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トランプ政権が導入へ動く「国境調整」とは何か それでも市場は「トランプ信仰」唱え続ける トランプと電話会議ダメ
http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/345.html
投稿者 軽毛 日時 2017 年 2 月 20 日 07:27:03: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

トランプ政権が導入へ動く「国境調整」とは何か

ニュースを斬る

矛盾多く日本企業への影響は非常に大きい
2017年2月19日(日)
今村 卓

(写真:ロイター/アフロ)
 トランプ政権が月内にも発表するとみられる約30年ぶりの抜本的な税制改革。その目玉は法人税改革であり、焦点は下院共和党が導入を提唱している「国境調整」である。下院共和党案は、法人税の最高税率を現在の35%から20%に引き下げた上で、輸出で得た収益は課税を免除する一方、輸入は費用からの控除を認めないという「国境調整」を新設する。輸入には20%の法人税がそのまま課税される仕組みになる。

 トランプ大統領は、一時は中国に45%、メキシコに35%など米国の二国間の貿易赤字が大きい国に対して高関税を適用する「国境税」を主張し、下院共和党案は「複雑すぎる」と批判的だった。だが、その後に大統領側近がトランプ氏は「国境調整」に乗り気になっていると述べ、同氏も自ら2月10日の日米首脳会談後の記者会見で「インセンティブに基づく(Incentive-based)」税制にする方針と語った。近くトランプ政権が、「国境調整」を盛り込んだ法人税制改革が発表する可能性は高そうだ。

今後の審議に耐えられない下院共和党の「国境調整」案

 しかし筆者には、いくらトランプ政権が下院共和党案の「国境調整」を支持しても、同案がこのまま今後の議会、特に上院での審議に耐えられるとは思えない。そもそも同案が昨年6月、オバマ前政権下で、大統領選ではトランプ候補の当選の可能性は低いとみられていた頃に発表された、おそらく誰も成立の可能性が高いとは思っていなかったからこそ、野心的に作られたプランである。だからこそ、トランプ氏の「国境税」よりは税率が低いとはいえ、「国境調整」の輸入にいきなり20%もの課税強化という十分に激変な措置が盛り込まれているのである。これでは耐えられないと思った輸入依存度が高い米国の大手小売業は、「国境調整」に反対の声を上げ、上下両院の議員へのロビー活動の攻勢を強めている。

 これに対して「国境調整」を理論面で支えるシンクタンクや経済学者は、「国境調整」を導入すればドル高が進むことは確実だから、輸入企業も仕入コストが低下するので、税負担は大して増えないと説得している。一部の試算では25%のドル高になるという。だが、この論理に矛を収める輸入企業は皆無だろう。長期的にみればドル高が進む可能性は高いだろうが、「国境調整」の実施からすぐにドル高になる保証などないからだ。

 為替相場は過去の変動の激しさが示すように、税・財政の変化以上に、金融政策や米国と海外の景気のずれなど多様な要因が影響を与える。輸入企業にとっては、輸入への20%もの課税強化の後、ドル高が進むまで時間を要するのなら、税負担の大幅な増加から逃れられず、小売価格に転嫁せざるを得なくなる。それなら「国境調整」の意図に従って、調達を輸入から国内調達に切り換えればよいだろうといわれても、限界がある。例えば、ドル高がすぐに発生しなければ、輸入依存度が高いガソリンは小売価格が13%も上昇し、家計の年間負担は400ドル近く増えるという試算がある。皮肉にも、トランプ政権の税制改革によって、トランプ氏の支持基盤である白人労働者階級はかえって生活が苦しくなるという事態が生じかねないのだ。

 逆にドル高が速やかに発生すれば、別の問題が生じる。ボーイングやゼネラル・エレクトリック(GE)など輸出の多い米国企業25社は「国境調整」を支持する団体(America Made Coalition)を結成した。だが、その輸出は、ドル高が進めば、法人税減免で得た価格競争力は瞬時に消える。結局、マクロで輸出と輸入を対象にした「国境調整」は長い目でみれば米国経済に中立的ということであり、これに異論を唱える経済学者はいないだろう。しかし、トランプ大統領はおそらく違う。ドルが高すぎると騒ぎ立て始めるかもしれない。

