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「マクロン仏大統領」展望は:仏なくしてEUの共同体性はなくEUなくして仏の政治的存在感なし
http://www.asyura2.com/17/kokusai19/msg/430.html
投稿者 あっしら 日時 2017 年 5 月 14 日 02:14:12: Mo7ApAlflbQ6s gqCCwYK1guc
 


[複眼]「マクロン仏大統領」展望は

 7日投開票されたフランス大統領選は、中道系独立候補のエマニュエル・マクロン元経済産業デジタル相が勝利した。親欧州連合(EU)を掲げた新大統領の誕生は、英国のEU離脱決定や極右勢力の台頭で揺れる欧州にどんな影響をもたらすのか。

■反グローバル主義、転機に 仏モンテーニュ研究所首席顧問 ドミニク・モイジ氏

 決選投票は恐怖と怒りを体現するルペン氏と、希望と自信の候補であるマクロン氏の衝突だった。高失業やテロリズムで息苦しさを抱えたフランスは驚くべき大差で「希望」を選んだ。世界の反グローバル主義の転機にもなりうる。

 マクロン氏にとって最大の試練は第1回投票の首位突破だった。決選投票にルペン氏と(急進左派の)メランション氏が進む展開を恐れていた。母国の予想外の復元力に安心した。誇りに思う。

 EU離脱を決めた英国とトランプ大統領を選んだ米国。両者の選択にはエリートへの怒り、将来や移民への不安、過去の栄光への郷愁という3つの要因があった。仏有権者でユーロ離脱を支持するのは25%だけだ。混沌に混沌を重ねるリスクをためらい、正反対の道を選んだ。

 マクロン氏は国立行政学院(ENA)などエリートの経歴を歩み、米投資銀行に勤め、25歳も年上の既婚女性と結婚した。自信の高さの証しだ。

 テクノクラートの化身であると同時に、とても共感力が高い。居合わせた夕食会で微笑みかけると彼の方から「ドミニク、こんにちは」と近寄って来て、話している間じゅう、手を握っている。こんな人物はシラク元大統領以来だ。

 マクロン氏を押し上げたのは決選投票に進めなかった伝統的な二大政党の崩壊だ。ミッテラン元大統領の精神を映す社会党は死んだ。さまよう共和党はまだ死んでいないが、連帯を回復できなければ同じ運命になる。

 マクロン氏の戦いは終わらない。6月の国民議会(下院)選挙は難関だ。シナリオは3つ。彼が率いる「前進」が過半数近くを取るか、過半数には足りないが右派や左派に接近して連立政権を樹立するか、右派が勝って保革共存(コアビタシオン)の政権を作るかだ。

 新大統領の陣営に過半数の支持を与える伝統があり、議会選でマクロン陣営が勝つ展開も排除しない。だが実現性が最も高いのは2番目の連立政権。ドイツの大連立に似た姿になる。

 仏政治は30〜40年に1度の再編期を迎える。革命的な状況だ。中道左派と中道右派は一緒になり、グローバルな開放性と一国主義の閉鎖性の対立になる。

 フランスはドイツと再び肩を並べ、自信を持つ。ドイツ人はマクロン氏当選を本当に喜ぶが、たぶんフランスは経済や財政でもっと成長を促すようドイツに圧力をかける。マクロン氏の扱いにくさを彼らは早い段階で感じるだろう。

 40%の仏有権者は無視され、見下されたと感じている。マクロン氏が5年間で成功しなければ、有権者は昨年の米国のような投票行動をとるだろう。ルペン氏の影はずっと消えない。

(聞き手は本社コメンテーター 菅野幹雄)

 Dominique Moisi フランスの国際政治学者。欧米などの有力紙に寄稿し、豊富な知見で欧州や世界の外交・経済秩序を分析する。16年から現職。70歳。
◇  ◇
■英EU離脱に強硬路線 dfi元副所長 ヘンリック・ウテルウェッデ氏

