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この10年、日本の大企業で「品質問題」が続発する理由がわかった カギはP→D→C→Aの「次の文字」(現代ビジネス)
http://www.asyura2.com/17/hasan125/msg/523.html
投稿者 赤かぶ 日時 2018 年 1 月 19 日 14:22:15: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 


この10年、日本の大企業で「品質問題」が続発する理由がわかった カギはP→D→C→Aの「次の文字」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54166
2018.01.19 井上 久男 ジャーナリスト 現代ビジネス


根本にある「TQM」の衰退

新年早々に開催された米ラスベガスでの家電見本市や、現在デトロイトで始まった北米自動車ショーでは、各社とも自動運転などの最新技術を提案した。こうした新技術がニュースの話題にならない日はない。1月16日付日本経済新聞は1面で、島津製作所が人工知能を使って2分間でがんを判別できる装置を開発したと報じた。

技術革新によって、新しい商品がこれから続々と生まれてくるだろうが、昨今の日本企業で起こるトラブルを見ていると、肝心の「品質」は大丈夫なのだろうかと思わざるを得ない。

今年に入ってすぐに、旭硝子の子会社で顧客と取り決めた検査を一部実施せずに出荷していなかったことが発覚した。昨年は、日産自動車やSUBARU(スバル)による「無資格者の完成車検査」が世間を騒がしたほか、日本経団連会長企業である東レの子会社でも製品検査データを改ざんしていた。


昨年11月、謝罪する東レの日覺昭廣社長ら(Photo by gettyimages)

ここ10年くらいの動きを見ていくと、日本企業では品質関連の不祥事のオンパレードだ。2007年の不二家の消費期限切れの原材料使用、14年のアグリフーズ(当時)における冷凍食品への農薬混入事件、15年の東洋ゴム工業による免震ゴムの性能データねつ造、16年には三菱自動車やスズキでの燃費試験の不正といった具合に枚挙にいとまがない。

どのトラブルにも様々な要因があるが、あまり世間で論じられていないものとして、こうした品質問題の根底には、TQM(トータル・クオリティ・マネジメント=全社的品質経営)の衰退がある。「メイド・イン・ジャパン」がかつて世界で評価されたのは、このTQM活動の成果の一つである。

TQM活動と言っても知らない人がいると思うので、その歴史を少し説明しよう。実は日本にTQM活動を根付かせたのは米国だ。GHQ(連合国軍最高司令部)統治下にあった頃、日本製ラジオの品質があまりにも悪いため、GHQが1949年、通信機器メーカーの経営層を集め、品質向上について学ぶ講座を開いたことに始まる。開講の冒頭では「会社の存立理由は何か」といったことまでが問題提起されたそうだ。

その後、1950年に米国からデミング博士が来日、統計学的な品質管理の手法を伝授、翌51年には品質管理に関して優れた活動をしている企業に贈られる「デミング賞」が創設された。第1回目の受賞企業は「富士製鉄」(現新日鉄住金)や「富士製鉄」(同)など4社。以降、日本の多くの製造業が「デミング賞」を取ることが品質で一流の証と考え、活動を活発化させた。日本企業が欧米に追いつけ追い越せの精神で品質力を向上させたことが、「日本製」がかつて世界市場を席巻することにつながった。

米国製品が日本製に駆逐されたことを反省し、米国政府は1980年代後半に当時の商務長官マルコム・ボルトリッジ氏が中心となって日本のTQM活動をベンチマークし、品質向上を国家プロジェクトと位置付けた。顧客サービスや品質の優れた企業に対する「米国国家経営品質賞」も創設したほどだ。

「P→D→C→A」の次の文字は?

