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「定年後無職」急増で、この国の消費は驚くほど停滞する なんと現状でも4割が「無職世帯」(現代ビジネス)
http://www.asyura2.com/17/hasan122/msg/531.html
投稿者 赤かぶ 日時 2017 年 7 月 12 日 11:36:15: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 


「定年後無職」急増で、この国の消費は驚くほど停滞する なんと現状でも4割が「無職世帯」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52227
2017.07.12 熊野 英生第一生命経済研究所首席エコノミスト 現代ビジネス



年金問題が日本の未来に暗い影を落としている。高齢者の生活が年々厳しくなる運命は、もう2004年の年金改革のときから決まっていた。ただ、大多数の国民は、制度の複雑さゆえに、そのプランがかなり進んでくるまでに本当の厳しさを実感できずに来た。今、改めて2004年に決定された年金改革は、ひどく厳しいものだと思える。ここでは、なぜ、消費が増えないのかを考えながら、その犯人である年金改革の実態を明らかにしていく。



■シニアが増えれば消費は小さくなる

最近、政府の景気判断、つまり月例経済報告は、個人消費が上向いたと認識を改めている。たしかに2017年に入って、消費の指標は改善が続いている。ただこれは、16年11月ごろからの株価持直しによる資産効果が理由かもしれない。

また16年冬は天候不順による生鮮食品の値上がりが消費の重石となったが、17年に入ってその要因が徐々に解消されたことが、消費を一時的に増加させたようにみえるのかもしれない。

ただ筆者は、あまり目先の指標ばかりを追うよりも、消費が伸びにくい構造の方を正しく理解した方がよいと考える。その構造とは、一口で言って世帯の高齢化である。

消費の単位を世帯(家族)だと考えて、世帯主の年齢構成をみてみる。単身を含めた総世帯では、2016年で60歳以上の世帯が53.6%を占める(図1)。世帯主の半分以上がシニアなのである。



これを世帯主65歳以上でみると44.8%になる。この割合はほぼ一貫して上昇しており、今後も低下することは考えにくい。つまり、日本の消費者は全体として毎年、歳をとり続けていくのだ。

金額でシニア消費を測ると、2016年は60歳以上の世帯主がいる世帯消費の合計が117.6兆円。5年間で9.3%増。実額ではちょうどプラス10兆円の増加となる。これを65歳以上でみると、95.0兆円である。5年間で23.1%も伸びた計算になる(いずれも第一生命経済研究所試算)。

このデータをみて、「シニア消費を狙え!」と言いたくなる人もいるだろうが、そこは冷静な分析力があった方がよい。シニア消費はボリュームこそ巨大で成長力を持っていそうだが、個々のシニアの消費は小粒なのである。個人消費全体は、小粒の単位の増加によって変化しているに過ぎない。

たとえば、シニア消費がこれほど膨張しているのに、個人消費全体では5年前に比べて低調なのはなぜか。それは58歳だった人が63歳になって、サラリーマンから年金生活者になった、というような人が大勢いるからだ。現実に60歳以上の消費総額は増えて、逆に60歳未満の消費総額はもっと減っている。

データに基づくと、世帯主50歳代の1世帯消費支出は26万7072円/月である。これが60歳以上になると、22万1080円/月に減る。60歳以上になると2割弱ほど消費支出が減るということである。

特に、無職世帯(世帯主の勤労収入がない世帯)は、1世帯平均の消費支出が20万1713円/月とさらに低い金額になっている。そうした無職世帯は、総世帯のうち38.2%(2016年)にも増えている。彼らは、賃上げの恩恵にも浴することなく、なかば固定的収入の中でやりくりしなくてはいけない。

日本の消費者は、年々シニア層が増えることで1世帯の消費単位が小粒化しているのが実情である。

■資産より不安の方が大きい

こう言うと、シニアは多額の金融資産を持っていて、実はリッチなのではないかという反論も出るだろう。消費が歳をとって減るのは加齢によって小じんまりと生活するからで、そのこと自体を問題視する必要はない、と言う理屈だ。

しかし、筆者は「シニアは資産リッチで問題なし」という議論を疑ってかかっている。無職世帯の家計収支は、公的年金を中心に月平均の収入(税引後)が約15万円で、支出が約20万円。差し引き約5万円の赤字というのが平均像である。年間64万円ほど貯蓄が取り崩される。

