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商工中金「解体的見直し」、不可能どころか体制温存の懸念も(ダイヤモンド・オンライン)
http://www.asyura2.com/17/hasan124/msg/789.html
投稿者 赤かぶ 日時 2017 年 12 月 07 日 19:35:45: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

商工中金「解体的見直し」、不可能どころか体制温存の懸念も
http://diamond.jp/articles/-/152045
2017.12.7 室伏謙一:室伏政策研究室代表・政策コンサルタント  ダイヤモンド・オンライン


 
 写真は6月に業務改善計画を提出した後、報道陣の取材に応じた商工中金の安達健祐社長 Photo by Takahiro Tanoue


国の融資制度を利用して不正を繰り返していた商工中金について、所管省庁は連名で処分を行い、中小企業庁に「商工中金の在り方検討会」を設置して、年内をめどに検討が行われている。世耕経産大臣は「解体的見直し」を行うと言及したが、実態はかけ離れたものになりそうだ。(室伏政策研究室代表・政策コンサルタント 室伏謙一)

“組織ぐるみ”の規模で
行われた商工中金の不正


 昨年10月に危機対応業務をめぐる不正が発覚した株式会社商工組合中央金庫(以下、商工中金)、その後の調査で、“組織ぐるみ”と言ってもいい規模で不正が行われていたことが判明した。

 商工中金を所管する金融庁、財務省および経済産業省は、商工中金法第59条に基づき連名で処分を行うとともに、中小企業庁に「商工中金の在り方検討会」を設置し、年内をめどに幅広く検討が行われることとなった。

 世耕経産大臣は「解体的見直し」を行うと繰り返し言及、抜本的な改革に向けて大ナタが振るわれるものと想定されているが、実態はどうやらそれとはかけ離れたものになりそうである。

 まず、商工中金とはどんな組織なのだろうか?

 渦中の商工中金は、昭和11年に中小企業等協同組合など、主として中小規模の事業者を構成員とする団体に対する、金融の円滑化を図るために設立された。中小企業組合や組合員中小企業に対する総合金融サービスを提供する、フルバンク機能を有する金融機関である。

 平成20年に株式のうち46.5%を政府が保有し、残りの53.5%を中小企業組合およびその組合員中小企業等が保有する形で株式会社化されている。

 株式会社といっても株式会社商工組合中央金庫法に基づく特殊会社なのだが、同法第1条に「その完全民営化の実現に向けて経営の自主性を確保しつつ、中小企業等協同組合その他主として中小規模の事業者を構成員とする団体及びその構成員に対する金融の円滑化を図るために必要な業務を営むことを目的とする株式会社とする。」と規定されているとおり、将来的には完全な民営化が予定されている。

政策金融改革における商工中金の取り扱いと
今回の不祥事の概要


 商工中金の株式会社化・民営化は、小泉政権下で全ての政策金融機関を対象に進められた政策金融改革を通じて決定されたものである。

 株式会社化前の商工中金はいわゆる特殊法人等に分類されており、平成9年の特殊法人等整理合理化計画で、自立化や追加政府出資は行わないこととされ、民営化に向けた方向性が示されていたが、平成17年の政策金融改革の基本方針では完全に民営化することが決定された。

 具体的な機能の在り方や完全民営化に向けた工程については、平成18年の政策金融改革に係る制度設計で規定されたが、その中に、商工中金は金融危機や自然災害等で中小企業が危機に陥った時に融資する、危機対応業務を行う指定金融機関となることが盛り込まれた。

 今回の商工中金の不祥事は、この危機対応業務に関して行われたものとされている。

 具体的には、本来ならば、金融危機や自然災害等の緊急時、危機の際(リーマンショックや東日本大震災等)に、経営状態、財務状態が悪化した中小企業に対して低利で融資を行う危機対応業務を、あろうことか、この仕組みの対象とならない優良な中小企業に対して、財務関係資料等を改竄してまで無理やり融資を行っていたのである。危機対応業務の実績を積み上げるためで、国内100支店中97店舗と、ほぼ全店舗で行っていた。

