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アベノミクス復活の条件  制御不能のインフレ円安懸念 狂うCPI上昇の筋書、背景に高齢化 実質賃金減少 都合のいい働き方
http://www.asyura2.com/17/hasan122/msg/846.html
投稿者 酢 日時 2017 年 8 月 04 日 12:26:59: JVuupfBNpkXsE kHw
 

オピニオン:
アベノミクス復活の条件

ロバート・フェルドマンモルガン・スタンレーMUFG証券 シニアアドバイザー
[東京 3日] - 足元で広がるアベノミクスに対する不安を解消し、日本経済を持続成長軌道に復帰させるためには、安倍政権は新たに7つのシグナルを発信する必要があると、モルガン・スタンレーMUFG証券のシニアアドバイザー、ロバート・フェルドマン氏は述べる。

中でも重要なのは、経済成長の足かせとなっている硬直的な労働市場の改革であり、具体的には正社員解雇に関する透明性のある公正な金銭的解決ルールの整備と、ホワイトカラー労働者に対する労働時間規制の適用除外が柱になるべきだと説く。

同氏の見解は以下の通り。

<安倍政権は「危機」局面に突入>

政府による改革速度と経済成長率の関係について、私はこれまで「CRIC(クリック)」サイクルと名付けた独自のメカニズムを用いて分析してきた。CRICとは、Crisis(危機)、Response(反応)、Improvement(改善)、Complacency(怠慢)の頭文字を取ったもので、自民党・安倍政権の現状は「危機」局面にあると考える。

民主党政権時代の「危機」局面を引き継いだ安倍政権は、始動するや否や、改革重視の政策路線に向けてアクセルを踏むことで「反応」「改善」局面を突き進んだが、2016年前半辺りから旧来の自民党的な調整型政治の色彩が次第に濃くなり、「怠慢」局面入りした。

恐らくは、2014年春の消費増税後の景気落ち込みを乗り越え、株価や成長率が戻り始めたことで、油断ないしは慢心してしまったのだろう。そのツケは大きく、昨年7月の東京都知事選での自公推薦候補の敗北、今年7月の東京都議選での自民大敗などを経て、明らかに「危機」局面入りしてしまった。

大事なのは、ここからの「反応」局面だ。再び経済ファンダメンルズを改善させるような改革に乗り出す必要があるが、それができなければ、景気が回復したとしても持続はできないだろう。

<労働市場改革は仕切り直しを>

では、具体的に必要な改革とは何か。私は大きく分けて、1)労働市場改革の仕切り直し、2)規制改革と民営化の加速、3)審議会の少数精鋭化など合理的な政策決定システムの再構築、4)政策決定・運用プロセスの透明性向上策、5)より大胆な法人減税、6)予算支出の再配分、7)内閣改造後の経済優先姿勢、の7つのシグナルを新たに発する必要があると考える。

特に重要なのは労働市場改革だ。なぜかと言えば、労働市場の硬直性が日本経済の潜在成長力を損ねている大きな要因であり、少子高齢化が急速に進む中で、この問題が今後ますます経済の重い足かせとなっていくことが予想されるからである。

私がとりわけ問題視しているのは、労働市場の既得権益側であるインサイダー(大企業の正社員)と、その外側にいるアウトサイダー(中小企業の正社員、企業規模にかかわらず全ての非正規社員)の二重構造だ。この構造が温存されている限り、今回のように長期にわたる景気回復局面でも賃金上昇圧力は限定的なものになるだろう(文末の注釈参照)。

この点を改革し、柔軟かつ効率的な労働市場を作り上げるためには、主に2つのアクションが必要だ。第1に、正社員解雇に関する透明性のある公正な金銭的解決ルールを整備すること。第2に、ホワイトカラー労働者を、労働時間規制の適用から除外することだ(ホワイトカラー・エグゼンプション制度)。

これらの改革案に対する、「首切り自由法案」「残業代ゼロ法案」といった批判は、問題の本質を見誤っている。例えば前者については、正社員雇用を柔軟に調整できないことが、企業が正社員を増やすことに躊躇(ちゅうちょ)している理由であることを直視すべきだ。既得権益化した(特に大企業の)正社員雇用システムは、企業や経済の競争力を損ね、ゾンビ化を招いてしまっている。

むしろ、公正かつ透明性の高いルールの下、解雇の際に一定額の補償金を支払う法的義務を企業側に負わせ、そのうえで正社員労働市場の流動性を高めれば、労働市場全体では、正社員雇用は増え、非正規雇用は減り、賃金にも上昇圧力がかかりやすくなるはずだ。

一方、後者のホワイトカラー・エグゼンプションは、先述した二重構造問題とは直接関係ないが、労働市場の柔軟性を高めるだけでなく、大きな社会問題となっている長時間労働への合理的な解決策にもなり得る。

労働時間と成果が直接結びつかない仕事は増えている。ホワイトカラーを労働時間規制から解き放てば、逆に短い労働時間でたくさん稼ぐインセンティブが高まるはずだ。それが、技術革新を背景に経済のサービス化、ソフト化が進んだ時代に適した働き方でもあるし、ひいては日本企業の国際競争力にも資することになろう。

ちなみに、今秋の臨時国会に提出されると報じられている働き方改革関連法案のベースとなる働き方改革実行計画(働き方改革実現会議が3月決定)は、長期間労働の是正策(罰則付き時間外労働の上限規制導入)が最大の目玉であり、解雇の金銭解決ルールや全面的なホワイトカラー・エグゼンプション制度導入への言及が一切ない。その後、報道によれば、後者については、高年収の専門職に対象を限る形で、働き方改革関連法案と一本化される方向だというが、導入するならば年収制限は外すべきだ。

いずれにせよ労働時間規制の強化を進めるだけでは、企業側は正社員雇用に関する負担増だけを背負い込むことになり(新規制対応のソフトウェア整備だけでも膨大な金額に上る)、正社員雇用意欲は削がれる可能性がある。その結果、非正規雇用が増えれば、賃金には低下圧力がかかる。

また、働き方改革実現会議の案では、行政機関(労働局や労基署、厚労省)の人員増強が必要になるため公的部門が肥大化し、「小さな政府」を目指す改革路線からは逸脱していく可能性がある。もちろん、ホワイトカラー・エグゼンプション制度導入で、長時間労働が必要になるケースも考えられる。ただし、管理監督の強化は主に公的機関の陣容拡大によってではなく、各企業の内部通報システム整備など民間側の取り組みによって実現されるべきだろう。

そもそも行政裁量が拡大すれば、官僚と個別企業間の水面下の取引や政治家の介入なども招きかねない。公平性や効率性の面で、欠陥の多い改革案と言わざるを得ない。安倍首相には、働き方改革実現会議の案を全面的に見直すぐらいの覚悟で、労働市場改革を仕切り直してもらいたい。その際、既得権益側である連合や経団連の合意ありきではなく、刷新した小規模な会議で進めることが肝要だ。

<成長重視の予算再配分が急務>

もう1点、7つのシグナルの中で特に強調したいのは、社会保障関連(医療、年金、福祉、介護、失業)向け歳出から成長支援(研究開発、エネルギー、インフラ、教育など)向け歳出への予算支出の再配分だ。もちろん、安倍政権は歴代政権と比べて、その方向へ進めるそぶりをより強く示しているが、実際の行動が十分に伴っているとは言い難い。

例えば、国民経済計算をもとに一般政府部門(国、地方、社会保障基金の連結ベース)の歳出総額を見ると、後者の成長支援を含む営業歳出は2000年の83兆円から2015年には81兆円まで減少したが、社会保障歳出は79兆円から113兆円まで膨張している。

もちろん、高齢化の進展で後者が膨らむのは避け難いが、あまりにも不均衡が拡大し過ぎだ。せめて、社会保障歳出の伸び率を名目国内総生産(GDP)成長率の2分の1にとどめる努力をする一方で、営業歳出は名目GDP成長率と同程度まで伸びを許容するような発想が必要だろう。そうすれば、社会保障歳出額は増加してもGDPに占める割合は低下する。

一部には、金融政策の次は財政政策の出番であり、政府支出拡大によって2%インフレと成長を目指すべきだといった声も聞こえるが、無計画な財政拡大が持続成長をもたらすことはない。そもそも、2%インフレ達成後に財政政策を正常化させれば、緊縮財政になるだけだ。ただ一方で、「将来の財政危機を避けるために、今、大規模な歳出削減と大増税をしなければならない」と言ったところで、国民がついてこないのも不都合な真実だろう。

安倍政権に求められているのは、どだい無理な話をすることではなく、潜在成長率の向上を目指し、労働市場や成長分野に関わる規制改革を着実に進め、同時に上述したような成長重視の予算再配分のグランドデザインを示すことだ。それができなければ、次に世界的な経済危機が訪れたとき、日本は経済的・財政的持続性を維持できないと海外の投資家に判断されてしまう恐れがある。

注:GDP統計などを用いて総報酬の前年比伸び率を私なりに試算すると、2017年3月時点では約2%上昇しており、勤労統計などを見て「賃金はあまり上がっていない」とする意見には同意できない。だが、それでも適切な労働市場改革が実行されれば、日本の賃金はもっと上がる余地がある。

*ロバート・フェルドマン氏は、モルガン・スタンレーMUFG証券のシニアアドバイザー。国際通貨基金(IMF)、ソロモン・ブラザーズ・アジア証券などを経て、現職。米マサチューセッツ工科大学(MIT)経済学博士。

*本稿は、ロバート・フェルドマン氏へのインタビューをもとに、同氏の個人的見解に基づいて書かれています。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトのアベノミクス特集に掲載されたものです。


米国も「権威主義的国家」に向かうのか=河野龍太郎氏
1800年以前の人類の長い歴史の中で、長期的な1人当たりの所得増加率はほぼゼロ%だったと考えられている。もちろん、それ以前に経済が全く成長しなかったわけではない。しかし、それは1人当たり所得の増加によるものではなく、主に人口増加による所得の増加が原因だった。つまり、生産性とそれに連動する生活水準の継続的な向上が始まったのは19世紀からだ。 記事の全文

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金融政策と併せ「成長志向の財政措置」、17年度予算の基本方針案
http://jp.reuters.com/article/opinion-abenomics-feldman-idJPKBN1AI07B

 

2017年8月4日 森信茂樹 :中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員
内閣改造後のアベノミクスに制御不能のインフレ、円安の懸念


7月の経済財政諮問会議 Photo:首相官邸HP
 安倍第3次改造内閣が発足した。目新しさは特に見当たらないが、注目は、政権が、急降下した支持率を回復するために、今後どのような経済・財政政策をとってくるのかという点だ。

