★阿修羅♪ > 経世済民118 > 573.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
米国を蝕む「縁故資本主義」 トランプのドル安志向、世界最大の債務国に不都合 ロシア、リセッション脱却に 10年前トロい奴
http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/573.html
投稿者 軽毛 日時 2017 年 2 月 02 日 05:07:16: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

コラム:
米国を蝕む「縁故資本主義」

河野龍太郎BNPパリバ証券 経済調査本部長
[東京 1日] - 懸念した通り、トランプ新大統領は1月20日の就任演説でも、保護主義的なスタンスを修正しなかった。なんと「保護こそが素晴らしい繁栄と強さにつながる」と自由貿易を否定し、今後は「米国製品を買い、米国人を雇う」という2つを基本ルールにするという。

残念ながら、こうした政策は主に2つの経路で、米国の潜在成長率を抑制し、米国人を貧しくする。

まず、米国人が割高な商品の購入を迫られるようになる。2つ目は、あまり認識されていないが、為政者の方針に擦り寄る既存企業にばかり恩恵が施され、イノベーションの可能性を秘めた新規参入者の出現が抑制される。

トランプ新大統領はプロ(親)ビジネスであって、成長を促すはずと考えている人もいるが、それはプロビジネス政策が保護主義や縁故主義の穏当な表現であることに気が付いていないだけである。良かれと思って選択されるプロビジネス政策は、多くの場合、反・成長戦略となる。これが今回のテーマである。

<200年経っても理解されない比較優位の法則>

まず、平均レベルで見て、世界最高水準の豊かな生活が米国で可能なのは、生産性の高さもさることながら、通商面において、多くの財・サービスの関税を低く抑え、多様で安価な商品が供給されているからだ。

メキシコや中国に国境税を課すのは明確な世界貿易機関(WTO)違反であり、現実には実施されないと考えるが、もし実施されれば、今ほど自由貿易が進み、完成品、中間投入財を問わず、さまざまなものが海外から輸入されている中で、小売業者は消費者にコストを全ては転嫁できず、相当なダメージを被る。

国境税が課せられないとしても、米政権からプレッシャーを受けるグローバル企業は、効率が悪くても、米国内での生産を少しでも増やそうと努力するだろうから、最適なサプライチェーン構造からかい離し、結局、割高な商品の供給が増えるだけとなる。ツケを払うのは、所得の限られる普通の人々だ。

「経済学および課税の原理」において、リカードが比較優位の法則を掲げ、重商主義は誤りであり、自由貿易を行うことで、各国の経済厚生が向上すると主張したのは、ちょうど今から200年前の1817年のことだ。自由貿易の利益を最も享受する国の1つである米国の新大統領が自由貿易を否定するとは何とも残念な話である。

ちなみに、比較優位の法則を机上の空論と見なす人が多いのは、リカードのモデルの中で、メリットを受ける集団とダメージを被る集団のことが記述されていないことも大きく影響している。産業間で移動可能な生産要素だけでなく、産業間で移動がなかなか生じない生産要素についても、リカードはモデルに組み込むべきだったのかもしれない(メリットを受ける資本家グループに属していたリカードはそのことが分かっていて、あえてモデルに取り込まなかった可能性がある)。

つまり人々が関心を持つのは、比較優位財の生産に投入される生産要素を持つ人がメリットを受け、比較劣位財の生産に投入される生産要素を持つ人がデメリットを被るという点であり、トランプ現象や英国の欧州連合(EU)離脱問題に即して言えば、自由貿易でメリットを受けていたのは高いスキルを持つ労働者であり、デメリットを被っていたのは低いスキルしか持たない労働者ということだ。

低いスキルしか持たない労働者がデメリットを被るのは、確かに貿易がきっかけではあるが、問題は、その失われた実質所得は海外に流れるのではなく、高いスキルを持つ労働者に流れることである。

もちろん、それが分かっていても、国内で勝者と敗者を明確にするのは社会的な分断を生むため、得策ではないという判断が政治的に働くのかもしれない。それゆえ、歴史的に、いずこでも国民が貧しくなったのは、外国人や外国企業が恩恵を受けているからだという主張がなされてきた(トランプ大統領の主張も同じだ)。

しかし、問題が国内の分配ということであれば、望まれる政策は明らかで、自由貿易の下で付加価値の生産を拡大した後、貿易によってメリットを受けた人からデメリットを受けた人に所得移転を行うということになる。閉鎖経済、あるいは関税を選択するより、一国全体の経済厚生を確実に改善することができる。