 親EU派のマクロン氏が圧勝できたのはなぜか。ひとつは(欧州統合によって)経済が改善するという楽観論。2つ目は強いフランスこそが強い欧州につながるという発想を持つ有権者がマクロン氏に票を投じたからだろう。これに対し、先行きを悲観する人たちは左右両極に流れた。

 主要政党の政治家は臆病になり、欧州統合を訴えると選挙で不利になると思い込んでしまった。マクロン氏は正直に欧州は大切だと訴え、それが有権者に通じた。現実的な経済再生案を示したことで信用されたという面もある。

 マクロン氏は仏経済が立ち直れば周辺国から信頼されると考えている。まずは内政改革に着手し、次のステップでドイツなど周辺国に欧州統合の深化を呼びかけるだろう。

 巨額債務を抱え、財政規律を守らぬフランスをドイツは「やるべきことをやらぬ国」と見なしてきた。それがオランド仏大統領のEU内での立場を弱め、ドイツの主張がまかり通る状況を作り出した。親EUを掲げたマクロン氏の新大統領就任で、その構図が変わるかもしれない。

 域内連携の第1段階は再生可能エネルギーや安全保障政策が対象だ。欧米関係がギクシャクしているため、欧州は米国の影響下から抜け出すべきだとする伝統的な仏思想がよみがえりそうだ。欧州独自の防衛政策を持つべきとの発想につながる可能性がある。

 第2段階では財政政策を想定しているのではないか。もちろんEUに追加資金を拠出するとなればドイツでは議会の承認が必要になり、ハードルは高い。だが仏政府が財政規律を守ったうえで財政政策の一元化を提案するなら、独政府もむげには断れない。

 英国のEU離脱が欧州解体の第一歩にならぬよう、マクロン氏は英国との離脱交渉に強硬路線で臨むとみている。仏国内向けには、自国だけで解決できない問題があるということを訴える一方、周辺国には自国だけでなく欧州全体の利益を考えて行動しているとアピールする場になる。

(聞き手は欧州総局編集委員 赤川省吾)

 Henrik Uterwedde ドイツにある独仏関係が専門の学術機関ドイツ・フランス研究所(dfi)の元副所長。第一線は退いたものの研究所に籍を置き、独仏双方に鋭い分析を発信する。68歳。
◇  ◇
■日欧EPAに追い風 在日仏商工会議所会頭 ベルナール・デルマス氏

 フランス政治が刷新された。マクロン氏は非常に若く、少し前まで自分の政党すら持っていなかったのに、国民の大半をまとめた。若い人が政権を取るのは、我が国にとって良いことだ。

 政権運営で注目すべきは、経済を活性化させる強い意思を持っていることだ。彼は安倍晋三首相の「アベノミクス」を評価し、公約策定時にも参考にしたようだ。政治の力でデフレ脱却を目指すやり方を、フランスでも実行しようとしているのではないか。

 日本企業にはチャンスが広がる。マクロン氏は労働市場を改革し、企業の投資を促進する立場だからだ。彼はフランスの労働者と企業経営者が、全国的な労働組合組織の介在なしに直接交渉する道を開こうとしている。若者の起業支援にも前向きだ。

 マクロン氏は経済産業デジタル相時代などに何度か来日し、日仏関係の強化を訴えてきた。今後の焦点となるのは日欧の経済連携協定(EPA)の締結に向けた交渉だ。

 日本の立場もよく理解しており、一定の課題さえ乗り越えれば協定の合意を支持するだろう。EUは日本に肉やチーズなどの関税や非関税障壁の改善を訴えている。日本も協定を前進させる意思を持っており、妥結に向けた環境は日仏の間では整ってきた。

 対EU政策で注目しているのはドイツとの関係強化だ。ドイツは消費や投資が少なすぎた。マクロン氏は貿易黒字額にふさわしい投資を実行するように求めるだろう。

 通商政策でEUはこれまで貿易相手国のダンピング輸出に対し寛容でありすぎた。マクロン氏は厳しく対処するだろう。税制では米グーグルに代表される多国籍企業への課税強化を推進するだろう。

