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アベノミクスの七不思議を考えながら、今後を占ってみた(WEDGE)
http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/233.html
投稿者 赤かぶ 日時 2017 年 3 月 16 日 11:12:15: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

アベノミクスの七不思議を考えながら、今後を占ってみた
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9126
2017年3月16日  塚崎公義 (久留米大学商学部教授) WEDGE Infinity


 アベノミクスで景気が回復したことには、疑いありませんが、過去30年以上にわたって景気を見続けてきた筆者にとって、不思議なことが非常に多い景気回復でありました。今後のことを考えるためにも、なぜ不思議なことが起きたのかを振り返っておくことが重要と考えて、本稿にまとめてみました。

■ゼロ金利なのに金融緩和に効果があった……偽薬効果

 通常の金融緩和というのは、日銀が大量の資金を供給することで市場金利を押し下げ、それによって設備投資等を刺激して景気を回復させようというものです。しかし、ゼロ金利になると、金融を緩和しても金利がそれ以上は下がりません(マイナス金利のことは、忘れましょう)。それならば、金融緩和は効かないはずです。

 ゼロ金利下で日銀が銀行から国債を購入しても、銀行は融資先が見つからないので、日銀から受け取った札束をそっくり日銀に貯金します(準備預金と呼びます)。従って、資金は世の中には出回りません。銀行の国債保有(銀行の政府への貸出)が減り、準備預金(銀行の日銀への貸出)と日銀の国債保有(日銀の政府への貸出)が増えた、というだけです。実際、白川総裁の時は、金融を緩和しても何も起きませんでした。

 しかし、黒田緩和が始まると、株価(およびドル、以下同様)が値上がりしました。それは、一部の投資家(本稿では黒田教信者と呼びます)が「金融が緩和されると世の中に資金が出回るから株価が上がるはずだ」と考えて株に買い注文を出したからです。株価は人々が噂を信じて買い注文を出せば上がるので、その噂が真実であるか否かは関係ないのです。そうなると、黒田教信者でない投資家も、「黒田教信者が買い注文を出しているから、株価は上がるだろう」と考えて株の買い注文を出したので、株価は一層上がったのです。

 医者が患者に小麦粉を渡して「よく効く薬だ」と言うと、患者の病気が治る場合があり、これを「偽薬効果」と呼んでいます。今回も、効くはずのない政策を「効く」と宣伝しながら実行したら、本当に効いてしまったというわけですから、まさに偽薬効果であったと言えるでしょう。

 黒田総裁が、本当に効くと信じていたのか、効かないと知りながら効くと言っていたのかわかりません。後者であれば、彼を嘘つきと呼ぶことも名医と呼ぶこともできるでしょうが、本稿では結果重視で「名医」と呼んでおきましょう。

■円安なのに輸出数量が増えない……円高トラウマ?棲み分け?

 1ドルが80円から120円になれば、普通は輸出数量が増えます。輸出企業が「輸出すれば儲かるから頑張って輸出しよう」とするからです。しかし、今回は輸出数量は増えていません。

 一因は、円高時に計画された海外現地生産が、円安後に実行され、海外の生産が開始したので、輸出先が減ってしまったというものです。しかし、円安から4年も経つのですから、既にそうした効果は剥落しているはずです。

 輸出企業が輸出価格を下げていないから、海外から見て日本製品が安くなっていない、という指摘も聞かれました。契約通貨ベースの輸出物価指数を見ると、たしかに2014年までは、円安にもかかわらず輸出価格は下落しておらず、円建て輸出価格指数が上昇しています。しかし、2015年からは、一段の円安に応じて契約通貨ベースの輸出価格を引き下げる動きが明瞭となっています。輸出価格が下がったら輸出数量が増えるのが普通なのですが、そうなっていないのです。

 輸出を増やすためには、国内工場の生産ラインを輸出品向けに組み替える必要がある、とも言われています。日本の輸出企業は、長期的に円高に傷めつけられ続けて来たので、円高トラウマがあり、「また、どうせ円高になるのだから、生産ラインの組み換えはやめておこう」と考えているのかもしれません。

 輸出企業が円高トラウマ等で輸出を頑張らなくても、外国のバイヤーが「日本製品が安く買えるから」と押し寄せても良いのに、そうした動きも今ひとつのようです。日本製品はガラパゴス化しているので、国内用の製品と輸出用の製品では、あまりにスペックが異なっていて、外国人バイヤーのお目に留まる製品が無いのかもしれません。

 輸入数量が減っていないことも不思議です。日本人にとって、輸入品が高くなったのですから、国産品に乗り換える消費者が増えても良いように思います。これについては、「カジュアルな服は中国で、高級品は国産で」といった棲み分けが確立しているので、国産のカジュアル服が存在せず、円安になっても中国から輸入せざるを得ない、という事情もあるようです。

 それにしても、不思議です。筆者は輸入品のウイスキーやワインを減らして国産の日本酒や焼酎を飲むようにしていますが、そうした消費者は少ないのでしょうか(笑)。

■ゼロ成長なのに労働力不足……価格競争からサービス競争へ?