結局のところ、貿易問題の本質は、国内の所得分配の問題なのだ。なお、多くの実証分析によれば、高いスキルを持った労働者がメリットを得て、低いスキルしか持たない労働者がデメリットを被っているのは、貿易の影響ではなく、技術変化の影響の方が大きい、とされている。

実際、高スキル労働の多い先進国でも、低スキル労働の多い新興国でも、高スキル労働者がメリットを得ている。貿易が原因なら、新興国では低スキル労働者がより大きなメリットを受けるはずだ。我々はグローバリゼーションの結果というが、貿易の影響以上に、世界的に進む技術変化が高スキル労働者に有利なパターンになっていることの影響が大きい。歴史的には技術革新に否定的な左派ポピュリスト政治家も台頭したことはあるが、近年ではそれは観測されないし、トランプ大統領も問題視していない。

<法の支配が不可欠な理由>

さて、2つ目の論点であるイノベーションへの影響に移ろう。リカードが比較優位の法則を唱えた1817年頃は、英国を皮切りに、高い成長が西欧でスタートした時期である。英国の高い成長は、ベルギーやフランス、ドイツ、米国に波及していった。それは、大戦期の例外を除くと、1970年代初頭までの150年以上に及ぶ長い高成長の時代となったが、高成長が始まった理由の1つは、19世紀初頭に、法の支配の下で自由主義や個人主義が確立し、人々の創意工夫が促されるようになり、さまざまなビジネス分野で草の根イノベーションが広がったことだった。

自由な経済活動において、法の支配が不可欠であるのは、人々に予測可能なルールが提示されるためであり、いちいち為政者の顔色をうかがわなくても、ルールを守ってさえいれば、試行錯誤でビジネスを進め利益を追求できるからである。それがイノベーションの原動力となる。

しかし今や、社会のルールに沿った経済活動を行っているにもかかわらず、米国で生産を増やす企業には恩恵が施され、米国外での生産活動の拡大には罰則が下されるという、全く合理性を持たない政策を新政権は進めようとしている。

為政者の意向に沿った行動を取る企業経営者が称賛されるという風潮がこのまま強まれば一体、どうなるか。従来、どの企業でもエース級の人材は、イノベーション推進に投入されていたはずだが、新たな介入主義的、集産主義的環境においては、政権との近さが企業の浮沈に大きく影響してくる。エース級の人材は、政治担当ということになる。

つまり、重要な経営資源は、イノベーションではなく、レントシーキング(ロビーイング)に割り当てられる。もともと、規制業種でイノベーションが起こりづらいのも、そして腐敗が起こりやすく、時としてそれが企業の存続を危うくすることがあるのも、経営資源がレントシーキングに割かれるためだ。規制業種以外でもそうしたことになれば、産業の行く末は危うい。

また、一部の企業にだけ恩恵を施すのは、あまり認識されていないが、イノベーションの可能性を秘める新規参入者の足を大きく引っ張ることになる。どこの国でもそうだが、少なからぬ人が、プロビジネス政策を成長戦略と誤認している。もちろん、アンチビジネスよりはましだが、既存の企業をサポートするということは、新規参入のハードルを引き上げることに他ならず、成長の源泉であるイノベーションを阻害する。

必要なのは既存企業に恩恵を与えるプロビジネス政策ではなく、新規参入を促すプロマーケット政策なのである。プロビジネス政策は単に縁故主義、保護主義の穏当な表現にすぎず、成長戦略ではなく、反・成長戦略だ。クローニーキャピタリズム(縁故資本主義)が米国の成長トレンドを蝕むことになりはしないか。

<完全雇用にある日本には円高が望ましい>

トランプノミクスがプロビジネスであることを好感し、米国の株価は上昇を続けている。しかし、その原動力は、消費者と新規参入者の利益や経済成長の可能性を犠牲に、特定の企業、産業に施した恩恵にすぎない。株式市場は、単にレントシーキングにおける勝者を探しているにすぎない。

もちろん、新大統領の力技で議会を説得し、財政は期待した以上に膨らむのかもしれない。しかし、それとて公債発行を原資に、将来の所得を先食いするだけであるから、結局、自らの未来の可能性の先食いにすぎない。トランプノミクスの賞味期限は1年半、持って2年というのが、大統領選挙直後の筆者の認識だったが、政権がスタートした現在も、その評価を変える必要性はなさそうである。