 このような下院共和党案の「国境調整」がもたらしうる様々な混乱や矛盾が明らかになれば、議会では共和党議員であっても「国境調整」に胡散臭さを感じ、それを支持すれば自らの再選が脅かされかねないと感知する議員が増えて、可決が難しくなる。現に、上院共和党では、先週から「国境調整」への反対が強まりかねない雰囲気が強まってきて、共和党の下院指導部が慌てて説得に走り回る事態になっている。しかし、説得の根拠がドル高ぐらいしかないのなら、支持に回る上院議員の数は限られるだろう。それでもトランプ政権と共和党の上下両院指導部が、「国境調整」を実現しようとすれば、エネルギーなど輸入品の一部を「国境調整」の対象から外すなどの譲歩が必要になる。

廃案か大幅修正もあり得る、成立でも今年秋以降か

 しかし、この議会の共和党内部での大掛かりな調整が必要になれば、「国境調整」を含めた抜本的な税制改革の成立は、今年の秋以降、年末など相当先になるだろう。それは、今のライアン下院議長など下院指導部のこれまでの根回しのなさ、当面の議会はオバマケアの廃止・置換を優先し、税制改革は夏以降というライアン氏の審議日程の組み立て方をみても、明らかである。しかも、トランプ政権も、ようやく担当閣僚のムニューチン財務長官が就任したばかりで関係する政府高官が揃わず、トランプ政権独自の「国境調整」の具体的な提案は当面、望むべくもない。トランプ大統領も、「国境調整」を取り上げてツイートすることは多々あるだろうが、リーダーシップを発揮する機会はおそらくないだろう。現時点では、月内に示されるトランプ政権の税制改革案でも、「国境調整」は下院共和党案の受け入れが示される程度とみる。

 その後、来月から夏にかけても、「国境調整」は共和党内でも意見が分かれ、産業界も輸出企業と輸入企業による支持と反対に二分され、最終的に断念に追い込まれるのか、輸入の例外品目を認めるなど譲歩があるのか、非常に不透明な状態が続くだろう。それでも、トランプ政権も議会共和党も、「国境調整」を早期に断念することはないだろう。国境調整で見込む税収が10年間で1兆2000億ドルと非常に大きく、これがなければ財政赤字の拡大を抑えて法人税の大幅な税率引き下げを実施することは困難だからだ。「国境調整」が実施されれば、そのスケールの縮小があっても、米国への輸出が多い日本企業への影響は非常に大きいと思われるだけに、今後のトランプ政権、上下両院からの声と審議状況を注意深く追い続ける必要があろう。

 日経ビジネスはトランプ政権の動きを日々追いながら、関連記事を特集サイト「トランプ ウオッチ(Trump Watch)」に集約していきます。トランプ大統領の注目発言や政策などに、各分野の専門家がタイムリーにコメントするほか、日経ビジネスの関連記事を紹介します。米国、日本、そして世界の歴史的転換点を、あらゆる角度から記録していきます。

このコラムについて

ニュースを斬る
日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/021900580/

 

それでも市場は「トランプ信仰」唱え続ける−不支持と投資決定は別物
Brian Chappatta、Oliver Renick
2017年2月20日 06:20 JST

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• 就任後1カ月の株式市場、リンドン・ジョンソン大統領以来の好調
• 8年間の悪夢からようやく目を覚ました−シュルツ・アセット

マネーの流れを追え。ワシントンでは使い古された言い回しだ。
  今のウォール街でマネーの流れを追うとすれば、ホワイトハウスが陥っている混乱にもかかわらず、金融市場がなぜこうなっているのか理解に苦しむだろう。
  ロシアの介入やマイケル・フリン氏の辞任、トランプ大統領のツイッター投稿、CNN報道にもかかわらず、株式市場はドナルド・トランプ米大統領の下で次から次へと最高値を更新した。確かに最初の1カ月、政権運営はトラブルに見舞われた(大統領本人は16日に、「整備の行き届いた機械のように運営されている」と主張しているが)。それでも相場は上昇している。大統領就任早々の市場としては、リンドン・ジョンソン大統領以来で最高のパフォーマンスだ。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/itWVa_CvjSvk/v2/-1x-1.png

