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カタール危機で一層複雑化する湾岸政治 岡崎研究所(WEDGE)
http://www.asyura2.com/17/kokusai19/msg/895.html
投稿者 赤かぶ 日時 2017 年 7 月 18 日 10:15:05: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

カタール危機で一層複雑化する湾岸政治
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/10093
2017年7月18日 岡崎研究所 WEDGE Infinity


 英フィナンシャル・タイムズ紙のラックマンが、6月19日付の同紙で、カタールの問題は世界的影響を持ち、湾岸諸国が繁栄を謳歌してきた時代の終わりかもしれないと述べています。主要点は次の通りです。

 過去6年アラブには二つの世界があった。シリア、イラク等では問題が続き、他方カタール、アブダビなどは世界のレジャー、ビジネス、金融ハブとして繁栄してきた。湾岸諸国の繁栄は、他の地域の暴力的な状況とは無縁であった。

 しかし二つの世界の区別がなくなっている。サウジ、バーレーン、エジプト、UAEが、カタールを封鎖する行動を取った。理由は同国が地域のジハード運動を支援しているということである。シリア等と違って、湾岸諸国は世界経済を揺るがし、この地域の安全保障問題は世界に影響を与える。

 湾岸諸国の経済的役割は国の規模を超えている。カタールは世界最大の液化天然ガスの輸出国だ。カタール投資公社は大手銀行や欧州企業の大株主だし、大投資家でもある。2022年にはW杯を主催する。ドバイは中東での主要な訪問都市になり、世界一高いビルを擁し、エミレーツ航空は世界最大級の航空会社だ。アブダビ投資公社は総額8000億ドルの資産を持つ世界第二の政府系ファンドである。サウジは中東最大、最強の国で、世界最大の石油産出国だ。

 緊張は以前から増大していた。サウジはカタールが独立して国際舞台で活躍することを快く思って来なかった。特にムスリム同胞団に好意的なカタールのアルジャジーラ放送をサウジは忌み嫌った。またカタールがイランと過度に接近していることも問題とされた。イランに対する恐怖はサウジとUAEがイエメンでの紛争に介入する要因にもなった。カタール封鎖の皮肉な結末は、カタールがイランとの関係を更に緊密化させることかもしれない。

 通常であれば米国が調停に乗り出すが、トランプはサウジ側に付いている。彼は先月サウジを訪問した際、サウジ主導の封鎖に事前の承認を与えた可能性がある。他方、国務省、国防省は、米国の中東最大の空軍基地がカタールにあることも有り、より中立的な姿勢を打ち出している。カタールに米軍基地がなかったら同国はサウジの軍事介入にもっと脆弱だっただろう。

 サウジとUAEが如何なる決着を描いているかは明らかでない。早期に紛争を解決しないと、軍事紛争化の危険があるし、封鎖による経済的打撃も大きい。カタール問題は、湾岸諸国が他の中東地域で起きている悲劇から隔絶され、繁栄を謳歌してきた時代の終わりを示しているかもしれない。

出 典:Gideon Rachman ‘The Qatar crisis has global implications’ (Financial Times,
June 19, 2017)
https://www.ft.com/content/7bfa0d0a-5444-11e7-9fed-c19e2700005f

 カタール危機は世界経済に多大の影響を与え、また湾岸諸国の今後の協力に疑問符を投げかけるものです。更に米軍の中東司令部が置かれているカタールの動静は中東全体の安全保障にも影響を与えます。石油輸入の8割以上を中東に依存し、大量の天然ガスを同国に依存する日本にとっても重大事です。

 紛争の早期解決、鎮静化が必要です。クウェートが調停しているということですが、米国務省、国防省との連携の下に功を奏することを期待したいと思います。問題は調停者がすべて当事者になっていることです。トランプはツイッターで自分の手柄のように書いていますが、軽率な大統領の対中東外交だとのそしりをまぬがれません。米国が動けなければ英国ですが、英国はEU離脱問題でそれどころではありません。残念ながら世界は秩序を失っているようです。

 如何に妥協を図るかは簡単ではありません。また対立の沈静化が図られたとしても、しこりは今後長く残るでしょう。特に湾岸諸国の外交関係は多分に個人化されたものであり個人的感情が重要な要素です。更にラックマンが指摘するように、今回の紛争を通じてカタール・イラン関係が一層深まるかもしれません。また従来から政治、軍事関係が緊密化していたトルコは、在カタール駐留部隊(現在100人)の増強を決定しました。両国はエジプトの軍事クーデターに共に反対する等、主要な問題について同様の立場を取って来ました。今回の対立により湾岸政治は一層複雑化しました。

 今回の行動はサウジのサルマン皇太子(31歳)が主導したものといわれています。カタールに向けられた措置は極めて深刻なものです。サルマンの行動は行き過ぎたのでしょうか。長年の我慢がUAE等との連携の下に、トランプの理解を得て爆発したということでしょう。国王、皇太子など湾岸の新しい王制国家指導者の間の人間関係が絡んでいる可能性もあるのではないでしょうか(カタール首長も若い)。

 在カタール米空軍基地が軍事介入の抑止になっているとのラックマンの指摘は興味深いです。確かにそういう意味合いがあります。カタールにとってトルコ軍の駐留も同様の意味合いがあるでしょう。

 中東の構図は徐々に、しかし確実に変化しています。中東は長年アラブ対イスラエルという構図で仕切られ、米国がコントロールしてきました。アラブは一つの大国家になっても不思議ではない位一体でした。しかし冷戦が終わり、湾岸諸国などが裕福になり、夫々がナショナリズムに目覚め、国家利益に基づく国際関係を行う度合いが強くなっています。今回のような対立はかつて予想されもしなかったことです。中東でも国家のアイデンティティは益々強くなっているようです。

 

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