今のところ想定した動きと異なっているのは、日本に対しても保護主義的な政策が検討され、それがドル円相場に影響していることだ。標的にされると思っていなかった日本の自動車業界がやり玉に挙げられ、著しくはないものの円高圧力も見られる。対日通商政策に関し、不確実性が広がると、リスクプレミアムが増し、その結果、円高圧力が生じて、日本の株価の上値も多少だが抑えられた。

とはいえ、米経済は完全雇用にあり、賃金上昇率の加速が始まる中で、トランプ政権が大規模財政に踏み切り、一方で 米連邦準備理事会(FRB)の継続利上げが予想されるため、基本的には今後もドル高傾向が続くと筆者は考えている。日本サイドを見ても、日銀が長期金利をゼロ%程度に誘導するため、米国の金利上昇圧力が強まれば、金利差拡大につながり、そのことも円安圧力をもたらす。

規範的な視点に立てば、米国と同様、完全雇用にある日本にとっては、通貨が減価するより、通貨が増価することの方が望ましい。円安で日本の総需要が刺激されても、供給制約で、経済全体のパイはそれほど大きくはならない。この場合、望ましいのは、通貨高で輸入増加を促し、より高い消費水準を可能とすることである。それが経済厚生を高めるための正しい選択だ。

確かに、円安が進めば、輸出セクターには恩恵が及ぶが、それは、完全雇用にある中で、家計部門あるいは輸入部門の所得を輸出部門に無理に移転させているだけである。また、円安で輸出が増えるとしても、本来、非製造業部門に向かうべき雇用が、製造業に奪い取られることで可能となる。日本の政策当局が取っていることは、意図は異なるとしても、結果的にリカードが批判した重商主義政策とあまり変わらない。

完全雇用にあるだけでなく、現在の実質実効円レートは相当に低い水準にあるため、これが多少修正され円高が進めば、一国全体で経済厚生はむしろ改善する。大幅な円高でなければ、ダメージは大きいとは言えない。

実質実効円レートが相当に低い水準にあるにもかかわらず、長期金利をゼロ%程度に抑え、円安に誘導しているように見えるから、米国の競争相手がホワイトハウスに働きかけ、本来、批判されるべき点の少ないはずの日本の自動車セクターがやり玉に挙げられているのかもしれない。今後、通商交渉の中で、米国政府が日本の金融政策を問題視し始めることはないだろうか。米国の自動車業界にとって、軽四輪問題より、円安問題で攻める方が、得られるメリットは大きいように思われる。

リスクプレミアムが高じる際、巨額の公的債務を抱える日本では、円安が進まないことに、むしろ感謝すべきかもしれない。現在は、日銀の極端な金融緩和で長期金利が相当に低く抑えられているから、利払い費は抑制され、公的債務のさらなる膨張も抑えられている。もし、リスクプレミアムの上昇で円高ではなく、円安が進み始めると、極めて厄介な状況に陥る。

円安によるインフレ上昇を避けようと金利を引き上げれば、利払い費が膨らみ、公的債務が一段と膨らみ、さらにリスクプレミアムが高まるという悪循環に陥る。一方で、金利を低いままに据え置けば、実質金利の低下で、円安とインフレ加速が進む。リスクプレミアムの上昇が円高につながっている間に、財政健全化に着手しなければ、本当に手の付けられない状況に陥る。

*河野龍太郎氏は、BNPパリバ証券の経済調査本部長・チーフエコノミスト。横浜国立大学経済学部卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)に入行し、大和投資顧問(現大和住銀投信投資顧問)や第一生命経済研究所を経て、2000年より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)
 

ロイターをフォローする
おすすめ記事


視点:トランプ円安は幻想、進む「米国の日本化」=青木大樹氏 2017年 01月 23日
コラム:「トランプ時代」の勝ち組と負け組、日本はどちらか 2016年 12月 05日
コラム:トランプ氏のトヨタ批判ツイート、神通力に限界 2017年 01月 09日
http://jp.reuters.com/article/column-ryutaro-kono-idJPKBN15G34V?sp=true


 

 