 全体的なストーリーとしては、「金融政策」が手詰まりにあることから、支持率回復を目指す「財政政策」に重心がシフトすると考えられる。財政赤字が先進国ではすでに最悪の状況、一方で景気回復が続き完全雇用の状態で、財政のアクセルをふかすとどういうことになるのか。

消費増税は3度目の先送りか
「教育無償化」で国債増発

 財政シフトでまず考えられるのは、具体的には、2019年10月に予定されている消費税率10%への引き上げの3回目の延期である。

 延期が問題なのは、単に経済政策上の理由からだけではない。

 10%引き上げの際には同時に軽減税率が導入されることになっているが、これについては、軽減品目とそうでない品目との仕分けや納税手続きが煩雑になることなどからスーパー業界、税理士会、青色申告会などが依然として反対している。

 筆者も納税義務者(事業者)・消費者・税務当局の全員にコストを負わせる軽減税率の導入は廃止すべきという立場である。消費増税引延ばしは、この問題の先送りにつながる。

 また、軽減税率導入のためには1兆円の恒久財源を探さなければならない(法律に明記されている)が、増税を嫌う安倍政権が1兆円規模の増税を行うとは考えられない。

 消費増税の先送りは、短期的には、マクロ経済へのマイナスを避ける効果があるかもしれないが、その効果は長続きしない。

 株式市場などは、増税先延ばしをほとんど織り込んでおり、それによる株価の上昇も期待できない。

 むしろ、前回の本コラム(7月26日)で書いたように、国家の歳入(税収)構造が変わりつつある中で、社会保障の財源を消費増税により確保していくという政策を中断することのマイナス効果、つまり必要な社会保障はきちんと手当てして国民の将来不安を解消する、というメッセージが発せられないことのデメリットの方が大きい。

 次に財政政策として、補正予算も含めた歳出増による需要喚起策が考えられる。
 公共事業の追加は、効果も限定的で、国民のイメージが悪いことからすると、追加措置の主体は、子育てや教育の分野になるのではないか。

教育で改憲の突破口狙う
景気拡大局面に真逆の財政出動

 すでに「教育国債」の発行による教育無償化に向けて、自民党で具体的な議論が行われてきている。教育国債に対する合意は得られていないものの、議論としては根強いものがある。

 この問題が厄介なのは、「維新と組んで憲法改正を発議する」という戦略と絡んでいることである。支持率急降下で、憲法改正に向けてのハードルは高くなったとはいえ、安倍政権の最大関心事がそこにあることには変わりないだろう。

 つまり、憲法9条の改正だけでは国民はついていかない。そこで出てくるのが教育の無償化という、国民の多くが賛成する(反対しない)改正項目である。維新を取り込むうえでも、それは必要だ。

 だが教育無償化は、財源さえ確保できれば、何も憲法を変える必要はない。

 このことは、法学者ならずとも常識的に考えればわかるはずだが、安倍政権は、これを一つの突破口にする可能性がある。

 しかし教育国債という赤字国債の安易な発行を認めれば、確実に財政規律は取り返しのつかないほど緩んでしまう。

 しかもこうした財源論の前に、なぜ教育が無償である必要があるのか、重点は幼児教育か高等教育なのか、奨学金の給付の仕方を変えるのではだめなのか、これで格差問題が本当に解消するのかなど、様々な論点で、国民的な議論を深めることが先ではないか。

 また、団塊の世代がすべて75歳以上になる2025年にむけて、ただでさえ膨張する社会保障費をいかに抑え、負担が有効に使われるようにすることが必要となる。

 数の多い高齢者の利害が優先されがちなシルバー民主主義からの脱却が求められる中、社会保障の効率化を行うことなく教育無償化、というのでは、財政規律は吹っ飛んでしまう。

 景気回復局面が長く続き失業率などがバブル期並みに低下している現在、追加財政政策というのは、真逆の政策といえよう。

財政拡張のツケは日銀が背負う
政府は「アコード」を守れ

 では金融政策はどうなるのか。

 これは安倍政権の政策というより日本銀行の政策だが、安倍政権(官邸)は、今回の人事で退任する緩和慎重派の2人の審議委員に替えてリフレ派の審議委員に送りこんだ。 政権の意向を、彼らが「忖度」する形で緩和策が維持されるだろうということが、おのずから見えてくる。しかしリフレ的な金融政策が行き詰まっていることは、もはや誰の目にも明らかだ。

 日銀は、拡張的な財政政策が行われても、財政規律が弛緩しても、その影響が国債市場に現れないように、イールドカーブコントロールなどで長期金利を抑え込もうとするだろう。しかし、このような財政・金融政策は、ますます将来のハイパーインフレーションへのマグマをため込むだけではないか。

 3度目の消費増税先送りが行われ、財政追加策が行われて、国債が増発されても、、日銀が国債購入を続けることで国債市場の価格形成が歪められ、本来、市場が発すべき「警戒警報」が鳴らない。

 完全雇用の下で、こうした拡張的な財政政策が続くと、いずれインフレが制御できなくなり、所得分配や資源分配がさらに歪められる。

 原点に返って考えるには、2013年1月、政府と日銀との間で結ばれた「アコード」をもう一度思い返すことではないか。

 この「約束」では、政府は、構造改革と財政再建(正確には、「財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進する。」)を、日銀は2%のインフレターゲットの実現を、という役割分担を明確に定めている。

 これに対して、日銀が14年10月末に追加金融緩和を行った翌11月、安倍政権は1回目の消費増税の先送りをするという、いわば“約束違反”をした。

 その後、国民の信任を得るとして衆議院を解散・総選挙を行い、自民党は大勝したが、そこから日銀は、安倍政権の拡張的財政政策のツケを、すべて背負い込むことになった。「異次元緩和」を進めるという名分のもとでの大量の国債購入やマイナス金利政策である。

 日銀のこうした政策が、市場や投資家から明らかな「財政ファイナンス」とみなされれば、一気に日銀の信頼性は失われ、国債は暴落(長期金利は上昇)し、さらには円に対する信任も失われるので、円安となる。

 公的債務への懸念が長期金利の上昇圧力と円安への圧力を生み出すので、日本は否が応でもハイパーインフレーションの道に進んでいく。

 円安でインフレが生じると、長期金利にはさらなる上昇圧力がかかり、これを日銀が無理やり国債購入などで抑え込もうとすると、実質金利の低下を通じさらなる円安となって、インフレのスパイラルが生じるのである。

 結論を言えば、本来、目指すべきは、低成長でも持続可能な社会保障と財政制度の再構築である。

 そのためには、歳入面では消費税を主体とした税構造に変えることと富裕高齢層への増税のパッケージ、歳出面では社会保障、とりわけ年金支給開始年齢の引き下げ、医療・介護の効率化を図りながら、勤労世代や教育に必要な分野への重点のシフトを進めることである。

(中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信茂樹)
http://diamond.jp/articles/-/137488


 

コラム:狂うCPI上昇の筋書き、背景に高齢化も

村嶋帰一シティグループ証券 チーフエコノミスト
[東京 3日] - このところ、個人消費に底堅さが出ている。国内総生産(GDP)ベースの実質個人消費は1―3月期に前期比0.3%増加、14日に発表される4―6月期もはっきりと増加した可能性が高い(コンセンサス予想は0.5%増)。

雇用・所得環境の改善やそれに伴う消費者センチメントの持ち直し、株高に伴う資産効果などが個人消費を押し上げているとみられる。

<個人消費は雇用者報酬ほど伸びない>

とはいえ、今年1―3月期の実質個人消費の水準を、2014年4月の消費増税前の2013暦年平均と比較すると、依然として0.4%下回っている。一方、今年1―3月期の実質雇用者報酬は2013暦年平均をすでに2.1%も上回っている。雇用者報酬の増加のわりに、個人消費が伸びないという傾向が読み取れる。

この背景としては、まず、税・社会保障負担の増加が重しとなり、可処分所得が雇用者報酬ほどには伸びなかったことが指摘できる。ただ、先行きを展望すると、家計を巡る大型の税・社会保障負担の増加はすでに一巡しており、この点からみれば、雇用者報酬と可処分所得の伸びのギャップは縮小する可能性がある。

雇用者報酬が伸びる中で、個人消費の足取りが緩慢だったもう1つの理由として、年金生活者の存在(あるいはその比重の高まり)が指摘できる。年金生活者は、直接的に雇用・所得環境の改善の恩恵を受けられない上に、政府による年金給付削減の打撃を受けてきた。

数字で確認すると、名目年金給付額は2013年度に(正確には10月から)1.0%、さらに2014年度にも0.7%削減された。これは、2000年度から2002年度にかけて、物価下落にもかかわらず、特例法でマイナスの物価スライドを行わずに年金額を据え置いたことに伴う「払い過ぎ」(特例水準)を解消したことによるものである。

一方、消費者物価指数(CPI、総合)は、2013年度に前年比0.9%、2014年度には2.9%上昇した。2013年度の上昇は、日銀による量的質的金融緩和の導入に前後した円安ドル高を主因としており、2014年度は、それに消費増税の影響が加わった。

以上の結果、年金生活者の実質購買力は2013年度に1.9%、2014年度には3.6%低下したことになる(年金額の変化率−インフレ率)。その後、2015年度は0.7%上昇したが、2016年度はほぼ横ばい、2017年度は小幅減にとどまっており、現時点の年金生活者の実質購買力は2012年度を約5%下回っていると試算される。この点が、上で述べた雇用者報酬と個人消費のギャップを生み出す一因になった可能性が高い。

われわれエコノミストは、家計部門を代表するのは雇用者であり、彼らを巡る雇用・所得環境が個人消費の動きを規定すると考えがちである。ただ、年金生活者数の雇用者数に対する比率はすでに70%に達しており、少子・高齢化が続く中、「雇用者=家計部門の代表」という理解はすでに正確性を欠いているとみられる(1990年代後半はこの比率が約50%だった)。個人消費の動向を理解・予測する上では、雇用者に加えて、年金生活者の状況を正確に把握する必要性が高まっている。

<年金生活者の実質購買力は今後も低下へ>

年金生活者が個人消費の重しになるという構図は今後も続く可能性が高い。政府は近年、年金財政の持続可能性を高めるため、年金給付の抑制措置を導入・強化してきた。その代表として、マクロ経済スライド(現役被保険者の減少と平均余命の伸びに基づいて年金額を減額する仕組み)があげられる。

また、政府は昨年12月、マクロ経済スライドの適用を拡大すると同時に、賃金変動が物価変動を下回る場合に、賃金変動に合わせて年金額を改定する考え方を強化する法案を可決した。