こうなると、将来不安は否応なく大きくなる。先々の医療・介護の備えを考えると、貯蓄不足のプレッシャーは「今の貯蓄で十分」と思って消費生活を楽しむ余裕を与えない。

たしかに、加齢が進むほどに案ずるよりも産むが易しとなって、不安は後退していくようではあるが、少なくとも60歳代でリタイアした直後では、まだ不安が尽きない。

筆者は、「資産リッチで安泰」という図式が誤っている根拠が世代間ギャップにあるとみている。おそらく、1990年代の早い時期に老後を迎えた人と、2020年以降に老後を迎える人の間には大きな乖離があるだろう。今後シニアになる人は昔のシニアほど資産リッチではなくなる。この現象を引き起こす原因の正体、それがまさしく「年金ギャップ」なのである。

■削減という年金支給額の宿命

総務省「家計調査」の総世帯(単身を含む)で、無職世帯と区分された世帯の平均収入をみると、年金生活者の税引後収入は月平均15万円である。この数字は、厚生年金、国民年金といった異なる年金制度を人数ごとに平均したものである。

この数字が将来増えていくならば、まだ収入増への期待をつなげるだろうが、実際はそうではない。むしろ、現役の勤労者の半分になるまで年金支給の水準が切り下げられるのである。

現役世代の平均手取り収入を得る夫と専業主婦の世帯をモデル世帯として仮定し、その50.2%に支給開始時の年金給付額を調整していく。この調整によって、2004年比で2020年の年金給付額は実質15%削減されるとされている。この調整が加わることが、過去と未来の年金ギャップを生むのである。

2004年の年金改革は、「改革」と言っても、年金受給者の待遇を良くするという意味での改良が行われた訳ではない。反対に、これまでの待遇を維持していたならば、年金を掛けている現役世代の積立金によって増え続ける受給者への支払いを賄えなくなるから、現役世代の負担を増やし年金支給額を切り下げようとしている。

改革推進側のロジックは、年金制度が維持可能なように収支バランスを長期間かけて均衡させるから、「100年安心」が得られるということである。

大雑把に言えば、(1)2017年まで厚生年金の積立て保険料率を引き上げる(=負担増)、(2)支給開始時を段階的に60歳から65歳へと引き上げる(=支給減)、(3)物価上昇に対して年金支給額を連動させずに実質的に支給を減らす(=支給減)、の3つが収支改善のツールになる。

年金制度は複雑で、門外漢を寄せ付けないところがあるが、要するに、増えていく無職世帯は、その生活の糧である公的年金が、2004年に敷かれた年金改革のレールの上で削減される運命にあると言える。特に、今後、年金生活に入る人々にとっては、長い長いトンネルへと潜り込むかたちになるので、将来不安はどうしても大きくなる。

■絵に描いた餅、年金財政は改善しなかった

それでは年金改革という既定路線がずっと順調に年金収支を改善してきたかというとそうではない。反対に、厚生年金などの収支バランスは、5年ごとのシミュレーション(財政検証)を大きく下振れする状況が続き、とても「100年安心」が履行された訳ではない。

その原因のうち、最も大きなものはデフレである。物価が下がり、さらにより大きく現役世代の賃金も切り下がった。そうなると、物価上昇の想定に基づいて、平均寿命や人数の変化に応じて物価連動幅を下押しさせ、年金収支の改善を狙った「マクロ経済スライド」が効かなくなる。

簡単に説明すると、公的年金は、本来、実質支給水準を維持するために、たとえば2%の物価上昇に対して、2%の支給額物価スライドを実施していた。ところが、マクロ経済スライドは、2004〜25年にかけて、一定以上の物価上昇のときだけ、毎年平均0.9%の削減率を課する。

つまり物価上昇が2%だった次の年は、公的年金の増加率は1.1%に割引かれた物価スライドでしか支給額が増えない。前述(3)の実質支給減に対応する仕組みである。

近年の物価上昇が十分に大きかったのは消費税率が上昇した2014年だけだったため、マクロ経済スライドは初めて翌2015年度になって実行された。つまり、2004〜14年までは、マクロ経済スライドは絵に描いた餅だったのである。

