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「騙し」や「ウソ」が会社の利益を漏らしている ブラック企業の壮絶パワハラ、サバイバル術 退職金制度は福利厚生制度ではない
http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/212.html
投稿者 軽毛 日時 2017 年 3 月 15 日 19:21:51: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

【第4回】 2017年3月15日 児島保彦
「騙し」や「ウソ」が会社の利益を漏らしている

会社から利益が漏れてしまう大きな原因の1つは、社内に蔓延する「騙し」や「ウソ」だ。それを見過ごしてしまうと、損失は大きく膨らんでいき、会社にとって致命的な打撃になる危険もある。どうすれば、社員のウソを見抜くことができるのか――。


営業部門は
こんな「ウソ」をついている

 会社の利益が漏れてしまう恐れのある身近な例と、その対策を紹介します。

 たとえば、社内で「騙す」こと、あるいは「ウソ」についてです。営業を例にあげて説明しましょう。

「騙す」「ウソ」という言葉を使うと、不穏当であり不愉快に思われる方がいらっしゃるかもしれません。しかしこれは43年間、大きな組織の一般社員から役員まで経験し、その後、中堅企業の社長をやったり、経営コンサルタントとして中小企業を立て直した経験に基づく実感です。

 私自身の告白をすれば、部下として使われている間は、会社や上司を、意識的にせよ無意識にせよ「騙し」ました。また役員や社長になると、部下から「騙される」ことも少なくありませんでした。

 社長の資質のうち最も大切なものは、あらゆる情報が飛び交う中で、自分の会社が進むべき最適な道を見出す力です。しかし、さらにもう1点あります。それは、こぼれる利益を止めるために、部下の言動の中にある「騙し」や「ウソ」を見抜く力なのです。

 営業は「騙し」「ウソ」が発生しやすい部門です。確かに会社はものを売ってなんぼの世界です。したがって「営業」は会社の中枢ですから、社内でもその力は絶大であり、営業の動向が会社を左右します。

 営業経験のない社長であれば、営業部門の言動によって経営方針を左右されるのも当たり前でしょう。

 逆に営業関係者からすると、会社を背負っている責任の重大さから、日々における重圧は大変なものです。

 そこで彼らは、無意識のうちに自分たちの組織を防衛しようとして、他社を例に出して言い訳をしたり、他部門をそれとなく批判したりして、責任の転嫁をしようとします。

 私自身が遭遇、体験した営業の「ウソ」を列挙してみましょう。

(1)シェアと前年度比を使い分けます。売り負けたときは前年度比を使い、昨年を割った場合はシェアを持ち出します。

(2)他社に売り負けたときには、「ライバル会社が安すぎて太刀打ちできません」と市場のせいにします。あるいは他社に比べて製造原価が高すぎると、暗に製造部の責任にしてしまいます。

(3)とかく売上数量ないしは売上高が重視されますので、販売価格を犠牲にした「原価割れ」の結果であることは伏せておきます。そして「この不況の最中ですが、なんとか昨年並みの実績を上げました」と胸を張ります。

(4)「品質が落ちる」「うちの技術屋は見劣りがする」「あれほど流通の拠点をつくれと言ったのに」のように、技術部門のレベルの問題や企画部門の責任に転嫁します。

(5)同様に「うちの製品は人気がない」「宣伝部のセンスが悪い」「宣伝にもっと金をかけてほしい」と他部署のせいにします。

(6)「うちには魅力のある商品がない」と、開発力の弱さを指摘します。そのくせ市場の「売れる製品の情報」は流しません。

(7)「あの会社を知り尽くしているA社やB社ですら不渡りをくらったのですから、うちがやられるのは当たり前ですよ」「うちばかりが甘かったのではありません」と、他社を引き合いに出して弁解します。

実態のない、言葉だけの
「ウソ」を見逃さない

 これらの中には、もちろん正しい意見もあるかもしれません。しかし大半は、日ごろ思っている不満を、売れないときの言い訳に使っているだけです。営業経験のない社長であれば、聞いただけでは、どれもこれも、もっともな説明のように思ってしまいます。

 しかし、社長が聞き流さずに、これらの営業の「ウソ」の言動に「待った!」をかけないと、どんどん図に乗ってエスカレートします。

 実は、社長に営業経験がないとすればチャンスです。知らないことを逆手にとって、営業のいい加減な言動、「あれ?」と疑問に感じた報告について、徹底的に質問をするのです。