現在の制度を前提に、1)CPIは今後、毎年1%ずつ上昇する、2)現役世代の1人当たり賃金も同じく1%ずつ上昇する、という機械的な仮定をおいて、今後の年金改定率を計算したところ、2017年度実績のマイナス0.1%の後、2018年度以降、2025年度までは名目で据え置きが続くという結果になった。この場合、実質購買力は毎年1%ずつ低下し、2025年度までの累計では8.5%も低下する。

こうした厳しい見通しは、現役世代にも大なり小なり理解されている可能性が高いように思われる。政府は、年金財政の持続可能性を高め、現役世代の年金制度への信頼を取り戻すために、給付抑制措置を導入・強化してきたのだが、それが現役世代の老後不安を強め、貯蓄率の上昇を通じて、個人消費に下押し圧力を及ぼしてきた可能性がある。「意図せざる帰結」を招いたように見受けられる。

以上の考察は、現役世代の雇用・所得環境の改善ほどには個人消費が増加しないという構図が今後も続く可能性を示唆している。日銀は、雇用・所得環境が改善すれば、個人消費が持ち直し、さらにそれがCPIを押し上げていくと想定してきた。ただ、日本の家計部門を巡る現況は、より複雑なものになっているように思われる。

<需給ギャップ縮小を過大評価すべきでない>

日銀は、7月の展望レポートの中で、2%のインフレ目標が達成されると見込まれる時期を従来の「2018年度頃」から「2019年度頃」にいとも簡単に先送りした。ただ、それでも、「2%の物価安定の目標に向けたモメンタムは維持されている」と指摘、その中心的論拠として、マクロ的な需給ギャップ(実際のGDPの潜在GDPからのかい離率)が改善していくことをあげた。

ただ、仮に需給ギャップの改善が続いたとしても、それが輸出主導(あるいは設備投資主導)によるもので、個人消費のよりはっきりとした回復を伴わない場合、家計向けの財・サービス価格であるCPIに働き掛ける力は限定的にとどまる可能性がある。ここでは触れないが、この点は統計的にもある程度、確認することができる。単なる需給ギャップの動向以上に、個人消費が今後の物価動向を占う上で重要になっているのだ。

本稿で議論した通り、年金生活者の実質購買力の低下が足かせとなることで、個人消費の回復が現役世代の雇用・所得環境の改善を下回り続けるとすれば、需給面からCPIを押し上げる力は緩慢なものにとどまり、CPIの伸びは需給ギャップから示唆されるよりも小幅となろう。

*村嶋帰一氏は、シティグループ証券調査本部投資戦略部マネジングディレクターで、同社チーフエコノミスト。1988年東京大学教養学部卒。同年野村総合研究所入社。2002年日興ソロモン・スミス・バーニー証券会社(現シティグループ証券)入社。2004年より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。


ドル安ゆえに現実味増すドル円上昇シナリオ=高島修氏
筆者の年初のドル円相場見通しは、118円台は天井圏で、春先にかけて108円台へ下落。その後、半年ほどは110円前後を中心にレンジ相場を形成し、年末辺りから上昇基調に復帰するというものだった。 記事の全文

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村嶋帰一
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[東京 3日] - このところ、個人消費に底堅さが出ている。国内総生産(GDP)ベースの実質個人消費は1―3月期に前期比0.3%増加、14日に発表される4―6月期もはっきりと増加した可能性が高い(コンセンサス予想は0.5%増)。

雇用・所得環境の改善やそれに伴う消費者センチメントの持ち直し、株高に伴う資産効果などが個人消費を押し上げているとみられる。

<個人消費は雇用者報酬ほど伸びない>

とはいえ、今年1―3月期の実質個人消費の水準を、2014年4月の消費増税前の2013暦年平均と比較すると、依然として0.4%下回っている。一方、今年1―3月期の実質雇用者報酬は2013暦年平均をすでに2.1%も上回っている。雇用者報酬の増加のわりに、個人消費が伸びないという傾向が読み取れる。

この背景としては、まず、税・社会保障負担の増加が重しとなり、可処分所得が雇用者報酬ほどには伸びなかったことが指摘できる。ただ、先行きを展望すると、家計を巡る大型の税・社会保障負担の増加はすでに一巡しており、この点からみれば、雇用者報酬と可処分所得の伸びのギャップは縮小する可能性がある。

雇用者報酬が伸びる中で、個人消費の足取りが緩慢だったもう1つの理由として、年金生活者の存在(あるいはその比重の高まり)が指摘できる。年金生活者は、直接的に雇用・所得環境の改善の恩恵を受けられない上に、政府による年金給付削減の打撃を受けてきた。

数字で確認すると、名目年金給付額は2013年度に(正確には10月から)1.0%、さらに2014年度にも0.7%削減された。これは、2000年度から2002年度にかけて、物価下落にもかかわらず、特例法でマイナスの物価スライドを行わずに年金額を据え置いたことに伴う「払い過ぎ」(特例水準)を解消したことによるものである。

一方、消費者物価指数(CPI、総合)は、2013年度に前年比0.9%、2014年度には2.9%上昇した。2013年度の上昇は、日銀による量的質的金融緩和の導入に前後した円安ドル高を主因としており、2014年度は、それに消費増税の影響が加わった。

以上の結果、年金生活者の実質購買力は2013年度に1.9%、2014年度には3.6%低下したことになる(年金額の変化率−インフレ率)。その後、2015年度は0.7%上昇したが、2016年度はほぼ横ばい、2017年度は小幅減にとどまっており、現時点の年金生活者の実質購買力は2012年度を約5%下回っていると試算される。この点が、上で述べた雇用者報酬と個人消費のギャップを生み出す一因になった可能性が高い。

われわれエコノミストは、家計部門を代表するのは雇用者であり、彼らを巡る雇用・所得環境が個人消費の動きを規定すると考えがちである。ただ、年金生活者数の雇用者数に対する比率はすでに70%に達しており、少子・高齢化が続く中、「雇用者=家計部門の代表」という理解はすでに正確性を欠いているとみられる(1990年代後半はこの比率が約50%だった)。個人消費の動向を理解・予測する上では、雇用者に加えて、年金生活者の状況を正確に把握する必要性が高まっている。

<年金生活者の実質購買力は今後も低下へ>

年金生活者が個人消費の重しになるという構図は今後も続く可能性が高い。政府は近年、年金財政の持続可能性を高めるため、年金給付の抑制措置を導入・強化してきた。その代表として、マクロ経済スライド(現役被保険者の減少と平均余命の伸びに基づいて年金額を減額する仕組み)があげられる。

また、政府は昨年12月、マクロ経済スライドの適用を拡大すると同時に、賃金変動が物価変動を下回る場合に、賃金変動に合わせて年金額を改定する考え方を強化する法案を可決した。

現在の制度を前提に、1)CPIは今後、毎年1%ずつ上昇する、2)現役世代の1人当たり賃金も同じく1%ずつ上昇する、という機械的な仮定をおいて、今後の年金改定率を計算したところ、2017年度実績のマイナス0.1%の後、2018年度以降、2025年度までは名目で据え置きが続くという結果になった。この場合、実質購買力は毎年1%ずつ低下し、2025年度までの累計では8.5%も低下する。

こうした厳しい見通しは、現役世代にも大なり小なり理解されている可能性が高いように思われる。政府は、年金財政の持続可能性を高め、現役世代の年金制度への信頼を取り戻すために、給付抑制措置を導入・強化してきたのだが、それが現役世代の老後不安を強め、貯蓄率の上昇を通じて、個人消費に下押し圧力を及ぼしてきた可能性がある。「意図せざる帰結」を招いたように見受けられる。

以上の考察は、現役世代の雇用・所得環境の改善ほどには個人消費が増加しないという構図が今後も続く可能性を示唆している。日銀は、雇用・所得環境が改善すれば、個人消費が持ち直し、さらにそれがCPIを押し上げていくと想定してきた。ただ、日本の家計部門を巡る現況は、より複雑なものになっているように思われる。

<需給ギャップ縮小を過大評価すべきでない>

日銀は、7月の展望レポートの中で、2%のインフレ目標が達成されると見込まれる時期を従来の「2018年度頃」から「2019年度頃」にいとも簡単に先送りした。ただ、それでも、「2%の物価安定の目標に向けたモメンタムは維持されている」と指摘、その中心的論拠として、マクロ的な需給ギャップ(実際のGDPの潜在GDPからのかい離率)が改善していくことをあげた。

ただ、仮に需給ギャップの改善が続いたとしても、それが輸出主導(あるいは設備投資主導)によるもので、個人消費のよりはっきりとした回復を伴わない場合、家計向けの財・サービス価格であるCPIに働き掛ける力は限定的にとどまる可能性がある。ここでは触れないが、この点は統計的にもある程度、確認することができる。単なる需給ギャップの動向以上に、個人消費が今後の物価動向を占う上で重要になっているのだ。

本稿で議論した通り、年金生活者の実質購買力の低下が足かせとなることで、個人消費の回復が現役世代の雇用・所得環境の改善を下回り続けるとすれば、需給面からCPIを押し上げる力は緩慢なものにとどまり、CPIの伸びは需給ギャップから示唆されるよりも小幅となろう。

*村嶋帰一氏は、シティグループ証券調査本部投資戦略部マネジングディレクターで、同社チーフエコノミスト。1988年東京大学教養学部卒。同年野村総合研究所入社。2002年日興ソロモン・スミス・バーニー証券会社(現シティグループ証券)入社。2004年より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)


ドル安ゆえに現実味増すドル円上昇シナリオ=高島修氏
筆者の年初のドル円相場見通しは、118円台は天井圏で、春先にかけて108円台へ下落。その後、半年ほどは110円前後を中心にレンジ相場を形成し、年末辺りから上昇基調に復帰するというものだった。 記事の全文

米金融政策の視界をさえぎる複合要因=鈴木敏之氏
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実質賃金、3カ月ぶり減少=6月の毎月勤労統計
[東京 4日 ロイター] - 厚生労働省が4日発表した6月の毎月勤労統計調査(速報)では、名目賃金に当たる現金給与総額が前年比0.4%減の42万9686円だった。実質賃金は0.8%減で3カ月ぶりに減少したが、厚労省は「賃金は基調として緩やかな増加傾向にある」としている。

給与総額のうち、所定内給与は前年比0.4%増の24万2582円と3カ月連続で増加した。一方、所定外給与は同0.2%減の1万9001円と、2カ月ぶりに減少した。
http://jp.reuters.com/article/wage-data-june-idJPKBN1AK003