 景気の予想屋が経済成長率を重視するのは、「経済が成長すると、企業が物作りのために人を雇うから失業が減り、景気が良くなる」からです。従って、今回のように成長率が低いままだと、失業率が低下せず、労働力不足は生じないはずなのです。それなのに、失業率は下がり、有効求人倍率は上がり、人手不足の悲鳴があちらこちらから聞こえています。なぜでしょうか?

 一つには、高齢化に伴う医療・介護サービスの増加が挙げられます。ロボットが自動車を作る全自動の工場が減って、介護施設が建てられれば、GDPはプラスマイナスゼロだとしても、労働力の需要は大幅に増加するからです。もっとも、これは長期的なトレンドとして進んでいる話であり、アベノミクスによって始まったわけではありません。「アベノミクス前から徐々に水位が下がり続けていたが、誰も気付かなかったところ、アベノミクスにより川底の石が顔を出したために皆が水位の低下に気がついた」といったイメージでしょう。

 もしかすると、アベノミクスを契機として、値下げ競争からサービス競争に変化した部分も大きいのかも知れません。従来は、ペットボトルの水を買うには自分でスーパーへ行って水を買い、自分で持って帰る必要がありましたが、今では通販会社にインターネットで注文すれば、早ければその日のうちに到着します。販売側としては、「送料無料」と宣伝することで、「代金と送料の合計から送料分を値引きした」というつもりでしょうが、買い手からすれば「水を買ったら宅配してくれた。サービス向上だ」と感じられる、というわけです。

■労働力不足なのに賃金が上がらず……正社員は釣った魚だから

 企業収益が好調で、しかも労働力不足なのに、正社員の給料はそれほど上がっていません。なぜでしょうか? それは、正社員が釣った魚で、給料を上げなくても辞める心配がないからです。

 正社員は年功序列賃金ですから、若い時には会社への貢献より給料が低く、中高年は会社への貢献より給料が高いのが普通です。そうだとすれば、途中で退職してしまい、転職先では会社への貢献に見合った給料しか受け取れないとすると、損をしてしまうので、転職をしないのです。

 アルバイトや派遣といった非正規労働者の時給は上昇しています。それは、彼等が時給を上げないと退職してしまうからです。そこが正社員と非正規社員との大きな違いなのです。

 かつて、日本企業が「従業員主権」で「会社は家族」であった時代には、会社が儲かったら、配当を増やすのではなく従業員に還元したものです。したがって、経済の成長につれて正社員の給料も順調に上がって行ったのです。しかし、最近では「企業は株主のものだから、儲かったら配当をするのが当然」という企業が増えています。中途半端に日本的(年功序列賃金だけ残り、会社は家族ではなくなってしまった状態)である事が、給料が上がらない理由なのかもしれませんね。

 そうだとすると、非正規労働者の時給は引き続き上昇し、新入社員の初任給も就職戦線が売り手市場である事を考えると上昇せざるを得ず、意図せずして「同一労働同一賃金」に近づいて行くのかも知れませんね。

■企業収益好調なのに設備投資が伸びず……不況のトラウマ?

 企業の収益は好調で、史上最高レベルにあります。しかし、設備投資は盛り上がりに欠けています。その一因は、生産も売上も増えないので、能力増強投資を行なう必要がない、ということでしょう。今ひとつは、過去の不況のトラウマだと思われます。バブル崩壊後の日本経済は、何回も景気が回復しかけては挫折し、そのたびに「景気回復を期待して能力増強投資を行なった企業」が痛い目に遭ってきました。それがトラウマになって、「どうせ遠からず不況になるのだろうから、能力増強投資はやめておく」という企業が多いのでしょう。

 一方で、省力化投資には期待が持てます。これまで安価な労働力が豊富にあったので、企業は省力化投資のインセンティブを持たず、省力化投資を怠って来ました。そこで、少しの省力化投資で大幅な省力化ができる余地がいたる所にあるからです。少子高齢化を考えると、中長期的に労働力不足は続きそうですから、「どうせ遠からず安価な労働力が豊富に手に入るだろう」とは思われませんから。

■雇用者報酬が増えているのに消費が低迷……不況のトラウマ?