 この危機対応業務とは、株式会社日本政策金融公庫法(以下、日本公庫法)第2条第5号で「特定資金の貸付け、特定資金に係る手形の割引、債務の保証若しくは手形の引受け、特定資金の調達のために発行される社債の応募その他の方法による取得又は特定資金に係る貸付債権の全部若しくは一部の譲受け(以下、特定資金の貸付け等)のうち、公庫からの信用の供与を受けて行うもの」と定義づけられている。

 規定中「特定資金」とは、「内外の金融秩序の混乱又は大規模な災害、テロリズム若しくは感染症等による被害に対処するために必要な資金であって政令で定めるもの」である(同法同条第4号)。

 危機対応業務は、日本公庫法に規定されていることからも分かる通り、一義的には日本公庫の業務であるが、直接実施するのではなく、日本公庫法に基づき主務大臣が指定した指定金融機関を通じて行われる。

 ところが、商工中金については、この指定手続きを経ずに、新たな政策金融機関体制発足の当初から指定を受けたものと見なして危機対応業務を行うことが可能となっている(公庫法附則第45条)。しかも、この指定は完全民営化後も続くこととされている。

 平成18年の政策金融改革に係る制度設計にも、「完全民営化機関については、その政策金融機関として培った経営資源等を有効活用する観点から、移行期においては、指定金融機関とみなすものとする。完全民営化後も原則として指定金融機関であることを継続するものとする。」と規定されている。

 株式会社商工中金法案が審議された平成19年の第166回国会(常会)の衆院経産委員会においても、完全民営化後の危機対応業務の取り扱いに関する三谷光男衆院議員(当時)の質問に対し、政府参考人の石毛中小企業庁長官(当時)は、「完全民営化後でございますけれども、制度設計の中で、完全民営化後も原則として指定機関であることを継続するものとするというふうにされておりまして、引き続き適切に危機対応業務を行えるものというふうに考えております」と答弁している。

 つまり、商工中金はこの先もずっと危機対応業務を行うことができる機関であり続けるというわけである。

危機対応業務は
斜に構えた見方をすれば「やりたい放題」!?


 ちなみに、民間銀行も手を上げて指定金融機関としての指定を受ければ危機対応業務を行うことは可能であるが、これまでに一例もない(その理由・背景については、商工中金の在り方検討会第二回会合では、体制整備の手間や手続負担が大きいこと等があるようであるとの説明がなされたが、正確なところは不明である)。

 加えて、危機対応の「危機」は、何をもって「危機」とするかは主務大臣の認定に係らしめられている。

 斜に構えた見方をすれば、“やりたい放題”であるともいえる。

 事実、平成18年に開催された行政減量・効率化有識者会議においては、危機対応業務について、「何でもかんでも危機対応に含めないように危機対応の在り方も含めて、各機関の改革のプロセスをきっちりと評価・検証することが重要であり〜」と危機対応の濫用に対する懸念が示されていたほどだ。

 そして、商工中金は将来的な完全民営化が予定されていると先にも述べたが、完全民営化後も危機対応業務を当然に担うこととされているにもかかわらず、「危機」を認定するたびに民営化は先延ばしにされた。直近の商工中金法の改正ではついに「当分の間」政府が株式を保有することが義務付けられ、完全民営化は事実上“風前の灯”となった。

 こうした一連の流れを見てみると、今回の危機対応業務を巡る不祥事は、完全民営化の方針を雲散霧消させるための“アリバイ工作”だったと考えることもできなくもない。

現段階で危機対応業務以外にも
複数の不祥事が明らかに


 加えて、商工中金の不祥事は、現段階で把握されているだけでも、危機対応業務に関するものだけにとどまらない。

 例えば、商工中金の取引先1000社を対象とした「中小企業月次景況観測」の調査に関し、実際に企業へのヒアリングを行わずに虚偽の調査票を自作してとりまとめていた、あるいは、ものづくり補助金の申請支援時に商工中金が発行する確認書を、内部の業績評価のために自作していた、といった不祥事が明らかになっている。

 一連の不祥事に関する調査は、あくまでも危機対応業務に関してのみ行われ、その過程の中で明らかになったものである。このため、今後さらに幅を広げて調査を進めれば、危機対応業務関連以外の不祥事が発覚する可能性は大いにある。

