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独立で知った“会社の傘”なきミドルの辛苦  トランプ時代に考える「儲かる取引」の理屈 「日経ビジネスベーシック」から
http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/270.html
投稿者 軽毛 日時 2017 年 2 月 17 日 01:03:19: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

独立で知った“会社の傘”なきミドルの辛苦

ここでひと息 ミドル世代の「キャリアのY字路」

2017年2月17日(金)
山本 直人

「うまいデザイナー」ではなく「できるデザイナー」

 この7年余りは何だったのだろう。まもなく50歳になるデザイナーのRさんはしばしば、起伏の激しかったその期間を、複雑な思いで振り返る。

 彼は、大手広告会社のデザイナーだった。そして40歳を過ぎて独立した後、紆余曲折を経て、今はとあるデザイン会社でデザイナーの仕事をしている。運と実力、そしてさまざまな「社会の波」が実に複雑に絡まり合ったその道程は、働き手としての自分を正しく認識するうえで、必要な通過儀礼だったのかもしれない。

 独立のきっかけは、あの金融危機に続く大不況、いわゆる「リーマンショック」が起きたことだった。あらゆる業界の企業が広告費を削減したために、広告業界も未経験の大逆風を受けた。

 しかし、Rさんには追い風だった。彼は同年代のデザイナーの中ではいち早くデジタル分野に目をつけていた。新聞広告や雑誌広告が急減する中で頼られる人材だったのである。

 Rさんは「できるデザイナー」と言われていた。しかし、「うまいデザイナー」とはあまり言われない。ブティックに掲げられるようなアーティスティックなポスターではなく、クライアントの要望に応えてさまざまな広告を作ってきた。時には、みんながやりたがらないスーパーマーケットの売り場におく販促物などにも丁寧に取り組んだ。

 同僚が昔ながらの広告作りに固執する中で、いち早くインターネットの勉強もした。「あんなのアートじゃないよ」という陰口も耳に入ってきたがRさんは気にしなかった。

 社内でも「これからはデジタルの勉強をしろ」という号令がかかる。40歳を過ぎて「さっぱりわからないよ」と愚痴をこぼす同僚のクリエイターを尻目にRさんのところにはどんどん仕事が舞い込んできた。

 そして、独立する決心をしたのだ。それは、ようやく金融危機に続く嵐がひと段落したころだった。

出足は好調も、すぐに「異変」が…

 独立に際しては、周囲は祝福してくれた。どちらかというと、人が嫌がるような仕事も引き受けてきたRさんは、営業スタッフからしても重宝な存在だ。独立したRさんに、広告主からの依頼を「丸投げ」することも可能になる。

 インターネット関連については同年代の営業でも苦手な者が多い。Rさんであれば、そのあたりのことも忖度して対応してくれる安心感があった。

 そんな発注を見越して、勤めていた会社の近くに事務所を設けてアシスタントも雇った。そして最初の1年は順調すぎるほどの船出だった。慌ててアシスタントを増やしても、追いつかないほどだった。

 Rさんの仕事に「異変」が起きたのは、独立して3年目になる頃だった。発注される仕事の内容が、段々と自分の経験でカバーしきれなくなってきたのである。

 理由の1つは、スマートフォンの普及だった。今では当たり前のようになっているが、「スマホ対応」のサイトが求められるようになってくる。今までの延長線で対応できる部分もあれば、一から考え直す必要もあった。

 Rさんにとって、インターネットといえばパソコンのブラウザーだった。その中で、美しく実用的なデザインを作ることにおいては業界でも評価が高い。しかし、スマートフォンに対応したデザインにはどうしても馴染めなかった。

 いくつかの案を出しても、広告主もなかなか首を縦に振らない。むしろ若いアシスタントが考えたアイデアの方がスッと通ったりする。広告主の会社でも、若いスタッフが担当を任されているようだ。