「他社が安いというが、どこまで市場調査したのか具体的に言いなさい」
「コストが高いというが、どの製品のどの部分が高いのか」
「価格は過去3ヵ年、どのように推移しているのか」
「A地区にサービス網がないのは昔からだが、なぜ今年の売上は下がったのか」
「不渡りは当たり前のように言うが、営業の信用管理のルールをここで説明しなさい」

 といった調子で、疑問点を追究するのです。「ウソ」をついている営業は、痛いところを突かれた格好になります。

 つまり、営業マンの責任逃れの「ウソ」の言い分に歯止めをかけて、次回から安易な言い訳は通らないことをわからせるのです。「社長は知っているのだ」「社長は何もかもお見通しなのだ」と思わせることです。

 それだけで、マンネリ化した会議に緊張感が走り、今までとは違った緊迫感のあるやりとりに変わるはずです。

 ここでは営業の話だけにとどめますが、生産も経理も開発も技術部門も、「騙し」「ウソ」はどこの部署にも存在します。特に技術部門の「ウソ」は、取り返しのつかないことになる場合がありますから、利益の漏れない経営をするためには、意識して注意しなければなりません。

 営業の例のとおり、日常の業務の中で起こるちょっとした「ウソ」が積み重なると、社内全部門に影響して、利益が出せない体質になってしまいます。「ウソ」は形に表れない損失だと考えて、徹底的に対処しなければなりません。

http://diamond.jp/articles/-/120654

 


2017年3月15日 工藤ダイキ
ブラック企業の壮絶パワハラ、体験者が明かすサバイバル術


パワハラは企業社会に深く根を下ろしている。ブラック企業で壮絶なパワハラを経験した元営業マンが、その実態を明かす(写真はイメージです)
会社員時代の絶望の日々
職場に潜むパワハラの惨状

「周囲は誰も助けてくれない」「もう会社を辞めてしまいたい」――。

 私はブラック企業の営業マン時代、日々そうした絶望の淵にいました。職場で壮絶なパワハラを受けていたのです。現在、フリーライターとして独立した私は、会社員時代の経験を基に社会の労働問題を取材し続けていますが、あのとき感じた恐怖や、やり切れない思いは、今も脳裏に焼き付いて忘れることができません。

 パワハラは古くて新しい問題です。最近では、周囲に「パワハラ上司」という印象を与えることを恐れるあまり、部下に対して厳しい指導をしづらいと嘆く企業の管理職の声も聞こえます。それはそれで問題ですが、こうした言説の背景には、「パワハラ」という言葉が世の中に蔓延し、インフレ状態を起こしているため、いささか軽いイメージで語られ過ぎるようになってしまったという一面もあるように感じられます。

 私はこうした風潮に、以前から危機感を覚えていました。本来の意味で言う「パワハラ」とは、職場で権力を持つ者が弱い立場の者に対し、業務上適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えるという、れっきとした人権侵害であり、場合によっては刑事罰の対象にもなりかねない行為だからです。その深刻さは、私のように実際に経験した者でないとわからないのかもしれません。

 昨年、大手広告代理店・電通の女性社員が長時間残業に疲弊して自殺した事件は社会問題となり、その背後にパワハラの存在も指摘されたことから、世間のパワハラへの問題意識が改めて高まりました。とはいえ、世間の意識の高まりだけでパワハラを根絶できるわけではありません。パワハラの「種」は企業の職場に深く根付いているからです。

 上司・先輩から部下・後輩に対して行われる「指導」と「パワハラ」の境界線を見極めることは、口で言うほど簡単ではありません。パワハラを受けている部下は、厚生労働省のHPを見たり、労働問題の専門機関に相談したりすれば、その定義や対応策に関する基礎知識は得られるでしょうが、日々職場で行われているパワハラは巧妙なケースが多く、個人の知見だけでは立証できないことも多いからです。また、明らかにひどいパワハラを受けているケースでも、社内での立場を気にして声を上げづらいという人も多いと思います。

