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男女間賃金格差は過去最低に  労働力の質と生産性−賃金ギャップ パートタイム労働者の賃金は生産性に見合っている
http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/580.html
投稿者 軽毛 日時 2017 年 2 月 28 日 11:45:07: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

男女間賃金格差は過去最低に
〜女性管理職比率上昇も30%目標は未達の公算大〜 発表日:2017年2月23日(木)
第一生命経済研究所 経済調査部
担当 主任エコノミスト 柵山 順子
TEL:03-5221-4548
要旨
○賃金構造基本統計調査によれば、2016 年の女性の賃金水準は男性の 73.0 となり、格差は過去最小とな
った。格差を縮小させた要因は、女性管理職比率の上昇や労働時間の差の縮小であった。
○女性管理職比率は 9.3%と過去最高となったものの、2020 年女性管理職比率 30%は未達になる公算が
大きい。管理職の一歩手前である係長層については、明確な増加基調が続いており、こうした層の拡大
を管理職につなげられるかどうかが鍵となってくるだろう。
○女性の勤続年数は依然男性対比短い状況が続いている。女性管理職比率上昇に向けては、就労継続支援
が引き続き不可欠だ。また、足元で増えている 40 代女性の正規雇用者に代表される中途採用者をいか
に登用していくかが新たな課題となってくるだろう。こうした取組を通じ、公平かつ柔軟な労働市場の
形成が求められる。
○賃金格差は過去最小に
平成 28 年賃金構造基本統計調査が公表された。
調査結果によれば、従業員 10 人以上の企業におけ
る女性一般労働者の所定内給与は、男性を 100 と
した時に 73.0 となり、前年から格差は▲0.8pt 縮
小し、格差は過去最小となった(図表1)。一方
で、職階別データのある従業員 100 人以上企業に
おける女性一般労働者の所定内給与は、男性を
100 とした場合に 74.6 と昨年(73.9)から格差が
縮小、こちらも過去最小の格差となった。
項目別に賃金格差の要因をみていくと、管理職
比率(職階)や労働時間の差を理由とした賃金格
差が縮小している(図表2)。女性管理職登用や女性就労促進策を受け、管理職登用される女性が増えてき
たことを反映したものといえそうだ。ただし、管理職比率の差を要因とした賃金格差は依然 9pt を超えるな
ど、男女間賃金格差の最大の要因となっており、一段の賃金格差縮小には女性の管理職登用は避けて通れな
い。また、格差要因のうち賃金構造基本調査の調査項目では説明できない部分については 10 年以上ほぼ改善
が見られない(図表3)。ここには明確な理由の無い男女間格差が含まれており、男女間賃金格差の根はま
だまだ深い。
○ 女性管理職比率目標の達成は未達の公算大
管理職比率をみると、2016 年の課長以上役職者に占める女性の割合は 9.3%と前年(8.7%)から上昇した。
(図表5)ただし、昨今の取り組み強化により改善しているものの、2020 年に 30%という目標にはほど遠い。
現状のペースでは、2020 年に 12%弱といったところであり、目標達成には毎年5%pt 占率を上げる必要が
ある。そのためには、毎年現状の管理職の半数程度の人数を新規に登用する必要があり、達成は不可能とい
えよう。
一方で、女性管理職登用への取組強化の影響で、管理職一歩手前といえる係長の人数はここのところ明確
な増加基調だ。増加ペースも加速しており、2016 年は前年比+14.4%の増加となった(図表6)。係長に占
める女性比率は 18.6%と、アベノミクス開始以降 4%pt 上昇している。こうした層の拡大を、しっかりと管
理職登用につなげていけるかどうか、働き方改革や教育の充実が求められる。

○ 新たに課題となる中途採用者の取り込み
今回の結果では、男女間賃金格差、女性管理職比率ともに改善した。こうした中、伸び悩んだものに女性
の勤続年数が挙げられる。女性の勤続年数は 9.3 年と前年(9.4 年)から短縮した。過去をさかのぼってみ
ても、2001 年の 8.9 年からほぼ横ばいでの推移となっている。年功賃金が色濃く残る日本において、賃金格
差の縮小や管理職比率上昇には勤続年数の増加も必要となってくる。就労継続を可能とする支援は引き続き
重要な課題だ。また、足元では 40 代有配偶女性の正規
雇用者が増加している。こうした中途採用の社員をいか
に管理職登用していくかが新たな課題となってくる。
中途採用者を取り込む枠組みの形成は、転職市場の形
成につながり、女性だけでなく、男性にとっても柔軟な
労働市場への一歩となる。人口減少下、労働力がより希
少となる中で男女間賃金格差の是正や女性管理職登用を
進め、公平な労働市場を形成することは重要だ。同時に、
これらへの取組を通じて、より柔軟な労働市場を形成し
ていくことが求められる。http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/pdf/macro/2016/saku170223.pdf


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http://www3.keizaireport.com/report.php/RID/300580/

 

労働力の質と生産性−賃金ギャップ ?パートタイム労働者の賃金は生産性に見合っているか??