  株価収益率や強気相場の長期化などさまざまな要素を挙げて、株価はこれ以上は上昇しない、トランプ波乱に市場は屈する、そうなるはずだとの悲観論もある。経済に活気があるのはホワイトハウスでふんぞりかえっている男ではなく、何年にもわたる金融緩和のおかげだという主張は説得力があるだろう。株式相場というのは右肩上がりが普通だ、何を今さらと言われるかもしれない。
  しかし投資家に話を聞くと、違う言葉が返ってくる。今は何年かに1度しか訪れない絶好の買い場だと。
  「8年間の悪夢からようやく目を覚ましたような気分だ」と、シュルツ・アセット・マネジメントを創立したジョージ・シュルツ最高投資責任者(CIO)は語る。同氏はトランプ大統領について、「好き嫌いは別として、これまでにやると決めたことはやり通してきた男だ。ビジネスマンとして成功しており、意欲的な計画を練っているようだ」と称賛した。
アニマル・スピリット
  S&P500種株価指数は昨年11月の大統領選挙以降、10%近く上昇し、オバマ前政権下で始まった強気相場は今年3月で9年目に入る。2月16日の終値は、金融危機が深刻化する前の2007年10月に付けた高値を50%上回っている。
  政治的な支持・不支持はともあれ、トランプ氏はその存在だけで経済にアニマルスピリットを吹き込んだ。そもそもその経済は、ほとんどの指標において順調だった。トランプ効果がさらに株価を押し上げる兆候なのか、あるいは投資家がいずれ劇的な転落を迎える兆候なのか。
  ウェルズ・ファーゴ・プライベートバンク(カリフォルニア州ランチサンタフェ)のエリック・デービッドソン最高投資責任者(CIO)は、「顧客から寄せられるコメントの90%以上は最近まで、うまく行かなくなるはずはないだろう、という類いのものだ」と話す。「かつて投資家は自分の影に怯えてたが、今ではずっと楽観的になっている」と述べた。
  トランプ政権とロシアのつながりや、移民政策への非難が渦巻いているが、投資家は結局のところ、気にしていないようだ。少なくとも投資の決定は左右されない。
  「先行きは不透明で心配だとの声は多い」と、プレミア・プランニング・グループ(ペンシルベニア州フェニックスビル)のマネジングパートナー、フランク・ヘネシー氏は話す。「しかしそう言う人がどのように投資するかは、まったく違う話を物語っている」と述べた。
原題:‘In Trump We Trust’ Is Market Mantra as Chaos Besets White House(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-19/OLIXA36VDKHT01

 

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コメント
 
1. 2017年2月20日 12:35:34 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[672]
http://ryumurakami.com/jmm/
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▼INDEX▼
  
  ■ お知らせ
  
  ■ 『from 911/USAレポート』第735回

    「大混乱の政権周囲、それでも下がらない株価」

    ■ 冷泉彰彦:作家(米国ニュージャージー州在住)

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(冷泉彰彦さんからのお知らせ)

もう一つのメルマガ、「冷泉彰彦のプリンストン通信」(まぐまぐ発行)
http://www.mag2.com/m/0001628903.html
(「プリンストン通信」で検索)が、2016年の「まぐまぐ大賞(ジャーナリズム
部門3位)」に選定されました。2017年は、少しずつリニューアルして充実を図
る計画です。JMMと併せて、この『冷泉彰彦のプリンストン通信』(毎週火曜日朝
発行)もお読みいただければ幸いです。購読料は税込み月額864円で、初月無料で
す。

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 ■ 『from 911/USAレポート』               第735回
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 今から丁度一週間前、2月10日(金)には安倍首相が訪米して日米首脳会談を行
われ、そのまま両首脳はフロリダ州にあるトランプ家の経営するリゾートへ移動した
わけです。そこへ12日(日)の北朝鮮のミサイル発射という事件が飛び込んできて、
改めて両首脳は共同会見を行って同盟関係を確認した格好となりました。

