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シムズ理論、10の疑問 トランプ為替認識に危険 今年ドルピーク、マネー米国離れ 新聞トランプ景気 英最大懸念、移民<経済
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投稿者 軽毛 日時 2017 年 2 月 21 日 19:17:44: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

コラム:
シムズ理論、10の疑問

河野龍太郎BNPパリバ証券 経済調査本部長
[東京 21日] - 日本の財政について、筆者が懸念しているのは、ノーベル経済学賞を受賞した米プリンストン大学のクリストファー・シムズ教授らが主張する「物価水準の財政理論(FTPL)」を根拠として、安倍晋三首相が財政健全化の方針を転換し、2%インフレが達成されるまで、消費増税と基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)黒字達成目標を凍結することである。

以下、筆者がよく尋ねられる疑問に答える形で、「シムズ理論」を現実に応用する問題点を指摘したい。

Q1)シムズ理論とは何か。

理論のエッセンスは、1)ゼロ金利制約で金融政策が有効性を失う場合、追加財政が代役となり得る、2)その場合の追加財政は、将来の増税や歳出削減で賄うことを前提にした通常の財政赤字ではなく、インフレでファイナンスされた財政赤字、というものだ。これまで追加財政を繰り返しても、必ずしもインフレ醸成につながらなかったのは、追加財政を行う際、政府が同時に財政健全化を約束していたからだという。

追加財政を行っても、将来の増税や歳出削減を政府がアナウンスすると、人々もそれを前提に行動するから支出は必ずしも増えず(リカーディアン効果)、それゆえ、需給ギャップの改善も十分ではなく、インフレ醸成にも十分つながらなかった。そこで、リカーディアン効果を回避すべく、増税や歳出削減を一切予定せず、インフレによる返済を前提とした追加財政を行うべき、というのがシムズ教授らの主張だ。

極端に言えば、政府に財政規律があるからインフレが醸成されないのであり、公的債務を将来の増税や歳出削減で賄おうとしない非リカーディアン型政府になって、一時的に財政規律を捨て去れと言っているようなものである。

ポール・クルーグマン米ニューヨーク市立大学教授(ノーベル経済学賞受賞者)のインフレ醸成理論は、「中央銀行が無責任になればインフレ醸成が可能」というものだったが、シムズ教授はそうははっきりと言わないものの、結局、「政府が無責任になればインフレ醸成が可能」と解釈できる主張である。

Q2)政府の宣言だけでインフレ醸成は可能なのか。

もちろん、政府の宣言だけでインフレ期待が醸成されるのは、理論の世界の話だ。1998年以降、大規模財政が繰り返され、一方で財政健全化は掲げられてはいるが、先送りが繰り返されてきた。安倍政権になっても、2度も消費増税が先送りされ、一方で2014年初以降、完全雇用にあるにもかかわらず、毎年、補正予算で追加財政が繰り返されている。

すでに財政規律は弛緩し、非リカーディアン的世界にかなり近いが、インフレ期待は醸成されていない。実際のインフレ醸成には、政府の宣言だけでなく、需給ギャップを大幅に改善させるほどの、大規模な追加財政も必要だろう。

Q3)従来のアベノミクスとの整合性は取れるのか。

シムズ理論とアベノミクスとの親和性は相当に高い。まず、アベノミクスが掲げるデフレ脱却は残念ながら、まだ道半ばだ。さりとて、金融政策もほぼ限界である。無理を承知で金融緩和を進めて円安が進めば、一時的にはインフレ醸成も可能かもしれない。だが、そうなると、2014―15年と同様、実質購買力の棄損する家計の不満が募り、次期衆院選には逆風となる。

さらにトランプ政権の誕生を背景に、一段の金融緩和によるインフレ醸成は、円安誘導批判の誹りを避けることができず、日米関係を考えると難しい。国内の家計の不満を背景に、すでに2015年頃からアベノミクスの政策の主軸は、金融政策から財政政策にシフトしていた。シムズ理論という「新たな矢」を加えることで、アベノミクスを進化させると訴える可能性がある。