執筆者 森川 正之 (理事・副所長)
発行日/NO. 2017年2月 17-J-008

概要

本稿では、最近の日本企業における生産性−賃金ギャップを分析する。具体的には、パートタイム、女性、大卒労働者の賃金が、生産性との見合いで過大なのか過小なのかを推計する。分析結果によれば、パートタイム労働者および女性労働者の賃金水準は、生産性への貢献とおおむね釣り合っている。この結果はあくまでも平均値であり、ミクロレベルでは、企業の生産性への貢献に比して賃金が過小な労働者、過大な労働者が混在しているはずである。しかし、平均的に生産性と賃金が均衡しているということは、市場競争の下で、企業が合理的な賃金設定を行っていることを示唆している。政策的には、全体としての賃金格差を縮小していくためには、相対的に生産性の低い労働者の生産性自体を引き上げていくような人的資本投資が不可欠なことを示唆している。
http://www.rieti.go.jp/jp/publications/summary/17020015.html


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労働力の質と生産性−賃金ギャップ
?パートタイム労働者の賃金は生産性に見合っているか??
1.序論
本稿の目的は、日本企業における労働者の質と生産性・賃金の関係、具体的には、雇用形
態・性別・教育水準の違いによる生産性−賃金ギャップの有無及びその大きさを実証的に分
析することである。
「同一労働同一賃金」をめぐる議論が続いているが、この問題の難しさは、何をもって同
一と捉えるかという点にある。そもそも賃金は労働者間で大きなばらつきがあるが、現実に
観察される賃金の差が妥当なものなのか、非合理なものなのかは、単純に賃金水準を比較す
るだけでは判断できない。効率性の観点からは、賃金が労働者の生産性に見合っているかど
うかが本質である。生産性が同じということは、経済学的には究極的な同一労働と言える。
人種・性別等による差別に関する理論・実証研究の代表的なサーベイ論文である Altonji and
Blank (1999)は、同じ生産性(equally productive)であるにも関わらず異なる扱いを受けてい
る状況を、差別(discrimination)と定義している。
非正規労働者や女性の賃金が、その生産性に比べて低いならば賃金は過小ということに
なり、その場合、賃金水準を引き上げることが効率性の観点からも公平性の観点からも望ま
しい。他方、生産性と賃金が見合っているならば、賃金の引き上げは効率性を損なうため、
賃金を引き上げようとするならば労働者の生産性を引き上げるような対応が必要になる。
特に、女性・非正規労働者は製造業に比べてサービス産業に多いことに鑑みると、サービス
産業の生産性向上という政策課題とも密接に関連している。1
性別・年齢・学歴・雇用形態といった労働者の属性による賃金格差については、賃金関数
の推計という形で多くの実証研究が行われてきている。そして、見かけ上の賃金格差のうち
どの程度が労働者の属性の違いで説明されるのかは、かなり解明されてきている。また、最
近は、統計では観測不可能な個人特性の影響も考慮した精緻な実証分析も存在する。一方、
労働者の属性による生産性の差についての研究は、その政策的な重要性に比して意外なほ
ど少ない。多くの職種において、個々の労働者の生産性を直接に計測することが難しいこと
が、その大きな理由である。2
しかし、労働者の生産性の計測は難しいとしても、企業レベルの生産性はミクロデータを