 現在、パワハラ被害に遭って悩んでいるビジネスパーソンは、自分が置かれている状況をどう見据え、どう対処していくべきなのか。私の経験を基に、お伝えしたいと思います。

 本記事では自己紹介を割愛しますが、私が以前勤めていた会社の状況や退職後の経緯については、先日ダイヤモンド・オンラインに寄稿した記事「ブラック企業の元営業マンが教える、会社に人生を奪われない心得」で詳しく述べたので、興味がある方は参考にしてください。そこは美容商材を扱う商社で、まさに黒色に黒色を上塗りしたようなブラック企業。私はこの会社と関わったことがきっかけで、かなり特殊な経歴を歩みながら、今日に至っています。

 まずは、私が会社員時代に経験したパワハラの実態をご紹介しましょう。上司から暴言・暴力を受けているとき、同じ職場で働く従業員は誰一人として私のことを助けてくれませんでした。たとえば、退職勧奨を受けている際、私は直属の上司に胸ぐらを掴まれたことがありますが、同席していた社長は不敵な笑みを浮かべながら暴力を黙認。またすぐそばには他の従業員が5人ほど働いていましたが、一瞬空気が凍った後、みんな淡々と仕事に戻ってしまいました。「社会は残酷なんだ」と学びました。

録音内容を公開
これが退職勧奨の実態だ

 私はその後、このブラック企業を訴えることになりますが、そのとき役に立ったのが、パワハラを受けていた際にICレコーダーで録音していた「退職勧奨の録音データ」です。その一部をご紹介し、ブラック企業のリアルな実態を知ってほしいと思います。下記の会話は、営業所内で行われた退職勧奨の内容です。接続詞の追加や固有名詞の削除など、多少の編集を加えていますが、実際の会話の内容とほぼ同じです。

社長「なんで休日出勤しないの?」

筆者「いや……休日はバドミントンのクラブチームの練習がありまして……」

社長「じゃあオリンピック目指せって。今何歳?」

筆者「23歳(当時)です」

社長「間に合う!東京オリンピック!毎日練習しろ。だからお前は仕事してる暇ないよ」

上司「お前もう(会社を)辞めた方がいいよ?あ?」

筆者「いや頑張ります」

上司「頑張るじゃねーよ。頑張ってねーから言ってんだよ。ちっ」(※舌打ち)

社長「お前さ、ほんと考え方が違うんだよ。会社とお前の考え方が違うんだよ」

筆者「はい」

社長「お前バカか?ここに居んな。俺の近くに居んな」

筆者「すみません」

いい加減に辞表持って来い!
親に電話するから番号教えろ

上司「お前もう辞表持ってこい」

筆者「いや、頑張ります」

上司「いやじゃねーよ。いい加減にしろよお前」(※胸ぐらを掴まれる。社長黙認)

筆者「すみません」

上司「あ?何がすいませんだよ?迷ってる暇ないって言っただろ。ちっ」(※舌打ち)

社長「親の電話番号教えて」

筆者「え?なんでですか?」

社長「必要なんだよ。お前に言ってもしゃーねーだろ」

筆者「いや、僕でお願いします」

上司「うるせーよ」

筆者「親は関係ないんで」

社長「関係あんだよ。関係あんだよ」

上司「教えろって言ってんだよ。言えよ」

社長「なめてんだろ?ほんとに?ふざけんな!」

上司「社長、ぶっ飛ばしちゃダメですか?」

 この後、両親の連絡先を聞き出された私は、社長が電話をかける前に急いで両親に連絡し、「社長から電話があるかもしれない」という情けない報告を行いました。ちなみにその会社は週1回の休日出勤を推奨していましたが、給料や手当などは1円も発生しません。完全なサービス残業です。私は月2回のペースで休日出勤していました。

 私は小言などを除くと計7回ほど、社長にガッツリ退職勧奨をされたことがあります。だいたい毎回1時間前後で終わるのですが、長いときだと3時間以上、退職を促されたこともありました。退職勧奨は会議室などの密室で行われるときもあれば、全従業員が働く目の前で公開処刑にされることもあるなど、かなりバリエーションに富んでいました。

取引先の社員まで退職勧奨に
参加するという異常事態

 様々な退職勧奨を経験しましたが、その中でも極めつけでヘコんだのは、こともあろうに、他社の社員(M氏、H氏)が同席する中で行われた退職勧奨です。今から紹介する録音データは、実際には1時間近く行われた会話なので、重要な箇所だけを抜粋して記載します。営業所内の応接間(密室)で行われたものです。