焦点:トランプ政権のドル安志向、世界最大の債務国に不都合も

[東京 1日 ロイター] - トランプ米政権は、通貨安批判の矛先を中国から日本、ドイツへと広げ始めた。米国内の製造業を保護するのが目的とみられるが、通商政策と表裏一体となったドル安政策は米国にとって不都合な事態をもたらしかねない。世界最大の債務国である米国は、世界のマネーを引き寄せることで赤字をファイナンスしなければならないためだ。

<米要人発言にドル急落>

トランプ大統領は1月31日、製薬会社幹部との会合で「中国が現在行っていること、日本がこれまで何年も行ってきたことをみてみれば、彼らがマネーマーケットや通貨安を手玉に取っているのを、我々は愚か者のように座して眺めているだけだ」と述べた。

また、大統領が新設した「国家通商会議」の責任者、ピーター・ナバロ氏は同日、ドイツは「過小評価が著しいユーロ」を利用することで、米国や欧州連合(EU)の貿易相手国よりも有利な立場を得ている、との見解を示した。

市場は、これらをドル高けん制発言と受け止め、31日の海外市場で、ドル/円JPY=は急落。一時、約1.5%下げ昨年11月30日以来の安値となる112.07円を付けた。ユーロ/ドルEUR=も1%強上昇し1.0811ドルと、昨年12月8日以来の高値となる場面があった。

<他国の金融政策に言及>

今回トランプ大統領の発言で注目されたのは、他国の金融政策に言及したと受け止められる内容があったことだ。

大統領は、米企業の競争力が弱いのは「他国が通貨や通貨供給量、通貨安で有利な立場を確保してきたという事実と大いに関係している」と指摘。「米国はひどい状況におとしめられてきた」と、通貨安の原因として他国の金融政策にも矛先を向け始めた。

浅川雅嗣財務官は1日、「日本の金融政策はデフレ脱却という国内政策目的でやっているのであって、為替を念頭に置いたものではない。為替介入も最近はやっていない」と述べ、トランプ大統領の批判を退けた。

しかし為替市場では、2013年4月に日銀が導入した量的・質的金融緩和(QQE)から始まり、昨年9月の長期金利のゼロ%誘導まで続く超金融緩和政策が、ドル高/円安の基本的な背景になってきたとの見方は多い。

「そもそも、デフレで需要がないことが分かっている状況下での異次元緩和は、緩和本来の目的であるカネ回りを良くすることではなく、間接・直接的に円安が生まれ、輸入物価の上昇と株高という三方良しを追求する政策だった、とトランプ大統領が理解している可能性が出てきた」と三井住友銀行・チーフストラテジストの宇野大介氏は分析する。

これまでドル高による機会損失を黙って受け入れてきた米国が、その原因である金融緩和を止めるべきとの「直球」を投げてきた場合、日本は難しい対応を迫られるだろう、と同氏はみている。

ユーロの状況も似通っている。欧州中央銀行(ECB)が14年半ばに中銀預金金利を初めてマイナス圏に引き下げたことが、ユーロ安/ドル高の基本的な立て付けを造った。

<最終的な「ツケ」は米国に>

通貨政策と一体化した通商政策や拡張的な財政政策により、経常赤字が縮小する可能性もある。

しかし、それは経常赤字が財政赤字に置き変わっただけであり、ストックベースでも世界最大の対外債務残高(円換算で886.5兆円)を抱える米国が、その赤字ファイナンスを外資に依存する構造は変わらない。

米国は海外からの安定的な資本流入が必要で、日欧の金融緩和は国内の金利の低下を促し、相対的に米国証券の魅力を高めてきた。

日銀の中曽宏副総裁は、利上げを進める米国と、金融緩和を推進している日欧の金融政策の方向性の違いが「日欧の金融機関のドル建て金融資産への投資を促している」(20日の講演)との認識を示している。

米国際収支統計によれば、外国から米国への資本フローは13年第4・四半期に1759億ドルの流入超でピークアウトしたあと急激に縮小し、14年第4・四半期には79億ドルの流出超まで落ち込んだ。

しかし、日欧の金融緩和によるドル資産需要の「反射的効果」で急速に回復、16年第3・四半期には2200億ドルの流入超まで膨らんでいる。

この間、ドル指数.DXYは上昇。今年1月3日には103.82に上昇し、近年の最高値を付けている。米国資産に海外の資金が集まるからこそドルの需要が高まり、ドル高が生じるともいえる。

ただ「米経済はドル高に弱くなっている。米企業の海外売上比率が上昇しており、ドル高局面で収益が目減りしている」(日本総研・調査部長の山田久氏)とされ、ドル高への耐性が低下し、それが米国のドル安攻勢や金融緩和批判につながっている。