1 一時点での生産性の違いだけでなく、長期雇用インセンティブによる年齢・勤続によるギャッ
プもありうる。ただし、非正規労働者は比較的勤続が短いので、企業が利潤最大化行動を採って
いるとすれば、短期的に生産性と賃金が釣り合う傾向が強いはずである。
2 ただし、プロ・スポーツ選手、コールセンターのオペレーター、出来高制の職業など個人レ
ベルのアウトプットが容易に計測可能な職種のほか、例えば、教師では生徒の学力向上度、大
学の研究者では論文の出版数やその引用数を用いた生産性の評価が行われてきている。
3
用いて計測することが可能である。したがって、各企業の生産性と賃金水準に対して、労働
者の構成(非正規労働者比率、女性比率、大卒比率等)がどう影響しているのかを比較する
ことにより、労働者の類型別に生産性と賃金のギャップがどの程度存在するのかを推察す
ることができる。
ただし、企業や事業所を対象とした統計には、性別・年齢・学歴といった労働者の属性に
関する情報はあまり含まれていない。したがって、企業統計と労働者統計とをリンクしたデ
ータセットを構築し、労働者の類型(性別、年齢、学歴)別の構成が企業の生産性と賃金に
及ぼす効果を推計し、両者を比較することが一つの解決策となる。こうした観点から、次節
で述べる通り、海外では Hellerstein and Neumark (1995)を嚆矢としてそうした研究がいくつ
か行われてきている。しかしながら、日本では川口他 (2007)などごく少数にとどまってお
り、いずれも 10 年以上前のデータに基づくものである。
こうした状況を踏まえ、本稿では、オリジナルな企業サーベイのデータを使用し、最近の
日本企業におけるフルタイム/パートタイム、性別、学歴による生産性−賃金ギャップを計
測する。
分析結果によれば、パートタイム労働者及び女性労働者の賃金水準は、平均的には生産性
への貢献とおおむね均衡している。高学歴の労働者は、その生産性への貢献に比べて賃金が
やや低い傾向がある。もちろん、本稿の結果は、あくまでも平均値であって、ミクロレベル
では、企業の生産性への貢献と賃金水準が見合っていない(賃金が過大又は過小な)労働者
が存在するはずである。しかし、平均的に生産性と賃金が均衡しているということは、市場
競争の下で、企業が合理的な賃金設定を行っており、特定の類型の労働者全体に対して差別
的な行動を採っているとは言えないことを示唆している。
以下、第2節では、先行研究を概観した上で、本稿の特長を述べる。第3節では、使用す
るデータ及び分析方法を解説する。第4節で分析結果を報告し、最後に第5節で結論と今後
の課題を述べる。
2.先行研究と本稿の特長
日本に限らず、企業・事業所を対象とした統計データに含まれている労働者特性の情報は
限られている。このため、労働者の質が企業の生産性に及ぼす効果を計測しようとすれば、
企業・事業所データと労働者(個人)データとのリンクが必要になる。企業(あるいは事業
所)と労働者のリンクデータを使用した生産性−賃金ギャップの推計は、イスラエル製造業
企業を対象とした Hellerstein and Neumark (1995, 1999)、米国製造業を対象とした Hellerstein
et al. (1999)を嚆矢として、多くの研究が行われてきている。分析の焦点となる労働者特性は、
年齢、性別、人種、学歴など多岐にわたっている。
これまでの代表的な研究を対象に、生産性−賃金ギャップについての分析結果を整理し
4
たのが表1である。製造業を対象とした研究が多いが、最近はサービス産業をカバーしたも
のも見られるようになってきた。3
「生産性≒賃金」と表記したものは、その類型の労働者
の賃金が生産性に見合っている(ギャップは統計的に確認されない)、「生産性>賃金」は生
産性への寄与に比して賃金が過小、「生産性<賃金」は逆に生産性への寄与に比べて賃金が
過大という意味である。この表から明らかなように、ある類型の労働者の賃金が生産性に比
して過大か過小かについての結論は、国により、サンプルや分析方法によりまちまちである。
4
生産性への効果についての分析方法としては、企業の生産・付加価値を被説明変数とした
生産関数の推計によって類型別の労働者の限界生産性を推計するという形のものが多いが、
別途計測した全要素生産性(TFP)を被説明変数として、労働者構成比で TFP を説明すると
いう形での分析もある(Ilmakunnas et al., 2004; Ilmakunnas and Maliranta, 2005)。本稿の分析
は後者のアプローチに属する。
日本の数少ない実証研究としては、川口他 (2007)、Asano and Kawaguchi (2007)が挙げら
れる。川口他 (2007)は、1993〜2003 年の「工業統計」と「賃金構造基本調査」をリンクし
たデータセットを使用して、日本の製造業事業所における年齢に関する生産性プロファイ
ルと賃金プロファイルを比較したものである。その結果によれば、賃金プロファイルの傾き
の方が生産性プロファイルの傾きよりも大きく、若年労働者は「生産性>賃金」、中高年労
働者は「生産性<賃金」となっている。このほか、教育に関しては、教育年数の生産と賃金
への貢献は同程度(生産性≒賃金)であることが示唆されている。分析の焦点ではないため
ほとんど記述はないが、推計結果の表を見ると、女性やパートタイム労働者は生産性に比し
て賃金が過小(生産性>賃金)という結果になっている。
Asano and Kawaguchi (2007)は、「企業活動基本調査」が従業者数の男女別内訳を調査項目
としていた 1992〜2000 年のパネルデータを使用して、男女間の生産性格差と賃金格差とを
比較している。5 同調査は、製造業だけでなく卸売業・小売業等もカバーしている。その結
果は、男女間賃金格差の一部は生産性格差では説明できないこと(生産性>賃金)を示唆す
るものとなっている。6

ただし、いずれも分析対象期間は 2000 年代前半までである。日本では、近年、パートタ
イム労働者や女性就労者が急速に増加している。「同一賃金同一労働」の議論に象徴される