社長「俺は退社したらどうですかってお願いしてるんですよ」

筆者「ここで頑張りたいです」

社長「懲戒免職になったらもう仕事先ないんだぞ?」

筆者「そうなんですか」

社長「(会社を)辞めてくれない?」

筆者「嫌です。ここで働きます。ここで働かせてください」

M氏「サラリーマンの経歴に傷が付くよ」

社長「昇給もない。ボーナスも払いません。この時点で気づいてほしいんだよね」

H氏「自分の置かれている状況わかってますか?」

社長「自主退職しろって。お前はまだ若いんだから。何を意地になってるの?」

H氏「いつまでに答えを出すんですか?」

筆者「いや……それは……」

M氏「覚悟した方がいいよ。身をもってわかるかもしれないね」

社長「お前この状態でも働こうとしてんの?」

筆者「はい」

社長「はははははははは(笑)」

M氏「はははははははは(笑)」

H氏「はははははははは(笑)」

 このような集中砲火が1時間近く繰り返される屈辱。M氏とH氏は美容商材を取り扱うメーカーの社員です。私は商社に勤めて彼らの商材を取り扱っていたので、彼らにとっての「お客様」が私のはずでした……。にもかかわらず、なぜこんな目に遭わなければいけないのか。おそらく、社長が頼んだからこその退職勧奨への参加だったと思います。ちなみに彼らの所属する会社は、業界でもトップクラスのシェアを誇る超大手メーカー。おそらく上場していたと思いますが、これでは企業コンプライアンスなどあったものではありません。

 パワハラはこうした言葉の暴力だけではなく、時には身体的な暴力も伴いました。それから間もなく、私は会社を唐突に不当解雇されてしまったのです。

上司個人の問題か、会社の問題か?
パワハラ被害者が身を守る2つの方法

 いかがでしょうか。私が経験したレベルのパワハラに悩む人が世の中にどれほどいるかはわかりませんが、パワハラとはかくも陰湿で、社員の心に打撃を与えるものであることがを、パワハラを受けたことがない人にも知ってほしいと思うのです。

 こうしたパワハラに苦しめられるビジネスパーソンは、どんな対策を考えればいいのでしょうか。私の経験則上、その対応は大きく2つのケースによって異なります。パワハラが上司個人の問題か、それとも会社の問題か、ということです。

 第一に、パワハラの原因が直属の上司にある場合です。この場合は、周囲の同僚に相談したり人事部に駆け込んだりして、上司にパワハラをやめさせるよう、社内での働きかけを行うことが先決です。たいていの場合は、人事部や会社の上層部が本人に厳重注意を行ったり、上司かあなたかのどちらかを別々の部署に異動させたりすることで、事態の収拾を図ってくれるはず。そうなれば、状況が改善される可能性は高いと思います。

 ただ、いくら苦境を訴えても、会社がちっとも動いてくれないというケースが意外に多いことも報告されています。そうした場合は、労働基準監督署などの外部機関に相談するのが順当なところでしょう。ただし、この場合に優先すべきは、自分が会社に残れるようによく考えて振る舞うことです。外部の力を借りて会社と直談判してもらうなど、強硬な手段をとると、それで上司のパワハラはなくなったとしても、周囲のあなたに対する心象は悪くなる可能性があります。弁護士に相談する場合はなおさらでしょう。いわゆる「色眼鏡」で見られることにより、居心地が悪くなり、ゆくゆく自分自身で退職を選ぶという残念なことになりかねません。問題の解決はなるべく社内に止めることが必要です。

 第二に、会社ぐるみでパワハラが行われている場合です。私が勤めていた会社はまさにこれでした。率直に言って、この場合は会社に残るという選択をせず、なるべく早く新しい人生のスタートを切った方が賢明と言えます。もちろん、「それでも今の会社で頑張り続けたい」と考える人はいると思いますし、それはそれで尊い選択だとは思います。しかし、いざというときに自分が不利にならないよう周到に準備をしながら、いつでも退職届けを出せる心づもりをしておくことは必要です。

 ここで強調しておきたいのは、もはや「周囲の心象」など気にしていてはいけないということです。こうした会社のパワハラは、身体的な暴力、賃金未払い、退職勧奨やその結果としての不当解雇など、法に抵触しかねない悪質な行為を伴うことが多くあります。労基署や弁護士などの外部関係者を活用し、「泣き寝入り」しないことを考えるべきです。これらの関係者に助けを求める際には、私が行ったように、パワハラの一部始終をICレコーダーで録音するなどして、明確な「証拠」を用意しておくことが必要不可欠です。