 
ドイツが南欧に後れを取る、総合PMIで12年ぶり−ユーロ圏全体55.7

Alessandro Speciale
2017年8月3日 18:45 JST

ドイツの総合PMIは10カ月ぶり低水準、12年ぶりに仏伊西を下回る
PMIは四半期ベースの独成長率を0.4−05%と示唆

ドイツの景気は7月に先の見積もりよりも減速し、他のユーロ圏の経済大国に後れを取ったことが明らかになった。

  IHSマークイットが3日発表したドイツの総合購買担当者指数(PMI)改定値は54.7と、速報値の55.1から下方修正され、6月の56.4も下回った。10カ月ぶり低水準で、この12年余りで初めてフランスとイタリア、スペインに後れを取った。それでも今回の数値はドイツの四半期ベースの成長率が0.4ー0.5%と堅調になることを示唆している。

  ユーロ圏全体の総合PMIは7月に55.7に低下したものの、今四半期も拡大ペースを維持する方向にある。IHSマークイットのチーフビジネスエコノミスト、クリス・ウィリアムソン氏は、「PMIは7月に成長ペースがやや減速したことを示唆したが、依然として勇気づけられる明るい見通しだ」と説明した。

原題:German Economy Lags Euro-Area Peers for First Time in 12 Years(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-08-03/OU3OQV6KLVR401

 

生産性を向上させる“都合のいい働き方”
“目的”ではなく“手段”とせよ。テレワーク導入が遅れる日本企業
BY Kayo Majima (Seidansha)

2017年5月、アメリカである大企業のニュースが話題を呼んだ。そのニュースとは、米IBMが同社の在宅勤務従業員に対して、退社もしくは地域別に定めたオフィスに通うかの選択を迫ったというもの。
4年前には米ヤフーもテレワークの縮小を宣言しており、テレワーク先進国であるアメリカの大企業がテレワークの廃止に方針を転換しつつあることが報じられた。そんななか、日本政府は率先してテレワークを推進し、普及率を上げようとしている真っ只中だ。果たして、米大企業の方針転換は日本にも影響するのだろうか?
「アメリカにおけるテレワークや在宅勤務は、週に5日間ずっと自宅で仕事をするケースが多いです。そもそも、オフィスから数100km以上も離れた場所に居住する社員は出社そのものが困難なので、そうせざるを得ないケースが多いです。米IBMや米ヤフーの場合は、滅多に出社しないテレワーカーの働き方をコラボレーションの観点から考え直すという話。そのため、日本で一般的な『週に1〜2日程度のテレワーク』とは、もともと性格が違うんです」
そう語るのは、情報通信総合研究所ソーシャルイノベーション研究部主任研究員・國井昭男氏だ。國井氏は、長年に渡りテレワークの研究を重ね、日本テレワーク学会の副会長も務めている。
「現在も、アメリカでは9割近い企業がテレワーク制度を導入しているので、テレワークの規模が縮小しているという状況ではないです。日本とは状況も目的も違うので、影響は少ないと考えられます」
国の事情はそれぞれ。すべてを他国になぞらえることはできないのだ。

国策とは裏腹、進まないテレワーク導入
政府は、2020年の東京オリンピック開会式の日である7月24日を2017年からテレワーク・デイと定め、参加企業を対象に一斉テレワークを実施するなど、その導入に力を入れている。しかし、実際のところテレワーク導入企業は増えているのだろうか?

総務省「通信利用動向調査」および国土交通省「テレワーク人口実態調査」をもとに國井氏が作成
「日本でのテレワークの普及には、2つの観点があります。ひとつは、テレワークを導入している企業はどれくらいあるのか、という企業ベースでの普及率。もうひとつが、ワーカー視点での普及率です。総務省が行った調査では、2016年のテレワーク導入企業は13.3%、国土交通省が行なったテレワーカー率は12.9%となっています。グラフを見てもわかるように、企業導入率はだいたい10%前後を推移していますね」
ちなみに、総務省の調査対象となっているのは、100人以上の従業員を抱える企業。一般的に、大きな企業はテレワークを含めた“働き方改革”に取り組んでいる比率は相対的に高いと想定されているので、全国の中小企業も含めた場合は、13.3%よりも低くなる可能性は高いとのこと。国策とは裏腹に、テレワークの普及はまだ余り進んでいないようだ。

次ページ企業がテレワーク導入を拒む理由
企業がテレワーク導入を拒む理由
テレワークという働き方を、すべての企業や人が歓迎しているわけではないことは、導入企業が13.3%という低い数字を見れば明らか。なにゆえ、これほどまで定着しないのだろうか。
「テレワークを導入していない企業に聞き取りをすると、圧倒的に多いのが『うちの仕事はテレワークではできない』という回答。いわゆる『適用業務範囲問題』ですね」
テレワーク制度を導入している企業であっても、社員側が制度を利用していないケースも。その理由の多くが「自分はヘッドオフィスでしかできない業務を担当しているから」となり、企業の回答と一致しているという。
それでは、実際にテレワークを導入している企業にとっても、「適用業務範囲」の問題が障壁となっているのだろうか?
「じつは、導入企業の多くは適用業務範囲が問題になっているというケースはほとんどありません。私の主観ではありますが、ホワイトカラーの業務はどの会社も大きな差があるとは思えないので、工場勤務などの場所の制約がない限り、ヘッドオフィスでのテレワークの導入は難しくないのでは、と考えられます」
適用業務範囲を始め、テレワークの導入を阻む要因として挙がる「労務管理」「情報セキュリティ」の問題についても、すでに克服できているテレワーク導入企業が多いという。ここで、あるテレワーク導入企業の例を見てみよう。

週に1日の在宅業務を採用した某社のケース
某社は、テレワーク導入前まで、週に10時間前後の時間外勤務が平均的だった。そこで、テレワークが可能な業務を週に1日の在宅勤務日に集約したところ、業務効率と生産性が向上し、時間外勤務の平均が週に6時間にまで削減することができたという。
「仕事には、自分ひとりで完結できる“自律的業務”と、誰かと一緒に進めなければならない、あるいは誰かと行なったほうが効率的な“非自律的業務”があり、日本の多くのサラリーマンはこの2つを会社で行なっていると思います。しかし、自律的業務はテレワークに切り替えたほうが、周囲にジャマされず短時間で効率的にこなすことができ、生産性が向上するという結果が出ています」
ただし、國井氏いわく「これはキレイな話」。実際に効果を上げるためには、テレワーク中の社員の業務の状況をきめ細かく把握し、マネジメントする業務が発生するため、中間管理職の負担が増えることを懸念する声も多い。
そして、テレワークを導入した企業には「コミュニケーション」と「生産性の担保」という課題が残る、と國井氏。
「会社にいなくても、適したツールを使えば対面での会話やテレビ会議も可能です。ところが、オフィスにいるときの“雑談”や“職場の雰囲気をつかむ”といったコミュニケーションは可視化が難しく、テレワーカーとヘッドオフィスの間で共有できない部分でズレが出てくる可能性は高いです」
また、テレワークのメリットとされている「生産性」についても、普及を阻む要因になっているケースもあるそう。
「テレワークを導入した企業の多くは『生産性が上がった』とおっしゃるのですが、じつは確証があるわけではないんです。日本の企業は、日頃から生産性を測っているわけではないので、テレワーク実施前のデータがなく、実施後と比較することができない。そのため『生産性の向上』について信用できる客観的なデータは少なく、テレワーク未導入の企業は懐疑的になっている、という意見はよく耳にします」
生産性が上がる保証もなければ下がる保証もない現状では、“失敗するくらいなら何もしない”ことを選ぶ企業が大半なのだ。

新型インフルエンザの流行がテレワーク導入のきっかけに?
まだまだ少数派ではあるものの、国策として進めていることもあり、テレワークに対する認識は変わってきている、と國井氏は語る。
「もともと日本におけるテレワークは、女性が結婚や子育てで退職してしまうことを防ぐという目的で始まった働き方なんです。企業が女性社員のために作った福利厚生策という面が強く、20世紀の初めまでは政府のテレワーク推進ポスターでも、母親が仕事をしながら赤ちゃんを抱いているようなイメージのものが少なくありませんでした」
長らく「テレワーク=女性のもの」というイメージが定着していたが、2006年発足の第一次安倍政権は「テレワークで生産性を高める」という政策を打ち出したという。
「当時のテレワークの概念からすれば、突き抜けた方針だったのですが、歴代の内閣の中で企業の生産性という観点からテレワークを推奨したのは安倍内閣だけ。現在の第二次安倍内閣でも、そのスタンスを保ちながら力を入れているので、広く国民に認識され始めたとも考えられます」

その後、新たな働き方としてワークライフバランスが注目を集めるなど、人々が“働き方”そのものに目を向けるようになった2009年。テレワークの導入企業率が19.0%にまで急上昇した時期があったという。
「じつは、2009年は新型インフルエンザが世界的に大流行した年なんです。当時は、新型インフルエンザの情報が少なく、多くの企業が『インフルエンザ患者が家庭にいる場合も出社停止』という措置を取り、それでは会社が回らなくなってしまうことで大騒ぎになりました。しかし、もともとテレワーク制度を導入していた企業は在宅勤務で乗り切ったと話題になったのです」
この一件から、テレワークの制度とツールを導入する企業が増加。その翌年には12.1%まで比率が下がってしまったが、新型インフルエンザが「テレワークに男女は関係ない」という考え方が広まるきっかけとなった。
「テレワークは女性のものという認識は変わりつつありますが、いまだにその見方を持っている人が多いことも事実。普及と定着には時間がかかるかもしれません。何より、テレワークを導入することが目的になっている企業が多く、それが普及を遅らせている可能性もあります」
テレワークの導入は“目的ではなく手段”と捉えることで、導入のハードルを下げることができるはず、と國井氏は語る。
「テレワークは生産性を高めたり、従業員が働きやすい企業をつくるための、ツールのひとつなんです。テレワークが企業に適していれば導入すればいいし、適していなければ導入しなければいいだけの話。それぞれのワーカーにとって、都合がいい働き方を選ぶことが、理想の働き方といえるのかもしれません」
まずは、すべての働く人たちが個人に合った働き方を選べる社会を目指すことが、テレワーク普及のカギとなる。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50704?page=4


 
Column | 2017年 08月 4日 08:21 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:シリコンバレー企業、雇用の「火の粉」対策