しかし、米国への資本流入が細る可能性は、金融という経路のみではない。

米国の保護貿易と相手国の報復措置により「モノの移動が滞るだろう。モノが滞れば、必然的に資金も滞るはず」(大手機関投資家)とみられ、モノと資金の総すくみとなった場合、最も大きなダメージを受けるのは、これまで自由なモノと資本の流れに大きな恩恵を受けてきた米国自身となりかねない。

(森佳子 編集:伊賀大記)

ロイターをフォローする
今、あなたにオススメ
コラム:米経済統計、トランプ政権下で「中国化」する懸念
カナダ乱射事件、容疑者の大学生訴追 トランプ氏など支持か
焦点:トランプ政権がEU戦略大転換、ドイツにも「口撃」開始
コラム:TPP撤退でトランプ大統領が語らなかったこと
視点:女性労働力と移民が日本経済の活力源に=ノーランド氏
http://jp.reuters.com/article/trump-dollar-idJPKBN15G3VE?sp=true


 


 
コラム:「トランプ相場」を乗り切るヒント 
James Saft

[30日 ロイター] - ドナルド・トランプ氏の登場により、ようやく投資家は、自分たちと同じくらい頻繁に間違いを犯す大統領を得た。米大統領の政策がこれほどまでに予測不能で、強い感情を呼び起こす力を持ったことは、恐らく史上初めてだろう。

国家としてはともかく、投資家にとって短期的により大きな危険をもたらす可能性があるのは、トランプ大統領が何をやるかではなく、投資家がそれにどのように反応するか、である。

敵を目の前にしたとする。トランプ大統領は、私たちとほぼ同じように行動する。過剰反応を起こし、本能に従い、自分自身の知識と能力をひどく過大評価してしまう。彼がヘッジファンドの経営者ならば、資産査定(デュー・デリジェンス)の最も基本的なプロセスでさえクリアできないだろう。

トランプ大統領は、最悪の投資家の多くと同じように行動している。だがここでのポイントは、彼に刺激されて大失敗をやらかさないようにすることなのだ。

トランプ大統領が何をするのか、経済や世界にどのような影響が生じるのか、ひいては、それが証券や資産価格にどのような影響をもたらすのか――私たちはそれを予測できない可能性が高い。そう考えると、トランプ政権の誕生は、愚かな投資行動に関する壮大な実験という様相を帯びつつある。

もちろん、いま分かっている限りにおいて、トランプ氏の政策が何の影響ももたらさないという意味ではない。現時点での筆者の考えでは、特に貿易に関する彼の発想は、インフレを進行させ、長期的な経済成長を阻害するだろう。株式などリスク資産にとっては、有害な組み合わせである。

しかしこれは、そうした見解に基づいて利益をあげることが可能である、という話ではない。トランプ氏を嫌悪する人にとっても彼を高く評価する人にとっても等しく言えることだが、危ういのは、投資家が「強い感情」を「妥当で実践可能な投資分析」と取り違えてしまうことなのだ。

「いま投資家のあいだでは、今後1年間の利回りや価格動向はトランプ大統領の動き次第、という気分が広がっている。だがこれはほぼ確実に間違っている。私たちは恐らく、世界各国の政策当局者を相手にするのと同じようなやり方でトランプ大統領にもアプローチするべきだ。つまり、雑音を気にしすぎることなく、実際の政策決定が行われるのに応じて、その方向性と規模を評価するということだ」

資産運用会社M&Gインベストメントのスティーブン・アンドリュー氏は、顧客への書簡でこのように書いている。

<政治的信念が判断を狂わせる>

確かに「雑音」はたくさん聞こえる。だが今のところ、投資家はトランプ大統領就任を、株式にポジティブ、国債にはネガティブな材料と考えているように見受けられる。S&P500指数はトランプ氏の当選以来9%上昇し、10年物米国債は価格下落により、利回りが4割以上アップして2.48%に達した。

「とはいえ、純粋に投資という視点から見れば、トランプ政権発足についてさらに分析を進めるとどういう結論に至るかは、あまり明確ではない。ただ、過度に『知識』を装った、早合点の意見が出てくるだけだ」と前出のM&Gインベストメントのアンドリュー氏は書いている。

