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40兆円の損失を生む「子どもの貧困」の背景 正月を知らない子どもたち…貧困がもたらす国の損失 奨学金頼みで老後破産?…我
http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/763.html
投稿者 軽毛 日時 2017 年 3 月 06 日 20:45:35: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

40兆円の損失を生む「子どもの貧困」の背景

東北福祉大学特任教授 草間吉夫
2017年03月06日 11時07分
無断転載禁止
 「子どもの貧困」が深刻な問題となっている。進学や就職の道を狭められた子どもたちが、大人になってからも生活に苦しむケースが少なくない。このような状況で、子どもの貧困を福祉の観点のみから支援するだけで十分なのだろうか。児童養護施設で育ち、内閣府の子供の未来応援国民運動発起人・アドバイザリーを務める草間吉夫氏が解説する。

ある日、お母さんが蒸発した


 私は1966年、生後3日で乳児院に預けられ、高校まで茨城県内の児童養護施設(以下、養護施設)で育った。

 施設でともに育った先輩に、50代の男性Aさんがいる。

 両親と妹2人の5人で暮らしていたAさんが養護施設に入所したのは小学校低学年のころ。ある日、母親が突然蒸発した。それ以来、Aさんの父親は、ギャンブルにのめりこむようになって借金を繰り返し、一家の生活は一気に苦しくなった。

 満足に食事もできなくなり、Aさんは、この施設に身を寄せた。高校を卒業したものの、住所不定の父親を頼ることもできず、社員寮のある都内の会社に働き口を求めた。身寄りのない、初めての土地だったが、そこで自立を目指すはずだった。

 それから30年以上がたった昨年のことだ。都内のある区役所から、Aさんについて身元照会の連絡が施設に入ったという。Aさんは、何らかの理由で職を失い、その後生活が行き詰まって区役所に駆け込んだ。独り身のAさんは、結局、生活保護を受けることになった。

 なぜ、Aさんの半生は、こうも過酷なのか。

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大人になってからも引きずる「子どもの貧困」 >>

就職できても安定しない生活


 残念ながら、Aさんのようなケースは、養護施設の退所者に珍しいことではない。

 かつて、子どもたちが養護施設に入所してくる理由は、親の行方不明や長期入院などによる経済的要因がほとんどだった。一家の収入が途絶え、日々の生活が苦しくなり、子どもたちの衣食住は脅かされた。こうやって入所してきた子どもたちは、中学や高校を卒業すると、社員寮のある工場や住み込みで働ける飲食店などへ就職するのが当たり前だった。

 とはいえ、労働環境は厳しく、収入は限られていた。就職できたからといって、生活が安定するわけではない。新たな人間関係や見知らぬ土地になじめず、職や住まいを転々とし、再び経済的に追い詰められてしまうことも多い。

 私の場合は、知識を身につける機会に恵まれた。日本育英会(現・日本学生支援機構)の奨学金とアルバイト、親戚からの少しばかりの仕送り、そして施設と施設長個人から借金をして学費をまかなった。高校を無事卒業し、大学へ進学、地元で就職できたのは極めて珍しいケースだった。

 当時を振り返ると、貧しさはそこかしこに満ちていた時代だった。

経済苦は虐待を生んだ

 それから30年。厚生労働省によると、2015年10月1日現在、児童施設は全国に602か所あり、2万7828人の子どもたちが暮らしている。最近は、子どもたちの入所理由が大きく様変わりしている。かつて、大半を占めていた経済的理由は少数派となり、親からの虐待を理由とした入所が約60%に上っている。

 その典型例として、児童養護施設の関係者らの会合で報告されたケースを紹介したい。

 山梨県の機械製造工場に勤務する24歳男性。東京都内のアパートで育った。物心ついたときから父親はいなかった。定職に就かない母親は、日々のいらだちを幼かった男性にぶつけた。空腹を訴えれば頬を打たれ、給食費を求めれば足蹴りされたという。

 男性が中学1年生のときだった。一日中家に引きこもっていた母親は、男性に近所へ食料をもらってくるように命令した。「ふざけんな」と言い返すと、刃物を手にした母ともみ合いになった。「このままでは、殺されるかもしれない」。男性は、学校に相談し、養護施設で暮らすことになった。

 「人生を変えたい」と大学進学も考えたが、将来にわたって、数百万円という奨学金を返す自信もなく、就職する道を選んだ。「母親や親戚に相談なんてしたくなかった」。当時の苦い記憶が、今も心の片隅にこびりつく。

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進学をあきらめる二つの理由 >>

子どもの貧困に広がる支援

(画像はイメージ)
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 もちろん、悪いことばかりではなく、養護施設の子どもたちを取り巻く状況は改善しつつある。

 現在では、入所する中学生に学習塾代が全額、国から支給されるようになった。生活費・家賃・資格取得に対する国の貸付制度や、17年度から始まる進学児童に対する給付型奨学金の創設は心強い支援となる。

 民間の支援も広がっている。北関東を中心に地域密着型の学習塾を展開する開倫塾(林明夫代表)は、16年から創業地である栃木県内の養護施設の子どもたち向けに、無料または低額による学習支援を始めた。

 安価で食事を提供する「こども食堂」や、ボランティアが勉強を教える「無料塾」などの取り組みも全国で広がっている。

大学進学はわずか1割

 とはいえ、養護施設に入所する生徒の大学・短大への進学率は11.1%にとどまっている。一般家庭と比べると4分の1にも満たない。この数字は、「生活保護世帯」(20.0%)、「ひとり親家庭」(23.9%)よりもはるかに低い(2015年度平均、文部科学省・厚生労働省調査)。

 支援策が充実しつつあるにもかかわらず、なぜ、養護施設の子どもたちは進学をあきらめてしまうのだろうか。

【理由1】乏しい学習意欲

 一つは学力である。学習体験を持てない家庭環境にあった子どもがほとんどだからだ。学力の高低は、学習習慣が身に付いているかどうかに深く関係してくる。

 養護施設の子どもに低学力が圧倒的に多いのは、このような背景が大きく影響している。また、学習意欲は学力と比例する傾向もあり、自主的に学ぶ子どもが極めて少ないのが実状だ。

【理由2】教育よりも生活支援

 二つ目は、養護施設が子どもたちの成長を見守る生活施設であって、教育機関ではないためだ。制度上、職員に求められる資格は、保育士、児童指導員、臨床心理士といった主にライフサポートをする職種である。このため、成績の振るわない子どもがいても、学力や学習意欲を伸ばすための手立てがない。

 大学進学には、経済的な裏付けも必要だ。親の支援を当てにできない子どもたちは、進学しようとすれば多額の借金を背負うことになる。たとえ十分な学力があっても、「借金をしてまで進学したくない」という子が就職の道を選んでも不思議はない。施設職員も大学進学を強く勧めるのをためらってしまうのだ。

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「子どもの貧困」による損失は40兆円 >>


子どもの貧困が招く社会的損失

(画像はイメージ)
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 子どもの貧困対策として、進学を支援する必要性を裏付ける調査結果がある。

 日本財団の子どもの貧困対策チームが2015年12月、「生まれた家庭の経済格差が教育格差をもたらし、将来の所得格差につながっている」と公表した。

 現在の日本では、衣食住に困るような「絶対的貧困」は少ないとしながらも、ギリギリの生活を強いられ、進学や就職の選択肢が狭まるケースが目立つ。このため、大人になってから得られる所得は減り、国の税収減につながるという。同チームは、「わが国が何も対策を講じなければ、いずれ国家が被る社会損失は最大40数兆円にまで膨らむ」と試算する。

 教育によるその後の経済的格差は、ノーベル経済学賞を受賞した米・シカゴ大学のジェームス.J.ヘックマン教授も指摘している。就学前教育を実施した子どもと未実施の子どもの40歳時点における追跡調査で、就学前教育が社会的収益率に高い効果があることを実証している。

福祉対策ではなく公共投資

 ここで紹介した養護施設の子どもたちの状況は、子どもの貧困の一側面に過ぎない。ひとり親家庭、生活保護受給世帯、多子世帯などで進学をためらう子どもたちがいる。こうした子どもたちの支援は、福祉対策として考えるのではなく、未来への公共投資として捉えるべきだと考える。

 そのために、子どもの進学をさらに支援するための財源を創出する必要性がある。

 もっと具体的に言えば、「子ども国債」なるものを創設し、財源を捻出することを提案したい。「子ども国債」を最初に構想したのは、私が育った養護施設を経営する社会福祉法人同仁会の2代目理事長を務める遠藤光洋氏(78歳)である。今から20年以上も前、私と児童福祉のあり方を議論した際に同氏が財源創出策として提唱した。

 財政投入による支援で、養護施設における子どもたちの自己実現度が高まるだけでなく、将来は国家としても彼らの納税としてリターンを見込める。

 養護施設の子どもたちは、未来そのものだと言える。子どもの貧困の一側面である進学問題にも目を配り、支援の拡充に取り組んでいかなければならない。

【参考文献】

「東京都における児童養護施設等退所者の実態調査報告書」(2017年、東京都福祉保健局)