 スマートフォンを使いこなしている者どうしの方が話が早い。間に入っている古巣の営業も「もうわからないんだよ」と愚痴をこぼすようになった。

 かつて新聞や雑誌広告に執着していた同僚を見ていたRさんは、時代に取り残される恐ろしさを知っていた。しかし、気が付くと自分もまさに危うい位置にいることを感じた。

 その一方で得意だったはずの分野でも問題が起き始めていた。

頼みの綱、前の職場からの発注が急減

 Rさんはいわゆる「ネットキャンペーン」の仕事も請け負っていた。企業のサイト上から懸賞などに応募したり、写真や動画を投稿してもらうような販促活動だ。

 個人情報に対する規制も厳しくなり、ネット上の安全についても求められるハードルはどんどん上がる。そのために、作業工程でさまざまな人が関わるようになり、納品までの検証作業にも時間がかかるようになる。

 デザインを開発する時間も減ってくる一方で、Rさんの知識も追いつかなくなってきて対応も後手に回る。そうなると、「今回は別のところに」ということで、段々と発注が細ってくる。

 独立からわずか3年あまり。周囲の景色が全く変わっていることに気づいた。

 もちろんRさんも理解はしている。しかし頭でわかっていても、感覚的にはしっくりこない。自分でもスマートフォンは使うが、どこか「パソコンの代用品」だと思っている。

 そのため、危機感をもって若返りに取り組んでいる広告主との溝が段々と広がってきてしまったのだ。

 そんな時に、大きな転機となる出来事があった。

 独立以来長いこと仕事をつないでくれていた古巣の営業マンが相次いで現場を離れてしまったのだ。

 考えてみると、彼らはRさんよりやや若いけれどもう40代だった。会社としても若返りを図りたくなるのだろう。中には、故郷に戻って実家の家業を継ぐといって退職したものもいた。

 彼らはどちらかというと「古いスタイル」の営業だった。だからデジタル関連の技術についてはずっとRさんに頼りきりだったが、そのRさんが追いつけなくなると仕事がうまく回らなくなる。

 気が付いてみると、Rさんの事務所の売り上げは来期のメドがまったく立たなくなっていた。古巣からの仕事が十二分すぎるほどにあったので、新規得意先を開拓していなかったのだ。

 若いアシスタントたちは、こちらから言う前に転職先を見つけて去っていった。そして、Rさんもいろいろな伝手をたどって中堅のデザイン会社に雇ってもらうことにした。

 こうして、わずか数年間の「自分の城」はあっさりと陥落した。

「三重の過信」が足をすくった

 Rさんは今でも、「できるデザイナー」として重宝がられている。

 再就職して真っ先に声をかけてくれたのは、会社員時代に競合だった広告会社の営業だった。

 「ずっとお願いしたかったんですけど、なかなか隙がなくて」と苦笑いされたが、悪い気はしない。もともといた会社とのつながりが切れないので、とても頼めなかったのだという。

 Rさんも雇われの身になったので、気持ちに余裕ができた。改めて最新の技術を学び、いろいろなセミナーにも通ってキャッチアップすることができた。

 しかし、再び独立しようという気持ちはまったくない。

 そして、「3つの過信」があったと振り返る。

 1つは「技術知識に対する過信」だ。自分が最先端を知っていると思っていたデジタル分野は、想像以上の加速が起きていた。そのスピードを甘く見たことが大きな問題だった。

 2つ目は「センスに対する過信」だ。スマートフォンが中心になろうとしていても、自分のデザインセンスに対するこだわりを変えきれなかった。そのために提案内容が古く見られて、広告主との信頼関係が徐々に弱まっていった。

 3つ目は「営業ルートに対する過信」だ。古巣からの発注を受けていれば、自分自身で頭を下げて営業する必要はない。そのため「そろそろ動かねば」という時には、すっかり出遅れていた。
 そして、なじみの営業の異動などがとどめとなったのだ。

 結局は「自分自身への過信」だったとRさんは思っている。得意先とのルートはもちろん、最新技術にしても会社にいたからこそ学べていた。自分のセンスが古くなっても、組織にいれば若手を生かす道もあっただろう。