国境税の導入がドル高を招くという想定でドル上昇に大きく賭けた投資家は不利な立場に追い込まれつつある。国境税を既定路線と見なして小売企業の惨状を予想した投資家も同様だ。

前回、政策をめぐる熱心な賛否が見られた頃、つまりグローバルな金融危機と銀行救済の時期に、たとえ非常に洗練された投資家であっても運用実績が振るわなかったというデータを見ると、現在の危険の一端がうかがわれる。

2016年に発表されたある学術研究では、ヘッジファンドの運用実績とそのマネジャーによる政治献金との関連を検証し、「民主党支持」「共和党支持」のファンドがどのような実績を上げたのか測定することを試みた。

それによれば、2008年12月から2009年9月まで、民主党支持のファンドマネジャーの運用実績は共和党支持のファンドマネジャーを月当たり72ベーシスポイント上回った。この研究における他の期間では類例を見ない、際立って大きな差である。

当時は、各市場における重要な時期だった。株式市場が下降局面を終え、オバマ政権による財政出動と銀行優遇政策を一因とするV字回復が始まった頃である。

この研究の執筆陣は、共和党系のファンドマネジャーの運用実績がふるわなかったのは、政治的な信念が投資判断に過剰な影響を与えたことによる部分があるのではないかと推論している。恐らく彼らは、数年前に「ブッシュ恐怖症」に罹患した人々と同様に「オバマ恐怖症」の症状に苦しんでいたのだろう。

今日と2008年、またオバマ氏とトランプ氏の違いはたくさんある。しかし、現在のわが国の大統領が強い感情を引き起こすこと、そして彼のポリシーミックスと政権運営スタイルが従来に比べてはるかに個性的であることは断言できよう。

そのことは、最終的にはリスク資産にとってマイナスに働くと筆者は推測している。しかし当面は、どちらの方向にせよ、大きな賭けに出ない方が賢明であろう。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

 
おすすめ記事


視点:トランプ円安は幻想、進む「米国の日本化」=青木大樹氏 2017年 01月 23日
コラム:トランプ氏のトヨタ批判ツイート、神通力に限界 2017年 01月 09日
焦点:トランプ時代の米中対立、想定される中国の報復シナリオ 2016年 12月 16日
http://jp.reuters.com/article/markets-saft-idJPKBN15G3CO?sp=true

 

 

ロシア経済リセッション脱却に近付く−予想ほど縮小せず
Olga Tanas
2017年2月1日 23:33 JST

2016年成長率はマイナス0.2%、予想はマイナス0.5%
今年は政府目標の0.6%成長を上回る可能性も

ロシアはここ20年で最長のリセッション(景気後退)からの脱却に近付いている。原油価格の安定を背景に鉱業が持ち直し、農業、製造業も安定しつつある。
  ロシア連邦統計局が1日発表した2016年の国内総生産(GDP)は前年比0.2%減となった。ブルームバーグがまとめたアナリスト15人の予想中央値は0.5%減だった。ロシア経済発展省の推計値は0.6%減だった。15年は2.8%減に改定された。
  INGグループのロシア担当エコノミスト、ドミトリー・ポレボイ氏(モスクワ在勤)は統計発表前、「とりわけ2016年初めの悲観的な見通しを考慮すると、経済動向は素晴らしい」とし、「内需縮小が和らいでおり、産業はやや成長している」と語った。
  
  シュワロフ第1副首相は先月のインタビューで、今年は「1−1.5%の成長を見込める。順調に行けば、2%も可能だろう」との見方を示していた。今年の政府GDP公式予想は0.6%増。
  
原題:Russia Nears End of Recession as GDP Shrinks Less Than Forecast(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-01/OKP7TE6K50XV01

 


10年前にトロい奴は、10年経ってもトロかった…

職場を生き抜け!

2017年2月2日(木)
吉田 典史

10年ぶりに連絡を寄こした「トロい奴」

 今回は、10年ぶりに接触をした男性との間に生じた問題を通じて、職場での生き方を考えます。

 私は毎年暮れに、数百人にメールを送ります。何らかの形で接点をもった人たちです。「1年間、お世話になりました」という意味を込めた挨拶です。昨年暮れに送信したのは、500人前後。返信があったのが、50人ほど。

 その中に、意外な男性がいたのです。10年前に、本をつくる仕事を一緒にした編集者です。その後の10年間は、一切、接点がありませんでした。男性は当時、編集者としての経験が10数年あったにも関わらず、その仕事ぶりは要領を得ませんでした。上司である部長が、私に言っていました。