 この一連の日米外交に関しては、様々な見方ができると思いますが、とりあえず
「現状維持をかなり積極的に確認できた」ということで、日米の市場は好意的に反応
しています。また、トランプ大統領にしても、そこまでの「7カ国からの入国禁止」
であるとか「不法移民の抜き打ち強制送還」といった「異常な政策」とは違って、歴
史のある日米関係をキチンと維持しようとしていることで、「真面目にやればできる
じゃないか」的な報じられ方もしていました。

 ある意味で、2月12日の時点では、そんなわけで「何とかここへ来て政権が動き
出した」という感触が出てきたのです。ところが、それは今となっては過去になりま
した。2月13日(月)からの一週間は、怒涛のような一週間であり、この週を通じ
て政権の周囲は大混乱に陥っています。

 混乱の発端は、マイケル・フリン安全保障補佐官が2月13日(月)に辞任したと
いう事件です。この辞任劇ですが、補佐官に就任する前の2016年12月にロシア
大使に電話をして経済制裁の解除問題について相談したという疑惑があり、そしてこ
の件について問い詰めたペンス副大統領に対して虚偽の回答をしていたというのが理
由だとされています。

 この問題に関して、一つ明らかに進行しているのはトランプ政権として「極端な親
ロシア」という外交姿勢に対して突き進むのか、それとも従来、つまり共和党の軍事
タカ派やオバマ政権のように「ロシアと距離を置く」路線を継承するのかという「対
ロ外交路線」について、大きな揺れが出ているという問題です。

 この問題については、明らかにロシアも様々な変化球メッセージを出しており、ア
メリカの外交官に対する批判をしてみたり、あるいは情報収集艦船を米国の潜水艦基
地のあるコネチカット州の沿岸に派遣してみたり、かなりキナ臭い感じになっていま
す。

 ただ、この米ロ関係がどうなるのかという問題については、現時点ではまだ良く見
えていないのも事実です。フリン補佐官の辞任というのはショッキングな事件ですが、
これで「米ロ関係を大幅に改善し、ロシア主導の中東秩序を認める」という路線が完
全に消えたというのは早計な見方なのかもしれません。ですから、本稿の時点ではこ
の米ロ関係に関する「見通し」を述べるのは差し控えます。

 問題は、このフリン補佐官辞任事件を契機に、別の意味でホワイトハウスの中にあ
る「亀裂」が浮かび上がって来たということです。フリン氏が辞任したのが13日の
月曜日ですが、その翌日の14日(火)の定例記者会見でホワイトハウスのスパイサ
ー報道官は、フリン氏の辞任は政権に取っての「信認の問題」だと述べていました。
つまり、ロシア大使との接触についてペンス副大統領に対して虚偽の説明をしていた
ことが原因であり、大統領はそれ故に「辞任を求め、辞任を受け入れた」というので
す。

 一方で、2016年8月以来、選挙参謀としてトランプ当選の司令塔を果たし、ま
た現在はホワイトハウスの顧問として、政権の非公式なスポークスパーソンの役を続
けているキャリアン・コンウェイ氏は、まずフリン補佐官が辞任に追い込まれる直前
の13日(月)の朝の時点で「大統領はフリン氏に対して全幅の信頼を置いている」
と堂々と述べていました。その一方で、実際にフリン氏が辞任した翌日の朝にはNB
Cテレビで「フリン氏の辞任は完全に自発的なもの、大統領は長年の忠臣を裏切るよ
うなことはしない」と言明したのです。

 勿論、このコンウェイ氏というのは、「オルタナティブ・ファクト(もう一つの真
実)」ということを公言して恥じない人物であり、これまでも数々の「事実ではない」
発言を繰り返してきているわけです。ですが、今回の報道官声明との「矛盾」という
のは、かなり深刻な問題で、例えばMSNBCの朝の情報番組『モーニング・ジョー』
の司会をしているミカ・ブレジンスキー氏(カーター政権の外交補佐官のお嬢さんで
す)は、「虚偽を口にして恥じないコンウェイ氏は、今後番組として相手にしない」
と言明して話題になりました。

