★阿修羅♪ > 経世済民118 > 571.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
中国人観光客がもう「爆買い」をしない理由 ”異次元”トランプ流、中国にとって吉か凶か オバマ政権よりも親日的トランプ政権
http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/571.html
投稿者 軽毛 日時 2017 年 2 月 02 日 04:28:40: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

中国人観光客がもう「爆買い」をしない理由
小宮一慶が読み解く経済の数字・企業の数字
2017年2月2日(木)
小宮 一慶
 中国が春節を迎え、東京や大阪の街角では大きなスーツケースを引っ張った中国人観光客を多く見かけます。しかし、彼らの消費動向は以前と大きく変わり、日本企業にも影響が出ています。また、そこから中国経済の現状などが見えてきます。
 先日、大阪で月に2回ほど出ているテレビ番組の担当者から、「小宮さん、百貨店の福袋は中国人観光客のおかげで昨年の1.5倍売れています。爆買いは続いているのですか?」という質問を受けました。私の答えは「比較的安いものは売れているが、高額品の爆買いは終わっている」というものでした。
 昨年末あたりから円安に振れたこともあり、中国人観光客による消費が少し戻ってきてはますが、それでも百貨店の数字を見ると、化粧品などの比較的安いものの売り上げは伸びているものの、宝飾品・時計などは前年比でマイナスとなっています。
 2年ほど前、中国人観光客による爆買いが日本経済に大きな恩恵をもたらし、今後も続くと期待されましたが、残念ながら一時の波で終わってしまいました。特にホテル、百貨店、家電量販店などは、爆買いで業績が急回復したものの、既に潮目が変わってしまったように感じます。
 日本を訪れる中国人観光客数自体は、2016年は前年比30%程度増えています。しかし、百貨店をはじめとする小売業の売り上げは減少が続きました。これは購入単価が下がっているからです。
 なぜ、彼らは以前のような爆買いをしなくなったのでしょうか。今回は、春節を機に中国人観光客の動向の裏にある中国経済の状況と日本経済への影響について考えてみたいと思います。

春節に銀座を訪れる中国人観光客。2016年の光景(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)
闇民泊が横行し、ホテルの宿泊料金が落ち着いた
 2年前の2015年、ホテルの宿泊料金が異常に高くなっていた時期がありました。私がいつも利用している、通常なら1万円台で泊まれる大阪のホテルでは、スイートルームでもないのに「1泊6万円」と言われて驚愕したことがありました。他のホテルの料金も、1泊3万円などザラでした。ちなみに、先ほどのホテルは今年1月には1泊1万円台に落ち着いています。
 なぜその時期ホテルの宿泊料金が高騰したのでしょう。答えは中国人観光客の需要が急増したからです。観光局の集計によると、2015年の「訪日外客数」は前年比47.1%増の1974万人。外国人観光客の数が大幅に増えた年でした。そのうち中国人は同107.3%増の499万人と、群を抜いて増えていたのです。
 ところが、昨年あたりから、ホテルの宿泊料金はほぼ落ち着いています。日本経済新聞社がまとめた東京都内の主要18ホテルの稼働率を見ると、16年2月以降も高水準が続いているものの前年の実績を下回っています。2016年の訪日外客数は前年比21.8%増(うち中国人は同27.6%増)で、宿泊料金が高騰した15年よりはるかに増えているにもかかわらず、です。
 ホテルの宿泊料金が落ち着いた理由は3つあります。一つはホテルが増設されたこと。二つめは、数千人規模が乗船できる大型クルーズ船での訪日が人気があること。特に中国から九州の港にやって来るケースが多く見られます。三つめは、旅館業の認可を受けていない「闇民泊」が増えていることです。こちらも、中国人の利用者が多いと言われています。
 一部の報道によると、闇民泊の宿泊料金はだいたい1室1万円。ただし、同じ部屋に5人ほど宿泊できますから、1人当たり2000円ですみます。
 闇民泊は特に大阪で増えていると聞きます。闇民泊ビジネスをする中国人は、古いオフィスビルを一棟買いして民泊に使っているそうです。マンションの一室を民泊に使うと近隣から苦情が出るからですね。
 もちろん闇民泊は違法です。しかし、政府も長い間、見て見ぬ振りをしてきたのではないでしょうか。都市部のビジネスホテルで1泊3万などの水準が続けば、企業やビジネスで出張する人の間で「予約が取りにくい。出張したくてもできない」との不満が高まりますからね。さらに、日本人観光客からも「ホテルの料金が高すぎて旅行ができない」との苦情が出るようになりました。自民党政権にとって、見過ごせない話となったわけです。
 厚生労働省と観光庁は、今後、闇民泊の取り締まりを強化していく方針ですが、今しばらくは闇民泊が横行するのではないかと思います。
中国の外貨準備の減少が「爆買い」減少に影響
 2016年は、中国人観光客による「爆買い」の勢いが衰える年になりました。これは、高額品の売り上げを示す「全国百貨店売上高」の推移を見ると分かります。16年は、2月以外すべて前年比マイナスが続いていますね。

