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「米国第一」の論理的帰結は「中間層の苦痛」 想定されるドル高…ドル安誘導の先のカオス  目先に踊る中間層、ほくそ笑む富裕
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投稿者 軽毛 日時 2017 年 2 月 06 日 09:51:52: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

「米国第一」の論理的帰結は「中間層の苦痛」


想定されるドル高…そしてドル安誘導の先に待ち受けるカオス

トランプのアメリカ〜超大国はどこへ行く 2017年2月6日(月)

篠原 筺

トランプ大統領誕生を支えた中間層の熱狂は、やがて…(写真:ロイター/アフロ)
 米大統領選の勝利で戦前の予想を大きく裏切ったドナルド・トランプ氏だが、再び市場参加者やメディアの期待を裏切りつつある。

 大統領就任後、全米各地で相次ぐデモを見ても分かる通り、歴代大統領の出だしと比べても、トランプ政権の不人気は群を抜く。それでも、ダウ工業株30種平均の2万ドル超えが象徴するように、大統領選以降、株式市場は活況を呈してきた。トランプ大統領が主張する大規模減税や規制緩和、インフラ投資などビジネス重視の姿勢を市場が好感したことが大きい。

 また、ホワイトハウスの椅子に座れば現実に気づき、保護主義的な言動や移民抑制につながるような政策を自重するだろうという期待もあった。事実、大統領選の終盤から昨年12月にかけて、それまでの強硬な主張を軟化させたように見えた時期もあった。トランプ大統領は実利を重んじるビジネスパーソンであり、保護主義や移民抑制は選挙に勝つための方便――。そんな楽観的な見方も浮上したのもこの時期だ。

株価活況も「トランプはトランプ」

 ところが、トランプ大統領はどこまで行っても"トランプ"だったことが明らかになる。

 新設される国家通商会議のトップに対中強硬派のピーター・ナバロ米カリフォルニア大学教授が指名された時には緊張が走ったが、この時は国家通商会議がどこまで影響力を持つのか不透明なところも多く、保護貿易の懸念はあくまでも懸念だった。就任演説で「バイアメリカン・ハイヤーアメリカン」と明言した時も、支持者向けに強面を演じているだけだという解釈も聞こえた。就任直後から乱発している大統領令にしても、環太平洋経済連携協定(TPP)の永久離脱やオバマケア(医療保険制度改革法)の廃止、連邦政府職員の採用停止などは想定内で、手をつけやすいところに手をつけているだけだと見る向きもあった。

 だが、メキシコの壁建設に伴う大統領令や壁の費用負担を巡るメキシコ大統領との応酬、一部イスラム教国の市民に対する入国制限、さらにトランプ政権が導入を検討している専門職向けのビザ規制や性的少数者(LGBT)の権利を後退させかねない「信仰の自由」の拡大(娘夫婦が止めたと報じられている)など、1月後半からの動きを見ると、トランプ大統領が選挙公約の実現に並々ならぬ意思を持っていることが見て取れる。ここ数日でトランプ相場に対する期待が後退しているが、それもトランプ政権の真の姿を改めて認識したからだろう。

 「トランプ大統領が主張している経済政策は大きく分けて、大型減税とインフラ投資などの財政政策、規制緩和、保護主義、移民抑制の4つある。そのうち保護主義と移民抑制がなければと思っていたが、最悪のシナリオになりつつある。選挙用のリップサービスではなく、行動を伴うものだという認識が市場参加者に広がっている」。野村インターナショナルの雨宮愛知シニアエコノミストは語る。

 TPP離脱やNAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉、自動車メーカーへのツイッター介入で支持者を納得させて現実路線に回帰していく。勝手にそう考えていたこちらが浅はかなだけだが、トランプ大統領は見事に期待を裏切っている。

 「この瞬間からこの国はアメリカファーストになる。貿易、税、移民、外交問題に関するあらゆる決断は米国の労働者や家族を利するために下される」

 トランプ大統領が就任演説で語ったように、トランプ大統領の最優先事項は米国第一主義の実現、とりわけ失われた雇用の復活にある。自動車メーカーに対する批判や国境税などトランプ氏の主張は、突き詰めれば、メキシコや中国に流出した雇用を取り戻すことが目的だ。

根本的に中間層や低所得者層を痛めつける

 もっとも、トランプ大統領の米国第一主義を改めて整理すると、トランプ大統領が守るべき白人労働者もまた、彼に裏切られる可能性が高い。トランプ大統領が掲げている、あるいは実際に進めようとしている政策は、根本的に米国の中間層や低所得者層を痛めつけると考えられるからだ。

 例えば、国境税を見てみよう。この政策の主たる狙いは、安価なメキシコ産の流入を防ぎ、米国内の供給を維持・拡大するところにある。

 トランプ大統領の主張している国境税が単純な関税を意味しているのか、下院共和党の税制改革案にある国境税調整なのかは現時点では定かではない。ただ、国境税調整だとしても、輸入仕入高の損金算入が認められないということを考えれば、輸入品に関税を課しているのと同じような効果がある。

 輸入品にかかる関税を引き上げればどうなるか。為替動向を予想することは不可能だが、普通に考えれば輸入品の急激な価格上昇を緩和するためにドル高が進むか、輸入品の価格が上昇して物価が上がり、結果としてドル高になるかのいずれかだろう。

