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老後人生を狂わす「総額1兆円」過払いの遺族年金という大問題
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53327
2017.12.09 週刊現代 :現代ビジネス
年金の支給漏れ、個人情報の流出など、様々な問題を繰り返し起こしてきた日本年金機構。新たに明らかになったのは、「過払い」だった。制度への信頼を揺るがし、老後の人生設計を狂わす大問題である。
■10%の人に過払いがある
ある日、家に帰ると封書が届いている。表には、「日本年金機構からのお知らせ」。
封を開けるとそこには「年金に過払いがあった」旨が書かれている。訝しんで読み進めると、文言はこう続いた。「つきましては、過払い分の返還をお願いしたく存じます」。
返還金額を見ると、500万円近い額が記されていた――こんな事態が多くの年金受給者の身に迫っている。
これまで何度も問題を起こし、国民の怒りを買ってきた日本年金機構が、性懲りもなく新たな問題を引き起こした。
それは、遺族年金の「過払い」である。
発覚のきっかけとなったのは、省庁などの会計をチェックする会計検査院による調査だった。
会計検査院が、遺族年金受給者の多い年金事務所を複数調査したところ、受給者約1万人のうち1000人弱、つまり10%もの受給者に過払いがあったのだ。その総額は18億円以上にものぼった。
報道されているのはここまでだが、当然この18億円という数字は氷山の一角に過ぎない。
日本全体での遺族年金の受給者数は、およそ540万人。そのうち約10%=54万人前後が遺族年金の過払いを受けていると仮定しよう。総額は膨大になる。
1万人で18億円分の過払いがあったということは、全体(540万人)では、18億円×540=9720億円、つまり、およそ1兆円という莫大な額が余計に支払われていた計算だ。
年金機構広報室の担当者は、「現時点で、過払い金の総額や対象人数の合計数は不明です」と明言を避ける。
過払いを受けていた人のなかには、「得をした」と思う向きもあるかもしれない。一方、いま年金保険料を支払っている人は、年金原資がミスで減ってしまった不公平に憤るだろう。はたして、年金機構側はどう事態を収拾するつもりなのか。
それについて述べる前に、まず、そもそもどうして遺族年金で過払いが起きたのか、経緯を確認しておこう。社会保険労務士の和田雅彦氏が言う。
「遺族年金は、被保険者が死亡したとき、その被保険者によって生計を支えられていた配偶者や18歳になるまでの子供など遺族が受け取れるものです。被保険者が加入していた制度に応じて遺族基礎年金、遺族厚生年金の両方またはいずれかを受給できます。
今回の過払いの原因となったのは『失権届』。遺族年金を受け取っていた配偶者は再婚したとき、子供は18歳になって初めての年度末に失権届を出さなければならない。
ところがそのことを認識していない人が多く、失権届を提出しなかったり、提出が遅れたりしたため、いわゆる過払いとなったのです」
■もらい得にならないのか
前出の年金機構広報室の担当者はこう説明する。
「原因は3つに分かれます。失権届の提出が遅れた方が967名で約17億567万円分、失権届の提出漏れ、つまり届けそのものを出していなかったのが25名で約1億6019万円分、失権届は提出していたけれど再婚などの年月日が誤っていたケースが7名で約760万円分でした」
年金は公平な支払いが原則だ。本来なら、年金機構が戸籍情報と年金の支払いをヒモづけ、再婚をした場合には、それが支払いに反映される仕組みであるべきだろう。しかし、年金機構はそれを行っていない。
年金問題を長年取材し、著書に『年金大崩壊』があるジャーナリストの岩瀬達哉氏も指摘する。
「遺族年金については、旧社会保険庁時代から、職員が受給者のもとを訪問して、失権届を出す必要があるか否か、実態調査をすべきだという議論がありました。
しかし彼らは、とにかく自分たちの仕事を増やすことを嫌う。結局それは実現せず、今回そのツケが過払いという形で現れてしまったのです」
遺族年金の過払いで何より恐ろしいのは、一人あたりの過払い額が数百万円に達する事例も少なくないと考えられる点だ。
「遺族厚生年金の支給額は、亡くなった人が受け取っていた厚生年金の支給額の4分の3程度。平成27年度の厚生年金の平均受給額は月に14.7万円ですから、その場合の遺族年金は月額11万円ほど。年額にすると100万円以上を受け取っているケースはざらにあります。
過払いの時効は5年間ですが、5年間で過払いが500万円を超えることも十分にあり得る」(前出・和田氏)
では、こうして受け取った過払い金はもらい得なのか、それとも返さないといけないのか。
「年金の過払い分については、不当利得という扱いになり、返還請求を行うことになります。受給者の方にも返還義務があります。丁寧にご説明させていただき、返還にご理解をいただくというのが原則です」(前出の年金機構広報室担当者)
■そんな殺生な