シナリオとして考えられるのは、2%インフレが達成された後に、消費増税と財政健全化を再開するというものだろう。換言すれば、2%インフレが達成されるまで、消費増税と財政健全化は凍結される。FTPLは、政府の財政行動が物価を規定する理論であるから、現実的な妥当性はともかくとして、理論的には整合性は担保される。

Q4)政府は、日銀と2013年1月に結んだアコード(共同声明)で、日銀が物価目標の早期達成を目指す一方で、構造改革と財政健全化を進めることを約束した。政府側のアコード破棄で日銀は困らないのか。

確かに、アグレッシブな金融緩和は財政ファイナンスではないという主張が可能だったのは、そのアコードが存在していたからだ。ただ、アコードを政府が反故(ほご)にするから、日銀も大量の国債購入やイールドカーブ・コントロールを直ちに止めるとは宣言できない。長期金利が急騰すれば、経済や金融システムへ悪影響を与えるからだ。

ちなみに、未曽有の公的債務が積み上がっているにもかかわらず、すでに日銀がイールドカーブ・コントロールを採用しているため、ここでシムズ理論が実践され、追加財政が開始されれば、それはすなわち、「財政従属」の明白な開始を意味する。

通常、我々が金融政策を論じる際、リカーディアン型政府を前提にしていた。つまり、経済と物価の安定を図るべく金融政策を決定し、政府はそれを前提に、財政運営を行う。

しかし、非リカーディアン型政府は公的債務の返済に責任を持たず、中央銀行がその尻拭いをする。中央銀行の金融政策の主目的は、国債管理、すなわち長期金利の上昇回避となり、マクロ経済や物価の安定ではなくなる。イールドカーブ・コントロールがすでに採用されているため、日銀が現在の政策を続けるだけで財政従属への移行となる。

<危機の臨界点が訪れるのは2025年か>

Q5)追加財政が繰り返されると、インフレではなく、金利が上がるのではないか。

シムズ理論が採用されるか分からない現状では、あくまで頭の体操だが、人々のインフレ期待が簡単には変わらないとすれば、追加財政が繰り返され、国債の需給悪化から金利上昇圧力が増すだけかもしれない。リフレ派の困ったところは、インフレが醸成されないのは金融緩和が足りないからと主張することだが、追加財政に対しても同様の主張がなされるのは目に見えている。

問題は、長期金利が上昇すると、マクロ経済や金融システムに大きな悪影響が及ぶことだ。それを避けるため、日銀は国債購入を増額し、その結果、バランスシートは止めどもなく膨張する。日銀は財政赤字の2倍の国債を毎年購入し、国債発行残高の4割強をすでに保有しているが、それがさらに膨らむ。追加財政に伴う金利上昇を抑えようと中央銀行がバランスシートを際限なく膨らませれば、必ずインフレは生じるはずだ。

Q6)どのようなメカニズムでインフレが始まるのか。

すでに日本経済が完全雇用にあることを考えれば、それほど追加財政を繰り返さなくても、需給ギャップが改善し、インフレ率が上昇する可能性もある。金融政策はゼロ金利制約に直面すると効かないが、継続的な追加財政は、将来負担の増加懸念が現役世代の消費を抑制するなどの非ケインズ効果がよほど大きく現れなければ、需給ギャップの改善を通じ、インフレ圧力を生む。

また、公的債務の発散が懸念されれば、理屈上は、長期金利上昇圧力や円安圧力が増すが、前者については、すでに日銀が証明して見せた通り、抑え込むことは難しくない。問題は、金利を引き上げられないため、円安圧力については、抑えられない点だ。

むしろ、円安でインフレが上昇すると、長期金利に上昇圧力が掛かり、それを日銀が吸収すると実質金利が低下し、さらなる円安とインフレのスパイラルがもたらされる。限界はあるものの、政府のドル売り・円買い介入で円安を抑え込もうとするのだろうか。円安ドル高を嫌うトランプ政権が協調してドル売り・円買い介入に付き合えば抑え込めるだろうか。