3 ただし、非製造業を対象とした分析では、計測可能な生産性指標に制約があることも多い。
4 この表には含めていないが同様のアプローチによる例として、企業内訓練による生産性−賃金
ギャップを推計した Konings and Vanormelingen (2015), 移民とネイティブ労働者を比較した
Bartolucci (2014)等が挙げられる。 5
2001 年調査以降、従業者数の男女別内訳は「企業活動基本調査」の調査項目から削除された。
6 このほか、Kodama and Odaki (2012)は、1998〜2003 年の「企業活動基本調査」と「賃金構造基
本調査」をリンクしたデータセットにより、主として勤続による生産性−賃金ギャップに着目し
て分析を行っている。推計結果に基づいて労働者の限界生産性と賃金ギャップはあまり大きく
ないと論じているが、多数の交差項を含む推計ということもあり、性別・学歴といった個々の労
働者タイプ毎のギャップの大きさは明らかでない。
5
ように、これら労働者の賃金水準の妥当性に関する政策的な関心は高く、より最近時点のデ
ータによる分析は喫緊の課題である。
また、海外の研究を含めて、企業・事業所を対象にした統計とリンクする労働者統計デー
タは一般に企業・事業所内の全労働者を対象としたものではないため、マッチすることので
きた労働者が企業全体の労働者の平均的な属性を代表していることを仮定することになる
ことに注意する必要がある。7

以上のような状況を踏まえ、本研究では、企業側の統計とリンク可能な補完的サーベイを
実施し、その中で限られた範囲ではあるものの、従業者全体に関する属性情報を収集した。
その結果に基づき、日本企業における雇用形態・性別・教育水準による生産性−賃金ギャッ
プを推計する。パートタイム労働者に関しては、補完的な分析として、「企業活動基本調査」
のパネルデータ(2010 年〜2015 年調査、サンプル企業約 37,000 社)を使用し、観測されな
い企業特性(企業固定効果)も考慮した上で、パートタイム労働者の生産性−賃金ギャップ
を計測する。
本稿の特長は、@最近時点(2015 年)のデータを使用した製造業・サービス産業をカバ
ーする分析であること、A企業内の全従業者の構成に関する情報を利用することで、企業−
労働者リンクデータの制約である抽出率の問題を回避していること、B次節で述べるよう
に、パートタイム労働者の労働投入量についてフルタイム換算した数字を利用し、その労働
投入量について正確な計測を行っていることである。
3.データ及び分析方法
本稿の分析に使用するのは、「企業活動基本調査」(経済産業省)、「経済政策と企業経営に
関するアンケート調査」(経済産業研究所)をリンクさせた日本企業約 3,000 社のデータセ
ットである。
「企業活動基本調査」は、日本企業を対象にした実証研究で多用されている政府統計であ
る。対象企業は、鉱業、製造業、卸売・小売・飲食店、一部のサービス業に属する事業所を
有する企業で、常時従業者 50 人以上かつ資本金 3,000 万円以上の全企業で、毎年のサンプ
ル企業数は約 3 万社である。本稿では、執筆時点で利用可能な最新年である 2015 年調査の
データを使用する。このデータを使用して TFP 及び平均賃金(いずれも対数表示)を計算
し、以下の分析における被説明変数として使用する。

7 例えば、米国の代表的な先行研究である Hellerstein et al. (1999)の従業者カバー率は、平均 12%
である。日本の「賃金構造基本調査」は、事業所規模別に抽出率を定めており、大規模な事業所
になるほど抽出率は低くなる(ただし、調査票のうち「事業所票」において、正社員・正職員と
それ以外の男女別の数字については、常用労働者全体についての情報が利用可能である)。本稿
では、企業から従業者の構成(女性比率、大卒比率等)に関する情報を収集するサーベイを行い、
これと「企業活動基本調査」のデータとリンクすることにより、抽出率の問題を回避する。
6
このうち TFP は、「代表的企業」を基準とするインデックス・ナンバー方式により、ノン
パラメトリックに計測する。8
中間投入を含むグロス・ベースではなく付加価値ベースの
TFP であり、付加価値額は、営業利益+賃借料+給与総額+福利厚生費+減価償却費+租税
公課である。つまり、給与だけでなく退職金や社会保険料の企業負担も含んでいる。
本稿の一つの特長は、パートタイム労働投入量としてフルタイム換算の人数を用いる点
である。「企業活動基本調査」は、2007 年調査以降、パートタイム労働者について、実数と
ともにフルタイム換算での人数を調査しており、この情報を利用する。ただし、企業毎の労
働時間は調査されていないため、フルタイム労働者の労働時間は「毎月勤労統計」(厚生労
働省)の一般労働者(フルタイム)の労働時間データ(産業別)を使用する。資本ストック
は、「企業活動基本調査」の有形固定資産総額の数字である。9
本稿の分析は一時点のクロ
スセクション・データなので、デフレートは行わず、全て名目値を使用する。平均賃金につ
いても、労働費用(給与総額+福利厚生費)をフルタイム換算の総労働者数で割った数字を
使用する。これにより、生産性と平均賃金の両方を、総労働投入時間ベースの数字として整
合的に評価・比較することができる。
「経済政策と企業経営に関するアンケート調査」は、筆者が調査票の設計を行い、経済産
業研究所が(株)東京商工リサーチに委託して実施したものである。「企業活動基本調査」
対象企業を母集団として、上場企業・非上場企業、製造業・サービス産業をカバーする 15,000
社を対象に、郵送により 2015 年 10〜12 月に行った調査で、回答企業数は 3,438 社(回収率
22.9%)である。企業レベルの労働者の属性として、従業者の男女別の数字(常時従業者全
体及び内数として正社員・正職員)、正社員・正職員の平均年齢、正社員・正職員のうち大
卒以上の従業者の比率を調査している。10 回答企業の産業分布を見ると、製造業 48.1%、
卸売業(18.6%)、小売業(11.8%)、情報通信業(5.8%)、(狭義)サービス業(11.5%)、そ
の他産業(4.2%)となっている。
「経済政策と企業経営に関するアンケート調査」の回答企業 3,438 社のうち、「企業活動
基本調査」とマッチできた企業数は 3,138 社である。ただし、TFP をはじめ分析に必要なデ
ータが欠けている企業を除いた結果、最終的なサンプル数は 2,417 社である。11 念のため、
同調査の回答企業と「企業活動基本調査」対象企業の主な特性(平均値)を示したのが表2
である。企業規模(従業者数)、企業年齢、パート労働者比率、TFP、平均賃金を比較してい
る。アンケート調査回答企業と母集団の間に大きな違いがないことが確認できる。
このデータセットを使用し、企業の労働者構成を説明変数、生産性(TFP)、平均賃金を被

