんのときからTrump印             (Photo:©Alt Invest Com)
http://diamond.jp/articles/-/115783?page=2


アメリカの予備選挙は、中道よりも過激な候補者が有利になる
http://diamond.jp/articles/-/115783?page=3


 アメリカではなぜ、共和党と民主党の二大政党がはげしく憎みあうようになったのか。その理由は『かつての超大国アメリカ』できわめて明快に分析されている。

 最大の要因は、互いの党利党略によって、選挙区にどちらかの党員が集中するよう区割りされていることだ。これによって、党内の予備選挙が本選挙と同じになった。すなわち、共和党/民主党の予備選挙に勝って正式な候補になれば、選挙区はその党に圧倒的に有利なように仕組まれているのだから、本選挙をするまでもなく結果はわかっているのだ。

 この区割りはゲリマンダーと呼ばれるが、もっとも顕著なカリフォリニア州では、2004年から2010年にかけて行なわれた4回の選挙で計212カ所の投票が行なわれたが、党が入れ替わったのはわずか1選挙区だけだったという。ここまで極端だと、すべての候補者が本選挙ではなく予備選挙に勝つことに全精力を傾けることになる。

 本選挙とは異なって、予備選挙には正規登録している党員しか投票できず、彼らは思想的に凝り固まっているので、左右両極に近い候補者が中道の候補者よりも有利になる。本選挙では、相手は反対党の過激な候補者なのだから、穏健な有権者も自党の過激な候補者に投票するしか選択肢はないのだ。

 さらに、当選した公職者は、自分をその地位から追い落とすのが反対党の候補者でないことを承知している。ゲリマンダーによって、反対党の勝ち目はゼロに等しくなっているからだ。それよりも、足をすくわれるおそれがあるのは、自党からより過激な候補者が挑戦してくることだ。政治家として生き残るには、在職中に穏健になったり、反対党と妥協したりすることはぜったいにできないのだ……。

 このようにしてアメリカでは、穏健な政治家も党派的で過激な活動家に引きずられて互いに憎みあうようになり、国レベルでも州レベルでも政治は機能不全に陥っていく。――その典型が、二大政党の対立で財政破綻寸前になっているカリフォルニア州だという。

 だがだからといって、アメリカ社会が「(保守対リベラルの)文化戦争」によって真っ二つに分断されているわけではないと著者たちはいう。

 スタンフォード大学の政治学者モリス・フィオリーナは『文化戦争? 二極化したアメリカという間違った通念』で、共和党と民主党の活動家が遠く隔たっているとしても、一般のアメリカ国民の考え方はそう変化しておらず、世論は政治思想では中道に傾いていて、国民が選んだ公職者の考えや好みほどには偏っていないと分析した。「選挙で票がほぼ等分に割れたり、棄権されたりするのは、党や候補者が極論にしがみついているのに対して、国民が本能的に中庸を求めているからだ」

 このことは過去20年間に当選した大統領も気づいており、彼らはいずれも選挙運動中に、穏健なやり方で国を治めると約束している。レーガンの後任のジョージH.W.ブッシュが「より親切で優しい」政治を掲げ、クリントンが「これまでとはちがう民主党」を標榜し、ジョージW.ブッシュが「思いやりのある保守主義」を唱えたように。

 フィオリーナは、次のように結論する。

「(共和党と民主党のエリート層が二極化しているのは疑問の余地がないとしても)そういうエリートの二極化が、幅広い大衆でおなじように見られると考えるのは間違いだ。(中略)むしろその逆で、エリートは二極化した選択肢を掲げることで、有権者が二極化しているように見せかけている」

 いまや民主党は、これまでの「正義のたたかい」で手にした既得権をいっさい手放さない「反動リベラル」と化し、一方の共和党は、市民の権利を侵害するとして増税をいっさい認めず、独立戦争の精神に立ち返ればすべてがうまくいくと主張する頑迷な「復古保守」となった。だが有権者はこうした二大政党の罵詈雑言にうんざりしており、アメリカ社会を和解させるより穏健な選択肢を求めているのだ。

 これは興味深い議論だが、だとしたらなぜ世界を「善(正義)」と「悪」に二分し、自らの意に沿わない者を悪として切り捨てる人物を、「穏健な」アメリカの有権者が選択したのだろうか。――それはたぶん、「穏健」なはずの大衆が、リベラルな著者たちが思うよりずっと「しょぼくれたアメリカ」に怒っているからだろう。

 大統領就任直後の記者会見でのやり取りを見ても、トランプ新政権は異例の対応をつづけているが、「かつて偉大だったアメリカ」はいったいどこに向かっているのか。

 最後に同書から、きわめて示唆に富むエピソードを紹介したい。

 アメリカの選挙広告では、候補者をアピールするポジティブアドのほかに、相手の候補者を批判するネガティブアドも認められている。これについて老練な広告マンが、2000年の大統領予備選でジョン・マケインの選挙参謀を務めた共和党員に助言した。

「ネガティブアドには効き目がある」と、広告マンはいった。「だが、マクドナルドが、バーガーキングのバーガーはウジだらけだというようなネガティブアドをぜったいに打たない理由を知っているかね? 1年か2年は効き目があるが、そのあとはだれもハンバーガーを食べなくなるからだよ」

トランプホテルのロビー。宿泊客は高齢の白人と中国人観光客

(Photo:©Alt Invest Com)


http://diamond.jp/articles/-/115783?page=3


2. 2017年1月30日 11:29:24 : OdXyAMzp92 : CrE4L2tJ0Ug[45]
アメリカの超金持ちが、国民から搾取しているので当然のことです。

