★阿修羅♪ > 国際20 > 892.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
トランプ政権が進める核・ミサイル防衛政策見直しの行方(前編) (WEDGE)
http://www.asyura2.com/17/kokusai20/msg/892.html
投稿者 赤かぶ 日時 2017 年 11 月 01 日 11:58:45: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

トランプ政権が進める核・ミサイル防衛政策見直しの行方(前編)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/10992
2017年11月1日 村野 将 (岡崎研究所研究員) WEDGE Infinity


 トランプ政権は2017年1月の発足直後から、国防政策に関する包括的な見直しを実施している。その土台となるのは、ホワイトハウスを中心に策定される「国家安全保障戦略(National Security Strategy:NSS)」と、国防省を中心に策定される「国家防衛戦略(National Defense Strategy:NDS=これまでの4年毎の国防政策見直し(Quadrennial Defense Review:QDR)に代わるもの)」であるが、そのほかに機能別の各種政策見直しも行われている。

 中でも注目されるのが、核戦略や核兵器の戦力態勢に関する文書である「核態勢見直し(Nuclear Posture Review:NPR)」と、「ミサイル防衛見直し(Ballistic Missile Defense Review:BMDR)」である。これらの文書は、早ければ年内にも公表されるものと見られているが、その様相は過去8年間のオバマ政権のものとは大きく異なるものになると見込まれている。以下では、北朝鮮や中国、ロシアとの関係も見据えながら、トランプ政権の核・ミサイル防衛政策の方向性と、日本の安全保障への影響について考えてみたい。

オバマ政権の核政策から大きく転換か

 NPRとは、5〜10年間の米国の核政策、核能力、核戦力態勢を定める報告書で、過去3回(クリントン政権:NPR1994、ブッシュ政権:NPR2001、オバマ政権:NPR2010)策定されている。(ただし、その全文が明らかにされたのは前回のNPR2010だけであり、NPR1994とNPR2001には公開版と同時に、国家安全保障上限られた人のみに回覧される非公開版が作成されてきた。トランプ政権のNPRでも、公開版にどの程度具体的な内容が書き込まれるかは定かではない)

 NPRの策定プロセスは国防省を中心に行われるものの、核兵器の維持・管理や近代化を管轄するエネルギー省国家核安全保障局(NNSA)や、ロシアや中国との軍備管理などを担当する国務省など、省庁横断的な政策調整を行うのが通常であり、特に今回は統合参謀本部も積極的に協議に参加し、現場(軍)の意見を吸い上げることを重視している。

 NPRの実務上の取りまとめ役となるのは、核・ミサイル防衛政策を担当する国防次官補代理(現政権ではロバート・スーファー氏がこのポストにある)だが、今回はポール・セルヴァ統合参謀本部副議長、フランク・クローツNNSA長官、クリストファー・フォードNSC上級部長(WMD・不拡散)などがそれぞれの立場から関与する他、著名な核戦略家として知られるキース・ペイン・ミズーリ州立大教授やフランクリン・ミラー元大統領顧問などが助言役として重要な役割を果たしているとされる。

 これ以外にも、トランプ政権での見直し作業には、かつてブッシュ政権でNPR2001の策定に関わったスタッフが多く参画している。中でもペイン教授は、核兵器を柔軟に使用できる態勢を整え、限定核戦争を戦ってでも米国の勝利可能性を高めることこそが、相手への抑止に繋がるとの立場をとることで知られてきた。このことに鑑みても、トランプ政権におけるNPRは、「核のない世界」を標榜し、核の役割低減を目指したオバマ政権のNPR2010から大きく方向性を変え、柔軟な核戦力の使用やミサイル防衛など戦力の総合的強化を志向するという点において、ブッシュ政権のNPR2001を彷彿とさせる内容に回帰することが予想される。