 こうしたことも踏まえると、完全民営化云々以前の、中小企業庁と馴れ合いで業務を進めてきた商工中金の「体質の問題」であるとも思われてならない。

ガバナンスとビジネスモデルの問題で
お茶を濁して幕引きを図ろうとする経産省


 ところが、一連の不祥事の原因を、商工中金も主務省(財務省、経済産業省、金融庁)も、(1)危機対応業務における内部統制の未整備と過度な業績プレッシャー、(2)危機対応業務の「武器」としての利用(他の金融機関に対する競争上優位性のある「武器」として認識・利用)、(3)不正行為を惹起した本部や経営陣の姿勢とコンプライアンス意識の低下、(4)ガバナンス体制の欠如、とし、政策金融機関としての商工中金そのものの在り方ではなく、組織のガバナンスや内部統制、そしてコンプライアンス等の職員の意識の問題に矮小化しようとしている。

 さらに、今回の一連の不祥事を受けて中小企業庁に設置された「商工中金の在り方検討会」は、11月17日を皮切りにこれまで2回開催されており、「年内」という短期間で結論を得ることとされている。

 同検討会は公開で行われており、筆者は2回とも傍聴しているが、議論を聞く限り、名称こそ「在り方」となっているものの、商工中金の根本的な在り方には切り込まずに、組織のガバナンスとビジネスモデルの「在り方」を変えていく方向で、この問題の幕引きを図ろうとしているようにしか見えない。

 それはとりもなおさず、これら二つの点を軸に議論が進められているからである。

 もし本当にその方向で結論づけられるようなことになれば、「解体的見直し」どころか商工中金は温存され、政策金融改革も後退することになりかねないだろう。

 むろん、政策金融改革が議論され、制度設計が決められた当時と社会経済の状況は変わっており、政策金融の在り方も当然変わってしかるべきである。

 しかし、それは不祥事、しかも今回のような規模の大きな不祥事を引き起こした機関にも当然当てはまるという話ではない。仮に当てはまるとしても、政策金融機関としての役割を果たすことができない組織として「整理や統廃合の対象にする」という意味においてであろう。

政策金融に求められるもの
時間をかけた丁寧な議論や検討が必要


 政策機関については、民業補完に徹するとの考え方の下、改革が進められてきた。

 そうした中で、平成15年に総務省が行った「政府金融機関等による公的資金の供給に関する政策評価」の指摘事項(意見)に示唆に富むものがあるので、ここで紹介しておこう。

・中長期的な観点からは、政府金融機関等に係る貸出残高の縮減を図ることが必要である。

・そのため、政府金融機関等による公的資金供給の対象となる政策分野の厳格な精査を行い、民業補完趣旨の徹底を図るとともに、個々の貸出制度の撤退時期やその基準をあらかじめ示すなど、規模の肥大化を未然に防止することが必要である。

・政府金融機関等の資金供給手法の在り方については、金融資本市場との調和を図るため、市場機能や民間金融機関を活用したより間接的な手法を十分考慮し、個々の政策目的や〜(中略)〜当該貸出が有する性質に応じ、最適な資金供給手法の選択を行っていくことが必要である。

・間接的な手法に移行する場合には、効率性確保の観点から、諸外国の例も参考に、部分保証方式とするなど、モラルハザードや逆選択を防ぐ制度的な工夫を講じるべきである。

・直接貸出の手法を継続する場合であっても、民業圧迫を回避するため、リスクに見合った金利体系への一層の改善や協調融資の枠組みの拡充など、金融資本市場との調和に関して更に厳格な措置を講じることが必要である。

 こうした指摘も踏まえ、「では、商工中金は今後どうあるべきか」と考えれば、危機対応業務は一義的には日本公庫の業務であるという原則に立って、危機対応業務を行う指摘金融機関と見なすことを止めるべきだ。

 一方で、その公共性を強化し、民営化するのではなく、日本公庫が株式の民間の持ち分を買い取って、日本公庫の下部組織として日本公庫のガバナンスの下に置き、既存の顧客向けの業務や民間銀行との協調融資や間接金融のみを行うといった方向性も考えられるのではないか。

 その先には商工中金の日本公庫への吸収といったことも想定されよう。

 商工中金不祥事は、単に商工中金の在り方に止まらない。政策金融そのものの在り方を再検討し、わが国社会経済にとってより望ましい方向に改めていく契機とすべきだ。そうした観点からの、拙速ではない、時間をかけた丁寧な議論や検討が求められているのではなかろうか。


 

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