出所:日本百貨店協会
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/011000037/013100005/h1.jpg

 2月だけプラスなのはなぜでしょうか。この質問をすると、よく「春節だから」という答えが返ってきます。残念ながら違います。正解は「うるう年」の影響です。
 うるう年によって1日分の売り上げが押し上げられているのです。その幅は、単純計算で約3.6%。これを差し引けば、2月はマイナス3.4%となり、やはり前年割れのペースなのです。
 全国百貨店売上高の値が下がり続けている理由は、先にも述べたように「爆買い」が縮小したからです。では、なぜ爆買いは終わってしまったのでしょう。
 中国経済が減速したことが原因と考える読者の方がおられるかもしれません。確かにそれもありますが、もっと深いところの理由は、中国の外貨準備高が減ってしまったことです。
 中国の外貨準備は、2014年6月に3兆9900億ドルでピークに達し、もう少しで4兆ドルのところまで増えました。それが16年12月末時点には3兆105ドルまで減少しています。2年半でおよそ1兆ドルも減り、3兆ドルぎりぎりのところまで下がってしまったのです(ちなみに日本の外貨準備高は約1兆2000億ドルです)
 中国企業は、好景気だった2000年代、輸出をどんどん増やして急成長しました。輸出をすると、中国企業は代金をドルなど外貨で受け取ります。外貨のままでは社員に給料を支払えませんから、中国企業はドルなどを市場で売って人民元を買います。すると、人民元はどんどん高くなってしまい、輸出に悪影響が出ますよね。
 そこで、中国の中央銀行にあたる中国人民銀行が、ドルを中心に外貨を買い支えしたのです。それが溜まりにたまって4兆ドルまで膨らみ、中国は世界1位の外貨準備を保有する国になりました。
 ところがその後、中国経済のトレンドが変わります。2008年9月に起こったリーマン・ショック直後、中国では4兆元(当時のレートで約56兆円)もの公共投資を実施。そのお陰で、当時は10%近い成長を実現しました。

出所:中国政府
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/011000037/013100005/h2.jpg