 私の場合は、不当解雇を受けたため、弁護士に依頼して会社と民事裁判を行ない、解雇を取り下げさせた上に、和解金として700万円を勝ち取ることに成功しました。「やられたらやり返す。倍返しだ」という言葉が流行りましたが、それはドラマの中だけでなく、現実においても胸に刻んでおくべきセリフです。

 ただし、どんなに酷な待遇を受けても高額の慰謝料を取ることは容易ではない、という事実は心得ておく必要があります。慰謝料には「相場」が存在しています。もちろん個々の案件や状況により獲得金額は大きく異なるのですが、パワハラの慰謝料は50万円も取れたら御の字の世界です。不謹慎な具体例かもしれませんが、パワハラによる自殺が労災だと認定されて、残された遺族がようやく数百〜数千万円の慰謝料を手にすることができるというレベルです。

慰謝料だけなら50〜100万円ほど
訴訟は費用対効果をよく吟味

 私が勝訴したときの弁護士曰く、「慰謝料だけなら50〜100万円ほど」だったそうです(残りは未払いの残業代や転職支援金)。慰謝料請求と残業代請求を同時に行う「合わせ技」で攻めるなど、やり方はいくつもあるものの、パワハラの慰謝料は低額しか取れないという事実と向き合うことも必要です。実際、費用対効果を考えた場合、訴訟という選択をしないほうが無難となることも多いです。

 このような戦略的な考え方は、労基の職員よりも弁護士の方が得意だと私は確信しています。たとえば不当解雇を受けて労基署に相談しても、彼らには業務範囲の関係上、解雇の有効、無効を判断する権限がないため、相談者を助けたくても助けられません。ここが公的機関の限界と言えるでしょう。

 それに対して弁護士は機動力があり、圧倒的にビジネスライクです。彼らは獲得金額の一部を、自身の成果報酬として受け取ります。だいたい獲得金額の20〜30%ほどを弁護士費用として支払うのが、一般的な契約条件です。つまり弁護士からすると、取れるだけ取った方が自身への見返りが高くなるわけで、「勝ち」へのこだわりの強さには心強いものがあります。もちろん、金銭ばかりでなく善意で活動している弁護士もいるでしょうが、弁護士はお助けマンではなくビジネスマンだと考えるほうが妥当です。会社ぐるみの深刻なパワハラに悩むビジネスパーソンは、まずは弁護士のところへ足を運んでみてください。

(注)社員との交渉で企業が支払うお金の名目にはいくつかの種類があり、一般的に金額が大きいほうから「和解金(示談金)>損害賠償金>慰謝料」となります。慰謝料は精神的苦痛に対する金銭の支払い、損害賠償はこれに治療費などを加えた包括的な金銭の支払い、和解金は前述のものを含めその他諸々(転職支援金や残業代など)を加味した、企業・社員双方の落としどころとなる金銭の支払い、という意味合いです。詳しくは弁護士や労働問題の専門家に聞いてみてください。

パワハラの真の温床は
当事者よりも周囲にあり


工藤ダイキ氏の著書『24歳のフツーの男子がブラック企業に勝った黒い方法』(こう書房、1296円[税込])発売中
 ここまでパワハラの現状やその対処法について述べてきました。パワハラ被害に遭っているビジネスパーソンが、上司や会社との関係を見直し、希望ある未来へと歩を進める一助になればと願ってやみませんが、最後にパワハラ被害の本質に触れておきたいと思います。

 先に紹介した私のエピソードでも述べた通り、パワハラ被害者が最も苦しんでいることは、おそらく職場内の誰かが手を差し伸べてくれない状況なのではないかと、勝手ながらに考えています。壮絶なパワハラを受けていたときのことを思い出すにつけ、私は当時、見て見ぬふりをして助けてくれなかったり、パワハラに加担したりした周囲の社員に対して、「なんてひどい人たちなんだ」と思っていました。

 しかし、今の私は「それも仕方なかったのかもしれない」という結論に達しています。もちろん、彼らの対応を容認しているわけではありませんが、私を助けたら社長の反感を買い、言い換えるなら、自らの首を絞めることになるわけです。