■2013〜16年に不安は植え付けられた

マクロ経済スライドが有効でなかった背景については、少し丁寧に説明していく必要がある。

まず、年金生活者は、年金を実額として減らされることに強い抵抗を感じる。こうした心理もあって、特例として1999〜2001年の物価下落分を年金支給額にスライドさせずにきた。この特例による差額を解消するために2013〜15年にかけて年金支給額が2.5%のカットされた(図2)。



実にタイミングが悪いことに、この修正の最中の2014年に消費税率が上がって、15年度からマクロ経済スライドが実施された。実額での年金カットに続いて、実質的な年金支給の抑制が追い討ちをかけた格好である。

現状、消費者物価が1%以上に上がる要因は、消費税の増税くらいしかなく、その時には年金生活者には0.9%ポイントのマクロ経済スライドの押し下げに見舞われる。

もしも、消費税が増税されなければ、マクロ経済スライドも先送りされる。高齢者が消費税の増税反対に回っていく気持ちも筆者にはわからないではない。

もうひとつ加えると、厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢が、60歳から61歳に遅れさせたのが2013年度から、61歳から62歳へと遅らされたのが16年度となっていた。これも、年金カットと同じことになるので、シニアに移行した人たちは、生活への不安を2013〜16年にかけて特に強めたことであろう。

有識者の中には、これは2004年のときにすでに決まっていたルールだから意外感はないはずだ、という発言がある。筆者はそうではなく、年金カットのタイミングが重なることが事前に分かっていたにも関わらず、意図的に避けなかったことが余計にダメージを大きくしたと考える。

そして、本来は、将来の社会保障システムの維持に必要な消費税の増税を、高齢者が嫌うようなインセンティブ設計にしてしまった。2004年の「100年安心」が成り立って、消費税の増税が反対されるのはおかしな理屈である。


 

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コメント
 
1. 2017年7月12日 13:12:39 : Aq7FRm7SXc : 6l4hCxMsuTk[48]
消費が低迷すれば、当然物価が安くなる。低収入の人には悪くないはずだ。物価が上がって低収入であるよりはるかに良い。デフレは低収入の高齢者には救いの神だ。消費が増えても現実は最貧階級にメリットはないのだから、デフレは福祉政策だと割り切って政策を転換する時が来ている。

2. 2017年7月12日 13:32:54 : uLBKlBIzrI : wQ8zeLzXoM0[17]
定年と言っても大多数はスキルはあるし体力もある。
しかし働いた分だけ年金を減らされるんだから、働いても働かなくても収入は同じ。
なら働かねえわな。
収入がたっぷりあるから年金なんてはした金は要らねえや、と言いうほどの給料を貰えるなら働くんだが、歳だからそんなに美味い話は無いやね。
しょうがねえから無職で生活を切り詰めてると、金を使わないのは非国民だってかい。

どうしろって言うんだよ。


3. 2017年7月12日 18:23:22 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[4003]

>「定年後無職」急増で、この国の消費は驚くほど停滞

ま少子高齢化が進み、3世帯同居が消滅しているし

長生きリスクの不安から消費を減らすのは当然のこと

それで財政悪化や労働力不足によるインフレが悪化せずに済むのだから特に問題はない

>将来の社会保障システムの維持に必要な消費税の増税を、高齢者が嫌うようなインセンティブ設計にしてしまった。2004年の「100年安心」が成り立って、消費税の増税が反対されるのはおかしな理屈

いや、少子高齢化と、社会の既得権化で生産性が低迷し、実質賃金が伸びず

社会保障給付も増やせないのだから、完全に必然の結果だ


4. 2017年7月12日 19:21:41 : LHSMhfLcno : cTj_KsH6DrU[142]
 高齢者が若年層と同じように消費すると考えるほうが、どうかしてる。高齢者には、蓄えがある。それは「お金」だけではなく「知識」や「道具」といった蓄えだ。本も乱読の時期をすぎ、鍋や釜も改めて買う必要もない。知識や道具を一から揃えてゆく若年層とは違う。旺盛な消費を恥じない老人は、足るを知らない愚か者だ。