 しかし、同時に副作用も生じたのです。鉄鋼やセメントなどの供給が過剰となり、人件費も上昇。経済成長は鈍化していきました。実質GDP成長率は12年には8%を割り込み、16年には6.7%にまで低下しました。これを受けて、今度は人民元が売られ始めたのです。
 人民元が安くなりすぎるのを防ぐため、中国政府は今度は外貨準備を売ることで人民元を買い支えました。これであっという間に外貨準備1兆ドルを使ってしまったわけです。
 急速に外貨準備が減少したことで、中国政府は「外貨の流出を抑えたい」と考えるようになりました。そして、人民元の防衛に動き出したのです。
 例えば、輸入関税の税率を引き上げました。16年4月から、高級時計の関税率を30%から60%に、酒・化粧品などの税率も50%から60%に引き上げたのです。
 また、16年1月から銀聯カードを使った海外での現金引き出し限度額を年間10万元(約160万円)に制限しました。日本での消費がますます減るのではないかとの見方が浮上しています。これ以外の為替に関する規制も強化傾向です。
 こうした経緯で、中国人観光客は日本で高額品を買わなくなりました。百貨店の方から聞いた話によると、やはり高級時計は売れなくなってしまったそうです。その一方で、売れているのはドラッグや化粧品、小型の魔法瓶。中国人はお茶をたくさん飲みますから、安価で高品質な携帯用の魔法瓶の需要が伸びているのです。リピートで日本に来る人も増え、足りなくなった日用品でなどを買っていく人たちも増えています。
 彼らの消費は、高額品から比較的安価な消耗品へ移っていると言えます。また「モノ消費」から、温泉やイベントなどを楽しむ「コト消費」へトレンドが変わっていることも指摘されています。このことは、観光地などにはプラスに働きますね。
IRをつくっても高収益は期待できない
 爆買いが終わったもう一つの理由は、人民元が安くなってしまったことです。2015年には1元=20円ほどの水準で推移していたのが、16年に入って元安が進み、同年夏には1元=15円程度まで下落しました。1月28日現在、1円=16円前後の水準です。日本で買い物をするメリットが小さくなってしまったわけです。
 人民元が高かった15年は特に、日本製品を転売目的で購入する中国人が数多くいました。転売すると即座に売れ、利益率も高く儲かったからです。しかし、元安が進むにつれ利益は減り、これを受けて転売目的の購入者が減少しました。これも爆買いが収束した一因と思われます。
 以上の理由から、中国人観光客の数自体は大きく増えているものの、爆買いのトレンドは変わりつつあるのです。
 以上の点を考えると、カジノを含む統合型リゾート「IR」を日本で開業しても、期待しているほどの利益は得られない可能性があります。マカオのカジノの売り上げを調べたところ、ピーク時の2013年にはマカオ全体で年間5兆5000億円ありました。これが16年には同3兆2700億円まで落ちています。収益は激減しているのです。
 中国は習近平国家主席のもとで腐敗撲滅運動を進めており、公務員にお金が流れなくなりました。これがカジノが減収に陥った一因と思われます。ただ、それに加え、景気の長期的減速や個人による外貨持ち出しに対して中国政府の姿勢が厳しくなっていることも大きな原因です。
 たった数年の間に、中国人観光客の動きや中国の外貨事情が大きく変わってしまいました。中国は確かに豊かになり、富裕層のみならず中間所得層も増えました。しかし、彼らは日本を訪れはするものの、高額品は買わなくなってしまったということです。
 爆買いに期待していた百貨店の業績は軒並み落ち込んでいます。大丸と松坂屋を運営するJ・フロントリテイリング、高島屋、そごう・西武など大手百貨店の3〜11月期決算は、いずれも減収減益(営業利益ベース)となりました。免税店大手のラオックスも16年1〜6月期は売上高が前年同期比23%減の350億円、営業利益も同91%減の4億5400万円となり、大幅な落ち込みを見せています。
 爆買いに依存して成長できると思った業種は、戦略変更を余儀なくされているのではないでしょうか。中国の外貨準備などの動向を考えれば、今後もこのトレンドは続くと思われます。(つづく)


このコラムについて
小宮一慶が読み解く経済の数字・企業の数字
 2020年東京五輪に向けて日本経済は回復するのか? 日銀の金融緩和はなぜ効果を出せないのか? トランプ米大統領が就任した後、世界経済はどこに向かうのか? 英国の離脱は欧州経済は何をもたらすのか? 中国経済の減速が日本に与える影響は?
 不確定要素が多く先行きが読みにくい今、確かな手がかりとなるのは「数字」です。経済指標を継続的に見ると、日本・世界経済の動きをつかむヒントが得られる。
 企業の動きも同様。決算書の数字から、安全性、収益性、将来性を推し量ることができる。
本コラムでは、経営コンサルタントの小宮一慶氏が、「経済の数字」と「会社の数字」の読み解き方をやさしく解説する。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/011000037/013100005/


 

”異次元”トランプ流、中国にとって吉か凶か

中国新聞趣聞〜チャイナ・ゴシップス

「一帯一路」に期待、「一つの中国放棄」が火種だが…
2017年2月1日(水)
福島 香織

矢継ぎ早の大統領令で世界を右往左往させるトランプ新大統領。中国には吉か凶か(写真:代表撮影/UPI/アフロ)
 日本の場合、選挙時の公約というのは、たいてい守られないものなのだが、米トランプ政権は、ものすごい勢いで公約を履行している。政権スタートから、わずか20日で、14本もの大統領令に署名。「まさか本当にやるとは思っていなかった」と思われていた、メキシコ国境の壁建設はじめ、TPP離脱、中絶支援のNGOへの資金供給停止などを指示する大統領令が次々と出された。中東・北アフリカ7カ国出身者の入国を一時停止する大統領令では、各空港で大混乱を引き起こし、世界中が右往左往している。

 この様子を慎重に見守っているのが中国だ。トランプ流の矛先のいくつかが中国に向かってくるのは必至。その一方で、米国の世論が分裂し、米国が世界のリベラル派から批判されるようなこの状況は、中国にとってチャンスという見方もある。トランプのこの“異次元の手法”が中国にとって凶と出るのか、吉と出るのか、ちょっと状況を整理しておこう。