 家族を守るために、お金のために、自分の幸せのために私という弱者を切り捨てるという判断は、至極合理的だし、ローリスクだとも思います。日本人とは面白いもので、みんなで同じ行動をするのが是という、社風ならぬ「国風」があるように感じます。しかも、一度でもレールから外れたら最後、そう簡単に再起することを認めないという縛り付きです。だからこそ、黙殺という行為が合理的になってしまうのでしょう。

 そんな当たり前の事実をようやく頭で理解できるようになった私ですが、やはり本心では今でも怨みの念にかられることがあります。罵倒されたり、殴られたり、蹴られたりしたときは私も苦しかった。だけど、それらの行為を笑いながら見ている上司、見て見ぬふりをする同僚を目撃したときの方が、より激しい憎悪と苦しさを覚えました。

 その意味でも、パワハラが横行する風土を作り出す真の原因は、パワハラの当事者だけでなく、その周囲にこそあるのではないかと私は思うのです。企業においては、経営者、人事部、総務部といった人材戦略を考える立場の人ばかりでなく、全ての管理職や一般社員が、そのことを肝に銘じるべきではないでしょうか。

(フリーライター 工藤ダイキ)

DIAMOND,Inc. All Rights Reserved.


http://diamond.jp/articles/-/121251

 



【第1回】 2017年3月15日 山崎俊輔
社長、退職金制度は福利厚生制度ではありません!

2017年1月から、新しい制度に改定した「個人型確定拠出年金=iDeCo(イデコ)」が開始されました。以前は、企業年金がない会社に勤める人だけが加入できる制度でしたが、改定後は条件付きながらも、会社に企業年金がある人も始められます。
それにともなって、企業年金や退職金制度に、がぜん注目が集まっているのですが、それは働く(年金や退職金をもらう)人だけで、会社を経営する側にとっては、関心が低いままです。しかし、せっかく政府が後押しをしてくれる制度ですから、活用しないと損です。
この度、退職金、企業年金に詳しい山崎俊輔氏が『小さな会社のための新しい退職金・企業年金入門』を上梓。
その本の内容をベースに、この連載では、退職金制度の仕組みの説明をはじめ、中小企業の社長さんや、人事、総務部門の人たちが、どのように、退職金、企業年金制度を活用すればいいかを、新たに書きおろしてご紹介していきます。


退職金・企業年金制度は
何のためにやっているのか?

 仕事上、多くの会社の社長さんに話を聞く機会がありますが、いつも驚くのが退職金制度や企業年金制度に関する、理解の低さと関心の低さです。

 まず、今ある制度についての理解がありません。なんとか答えられるのはモデル退職金額くらいです。
具体的に、どんな制度を採用し、どれくらいのコストをかけていているか。そして積み立て不足はあるかないか、運用状況を理解し納得しているか、さらに、退職金の支払い費用が将来10年先まで見通せているか、などの質問をしていくと、すぐにギブアップしてしまいます。

 そもそも関心が低いことが、理解が低いことの原因にもなっているのですが、それはなぜかと言えば

「昔からある(先代社長すなわち父親が作った)制度だからよく分からない」
「辞めた社員のための制度のことより、本業のことで頭が一杯」

という答えで、むしろ本業をどうすべきかという話に話題は移りがちです。

 こうした会社では、退職金・企業年金制度が何のために存在して、どのように維持していくべきかのビジョンがありません。これは経営者としては問題です。なぜなら、退職金・企業年金は思った以上の金食い虫であり、使い方を変えれば社員のやる気を引き出すポテンシャルがある制度だからです。

 そうはいっても、「退職金をいじろうにも、どう手をつけていいか分からない」という声もよく聞きます。今の制度に違和感はあるものの、仕事に忙しい日々を送るうち、なかなか取り組みができない…というケースが多いのです。

金をかけただけの効果が
退職金制度にあるか社長は自問せよ

 実は退職金・企業年金制度にかけているお金は給与の約10%にもなります(日本経団連「福利厚生費調査」による)。この調査によれば現金給与等の支払いにつき56.4万円払っている場合、退職金等の費用に別途月5.5万円かかっているそうです。

 給与額だけを見て、会社の総額人件費の全部を見たつもりになっている経営者がいますが、これは大間違いです。まず法定福利費、つまり厚生年金保険料や健康保険料の会社負担額という大きな負担があり、これを足すと人件費は15%も跳ね上がります。そして、社員が辞めたときに払うことになる退職金コストも、人件費として給与の約10%がかかる、と社長は意識しておく必要があるのです。

