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ガバナンス効かぬクールジャパン機構がもたらす惨状(WEDGE)
http://www.asyura2.com/17/hasan121/msg/819.html
投稿者 赤かぶ 日時 2017 年 5 月 29 日 13:40:15: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

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ガバナンス効かぬクールジャパン機構がもたらす惨状
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9705
2017年5月29日 櫻井俊 (Wedge編集部) WEDGE Infinity


 「海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構、以下、CJ機構)の出資先は意味が分からない。ガバナンスもまったく効いてない」
 CJ機構は2013年におおむね20年間を期限として設置された官民ファンドだ。日本の生活文化の特色を生かした商品やサービスの海外需要を開拓するとともに、海外における日本の魅力を高めることを目的としている。民間投資の呼び水となるリスクマネーを供給することが役割で、これまで計22件の出資を行っている。

 Wedgeでは2016年12月号の特集「クールジャパンの不都合な真実」の中で、CJ機構の出資先についての疑問を呈したが、多くの関係者から冒頭のような声が寄せられた。

■収から1年での減損

 彼らがまず教えてくれたのが、2016年4月、映像制作大手のイマジカ・ロボットホールディングス(以下、イマジカ)が発表した米国子会社ののれんの減損だ。CJ機構とイマジカが日本の顧客に対する、字幕・吹き替えサービスの提供などを目的として、映画やアニメの字幕制作の世界最大手である米SDIメディアの買収を発表したのは2015年2月。住友商事と共同で買収し、買収額は約190億円に及んだ。買収のための特別目的会社への出資比率は、イマジカが50・1%、CJ機構が49・6%、残りは住友商事が出した。ほぼイマジカとCJ機構、2社での買収だった。

 減損額は当初計上したのれんの一部にあたる43億円、イマジカの2017年3月期の経常利益の2倍以上に及んだ。買収から1年でのれんの減損に至ったことについてイマジカは「市場環境の大きな変化や為替相場の変動等による急な業績悪化が要因」(広報)とする。

 しかし、「リーマンショックが起こったわけでもないのに1年でここまで大きい減損が起こることは通常ありえない。デューデリジェンス(買収先の事前審査査定)が甘かったのだろう」(投資業界関係者)と厳しい声も聞こえる。


(出所)クールジャパン機構、イマジカ・ロボットホールディングスのリリース資料をもとにウェッジ作成
(注)イマジカ・ロボットホールディングスのリリースについては一部省略

 一方、CJ機構はイマジカの減損発表と同日、ホームページに「株式会社イマジカ・ロボットホールディングスからのお知らせ」を掲載した(詳細は図参照)。CJ機構にとって、SDI買収への出資額は、これまでの出資案件のなかで2番目に大きい。また、共同出資者であるイマジカは連結業績予想の修正を受け、役員報酬を減額した。にもかかわらず、「お知らせ」にはCJ機構自身はのれんを減損したのかの記載は一切なかった。

 これについて独立系の民間ファンド、ニューホライズンキャピタル(東京都港区)の安東泰志会長兼社長は「共同出資者が減損を発表している場合、減損するにしてもしないにしても、その判断の理由を投資家に説明するのが当たり前。官民ファンドであれば、それを国民が調べれば分かるような状態にしておく必要がある」と当初の開示姿勢についての不備を指摘する。

 CJ機構に減損の有無を質問すると、「2016年3月期決算については、会計方針に基づき、減損処理を行う必要はないと判断した。本決算については、会計監査人から適正であるとの意見を受けている。よって役員報酬等に影響を及ぼす理由はない」と回答がきた。東証一部上場企業の共同出資者が減損し、役員報酬の減額も行なっているのならば、公的資金が入るCJ機構はもっと「慎重に検討し」なくていいのだろうか。

■初めてのエグジットの結果

 CJ機構が手掛ける案件で、2017年3月、初めてエグジット(出口)を迎えたのが、バンダイナムコホールディングス(以下、バンダイナムコ)へのアニメコンソーシアムジャパン(以下、ACJ)株式の売却だ。バンダイナムコはCJ機構など共同出資者14社から計21億円で全株式を取得したと発表したが、関係者によるとこのエグジットもうまくいかなかったようだ。

 CJ機構は、2014年12月、「海外における日本アニメファンの更なる拡大を目指すとともに、正規版アニメの配信や関連グッズの流通を通じ、日本アニメ産業の海外市場拡大と発展を支援」することを目的として、正規版日本アニメの海外への動画配信サイトなどを運営していたACJへ出資した。

 しかし、「海外大手企業の相次ぐ配信事業への参入・展開強化により、全世界的に動画配信権の獲得競争が激化するなど、外部環境の急激な変化に直面」(買収したバンダイナムコの広報)。配信事業は設立時の計画を下回るなど苦境が続き、2016年3月期の営業利益は約10億円の赤字となっていた。

 もともとCJ機構は本件に10億円を出資、全株式数の20・6%を所有していたため、今回のバンダイナムコの株式取得にかかった21億円を単純に所有株式数で分ければ、本件のエグジットは約3億2000万円の損失となる。これについてCJ機構に正確な金額を質問したが「株式取得を行うバンダイナムコにおいて開示していない方針と聞いており、弊社もそのルールに従う」と答えは得られなかった。