在米華人はトランプを支持したが…

 まず普通の中国人たちは、このトランプ流に、どのような影響を受けるのだろうか。環球時報が、専門家にインタビューしていたので概要を引用してみる。

 まず、ここ数年の間に急増していた中国からの合法移民が一定の影響を受けるとされている。H1−Bビザを受けた中国人のほか、グリーンカード所有者で米国への納税記録がない人間がグリーンカードを取り消される懸念が持ち上がっている。

 また、オバマ政権時代に、米中間の旅行者は10年マルチビザ制度が実施され、中国人観光客や留学生が急増し、在米華人の数も増加していた。中には米国で不法就労している者もあった。こうした不法就労者に対する取り締まりは強化され、ビザ発行審査がさらに厳格になり、留学生や観光客の米国滞在期限も厳格化されるのではないかと見られている。

 トランプの性格上、在米華人に対する政策が厳しくなり、華人社会に対する差別が引き起こされる可能性もある。特に、米国籍取得目的で米国に行って子供を出産した“出産ツアー”によって、国籍を得た中国人の子供は、法的にはグレーゾーンに入り、すでに米国の社会問題になっている。一部華人は、こうして取得した米国籍の子供の世話を理由に、自分の家を売り払って米国に資産移転して移住し、米国政府からの社会保障手当を得て生活している人たちもいるが、こうした人たちが追い返される政策転換が起きるかもしれない。

 さらに、投資移民にとっても、投資額が引き上げられる可能性がある。米国の移民に対する政策は目下、支離滅裂になってきており、中国人とてその混乱に巻き込まれることは避けられない。在米華人社会は、選挙のときはおおむねトランプを応援してきたわけだが、結果としては、華人社会にとってあまりありがたくない現象が引き起こされつつあるわけだ。

 中国企業としては、どのような影響を受けるだろう。一番気になるのは、いずれ実施されるであろう中国製品に対する関税45%への引き上げである。

関税45%、乗り切れると強気だが…

 少なくとも対米輸出が業務の大口を占めている、中国アパレル業界、家具業界、皮革産業、電子産業はもろに打撃を受けることになる。これら産業の利益率は全部45%以下なので、45%の関税をかけられたら、利益を生まない。実質全面的に対米輸出を停止せざるを得ない。これにより中国家具産業は生産規模が15%縮小せざるを得ないという試算もある。アパレル、皮革、電子産業も少なくとも5%の生産規模縮小が予想されている。

 そうなると、大手輸出代理企業も打撃を受けるわけで、例えば広州発の衣料品・おもちゃ・旅行・スポーツ雑貨などの輸出を手掛ける国際輸出企業・香港李豊集団の米国向け業務は売り上げの61.9%を占めているし、香港に本部を置き、レジャー、ファッション、靴ブランドを世界展開している九興ホールディングスも、その収入の49.7%を米国から得ている。これら企業は存亡の危機に直面することになる。

 ただ、中国全体としては、対米輸出が全輸出に占める割合は18%程度で、中国の通商官僚らは「短期間ならば耐えられる」という楽観的な見方を示す意見の方が多い。

 元国家対外経済貿易部副部長の龍永図が先日、フェニックステレビ主催のシンポジウムで、「中小企業はトランプの中国製品に対する高関税政策を恐れる必要はまったくない」と発言していた。その根拠は、トランプを当選させた有権者は中低所得者であり、最大の利益享受者は米国の中低所得層であり、中国製の低価格商品はその中低所得者に利益をもたらしてきたのだから、最終的にはトランプは中国製品を排除できない、という理屈だ。

 さらに、中国は米国にとって最大の農産品輸出国であり、もし、中国が対抗策として米国の農産品に関税を20%かければ、米国農業の打撃は、中国製品排除によって生まれる数十万の雇用よりも大きいかもしれない。だからトランプは最終的に、中国製品排除政策はとれない、という。

 龍永図は昨年9月にトランプとの面会を果たしており、その時の印象ではトランプの対外貿易についての理解は一知半解であり、もし、トランプが米中貿易の全体を正しく理解すれば、いったん45%関税を実施しても、すぐに調整すると考えているわけだ。あるいは、中国側も米国農産物に対する高関税カードをちらつかせて、トランプを説得する自信があるようだ。龍永図は、トランプがいずれ正気になって、中国製品の高関税が自国の経済や国民の福利にとってもマイナス影響の方が大きい、と気づくはず、という予測でものを言っているわけだが、それはひょっとすると希望的観測にすぎるかもしれない。