 「あいつは、トロい奴でしょう?大学を卒業し、記者になろうとして、新聞社の試験に落ちた。そんな不満を時折、まき散らす。俺は、本当は新聞記者になることができた、と。

 みんなからは、“早く辞めて、新聞社へ行けよ”と陰で言われている。だけど、なかなか辞めない。あいつは足元を見失っている。編集者としてするべき、目の前の仕事ができない」

 この言葉だけで正確に判断することはできませんが、少なくとも、男性が仕事の要領を心得ていないことは間違いない、と私も思っていました。

 10年後の今年、10年ぶりに男性と仕事をしたのです。彼のメールの返信に「本のまとめが遅れています。助けてもらえませんか」と書かれてありました。気の毒に思い、年明け早々に仕事を請け負ったのです。

 10年前にトロかった奴は、10年経ってもトロいままでした。相変わらず、「新卒時に記者になることができた」とはるか前のことを話します。「周りにいる編集者とは自分は違うんだ」と言わんばかりです。10年経っても、仕事においては大きな進歩がなかったようです。やはり、要領を得ないのです。

縁を切ることの尊さ

 前回の記事(「キモイ奴の名刺は、シュレッダーにかけなさい!」)で取り上げたキモイ奴と、今回のトロい奴は似ています。新卒時に不本意な就職をします。周囲の編集者を否定し、自分を大きく見せるために嘘をつきまくります。

 ここで、考えたいことが2つあります。1つは、なぜ、私の前にキモイ奴やトロい奴が現れたのか。もう1つは、キモイ奴やトロい奴は今後、どう生きていくべきなのかです。

 キモイ奴やトロい奴が現れた理由でいえば、私がそのような人を引き寄せる何かを発していた可能性が高いはずです。本来、私と彼らはコンビを組んで仕事をする関係ではないのです。私のキャリアやその意味でのレベル、志向性と、この2人のそれらを比べると共通するものがないのです。

 それが何かのきっかけで、ドッキングをしたのです。トロい奴の立場でいえば、急場をしのぐために助けが欲しかった。そのときに私からメールが届いた。「渡りに船」と思ったのでしょう。私は彼が苦しんでいる姿を想像し、承諾してしまったのです。

 前回のキモイ奴でいえば、嘘をつきまくっていることを、早くから見抜いていたのです。しかし、彼の言動から劣等感を察し、哀れに思えることがあったのです。

 私の心に、この人たちを受け入れるスキがあったのでしょう。双方に、「利害打算」の思惑があったかもしれません。互いに心の奥深くでは、「この人は、自分の求めているタイプとは違う」と感じていたはずです。ホンネを隠し、「利害打算」や「10年ぶりに…」という偽善めいたもので仕事を始めるから、空しい結果になるのです。

 様々な事情があるにしろ、心が感じる思いは素直に受け入れるべきです。私は、彼らのことを、編集者として半人前とみています。この思いに素直に従って深く関わらないようにすることが、双方にとって大切なのです。彼らも「この男はうるさいし、過激だから、深入りをしたくない」と感じていたはずです。その思いに素直であるべきだったのでしょう。

 話をやや広げますが、大切なことなので書きます。ビジネスに限らず、男女の恋愛にしろ、結婚にしろ、別れが来るときがあります。そのとき、必要以上に落ち込むべきではないと私は考えています。

 私は、離婚する男女20〜30組ほどをこの10数年で取材し、出会いや結婚前の頃の話を聞いています。その8〜9割から、「利害打算」や「世間体」「損得」を強く意識し、結ばれたのだろうと感じました。互いに心の奥深くでは、「この人は違う」と思っていたように思えるのです。結婚をしたものの、しだいに「利害打算」や「世間体」「損得」が表面化します。それで、一段と関係がきしみます。

 離婚をしようと思うのは、「これ以上、前に進んではいけない」という、心の奥深くからのメッセージを素直に受け取ったことなのです。実は、すばらしい判断なのです。この仕切り直す力や断ち切る力がないと、大きな不幸が訪れます。世間では、縁結びが強調されますが、縁を切ることの尊さももっと見直されていいことではないでしょうか。

「欠けている」ことこそが、実はその人らしさ

 次に、キモイ奴やトロい奴は今後、どう生きていくべきなのかを考えてみます。彼らに共通しているのは、足元を見失っていることです。前回の記事(「キモイ奴の名刺は、シュレッダーにかけなさい!」)に登場するキモイ奴が、「全国紙では…」と盛んに語るのが、その1つの象徴です。