 この問題ですが、これで終わらなかったのです。一つは、大統領自身がこの問題で
「カッカ」したということのようで、一部の報道によればスパイサー報道官の「大人
しい対応」が気に入らなかったらしいのですが、とにかく16日(木)に急遽大統領
のソロ会見というのが設定されました。報道によれば、その日の朝に大統領から衝動
的な提案があったというのです。

 この会見ですが、正に今週のハイライトというべき大混乱に陥りました。全部で1
時間12分にわたる独演会は、プロンプターなどは一切なしの完全にアドリブの進行
でした。その前半は、この政権は「カオスなどと言われているが、全く違う。順調に
運営されている。よく整備されたマシーンのように政権は動いている」というような
自慢話で終始したのですが、いざメディアからの質問が始まると必要以上に反撃して
大荒れになっていました。

 ここでの大統領の説明ですが、分析すると次のようなストーリーになります。

 まず、大統領によればフリン氏のロシアとの接触は違法ではないというのです。仮
にこれを(1)としましょう。ところが、そのフリン氏とロシア大使の会話を盗聴し
たNSA(またはCIA・FBI)が、その会話に関してメディアにリークをしたの
は犯罪であり、自分はアメリカの諜報機関の違法行為に関して起訴の準備を司法省に
命じたというのです、これを(2)としましょう。更に今度はメディアに矛先を向け
て、そのリークを報じたメディアの報道は「全てフェイク」、だと激しく非難したの
です。これを(3)としましょう。

 一種の三段論法なのですが、「全くロジックが通っていない」のです。仮に(1)
が本当で、フリン氏のロシアとの接触に違法性がないのであれば、盗聴やリーク、そ
して報道の意味は全くないわけです。ですが、接触が事実であるのなら、報道がフェ
イクということにはなりません。何がなんだか、全く意味不明ですし、仮にロシアと
の非合法な接触を行ったことを「かばう」のであれば、大統領の権威を失墜すること
にもなりかねません。

 その一方で、仮に百歩譲って(2)の諜報機関からメディアへのリークが違法だっ
たとしましょう。その場合も、違法になるような重要な情報がリークされたのであれ
ば、その報道は少なくとも「フェイク」ではないはずです。ですから、(2)と(3)
の間にも論理矛盾があります。

 ということで、全く意味不明のストーリーなのですが、そこを指摘したメディアか
らの質問に対しては「お前たちの流しているのは、全部がフェイクニュース」だとい
う決めつけで罵倒してくるのですからコミュニケーションも何もあったものではあり
ません。要するにメディアも、諜報機関も「俺様の敵」だから徹底的に「攻撃」する
という、ワガママなガキ大将のような言動のレベルということです。

 更に衝撃を与えたのは、フリン氏の後任に推したボブ・ハワード中将(海軍、退役)
が「辞退」したという事件です。これも16日(木)に起きた事件で、中将自身は
「指名は名誉に思うが、一身上の理由でお受けしかねる」というコメントを発してい
ますが、「大混乱状態のホワイトハウスに入ってもロクな仕事はできない」と見て辞
退したという印象は消せないわけで、そんなニュアンスと共に衝撃が広がったのでし
た。

 更に一夜明けた17日(金)には、トランプ大統領はサウス・カロライナ州のノー
ス・チャールストンにあるボーイングの工場を訪れ、最新鋭の787−10を背後に
「自分はアメリカの雇用を最優先にすると約束して当選した。だから国内雇用を改善
する。工場を海外に移転したら罰する」などとブチ上げていました。また演説の最後
には「アメリカに神のご加護がありますように」という決まり文句に加えて「ボーイ
ングにも神のご加護を」と述べ、「大統領がそこまで言うのか」という非難とも驚き
ともつかないような印象が広まっています。