 ただ、中国製品高関税の部分を除くと、トランプの経済政策は、中国がほくそ笑んでいる部分もありそうだ。まずは、TPP離脱宣言。これは疑いなく中国にとって朗報だ。TPP構成国12カ国のGDPは全世界の40%を占め、このメンバー間で低関税、あるいは無関税で取り引きされてしまえば、非TPPメンバーの中国が受ける打撃は、米国から45%関税をかけられるどころの話ではなかった。しかもTPPが事実上ダメになったことで、中国主導でASEAN地域全体の経済パートナーシップ関係を形成するRCEP(東アジア地域包括的経済連携)に断然注目が集まるようになってきた。

「中国こそ指導者」とうそぶくが…

 さきのダボス会議で習近平が中国国家主席としてデビューした際の開幕式での演説「ともに時代の責任を負い、ともにグローバルな発展を促進していこう」では、中国として、初めて自由世界のリーダーとしての存在感を打ち出してきた。中国がグローバル経済のリーダーであり最大の庇護者で貢献者であると訴え、保護主義に反対の立場を強調し、世界経済のキーマン、救世主であることをアピールした。

 「今は最良の時代であり、最悪の時代である」というディケンズの言葉を引用して展開された演説では、「これぞ我々がこの時代の指導者として負うべき責任であり、各国人民が我々に期待するところだ」とうそぶいた。

 冷静に考えてみると、中国はむしろ、これまで徹底した保護主義で、各国からWTOにダンピングなどでさんざん提訴されてきた。高級輸入品に高関税をかけ、日系企業などの外資国内製造業には17%の消費税をかけて、国内企業を守ってきた結果、国内には競争力のないゾンビ企業があふれかえっている。中国がグローバル経済の最大の受益者であることは確かだろうが、中国自身は真の意味でのグローバル経済推進者ではない。

 トランプ政権のドラゴン・スレイヤー(対中強硬派)筆頭のピーター・ナヴァロ(米国家通商会議代表)らが、中国を批判するのは、グローバル経済を批判しているのではなく、フェアな市場競争をせずに環境と人権を犠牲にして不当に安価な商品を世界にばらまいているからだ。中国はいまだ市場経済国として認定されていない。

 しかしながら、このダボス会議では、EUの元首があまり参加していなかったこと、そしてトランプの登場があまりに国際社会にとってショックだったことも手伝って、習近平にスポットライトが当たった。

 BBCなどは、事前から、習近平がダボス会議のスターになると予想しており、習近平がわざわざダボス会議に出席した理由として、「自由貿易の優勢を称賛し、世界の最も友好的な貿易パートナーであることをアピールするため。この場で、中国のパブリックディプロマシーの一環として、世界を説得し、中国の台頭が人々の利益になると訴えるのが狙い」と伝えていたが、まさに、その通りとなった。

 ダボス会議のスポークスマンは、環球時報に対して「習近平主席が世界経済とグローバル化において、世界のカギとなる問題に影響を与え、人類の幸福と発展に対して提案を出してくれることを期待する」などとたぶんにリップサービスも入ったコメントをしていたが、トランプの非常識ぶり、無茶ぶりのおかげで、習近平がなんか、真っ当なことを言っているような錯覚に陥りやすくなっているのは確かだ。

「一帯一路」のてこ入れ、手応えは…

 トランプがTPPを離脱し、保護主義をとり、国内就業と経済成長にのみ注意力を払うタイミングで、中国としてもう一つ期待することは「一帯一路」戦略のてこ入れである。現代版シルクロード構想ともいわれるこの戦略は、陸のシルクロードと海のシルクロードの沿線国である中央アジア、東南アジアにおける経済一体化構想だが、昨年11月に、李克強がニューヨークを訪問した際に、キッシンジャーを含むトランプ政権のブレーンや金融関係者らと座談会をもって、「一帯一路」について、かなり詳細に説明したという。

 このとき、中国側は、トランプ政権やニューヨークの金融街が「一帯一路」に関心をもっているという手応えを得ていたという。中国としては、こういったいきさつを踏まえて、トランプはビジネスマンであり、経済面では交渉できると踏んでいたからこそ、選挙前には、トランプを影ながら応援していた。