「子供の貧困が日本を滅ぼす」日本財団子どもの貧困対策チーム(2016年、文春新書)

「日本の大課題 子どもの貧困」池上彰編(2015年、ちくま新書)

「幼児教育の経済学」ジェームス.J.ヘックマン(2015年、東洋経済新報社)

【引用HP】

内閣府子供の未来応援国民運動

・「子供の貧困対策 マッチングフォーラム」が、3月12日(札幌)、16日(京都)に開催される。

【あわせて読みたい】
・奨学金頼みで老後破産?…我が家の学費計画
・普通の主婦だった私がギャンブル依存症になったワケ
・がんばり過ぎるな"ひとり親"…子のひきこもりを防ぐコツ

プロフィル
草間 吉夫( くさま・よしお )
 1966年茨城県高萩市生まれ。生後3日から高校卒業まで乳児院と児童養護施設で育つ。東北福祉大学社会福祉学部卒、同大学院修士課程修了。児童養護施設に5年勤務後、松下政経塾に入塾。東北福祉大学教員を経て高萩市長を2期歴任。2017年、同大学院博士課程満期退学。内閣府子供の未来応援国民運動発起人・アドバイザリー、厚生労働省社会保障審議会専門委員など。主な著書に、「ひとりぼっちの私が市長になった!」(講談社)、「高萩市長草間吉夫の1600日」(茨城新聞社)など。

http://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20170302-OYT8T50055.html

 

正月を知らない子どもたち…貧困がもたらす国の損失
立教大学教授 湯澤直美
2016年01月15日 10時30分
無断転載禁止
 17歳以下のおよそ6人に1人が貧困の状況にあり、その割合は増え続けているという。このまま放置すれば、大きな経済的損失を日本にもたらすとする報告書が発表された。貧困状態に置かれ、孤立しがちな子どもたちへの支援は、人道的な理由からだけでなく、将来の国の経済や財政にとっても不可欠だ。子どもの貧困を研究する湯澤教授に寄稿してもらった。
「年越し」にも格差

貧困家庭の子どもたちが支援団体の大人たちと食卓を囲む(大阪子どもの貧困アクショングループ提供)

 2016年の新しい年を迎えた。子どもたちにとっては、クリスマス会、大晦日(みそか)、お正月などイベント続きの冬休みを過ごす時期である。しかし、「おめでとう」の言葉が行きかうこの時期に、しんどい思いをする子どもたちがいる。
 「何年もクリスマスケーキを食べたことがない」「お年玉はない」「友だちと遊びに行く交通費もない」「家の中は十分な暖房がない」。そのような子どもたちのなかには、いつもお腹(なか)をすかせている子どもも少なくない。
 これは、現代の日本の話である。
 むろん、苦しいのは子どもばかりではない。生活費・教育費のために働く親たちは、非正規から正規への転職もままならず、少しでも時給の高い夜間や日曜・祝日に働かざるを得ない。夜間は子どものみで過ごす「ひとり暮らし児童」ともいわれる状況になりやすい。子どものための労働が、子どもと過ごす時間を奪う悪循環。保護者の苦悩は計り知れない。
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328万人の貧困…将来の経済にも大きな打撃
 このような貧困のすそ野は広がっている。先進諸国における貧困層の割合を把握する指標のひとつに、相対的貧困率がある。日本の子どもの相対的貧困率は年々悪化し、最新のデータでは16.3%(2012年データ:厚生労働省「平成25年国民生活基礎調査」)。0歳から17歳の子どものうち、約6人に1人が貧困状況にあることになる。
 実数では約328万人。2014年の出生数が約100万人であることと比べると、その3倍以上に相当する数字だ。経済協力開発機構(OECD)加盟34か国でみると、日本の貧困率は高いほうから11番目に位置する。
 そのような現状をふまえ、2015年12月、日本財団は『子どもの貧困の社会的損失 推計レポート』を発表した(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社との共同事業)。子ども時代の経済格差が教育格差を生み、将来の所得格差につながるという想定から、格差を放置したままでいるとどのような経済的な影響があるかを推計した報告書である。
 推計の結果はどうだったか。現在15歳の子ども(約120万人)のうち、生活保護世帯、児童養護施設、ひとり親家庭の子ども約18万人だけでも、経済的損失は約2.9兆円に及び、政府の財政負担は約1.1兆円増加する、という。
 「貧困」というと、とかく困窮した家庭や個人の問題として語られることが多い。それゆえ、貧困対策を講じることについては、「一部の人々に税金がつぎ込まれる」という感覚に陥りやすい。しかし、このレポートは、「個」の視点を超えて、「経済」の視点からアプローチしている点が特徴だ。子どもの貧困をそのまま放置すると、将来の国民の所得が低下する。それは、消費の低下を招く。そうすると、国内市場の縮小が一段と加速する。人口減少時代に突入している今、子どもの貧困対策を慈善事業として捉えるのではなく、経済的効果をもたらす経済対策として捉える必要を、データを使って訴えている。
 持続可能な社会の鍵は子どもの貧困対策への投資にある。あなたはどう考えるか、ぜひレポートを一読してみてほしい。
経済的損失2.9兆円、財政負担1.1兆円

貧困家庭の子どもたちに届けるために集められたお菓子(フードバンク山梨提供)
 レポートの内容を簡単に紹介しよう。貧困世帯とそうでない世帯では、進学状況が異なるために、最終的な学歴や就業状況にも差が生まれる。この状況を改善しなければ、貧困世帯の子どもは将来にわたり賃金水準が低くなり、一生のうちに受け取る所得(生涯所得)が低位になる。
 そうすると、政府が徴収する税収や社会保険料収入も低下する。一方、生活保護費などの社会保障給付費は増加することになる。
 そこで、進学や進路に差が出る中学卒業時に着目する。子どもの貧困対策を行わず進学率や就労環境に格差が残る状況(現状シナリオ)と、子どもの貧困対策により教育・所得格差が一定程度は改善される状況(改善シナリオ)を比較してみるのである。
 まずは、現在15歳の子どもが19歳〜64歳までに得る所得の差を把握した数字をみてみよう(図1)。64歳までに得る所得の合計は、現状シナリオより改善シナリオのほうが2.9兆円増えている。言い換えれば、子どもの貧困対策を行わない場合、将来的には約2.9兆円の市場の縮小、すなわち経済損失が生まれることを意味する。
 このような所得の差は、税・社会保障費用の個人負担額(個人が納める額)の差となって現れる。そこで、国民が負担する税や社会保険料の合計額から、生活保護費など社会保障給付額を差し引いた金額がどの程度かによって、政府の財政負担は増減する。これを「税・社会保障の純負担」として推計した結果、改善シナリオよりも現状シナリオの方が、約1.1兆円少ない。このことは、子どもの貧困対策を行わないと、政府の財政負担は約1.1兆円分増加することを意味している。

(図1)二つのシナリオでの推計結果  出典:日本財団・三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(2015)「子どもの貧困の社会的損失 推計レポート」
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 注意しなければならないのは、貧困家庭全体を網羅することは難しいため、この推計は生活保護世帯・児童養護施設・ひとり親家庭を対象として、その1学年に限定している点である。つまり、「全年齢、さらにはこれから生まれてくる子どもについても考慮すれば、経済への影響は甚大となる」と、レポートは警鐘を鳴らす。
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また、実際には、生活保護基準に満たない所得水準でありながらも、生活保護を受給していない貧困層は広範に存在している。そのような貧困層も対象として推計すれば、子どもの貧困対策を講じなかった場合の将来の経済的損失は更に大きいことになる。
 制度がその対象となる人をどの程度カバーできているのかを示す割合を捕捉率という。日本は、先進諸国のなかでも生活保護の捕捉率が低いことで知られている。
 厚生労働省が生活保護基準未満の低所得世帯を推計したデータをみると、平成19年国民生活基礎調査をもとにした推計では、子どものいる総世帯数は1,256万世帯。そのうち生活保護基準である最低生活費未満の世帯は154万世帯と推計されたことから、子どものいる世帯に占める低所得世帯の比率は12.2%になる(所得のみを要件とした場合)。こうした低所得世帯のうち、実際に生活保護を受給する被保護世帯数は12万世帯である。つまり、最低生活費未満の154万世帯と被保護世帯の12万世帯を合せた166万世帯のうち、実際に生活保護を受けている比率は7.4%に過ぎないという結果であった。(厚生労働省「生活保護基準未満の低所得世帯数の推計について」:2010年)[1]。
 生活が苦しくても生活保護が利用されないのはなぜか。何よりも厳しい社会の目がある。全生活保護受給世帯数に占める不正受給件数は2.4%(2011年度)であるのに対し、バッシングともとれる生活保護批判は受給層全体へと向けられがちである。社会福祉を利用することへの抵抗感が、困窮状況にある人々に広がっている。実際、経済困窮状況にある若い人たちと話をすると、「絶対に生活保護だけは受けたくない」と言う。
 どんなに苦しくても自分でやっていく、と言い切るのだ。自己責任、勝ち組/負け組という論調もあいまって、「助けて」と言えない人々が増えるばかりか、低年齢化しているのである。いまや、子どもがいる低所得世帯を対象とした就学援助制度すら、子どもがいじめにあうことを恐れて申請しない、という保護者に出会うことも珍しくない。彼らが社会の目にとまるのは、餓死など悲惨な状況となって事件化してからである。
 あらゆるものを「持たない」状況にならないと、生活保護は受給できない。たとえば自動車は資産となり、原則処分とされている(障害をもつ場合の通勤・通院等は認められる場合もある)。
 しかし、交通機関が整備されていない地方では、自動車はぜいたく品ではなく、移動のための必需品である場合も多い。車が使えないが故に凍える冬に遠方の保育所に連れていけず、ママ友の通園時に一緒に乗せてもらう、という肩身の狭い思いをしている厳寒地の母親もいる。また、これまでは、生活保護世帯の高校生自身のアルバイト代や奨学金を塾代に使用すると、保護費が減額されてきた。このルールは、ようやく2015年10月以降改められたが、高校卒業後の進学の壁はまだまだ高い。
 いったん生活保護を受給すれば、地域社会の厳しい監視の目にさらされる。奪われかねないのは自分への誇りや尊厳だ。
ホームレスはどんな子ども時代を送ったか