8 この TFP 計測方法の利点は、生産関数の関数型に依存しない点にある。同調査を用いて TFP
を計測した最近の例として、Morikawa (2015, 2016)参照。Morikawa (2016)の appendix において計
測の具体的な手続きが記述されている。
9 労働コストシェアを計算する際、給与総額と福利厚生費を合計した総労働費用を使用する。給
与総額は賞与を含み、福利厚生費は退職金を含んでいる。
10 大学院卒の比率も調査しているが、本稿の分析では使用しない。 11 平均賃金を説明する推計ではより多くのサンプルが利用可能だが、同一のサンプルでの比較
を行うため、TFP が推計できない企業は除いている。
7
説明変数とするシンプルな回帰分析(OLS 推計)を行う。各企業の労働者の特性としては、
「企業活動基本調査」から利用可能なパートタイム労働者比率、「経済政策と企業経営に関
するアンケート調査」で調査した女性比率、平均年齢、大卒比率を用いる。12 推計に際して
は、業種(3ケタ)をコントロールし、産業による違いの影響を補正する。生産性や賃金と
の関連が強い企業規模、企業年齢を追加した推計も行うが、後述する通り結果に本質的な違
いは生じない。全サンプルでの推計のほか、製造業、サービス業のサブサンプルでの推計も
行う。分析に使用する変数と要約統計量は表3に示す通りである。
関心事はパートタイム、女性、高学歴の労働者の賃金プレミアム/ディスカウントは、生
産性への寄与に見合っているかどうかであり、生産性関数と賃金関数における労働者特性
の係数の違いである。ただし、TFP を被説明変数とする推計式と賃金の推計式の係数を単純
に比較するのは適当ではなく、生産性に対する各労働者構成の係数は労働シェアで割った
上で、賃金を推計する式の係数と比較する必要がある(Ilmakunnas et al., 2004; Ilmakunnas and
Maliranta, 2005; Vandenberghe, 2013)。13
パートタイム労働者に関しては、補完的な分析として、「企業活動基本調査」のパネルデ
ータ(2010 年〜2015 年調査)を使用し、観測されない企業特性(企業固定効果)も考慮し
た上で、パートタイム労働者の生産性−賃金ギャップを計測する。女性比率、大卒比率とい
った他の労働者特性を考慮することはできないが、この場合には同調査の全サンプルが利
用可能なので、サンプル企業数は約 37,000 社と大きくなる。分析方法は上述のリンクデー
タによるものと同様である。
4.分析結果
4−1.労働者特性と生産性−賃金ギャップ
各種労働者特性を説明変数、TFP、平均賃金を被説明変数とする推計結果は表4に示す通
りである。全産業の結果((1)列)を見ると、パートタイム比率の係数は TFP、賃金のいずれ
に対しても大きな負値であり、パートタイム比率が高い企業ほど生産性・平均賃金ともに低
い。製造業、サービス産業のサブサンプルについても同様の結果だが((2), (3)列)、係数の
絶対値はサービス産業の方が大きい。TFP、平均賃金いずれもフルタイム換算の従業者数を
用いて計算しているため、サービス産業のパートタイム労働者の労働時間が製造業に比べ
て短いことの影響ではなく、純粋にサービス産業の方がパートタイム労働者の生産性への