 労働者の平均賃金は、アベノミクスによってもほとんど上がっていません。しかし、これは正社員よりも非正規社員が増えたことによって平均が押し下げられたことの影響が大きいのです。サラリーマンに養われていた専業主婦がパートの仕事を始めると、家計の収入は増えて家計は豊かになりますが、労働者一人当たりの平均賃金は下がります。そうしたことが多くの家庭で起きているため、日本全体としても「労働者階級の稼ぎは増えているのに、一人当たり労働者の所得は増えていない」という統計になっているわけです。

 このように、人知れず日本の労働者階級の総所得は増加しているのですが、その割に消費支出は伸びていません。「社会保険料負担が増加しているから、給料が増加しても実質的には豊かになっていない」「老後が不安だから人々が貯蓄に励んでいる」という面もありますが、「アベノミクス前から社会保険料は徐々に上がっていた」「アベノミクス前から人々は貯蓄に励んでいた」ことを考えると、「アベノミクスによって所得が増えたのに消費が増えない理由」の説明には使いにくいです。

 やはり、不況のトラウマで、「どうせ遠からず失業するのだから、せっかく受け取った給料は貯蓄しておこう」と考えているのかもしれませんね。これについては、少子高齢化による労働力不足が今後中長期的に深刻化していくことを考えれば、おそらく心配無用なのでしょうが、そこまで考えずに不安に思っている人が多いのでしょう。

■そもそも、なぜ景気は回復したのか?……初期の公共投資以外は?

 七不思議の最後は、そもそもなぜ景気は回復したのか、ということです。アベノミクスで景気が回復したことは疑いありません。今の景気が素晴らしいという訳ではありませんが、兎にも角にも消費税率を5%から8%に引き上げたのに景気が腰折しなかったわけですから、その程度には景気は強くなっていたわけです。では、なぜ景気は回復したのでしょうか?

 円安で輸出数量が増えたからでしょうか? 違います。輸出数量はほとんど増えておらず、輸入数量もほとんど減っていません。では、輸出企業が円安によって潤ったからでしょうか? 違います。日本は輸出と輸入がほぼ同額なので、輸出企業が外国から持ち帰ったドルが高く売れたのと、輸入企業が輸入代金を支払うためにドルを高く買わされたのと、同じくらいの金額なのです。

 株高で個人消費が増えたからでしょうか? 違います。当初こそ、富裕層の高額品消費が話題になりましたが、最近では聞かれません。労働者の所得が増えたのに、消費が増えていないのは上記の通りです。インバウンドによる「爆買い」も一時的な現象に終わってしまいました。

 企業が儲かったから設備投資をしているのでしょうか? 違います。企業は、史上最高レベルの高収益を稼いでいながら、設備投資には慎重で、銀行からの借金を返すことに熱心です。省力化投資は少しずつ増えていると思われますが。

 そう考えると、景気を回復させた原動力が何であったのか、不思議です。公共投資は、当初は効果があったはずですから、これで景気の方向が変わり、そのまま「慣性の法則」で景気が回復を続けた、ということのようですが、いずれにしても不思議ですね。

■今後も緩やかな景気拡大が続くと期待

 安倍政権は当分続きそうですし、日銀の金融政策も大幅な変更は無いでしょう。その前提で、今後の日本の景気を占ってみましょう。

 過去が説明出来ないのに将来を予想するのは無謀かも知れませんが、おそらく緩やかな景気の拡大は続くでしょう。最大の理由は、「景気は自分では方向を変えない」「景気を悪化させる特段の要因(消費税率引上げ、海外景気悪化等)が見当たらない」ということだと思います。

 労働力不足が深刻化すれば、企業の省力化投資は着実に増えて行くでしょう。労働者の所得が増え続ければ、いつかは消費も増えるでしょう。景気回復が続けば、いつかは「不況のトラウマ」も弱まっていくでしょう。

 加えて、円安水準が持続すれば、いつかは企業の円高トラウマも弱まると期待されます。円安効果によってワインやウイスキーより日本酒や焼酎を飲む日本人が増えることも期待しています。

 もちろん、トランプ大統領が大規模な国際紛争を生じさせたりしない、ということが大前提ですが(笑)。
 

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コメント
 
1. 2017年3月16日 12:45:25 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[3784]

>ゼロ金利なのに金融緩和に効果があった……偽薬効果

これは黒田が常々言っているように、期待(人々の思い込み)に働きかける政策だから

まさに、それが当たったということだ

しかし政府が緊縮に転じ、海外景気が低迷し、海外資源価格も下落すれば、

当然、QEの効果は減殺されることになる


>そもそも、なぜ景気は回復したのか?……初期の公共投資以外は?

基本はQEによる期待刺激と円安効果、そして海外景気の回復だろう

国内要因だけで説明できるわけではないということだ

>アベノミクスの七不思議

結果から考えれてみれば、どれも特に不思議ではない

ただ問題は、こうした現象を定量的に説明し、予測に使える理論が不足しているということだろうな



2. 2017年3月16日 19:13:06 : hUkJW5PNLO : vS5oQ06@H3c[369]
見せかけの 「好況」が呼ぶ 七不思議

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