子どもたちと年越しを過ごすツアーの一こま(大阪子どもの貧困アクショングループ提供)
 筆者は、ある数字をみて愕然(がくぜん)としたことがある。ある自治体で、2005年度に生活保護廃止となった世帯の世帯主の学歴階層を計算した。政府の統計では、学歴をとっていないためだ。ほとんどの世帯類型で、中卒が6〜8割を占める。母子世帯の母親の場合には、中卒の割合は48.7%で他の世帯類型と比較すると低い数値だが、それでも約5割を占めているのである(図2)。いずれの世帯類型でも、高校中退によって中卒である者の比率は低く、高校に進学しなかった者が多い。

(図2)生活保護廃止世帯の世帯類型別の学歴構成 (A自治体:2005年度保護廃止世帯、単位:%、湯澤直美・藤原千沙(2009)「生活保護世帯の世帯構造と個人指標」(『社会福祉学』50巻1号)をもとに作成)
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 このような数値を国民全体の動向と比較するため、国勢調査をもとに生まれた世代別にみたものが(図3)である。世代が若くなるにつれ、国勢調査では中卒割合が低く、生活保護世帯では中卒割合が高いことが明白である。みなさんは、このような数字から何を想像するだろうか。

(図3) 生活保護廃止世帯(A自治体:2005年度保護廃止世帯)の学歴構成:国勢調査との比較、湯澤直美・藤原千沙(2009)「生活保護世帯の世帯構造と個人指標」(『社会福祉学』50巻1号)をもとに作成)
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 子ども期から困窮状況にさらされ、教育を受ける機会が十分に保障されなかった人々の生活史は統計数値に表しにくいために、あまり知られていない。
 3〜4年前、路上で生活する状態になった人々、いわゆるホームレスのかたが多くいる都内のある地域で、長い髪の毛がコールタールのように固まっている男性に話を聴いた。
 さとしさん(仮名)は、まだ30歳代前半。ある地方都市で育つ。親の病気等で家計が急変したことから、アルバイトをしながら定時制高校へ進学。しかし、体力もきつくやむなく中退。もともと若者が働ける職場が少ない地域であり、定職をみつけようにも中卒では更に厳しい。仕事を求めて上京、非正規だが港湾労働者として働いてきた。しかし、転機が訪れる。腰を痛め失職。それからはすべり台をおりるように人生が失速し、公園でひとり、生きている[2]。
 「子どもの貧困」は「見えにくい」と言われている。しかし、ホームレス状態にある人々、生活保護を受けている人々のなかに、「見える」のである。
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では、さとしさんは、努力が足りなかったのか。日本の社会システムのなかでは、学歴の差が様々な格差に結びつき、社会的な不平等となって個人の人生に影響を及ぼす点を見逃してはならないだろう。
 まず、雇用形態。学歴が低位なほど、非正規雇用の比率は一貫して高い。「平成24年版就業構造基本調査」をもとに若年層(15―34歳)の就業状況などを分析した報告書によると、男性の初職が正社員である割合は、中卒の場合には37.0%であるのに対し、高卒では65.5%、大学卒では79.5%と開きが大きい。女性では、中卒で初職が正社員である割合は12.3%と男性よりも少なく、高卒でも50.5%と男性との格差が大きい[3]。
 当然、正規と非正規では収入に差がつく。同調査によると、若年層の男性の場合、正社員の年収は平均335.9万円であるのに対し、パート・アルバイトでは134.1万円、その他非典型雇用では213.7万円である。女性では、正社員の年収は264.8万円、パート・アルバイトは111.6万円、その他非典型雇用は180.5万円であり、いずれも男性よりも低額である。更に重要なのは、年齢が上昇するにしたがって、収入格差が広がるという点だ。
 また、学歴によって選べる職種や企業規模も違う。「きつい労働」ほど、離職率も高くなる。(図4)は学歴別の離職率をみたものだ。1年以内の離職率は大学卒では13.1%であるのに対し、中卒では44.3%、3年以内の離職率は大学卒では計32.3%であるのに対し、中卒では65%を超える。

(図4)平成24年3月新規学校卒業者の離職率 出典:厚生労働省「新規学卒者の離職状況(平成24年3月卒業者の状況)」をもとに作成
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 いま、一部の民間団体や社会福祉施設では、高卒認定試験によって高卒資格を取得する支援が始まっている。また、厚生労働省では、母子世帯の母親自身が高卒資格を取得できるよう支援する高等学校卒業程度認定試験合格支援事業を創設した。しかし、働きながら、ひとりで勉強するのはたやすいことではない。寄り添い、ともに学ぶサポートが必要だ。
次のページ改善の鍵は高校中退率の低減 >>
 社会的損失の推計の「改善シナリオ」とは、生活保護世帯・児童養護施設・ひとり親家庭の子どもの高校進学率と中退率を全国平均並みに改善させ、大学進学率も上げるような支援を国などがした場合をさしている。教育格差をいかに改善するか、そのポイントのひとつに高校中退率の低減があるとレポートは指摘している。
 実は、高校中退率は学校種別によって大きく開きがある。全日制普通科の中途退学率は0.9%であるのに対し、通信制は5.2%、定時制では11.1%と1割を超えている。しかも、これは1学年での中退率なので、最終学年までを合計した中退率は更に高くなる。さとしさんが中退したのは特別なことではないともいえる。
定時制高校は教育の安全網
 家計や教育費のために、働きながら高校に通う若者は今なお少なくない。若者の労働を搾取するブラックバイトが広がる現代では、学業と仕事の両立は一層厳しい。ところが、各地で定時制高校の統廃合や閉鎖の動きが進んでいる。教育のセーフティーネットとも言える定時制高校。身近な場所になくなるとどうなるだろうか。まりさん(仮名)の例でみてみよう。
 まりさんは、夕方までアルバイトをしながら、夜間定時制高校に通っていた。しかし、その学校が統廃合されてしまい、1時間以上遠くにある定時制高校に通わざるを得なくなった。アルバイトを早く切り上げねばならなくなり、収入が減った。
 通学の交通費は余計にかかるようになり、定期代も出せなくなる。仕方なく、毎日切符で通うことに。それでも頑張って登校していたが、ある日、バイト先の雇い主からこう言われる。「主婦のほうが使いやすいんだよね」と。シフトで融通の利かない定時制高校生は使いにくい、というのだ。
 バイト先を首になったまりさんは、次の仕事がみつからず、学校納付金も払えなくなり、間もなく中退に追い込まれた。それでも、弟や妹には進学してほしい。まりさんは、職を求めて10か所以上応募したが、中卒で雇ってくれるところはない。そんなある日、街頭で声をかけてくる男性がいた。儲(もう)かる夜の仕事があるよ……と。
「不利の雪だるま」とは?