 特に、「今はほとんど定年退職者がいないが、50代の社員が3割以上を占めている」といった会社の場合、今は支払いコストを実感していませんが、何年かあとに、いきなり退職金支払いコストが爆発することもあります。

 そのとき膨大な支払い費用に困って銀行に相談をしても、銀行はおそらくお金を貸すことを渋るはずです。定年退職者に渡して右から左へ消えていくであろうお金を貸しても、会社の売り上げを1円も増やしてはくれないからです。

 退職金、企業年金に関係する今かかるコスト、そして、これからかかるであろうコストを認識し、それが会社にとって意義あるものか社長は自問自答してみる必要があります。もし、少しでも疑念があれば、それは制度を見直すべき理由がある、ということなのです。

退職金は社員への福利厚生だという
大きな勘違いを捨てる

 社長さんの多くが抱いている大きな勘違いのひとつとして「退職金は福利厚生制度」と思い込んでいます。しかし、退職金・企業年金制度は福利厚生制度(法定外福利)ではありません。

 そもそも福利厚生制度(法定外福利費)とは、死亡弔慰金や社員旅行の費用、保養所の利用費用などが該当するものです。

 これらは、給与とは別に存在し、社員の生活をサポートし喜んでもらうための費用です。

 義務ではありませんから、景気悪化の折には中断することもできます。「今年は赤字転落のためディズニーランドのフリーパス配布はありません」と社長名でメールをすればいいわけです。筆者に言わせると「いつでも削れるもの」が福利厚生費です。

 しかし退職金や企業年金はそういうわけにはいきません。これは「削ってはいけないもの」です。
 この費用は賃金の一部を後払いをしている性格があり、支払いの約束は債務とみなされています。上場企業ではこの債務の膨張が株価を左右することもあるほどです(退職給付債務)。手元にお金がないから払わない、は許されません。退職金を支払うことは福利厚生ではなく、会社の義務なのです。

退職金制度は「人事・報酬制度」として
とらえるべきである

 給与の約10%もかかる退職金制度ですから、改革するならうまく活用したいものです。この場合、まず退職金・企業年金制度を、福利厚生制度ではなく、「人事制度の一部」であると位置づけ、退職金の増減を「報酬制度」の一環であると再定義して決めるべきでしょう。

 会社の人事制度のサイクルを大きくいえば「評価→処遇→報酬」の流れです。公平な人事評価を行い、評価に従って適切な人事処遇を行い、処遇に見合った報酬を支払う…こうしたことをしっかり行うことで、社員のがんばりに応え、社員の会社への忠誠心も高めることができます。

 評価、処遇、報酬のいずれもバランスを欠けば社員の不満になりますし、そのサイクルが連環していかなければこれまた不満の温床となります。

 退職金や企業年金は、その給付額や掛金額の算定基礎を処遇にもとづき決定されます。給与と同様、定期的にお金を払う(積み立てる)わけですから、これはそのときの評価と連動させた「報酬制度」として設計、考える必要があるわけです。

 そして人事報酬制度だと理解すれば、お金に見合った効果が生まれるような仕組みを作っていくことが必要になります。

今回の結論
退職金・企業年金制度は、「長い間働いてくれて、お疲れ様」という福利厚生ではなく、働いていた成果と連動する「人事・報酬制度」としてとらえるべきである。

次回(3/22更新予定)は、退職金・企業年金を5分で理解する「4分類」を紹介します。


山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)
1995年株式会社企業年金研究所入社後、FP総研を経て独立。ファイナンシャル・プランナー(2級FP技能士、AFP)、1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)、消費生活アドバイザー。
若いうちから老後に備える重要性を訴え、投資教育、金銭教育、企業年金知識、公的年金知識の啓発について執筆・講演を中心に活動を行っている。
企業年コンサルタントとしても活動しており、特に確定拠出年金については、業界団体である企業年金連合会で首席調査役として企業担当者の研修担当や企業向けガイドブックの執筆を行い、さらに厚生労働省社会保障審議会確定拠出年金の運用に関する専門委員会委員も務める(2017年2月から)。「人事労務」等専門記事、マネー誌でも執筆ほか、日経新聞電子版で『人生を変えるマネーハック』を連載中。
著者ウェブ  http://financialwisdom.jp  twitter: @yam_syun
http://diamond.jp/articles/-/120986


 

 

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