Gina Chon

[ワシントン 2日 ロイター BREAKINGVIEWS] - シリコンバレーの企業は、雇用問題で、トランプ米大統領の上を行こうとしている。

オンライン小売大手のアマゾン・ドットコム(AMZN.O)は、数万人規模のスタッフ採用を計画している。IT大手アルファベット(GOOGL.O)の慈善活動部門は、職業訓練団体に5000万ドル(約55億円)を寄付するという。

各企業がこうした計画を喧伝する背景には、一つには、自動化や人工知能(AI)の導入が進むにつれ、テクノロジー企業が雇用を奪っているとの批判が出ることへの懸念がある。

通商は、2016年の米大統領選でこうした批判の意外な標的となり、グローバル化の弊害の象徴として共和・民主両党から攻撃された。トランプ氏は、就任直後に環太平洋連携協定(TPP)からの離脱を決定し、北米自由貿易協定(NAFTA)からの離脱もちらつかせた。伝統的に通商を擁護してきた共和党や民主党中道派は、不意を突かれた。

テクノロジー企業は、似たような火の粉が降りかかるのを未然に防ごうとしている。アマゾンは2日、配送施設のフルタイムスタッフなど5万人の確保を目標に採用フェアを開催した。来年夏までに計10万人の採用を目指す。また同社は、需要の高い医薬品ラボテクノロジー、航空機整備などに関連する学位の取得を目指す時間給勤務スタッフの学費を負担している。

アルファベットの慈善活動部門Google.orgは先週、「変化する雇用の質」に対応するための訓練や研修を実施している組織に対し、5000万ドルを支援すると発表した。6月には、インターネット交流サイト、フェイスブック(FB.O)のシェリル・サンドバーグ最高執行責任者(COO)がデトロイトを訪問し、ソーシャルメディアを活用した無料のマーケティング講座を開くと発表した。マイクロソフト(MSFT.O)の慈善活動部門も同月、コロラド州の大卒資格のない人向けの職業訓練プログラムの拡張に2600万ドルを寄付した。

こうした企業は、自動化とAI分野の主要な担い手でもある。プライスウォーターハウス・クーパース(PwC)によると、ロボットの導入が進むことで、今後15年で米国の職業の40%近くが失われる可能性がある。AIにより無人運転が可能な車両や、人間に代わって仕事するソフトウエアが活用されれば、こうした変化は加速するだろう。

ネット関連の企業が、移り変わる雇用傾向に米政府よりも賢明な対応を取れることを示すのは、そう難しい話ではない。貿易問題の余波で職を失った人向けの政府のプログラムは、ほとんど効果がなかった。例えば、工場での職を失った女性向けに紹介されたのは、需要のある分野向けの訓練ではなく、美容師の職業訓練だった。

シリコンバレーの企業の目標はもっと明確だ。グーグルは、労働者支援のためテクノロジーを活用するプログラムに資金を出している。

テクノロジー企業はまた、小規模事業にプラットフォームを提供するなどして、経済の役に立っていることをアピールする広報キャンペーンも検討している。

前任者の時代に始まった採用計画を、自分の手柄として自慢するトランプ氏よりは信用度が高いといえる。だが、批判を避けるために、大統領のマネをして「手柄話」を吹かすことにも、誘惑がないとはいえないだろう。

コラム:シリコンバレー企業、雇用の「火の粉」対策

コラム:サムスン電子、先見の明ある投資が結実
コラム:トランプ氏の景気刺激策、景気後退を先延ばしするだけ
コラム:米予算教書、空論前提のブードゥー経済政策
http://jp.reuters.com/article/amazon-com-jobs-breakingviews-idJPKBN1AJ0KK?sp=true  

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コメント
 
1. 2017年8月04日 12:32:31 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[4057]

>内閣改造後のアベノミクスに制御不能のインフレ、円安の懸念

完全に逆だろ

全く、世界と日本の金融経済の現状がわかっていない

こういうアホは消えないのだろうな


2. 2017年8月04日 12:34:23 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[708]
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50654
管理職を早く家に帰せば女性のリーダーも増える「管理職への昇進」と「仕事と家庭の両立」の二律背反

2017.8.4(金) 大嶋 寧子
女性の管理職が増えない原因は何だろうか。
女性管理職の育成に取り組む企業が増加
 女性管理職の育成に取り組む企業が増えている。
 少子化による人材不足への備えや、ダイバーシティ&インクル―ジョンが組織の活性化に寄与するとの認識が広がってきたことに加え、女性活躍推進法(2016年4月1日全面施行)により、常時雇用する労働者が301人以上の企業に数値目標を含む行動計画の策定が義務付けられたことも企業の背中を押している。
 女性活躍推進法に基づく企業の行動計画の多くは、厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」で見ることができる。そこで各社の行動計画を見ると、多くの企業で女性管理職の育成に関わる項目が数値目標として挙げられている。
 数値目標達成のためのアクションとして、各社が女性の育成計画の策定、入社早期からの育成、選抜研修の実施、メンター制度、管理職向け研修、女性間の交流や情報交換機会の提供、働き方の見直し(長時間労働是正、テレワーク導入など)などの取り組みを行うとしている。

女性が昇進に躊躇する理由
 それでは今後、企業の取り組みにより女性管理職が順調に増えていくと考えてよいのだろうか。この点について筆者は、現状のままでは期待されるほどに女性管理職が増えていかない懸念があると考えている。なぜなら、女性が管理職を希望しにくい状況を作りだしている、大きな要因が未だ改善されずにいるためである。
 労働政策研究・研修機構「男女正社員のキャリアと両立支援に関する調査」(2013)では、係長・主任までの一般従業員かつ総合職の女性のうち、課長相当職以上への昇進希望がない人(母集団の83%)に、その理由を複数回答で尋ねている。
 これによると、昇進を希望しない理由として約半数(46%)が「仕事と家庭の両立が困難になる」ことを挙げており、「責任が重くなる」(28%)、「周りに同性の管理職がいない」(26%)、「メリットがない、または少ない」(26%)、「自分には能力がない」(14%)といった他の回答を引き離している。
 このように時間外労働、夜間・休日労働が前提の管理職の働き方は、女性から見た管理職の仕事の魅力を低下させ、女性に昇進をためらわせている。
図表1:総合職女性が課長相当職以上への昇進を希望しない理由
(注)常用労働者300人以上の企業で働く一般労働者かつ総合職の女性。13の回答項目のうち複数回答での回答割合の高い順に5つの項目と回答割合を提示。
(資料)労働政策研究・研修機構「男女正社員のキャリアと両立支援に関する調査」(2013年)
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管理職は「仕事と家庭」を両立できるのか?
 それでは管理職の働き方は、どの程度「仕事と家庭の両立が困難」なのだろうか。仕事と家庭の両立しやすさを左右する要因を考えると、(1)労働時間の長さ、(2)柔軟な働き方の活用可否、の2つであると考えられる。
 労働時間が長ければ仕事と家庭との両立は難しくなるが、働く時間帯を家族の都合に合わせて調整できたり、在宅勤務などで通勤時間を節約できたりすれば、労働時間の長さの一部はカバーできる。管理職の働き方が本当に「両立が困難」なのかどうかは、この2点を検証することで見えてくると考えられる。
 なお、筆者が所属するリクルートワークス研究所では、全国の人の働き方を追跡調査する「全国就業実態パネル調査」を2016年度より実施している。そこで以下では、同調査の2017年度のデータから正規雇用者の働き方に着目し、(1)管理職で仕事と家庭の両立が困難なほど長時間働く人はどの程度いるのか、(2)管理職は柔軟な働き方をどの程度活用できているのかを検証しよう。

<管理職の労働時間>
 まず、正規雇用者のうち週50時間以上働く人の割合を役職別に見たものが図表2だ。
 ここで「週50時間以上」を基準としたのには理由がある。例えば、週所定労働時間が法定労働時間40時間(9時〜18時、休憩1時間)の事業所で平日毎日2時間ほど時間外労働をすれば週50時間労働となるが、そのためには毎晩8時まで業務に従事することになる。
 平均的な通勤時間を考えると、帰宅は9時頃となり、子どもの夕食には到底間に合わない。週50時間以上働く場合、子どものケアと仕事を両立する難易度は相当上がる。
 図表2に戻って、週50時間以上働く人の割合を見てみよう。まず、全体では、役職なしに対して役職ありの人でこの割合が高い。具体的には、役職なしで23%であるのに対し、主任・係長クラスで32%、課長クラスで34%、部長クラスで28%である。
 次に従業員規模別に見ると、同様に役職ありで週50時間以上働く人の割合が高く、特に1000〜4999人および5000人以上の企業の課長クラスでは約4割であった。役職なしと比べて、管理職の働き方は「仕事と家庭の両立が困難」になりやすい状況となっている可能性がある。
図表2:役職別・週50時間以上働く人の割合(正規雇用者、%)
(注)対象は正規雇用者。役職者は各役職と同待遇の専門職を除く。斜体の数字はサンプル数が100未満である。
(出所)リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査2017」
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<管理職の働き方の柔軟性>
 次に、柔軟な働き方の活用状況を確認しよう。
 2016年12月の仕事について、「勤務時間を選ぶことができた」に「あてはまる」または「どちらかといえばあてはまる」と回答した人は、役職なしで11%、係長・主任クラスで12%、課長クラスで13%、部長クラスで18%であった。
 また、2016年12月の仕事について「勤務場所を選ぶことができた」に「あてはまる」と回答した人は役職なしで8%、係長・主任クラスで7%、課長クラスで9%、部長クラスで11%であった。役職の有無にかかわらず、正規雇用者のうち勤務時間や働く場所を選択できる柔軟な働き方をする人は少数派と言える。
図表3:役職別・柔軟な働き方を選ぶことができた人の割合(正規雇用者、%)
(注)1.対象は正規雇用者。役職者は各役職と同待遇の専門職を除く。2.「勤務時間を選ぶことができた」「働く場所を選ぶことができた」とは、質問に「あてはまる」または「どちらかといえばあてはまる」と回答した人の割合。
(出所)リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査2017」
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管理職の働き方改革を急げ
 以上を総合すると、管理職は、仕事と家庭の両立が困難なほどの時間を働く人の割合が、役職なしの人に対して高く、同時に管理職のうち柔軟な働き方をする人は少数である。
 中でも大企業の課長職では仕事と家庭の両立が困難なほどの時間を働く人の割合が高い傾向にあり、とりわけ「仕事と家庭の両立が困難」な状況になっている懸念がある。
 このようなデータを見る限り、「管理職に昇進すると仕事と家庭の両立が困難になる」という懸念には一理がある。企業の女性管理職の育成策が本当に効果を発揮するためには、管理職の働き方を魅力的なものとし、女性が躊躇なく昇進に必要な経験や知識を蓄積できる環境を作る必要があるだろう。