夜の街にたたずむ少女(本文とは関係ありません)
 さとしさんやまりさんの人生をみると、ひとつの不利が、更なる次の不利につながり、自分の努力だけではどうにもならない事態に陥っていくことがわかる。不利が累積するのである。これを、私は「不利の雪だるま」と呼んでいる。
 家庭の経済力が教育格差に直結する社会システムをそのまま放置すれば、不利の雪だるまが子どもの人生に立ちふさがり、子どもの基本的権利を剥奪していくのである。社会的に不利が生み出されるのだから、社会的に不利を生み出さない制度や政策が必要だ。
 ユネスコ「学習権宣言」にはこう明記されている。「学習権はたんなる経済発展の手段ではない。それは基本的権利のひとつとして捉えられなければならない」「学習活動はあらゆる教育活動の中心に位置づけられ、人々を、なりゆきまかせの客体から、自らの歴史をつくる主体にかえていくものである」と。
 「学ぶことは生きることです」。ある定時制高校生の言葉である。
次のページ保育は貧困家庭を支える重要な制度 >>
 今回の社会的損失のレポートが提起している重要なメッセージは、子どもの貧困問題は、政策の関与によって一定程度は解決が可能である、ということではないだろうか。
 諸外国の先進事例が示しているように、人生のスタートライン、いわば乳幼児期からの早期発見と早期支援が何よりも欠かせない。親の妊娠期からのアプローチも重要だ。幸いにも、日本には保育制度が公的責任のもとで発展してきた経緯がある。仕事と子育ての両立支援として保育が必要なばかりでなく、貧困家庭を守る最前線の社会資源としてより機能させる政策が期待される。
 保護者支援も欠かせない。子どもの育ちの保障という観点から雇用労働のあり方を見直すためには、長時間労働やワーキング・プアの解消は必須である。
広がる民間団体の支援

フードバンク山梨の取り組み
 貧困がもたらすものは、経済的困窮ばかりでない。人間関係・社会関係からの孤立を深め、精神的に追い詰められていくのである。
 学校があれば、暖房があり、給食を食べることができる。貧困家庭にとって、学校の長期休暇は楽しみどころか、親子ぐるみで苦しさが増す期間になる。このような困窮状況にある人々を支援するために、食料を届けるフードバンクの活動も各地に広がりつつある。フードバンク山梨では、子ども支援プロジェクトを企画し、食料支援を必要としている世帯に、クリスマスの時には食品とともにプレゼントを届ける活動を実施した。届ける箱のなかには、クリスマスカードと手作りリースも添えられている[4]。
 また、大阪子どもの貧困アクショングループでは、年末年始に3泊4日、古民家で一緒に年越しを過ごす「年越しツアー」を実施している。大晦日にはみんなで初もうでに行き、お正月には手作りのおせち料理を味わい、まるで実家への里帰りのような時間になる。ツアーに参加できない親子にも、ボランティア特製のおせち料理を届けている。年越しでみんな買い物袋をいっぱい持っている姿をみて悲しい気持ちになっていた親子が、届いたおせちと手紙をみてとても幸せな気持ちになれたという[5]。
子どもを孤立に追い込む貧困
 若者にとっても新春の壁がある。たとえば、各地で実施される成人の日の行事。成人式に参列するには、コート、スーツ、それらにあう靴がいる。女性ならば、振袖も多い。貧困家庭ではとても購入できないが、レンタル費用の拠出も難しい。それゆえ、出席さえできない若者もいる。
 子どもから大人への節目として大事なこの行事にも、格差がつきものだ。社会的に標準とされる暮らしを維持するには、「個人の暮らし」ばかりでなく、このような社会的な機会や社会関係に参画する「社会的な暮らし」も欠かせない。その機会から遠ざかるほど、貧困は社会的排除となって、子ども/若者を孤立に追い込んでいくのである。
 子どもの貧困問題は、いわばまっとうな社会、公正な社会をいかに創るのかを問うている試金石でもある。いまこそ、大人たちの英知を寄せ集めたい。
 
[1] この推計では、全国消費実態調査を基にした推計も行われている。また、貯金や住宅ローンなどの資産の保有要件も考慮した生活保護基準未満の世帯数の推計もある。
[2] 本稿では、個人が特定されないよう、趣旨を損ねない範囲で事例は加工している。
[3] 『若年者の就業状況・キャリア・職業能力開発の現状<2>−平成24年版「就業構造基本調査」より−』独立行政法人 労働政策研究・研修機構、2014年
[4] フードバンク山梨のホームページを参照。
[5] 大阪子どもの貧困アクショングループのブログを参照。
 
プロフィル
湯澤直美( ゆざわ・なおみ )
 立教大学コミュニティ福祉学部教授。専門は社会福祉学。現在、 子どもの貧困研究プロジェクト を運営し、子どもの貧困の解決に向けた研究を進めている。編著書に、『子どもの貧困白書』(明石書店)、『子どもの貧困−子ども時代のしあわせ平等のために』(明石書店)、『福祉政策理論の検証と展望』(中央法規)など。
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2016年01月15日 10時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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奨学金頼みで老後破産?…我が家の学費計画
ファイナンシャルプランナー 菅原直子
2016年03月01日 09時21分
無断転載禁止
| (第1回) | (第2回) | (第3回) |
 住宅費用、老後費用と並ぶ三大費用の一つ、教育費用。子ども1人につき、最低でも1000万円はかかるといわれる。特に費用がかかるのが大学進学だ。「教育費が足りない!」という状況に陥らないためには、どんな準備をしておくべきなのか。教育費に詳しいファイナンシャルプランナーの菅原直子さんに解説してもらった。
進学資金不足、二つの理由

文部科学省の「学校基本調査」などを基に菅原さん作成

 高校生の大学進学率(短期大学含む)が50%を超えて10年近くになる。専修学校専門課程(専門学校)等も含めると、平成27年3月に高校を卒業した生徒の進学率は76.32%。4人に3人は進学した計算だ。都道府県別にみると、複数の府県で80%を超えており、東京都は84.9%。「みんな」が進学していると言っても過言ではないだろう。
 ところが、「みんな」が進学する中、進学資金を十分に用意できず苦しんでいる親子も少なくない。
 実は、大学4年間分の学校納付金を入学前にすべて準備できている家庭には、あまりお目にかからない。「初年度納付金」と呼ばれる入学金と大学1年次の学校納金だけでも家庭で用意できればまだいい方だ。入学手続き時に必要なのは、初年度納付金の6〜7割程度。入学試験に合格したにもかかわらず、この額の用意ができず子の進学を断念せざるを得ないケースもある。
 大学の費用は、1年間当たりの費用が高校までとは段違いに高額である。さらに、そもそも月謝制ではないため、毎月の収入から支払うのはまず不可能。あらかじめ貯(た)めておかなくてはならないということが、高校までとは異なる特徴だ。
 次の表は、私立大学の初年度納付金を分野別にまとめたものだ。全平均は約143万円である。

 進学資金を家庭で用意できない理由は、主に二つが考えられる。
 (1)大学納付金の額が高く、保護者の収入からの支払いが難しい
 (2)一定額を貯めてきたが、必要額を知らなかったため結果的に不足
 (1)は、その特徴を知らず、入学直前に慌てるというものだ。バブル崩壊後の「失われた20年」を経て、保護者の収入は伸び悩んでいる。にもかかわらず高校までの教育費はそれなりにかかる。目の前の塾代などで支出がかさんで、大学に向けての貯蓄ができなかったということもある。もちろん、塾代どころか日々の生活費でいっぱいいっぱいという家庭も存在する。
 (2)は子どもが生まれて、教育費のためにと学資保険に加入したり、積み立てを始めたりする人たちに起きる。とりあえず支払える金額での契約にとどまり、目標額を把握しないまま18歳を迎えてしまうのだ。とりあえず学資保険に加入している、積立貯蓄をしているという安心感から、根拠なく「ナントカナル」と思っていたりする。自身が大学生だった頃のイメージで、学費を安く見積もってしまっていることもある。また、(1)同様に、収入に余裕がなく学資保険だけで精いっぱいということもある。
 いずれの理由にせよ、かかる費用が手元にないということに変わりはない。
 実際に筆者が相談を受けた事例を以下に紹介する。
妻がパート、学資保険加入も学費足りず…Aさんの場合
 Aさんは、3人の子(長女・長男・次男)を持つ50代の会社員。妻はもともと専業主婦だったが、長女が中学に上がったころ、その塾代を補うためにパートタイムで働くようになった。
 Aさん自身は、家庭の経済的な事情で進学がかなわなかったこともあり、子どもたちが大学進学を希望するのなら、ぜひ応援したいと考え、子どもたちには、それぞれ18歳で100万円を受け取ることのできる学資保険に加入していた。
 100万円では大学4年間の費用には足りないだろうとは思っていたが、具体的な金額を調べたことはなかった。長女が高校3年生になり、オープンキャンパスでもらってきた資料に目を通して驚いた。長女は看護師の資格取得を目指しており、希望する大学の4年間の学校納付金は約700万円となっていたのだ。
 Aさんは十数年前に自宅を購入し、預貯金のほとんどを吐き出していた。貯蓄はしてきたが、住宅ローンの支払いに追われて、やっと300万円が貯まったところである。この300万円を学資保険に足しても、4年間の学費には足りない。下には、まだ2人の子が大学進学を控えている。これから学費をどのように捻出していけばいいのか困って、高校が開催した進学資金セミナーと相談会に参加したのだった。
次のページ高校生保護者の切り札は「奨学金」?

高校生保護者の切り札は「奨学金」?