ブッシュ政権時代との違い

 だがこれだけをもって、トランプ政権の核政策がブッシュ政権の方向性と完全に一致すると見積もるのは時期尚早だ。というのも、ブッシュ政権が精密誘導可能な5キロトン以下の低出力核(※同プログラムは中止された)やミサイル防衛など、「実弾が飛び交う状況」を想定した戦力構築を重視した背景には、ロシアのような伝統的核大国を主要な脅威と見なすのではなく、大量破壊兵器(WMD)の拡散とそれに加担する「ならずもの国家」やテロ組織などの非対称脅威を、核を含む総合的戦力を構成する上での潜在的脅威と位置付けていたからである。

 ブッシュ政権のNPR2001が物理的な攻撃・防御能力に由来する「ハード・アプローチ」を重視していたとすれば、オバマ政権のNPR2010は「ソフト・アプローチ」で問題解決を図ろうとしていた点が特徴的であった。NPR2010では、「核テロの防止」と「核不拡散」を政策目標の最優先事項として位置づけるとともに、安全保障における核兵器の役割低減を進めることで、世界の安全に寄与するとの方向性が打ち出された。

 ここで合わせて振り返っておくべきなのは、米国の核政策の力点をこうした方向にシフトさせる前提として、NPR2010 には米国と核をめぐる大国間の戦略環境が一定程度改善するだろうという前向きな評価が内在していたという点である。オバマ政権発足当初に標榜されていた「米露リセット(関係改善)」などのフレーズは、まさにそれを象徴したものであった。

 ところが、過去8年間に生じた様々な国際情勢の変化はそうした期待に沿うものではなかった。

 ロシアは、2014年のクリミア侵攻を筆頭に、核戦力の増強によってNATOに対する通常戦力の劣勢を相殺しようとしており、戦略核だけでなく、1987年の中距離核戦力(INF)全廃条約に違反する地上配備型巡航ミサイル(GLCM)の実戦配備を開始している。中国は、残存性の高い移動式ICBMの配備により着実な対米抑止力を強化しつつ、西太平洋における米軍の介入を阻止・妨害する能力(A2/AD)として、各種ミサイル戦力を拡充している。そして北朝鮮に対する「戦略的忍耐」は失敗し、日本や韓国を射程に収める数百の短・中距離弾道ミサイルばかりか、今や米本土を捉えるICBMを手にしようとしている。

 こうした現実は、オバマ政権のNPR2010が前提としていた戦略環境が実現していないことを象徴しており、トランプ政権の政策担当者の間で、核兵器をめぐる問題が再び国家間のパワーゲームに回帰しているとの認識を呼び起こしている。

「核の三本柱」の維持、近代化を

 このことから、トランプ政権のNPRでは、米国の核政策の最優先事項を再び「核抑止」に引き戻し、総合的な抑止力を高めるための様々な方策が具体化される見込みである。以下に、その代表的なものを列挙してみたい。

 第一は、ICBM、戦略ミサイル原潜(SSBN)+潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)、戦略爆撃機からなる「核の三本柱」の近代化を着実に継続することである。具体的には、ミニットマン3・ICBMやオハイオ級SSBNの後継となる新型のデリバリーシステムの更新予算を確実に確保し、新型ステルス爆撃機B-21の開発を続行することを指す。オバマ政権では、NPR2010や新START条約における実戦配備済み戦略核を1550発以下にするとの約束の下、各種デリバリーシステムの再編が行われた。この一環として、本来核弾頭を3発搭載できるミニットマン3を単弾頭化するとともに、2018年までにその配備数を450基から400基にまで削減することが決定され、米国の核戦力態勢はトライデントD5・SLBMを相対的に重視する形にシフトしていった経緯がある。

 一般的に、弾道ミサイルの射程と命中精度は、SLBMよりも地上配備型のICBMに優位がある場合がほとんどであるが、トライデントD5は、SLBMでありながら1万2000kmに及ぶ最大射程と誤差90mと言われる極めて高い命中精度を誇ることから、ICBMを全廃して予算を削減し、その分をB-21とSSBN+SLBMの更新に回して「二本柱」とした方が効率的との意見も見られた。しかしながら、セルヴァ統合参謀本部副議長やハイテン戦略軍司令官は、依然としてICBMを含む「三本柱」を維持し、これらの近代化を続けることの重要性を繰り返し強調している。また既に米空軍はノースロップ・グラマンとボーイングに対して、現行のミニットマン3よりも命中精度、指揮統制、整備のしやすさなどの諸点を向上させた新型ICBMを試作するよう依頼していることを踏まえると、ICBMが突然の“脚切り”にあうことは考えにくいと言えるだろう。