Q7)インフレ上昇で公的債務は圧縮されるのか。

インフレが上昇すれば、実質成長率が低迷しても、名目成長率の上昇で税収は増えるから、公的債務は圧縮される。これが、シムズ理論が説明するインフレ税による公的債務圧縮だ。

もちろん、シムズ教授も高インフレは想定しておらず、インフレ率が上昇すれば、伝統的金融政策の有効性の復活で、非リカーディアン型財政行動を修正すればよいと考えているはずだ。そうなれば、消費増税もPB黒字目標も再開できる。だが、それは「ハーベイロードの原則(賢人政治)」を前提にしたものであり、現実の社会では、うまくいかないというのが筆者の従来からの考えだ。

選挙に直面する政治家が、インフレが上がれば追加財政を止めるというのは現実的な仮定か。追加財政を止めれば、実際問題として「財政の崖」による景気の落ち込みに直面するため、必ずや繰り返される。

繰り返す分には、コストは物価上昇だけで済み、有権者の嫌う増税も歳出削減も不要だ。我々は、良識ある善良な専制君主の下で政策を決定しているのではなく、議会制民主主義の下で、選挙に直面する政治家が、複雑な政治過程の中で政策を決定する世界にいることを忘れてはならない。

Q8)中央銀行制度が骨抜きになるのか。

中央銀行制度が確立する前は、政府自らが発行する政府紙幣が大量に印刷されて財政ファイナンスが行われ、それが高率のインフレにつながる現象も頻繁に観測された。それはまさに非リカーディアン的世界であり、政府の負債(公的債務残高)が物価動向を規定していた時代だ。

現代において、高率のインフレが回避されるようになったのは、中央銀行がうまく物価のコントロールを行うようになったから、と説明されることが多い。確かにそうした面もあるが、高率のインフレが回避されるようになった真の理由は、政治的に独立した中央銀行制度の確立によってマネタイゼーションの誘惑を政府自らが断ち切ったためである。組織形態はともあれ、政府が自制を失い、再び非リカーディアン型政府に移行すれば、高率のインフレが訪れる。

Q9)非リカーディアン型政府へのシフトは日本だけの現象か。

政府が自己抑制として、政治的に独立した中央銀行制度を確立したのは、民主主義がうまく回っていたから、というのが筆者の第1の仮説である。そして民主主義がうまく回っていたのは、高い成長の時代だったから、というのが筆者の第2の仮説だ。

しかし、今や高い成長の時代は終わり、分配すべき成長の果実は失われ、負担を配分する時代に入っている。当然、負担増は有権者に嫌われ、低成長時代の政治的帰結として、ポピュリズムが世界を席巻している。

第1と第2の仮説から得られる推論(第3の仮説)は、「低成長の時代には、民主主義がうまく回らず、リカーディアン型政府は非リカーディアン型政府に取って代わられ、中央銀行は再び国債管理を割り当てられて、社会は高率のインフレを経験するようになる」というものだ。近年のポピュリスト政権の誕生と、金融政策から財政政策への世界的なシフトはこうした文脈で捉えるべきではないか。世界的に財政インフレの時代が訪れる可能性がある。

Q10)危機の臨界点はいつどのようにして訪れるか。

経済規模が縮小し、将来の税収では返済できないと人々が認識し始める段階が臨界点であり、その辺りからインフレが始まる。これが現実経済に当てはめた場合のFTPLに関する筆者の理解である。

FTPLでは人々の期待が重視されるが、現実の世界では、フォワード・ルッキングな期待形成がなされなくても、総需要に比べ総供給が小さくなる中で、政府消費が膨張を続け、バックワード・ルッキングにインフレが上昇するという極めて分かりやすい現象となるのではないか。具体的なタイミングの1つとして考えられるのは、団塊世代が75歳を迎え、医療費が急増する2025年前後だ。資本の取り崩しが始まり、潜在成長率が明確なマイナスの領域に入る。