わが子のために資金を使いすぎ、老後に余裕がなくなるおそれも
 Aさんがまず考えたのは「奨学金」の利用だ。奨学金のひとつに、返済不要の「給付型奨学金」がある。これは、独自の選考や入試時、大学進学後の成績といった条件を満たすことで利用できる。しかし、進学を希望する大学が独自に設ける給付型奨学金は、学校納付金の内訳のうち「授業料」のみが対象だった。前掲の表を見てもわかるように、授業料は納付金全体の6割ほどだ。学校に納める費用全額を給付してもらえる制度は無く、給付型に該当しても、300万円程度は自己負担しなければならない。しかも、実際に入学してみないと、給付型に該当するかどうかわからない。
 Aさんは、長女が高校3年生の4〜7月に、在籍している高校を通じて予約する「日本学生支援機構」の貸与型奨学金で資金計画を立てることにした。
 ところで、学生や保護者、時には高校の教師ですら、日本学生支援機構の奨学金を「もらう」と表現することがある。「受給」していることを指しているのだが、仕組みを十分に理解していない人が聞くと「貸与型奨学金を受け取っている」のではなく「返済する必要のない奨学金を受け取っている」という誤った理解につながることがある。
 当初はAさんも、日本学生支援機構の奨学金を「もらえる」ものと思っていた。機構が組織改編される前の「日本育英会」の頃に、貸与型の奨学金でも返済免除になる仕組みがあったことから勘違いしたのだ。Aさんは勘違いにより、大学独自の給付型奨学金と日本学生支援機構の奨学金をダブルでもらうことで、3人の子を大学に通わせることができると思った。そのようなオイシイ話はめったにない。
 もらうものではないとわかっても、他に選択肢は無い。Aさんは長女に奨学金を借りるよう勧めることにした。ただし長女の名義で奨学金を借りても、返済は自身がするつもりだ。退職金は2000万円ほどあるはずなので、そこから300万円を奨学金返済にまわしても、残りは十分あると計算した。
 日本学生支援機構の奨学金は、無利子の第一種と有利子の第二種。金利負担が心配になる第二種は、利率は最大3%と定められている。平成27年3月に大学を卒業した奨学生に適用の利率は、固定タイプ0.63%、変動タイプ0.10%で、負担感は大きくない。
 奨学金は、一般の借金に比べて金利が低く、お得なイメージを持たれることもある。使い道がギャンブルであれば絶対に借金をしない人であっても、使い道が学業であると心のハードルを簡単に下げてしまいがちだ。そして90万円借りればいいところを、100万円借りようとしたりする。毎月のモデル返済額を見て、簡単に返せると思ってしまうのだ。
保護者の老後生活費を取り崩してはならない
 Aさんは、自身の退職金で長女の借りる奨学金を肩代わりしようと考えている。長男と次男に対しても公平を期すため、同じように負担するつもりだ。長女の奨学金を肩代わりするのと同額の300万円ずつを負担すると、子ども3人分の退職金からの支出は900万円。残りは1100万もあるのだが、実は退職時にはまだ住宅ローンが残っていて、繰り上げ返済に充てるつもりもある。
 300万円の預貯金も長女のために使ってしまうと手元資金はゼロになる。10年弱の残りの会社勤めの間にどれだけ貯蓄できるかが気にかかる。長男と次男にも、奨学金の肩代わり以上の学費が必要になるかもしれない。退職金を使い切ってしまった場合、公的年金だけで老後生活が成り立つのか、Aさんは計算をしたことがない。
 大学資金を出すのは、子どもたちの未来を援助したいからだ。しかしその結果、Aさん夫婦の老後生活に経済的な余裕はまったくなくなろうとしている。
 Aさんは、どうすればよかったのだろうか。
時間を味方につけてコツコツ預貯金が一番の近道
 子どもの大学進学は、生まれてから18年が経過した4月。子どもの進路はまだわからないが、最初に書いた通り「みんな」が進学する。4年間分の学費を貯めておくに越したことはない。もし進学しないようなら、そのお金は保護者自身の老後生活費や住宅ローンの繰り上げ返済に使えばいいのだ。貯めておいて損はない。
 お金の準備ができなかったから、子どもの大学進学を先送りするというのは、通常ありえない。せっかく合格したのなら、何としても必要資金を用意しようとするのが親の気持ちだろう。
 高校卒業までに500万円を貯めようとする場合、毎月の積立額は次のようになる。

 この原稿を書いている間に、マイナス金利のニュースが飛び込んできた。個人の普通預金にマイナス金利の適用はなさそうだが、上の表の金利が0.00%、まったく利息が付かない行とほぼ変わらないようだ。つまり、現状では「コツコツ預貯金」で利息をアテにできそうもない。
 通常、積み立てをするときは、「金利」と「時間」を味方にすれば、複利の効果で利息が利息を生む。今は、金利を味方にできていない状況なので、とにかく時間を味方にするしかない。生まれたときから学費を必要とする時期までを最大限長く利用するために、生まれてすぐに貯蓄を始めたい。すでに子どもがいる家庭は、なるべく早く行動に移すことが重要だ。ゴールの金額が同じであれば、積み立てる回数(期間)が多く(長く)なるほど、毎回の積立額は小さくて済み、家計の負担感も小さいからだ。
 子どもが高校に入学し、いよいよ大学進学を本気で目指していることが分かった段階から大学の費用を貯め始めると、毎月約14万円を貯めなくてはならない(表中の赤枠部分)。Aさんの場合は、妻がすでにパートタイムで働いて子どもの塾代として使っている。さらに収入を14万円増やすことは難しい。
 子どもが生まれた月から始めれば、積立額は月額2万2000円ですむ(表中の青枠部分)。収入の多くない若いころにはつらく感じることもあるだろうが、捻出できないほどでもないだろう。
 学費の積み立てに学資保険を利用することもあるが、契約は毎月の保険料からではなく、ゴールの満期保険金額が必要な教育費と合致する内容で行いたい。
 1日先のことですら、確かなことは分からない。だからといって明日の準備を何もしなくてもいいということはないはずだ。
 子どもが生まれたら、18年後を想像し、大学進学のための費用を貯め始めてほしい。その一歩が、子どもの大学進学をかなえる足掛かりになるのだし、保護者自身の老後生活を助けることにもつながるからだ。
 
【あわせて読みたい】
・「40代で子宝」夫婦の誤算…「老後破産」の現実(5)
・子どもがニート? ひきこもり?…「老後破産」の現実(7)
・増加中? 社会人デビュー直前のひきこもり
・初の東大推薦入試 面接でズバリ聞かれた「あの質問」とは
・「親の葬儀」で慌てないよう…準備したい3つのこと
 
| (第1回) | (第2回) | (第3回) |
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/ichiran/20160226-OYT8T50101.html


奨学金で老後破産しないために…5ステップでメンテナンス
ファイナンシャルプランナー 菅原直子
2016年05月10日 09時28分
無断転載禁止
| (第1回) | (第2回) | (第3回) |
 大学入学時、教育資金が足りずに奨学金を借りた結果、卒業後に返済に苦しめられる問題が目立つ。返済の肩代わりで親の老後資金や生活費が圧迫され、「親子共倒れ」ということもありうる。
 前回の「 奨学金頼みで老後破産?…我が家の学費計画 」では、計画的に教育資金を 貯(た) める方法について、ファイナンシャルプランナーの菅原直子さんに解説してもらった。しかし、間に合わなかった人でもまだやれることがあるという。それが「奨学金のメンテナンス」だ。わが子に借金を背負わせず、自身の生活も守るための方法を菅原さんに寄稿してもらった。
給付型奨学金創設に期待…貧困の連鎖を教育で断ち切れ

大学進学時、学生の大きな支えになるのが奨学金だ(画像はイメージ)

 昨今、学生への経済支援が注目されている。以前は奨学金の返還に苦しむ若者に対し、「借りたものは返せ」という非難が多かった。しかし最近は、返還できない理由自体の解決を図ろうとする動きが加速しているように見えて心強い。
 財源の問題はあるとはいえ、国が検討している給付型奨学金創設への期待は大きい。若者が社会の入り口で借金を背負わなくても済むのだから。
 一方、奨学金の返還を促すためなのか、独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)は大学別の返還率を公表するらしい。返還が滞っているのはすでに卒業した者であって、今さら大学側が滞納者にアプローチするすべはないはずだ。本来、貸し手に説明責任があるはずなのに、その責任を転嫁しているようにも見え、大学名の公表には疑問が残る。高校3年生で奨学金を予約する学生も多く、大学名公表の先には高校名の公表もあるのではと心配だ。
 学校名の公表よりも、奨学金を利用してでも進学をして教育を受けることのメリットについて、広くコンセンサスを得られるよう願いたい。
貸与型奨学金は、現時点での現実的な手段
 とはいえ、今後の施策に期待はしても、今の高校3年生には間に合わない。進学資金が不足している高校生と保護者は、すでに存在している方法を利用するしかないだろう。学生自身が利用できるのが、奨学金制度である。
 奨学金には、返済の必要がない「給付型」と返済の必要がある「貸与型」がある。JASSOが3月に発表した「学生生活調査」(有効回答数=4万5577人)によると、2014年度(平成26年度)に何らかの奨学金を受給していた大学生は51.3%に上る。およそ大学生の半数が奨学金を受け取っていると言える。
 貸与型の多くはJASSOが占めている。JASSO奨学生(奨学金を受給している人)となっている大学生の割合は00年度から14年度までの14年間で2.3倍となった。14年度は全大学生・短大生の38.75%、2.6人に1人が利用している。