 またこれ以外にも、精密打撃が可能な戦略ミサイルシステムに爆発力の極めて小さい核弾頭を搭載するオプションも合わせて検討されていると言われている。これも現政権でNPRの策定に関わっている専門家の顔ぶれを見れば、十分に考えられることだ。

 命中精度の高い低出力核弾頭と即応性の高い弾道ミサイルの組み合わせは、核兵器が実戦使用される閾値が低下するという側面だけを捉えると、懸念すべき傾向に映るかもしれない。しかし、現在北朝鮮が複数保有している移動発射基(TEL)搭載のノドンや、固体燃料式SLBMである北極星1型をベースに開発された北極星2型、更にはそれらをベースに開発しうる非脆弱な移動式ないし再装填可能なサイロ式ICBMを北朝鮮の山岳部に複数配備された場合、これらを通常兵器で撃破することは極めて難しくなるという現実も直視する必要がある。

 こうした状況を打開するためには、核を先制使用せざるをえなくなるケースが想定されるが、ミニットマン3に搭載されているW87核弾頭の出力は300キロトン、トライデントD5搭載のW76-1でも最低100キロトン(※広島型原爆が約15キロトン)と極めて爆発力が大きいことから、付随被害を抑えて武装解除に使用する場合のハードルは自ずと高くなってしまう。他方、核爆弾を搭載可能な戦術航空機(Dual Capable Aircraft:DCA)の進出速度の遅さを踏まえると、DCAと戦術核の組み合わせは即時的武装解除には適していない。その点、弾道ミサイル搭載の低出力核は即応性と適格な破壊力を併せ持つことになる。

 実際、ミニットマン3を米中西部のサイロから発射する場合であれば40分以内、トライデントD5をグアム周辺海域から発射する場合であれば18分以内に目標を撃破することが可能だ。これは韓国の烏山基地や青森の三沢基地に配備されている戦術航空機が北朝鮮上空に到達するよりも早く、迎撃される恐れもないという点で、強力かつ迅速な打撃力となることも念頭に置いておくべきだろう。同様の文脈から、オバマ政権末期に検討された核兵器の先制不使用(No-First Use:NFU)が宣言される可能性も極めて低く、むしろ核の先制使用オプションを維持することの重要性が強調されることが予想される。

開発継続をめぐり論争が続いてきた「LRSO」

 第二は、LRSO(Long-Range Standoff Weapon)の開発継続である。LRSOは、B-52戦略爆撃機に搭載する空中発射型核巡航ミサイル(ALCM)=AGM-86Bの後継となるミサイルである。日本では殆ど報じられることはなかったが、実はLRSO開発継続の是非をめぐっては、長らく米国の国防コミュニティ内で論争が続いてきた。

 オバマ政権はNPR2010の中で、海洋発射型核トマホーク(TLAM-N)を完全退役させ、その再配備オプションを放棄する代わりに、前方展開させる航空機搭載型核兵器を更新・保持し続けることで抑止力を保証することを約束した。LRSOの開発はその代替措置の1つであったが、2015年に入りウィリアム・ペリー元国防長官らがその開発中止を訴えたことで問題が表面化した。ペリーの訴えが注目を集めたのは、同氏が冷戦期にALCMの必要性を説き、開発を推進した張本人だったからだ。元々ALCMが開発されたのは、ソ連の防空網の発展に伴い、目標に接近して核攻撃を行うことが困難になったB-52に対して、新たに防空圏外からスタンドオフ核攻撃を行うオプションを与えるためであったが、今日ペリーらは核搭載ALCMを残すことは相手が通常攻撃と核攻撃を誤認する危険があると主張。更に、今後開発されるB-21のステルス性があれば、敵の防空網に侵入して攻撃することが可能であるから、かつてのようなALCMは必要ないと訴えたのである。