もし2019年10月の消費増税を先送りすれば、内閣府の試算から類推される通り、仮に高成長が実現しても、PB黒字は2025年も達成されない。もちろん、資本輸入で資本蓄積を賄い、潜在成長率を維持することも理論上は可能だが、資本流入を促すための金利上昇に、政府と日銀を合わせた統合政府の巨額の負債は耐えられなくなっているはずだ。

仮に運良く2025年問題に対応できても、団塊世代が85歳を迎え、介護費も急増する2035年問題を乗り切るのは相当難しい。

――関連インタビュー:インフレ税はなぜ日本に必要か=シムズ教授

*河野龍太郎氏は、BNPパリバ証券の経済調査本部長・チーフエコノミスト。横浜国立大学経済学部卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)に入行し、大和投資顧問(現大和住銀投信投資顧問)や第一生命経済研究所を経て、2000年より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)


コラム:トランプ流保護主義に「ドル安」は不可欠=亀岡裕次氏 2017年 01月 30日
コラム:成長の時代はなぜ終わったのか=河野龍太郎氏 2017年 01月 15日
コラム:日米中銀悩ますシムズ案とトランプ政策=永井靖敏氏 2017年 02月 03日
http://jp.reuters.com/article/column-ryutaro-kono-idJPKBN1600IX

 


 

コラム:トランプ米大統領の為替認識に潜む「危険」

Edward Hadas

[ロンドン 20日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 生半可な考えは、まったくのでたらめよりも危険な場合がある。トランプ米大統領の為替レートに関する考えはその良い例だ。それは一面で本当だが、提唱している解決方法が問題自体より有害なことから、なおさら始末が悪い。

トランプ氏と米国家通商会議のナバロ委員長は、中国とドイツ、そして恐らく日本が人為的に為替レートを押し下げているとみなしているようだ。その結果、米国から雇用が奪われているという。

こうした批判には一片の真実が含まれている。為替レートは輸出入にある程度影響し、対外収支は雇用を幾分左右する。例えば中国は、人民元を強引に低いレートに抑え込み、輸出拡大を後押しして、経常黒字は2007年に国内総生産(GDP)の10%まで拡大した。この大規模な対外不均衡は、雇用の不均衡も意味した。つまり中国が世界に製品を提供するために生み出した雇用は、残りの世界が中国向け輸出に絡んで創出した雇用よりも多くなった。

しかしこれは真実としても、ほんの些細な事象にすぎない。米経済が抱える問題において、不公正な貿易というのは重要度のリストでは下の方に属する。米国の対GDP比2.5%という経常赤字は、国内の労働市場や経済的繁栄に相応の変化をもたらすにはあまりにも小さすぎる。米国の輸出産業が創出する雇用、米国への輸入品を外国が生産することで奪われる雇用の量はさほど差はない。

また経常収支から見ていくらかの「雇用の赤字」があるとしても、その大半は資本収支の黒字で穴埋めされるはずだ。資本収支が黒字ということは、外国人が対米輸出で稼ぎ、米国からの輸入品購入に使っていない資金が存在する。これらは米国の金融市場を通じて雇用を伴う投資として有効に活用され得る。もし米国がその機会を逃しているなら、それは貿易相手国が悪いからではなく、愚かな政府もしくは金融システムの不適切な管理が原因だろう。

百歩譲って対外不均衡が問題だと考えても、ドイツや米国のような先進国では為替レートは解決策としては大して効果がない。確かに、通貨安はしばらく輸出拡大に寄与するが、別の要素の方がずっと影響力が大きい。高度な製品は価格よりも品質やサービスが物を言う。さらに世界的なサプライチェーンの存在は、大幅な為替レートの変動も最終価格段階ではかなり小さくしてしまう。

各国はやろうと思えば国内の税制や資本フロー、金融政策を駆使して貿易に影響を及ぼせる。トランプ氏に政策を助言しているエコノミスト、ジュディ・シェルトン氏はウォールストリート・ジャーナル紙に対して、日本の大規模緩和は主に輸出促進が狙いで、米国に打撃を与えているとの見解を示したが、いささか被害妄想の気がある。さまざまな国家が米国のためにならない経済運営をしているからというだけで、不正になるわけではない。