「学校基本調査(文部科学省)」「事業報告書(JASSO)」を基に菅原氏作成
 これだけJASSOが利用される理由としては、入学前に予約できる安心感がある。
 入学前に支払う受験料や入学手続き費用で保護者の財布が底をついてしまった場合、入学はできても学業の継続は困難になる。入学前予約が可能な給付型奨学金制度を持つ大学も見受けられるが、まだ少ないのが現状だ。入学前に受給が約束されるJASSOの役割は大きい。

「平成25年度奨学金事業に関する実態調査報告(JASSO)」より菅原氏作成
 返済の必要がない「給付型」を利用できればよいのだが、現実はそう甘くない。上のデータと調査年度は違うが、2013年度(平成25年度)では、大学生・短期大学生の奨学金受給者の92.2%が貸与型だ。給付型がいかに「狭き門」で、貸与型に頼らざるを得ないか、ご理解いただけるだろう。
5ステップで「奨学金貧乏」を回避しよう
 奨学金を利用するにあたり、まず意識してもらいたいことがある。それは、貸与型の奨学金は「借金」だということだ。
 奨学金の利用額の決め方がわからず、ゆとりをもった金額を借りておこうと考える家庭は多い。日々の支払いを滞らせないようにしておきたいという気持ちは理解できる。しかし、大学を卒業した時、わが子が就職できるかどうか、就職できたとして、奨学金を返還できるだけの収入を得られるかどうか、まだわからないのだ。この段階で、多めに借りることはおすすめできない。借金が増えれば、返済に苦しむことになりかねないからだ。
 では、借りる金額を必要最小限にとどめるためにはどうしたらいいのか。高校3年生の子どもを持つ家庭を例に挙げ、奨学金を借りてから返すまでに意識したいポイントを、次の時期ごとに分けて考えてみたい。
  1.申し込み前
  2.貸与開始前
  3.受給中
  4.卒業〜返還開始
  5.返還開始後
次のページ借りなければならない金額は?

【ステップ1】申し込み前:高校3年生の4月まで…借りなければならない金額を具体的に親子で算出
 JASSOの奨学金は貸与型のみで、無利子の第一種と、有利子の第二種がある。
 将来の返還負担を大きくしないために、まずは利息のかからない第一種を選ぶ努力をしよう。申し込み条件のうち、第一種の成績基準に合致するよう、高2の3学期までの内申平均を3.5以上にする。ただし、世帯収入が多いなど、家計基準に合致しなければ第二種を申し込まざるを得ない。
 高校3年生のAさんは、理系の私立大学への進学を希望している。入学金は保護者が用意してくれるが、家計は楽ではないので入学後の学費は頼れない。大学では実習が忙しくてアルバイトの時間は取れそうもなく、学費は奨学金を利用するしかないと考えている。奨学金は、多めに借りておけば何かと安心なので、第二種の最高額12万円コースを選ぶつもりでいる。貸与総額は576万円(=12万円×12か月×4年)で、これに利息がつく。

(菅原氏作成)
 奨学金の利率は卒業時点で決まる。予約申し込みの段階では実際の返還額はわからない。たとえば12万円コースで利率1%なら、返還年数は20年、返還月額は2万6606円となる。10万円コースでも利率3%なら2万6914円でほぼ同額になる。適用される利率がわからない以上、返還額を増やさないためには、貸与額そのものを少なくしておく方がいい。

(菅原氏作成)
 Aさんの4年間の学費総額はおよそ550万円。Aさんは保護者にも手伝ってもらい、4年間の収入と支出を書き出してみた。その結果、保護者が用意してくれていた150万円は、入学金だけにとどまらず、1年次の学校納付金全額とほぼ同額であることが分かった。さらに、現在通っている予備校代から月額2万円はそのまま援助してもらえることになり、年間の収入は24万円(2万円×12か月)に。半分は通学費用にするので、学費分としては12万円だ。
 用意できる資金を洗いなおしたことで、借りるべき奨学金の額も見直すことができるようになった。当初、奨学金で用意しなくてはならないのは4年間分の学費と考えていたが、3年間の学費から48万円(=12万円×4年)を差し引いた額でいいことがわかった。つまり、借りるべき金額は約356万円だ。Aさん一家は、これなら12万円を借りなくてもやっていけると判断し、8万円コースを選ぶことにした。当初の12万円コースよりも貸与総額192万円の減額、つまりそれだけ借金を減らせたことになる。
 このように、奨学金はどうしても足りない金額だけを借りるようにしよう。そのためにも、在籍する期間中に家計から出せる金額や本人のアルバイト代等の収入と、学校納付金や通学費などの支出を差し引きしてみることが重要なのだ。
 必要月額と選択できるコースがぴったり一致しない場合、多めのコースを選択すると毎月いくらかは手元に残るはず。これは貯めておいて、翌年の貸与月額を減らしたり、繰り上げ返還をしたりして、つねに貸与総額を減らすようにする意識を持ちたい。
【ステップ2】貸与開始前:予約申し込み〜入学前…早めに合格したら、アルバイトも検討
 AO入試や推薦入試で早めに合格が決まったら、アルバイトも検討してみよう。高校の学業に支障のない範囲で、たとえば土日に4時間ずつ時給1000円で4か月(32日間)間働けば約13万円になる。6時間で5か月(40日間)なら約24万円。収入を増やせば、奨学金の利用額を減らすことができる。
 Aさんは、推薦入試で合格すれば11月からアルバイトをするつもりでいる。予備校もやめるので、前払いした費用のいくらかは戻ってくる。推薦で受からなかった場合は一般受験するので、アルバイトはせず予備校にも通い続ける。
 どの時点で合格するかによって、収支は変わってくる。それらを図表化して、大学入学後に変更可能な貸与額の参考にしよう。
【ステップ3】受給中:入学〜卒業…入学してからチェックしたい「給付型奨学金」

余分に借りた奨学金を小遣いにしてしまうケースも。足をすくわれないように注意(画像はイメージ)
 奨学金選びは入学時で終わりではない。自分に該当する給付型奨学金があるかどうか、常にチェックすることが重要だ。「あなたは、この給付型に該当していますよ」などと親切に教えてはもらえない。自ら情報を仕入れに大学の学生課などに出向こう。利用できる制度を見つけたら、書類の多さや手続きのわずらわしさに負けず、申請を。奨学金は一度決めたコースを変更することができる。給付された分だけ、貸与型奨学金の額を減らすことが可能になる。
 アルバイトも、学業に支障のない範囲で行おう。理系大学や専修学校専門課程の場合、授業数が多いなどでアルバイトの時間を確保しづらいが、長期休暇だけでも働くことができれば、それだけ収入を得ることができる。

 Aさんは、1年生の時には入学後の忙しさに紛れて給付型奨学金をチェックできなかった。しかし、課外活動で知り合った先輩のアドバイスにより、後期は前期以上に学業に精を出して成績を上げた。2年生に進級直後、年間の授業料の半額を給付される奨学金に申請したところ、該当者に。授業料は90万円なので、給付額は45万円。1か月あたりに換算すると3万7500円で、貸与コースを現在の8万円から5万円に減額可能となる。
 第二種奨学金は、進級時の「継続願」の時しか貸与額の変更ができないと思われがちだが、必要に応じていつでも月額の貸与額を変更できる。Aさんは6月から5万円コースに変更した。Aさんが給付を受けた奨学金は1年ごとの申請だったが、3・4年生でも奨学生になることができ、貸与奨学金は卒業まで月5万円にとどめることができた。
 貸与額が変更できることを知らず、4年間同額を借り続けて借金を膨らませてしまう人もいる。余剰分は子どもが小遣いとして使ってしまった、というパターンも多い。足をすくわれないように注意したい。
 第二種奨学金については、利率算定方式の見直しも重要になる。この利率には2種類あって、奨学金申し込み時に「利率固定方式」「利率見直し方式」のいずれかから選ぶ。しかし、総返済額を左右する利率は卒業(貸与終了)時点で決定するため、申し込み時に自分が返済する際の利率がどうなるかわからないのだ。高校3年生の1学期に予約する場合、4年数か月後に決定する利率を見通すのはプロでも難しい。したがって、利率の決まる直前で見直すことが、少しでも有利な方式を選ぶことにつながる。
 金利は、年率3%が上限となる。2016年3月に貸与終了(卒業)した人の場合、利率は利率固定方式0.59%、利率見直し方式0.10%だ。無担保で借りられるお金の金利としては決して高いものではない。しかし、貸与月額8万円で4年借りた時の利率が0.5%と3%の場合を比較すると、総返還額は約112万の差になる。金利の動向を完全に見通すことはできないが、せめて卒業間際に、その後の市場金利の方向性を確認して、利息が少なくなりそうな方式を選びなおすようにしたい。
 卒業間際に、手元にゆとり資金があるのなら、奨学金の繰り上げ返還を行おう。有利子の第二種に利息がつくのは卒業の翌月から。したがって、在学中に返還した分は利息を支払わないので、返還額を増やさずに済む。
次のページ卒業から6か月の生活がカギ