 とすると、中国EC最大手企業のアリババのCEOであるジャック・マー(馬雲)が、トランプと面会してその席で米国に100万人の雇用機会を約束したことなども、中国政府の意向と全く無関係というわけでもないだろうし、春節にあわせて、中国企業100社が合同でトランプ大統領宛ての新年グリーティングカード式広告をタイムズスクエアに掲げるなどのアクションも、企業の自発的行動というよりは、中国の対トランプ攻略の一環かもしれない。トランプの移民政策はシリコンバレーのIT企業らからかなり反感を買っており、中国IT企業にとっては米国進出のチャンスという見込みも当然ある。

念願の「G2」も、「一つの中国」放棄なら…

 中国にとっての最大の懸念は対米貿易摩擦の問題よりも、むしろ「一つの中国」原則放棄などの台湾政策の変更が今度どう展開されるかということの方だろう。

 仮に「一つの中国」原則を放棄されてしまうと、中国共産党の執政党としてのメンツが立たないので、切羽詰まった中国側が、例えば台湾の太平島を争奪作戦とか、ベトナムが領有権を主張する南シナ海の島にちょっかいを出すとか、尖閣諸島に上陸するとか、なんらかの軍事アクションをとる可能性は当然考えられる。そのときに、トランプ政権がどう出るかが、中国の命運を左右することになるやもしれない。

 総じて言えば、トランプ流の無茶ぶりは、中国にとって吉にも凶にも転び得る。トランプが差別的で人権無視の言動をすれば、中国の差別や人権問題のネガティブイメージは何となく薄められてしまうし、保護主義的になれば、もともと保護主義だった中国が「なんかグローバルな印象」になる。だが、トランプ政権が本気で中国共産党体制を潰しに来る可能性もあるので、中国としても、先の見通しが立ちにくい分、トランプの言動に振り回されている感がある。

 一つ言えるのは、トランプ大統領でなければ、良くも悪くも中国がここまで米国の対立国として世界からクローズアップされなかった。かつて中国が熱望したG2時代がまがりなりにも実現したのだから、やっぱり中国はうれしいんじゃないかな、と私は思っているのだが。

【新刊】中国が抱えるアキレス腱に迫る
『赤い帝国・中国が滅びる日』

 「赤い帝国・中国」は今、南シナ海の軍事拠点化を着々と進め、人民元を国際通貨入りさせることに成功した。さらに文化面でも習近平政権の庇護を受けた万達集団の映画文化産業買収戦略はハリウッドを乗っ取る勢いだ。だが、一方で赤い帝国にもいくつものアキレス腱、リスクが存在する。党内部の権力闘争、暗殺、クーデターの可能性、経済崩壊、大衆の不満…。こうしたリスクは、日本を含む国際社会にも大いなるリスクである。そして、その現実を知ることは、日本の取るべき道を知ることにつながる。
KKベストセラーズ刊/2016年10月26日発行

このコラムについて

中国新聞趣聞〜チャイナ・ゴシップス
 新聞とは新しい話、ニュース。趣聞とは、中国語で興味深い話、噂話といった意味。
 中国において公式の新聞メディアが流す情報は「新聞」だが、中国の公式メディアとは宣伝機関であり、その第一の目的は党の宣伝だ。当局の都合の良いように編集されたり、美化されていたりしていることもある。そこで人々は口コミ情報、つまり知人から聞いた興味深い「趣聞」も重視する。
 特に北京のように古く歴史ある政治の街においては、その知人がしばしば中南海に出入りできるほどの人物であったり、軍関係者であったり、ということもあるので、根も葉もない話ばかりではない。時に公式メディアの流す新聞よりも早く正確であることも。特に昨今はインターネットのおかげでこの趣聞の伝播力はばかにできなくなった。新聞趣聞の両面から中国の事象を読み解いてゆくニュースコラム。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/218009/013000086


 


オバマ政権よりも親日的なトランプ政権

財部誠一の「ビジネス立体思考」

暴言・暴挙のトランプ大統領の意外な一面
2017年2月1日(水)
財部 誠一
オバマ大統領は親日ではなかった

 「トランプ政権で日米関係は格段に良くなる」──。
 1月28日、安倍首相とトランプ大統領との電話会談直後、この場に同席した政権幹部は日米関係の先行きに確かな手応えを感じ、高揚感すら滲ませていた。その背景には、安倍政権発足直後(2013年1月)にワシントンで行われたオバマ大統領との日米首脳会談のトラウマがあるからだ。