【第10回】 2017年8月4日 沢渡あまね
優秀なプレイヤーは自責で考えるが、優秀なリーダーは「他責」で考える
「自責で考える人は成長する。他責で考える人は成長しない」は本当に正しいのか? 確かに自責思考は本人を成長させるが、組織の成長にはつながらない。スキルを属人化させずに、環境や仕組み自体を更新していくには? ベストセラー『職場の問題地図』の人気業務改善士が生産性向上のコツを教える。新刊『チームの生産性をあげる。』から一部を紹介。
自責主義は危ない!
問題が起きたら「組織の仕組み」を疑う
「自責で考える人は成長する。他責で考える人は成長しない」
 新入社員研修などの若手社員教育の場で、講師が力説するおなじみフレーズ。これ、ダウト! 確かに自責は大事です。人のせいにばかりしている人は成長しません。しかし、自責でしか考えないのもまた問題です。
 たとえば、ある人がデータの入力ミスをしたとしましょう。自責思考が強い人の行動パターンはこうです。
自責思考が強い人の行動
 ミスをしてしまったのは、すべて自分のせいです。入力する場所を間違えましたし、原価の部分は小数点以下を切り捨てするルールに気づかず入力してしまいました。
 次から同じミスをしないよう、フォーマットを紙に印刷して指差し確認します。また、それぞれの数字の入力ルールを指差し確認し、提出前に二重チェックするようにします。この場合、この人のスキルは間違いなくあがるでしょう。
 しかし、他の人についてはどうでしょう? 他の人にこの作業をさせた場合、同じミスを繰り返すかもしれません。過度な自責思考は、個人の成長を促す反面、組織の成長を妨げかねないのです。私は「いったん他責で考える」くらいがちょうどいいと思っています。新入社員研修でもそう伝えています。
いったん他責で考える人の行動
 ミスをしてしまった。自分が確認しなかったのも悪かった。でも、そもそもこの入力フォーマット、おかしくないですか? この配列、どう考えてもわかりづらいでしょ? 説明文もわかりにくいし。小数点の扱いも入力項目ごとに異なるなんてややこしすぎる。だったら小数点以下は自動で切り捨てされるよう設定しておくべきです。
「いままで誰もおかしいと思わなかったのですか? これは、僕でなくてもミスしますって。フォーマット、変えましょうよ」
 ……言い方はさておき、仕組みのムダや改善点を指摘できています。他責にする=環境要因や仕組み、仕事のプロセスの問題点を指摘すること。ここを改善しないことには、
・また同じ失敗をするかもしれません
・他の人が同じ失敗を繰り返すかもしれません
 自責思考は、本人を成長させます。しかし、本人以外の、組織の成長にはつながりません。また、そのスキルは属人化します。属人化させてしまうと、環境や仕組み、仕事のやり方のムダやリスクが顕在化しにくくなります。
 加えて、自責でばかりで考えさせる組織風土は、本人のストレスにもなります。どう考えても環境や仕組みが悪い場合もあるでしょう。時には大いに愚痴を言うのも大事。自責の念にかられ、ストレスを溜めると本人の生産性も組織の生産性も下げます。
 過度の自責思考は、精神衛生上も、組織の生産性を考える上でもよろしくありません。
「優秀なプレイヤーは、自責で考える。優秀なリーダーは、いったん他責で考える」
 他責思考も忘れずに! 以上、ムダに気づくための観点を紹介しました。日頃当たり前と思っている業務を、さまざまな角度から眺めてみる。常識や定説を疑ってみる。そんな自由な発想こそが、ムダ発見の秘訣です。多少の遊び心も交えて、宝探ししてみましょう。
(この原稿は書籍『チームの生産性をあげる。――業務改善士が教える68の具体策』から一部を抜粋・加筆して掲載しています)

http://diamond.jp/articles/-/132777

【第7回】 2017年8月4日 飛田 基
SNS依存の子どもに勉強させる秘訣とは?
ビジネス書の世界的ベストセラー『ザ・ゴール』の著者、エリヤフ・ゴールドラット博士が開発した「3つの思考ツール」で、子どもの考える力を効果的に伸ばせます。飛田基氏の新刊『考える力の育て方』の中から、今回は「SNS依存との上手な付き合い方」をご紹介します。
登場するのは、成績不振の中学生ユウキです。「バカ脱出」という目標を達成するために、「期限を守って宿題ができる」という中間目標を設定しました。しかし、どう行動すればきちんと宿題ができるようになるのか、ユウキには思いつかなかったのです。
「SNS依存」との
上手な付き合い方
 中間目標を決めても、それを達成できる行動が思いつかないことがあります。そんなときは、そもそもなぜ障害が起きているのかを、もう少し掘り下げて調べてみるとよいでしょう。ここでは、第3回で紹介した「ブランチ」という思考ツールを使います。
 まずは図表1をご覧ください。

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 ユウキはクラスメートと、「LINEグループ」という多人数のチャットシステムでメッセージのやり取りをしていました。多くのクラスメートがそのグループに入っているので、宿題に取りかかる夜の時間帯はそのうちの誰かしらがログインしている可能性が高いのです。
 宿題を始めたユウキのスマホに、LINEグループのメッセージが来ます。すると、ユウキはそれに反応してメッセージを返します。また、他のメンバーのやり取りも目に入ってきて、思わず読んでしまいます。
 そうこうしているうちに、自分が書いたメッセージに返信が来たりします。そうやって時間が過ぎてしまい、なかなか宿題に戻れません。
 それがユウキの行動パターンでした。
 つまり、図表2に示した現象が起こります。

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 集中して宿題をやれば40分で終わるとしましょう。では、宿題を5分やり、チャットを5分、また宿題に戻って5分、チャットを5分というように、宿題をやりながらチャットをすると、どうなるでしょうか?
 宿題もチャットも同じくらいの時間を使っていますから、約2倍の時間がかかると考えるかもしれません。午後8時に宿題をスタートすれば、宿題に40分かかり、チャットに40分使ったとしても、9時半くらいには終わるはず、と思うかもしれません。
 しかし、じつは、チャットから宿題に戻ってくるたびに、「あれ、さっきまで何やってたっけ?」となります。すると、前に読んだ文章を読み直す必要が出てきたり、計算をどこまでやったか忘れてしまい、最初からやり直したりします。
 この時間は軽視できません。人間の脳みそというのは、一度に複数の集中作業ができないようにできています。マルチタスク(集中力を必要とする作業を同時進行させること)が苦手なことは、研究により証明されているのです。宿題が午後10時になっても11時になっても終わらないのもうなずけます。
 このように、宿題がなかなか終わらない原因は、LINEと宿題を同時にやろうとすることにありました。でも、この習慣を直すにはさらに考える必要がありました。これを整理したのが図表3です。

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 複雑に見えて答えが簡単には見つからない問題も、掘り下げていくと「つまり、これだよね」と思えるシンプルな構造があるものです。
 しかし、シンプルであることと、解決が簡単ということは別です。LINEグループにメッセージが来ると、それに反応してメッセージを返してしまう。問題解決のためには、この行動をやめなくてはならなかったのです。
 そこで、ユウキとこんな会話をしました。
 私「メッセージが来たら、メッセージを返すのはどうしてかな?」
 ユウキ「友だちだから」
 私「そうだね。友だちは大切にしないといけないよね。じゃあ、その友だちはメッセージの返信をどのくらい待ってくれるのかな?もちろん、『ユウキは付き合いが悪い』なんて、友だちに思われないようにしたいよね」
 ユウキ「数分だったら、問題ないと思う」
 私「そっか、じゃあ、ユウキはメッセージが来たら数分で返信しているんだね?」
 ユウキ「だいたいそう。でも、ごはんを食べているときとか、お風呂に入っているときとか、テレビを見てて気づかなかったときは、30分とか1時間とかレスしないこともあるよ。そんなときは、今お風呂入ってた、ごめんねって言うの」
 私「だとしたら、ごめんねって言わなくてもいい時間はどれくらい?」
 ユウキ「人間だから、それにみんなもいろんなことがあるから、すぐに返せないこともあるけど、20分だったらいいと思う」
 そんな会話のあと、「20分の集中宿題タイム」を作ることにしました。ルールはこうです。
 まず、スマホは勉強部屋に持ち込まず、見えない、聞こえないようにする。次に、タイマーを用意して20分(または区切りのよいところまで)宿題を進める。そうしたら、届いているメッセージをすべて読んでいいし、レスをしてもいい。終わったらまたスマホを置いて、部屋から見えない、聞こえないようにする。そしてタイマーで20分宿題をする。このくり返しです。
 ユウキが言った20分というのは、非常に理にかなっています。20分くらいなら、友だちも待ってくれる。そして、人間の集中力が本当に続くのも15〜20分と言われています。
 友だちから付き合いが悪いと言われることもなく、宿題がきちんと終わるようになりました。その後、ユウキは「社会科」の試験で学年の成績上位者となり、校内で名前が貼りだされるほどの高得点を取ったのです。
(連載終了)
http://diamond.jp/articles/-/137106

 


やる気がない、欲がない若手社員との付き合い方
さとり世代が持つ特徴の背景と対処法
2017.8.4(金) 藤田 耕司
Performers smeared with clay demonstrate during the art action "1000 Gestalten" on July 5, 2017 on a street in Hamburg, northern Germany, where leaders of the world's top economies will gather for a G20 summit./AFP PHOTO/Christof Stache
 私は企業の経営を心理的側面から分析して経営改善を行う経営心理士として、経営コンサルティングを行っている。その中で多くの経営者から、「若手社員は欲がなく、強いやる気が感じられない。どうやって彼らの心に火をつけたらいいのかが分からない」という相談が寄せられる。

 こういったこともあり、私は20代の人たちに会うと、給料や出世についてどのように考えているかについて聞くようにしている。

 また、大学で講演をさせていただくこともあり、講演後は学生との懇親の場を設けてもらうようにしているが、そこでも同様のことを聞いている。

 その答えとして大勢を占めるのが、「そんなに稼ぎたいとも思わないし、出世したいとも思わない」という答えである。

稼ぎたい、出世したい人は少数派に

 もちろん中には「バリバリ稼ぎたいし、出世もしたい」と答える人もいるが、その意見は少数と言わざるを得ない。

 そのため、大学生や20代の社会人に関して言えば、稼ぎたい、出世したいという欲は決して強くはないと感じている。

 この世代の人たちの多くは1990年代生まれとなるが、この世代の人たちのことを「さとり世代」と呼んだりもする。さとり世代の特徴として一般的に「欲がない」や「恋愛に興味がない」といったことが挙げられている。