その高い品質力を持っている証のデミング賞がいま、危機に直面している。同賞取得のための「TQM(トータル・クオリティ・マネジメント)」活動をする企業が減少しているのだ。00年から17年までの受賞組織数は海外の45に対して日本は23。さらに大学から品質管理工学の講座が減ったことで、このままではいずれ審査する研究者すらいなくなる状況だという。

デミング賞凋落の理由の一つには、企業がISO(国際標準化機構)の認証取得に傾注したことが挙げられる。

TQM活動の特徴は、経営トップと現場が一体化しながら、現場で起こっている課題を解決していくことだ。その典型的な手法が「PDCAサイクルを回す」だ。組織を挙げてP(計画)→D(実行)→C(確認)→A(再実行)のプロセスを踏んで仕事をしていく。実は、Aの後にS(スタンダイゼーション=標準化)が来ることを知らない人も多い。

「サイクルを回す」というのは、いったん標準を作った後でも、再びPDCAを実行して標準のレベルを進化させていくという意味だ。繁忙であったり、生産品目が増えたり、人員の増減があったり、あるいは新しい設備が入ったりして仕事の現場は常に変化する。その変化に合わせて標準作業を進化させていかなければ、品質問題などのトラブルが起こりやすくなるのだ。

これに対して、ISOは決められているSを守っているか否かに焦点が当てられる。新しいSを創り出すことに主眼が置かれていない。たとえるならば、ISOが択一式マークシート試験、TQMが論文試験だ。TQMが衰えたことによって、上から下まで組織全体の「考える力」が低下しているのではないか。



「製品データ改ざん」で世間を騒がした神戸製鋼所は、TQM活動を怠っている典型的な企業の一つだ。あまり知られていない話だが、同社では死亡労災事故が相次いでいる。2017年4月には、アルミ製品を生産する栃木県・真岡製造所で、請負協力会社の従業員(50)が落下事故で死亡した。続いて6月16日には子会社の神鋼鋼線尾上事業所(兵庫県加古川市)では社員(26)が高圧力のワイヤーロープに弾かれて死亡した。

事故の主な原因は教育不足と設備の老朽化だ。経験が乏しい若い社員が危険なところに入って起きた事故もある。

14年5月7日には同じような原因で死亡労災が発生した。神戸製鉄所内で勤続3年の21歳の社員が設備に挟まれて13日後に死亡したのだ。これも若い社員が危険なところに入り、被害にあった。危険な場所に防護柵などをしていなかったことが主な要因と見られている。

作業者はミスをするという前提で生産現場が構築されておらず、しかも設備投資を怠って古い設備で未熟な作業者が1人で作業をしたから事故が起こったと見られている。

これは日本全体の問題だ

現場の課題が上層部に伝わっておらず、伝わっていたとしても、徹底した議論をして再発防止をしないから同じような事故が起こる。これは品質問題にも通じることだ。神戸製鋼の関係者は「現場の課題を訴えられるような組織風土ではないし、意見を言う人間は排除される傾向にある。そして短期的な利益を求めるために安全は後回しになっている」と訴える。

TQM活動は工場など生産現場だけに必要なことではない。事業環境の変化が激しい現在だからこそ、会社の方向性を決める企画や開発の仕事にも必要だ。TQM活動は、技術革新によってビジネス環境が変化すれば、組織を挙げてそれに対応していくための「武器」の一つになる。

品質トラブルが続発する事態にデミング賞を主催する日本科学技術連盟(理事長=佐々木眞一・元トヨタ自動車副社長)は危機感をおぼえ、昨年10月、企業のトップが品質と経営について議論する「品質経営懇話会」を創設。委員長には坂根正弘・小松製作所相談役が就いた。

さらに、日科技連、日本品質管理学会、日本規格協会(JIS)の3団体が来年秋をめどにバーチャル組織「JAQ(Japan Association of Quality)」を新設することも検討している。3団体の施策を統一し、改めて品質管理の重要性を産業界に訴え、かつ日本の活動を世界にアピールしていく狙いだ。

日本はいま、かつての米国のように、国を挙げて品質問題に対峙する局面にあるではないだろうか。


 

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