 安倍政権幹部は、以下のように語る。
 「今だからこそ言えるがオバマ大統領の冷遇ぶりはひどかった。日本の総理大臣が米国まで出向いたというのに、会談時間わずか45分というのは異例の冷遇です。それだけ日本を見下していた。結局、オバマさんは親中だった。中国について日米が本音で語りあうことは最後までなかった」

 演説上手で理想主義を語り続けたオバマ大統領だが、対日姿勢には甚だ疑問が残るという。対照的に暴言・暴挙のトランプ大統領はマスコミでは絶対に報じられない意外な素顔を見せながら、日米関係重視の姿勢を見せている。


電話で会談をするトランプ米大統領(写真:ロイター/アフロ)
11月の電話会談の時から、安倍総理に配慮

 そもそも安倍首相とトランプ大統領が「会談」をしたのは、1月28日の電話会談で3度目だ。1度目はトランプ氏が大統領選を制した直後、昨年11月の電話会談。2度目は12月、ニューヨークのトランプタワーで行われた直接会談だ。

 「11月の電話会談の時から安倍総理に配慮があり、驚くほど謙虚な態度でした。日米関係が大事だ、ぜひ一緒にやっていきましょうという感じだった。大統領になることへの若干の不安ものぞかせていた。その後のニューヨークでの首脳会談もすごく良い雰囲気で1時間半やった」

 そうは言っても、それらはあくまでも大統領就任前の話である。

 米国大統領に就任した後のトランプ氏が、どんな姿勢で日本と向き合ってくるのか。電話会談とはいえ、1月28日にトランプ大統領が何を語ってくるのか、この政権幹部も身構えていたという。

 「大統領就任前とまったく変わらなかった。TPP(環太平洋経済連携協定)や日本の自動車輸出など個別の話は一切なく、とにかく安全保障も含め、日米関係最重視の姿勢を強調していた」

 首脳同士の初めての電話会談で個別具体的な注文をつけなかったのは、儀礼上当然のことように思えるが、そうではない。ドイツのメルケル首相の電話会談では、トランプ大統領は貿易赤字を減らせと注文をつけたという。

トランプ大統領は、「予測不能」ではない

 メディアでは盛んに「予測不能」と形容されるトランプ大統領だが、それは明らかに違う。

 大統領令を連発して多くの人の怒りや絶望の原因を作っているとはいえ、それらはすべて公約通りだ。選挙キャンペーンで語り、大統領就任演説で明言したことをやっているにすぎない。

 「予測不能」なのではなく、公約を本当に実行することをメディアが予測できなっただけだ。個別の政策について賛否は当然あるだろうが、トランプ政権は言葉通りの“有言実行”なのだ。その意味では驚くほど一貫性がある。

オバマ政権の時にはありえなかったこと

 日米関係についても、話をもどそう。

 国家安全保障担当の大統領補佐官、マイケル・フリン氏は「日米関係重視がトランプ大統領の基本姿勢だ」と大統領選直後から日本側に伝えてきたという。

 「フリン大統領補佐官のカウンターパートである、谷内正太郎国家安全保障局長に『365日24時間、いつでも連絡をください』と、携帯電話番号とメールアドレスを連絡してきた。オバマ政権の時にはありえなかった。様変わりです」(安倍政権幹部)

 個別具体的な交渉の場面では、日米間で激しく利害が対立することもあるだろうが、少なくとも現時点において、安倍政権内には期待先行ムードが広がっている。期待は現実となるか。2月10日にワシントンで行われる日米首脳会談が注目される。


このコラムについて

財部誠一の「ビジネス立体思考」
経済ジャーナリストとして活躍する財部誠一氏が、日本経済とビジネスを斬る。ビジネスシーンで活躍する読者の皆さんへ、立体的で複合的な見方を提供します。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/122700034/013000002  

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
1. 2017年2月02日 19:15:53 : 9jyOzTBXZs : Uc_G4wHSHso[94]
悲愴感 込めて叫ぼう 「消費せよ」

  拍手はせず、拍手一覧を見る

フォローアップ:


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法

▲上へ      ★阿修羅♪ > 経世済民118掲示板 次へ  前へ

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
 
▲上へ       
★阿修羅♪  
経世済民118掲示板  
次へ