【ステップ4】卒業〜返還開始:卒業から6か月の生活がカギ

社会人は出費も多い(画像はイメージ)
 奨学金の返還は卒業して半年が経過した10月から。4〜9月は、奨学金の返還がないので財布にゆとりがある。ゆとりに慣れてしまうと10月からがつらいので、最初から返還をしているものと仮定してやりくりをするといい。つまり、月額給与の手取りが17万円、奨学金の返還が2万円なら、4月から15万円の範囲で貯蓄と生活費をまかなうのだ。4〜9月は2万円分多く貯蓄ができる。

 Aさんは、実家から通える会社に就職できた。親の理解のもと、家に入れるお金は食費と通信費として3万円のみにしてもらい、毎月7万円を貯蓄に回すことにした。ボーナスには頼らず、毎月の給料で計画的に貯蓄し、奨学金の繰り上げ返済をしようと考えている。将来は、車や住宅を購入したいので、まずは、借金を返済することが大事と理解しているからだ。
 Aさんの貸与総額は282万円だった。途中でコースを変更したことで、4年間ずっと8万円を借りた場合よりも100万円減額することができた。その結果、返済年数も20年から16年に短縮され、毎月の返済は1万5000円ほどとなった。
 財布にゆとりがある4月からの半年は、通常の7万円に2万円を足した9万円を貯蓄する目標を立てた。実際には、世話になった両親と祖父母に初任給でプレゼントをしたり、その後も会社に着ていく服を買ったりと、目標を100%達成できた月は少なかった。しかし、無駄遣いしないことを心がけたことで、半年後からの生活では、うまく貯蓄ができるようになった。
【ステップ5】返還開始後:返還開始から返還終了(最長20年間)まで…返還が難しい場合も方法が
 奨学金をきちんと返還するつもりがあっても、人生は山あり谷あり。やむを得ない突然の出費が続いたり、病気になって休職したりといったこともあるだろう。生まれた子どもを保育園に預けられずに仕事を辞めざるを得ないこともある。
 どうしても返還が難しい場合は、返還を待ってもらったり、1か月あたりの返還額を減らしたりする手続きを行おう。返還を滞らせたまま知らんぷりをすると、いわゆる「与信情報」にキズが付く。信用を失い、クレジットカードが使えなくなったり、自動車の分割払いができなくなったり、住宅ローンが組めなくなったりするなど、実生活に影響が及んでくるのだ。
返済の肩代わりは、老後破産の要因にも
 子どもが借りた奨学金は子ども自身が返済する仕組みだが、時に親が返済の肩代わりをすることもある。
 親が奨学金の連帯保証人になると子どもと同じ責任を負うが、そうでない場合も子どもが返済で苦しんでいれば、親の気持ちとして援助してやりたくもなる。

親の年齢と子のイベント(菅原氏作成)
大きく表示したい場合はこちら
 上記は、JASSOの最長20年間の返済年月を表している。親が25歳時に生まれた子は、親が44歳時に大学に入学する(赤い枠)。大学時代、子どもの教育費に預貯金をすべて使い切ったとしても、自身の老後生活費を貯める時間は10年以上ある。
 一方、35歳時の誕生だと子どもの大学卒業は親が57歳の時。学費負担を終えてから老後生活費を貯める時間的余裕はほとんどなく、教育費を負担する時期と親の老後生活費の準備が重なる。それでも、子ども自身が奨学金の返済をきっちり行うのであれば、老後生活費は何とかなるだろう。それが45歳時の誕生なら、子の卒業時には定年退職後だ。教育費を負担することは、即自身の生活費を圧迫する。
 もし、返済5年目から3年間(青い枠)奨学金の返済を援助するとどうなるか。第一種で3万円を4年間借りると、青枠3年間の返済分は約33万円。第二種12万円で3%の利率だと約116万円になる。奨学金を考えなしに多めに借りてしまう危険性がわかってもらえると思う。
 収入は限られているのだから、教育費に多くを使ってしまうと老後資金が不足する。親の老後破産を防ぐためにも、貸与型奨学金の額をできるだけ減らす教育資金プランを実行することが重要になる。
 
【あわせて読みたい】
・奨学金頼みで老後破産?…我が家の学費計画
・「40代で子宝」夫婦の誤算…「老後破産」の現実(5)
・子どもがニート? ひきこもり?…「老後破産」の現実(7)
・子どもがお金で苦労しないために〜幼児からできるマネー教育
・増加中? 社会人デビュー直前のひきこもり
 
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プロフィル
菅原直子( すがわら・なおこ )
 教育資金コンサルタント。外資系生保を経て1997年よりファイナンシャルプランナー。高校生と保護者向けの進学資金・ライフプラン講座を中心に個人相談も行う。時間を味方につけられるよう、出産前後〜小学生保護者向けのお金まわり講座に注力中。

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共働き夫婦「うちは大丈夫!」の落とし穴
ファイナンシャルプランナー 當舎緑
2016年07月07日 11時00分
無断転載禁止
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 財布が二つある共働き。収入が多い分、それぞれの稼ぎをお互いが好きに使うなど、財産管理が甘くなりがちな面もある。子ども2人を中学から私立に行かせた結果、大学進学を前に教育費が足りないおそれが出てくる家庭も少なくないという。共働き世帯が教育費を貯蓄する上でのポイントを、ファイナンシャルプランナーの當舎緑さんに解説してもらった。
夫婦共働きでも苦しい家計

共働きでも家計が厳しいのはなぜ?(写真はイメージ)

 女性の就業率はいわゆるM字カーブが多いと言われている。結婚して子どもができるといったん仕事を辞め、子どもが少し大きくなると働き出すというライフプランだ。家計診断をするときに、「専業主婦の妻は子どもが一定の年齢になると働く」という要素を入れて家計のキャッシュフローを作ると、その後の家計が断然楽になる。家計の見直しの際、赤字対策としてよくお薦めしている方法ではある。
 ところが、共働きであっても家計は楽ではないというご夫婦にお会いすることがある。1組や2組ではない。なぜなのか。
ゼロからでなくマイナスからのスタートをしているケース
 夫婦どちらもが自らの奨学金返済中というAさん夫妻が家計診断に訪れた。共働きなのに全く預金ができていない。子どもの学費のために貯蓄もしたいし、これから住宅も購入したいという気持ちはあるものの、全く対策をしていない。まずは教育費を貯(た)めたいというご相談だった。
 現在2人とも30歳で、子どもは3歳と5歳。奥さんが150万円、夫が450万円の年間収入がある。
 家計の財布は別々で、家賃と子どもの保育料は夫、水道光熱費は妻。食費や消耗品はそれぞれレシートを出して分担しているが、負担があいまいな項目もあり、全体としてどちらが管理するという方針はないという。また、携帯代などの通信費用はそれぞれが支払っている。児童手当は夫の口座に入金され、そのまま何もせず入れたままとなっているので、使っていることもあるかもしれないとのこと。
 更に、これまでの家計をヒアリングすると、妻が再び働き出したのは2人目の子どもが1歳になった時。1人目の子どもを妊娠したとき、妻が退職して、夫の給料で2人分の奨学金を返済していたのだ。
 たとえ妻に収入が無くても、大黒柱に収入があるので「奨学金を返さない」という選択肢はあり得ない。もし何の手続きもせず、奨学金を3か月以上延滞すると、個人信用情報の取扱機関に登録される。その結果、クレジットカードが発行されない、ネットショッピングや自動車ローン、住宅ローンを満足に組めないなど、生活に支障をきたすこともあり得る。

表1 Aさん夫妻の奨学金(日本学生支援機構の奨学金返済シミュレーションを基に當舎さん作成)