12 平均年齢、大卒比率は、正社員・正職員に関する数字である。なお、説明変数の二乗項を含む
推計、大学院卒比率を含む推計も行ってみたが、意味のある結果は得られなかったため、以下の
分析では含めない。
13 企業の利潤最大化行動を前提とすると、(∂lnY/∂q)/(1-S)=( ∂ ln w/∂q)となる(Y:付加価値、w:
賃金、q:労働者の質(属性)、(1-S):労働分配率)。
8
寄与が小さく、また、平均賃金も低いことを意味している。14
全産業でも産業別でもパートタイム比率の係数は TFP の推計式に比べて平均賃金の推計
式の方が大きい。しかし、パートタイム労働者の賃金が生産性に見合っているかどうかを評
価する際には、前節で述べた通り、TFP と賃金の推計式の係数の大きさを単純に比較するの
は適当ではなく、TFP に対する係数は労働分配率で割った上で比較を行う必要がある。こう
した補正を行った上で、係数をパーセント換算した結果が表5である。これによると、全産
業の場合、パートタイム比率が 1%高いと TFP は▲0.50%、平均賃金は▲0.48%低いという
関係であり、生産性−賃金ギャップは▲2.1%である。製造業の場合、それぞれ▲0.35%、▲
0.36%、生産性−賃金ギャップ+0.8%、サービス産業では 0.57%、0.54%、生産性−賃金ギ
ャップ▲3.2%である。生産性−賃金ギャップは、産業を問わず非常に小さい。
点推定値と 95%信頼区間という形で図示したのが図1である。標準誤差は賃金に比べて
TFP の推計式で大きいため、信頼区間の幅には差があるが、賃金ディスカウントの幅は生産
性ディスカウントの範囲内である。少なくともこのデータから見る限り、平均的にパートタ
イム労働者の賃金は生産性に見合った水準だと解釈できる。
次に、女性労働者比率の推計結果を見ると、全産業及び製造業では TFP 関数でも賃金関
数でも係数は有意な負値である(表4参照)。ただし、サービス産業では、いずれも非有意
であり、女性と男性の差は、TFP でも賃金でも有意にゼロと異ならないことになる。
パートタイム労働者比率と同様、TFP 関数の推計結果を労働分配率の補正をした上でパ
ーセント換算した結果が表5第2行である。全産業の場合、女性比率が 1%高いと TFP は▲
0.1%、賃金は▲0.07%低く、女性労働者の生産性−賃金ギャップは▲3.3%という結果であ
る。また、有意に推定されている製造業の生産性−賃金ギャップは▲4.7%である。この結
果を見る限り、女性の賃金水準は生産性への貢献に比べていくぶん割高に見えるかも知れ
ない。
しかし、点推定値及び 95%信頼区間(図2)を見るとわかるように、賃金ディスカウン
トの幅は生産性ディスカウントの範囲内であり、平均的には女性労働者の賃金はほぼ生産
性に見合っていると解釈できる。製造業、サービス産業別に見ても同様で、賃金の 95%信
頼区間は生産性の信頼区間の範囲内になっている。15
本稿の分析では性別のフルタイム労働時間は利用できないため、フルタイム労働者でも