 彼らは、出版社に勤務する編集者です。不本意であろうとも、そこで仕事を覚え、一定の実績を残すべきでした。そんな不満を聞かされる周囲の編集者たちにも配慮をするべきでした。

 キモイ奴やトロい奴は、自分を高いところにおいているのでしょう。自尊心が高いのかもしれません。しかし、彼らには、新聞社の採用試験では合格できなかったという現実が突き付けられています。

 「第一志望に落ちた=不遇」なのでしょうか。第一志望の職種に就けなかったとはいえ、今の職場で編集者として働くのは、そんなに不幸なことなのでしょうか。私は逆に、恵まれた立場だと感じます。一定の収入を得て、結婚し、家族も養っています。このことは、すばらしいことではないでしょうか。家族を養うだけの収入を得ることができない人は、世の中にたくさんいます。

 今の状況から幸福を感じ取る力がない人は、自分が持ちあわせていないもの、欠けているものを必死に探し、得ようとします。それをつかむことができないと致命的と思い、克服しがたい劣等感を抱えます。

 「欠けている」ことこそが実はその人らしさであり、アイデンティティーなのです。私でいえば、小説家である宮本輝さんや三浦綾子さんのようになりたい、と30年以上前から思っています。ただ、残念ながら、そのような力がないのです。

 50年近く生きてきて、「欠けていること」が、私らしさだとようやく思えるようになりました。この心境になるのは、苦しいことです。「自分には、自分が期待したほどの力がない」という現実を受け入れる必要があるからです。

 この壁を乗り越えると、しだいに発想を変えます。宮本さんや三浦さんのような作家に書けないであろうことを書くようになります。たとえば、会社員の頃、言い争いなどを繰り返し、許しがたい思いを抱いた上司がいました。その上司と過ごした時間を礎に、会社員としての無念さ、屈辱感、組織の冷酷さなどを書いていくほうが、自分らしいと思えるようになったのです。

自分の“値付け”を人に任せてはいけない

 キモイ奴やトロい奴は、欠けているものをいかにビジネスに結び付けるか、という発想がないように思います。武器であるものを「弱さ」ととらえ、「自分が劣っている」と受け止めているのです。

 あなたが会社員で、上司から理不尽な扱いを受けているとします。そこで、自分を否定すべきではないし、卑下するべきでもないのです。「認められない」ことを、誇りにするべきなのです。たとえば、「今、こういう冷遇を受けている。管理職になったら、こんなことをしないようにしよう」ととらえるだけでも、心の状況は変わってくるのではないでしょうか。

 そのような思いでいれば、自然と目の前の苦境を乗り越えることができるようになっていくものです。心や精神状態、意識のあり方をそのまま反映しているのが、目の前に現れる人や出来事などだからです。

 「欠けている」ことが実は「強さ」であることを心得ておくだけでも、今後の人生が変わってくると思います。欠けているものをけなされたら、無視するべきです。あなたの価値や値打ちは、あなたが決めるのです。上司や先輩、同僚、社長や役員、さらには夫や妻、親などにも、決めさせるべきではないのです。ましてや、実態のない「世間」など論外です。

 キモイ奴やトロい奴は、自分の価値の“値付け”を、周囲、世間にさせてしまっている可能性があります。「世間」という見えないものに負けてしまったのかもしれません。企業社会という明確な羅針盤がないところでは、常に自分の価値や値打ちを自分でつくり、守り抜いていくべきなのです。土壇場では、世間や周囲からの評価など、絶対に頼りになりません。

 最後に、読者の皆さんに問いたいことがあります。キモイ奴やトロい奴が次々と現れるのは、私もキモくて、トロい奴だからなのでしょうか。最近、そんな気がしているのですが…。


このコラムについて

職場を生き抜け!
「夜逃げした社長」から「総理大臣経験者」まで――。これまで計1200人を取材してきたジャーナリストが、読者から寄せられた「職場の悩み」に答えるべく、専門家、企業の人事担当者への取材を敢行する。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/011600039/013000003/
 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

フォローアップ:


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法

▲上へ      ★阿修羅♪ > 経世済民118掲示板 次へ  前へ

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
 
▲上へ       
★阿修羅♪  
経世済民118掲示板  
次へ