5. 2017年7月12日 20:14:50 : efJU7pqOM2 : T16GZaP0IBU[2]
悪政が 更に不安を 加速させ

6. 2017年7月12日 20:27:30 : QtT1rCxSO6 : EHony@UrzYo[2]
>>4
高齢者が若年層と同じように消費するなんてだれも思ってない
ようは、国民から金を巻き上げたいけど、持っているのが高齢者だから
高齢者は消費しろと煽ってるだけ
持ってない若年層を煽っても無駄だからね
だって持ってないし

7. 2017年7月12日 21:10:07 : rkJU4oOov6 : NsyCTgkVO_g[256]
そりゃ若い者から搾り取るんだよ。
ヒーヒー言いながら年金掛け金払う、って言うよりも
健康保険ぼったくり過ぎるだろ、その掛け金の半分を年金に回せば
それで済む。
年金基金株に突っ込んで大損こいてるのだ〜れ。

8. 2017年7月13日 12:08:13 : 6sMU2Nrahg : BZOfnGwlJgU[110]
経済学者はすーぐ北欧を引き合いに出して
「増税すれば国民生活は楽になる」って言うんだけど

ここは北欧じゃないので

総量規制導入しなきゃならんほど借金まみれでどうにか生活保ってる庶民に
貯蓄か増税か選べと言われても、現実味のない話だと思うんだがなあ

だいたい「増税で生活が楽になる」なんてのも
「トリクルダウンで庶民大儲け」みたいな話だし

税収増えたら無駄遣い増やすのが政治屋
地方なんか財政破綻すると大騒ぎしながら
いまだに余剰予算を無駄遣いで消化してるからね

そもそもの話、富裕層に減税して貧困層に増税して
国民生活を立て直せるわけないだろって
富の再分配が必要だっつってんのに、逆やってどうするよ

だからと言って
かつての英国みたいに富裕層に大増税しちゃうのは
いろいろ問題あるから現実的には困難だよなと
何より富裕層(力を持っている層)が政治に対してシビアになるのが
政治屋的には問題なんだよな
それ以外の問題はだいたい「与党の勝手でしょ〜」で通るし


9. 2017年7月13日 15:10:34 : XQcAtaPHCc : iX2B4hfho@Y[6]

年をとればわかることだが、
年々、年金が減らされ、
病気に反比例して健康保険負担が増加し、
介護費用もあらゆる項目にわたって年々負担が増加している。
資産リッチというけれど家屋の修繕リフォームには費用が大きくそこまで手がまわらない。
節約しかないだろう。


10. 2017年7月13日 20:48:40 : hZkMAewDKg : iJ98jhy96GQ[119]
>「定年後無職」急増で、この国の消費は驚くほど停滞

アホかい。安倍晋三を筆頭とした売国奴の暗躍で、この国の消費が驚くほど停滞してるんだよ。
大企業には税金も課さず、払い戻し税をプレゼント。
逆に8割の弱りきった国民からは、カネを毟り取る算段ばかりやっている。そしてそのカネをお友達には大盤振る舞い。

これで景気が良くなるのなら、国民はバカばっかりで国自体が滅んでしまうわ。

不正選挙などせずに、小沢一郎みたいな国民目線の政治家が首相に選出されない限り、この国の平民は搾取され続けて消耗し、消費の増加など夢のまた夢だろう。
 


11. 2017年7月15日 09:40:26 : LY52bYZiZQ : i3tnm@WgHAM[-5122]
Subjects | 2017年 07月 14日 19:28 JST
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コラム:鈍い賃金上昇、背景に高齢者の低賃金労働の可能性も 

https://s1.reutersmedia.net/resources/r/?m=02&d=20170714&t=2&i=1192979185&w=644&fh=&fw=&ll=&pl=&sq=&r=LYNXMPED6D0N0
 7月14日、国内景気は堅調推移なのに、物価上昇率は政府・日銀の見通しを下回っている。都内で1月撮影(2017年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

田巻 一彦

[東京 14日 ロイター] - 国内景気は堅調推移なのに、物価上昇率は政府・日銀の見通しを下回っている。そこにはさまざまな要因が絡み合っているが、中でも重要なのが賃金上昇の鈍さだ。失業率が低下すれば、賃金は上がるはずと政策当局は予想してきたが、想定外のことが起きている可能性がある。それは労働市場に参入する高齢者を低賃金で働かせている現象だ。「同一労働・同一賃金」の徹底が、賃金と物価の上昇につながると考える。