14 説明変数として使用した女性比率、大卒比率は正社員・正職員の数字なので、パートタイム
比率の推計係数は、性別や学歴をコントロールした上での正社員・正職員との生産性・賃金ディ
スカウントではなく、正社員・正職員全体とパートタイム全体との比較である。
15 女性の賃金ディスカウントが数%という推計結果は、「賃金構造基本調査」等から観察される
一般的な男女差の数字に比べてかなり小さい。@サンプル(対象企業・事業所)の違いのほか、
Aパートタイム労働者比率をコントロールした上で、フルタイムとパートタイムを含めた男女
差を計測していること(パートタイム内での男女差は比較的小さい)、B男女間の賃金差が相対
的に小さい 20 歳台から 30 歳台の年齢層でフルタイム労働者に占める女性比率が高いこと、C
生産性・賃金の高い企業に女性が比例的以上に就労している可能性(非ランダム・ソーティング)、
が理由として考えられる。
9
女性の労働時間は残業が少ないなどの理由で男性に比べて平均的に短いとすれば、生産性
及び賃金への貢献は、時間当たりで考えるといずれも過小評価の可能性がある。実際、「賃
金構造基本調査」(2015 年)によれば、女性の正社員の労働時間は男性に比べて▲5.5%短い。
したがって、女性比率が高いほど TFP 及び賃金が低いという上述の結果は、労働時間の違
いを勘案すると縮小する。すなわち、フルタイム女性の生産性や賃金が男性に比べて大幅に
低いというわけではない。ただし、生産性・賃金とも同程度に過小評価になるので、生産性
−賃金ギャップの結果には影響しない。
従業者の平均年齢は、TFP よりも平均賃金の推計において係数が大きい傾向があるが、全
産業の賃金関数の推計結果を除いて統計的に有意ではない(表5第3行)。このデータから
は、労働者の平均年齢と生産性や賃金との間に強い関係は確認されない。ただし、平均年齢
という指標は、従業者の年齢に関する指標としてはかなり粗い情報であることに注意する
必要がある。16 残念ながらこのデータセットに年齢階層別の従業者数の情報は存在しない
ため、年齢に関する分析については、その限界を留保した上で、これ以上深入りしない。
学歴(大卒比率)の係数は、全産業及び製造業のサブサンプルでの推計において有意な結
果であった。全産業での推計結果によれば、従業者の大卒比率が 1%高いと、TFP は 0.18%、
平均賃金は 0.10%高いという関係であり、生産性−賃金ギャップは+7.9%である。製造業
では大卒の生産性・賃金プレムアムはやや大きく、従業者の大卒比率が 1%高いと、TFP は
0.31%、平均賃金は 0.18%高く、生産性−賃金ギャップは 13.5%である。17
なお、ここで推計された大卒賃金プレミアム(全産業 9.5%、製造業 17.5%)は、日本の
標準的な賃金関数の推計において得られる数字(30%〜40%)に比べて小さいが、これは、
非大卒の中に短大卒、専門学校卒といった一般の大卒賃金プレミアムの比較対象群(高卒)
とは異なる学歴の者がかなり含まれていることが理由だと考えられる。18
点推定値及び 95%信頼区間(図3)を見ると、全産業及び製造業において大卒比率の TFP
への寄与が平均賃金への寄与よりも上に位置している。すなわち、高学歴の労働者は、生産
性への貢献に比べて賃金がいくぶん過小である可能性が高い。
以上の推定では、労働者特性以外では業種(3ケタ)のみをコントロールしている。一般
に生産性や賃金との関連が強い企業特性である企業規模(従業者数の対数)と企業年齢(設
立からの年数)を追加的な説明変数とした推計を行った結果が表6である。この表には示し
ていないが、TFP、平均賃金のいずれを説明する回帰式でも、予想される通り企業規模の係
数は正、企業年齢の係数は負で、多くが統計的に有意である。パートタイム労働者比率につ
いては全産業、製造業、サービス産業いずれでも高い有意水準の負値であり、女性比率は全