当然ながら、過払いを受けていた側は納得がいかない。機構の支払いが正しいと思って、何の悪気もなく受け取っていただけだ。「問題ない」という顔で放置しておきながら、いまごろになって「不当利得だから返せ」と言われても、容易に受け入れられないというのが人情というものだ。
しかし、法律的には支払いを免れる方法はなさそうだ。梅本・栗原・上田法律事務所の上田啓子氏が言う。
「納得いかない部分もあると思いますが、過払い金の返還は義務です。返還しないと、不当利得と見なされます。年金機構側のミスでも、返さなくてはなりません」
遺族年金ではないが、実際に年金の過払いを返還するケースは散見される。千葉県で事務所を開く社会保険労務士が言う。
「うちの事務所にも、年に4〜5人、過払い返還の相談に来る方がいます。とくに多いのが、『加給年金』の過払いを受けているケースです。
加給年金とは、20年以上、厚生年金に加入した受給者に、65歳以下で年金を受給していない配偶者や18歳以下の子供がいる場合、年金にプラスされる『家族手当』のようなもの。
2年前に相談を受けた男性は、奥さんが60歳から年金を受け取っており、本来はその時点で加給年金の受給を停止しなければなりませんでした。しかし、そのことに気づかず、奥さんが65歳になるまで5年間にわたって加給年金の過払いを受けていたのです」
この男性は書面と電話で年金事務所に来るように言われ、事務所を訪れると、過払いの総額が200万円弱にものぼることを告げられた。社労士に相談したうえ、最終的に返還に応じた。
前出の社労士が続ける。
「一括返済は難しい額でした。返還額が多い場合、年金から天引きで返還することもできます。原則は2ヵ月に一度支給される年金のうち2分の1の額を支払わなくてはならない。生活が苦しい場合には、5分の1、10分の1のこともあります。
この方は、2ヵ月に一度、30万円ほど厚生年金をもらっている方だったので、そのなかから15万円ずつ返還することになった。奥さんの年金があるとはいえ、2年以上にわたって、自分の年金収入が半分になるわけです。相当の打撃だったようで、憔悴していました」
今回の遺族年金の過払いの場合、先述の通り、500万円以上を突然返還するよう求められることも考えられる。
しかし、「はい、わかりました」と500万円耳を揃えてすぐに返せる年金生活者はよほど恵まれた人だけ。人生設計が大きく狂い、惨めな晩年を過ごす人が大半だろう。
前出の年金機構の広報室担当者によれば、過払い金は、5年で「時効」が成立するため、今後は過去5年分の返還請求を行う予定だという。では、5年間支払いを拒否し続けると、逃げ切れるのか。裁判や差し押さえの可能性はあるのか。前出の広報室担当者が言う。
「返還をいただけない場合、こちらから督促文書をお送りします。受給者に悪意のない過払いについては、差し押さえなどの強制徴収の対象とはなりません。
ただ、度重なる返還請求に応じていただけない場合には、法務大臣に対して、『強制執行』を行う訴訟手続きを求めることができます。実際に裁判に発展した例は聞いたことがありませんが……」
だが今後、年金機構による返還の請求はこれまでより厳しくなる可能性が高い。会計検査院が、年金機構に対して、過払い金を取り戻すよう強く求めているからだ。
■訴えられることもある
会計検査院が毎年出している「決算検査報告」の最新版(平成27年度分)は、年金機構が過払い金を督促する際の問題点を指摘している。
〈(年金機構)本部は、管理していた返納金債権(過払い金)724件、計7億0855万余円について、消滅時効の完成に至るまで、債務者に対して督促状による督促を行っていたのみで、訪問等による納付督励を全く行っていなかった〉
督促を怠りすぎだ、もっと様々な手段で過払い金を取り戻せ――会計検査院の怒りは激しい。
さらに検査院は、時効を中断するため、場合によっては裁判に訴えても構わないというメッセージを発している。
〈本部は、債務者の資力を考慮するなどした上で訴訟手続により履行を請求することを求めるなどして時効中断の措置を執る必要があった〉
会計検査院の言葉遣いからも、「過払いは返して当然」「受給者のほうに非がある」という思いが透けて見える。しかし過払い金の受給者は、国の機関のミスが原因で訴えられうるのだ。たまったものではない。
これだけの不利益を国民に与えても、まだ年金機構は変わるつもりがなさそうだ。前出の岩瀬氏が嘆く。
「'15年に年金記録情報が流出し、年金機構は『再生本部』を設置しました。しかし、そのコンセプトは『自ら考え、自ら改革する』というもので、『外から介入を受けたくない』という思いが透けて見えます。
今年の9月には、10万6000人の公務員に約598億円の支給漏れがあったことが明らかになっている。抜本的な改革をする気がないのは明らかです」
あなたの受け取っている年金にも、支給漏れや過払いがある可能性は小さくない。常に自分の年金を把握し、確認しておく必要がある。年金機構に任せられない以上、自分の年金は自分で守るしかないのだ。
「週刊現代」2017年11月4日号より
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