 そして、いま思っていることはシンプルだ。

 どんな環境であっても「できる限りデザイナーの仕事をしたい」それが今のRさんの願いである。

■今回の棚卸し
 会社の中でキャリアを重ね、多くの仕事をこなすことで、スキルは向上し、信頼を得ていく。

 しかし、そのスキルや信頼は一面、会社によって育ててもらったものでもある。独立すれば、多かれ少なかれ、「会社の傘」のありがたみを感じることになる。

 会社から離れたらどうなるか? 独立するしないにかかわらず、「自分の力」や「自分が本当にやりたいこと」を客観的に見つめるうえで、この視点は大切だ。キャリアの終着点が近づき、様々な選択を迫られるミドル世代においては、特に重要となる。

■ちょっとしたお薦め
 誰もが学生時代に「漢文」の授業を受けたことがあるだろう。しかし、その中で語られていることの真髄を知るには、それなりの人生経験が必要となる。ミドルになってから改めて手に取れば、日ごろ感じる世の中の理不尽や、人間の哀感などに共感できるのではないだろうか。

 加藤徹氏の「漢文力」は、そんな時に読んでみたい一冊だ。どこかで耳にしたことのあるフレーズの真の意味合いや、古人の深い洞察力に触れることでさまざまな示唆が得られると思う。

このコラムについて

ここでひと息 ミドル世代の「キャリアのY字路」
50歳前後は「人生のY字路」である。このくらいの歳になれば、会社における自分の将来については、大方見当がついてくる。場合によっては、どこかで自分のキャリアに見切りをつけなければならない。でも、自分なりのプライドはそれなりにあったりする。ややこしい…。Y字路を迎えたミドルのキャリアとの付き合い方に、正解はない。読者の皆さんと、あれやこれやと考えたい。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/032500025/021300023

 

 

トランプ時代に考える「儲かる取引」の理屈

「日経ビジネスベーシック」から

飯田泰之の「キーワードから学ぶエコノミクス」・04
2017年2月17日(金)
飯田 泰之
この記事は、「日経ビジネス」Digital版に掲載している「日経ビジネスベーシック」からの転載です。連載コラムは「飯田泰之の『キーワードから学ぶエコノミクス』」。記事一覧はこちらをご覧ください。詳しい説明はこちら 。

 トランプ大統領の登場以降、自由貿易や市場への攻撃がきつくなってきました。自由主義経済の基本の基本を、ここで見直してみるのもいいかもしれません。

 自由な、自発的な(=「詐欺」や「脅迫」のない)取引が成立するのは、「売り手にとっても買い手にとっても得な価格」が存在していたからです。

 だって、両者にとって得になる価格が存在しないならば、そもそも取引は成立しません。

 これはあまりにも単純で、そして単純であるが故に強力な論理です。なぜならば以上の事実は「自発的な取引は常に当事者双方を幸福にしている」ことを示しているからです。この論理は自由主義経済を擁護するもっとも基礎的な論理です。


飯田泰之(いいだ・やすゆき)
明治大学政治経済学部准教授 1975年東京生まれ。マクロ経済学を専門とするエコノミスト。シノドスマネージング・ディレクター、規制改革推進会議委員、財務省財務総合政策研究所上席客員研究員。東京大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。著書は『経済は損得で理解しろ!』(エンターブレイン)、『ゼミナール 経済政策入門』(共著、日本経済新聞社)、『歴史が教えるマネーの理論』(ダイヤモンド社)、『ダメな議論』(ちくま新書)、『ゼロから学ぶ経済政策』(角川Oneテーマ21)、『脱貧困の経済学』(共著、ちくま文庫)など多数。
 次に、ここまでの論理に国境や国籍の話が一切関係なかったことに注目してください。以上の結論は取引当事者の間に国境があろうとなかろうと成立します。これが自由貿易の有用性を根拠づけるもっとも単純な論理です。

 国内での自由な取引と、自由貿易を正当化するロジックは全く同じものです。

 したがって、国内での取引は自由に行われるべきだが、貿易は制限すべきだという主張は、経済以外の理由付けがなければ成立できません。アメリカ人同士の自由な取引はすばらしいが、アメリカ人とメキシコ人の自由取引は良くないことだ……というためのロジックとしてどのようなものがあり得るか、是非考えてみてください。

お得な取引相手は誰?