いずれにせよ通貨価値に焦点を当てた政策は予測不能で、貿易への影響も測りがたい。日本のケースを見ても、アベノミクスが輸出にプラスかどうかこれまでのところはっきりしていない。

為替レートについてもう少し理屈の通った不満と言えるのは、変動が激しすぎることだ。ドルの実質実効レートは2011年以降に39%上昇し、02─11年は33%も下落した。いずれもなぜそうなったのかもっともらしく説明したり、正当化するのは難しい。

より短期的な乱高下も同じくその動きは勝手気ままで、国境を越えた投資のハードルを上げる。為替トレーダーにとってこそ好都合だが、実体経済には足かせとなる。

こうしたボラティリティを抑える最適な方法は、実効レートの安定化に主要中央銀行が協力することだ。国際協調が実現すれば、米国の富はより急速に、より着実に、より安全に増加していける。しかし現時点でこれは想像外の世界にある。シェルトン氏は固定相場への回帰を主張するだけでなく、為替市場への政府介入も非難している。

トランプ氏は、無害な貿易不均衡への対応として経済政策の中で最も信頼性が劣る「輸入代替(輸入に頼っていた製品を国産に転換すること)」を提案した。

同氏や側近は、輸入代替を実現する一番のやり方は個別企業たたきと関税措置の組み合わせだと考えている。もし外国政府が報復に動けば、お互いを傷つける貿易戦争が勃発する可能性がある。たとえ通商面でそれほど波風が立たなくても、米経済は国際貿易に背を向けることで大きな損をすることになる。輸入代替は、米国民が現在の輸入品より質が低く割高な製品を生産する結果を招く。輸出産業の雇用は、より低質なかつての輸入品の代替製品生産業に置き換えられる。

為替レートは何世紀にもわたって経済が抱える問題の1つになってきた。固定相場制度の時代は、動きがあまりに小さかったり、突然崩壊する場面があった。現在の変動相場制では、動きが急速すぎるか、突発的すぎる面がある。それでもトランプ氏の考えのように為替レートに対する筋の悪い解決策は、何も手を打たないよりも害が大きい。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。


視点:トランプ円安は幻想、進む「米国の日本化」=青木大樹氏 2017年 01月 23日
コラム:中国の外貨準備高、越えた危険な一線 2017年 02月 08日
女性元行員、4億円を着服か 2016年 12月 22日
http://jp.reuters.com/article/usa-trump-forex-breakingviews-idJPKBN1600AN


 


 
今年がドルのピーク、マネーは米国から離れて行く−プリンシパル
小宮弘子、Chikako Mogi
2017年2月21日 08:05 JST更新日時 2017年2月21日 16:17 JST

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• 米国からより成長率の高いところへマネーはシフトへ
• 年後半に日欧で金利上昇圧力、米長期金利は一段と上昇へ

「今年はドルにとってピークの年だろう」ー。プリンシパル・グローバル・インベスターズのチーフグローバルエコノミスト、ボブ・バウア氏は、世界的に景気回復基調が強まる中で、グローバルマネーの米国離れが起きるとみている。
  バウア氏は20日のインタビューで、「一般的に世界経済が回復している時は、マネーが米国からより成長率の高いところに流れるため、ドルにとってフレンドリーではない」と指摘。「世界生産高をドルで見た場合、2015年は1930年代以降で最悪のリセッションだったが、昨年の第1四半期から回復が始まり、今や世界中で名目成長率がピックアップしている」とし、グローバルマネーの流れを変える環境が整いつつあるとの見方を示した。同社の運用資産総額は4000億米ドル(約45兆円)超。
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iNTvfhdZkzE8/v2/-1x-1.png