16 平均年齢の二乗項を追加した推計も行ってみたが、意味のある推計結果は得られなかった。
17 大卒労働者の生産性−賃金ギャップが有意なプラス、したがって賃金が過小であることは、
昇進等を通じた将来の賃金上昇や退職金によって補償されているのではないかとの議論があり
うる。しかし、本稿で用いた賃金は福利厚生費(退職金を含む)であり、退職金の多寡による影
響は考慮されている。
18 日本における大卒賃金プレミアムの最近の計測例として Kawaguchi and Mori (2016)。
10
産業と製造業で有意な負値であるなど、基本的にはベースラインの推計結果と類似した結
果である。
TFP の推計係数について労働分配率を補正した上で、パーセント換算して平均賃金の推
計結果と比較したのが表7である。全産業の推計結果によれば、生産性−賃金ギャップの大
きさは、パートタイム労働者▲5.5%、女性▲3.9%、大卒+6.4%である。パートタイム労働
者はマイナス方向に拡大、女性は同程度、大卒はプラス幅がやや縮小するが、本質的な結論
は企業規模や企業年齢をコントロールしない場合と違いがない。
4−2.パートタイム労働者の生産性−賃金ギャップ:パネルデータ推計
以上の分析は一時点のクロスセクション・データに基づくものである。分析対象は労働者
特性のうちパートタイム労働者比率に限られるが、「企業活動基本調査」のパネルデータ
(2010 年〜2015 年調査)を用いて同様の推計を行った。サンプル数は約 37,000 社と大きく、
また、パネルデータなのでその利点を生かして、OLS 推計に加えて企業固定効果を考慮し
た FE 推計も行っている。この場合、観測されない企業特性の影響も考慮した上で、パート
タイム労働者の生産性−賃金ギャップを観察することになる。
全産業のほか製造業、サービス産業のサブサンプルでの推計結果は、表8に示す通りであ
る。OLS 推計でも FE 推計でも、TFP 及び平均賃金のいずれに対してもパートタイム労働者
比率の係数は 1%水準で有意なマイナスであり、パートタイム労働者の生産性、賃金ディス
カウントを示している。パートタイム比率の係数の絶対値が、前のデータセットでの推計結
果に比べて大きいのは、このデータでは考慮されていない性別や学歴構成の違いによる効
果が加わっているためだと考えられる。パートタイム労働者の生産性・賃金ディスカウント
が製造業に比べてサービス産業で大きいという結果は、既述のリンクデータによる分析結
果と同様である。
推計されたパートタイム労働者比率の係数を、TFP について労働分配率で除した上でパ
ーセント換算した数字を示したのが表9である。推計された生産性−賃金ギャップは、OLS
推計では全産業▲1.1%、製造業▲1.5%、サービス産業▲1.1%であり、わずかに「生産性<
賃金」という関係である。他方、FE 推計では、全産業+0.9%、製造業+2.9%、サービス産
業▲0.5%であり、やはり非常に小さな数字だが、全産業及び製造業では「生産性>賃金」と
逆になる。
点推定値及び 95%信頼区間を図示したのが図4である。OLS 推計結果によれば TFP より
も賃金が上に位置しており、「生産性<賃金」という関係が確認できる。他方、FE 推計結果
によれば、製造業では、賃金が TFP に比べてやや下に位置しており、「生産性>賃金」とい
う関係だが、サービス産業では信頼区間の大部分がオーバーラップしている。
いずれにせよ、生産性−賃金ギャップは量的に極めて小さく、全体として見ると、パート
タイム労働者について顕著な生産性−賃金ギャップがあるとは解釈できない。
11
5.結論と課題
本稿は、日本企業における生産性−賃金ギャップを実証的に分析したものである。具体的
には、パートタイム、女性、大卒者の企業の生産性に対する貢献と、平均賃金への効果とが
乖離しているかどうか、すなわち、これら労働者の賃金が生産性との見合いで過大なのか過
小なのかを解明する試みである。
分析結果によれば、本稿のサンプル企業において、パートタイム労働者及び女性労働者の
賃金水準は、平均的に見ると、生産性への貢献とおおむね釣り合っている。一方、大卒労働
者の場合、その生産性への貢献に比べて賃金はやや低い傾向がある。もちろん、本稿の結果
は、あくまでも平均値であり、ミクロレベルでは、企業の生産性への貢献に比して賃金が過
小な労働者、過大な労働者が混在しているはずである。したがって、本稿の結果が、企業・
事業所の現場レベルで「同一労働同一賃金」に向けた取り組みを行う意義を否定するもので
ないことは言うまでもない。
しかし、平均的に生産性と賃金が均衡しているということは、企業が特定の類型の労働者
全体に対して差別的な扱いを行っているとは言えず、市場競争に晒されている企業が平均
的には合理的な賃金設定を行っていることを示唆している。労働者の観点からは、仮に生産
性が等しいという意味で、同一労働同一賃金を正確に実現することができた場合には、パー
トタイム労働者や女性の中でも賃金が上昇する人と低下する人とが同程度生じることを意
味している。
したがって、政策的には、全体としての賃金格差を縮小していこうとするならば、相対的
に生産性の低い労働者の生産性自体を引き上げていくような人的資本投資(教育・訓練等)
が不可欠なことを示唆している。この点、「同一労働同一賃金」の議論において、単に賃金
だけでなく、非正規労働者の教育・訓練機会の問題についても扱われているのは妥当なこと
である。また、人的資本投資を通じて向上したスキルを仕事で活かせるような機会の提供、
業務配分、ローテーションといった人事管理上の工夫も重要である。この点、「同一労働同
一賃金」のための制度設計やその運用に当たっては、生産性への貢献という実質に重点を置
くことが望ましい。形式的な同一性を過度に強調すると、企業の人事管理の現場において正
規労働者と非正規労働者の仕事をジョブ・ディスクリプション上明確に分断すること
(segregation)を促し、結果的に非正規労働者の長期的に見た処遇向上の機会を失わせるお
それがあることに注意する必要がある。
本稿は、あくまでも限られた数のサンプル企業のクロスセクション分析が中心であり、従
業者の特性の情報も、年齢や勤続年数の細かな構成比の情報は含まれていない。したがって、
本稿の分析結果自体は確定的なものではなく、より豊富な情報を含むデータでの分析は今
後の課題である。また、「同一労働同一賃金」の議論において焦点となっている非正規雇用
12
と正規雇用の間の賃金差に関して、本稿で扱ったのは、非正規労働者のうちパートタイム労
働者に限られている。これ以外の類型の非正規雇用については、別途の分析が必要となるこ
とは言うまでもない。

13
参照文献
(邦文)
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功賃金は生産性と乖離しているか:工業統計調査・賃金構造基本調査個票データによる実
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14
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15
表1 生産性−賃金ギャップの研究例
表2 分析対象企業と「企業活動基本調査」対象企業の比較
(注)企業規模は常時従業者数の対数。電力・ガス・熱供給業はサーベ
http://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/17j008.pdf

 

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コメント
 
1. 2017年2月28日 13:01:48 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[3713]

>2016 年の女性の賃金水準は男性の 73.0 となり、格差は過去最小となった。格差を縮小させた要因は、女性管理職比率の上昇や労働時間の差の縮小

今後、WLBの強化と、労働時間短縮の動きが強化されれば、さらに女性労働力の活用が進み、男女差は縮小していくことになるだろうな



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