 「もともと投資の見立てが甘く、バンダイナムコが引き取った形」とアニメ業界の関係者は語る。「CJ機構が出資を発表したころにはネットフリックスやアマゾンプライム・ビデオなど、海外企業の営業担当がアニメクリエイターを回り日本アニメに制作段階から出資していることは分かっていた。海外ウケする新作アニメは資金力のある彼らにどんどん持っていかれ、配信事業が行き詰るのは目に見えていた」。

 なぜこうも疑問点の多い出資が行われているのか。それは「民業補完の原則が忘れられ、ガバナンスが欠けていることに起因する」(明治大学公共政策大学院の田中秀明教授)という。

■なぜか官庁に再就職する元役員

 CJ機構設立前の2013年6月11日、参議院経済産業委員会で「CJ機構の常勤役職員に経産省で10年以上勤めた人が入ることはあるのか」という質問がなされた。それに対して茂木敏充経産相(当時)は、「基本的にはない。民間人を中心にやっていく。たまたま、かつて経産省に勤めていた人間をどうしても採りたいことを禁止するものではないが、基本的な運営は、目利きの機能を見ても財務管理の機能を見ても、経産省の職員に求められるスペックとは違うもの」と答弁した。

 CJ機構では専務執行役員のポストを、設立以来、財務省、経産省からの退職者≠ェ占めており、投資先管理にかかわる会議に参加している。これについてCJ機構は「専務執行役員は国家公務員を辞職して就任している」とする。しかし、これまで専務執行役員を務めた3人は、財務省出身の2人は財務省に、経産省出身の1人は復興庁に、現在、在籍している。


(出所)経済産業省商務情報政策局「クールジャパン機構について」(2017年4月)を基にウェッジ作成

 そもそも、CJ機構への出資額は国が586億円、民間企業が107億円(2017年4月現在)であり、財政投融資にて調達された公的資金が8割強を占めている。CJ機構をたたむ時にその収支が赤字であれば、それは国の債務に上乗せされ、ひいては国民負担で賄われることになる。

 CJ機構は出資案件のKPI(主要成果指標)として、個別案件で5〜7年で概ね1・5倍、すなわちIRR(内部収益率)に換算すると約6〜8%、機構全体では長期で1倍超の収益を得ることを掲げている。まずは設置期限の20年が過ぎたときに損をしていないか、が評価基準であり、個々の出資案件において、その都度、投資収益を問われることはない。

■CIOの投資実績も非公開

 安東会長は「民間のPE(プライベート・エクイティ)ファンドではIRRが15〜25%が普通の目線だ。まして投資は概して事前の目標収益率より下振れするもので、それを長期で『損を出さなければいい』などという観点で投資しているとしたら、収益の黒字化は見込めない。公的資金が投入されているファンドであればなおさら、実績がある投資のプロが運営すべきだ」と指摘する。

 まして投資の判断基準に「海外の需要を開拓する」などの政策的意義が入るCJ機構の投資判断は、投資収益を追求する民間の投資ファンドより難しい。しかし、CJ機構の太田伸之社長はファッションブランド・イッセイミヤケの社長や百貨店・松屋の常務執行役員を経た人物で金融商品を扱った経験はない。そこで、最高投資責任者(CIO)こそ「投資のプロ」であることが重要となる。

 「通常の投資ファンドであれば、主投資担当者は『キーマン』として組合契約書に明記され、投資家はその人物の投資理念やトラックレコード(過去の投資実績)に照らして投資の可否を判断する。官民ファンドの場合、国民が投資責任者の人選の妥当性について、当該トラックレコードをみて判断できることが望ましい」(安東会長)。そこでCJ機構のCIOを務める小倉治氏の投資実績について照会したところ、「公表すべき理由はない」とされ分からなかった。

 加えて、「本来、投資ファンドでは出資してくれる投資家の利益の最大化を目指すことでガバナンスが効くが、国が主な投資家のためにそれがない」(安東会長)と語る。民間のPEファンドではファンド運営者自体も身銭を切っていることが多く、投資案件の収支は投資担当者自身の業績や生活にも直結するが、官民ファンドにはそれがないのだろう。

 また、CJ機構の投資先の決定機関であり、「最後の砦」というべき海外需要開拓委員会も問題を抱えている。同委員会の委員であるCJ機構取締役の川村雄介氏は、官民ファンドを含め、政策金融のあり方について検討する「財政制度等審議会財政投融資分科会」の委員であり、また「官民ファンドの活用推進に関する関係閣僚会議幹事会」の有識者委員でもある。

■評価される側の人がする側に

 前出の田中教授は「官民ファンド活用の幹事会や財投の審議会は官民ファンドを評価・監督する立場にあるので、これらに官民ファンドの役員が加わるのは利益相反だ」と指摘する。しかし、CJ機構は「CJ機構の指導監督は経産省が、株主としての政府の権利行使は財務省がしているが、財務省の審議会等に委員として参画することはこれらの業務にかかわる政府の意思決定に直接影響を及ぼすものではなく、『利益相反』には当たらない」と意に介さない。

 現状のCJ機構のガバナンスでは、民業補完に徹しながら、投資収益を得るという難易度の高い投資はなかなかうまくいかないだろう。このままでは、国民の知らない所で、国の債務が積みあがり続けることになりかねない。

イラストレーション・師岡とおる



 

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