  欧州の政治不安や米トランプ政権の保護主義的姿勢を背景に世界的なリフレトレードに一巡感が広がる中、ドル指数と米長期金利は昨年末以降、伸び悩んでいる。
  バウア氏は、ドイツや日本の国債利回りの上昇なしに、米長期金利がさらに上昇するのは難しいとした上で、欧州ではインフレ率が高まっており、夏以降にはドラギ総裁ら欧州中央銀行(ECB)のハト派トーンが弱まると予想。日本はデフレが終わり、年末に向けて日本銀行が長期金利の誘導目標を現在のゼロ%から0.25%程度に引き上げると見込み、「この両方が起こった時に米金利は一段と上昇する」と語った。
  一方、米国の金融政策については、「今年は2回、恐らく3回の利上げで十分」だとし、市場に準備させるためにも、次回利上げは3月でなく、5月か6月の公算が高いと予想。米長期金利は、年末までに3〜3.5%まで上昇する可能性があるとみている。ただ、欧州や日本でも利回りが上昇しているため、ドルは「それほど強くはならない」と言う。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i6oZVA_MI5b8/v2/-1x-1.png

  トランプ米大統領の政策については、「米国や世界経済にとってかなりポジティブ」な減税・規制改革と、内容によっては「かなりネガティブ」な通商政策の「二つのトランプ」があるが、後者についてはすでに一部主張を軟化させており、米政府は税制や規制改革に重点的に取り組むだろうと語った。
  
  市場ではトランプ政権の為替政策に対する警戒感も強い。バウア氏は、トランプ氏はドル高は製造業の雇用を増やすという目標にとって助けにならないとコメントしているだけで、ドル高是正で行動を起こすとは思わないと指摘。そもそも世界の準備通貨であるドルの水準に対してトランプ大統領ができることはほとんどないとし、「トランプ氏はいくつかツイートする以外、ドルにあまり重点を置かないだろう」と述べた。
  ドル・円相場については、年後半に120〜125円へ上昇する可能性はあるものの、それ以上のドル高・円安進行の可能性は低いと予想。日本の利上げが遅い中で、110円を超える円高も考えにくいと語った。
  バウア氏は今年の米経済について「3%に近い」成長を予想。「世界経済において最も重要なのは根本的な経済状態であり、われわれがまだ2015年のリセッションからの著しい回復局面の最中にあるということは、根本的なファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)はかなり良好で金利の方向性は緩やかに上向きということだ」と指摘した。
  その他の発言の要旨は以下の通り。
• 株に対して強気。特に米国株やヘッジベースの日本株は5〜10%程度の上昇余地
o 一部ディフェンシブ株、有配株は割高。景気循環株、バリュー株および小型株の上昇を予想
• 金利上昇でほぼ全てのソブリンボンドを推奨せず。社債はオプションも、デュレーションは短め
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-20/OLP1S36KLVRX01

 

 

焦点:新聞業界に思わぬ「トランプ好景気」、広告増を招くか

Jessica Toonkel

[ニューヨーク 16日 ロイター] - 伝統的ニュースメディアに対して「野党」や「フェイク・ニュース(偽ニュース)」とこき下ろすトランプ政権の敵対的な姿勢は、電子版に読者や広告主を集めようと苦心する新聞業界にとって今年最大の希望になりつつある。

ニューヨーク・タイムズ(NYT.N)、フィナンシャル・タイムズ(FT)、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)やガネットは、2016年の大統領選挙期間中に、偏らない報道を戦略的に売り込むことによって獲得したデジタル版の購読者を、今後の足掛かりにしたいと願っている。

ただし、こうした新たな読者層が、広告収入につながるかどうかについては、リスクが残る。一部の新聞に対しては、政治的に偏向しているという批判もあるからだ。調査会社エデルマンが28カ国3万3000人以上を対象に行った調査では、メディアに寄せる信頼が過去最低となる35%にまで落ち込んでいる。