 この「ボーイング激励」と「工場の海外移転を罰する」というコメントについては、
依然として日本のメディアとしては、敏感にならざるを得ないようですが、アメリカ
ではそれほど大きく報じられていません。とにかく「フリン辞任問題」で大揺れに揺
れた一週間の最後に、大統領が「十八番」とも言える「国内雇用重視」をアピールす
るために、わざわざボーイングに行ったというニュアンスの報道が多く、かなり「割
り引かれて」伝えられているからです。

 更に、「直接フロリダに行くのは抵抗があるので」何となく仕事らしいことをする
ために、サウス・カロライナに寄ったのだろうという辛口のコメントも出ていました。
(CNN)大統領は、週末をフロリダで過ごすのはこれで3週連続だそうで、それに
よる移動コスト、セキュリティ確保のコストは莫大なものになるそうで、ジワジワと
批判が出始めています。

 ところで、この一連の「ホワイトハウスの混乱」という事態を受けて、一つのTV
番組が脚光を浴びています。それは、NBCが毎週土曜の深夜にやっている「サタデ
ー・ナイト・ライブ(通称SNL)」というお笑い番組で、大昔から政治家のモノマ
ネをやって、パロディ劇に仕立てるというのが定番になっています。特に番組スタッ
フとしては、ハッキリとリベラルな傾向を隠さずにやっていることから、例えばブッ
シュ時代などには色々なモノマネをやって物議を醸していたのでした。

 そのSNLは昨年の選挙戦時代から「トランプとその周辺のパロディ劇」に力を入
れています。色々なパターンがあるのですが、現在人気を博しているのは、まず超有
名俳優のアレック・ボールドウィンが「口をゆがめ、カツラをかぶって」トランプを
演じるものです。「骸骨姿の悪魔のブレーン」として出てくるスチーブン・バノンと
共に、各国首脳に電話をして悪態をつくとか、やりたい放題なのですが、人気があり
ます。

 また、ここ数週間話題になっているのは、女性コメディアンのメリッサ・マーッカ
ーシーによるショーン・スパイサー報道官のパロディで、「憎いメディア」に対して
は水鉄砲で攻撃したり、演台ごとブルドーザーのように突進したり、こちらも毎週の
話題になっています。ちなみに、スパイサー氏自身はそんなに怒っていないようです
が、トランプ大統領は「オレの報道官を、こともあろうに女性にモノマネさせるとい
うのは許せない」と激怒しているということで、NBCとしては「してやったり」と
いうことなのでしょう。

 先週のSNLで問題になったのは、女優のケイト・マッキノンが演ずるキャリアン
・コンウェイ顧問のモノマネです。マッキノンのコンウェイは、昨年から何度か登場
していて、コンウェイ顧問の独特(日本で言うアニメ声+姉御風)の話し方を実に巧
妙にマネていて話題になっていたのですが、先週のはかなり手が込んでいました。

 コンウェイ氏が、CNNのジェイク・タッパー記者と番組の上で「アンタは嘘つき
だ」「いいえ違いますわ」という激しい応酬を何度かやっているのは、有名な話なの
ですが、その延長で、タッパーがコンウェイを「嘘つきだから番組に出さない」とし
たという想定で、「それでもTVに出たい」コンウェイがストーカーになってタッパ
ーを襲うというストーリーです。

 スキッドの全体が、1987年の映画『危険な情事』のパロディになっているとい
う凝った設定なのですが、ネグリジェ姿でタッパーの家に忍び込んだコンウェイが
「私を無視しないで」と激しく詰め寄るシーンには、性的なフレーバーも、暴力的な
描写も入っていて大いに物議を醸したのでした。

 メディアの論調は、「いくら何でも先週のSNLのコンウェイのパロディは『やり
過ぎ』」だという取り上げ方が多く、NBCの番組について批判するという趣旨でC
BSやABCも取り上げているのですが、「やり過ぎだ」という論調であるにも関わ
らず、キャスターや司会者(例えばウーピー・ゴールバークやジョージ・ステファノ
ポロス)など「目は笑っている」中で、ユーチューブの再生数はどんどん増えている
というのが実情です。

