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トランプの「大使館移転」が新たな中東危機を呼ぶ?(後編)〜しばらく足踏みをしても、中東の危機はまた新たな危機の階梯を上が
http://www.asyura2.com/17/kokusai17/msg/357.html
投稿者 仁王像 日時 2017 年 1 月 18 日 20:04:05: jdZgmZ21Prm8E kG2JpJGc
 

(回答先: 2017年は中東ニュースが減る「踊り場の年」に(展望・前編)〜少なくとも国際ニュースにもなりにくく/川上泰徳 投稿者 仁王像 日時 2017 年 1 月 17 日 20:53:57)

トランプの「大使館移転」が新たな中東危機を呼ぶ?【展望・後編】〜しばらく足踏みをしても、中東の危機はまた新たな危機の階梯を上がることになると/川上泰徳
2017年01月18日(水)
http://www.newsweekjapan.jp/kawakami/2017/01/post-28.php

<2017年の中東は「踊り場の年」になりそうだが、力で抑え込まれた若者たちの不満や怒りは、なんら解決されていない。新たな危機のかぎをにぎるのは、駐イスラエル米国大使館をエルサレムに移すと公約したトランプ米新政権かもしれない>

 (前略)

〔90年代、ジハードの対象はアラブ諸国の政権から欧米へ〕

  90年代前半はアラブ世界では強権体制とイスラム勢力の対立が激化した。しかし、96年ごろまでに反体制派はほぼ制圧された。この過程でアラブ諸国の強権化が進んだ。エジプト政府はジハード団やイスラム集団という武装過激派を制圧するだけでなく、選挙参加を求める穏健派のムスリム同胞団の幹部を大量逮捕し、95年に軍事法廷で裁くという強硬手段をとった。

 サウジアラビアでも90年代前半には保守派の宗教者から米軍駐留を批判する嘆願書が出た。政府が宗教者の逮捕拘束をしたことに民衆のデモが起こるなど混乱があったが、90年代半ばには政府批判の動きは抑えられた。アルカイダを率いたビンラディンは90年ごろ、アフガンからサウジに戻り、湾岸戦争の後、米軍がサウジに駐留したことを批判し、対米ジハードに転じた。ビンラディンは戦後、サウジを追放され、スーダンに渡って、アルジェリア、エジプトなどのイスラム過激派の武装闘争を支援したとされる。96年には、米国の圧力を受けていたスーダンからアフガニスタンに戻った。

 アラブ世界は湾岸戦争後に噴き出した反体制の動きを力で抑え込み、97年−98年には表面的な平穏状態となった。その一方で、アフガニスタンに戻ったビンラディンは98年にザワヒリとともに「ユダヤ・十字軍に対する聖戦のための国際イスラム戦線」を結成した。これはザワヒリによる「近い敵=アラブ諸国の政権」から「遠い敵=米国」への転換と位置付けられた。実際には、アラブ世界での武装闘争が力で封じ込められた結果、ジハードの対象を欧米に向けなければならなくなったという側面もある。

〔軍事力によって危機を抑え込む場当たり的な対応〕
 (略)

〔サイクス=ピコ協定など中東が抱える3つの矛盾〕

 中東が抱えている矛盾は、@英国、フランス、ロシアが結んだサイクス=ピコ協定に代表される欧州列強による国境線の押しつけ、A西側世界のユダヤ人問題を中東に押し付けたイスラエル建国とパレスチナ問題の始まり、B欧米による中東の石油支配と軍事介入――などを主な要因とする。

 このような困難な政治的条件のもとで、21世紀においてさえ、中東では強権独裁体制や絶対君主制が幅をきかせている。政治的な自由や民主主義、人権は後回しにされて、秩序や安定が重視されるためである。それに対して若者たちが「ノー」を叫んで反乱を起こしたのが「アラブの春」である。中東・北アフリカ地域の人口中央値は23歳という若い人口構成で、人口の半分以上を若者が占めており、若者が動いたことで、政治は動くことになった。

 前編で見たように、「アラブの春」で噴き出し、チュニジア、エジプト、リビア、イエメンで強権体制を倒した若者パワーは、大規模なデモ、ムスリム同胞団による選挙勝利、シリアでの武装闘争、「イスラム国」への流入などの形を取ってきた。それに対して、抑え込む側は、エジプト軍のクーデター、シリアでの武力制圧、「イスラム国」への有志連合の空爆、イラク軍によるモスル制圧、シリア政権軍とロシア軍によるアレッポ制圧という形で力を加えた。

 2016年後半までに、力で抑え込まれたのは、エジプトの若者たちやムスリム同胞団、シリアの反政府勢力、イラクとシリアの「イスラム国」である。それらの勢力がある特定地域に限定されているなら、そのまま封じ込まれられてしまうだろう。しかし、「アラブの春」の若者たちは国を超えてデモを起こし、エジプトに限定されたものではない。ムスリム同胞団もエジプトだけではなく、アラブ諸国全域に同様の組織がある。「イスラム国」もまた中東、アフリカ、アジア、さらに欧米にも関連組織や支援者もいる。

 ある地域で抑え込まれた矛盾は、その背景にある国を超えたつながりを通じて、別の場所で、別の形で噴き出すことになる。そのような「つながり」が生まれるのは中東・北アフリカの20カ国でイスラムという共通の宗教が支配的で、さらにうち18カ国はアラビア語を母国語とするアラブ諸国という地域としての同質性が非常に強いためでもある。

「アラブの春」で声を上げた若者たちの不満や怒りのもとになったのは「格差の広がり=不公正」「政権の腐敗」「強権による自由の封殺」である。それらの問題は、なんら解決されておらず、逆に強権支配は強まった。このような状況を考えれば、エジプトで軍が強権で反対の声を押さえ、シリアでアサド政権がアレッポを制圧して反体制勢力に攻勢をかけ、イラクで「イスラム国」の首都モスルへの掃討作戦が続くことで、危機を抑え込んだとしても、危機の元となる問題は解決していない。

 力で抑えられた矛盾は、地下にたまったマグマのように、新たな噴き出し口を求めて、うごめくことになるだろう。私が2017年は「踊り場の年」と見るのは、しばらく足踏みをしても、中東の危機はまた新たな危機の階梯を上がることになると考えるからである。

〔大規模な危機を前には必ずパレスチナ情勢が動いた〕
 (中略)
 トランプ氏は歴代の米国大統領がパレスチナ和平の達成に名を残そうとしてきた外交努力には全く関心はなさそうである。しかし、米大使館のエルサレムへの移転など、イスラエル強硬派の主張に安易に乗るような行動をとれば、パレスチナ危機を招きかねない。それが次の中東危機のさきがけになるというのが、これまでに繰り返してきた中東危機のパターンである。中東の出来事が国際ニュースの表に出ず「下火」になったときこそ、中東の動きに目を凝らす必要がある。
 

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