金持ちの税金を低くして(脱税しまくり)、公共投資や公共福祉、国民皆保険など国民に必要な命綱を全てカットして、自分たちは自家用ジェット機。

代々続く金持ち資産を利用して投資で儲けて働かず、中間低所得層から搾取しながら、金持ちバカ子息たちは高級ホテルで騒ぐ毎日。

国民は医療費や大学費用、生活費に苦しみ、家を持つことさえ出来なくなっている。
利己的なリバタリアン議員たちの所為で、州予算もカットされ貧しい州は毒水を水道に流している。

トランプ政権はそんな金持ちのための政策満載です。
●法人税減税(税率を35%から15%に引き下げ)
●個人所得税の減税(現行の7段階の累進税率を12%、25%、33%に引き下げ)
●キャピタルゲイン並びに配当に対する減税延長(現行の0%、15%、20%の税率を維持)
●相続税の撤廃
●TPP撤廃発言のすぐ後、キーストンパイプライン工事(多国籍企業)に着手、二国間貿易協定構想。
●自分は合法脱税をしながら国民の税金を利用してメキシコへ壁を作りはじめて国民を負債漬け、トランプ支持の建設業者たちはぼろ儲け。労働者たちが生活苦、医療費に苦しんでいるにもかかわらず労働者保護(経営者による福利厚生徹底)や国民皆保険制度は考えない。
●共和党の非人道主義者やリバタリアンたちを自分のキャビネットに据える金権政治
●散々戦争を作り出し軍費予算や軍滞在費用を「他国」へ要請する(そして戦争へ行くのは貧しく医療保障や学費補助が欲しい学の無い若者たち)。

トランプは散々、ワシントンの「一部の金持ちと権力者」にだけ恩恵をもたらす政策の政権を非難しながら、実は彼ら(そして自分)を見逃すだけでなく、さらに、減税して儲けさせてあげるという政策に他なりません。


3. 2017年1月30日 12:01:09 : OdXyAMzp92 : CrE4L2tJ0Ug[46]
以下、コメント抜粋

「トランプ大統領が言っている、「白人労働者など一般の人々へホワイトハウスからの権力の移行だ」、なんてことをまともに捉えているメディアの神経も疑います。
既存の権力者(エスタブリッシュメント)からワーキングクラス(ブルーカラー)に権力を取り戻す、なんて言っていたわけですから、さながら民主党のサンダース議員の専売特許のようなキャッチフレーズです。しかし、実際に起きたことはなんですか?

国務長官はレックス・ティラーソン、現役のエクソンモービルのCEO、財務長官はゴールドマン・サックスにもいたハゲタカ投資家としてボロ儲けをしたスティーブン・ムニューチン、さらには教育長官にはベッツィー・デボスを起用。彼女はアムウェイの創業者の息子の嫁ですよ。既存の権力者と成功者ばかりじゃないですか!

 これほど言行不一致なことはないわけであって、もうこれだけでトランプ大統領は嘘つきだ、ということになるはずですが、そういう声はメディアからは、ほとんど聞こえませんわね。この政権の一体どこが貧乏な白人労働者に権力を取り戻す、ということになるんでしょうか。

■アメリカの権力構造の本質は何一つ変わっていない
結局、トランプという人は怒りの矛先を既存のエスタブリッシュメントに向けたふりをしただけで、ホワイトハウスの人事のように本質は何一つ変わっていない。それに人々が気づいた時にはすでに遅く、迷走した分だけ物事がこじれ、状況は前より酷いことになり、そのために国民が支払うコストは膨大になるだろうことには疑問の余地はありません。
トランプ政権は要するにあのWWEのようなプロレス政権なのです。プロレスと言うのは「お前殺すぞコノヤロー!!」と過激にショーアップして技もとんでもない技をかけてきますが、あんなもの、真剣にやったら相手は本当に死んでしまいます。
しかし、死なないわけですよ。つまり手を抜いているわけで、要するに相手が受け止められる範囲で技をかけているということです。つまりトランプ大統領の一連の過激な発言もこれはあくまで「プロレス」であるという解釈をしなければならないのではないか、という話です。
今は「トランプバブル」とかはしゃいでいますが、早晩化けの皮がはがれることになるでしょう。何するかわかんない人が大統領、というのはアメリカ経済にとっても非常に大きなリスクでしょうね。」


4. 2017年1月30日 12:57:18 : hKRNRNsg7U : ZKs9_WJa1ss[234]
雇用増より所得増ってw

へー雇用なしに所得ふえるんだへー(適当)


5. 2017年1月30日 23:02:42 : hZkMAewDKg : iJ98jhy96GQ[30]
>求められるのは「雇用増」より「所得増」だ

何トボけたこと書いてやがる。
壺三は失業者が減った(すなわち派遣や契約社員が増えた)ことを大々的に、大本営発表しているではないか。
しかし現実には、日本国民の所得平均は年々右下がりだ。

東洋経済の自称国際ジャーナリスト高橋 浩祐よ。
貴様はこの現実をどう見ているんだ?アメリカを叩いて国内は無視か。
貴様は安倍を批判できるのか。まさか寿司友じゃないだろうな。

夢想するなら、他人に迷惑がかからないようにしとけ。
それすら出来ない社会人失格の貴様の戯言など、目覚めている人たちは誰も信じはしない。
騙されるのはカネしか興味がないような連中だけだ。


6. 2017年1月31日 02:04:44 : jHT2UPGbws : eF99jUiwtKM[9]
中川、長すぎるぞ!


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