 では、そのことをもって「彼らは欲がない」と言い切っていいのかというと、私は決してそうは思わない。私は彼らとのやり取りの中で、物欲や出世欲以外の欲を持っていると感じている。

 それは「人や社会の役に立つ仕事をしたい」という欲である。

 こういう言葉を聞くと、「綺麗ごと」のように感じるかもしれないが、この世代の人たちはそれを単なる「綺麗ごと」とは捉えない純粋さのようなものを感じる。

 貢献感という言葉がある。

 これは他者や社会のためになることをすることで得られるものである。人間はこの貢献感を感じることで、自分の存在意義を感じるという性質を持っている。

 いくらお金はあっても、人の役に立っている、社会の役に立っているという感覚が得られなければ自らに価値を感じることは難しくなり、時に精神を病むこともある。

 そのため、人間は人や社会の役に立ちたいという欲求を持っている。これを貢献欲求と呼んでいる。

知名度や給与よりCSR

 自分がいい思いをしたいという私欲よりも、貢献欲求に関心がある。さとり世代の人たちにはそういった傾向があるように思う。知り合いの採用コンサルタントの人からこんな話を聞いた。

 「今の若い人たちを採用しようと思ったら、給料の良さや会社の知名度をアピールするような戦略はもう古い。今はそれだけじゃなくて、自社の仕事がどのように社会の役に立っているか、そういったCSRの要素を入れることは必須です」

 冒頭の「若手社員は欲がなく、強いやる気が感じられない。どうやって彼らの心に火をつけたらいいのかが分からない」という相談に対して、効果的な提案をすることは決して簡単なことではない。

 ただ、1つの切り口としては貢献欲求を満たす関わりをするという方法がある。例えば、今やってもらっている仕事の社会的意義を伝える。

 社会的意義を伝えるというと難しそうに聞こえるかもしれないが、お客様からの感謝の声、喜びの声を伝えるという方法でも社会的意義を感じてもらうことはできる。

 「君が作ってくれた資料をお客様に渡したら、分かりやすいと喜んでいたよ」

 「昨日、お客様と飲みに行ったんだけど、お客様が君の対応はいつも素晴らしいと喜んでいたよ」

 そんなふうにお客様が若手社員の仕事ぶりに対して喜んでくれている事実を知ったならば、そのことを伝える。それは貢献欲求を満たすための重要なコミュニケーションとなる。これは多くのクライアントで効果が出ている方法である。

 勤務態度が悪い、あまりやる気が感じられない。

 そんな若手社員に悩んでいた社長や管理職の方にお客様からの感謝の声、喜びの声を伝えてもらうようにしたところ、「若手社員がとても嬉しそうな反応を示したので驚いた」、「それ以降、勤務態度や仕事ぶりに変化が見られた」。そんな報告をいくつも受けている。

 また、お客様に対して何かをするといった仕事をしていなければ、社内の人間からの感謝の声を伝えるのでもいい。

横並びを好む傾向も顕著に

 「あなたの仕事は誰かの役に立っている」「あなたの仕事で誰かが喜んでいる」

 そんなメッセージを伝えることが若手社員の貢献欲求を満たし、やる気を刺激するきっかけになる。

 また、出る杭になりたくない、皆と横並びでいたいという価値観を持っているのもこの世代の特徴である。

 出世したいと思わないという理由も、出世することによって責任を負わされるのが嫌だという答えと、出る杭になって打たれたくないという答えが多数を占める。

 出る杭になりたくないという意識が強い背景には、学生時代から友人間でSNSを使用してきた経緯があり、出る杭はSNSで叩かれるというリスクを感じてきたことも一因として挙げられている。

 売り上げと給料が比例する完全歩合制のある会社では、各営業パーソンの営業成績が社内に貼り出され、入社2年目の社員が社内でトップの成績を取り続けるようになった。その成績は月に100万円以上の給料を得るほどの成績であった。

 ある時、その営業パーソンが社長に相談があると申し出てきた。

 何の相談かと話を聞くと、「営業の仕事は楽しいんですが、自分は出る杭になりたくないんです。自分は他の人よりもたくさんの給料をもらっていますが、周りからそう見られるのがつらくて仕事がしづらいんです」とのことだった。

 それで社長が「じゃ、君だけ固定給にすれば仕事がしやすくなるか?」と聞いたら、「えっ!いいんですか!?」と喜んでいたという。

 そこで固定給にするとやる気が半減するのではないかと心配しながらも月40万円の固定給にすると、以前にも増して営業を頑張るようになったという。

出世しないため手柄を同僚のものに

 嘘のような本当の話であるが、これに似たような話はほかにも聞く。知り合いの社長の会社では、ある若手社員が出世したくないからと、自分の営業成績を同僚の手柄にしているという不正が発覚したという。

 これを不正というのも違和感があるが、そういった行動を取る背景には、仕事は面白いから頑張るけれども、出る杭にはなりたくないという思いが存在している。

 40代以上の世代の人たちからすると全く理解できないと思われるかもしれないが、彼らにとっては切実な悩みなのである。

 また、物を所有することに対する欲よりも、心を動かす体験や思い出に対する欲の方が強く見受けられる。

 知り合いの大学講師が学生を対象に、「クリスマスに欲しいものは何か?」というアンケートを取ったところ、「彼女の手料理」「彼氏、彼女からの想いのこもったものであれば何でもいい」「彼氏・彼女との楽しい時間」といった答えが多く、具体的な物を書いた答えは少数だったという。

 この世代について書いた書籍や記事を見ていても、こういった記述が見られる。これらのことを総合的に見てみると、「お金よりもハート、出世よりも居心地のよさ」、といった価値観が彼らの中には根づいているように感じる。

 ただ「欲がない、やる気がない」と嘆くだけではなく、彼らのそういった背景と価値観を理解し、ハートを揺さぶる関わり方、居心地のよい職場環境の提供を模索することが、若手世代とうまく付き合うために求められることではないだろうか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50702

「会社の夏休みが怖い」心配性の大人たち

ここでひと息 ミドル世代の「キャリアのY字路」

2017年8月4日(金)
山本 直人
「きちんとしてる」は美徳と思っていたのに

 「働く」と「休む」は表裏の関係だ。

 働く時に集中力の高い人は、休む時もきちんと休む。一方で、仕事がダラダラしている人は、休みきれずに疲れも取れない。

 そういう評価が当たり前の時代になってきた。

 そこで今回は夏に合わせて、もう一度「休み方」について考えてみたい。特に、会社で重要な位置にあるミドル世代にとっては、自身の働き方は周囲にも大きな影響を及ぼし、時には評価にもつながってくる。

 単に「仕事ができる」だけではなく、「働き方全体」が問われている。それは、ちょっと大げさだがそれぞれの「生き方の哲学」が問われることでもある。

 まずは、「休み」でつまづいてしまったWさんのケースだ。

 Wさんの勤務先は、インターネットサービスを中心としたいわゆるIT企業だ。大手メーカーの系列だったが、その後に業界再編の影響を受けて経営陣も大きく変わった。

 社員も入れ替わり、雰囲気も若々しくなった。もともとの顧客基盤がしっかりしており、業績も安定しているので転職市場での人気も高い。

 管理職になって数年が経つWさんの特徴は、「きちんとしている」ことだ。

 
 納期と品質をキッチリと維持することが、最大の目的であり、「仕事とはそういうものだ」という環境で育ってきた。

 その一方で、少々心配性なところがある。これは、環境というよりももって生まれた性格なのだろう。少しでも予定がずれそうになったりすると、担当者に細かく聞きたがる。

 ましてや取引先から問い合わせがあったりすると、相当神経質になる。相手がそんなに急いでいなくても、Wさん自らが慌てて担当者を追い掛け回す。

 周囲の人も「まあ、Wさんはそういう人だから」とあまり気にしてはいなかった。実際に彼が管理する仕事は、きちんと成果を上げていたのである。

 ところが、意外なところで彼に逆風が吹いた。きっかけは「夏季休暇制度の変更」だったのだ。

「休めない上司」というマイナス評価

 かつて「メーカーのグループ会社」という位置づけの時の夏季休暇は、いわゆる「お盆休み」の一斉休業だった。親会社に合わせていたのである。

 しかし、経営主体が変わり取引先も増加すると、この方式の問題が目立ってきた。さまざまな業種の動きに合わせて、ビジネスを組み立てるためには、休暇制度も柔軟な方がいい。

 そこで一斉休暇に代わって、「フリー長期休暇」という制度が導入された。

 時期も長さも自由で、あらかじめ申請すればよい。基本は一週間だが、もっと長い人もいるし、お盆などのピークを避けることもできる。

 若い人を中心に好評ではあったものの、古くからの社員はいままでの習慣でお盆の頃に休むものも多かった。

 Wさんは、この制度が苦手だった。自分の休みはともかく、部下がバラバラと休むと、担当しているプロジェクトのことがやたらと気になるのだ。

 進捗をチームで共有して、いざという時には連絡できるようにする。それを徹底することは誰でもやった。とはいえ、それ程緊急のことは滅多に起きない。しかしWさんは心配症だ。

 取引先から問い合わせがあっても、「休みを頂いてます」と言えない。ついつい「連絡させます」と対応してしまう。

 休暇中の部下のスマートフォンにやたらと連絡するから、休んでいる方も落ち着かなくなる。最初は「まあ仕方ないか」と思っていた部下も、段々と苛立つようになってきた。

 ある時は海外まで追いかけれらた部下が慌てて連絡したところ、料金システムを勘違いして莫大な通信費を請求されたこともあった。

 こうなると、さすがに不満が溜まってくる。

 しかもその時は、休暇だけではなく、広く人事システムの見直しをしている頃だった。いわゆる360度評価が導入されていたのだ。

 「きちんと進捗管理をしている」というWさんの評価は、「適切な権限移譲ができていない」と見なされるようになっていく。

 間もなくWさんは現場の一線を外れて、管理部門に異動した。傍から見ると、彼に合ってる「順当な」異動にのようにも見えたが、実は「柔軟な働き方のマネジメント」ができなかったことが原因だったのだ。

大不況の「社内失業」を追い風に

 その一方で、「休み方」を一新したことで新しい仕事の仕方を切り開き評価されるようになった人がいる。

 広告代理店のクリエイティブ部門で、多くの部下を率いるOさんは、ある年の夏に仕事上の転機を経験した。しかし、それは仕事がきっかけではなく「休み」がきっかけだったのだ。