 このSNLですが、無責任なお笑いのパロディだとも言えるし、要するにリベラル
なカルチャーを持つエンタメ業界が無反省に政治的な権力を行使しているという見方
もできるかもしれません。ですが、本物のコンウェイやトランプの言動が、特に今週
のような破綻を見せてくると、こうした「お笑い」を使って政権を追い詰めるという
NBCの方法論も、明らかな効果が出てきていると言ってもいいのかもしれません。
SNLの視聴数は、過去6年間の中で最高水準となっていて、ビジネス的にも成功し
ているようです。

 そんなわけで、政権の周囲は混乱状態が明らかであり、その政権を描写したドギツ
いパロディが大受けする、ある意味ではホワイトハウスの危機が進行しているわけで
す。例えば、17日(金)に発表されたギャラップ社の世論調査では、大統領の支持
率は38%、不支持が56%というかなり衝撃的なものとなっています。

 ところが、そんな中でも株価は下がっていません。それどころかNYダウは最高値
を更新して、今週を終えているのです。これは一体何を意味するのでしょうか?

 一つには、トランプ政権は大混乱状態であっても、ビジネスの足を引っ張ることは
していないということがあります。その限りにおいては、株を売る理由はないという
わけです。閣僚人事について言えば、安保補佐官が空席で、労働長官が急遽差し替え
になったりというドタバタはあるものの、ビジネスにフレンドリーな印象の人物が続
々入閣しているわけで、そうした点を市場は好感しているということはあると思いま
す。

 もう一つは、混乱の中で徐々に「共和党主流派」が「オーソドックスな共和党政治」
へと、政権を裏から修正にかかっているというニュアンスです。例えば、大統領が、
「イスラエル、パレスチナ二カ国体制」を否定するような発言をすると、ニッキー・
ヘイリー国連大使が打ち消すとか、これからの話ですが、ペンス副大統領が欧州歴訪
に出てNATOの結束を確認しようとしているとか、その前にもマティス国防長官が
日米関係と米欧関係の「現状維持」に動いていたとか、政権の中で「トランプ氏とそ
の周囲」の求心力が低下して、ペンス副大統領を中心にクラシックな保守政治に回帰
しようとしている、そんな政争と言いますか、ホワイトハウスの中での勢力の変化が
あり、それも市場としては薄々気づきながら歓迎しているということもあるのかもし
れません。

 そんなわけで、従来は「トランプ氏の劇場型政治」と「共和党の本流」が対立しつ
つ微妙にバランスするような政権の性格であったのが、ここへ来て、「トランプ式の
劇場型」はドンドン空回りする中で、「共和党の本流」が台頭しつつあるという流れ
を感じます。

 では、このまま一気に「トランプ辞任でペンス政権へ」という流れができるのかと
いうと、それは分かりません。というのは、2018年11月、今から1年8ヶ月先
には「もう中間選挙」が迫っているからです。共和党としては、2016年の総選挙
同様に「トランプという神輿を担ぐ」のが有利なのか、それとも「アッサリとトラン
プを捨てる」べきなのか、どこかの時点で選択しなくてはなりません。その選択のタ
イミングは、今ではないにしても、そんなに遠くはないように思います。現在の政権
周囲の動揺は、そのぐらい深刻な事態であると思います。

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冷泉彰彦(れいぜい・あきひこ)
作家(米国ニュージャージー州在住)
1959年東京生まれ。東京大学文学部、コロンビア大学大学院(修士)卒。
著書に『911 セプテンバーイレブンス』『メジャーリーグの愛され方』『「関係の空
気」「場の空気」』『アメリカは本当に「貧困大国」なのか?』『チェンジはどこへ
消えたか〜オーラをなくしたオバマの試練』『場違いな人〜「空気」と「目線」に悩
まないコミュニケーション』など多数。訳書に『チャター』がある。
またNHKBS『クールジャパン』の準レギュラーを務める。


2. 2017年2月24日 19:46:21 : 2ba1UeOS2E : 62OIab_eEe0[277]
他国との関係が具体化したときこの記事を見直してみようかな

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