とはいえ、これまでのところ新聞社の経営幹部や投資家が楽観的に構えるだけの理由はある。

トランプ大統領がツイッター上の投稿で「破綻しつつある」と表現したニューヨーク・タイムズは、昨年10月─12月に電子版の有料会員が約27万6000人増え、過去最大の伸びを記録。今期の電子版の広告収入も10─15%増を予想している。同社は電子版の有料会員も20万人増加することを期待している。

WSJは直近の四半期で電子版の有料会員を約11万3000人増やした。約12%近い急成長だ。同社は、1月はさらに好調だというが、詳細は明らかにしていない。

FTの電子版有料会員数は昨年10月─12月に6%増加し64万6000人に達した。一方、ガネットの「USAトゥデー・ネットワーク」を構成する米地方新聞109紙のデジタル有料会員数は、同四半期に26%増えて18万2000人となった。

ガネットは、同ネットワークの一部であり有料課金モデルではないUSAトゥデーについて、収入が1.4%増加したと指摘。USAトゥデーの昨年10月―12月期の広告収入のうち68%はデジタル部門が稼いだものだという。

プロパガンダ目的で虚偽の記事を公開する「偽ニュース」サイトが増えるなかで、伝統的なメディアにとってもう1つの課題は、折に触れて彼らの報道を「偽ニュース」だと表現するトランプ大統領が示す敵意にどう対応するか、である。

大統領を補佐するスティーブ・バノン上級顧問は1月、ニューヨーク・タイムズとのインタビューで、「野党は(民主党ではなく)メディアだ」と述べている。

<「傾きなし」と宣伝>

WSJは、大統領選の期間中にウェブサイトと紙面で、広告主と読者の信頼を得るための広告を掲載した。その1つはピンボールマシンの写真に「傾きなし。公平な選挙報道」というキャプションを付したものだ。

WSJは選挙後も、同紙のコンテンツは「現実の編集部で書かれ、編集され、校閲されたもの」だと強調する広告を掲載している。

購読料収入の増加に力を入れるニューヨーク・タイムズは、1月、「真実」と題するキャンペーンを開始。「真実。そのためにはあなたの支援が必要だ」と読者に購読契約を促すオンライン広告である。

ニューヨーク・タイムズのマーク・トンプソンCEOは最新の業績報告のなかで、同紙が公正で正確であることを読者に理解してもらうことに活路を見出しており、今後数週間でまた新たな販売キャンペーンを開始する計画だと述べている。

FTは、大統領選挙、そして現在はトランプ政権に関する報道を宣伝する「事実、真実」キャンペーンを行っている。

「USAトゥデー・ネットワーク」という呼称のもとで刊行物のブランド再編を行なったガネットは、同社が全米に地方紙ジャーナリストを抱えていることを強調するために大統領選挙を活用した、と最高マーケティング責任者アンディ・ヨースト氏は語った。

<広告主は集まるか>

選挙運動によってあおられた米国内の分断ゆえに、ブランド側は、政治的に偏っている印象のある出版物を避けているという。ロサンゼルスに本拠を置くブランド戦略代理店フェノメノンで戦略担当者を務めるナタリー・プラウト氏はそう指摘する。

たとえば、11月の選挙以来、あるブランドがハフィントンポストに広告を出稿すれば、そのブランドはリベラル派の主張を支持していると認識されることへの理解が高まってきた、とプラウト氏は言う。

またブランド側では、「フェイク・ニュース」と見られる記事に自社の広告が表示されてしまうことも懸念している。したがって、第三者を通じてデジタル広告枠を購入する「プログラマティック広告」を利用する場合にも、これまでより神経を尖らせている。

自社の広告が表示されたくないサイトを挙げるよりも、どのサイトに表示したいかを選択する出稿企業が増えている、とニューヨークに本拠を置く広告代理店ザ・メディア・キッチンのバリー・ローウェンタール社長は語る。

最近は購読者数が増えているとはいえ、新聞各紙は依然として強い逆風に悩まされていると新聞業界のアナリスト、ケン・ドクター氏は指摘。「紙媒体の広告料は急落している」とドクター氏。「基本的な状況は変わっていない」