 一般論として、ドル高になれば輸出競争力が低下するため米国の製造業にはマイナス。白人労働者の雇用を直撃することは十分に予想される。

 また、トランプ大統領は米国内の工場に対する投資を企業に要請している。だが、米国の失業率は直近で4.8%と完全雇用に近い。「米国に投資したとして、労働力が確保できるかどうか」とある日系部品メーカーの幹部が打ち明けるように、人手不足の中で米国回帰を促せば賃金インフレにつながる。

 それは労働者にとって悪い話ではないかもしれないが、労働力供給が増えない中で、言い換えれば需要が伸びない中での賃金インフレが良いインフレなのかは疑問が残る。賃金が上昇すれば、物価が上がりドル高方向に動く。企業の収益率が落ちれば、レイオフや自動化を加速させることになるだろう。どちらにしても雇用にはマイナスだと思われる。

移民抑制、大規模減税の「必然」

 イスラム教徒の入国制限を巡る大統領令やトランプ大統領の側近が考えているビザ発給の厳格化など、一連の移民抑制策も労働市場をタイト化させるため、同様の結果を招くと考えられる。

 「トランプ政権、移民制限の次なる爆弾」で書いたように、エンジニアなどに発給されるH-1Bビザの見直しが現在、議論の俎上にのぼっている。だが、H-1Bの見直しで米企業に送り込むインド人エンジニアの人数が減れば、アウトソーシング会社は米国で手がけている業務をインドなど別の国で対応できるようにするだろう。長期的に見れば、H-1Bビザの見直しはIT(情報技術)に関わる雇用の海外流出を加速させることになるのではないか。現状のITエンジニア不足を考えれば、AI(人工知能)をはじめとした自動化の活用が進むことも考えられる。

 付け加えれば、移民抑制は米国の消費やイノベーションに与える影響もさることながら、将来の労働力供給に悪影響を及ぼす。「長期的な経済成長に重要なのは、労働力や生産性など供給サイドの要因」と野村インターナショナルの雨宮シニアエコノミストは語る。生産性次第のところもあるが、移民抑制策の影響で労働力の伸びが落ちた場合、トランプ大統領が企図している減税や財政支出などの影響が剥落した後の経済成長に悪影響を与える。

 そして、投資家が期待している大規模減税やインフラ投資だ。税制改革案をどうデザインするかによるが、大規模減税によって財政赤字が膨らめば、国債発行でファイナンスするため金利に上昇圧力がかかる。結果的に海外からの資金流入を招くのでドル高要因だ。インフラ投資も民間資金を活用すると述べているが、財政赤字が膨らめば同じくドル高が進む。下院共和党は国境税調整の導入によって今後10年で1兆ドルの税収を見込んでいるが、この収入を壁の建設に充ててしまうと財政赤字がさらに膨らむ。規制緩和にしても、経済が活性化されると思えばドル高要因だろう。

 こうしてみると、トランプ大統領が進めようとしている政策はことごとくドル高政策に見える。

 そうなると、次の焦点はトランプ大統領がドル高を容認するのかという話になる。現状、トランプ大統領は日本の金融緩和を円安誘導と厳しく批判している。財務長官に指名されたムニューチン氏は「強いドルは国益」と従来のスタンスを踏襲しているが、「雇用創出」という政権の一丁目一番地を考えると、トランプ大統領がドル高を容認するかどうかは微妙だ。

 ドル高は米国経済の相対的な強さやFRB(米連邦準備制度理事会)による利上げ政策、新政権の政策によるところが大きい。30年前は主要国の間でプラザ合意が成立したが、トランプ大統領の一方的な主張に各国が理解を示す可能性は低いと思われる。

 もっとも、それでトランプ大統領が納得するとも思えないので、ハト派のFRB議長を任命して金融緩和に転換させるなり、外国債を購入するなり、何か手を打つのかもしれない。ただ、経済の摂理に背いたところで不均衡のエネルギーが蓄積していくだけ。日本やドイツに無理難題をふっかけたとしても、いずれ何かの反動が起きるだろう。そうなれば、米国も無傷では済まない。

目先に踊る中間層、ほくそ笑む富裕層

 ここまで述べてきた話は反対に、富裕層やウォール街にはプラス要因だ。大規模減税は既に資産を持っている人間のほうが恩恵が大きい。規制緩和でドッド=フランク法が緩和されれば、規制で身動きが取れなくなっていた金融機関も万々歳だろう。トランプ政権の為替政策でマーケットのボラティリティが高まれば、ディーラーがさやを抜く機会も増える。

 大富豪や元軍人、ゴールドマン・サックスのOBが多いトランプ政権は、「Gazillionaire(大富豪)」「General(将軍)」「Goldman Sachs(ゴールドマン)」の3G政権と揶揄されている。トランプ大統領自身は経済成長から取り残された中間層やプア・ホワイトを本気で救おうと考えているのかもしれないが、実際の方向は恐らく逆である。

 トランプ支持者も、この結末に気づいていると思うが、トランプ氏が勝利したのは経済的な不満もさることながら、移民の増加を背景にした社会的、宗教的な不満も大きかった。それを思えば、長期的に米国が衰退したとしても、移民をブロックできればそれでいいのかもしれない。その時のアメリカが、我々のイメージするアメリカなのかは分からないが。


このコラムについて

トランプのアメリカ〜超大国はどこへ行く
1月20日に第45代米大統領に就任したドナルド・トランプ氏。通商政策や安全保障政策など戦後、米国が進めてきた路線と大きく異なる主張をしているトランプ大統領に対する不安は根強い。トランプ氏は具体的に何を実施し、何を目指しているのか。新大統領が率いるアメリカがどこに向かうのか。それをひもといていこうというコラム。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/012700108/020300005

 

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