 TVCMを制作する仕事は、多忙で不規則だ。毎日決まった時間だけ、働くわけではない。海外ロケになれば辺鄙なところまで行くことも多く、移動時間だけでも相当なものだ。

 編集になると遅い時間まで粘るし、企画のプレゼンテーションの前にはプレッシャーもかかる。

 当時売れっ子ディレクターだったOさんにとっての夏季休暇は「あってないようなもの」だった。それが当たり前だったし、子どもの夏休み中に近場の海にでも行ければ「上出来」だと思っていたのだ。

 ところが今から数年前の金融不況の後に、入社以来の「恐ろしいほどヒマな夏」がやってきた。

 いわゆる「リーマンショック」が広告業界を直撃したのだ。Oさんの担当していた自動車会社の広告予算は大幅削減になり、他の得意先も広告出稿を手控えた。

 そのため、7月になってもOさんのスケジュールはスカスカだった。

 いわゆる「社内失業」の状態になって、さすがに不安になる。上司に相談しても、「まあ、たまには休めばいいんじゃないか」としか言わない。

 考えてみれば、有給休暇も相当たまっている。「じゃあ、ホントに休みますね」と宣言して、2週間たっぷり休むことにした。

 家族で旅に出て、妻の実家に帰省して、近所のプールでゴロゴロしているうちに2週間はあっという間に経った。

 「何かあったらいつでも連絡してくれよ」と周りには言っておいたが、何の音沙汰もない。そして、出社してみたら意外なことがあった。

 実はOさんの不在中にCM企画の提案があったのだが、部下がきちんと仕事をこなしていたのだ。

 この休みをきっかけにOさんの仕事ぶりは変わった。遅くまで仕事をせずに、部下に任せて帰るようになった。すると、チームに活気が出てくるのが目に見えてわかった。

「休む上司」の下で若手が育つ

 実は、休み明けのOさんは、部下が仕事を進めていたことに一瞬焦ったという。

 「やっぱり休んでいると、自分の居場所がなくなるんじゃないか?」という感覚だ。しかし、思い切って発想を切り替えることができた。

 これだけ休んでも仕事は回るんだから、休んだ方がいいんじゃないか。それに、やっぱり長い休みはリフレッシュできる。その良さを実感できたことが大きかった。

 その年から、Oさんの「長い夏休み」は恒例になった。8月に殆ど出てこない年もあったが、「そういうものだから」とまわりも気にしなくなる。

 そのうちに「あのチームは若手が育つ」という評判になってきた。Oさん自身が働く時間が短くなるのと反比例するように、社内評価が上がりマネジメントを任されるようになった。

 CMづくりの第一線からは離れたけれど、リーダーとしての存在感はさらに強くなっている。

 「いかに働くか」ではなく、「いかに休むか」。あるいは「いかに上手に休ませるか」が、大切になってきた。それが、会社員特にミドル世代の評価につながりつつある。

 夏は、自らの仕事と生活を考え直すいい機会かもしれない。

今週の棚卸し

 「働き方改革」の波の中では、いろいろな試行錯誤がある。ことに「上手に休暇を使えるか」というのは、その人の能力だけで決まるものではない。Wさんのように心配性の性分が治らなかった人もいれば、Oさんのように発想を切り替えられた人もいる。

 うまく休めない人は、一度その原因を自分なりに考えてみてはどうだろうか。「業務が多いから」「自分がいないと仕事が回らないから」という“理由”は、往々にして思い込みであることも多い。

 休暇期間は、自分を知るいい機会でもあるはずだ。

ちょっとしたお薦め

 働き方について考えるのであれば、時短や生産性のような現実的な課題だけではなく、「そもそも働くとは?」という根本的なテーマについて思いを巡らすことも大切ではないだろうか。

 今回は、ちょっとヘビーであるがマックス・ウェーバーの名著『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』をお薦めしたい。

 学生時代にチャンレジした人もいるだろうが、中山元氏による新訳は読みやすく、注釈も豊富だ。

 第2章1節がキリスト教各派についての詳細な考察になっており、ここは少々手こずるかもしれない。ただしこの部分を理解しきれなくても、その後の展開は明快だ。

 腰を据えて読む時間があれば、ぜひ挑戦してみてはどうだろうか。

このコラムについて

ここでひと息 ミドル世代の「キャリアのY字路」
50歳前後は「人生のY字路」である。このくらいの歳になれば、会社における自分の将来については、大方見当がついてくる。場合によっては、どこかで自分のキャリアに見切りをつけなければならない。でも、自分なりのプライドはそれなりにあったりする。ややこしい…。Y字路を迎えたミドルのキャリアとの付き合い方に、正解はない。読者の皆さんと、あれやこれやと考えたい。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/032500025/080100034/


3. 2017年8月04日 12:49:15 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[709]
せめて自分を守ろう

宋 文洲

株の経験や知識を持つ人なら誰でも知っている単純なルールがあります。
「高値で買うな、借金して買うな。」しかし、今、この2つのルールを
同時に破って14兆円以上の株を買った人がいます。日銀の黒田さんです。

5回延期しても2%のインフレ目標に到達しなかった黒田さんはとうとう6回目の
延期を発表しました。これはもし企業ならばもう3回目あたりから株主から
退陣を要求されていたでしょう。または、こんないい加減な経営をすること
自体を恥じ、株主に言われる前に自ら目標修正か辞任かの措置をとることに
なったはずです。

株価を国家が買い支え、インフレ率も国家が設定し、達成するまで貴重な税金と
政策を投入し続ける経済体制は計画経済そのものであり、昔のソ連でもなかなか
真似できません。この経済の極端な左寄りになぜ保守勢力が黙っているかが
不思議なんです。

安倍政権は保守政権と言われています。確かに政治的には右寄りかもしれませんが、
経済はまったくの左翼経済であり、極左と言っても過言ではありません。

我々経営者の多くはどちらかといえば、保守に近い考えを持っています。
保守の一番の特徴は社会主義に反対し、市場経済の原理を尊重することです。
政府の在り方についてもなるべく小さな政府を好むのです。

国による借金がGDPの2倍である1000兆円を上回りました。未だに国民の純資産や
貯金を理由にこの借金を軽視する人が多いのですが、これはお金を持っている
親戚から借りたお金を返さなくてもいいという発想です。

しかし、借金は借金です。本当に返さなくなると国家の信用は墜落し、国民が
損するだけではなく、日本経済全体が取り返しのつかない信用危機に陥るのです。
その結末が平気だと言うならば外国人の私は文句を言えませんが、単にお金を
貸してくれた人たちがまだお金を持っていることを理由に借金を返さないと
言うならばとんでもないことです。

確かに財政出動で経済の活性化を促し、その結果、財政収入が増えやがて
財政悪化を食い止めるシナリオはあります。それならば日本経済の根底にある
問題に着眼し、既得権益を打破し、構造改革を断行し、経済成長に投資するならば
分かるのですが、日銀が国民から借金して買ったのは成長性のない日本の
既得権益者である大手企業の株です。

成長力で言えば日本の大手企業は最も成長力の無い部類に属します。日経225を
形成する銘柄をみれば分かるのです。時価総額トップ30社はここ30年の間に
あまり変わっていません。東電に東芝にシャープにソニー、どうですか、
これ以上に羅列する必要があるでしょうか。

フォーブスの企業ランキングでみると、世界トップ500に入った日本の大手企業は
90年代の半分になりました。要は衰退のチャンピオンです。安倍政権の金融政策
によって大手企業がキャッシュリッチになっているのになぜ彼らの株を国民から
の借金でさらに買い上げなくてはならないのでしょうか。株式市場の基礎知識を
持っていないのでしょうか。資金のニーズのないところになぜ無理やり借金して
まで資金を突っ込むのでしょうか。

考えらえることはただ一つ、それは単に株を上げたいからです。もし株価(実は
日経225の上昇ですが)を上昇させ経済好調を演出し、支持率の上昇につなげる
下心があれば、これは国家による株価操作です。個人なら明確な犯罪です。

株価が高止まりの昨年から日銀は株の買い入れ速度を上げて一年で6兆円も投入
したのです。借金して高く買う。もうわざと損するようなものです。
これは何かの末期現象ではありませんか。

また「反日」宋さんの言いたがりと思うのは自由ですが、同じことを薄々
考えている読者がいれば、しばらくは株を持たないことです。
せめて自分を守りましょうよ。

P.S.
前々回の宋メールでは、ファーウェイの初任給に関する日経記事の間違いを
指摘したのですが(http://r31.smp.ne.jp/u/No/4860247/4esWFIi4euKD_42725/170804001.html)、
さっそくそれに対抗する記事が毎日新聞から出ました。
ちゃんとファーウェイの日本人社員を取材した記事です。
http://r31.smp.ne.jp/u/No/4860247/83vCBGi4euKD_42725/170804002.html


今回の論長論短へのご意見はこちらへ↓
http://r31.smp.ne.jp/u/No/4860247/7BM998i4euKD_42725/170804003.html

※いただいたご意見は自動的にコメントに掲載されます。
名前も掲載されますので、問題がある場合はペンネームをご入力ください。
また、次回以降の宋メールでご意見を掲載させていただく可能性がありますので
ご了承お願い致します。

今までの論長論短はこちら↓
http://r31.smp.ne.jp/u/No/4860247/9Chndji4euKD_42725/170804004.html

宋のTwitterはこちら↓
http://r31.smp.ne.jp/u/No/4860247/2kFCF2i4euKD_42725/170804005.html


4. 2017年8月04日 12:57:20 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[4058]

>>03 資金のニーズのないところになぜ無理やり借金してまで資金を突っ込むのでしょうか。考えらえることはただ一つ、それは単に株を上げたいから

わかってないね

株を上げたいというより、暴落させたくないというのが正しいが

それ以上に、通貨安に持っていき、海外の日本への需要を刺激し、国内での生産や雇用を刺激して、

デフレ不況と空洞化への逆戻りを防ぎ、最終的に、CPI2%を目指したいというのが、普通に、すぐにわかる目標


そして、何度も言っているように

さらにそれ以上に重要なのが、

膨張が止まらない日本の社会保障や地方へのバラマキを賄うための、財政ファイナンスということだ

既得権者(労働者、老人、飽和産業・・)を守り、成長戦略が動かない日本で、

増税では、企業の投資や個人の消費を減らしてしまうから難しい

これもまた(元財務出身者ということもあって?)必然ということだろう


5. 2017年8月05日 22:02:13 : qFLrcoO25I : IwCZRvTYQMk[183]
カミカゼは 吹かぬ小細工 弄しても

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