 日仏は高齢化や労働市場の改革といった共通の政策課題を抱えている。フランスは失業率の低い日本から学ぶことがあるだろうし、日本は移民や女性に開かれたフランスから学ぶことがあるだろう。お互いに補完し合える関係が深化するよう、新大統領の早期の来日を期待している。

(聞き手は高橋元気)

 Bernard Delmas 1979年仏ミシュラン入社。98年に日本法人社長、2015年会長。10年から在日フランス商工会議所会頭を務める。グルメ本「ミシュランガイド」の発行などに携わる。63歳。
◇  ◇
■議会選、中道派結集も 東京外大教授 渡辺啓貴氏

 最後はマクロン氏が勝利を収めたが、今回の大統領選の主役はルペン氏だったといえる。極右のルペン氏が決選投票に残ることを前提に選挙戦が行われたからだ。共和党のフィヨン元首相がスキャンダルで失速し、社会党は予備選挙で左派のアモン氏が選ばれた。(結果として)中道がぽっかりあき、そこからマクロン氏が浮かび上がった。

 決選投票に既成の大政党が進めなかったことは、左右の大政党が交代で政権を担ってきた仏政治に対する、有権者の反発や飽きを示している。既成政党の支持者が行き場を失い「ルペン氏に入れるくらいなら」とマクロン氏に投票する「負の選択」だった。

 マクロン氏はエリートのイメージを代表しているといわれる。(ルペン氏の健闘は)大衆や不利益を被っている人のため、というルペン氏のメッセージが(一定程度は)届いたことを示している。

 マクロン氏は経済政策で投資を重視し、規制緩和を進めるだろう。現職のオランド氏はメルケル独首相に押しきられる形で緊縮路線をとったが、ドイツは9月の総選挙のあとに財政政策を緩和方向に変えるかもしれない。(EUの加盟国間で経済力の差が開く)南北格差はEUにとってプラスにならないからだ。

 今後は6月の国民議会選挙でマクロン派が過半数を取れるかが課題になる。社会党は分裂し、党内の保守派がマクロン氏を支持して(緩やかな)中道派のグループが形成されるかもしれない。

 ただし国民の61%はマクロン氏が議会で絶対過半数を握ることを望んでいないとする調査結果もあった。大統領選で投票しても、議会選では好きな候補に入れたい、という有権者も多いと考えられる。

 大統領が絶対的な行政権を発揮し、決められる政治を目指したのが、1958年以降の現在の第5共和制だった。政治勢力が合従連衡を繰り返せば、なかなか決められない政治に戻る可能性もある。議会選挙で今後の仏政治の安定度が試されることになる。

(聞き手は編集委員 刀祢館久雄)

 わたなべ・ひろたか 専門はフランス政治外交論、国際関係論など。パリ第一大学博士課程修了。日仏政治学会理事長、駐仏公使などを歴任。著書に「現代フランス」など。63歳。
◇  ◇
〈アンカー〉強い政権基盤構築は不透明

 英国のEU離脱決定、トランプ米大統領誕生に続く3度目の「まさか」への警戒心は欧州で根強かった。モイジ氏の「母国の予想外の復元力に安心した」との発言に典型的な仏知識層の思いがにじむ。

 デルマス氏はマクロン氏が労働市場改革などに取り組む立場を評価する。ただ楽観論には危うさも潜む。選挙公約を実行できるか、6月の議会選挙で強い政権基盤を築けるかなど不透明な点は多い。ルペン氏の支持層の不満をどう解消するのかも課題だ。

 EUの求心力維持は仏独の連携がカギ。EUでの発言力を高めるうえでも、仏経済の活性化は重要な意味を持つ。

(刀祢館久雄)

[日経新聞5月9日朝刊P.6]


 

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