<堅調な景気、鈍い物価上昇>

足元の日本経済は、0.5%程度の潜在成長率からみれば「健闘」していると言えるのではないか。2017年1─3月期の国内総生産(GDP)は前期比・年率プラス1.0%。

だが、物価は日銀の目標の2%からかなり下方で推移し、直近の5月全国消費者物価指数(除く生鮮、コアCPI)は前年比プラス0.4%だ。

実体経済の堅調さと物価の鈍い伸びには、どのような関連性があるのか──。19、20日に開かれる日銀の金融政策決定会合でも、この「謎」を巡って活発な議論が展開されるとみられている。

製造業を中心に労働コストが、世界的な競争にさらされ、先進国では軒並み賃上げ率が鈍化していることや、人手不足を補う自動化投資に資金を投下し、賃上げや製品価格上昇が鈍くなっていることなどが、エコノミストなど識者が指摘している大きな要因だ。

ただ、政府・日銀は失業率が低下してくれば、いずれ賃金は上がってくるとみていた。4月の完全失業率は2.8%まで低下し、5月の有効求人倍率は1974年2月以来、43年3カ月ぶりの高水準である1.49倍に上昇した。

<深刻化する人手不足、不釣り合いな賃上げ率>

しかし、人手不足が深刻化している割には、賃金の上昇力に加速感が出てこない。連合によると、2017年春闘の賃上げ率は、前年の2.00%から微減の1.98%。4年連続で2%前後の水準を維持したが、完全失業率に接近していると言われるようなタイトな雇用環境の下にもかかわらず、賃金が跳ね上がるという現象は起きていない。

政府・日銀は、企業収益の増加─賃上げ─消費拡大─整備投資増加という拡大サイクルを思い描いてきたが、現実には賃上げのところで、動きがトーンダウンしている。

過去最高益を出している企業は、先行き不安を理由に、賃上げ率の引き上げに消極的で、結果として利益剰余金を過去最高の390兆円まで積み上げ、「溜まり水」のようになって財政・金融政策の効果が十全に出ていない構造を作り出している。

<国際的に目立つ60歳超の賃金カット率>

私はここで、直近の賃金コスト圧縮には、60歳以上の社員の賃金カットや、非正規社員の雇用に低賃金を受け入れる高齢者を積極的に採用するという企業の「雇用政策」があるのではないか、という「仮説」を提起したい。

6月2日のコラム[nL3N1IZ276]でも指摘したように、日本は欧州各国と比べて、60歳以降の年収の減り方が顕著で、3割程度の賃金カットを実施している企業が多い。高齢者の賃金の3割カットは、すでに「常識化」されつつある。

また、ハローワークなどで提示されている65歳超を対象にした求人では、月額20万円やそれを下回る額の提示が圧倒的に多く、「高齢者を安く雇う」と風潮は、急速に広がっているようにみえる。

<正確な姿が見えない高齢者の労働市場参入>

こうした労働コストの圧縮策は、個々の企業にとっては、収益確保の強力なツールになるが、個人の購買力を抑制する効果を持つ。

今のところ、詳細なデータがないので確認できないが、ハローワークに行って働くを意思を示している人々以外の高齢者が、労働市場に参入して安い賃金で雇用されれば、失業率が3%を割り込んでも、賃金が上昇しないという現象を生み出しうるとの推理も成り立つ。

政府は「同一労働・同一賃金」の重要性を指摘しているが、掛け声だけでなく、同じ仕事内容における賃金カットを阻止するような法令を新たに作るべきではないか。

産業界からは当然、反対の声がわき起こるだろうが、あるべき社会構造や中長期的な経済の持続性を考えると、年齢を理由にした賃金カットや低賃金労働を規制するべきだ。

また、政府は直近の労働市場で何が起きているのか調査するべきであるし、労働問題の専門家を中心に学識経験者が、足元で起きている現象について、詳細な研究を進めてほしい。

欧米の学会で提起されている学説を「翻訳」して紹介するだけでは、高齢化の最先端社会である日本における構造変化の実態を把握することはできない。

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http://jp.reuters.com/article/wage-boj-column-idJPKBN19Z0SD?sp=true


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