 「双方が得すること」こそが取引の本質であるというコトが理解できると、次に興味がわくのは「じゃ、自分にとってよりお得な取引って何だろう」という話ではないでしょうか。話が急に俗っぽくなってしまいますが……アダム・スミスが指摘したように、みんなの俗な欲求がすばらしい社会をつくるのです(すいません開き直りです)。

 ここで買い手の場合を例に説明しましょう。あなたが、あるコンサートのチケットに対して5000円までなら払っても良いと考えていたとしましょう。そんなとき、ネットで3000円で購入できたなら……ちょっとお得感がありますよね。

 取引における買い手の利益とは、「自分が支払ってもよいと考えていた値段(前回でご説明したとおり、買い手の“主観的な”評価額ですよ)」と実際の金額との差になります。売り手にとっても事情は同じです。主観的な評価や制作費用などから決まる「手放してもよい最低限の値段」より高く売れた分が取引の利益、と言うことになるでしょう。

 では、取引の果実が一番大きくなるのはどんな取引でしょう。そう。「支払ってもよいと考えていた値段」と「手放してもよい最低限の値段」の差が大きければ大きいほど――「主観的な価値観の隔たりが大きい者同士の取引」ほど、そこから得られる買い手の利益は大きくなるのです。売り手ならばこの逆になりますが、価値観の差が大きいほど利益が拡大する、という部分は同じです。

 「自分とは価値観が異なる相手との取引ほど、利益が大きい」という結論は、ビジネスの展開を考える上で非常に重要です。自分にとって何の価値もないものに価値を感じる人、自分が大切だと思うことを軽視している人を探すことこそが、ビジネスの出発点です。

 自分が手に入れた、特に興味がないアイドルの握手券を売るのに最適な相手は、そのアイドルの大ファンの人です。そして、多くのビジネスマンにとって最大の資産である「自身の労働力」を販売する場合も同じです。例えば、あなたにとって英語を日本語に翻訳することが対して苦にならない作業だとしましょう。それであれば取引相手として最適なのは、翻訳にものすごく苦痛を感じている人、となるわけです。

違う人との接触を増やすことが、経済学的には正しい

 価値観の異なる取引相手こそ、お互いに利益が大きい取引ができる可能性が大きい…。

 説明すると当たり前のように感じられるかもしれません。にもかかわらず、私たちは同じような好み、同じような能力を持っているもの同士で「連(つる)み」がちです。

 なぜ取引相手として最適な相手とより多くの時間を過ごそうとしないのですか? 
 なぜ仕事を分担し合う相手として最適な人と組んで仕事をしようと思わないのでしょう? 

 自分とは何か違う人との接触機会を増やすこと。ここに(金銭的なモノに限らない)大きな利益が眠っているのではないでしょうか。そういう意味で「なんとかファースト」には、経済学的には大いに疑問がありますね。

[3分で読める]ビジネスキーワード&重要ニュース50

 今さら聞けないけど、今、知っておきたい――。ネットや新聞、テレビなどで日々流れている経済ニュースを読みこなすための「ビジネスパーソンのための入門編コンテンツ」がムックになりました。

 新進気鋭のエコノミスト、明治大学政治経済学部准教授・飯田泰之氏による「2017年の経済ニュースに先回り」のほか、「ビジネスワード、3ポイントで速攻理解」「注目ニュースの『そもそも』をすっきり解説」「日経会社情報を徹底活用、注目企業分析」「壇蜜の知りたがりビジネス最前線」などで構成されています。

 営業トークに、社内コミュニケーションに、知識として身につけておきたい内容が、この一冊に凝縮されています。


このコラムについて

「日経ビジネスベーシック」から
このコラムでは、「日経ビジネスBasic」に掲載した記事の一部をご紹介します。日経ビジネスBasicは、経済ニュースを十分に読み解くための用語解説や、背景やいきさつの説明、関連する話題、若手ビジネスパーソンの仕事や生活に役立つ情報などを掲載しています。すべての記事は、日経ビジネスの電子版である「日経ビジネスDigital」を定期購読すれば無料でお読みいただけます。詳しくはこちらをごらんください。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/041300033/021500018  

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