表2 大学生の年間生活費用(単位:円、日本学生支援機構平成26年度「学生生活調査」より當舎さん作成)
 夫婦それぞれの奨学金は表1のようになっている。現時点で、妻は4年、夫は7年の返済が残っていることとなる。
 大学生の学費等・生活費は、表2の学生生活調査からわかるように、一番少なく済む「自宅通学の国公立の学生」でも月に9万1608円、平均でも15万5175円が支出されている。全額家計から出すのが困難な家庭も多い中、2人が借りている金額は決して多すぎるわけではないことがわかるだろう。
 Aさん夫妻の場合、いずれも学生時代にアルバイト代が5万円程度あったため、奨学金の額がこの程度に収まっている。もし理系などの忙しい学部であまりアルバイトができない場合には、奨学金の総額がもっと膨れ上がっていた可能性もある。奨学金を借りる場合にはできるだけ最少の金額に、そしてできるだけ早め早めに返すこと、しかも結婚前に完済しておくことが理想的であろう。
次のページ妻の働き方も考えてみよう
夫婦2人で働けば、それほど苦労せずに奨学金を返せると考える方は多い。そもそも奨学金は、いいのか悪いのか一番手軽に借りられるという借金といえる。
 Aさん夫妻のケースでは、どちらも月々の負担が少ないし、無理に返済を早めることもなく、これくらいの負担ならちゃんと返せるだろうと軽く考えており、何の対策も講じていなかった。しかし、妻が仕事を辞めると、奨学金の返済は、夫ひとりの給与から支出することとなる。その結果、子どもの教育費が満足に貯められない負の連鎖となっていた。
 おまけに今回のケースでは、妻の年収が150万円と、家計の足しにするには微妙な金額に収まっていた点も問題となる。妻は給与から自分の社会保険料も控除されていたので、手元に残るお金も少なく、貯蓄ということが考えられなかったのだ。

表3 年収120万円と年収150万円の手取りの差額(當舎さん作成) ※健康保険の扶養家族の認定要件は、年収の見込み130万円未満が条件。収入が120万円の場合では、雇用保険のみの加入で計算した
 表3を参照してほしい。120万円の年収で働いたときと150万円の年収で働いたとき、手取りの差額は意外と少ない。額面では30万円も違うにもかかわらず、月額で7004円、年額で8万4048円と、その差は10万円に満たないのだ。
 一番貯蓄できるはずの子ども0歳から小学生時代までが、親の奨学金の返済期間と重なるのは非常に大変なことだ。改めてAさん夫妻の収支を調べてみたところ、夫の口座に入金された児童手当は、やはり夫の収入と一緒になり、保育料や生活費に使われてしまっていた。もし、その児童手当をすぐに他の口座に移していれば、以下のような金額が積み立てられているはずである。家計管理のために教育費を別の口座で管理していれば、今頃は教育費として、「必ず」132万円は貯まっていた計算となるのだ。

表4 子ども2人の児童手当を積み立てた場合の貯蓄額(當舎さん作成)
夫婦の財産を見直ししないまま損をしているケース

住宅ローンや保険料が教育費を圧迫する(写真はイメージ)
 高校生2人の子どもを持つBさん夫妻のケースを見てみよう。
 30歳で第1子を出産後、2年後に第2子を出産した。最初は妻も総合職で給料もかなりよかったので、少しでも早く返済が終わるように2人がそれぞれ住宅ローンを負担したそうだ。ところが、妻は子どもが小学生のときに転職し、年収は半減した。
 その時、夫婦で家計を見直しておけばよかったのに、これまでと同様の生活を続けてしまった。しかし、このままでよいのか妻が心配になって相談に来たのだ。
 妻の方は、自身が負担する分の住宅ローンを借り換えするなどしており、家計に対する意識が高い。しかし、夫の財産については、いくらあるのかも知らず、結婚当初から何にいくら使い、いくら貯蓄しているのかも全く話したことがなかったという。
 普通は年収が変わったとき、子どもが進学するときなど、ライフプランの区切りには家計の見直しが必須だ。生命保険を見直したり、ローンを早めに返済したり、貯蓄を見直すという方法である。ところが、生命保険は結婚当初に加入した生命保険を見直しせず、高い保険料をずっと払い続けていた。
 よく言われているが、生命保険は家の購入に次ぐ大きな買い物だ。子どもが生まれたばかりの専業主婦のご家庭であれば、夫に万が一のことがあることを考えて、高い保険に加入することを勧めることもある。しかし、共働き家庭であれば、死亡保障額の低い、比較的安い保険でも大丈夫だ。一方の収入がなくなっても、もう片方の収入が続くからである。
 Bさん夫妻が加入している生命保険をチェックすると、必要保障額の設定がかなり高くなっていた。妻が働いているにもかかわらず、遺族が「専業主婦と子ども2人」になる想定で保障額を見積もられていたのだった。知人を介して加入したこともあり、特に吟味もせず、高い保険料を払い続けていたのだ。自然に天引きされていることで、真剣に見直すきっかけのないまま、かなり損をしたことになる。そこで、生命保険の見直しを行い、必要保障額を下げることで、月々の保険料を約4万円から2万円に圧縮した。
次のページ教育費のためにさらに厳しい見直しをすると
さらに、夫が負担する分の住宅ローンについても、借り換えや繰り上げなどの見直しを提案した。高校生のお子さんは2人とも中学から私立に通っている。学費などの子どもにかかる費用はすべて夫の収入から払っているものの、ほとんど貯蓄ができていない。
 妻は食費や水道光熱費、雑費を負担しているが、子どもが小さい時よりも食費の負担はかなり増えている。食費、水道光熱費、通信費などの「基本生活費」自体が増加しているにもかかわらず、妻の収入は転職後全く増えていないので、こちらも当然あまり貯蓄できていない。「(住宅ローンは)払えているから大丈夫」と、夫が思っていることが問題だった。

表5 住宅ローンの借り換えによる効果 ※諸費用は、借り換えに必要な印紙税や司法書士報酬など(當舎さん作成)
 現時点で2000万円の残債がある住宅ローンを借り換えた場合の効果は、表5の通りだ。返済額が増えているが、こちらには生命保険の見直しで浮いた2万円を回す。企業年金や退職金があまり望めない企業であれば、定年前に住宅ローンを完済しないと、教育費が夫婦2人の老後資金を圧迫するからだ。総返済額にもかなり高い効果があることがわかるだろう。
 併せて、これまで妻が負担していた基本生活費を夫に負担してもらうよう提案し、妻の給料を貯蓄にまわすこととした。これは、夫の収入から自身の小遣いにあてている金額に余裕があり、生活費を負担してもらうことが不可能でない給与だったからだ。

表6 学部ごとにかかる費用 ※一部端数処理(文部科学省の調査を基に當舎さん作成)
 Bさん夫妻は幸運なことに、夫の銀行に入金されていた児童手当を、子ども名義の口座に積み立てており、子ども2人にそれぞれ200万円程度を貯蓄できていた。ただ、表6を見てもらうとわかるが、私立大学初年度納付金の文部科学省の調査結果から、大学進学時に平均131万1644円の負担が待っている。子ども2人とも、とりあえず初年度はこの貯蓄で何とかなるとしても、2年次以降のプランはこれからの妻の貯蓄にかかっている。
 今後は夫も家計の情報を共有することが大切だとアドバイスをした。夫の給与で日常の基本生活費を賄い、妻の給与は全額貯蓄するくらいの覚悟がなければ、子ども2人を中学から大学まで私立に通わせ、最後まで奨学金に頼らず修了するのは困難と言わざるを得ない。

共働きのメリットを引き出すためには、計画性が大事(写真はイメージ)
 2人が働くことで、安易に家計が楽になるとは思わないようにしたいものだ。家計がダブルインカムであったとしても、ひとつの財布に置き換えて、キャッシュフローを考えておきたい。Aさん、Bさんどちらのケースも、夫婦お互いの収入があるということで、基本生活費以外をブラックボックスにしてしまった点が一番の問題といえる。
 ファイナンシャルプランナーとしては、貯蓄の目安は手取りの10%程度の金額を薦めている。しかし、夫婦どちらにも収入があると、それぞれが好きな用途で貯蓄していることも多い。結婚した当初から、「住宅取得資金」「子どもの教育費」「旅行費用」「老後資金」「予備費」などの目的別に2人まとめて貯蓄するようにし、そこから計画的に使えてこそ、ダブルインカムのメリットを最大限に引き出せるといえるのだ。
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プロフィル
當舎緑( とうしゃ・みどり )
 社会保険労務士、行政書士、ファイナンシャルプランナー。資格取得の講師だけでなく、教育・育児、マネーなどのセミナー講師や執筆をはじめ、近年はベネッセのネットサイト「たまひよnet」のQ&Aの回答者、一般社団法人かながわFP生活相談センターの理事、神奈川県の県民センターや横浜市内の区役所で法律相談をするなど、幅広い活動を行う。3児の母でもある。

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2016年07月07日 11時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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コメント
 
1. ダイビング[273] g1@DQ4Nyg5ODTw 2017年3月06日 22:44:02 : GLUiH1o95U : z_48yBWfvSI[278]

なんか、長い長い文書が並んでいてすべて飛ばしました。

読んでいて暗澹たる気持ちになったり、何かできることはないか

と思ったりします。

しかし、新自由主義の計算主義におもねって、40兆円の損失とは

賛意を呈しかねます。 


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