WSJを系列下に置くダウ・ジョーンズの最高マーケティング責任者スージー・ワットフォード氏は、デジタル版購読者の増加は、たとえばカンファレンスなど、他の分野での広告出稿を促すうえでも有益であると話している。

「人々を呼び込む能力が上がるほど、健全な広告ビジネスを構築して維持することが可能になる」とワットフォード氏は語った。

(翻訳:エァクレーレン)

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英国人の最大懸念、移民でなく景気


[ロンドン 21日 ロイター] - 調査会社ニールセンが21日公表した調査では、英国人がテロや移民の問題よりも景気について懸念していることが明らかになった。英国の欧州連合(EU)離脱計画について懸念が強まっていることが改めて示された。

調査は504人を対象にオンラインで実施。16年末時点で最も懸念が大きい2つの問題の1つとして経済を挙げた回答者は28%と、1年前から12%ポイント上昇。一方、テロ、移民との回答はともに20%に低下した。1年前はテロは32%、移民は22%だった。

ニールセンの英国・アイルランド担当マネジング・ディレクター、スティーブ・スミス氏は「EU離脱に向けた政治・経済の計画策定が進むなか、消費者は国内雇用の喪失について懸念を強めている」と指摘した。

英政府はEU離脱交渉で移民流入の制限を優先し、EUの単一市場から脱退する方針を明らかにている。

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ポルトガル、IMF融資の半額を返済完了
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http://jp.reuters.com/article/postbrexit-economy-idJPKBN16004G

 

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コメント
 
1. 2017年2月21日 20:14:27 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[3684]

>金融政策もほぼ限界である。無理を承知で金融緩和を進めて円安が進めば、一時的にはインフレ醸成も可能かもしれない。

それができるなら、限界とは言わない

仮にデフレにもかかわらず財政再建姿勢が強い場合、

新規国債発行は枯渇し、Taperingを強いられれば、いずれは円高に反転する


>そうなると、2014―15年と同様、実質購買力の棄損する家計の不満が募り、次期衆院選には逆風

これはシムズ理論に基づくバラマキでも同じ

結局、シムズ理論というのはインフレ金融課税により、財政を悪化させずに消費や投資、企業活動を支援して景気刺激することにあるのだから当然ではある

>低成長の時代には、民主主義がうまく回らず、リカーディアン型政府は非リカーディアン型政府に取って代わられ、中央銀行は再び国債管理を割り当てられて、社会は高率のインフレ
>タイミングの1つとして考えられるのは、団塊世代が75歳を迎え、医療費が急増する2025年前後だ。資本の取り崩しが始まり、潜在成長率が明確なマイナスの領域

そうだな

特に、日本のように超少子高齢化による社会保障コストと労働コストが高まり、安全保障コストも増加し、起業マインド低下による投資減・産業の衰退といった3重苦に陥っている場合

現状の改革がなけれは、いずれは、そうなるのは確実だろう


>2019年10月の消費増税を先送りすれば、内閣府の試算から類推される通り、仮に高成長が実現しても、PB黒字は2025年も達成されない

こちらは間違い

財政再建にこだわり、企業課税を強化したら、国内産業は、さらに衰退し、もっと悪いことになる

それこそシムズが言うように、インフレ課税で自然増税になるのが望ましい


>資本流入を促すための金利上昇に、政府と日銀を合わせた統合政府の巨額の負債は耐えられなくなっているはず

これも間違い

増税しようがしまいが、社会保障コストが増大して、国内生産力に対する負荷が大きくなれば、いずれは、確実にそうなる

つまり社会保障を含めた国民負担率には限界があるから

海外に比べ、大きくし過ぎれば、高付加価値のグローバル企業は消え、富裕層も消え、さらに貧困化悪化が加速して、国家崩壊が早まるだけ

それを防ぐには、やはり生産性上昇(企業の供給効率化、& 社会保障サービス効率化)か、

サービスをカットし、公的医療や介護を諦め、自己責任でやってもらうしかないということだ



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