 しかしながら、防空システムの拡散・高度化やカウンター・ステルス能力の発展を鑑みると、未だ開発されていないB-21に過度に依存するのはリスクが高く、まして敵のA2/AD能力によって、危機や有事の際にステルス機を前方展開させるのが一時的に難しくなる状況が徐々に生起しつつある。したがって、B−21の運用を想定した場合でも、グアム以東から2500km超のALCMを発射できるオプションを確保しておく意義は大きい。これは同盟国に差し掛けられる拡大抑止を支える、切れ目のないエスカレーションラダーを確保する点からも重要であり、現在の見直し作業の中でLRSOの重要性がきちんと評価されていることは、同盟国として評価すべき点と言えるだろう。

核兵器の老朽化と新型核爆弾の需要

 第三は、F-35の核運用能力と航空機搭載型の核爆弾の統合・近代化に関連する。F-35は米国のみならず、我が国の航空自衛隊を始め、各国で採用が始まっている最新鋭のステルス・マルチロール機であるが、現在米国やNATO諸国で、いわゆる核共有(nuclear sharing)メカニズムの中で戦術核のデリバリーシステムとして使われているDCA(※具体的には、ベルギー、オランダ、トルコのF-16と、イタリアのトーネードIDS)の老朽化・退役に伴い、それをF-35によって更新する意味合いもあることから、F-35にも核運用能力を付与することを予定してきた。ところが、現有のDCA用戦術核爆弾(B61-3/B61-4)はその大きさからF-35の胴体内部に設けられているウェポンベイ(爆弾槽)に収めることができない。F-35はあらゆる兵装を機体内部に搭載することによって、レーダー反射断面積(RCS)を減らし高いステルス性を実現しているため、核兵器を内部に収められなければ、そのステルス性が宝の持ち腐れとなってしまう。そこで、F-35の運用に適合する新型核爆弾の開発が求められていた。

 こうした新型核爆弾の需要は、核兵器の老朽化問題とも関連している。現在米国が保有する核弾頭は、最新のものでも1989年に製造されたものであるため、歴代政権は核兵器としての確実な作動を保証するとともに、安全管理に支障をきたさないよう、その信頼性と耐用年数維持のための延命措置(Life Extension Program:LEP)を講じてきた。2013年には、余剰核弾頭を適切に削減しつつ、LEPを通じて効率的かつ安定的な核備蓄を実現することを目指した構想が提唱され、弾道ミサイル用に設計された5種類の核弾頭と、戦略爆撃機およびDCA用の7種類の戦略核・戦術核兵器を、3種類のICBM・SLBM用核弾頭と、2種類の航空機用核兵器に統合・更新することが決定された。その1つが前述のLRSOであり、もう1つが新型核爆弾B61-12である。

 核兵器の設計を担当するサンディア国立研究所の関係者によれば、B61-12は0.3 〜1.5〜10〜50キロトンと核出力を4段階に変更でき、なおかつGPSとレーザー誘導によって誤差30mの命中精度を実現する初の精密誘導核爆弾とされ、既に旧B61シリーズからの更新がかなり進んでいるという。そしてこのB61-12はF-35のウェポンベイに収まるよう設計されている。つまりF-35は、機体側のシステム統合と、新型核爆弾の更新をもって2024年頃にDCA能力を獲得することになる。

 だがトランプ政権内では、このF-35のDCA能力獲得時期を前倒しすべきとの議論が出てきている。F-35のDCA化前倒しは、核共有を行っている欧州正面において、ロシアがINF条約に違反するGLCMを配備し始めていることを筆頭に、核使用に至る閾値を下げつつあることに由来している。現在NPR策定に関わっている関係者によると、NATOにおける核運用の柔軟性を高め、既存のDCA運用国の負担を分散・軽減するためDCA提供国を増やしたり、ロシアの限定的な核エスカレーションに対して通常戦力の残存性を高めるとともに、S-500のような先進的防空システムを突破しうるステルス機による戦術核攻撃能力を確保すべきとの議論が出ているという。これらの議論は、あくまで欧州正面でロシアの各種拒否能力が高まっていることを背景したものだが、西太平洋に目を向けた場合、中国の防空能力やA2/AD能力が高度化しつつあることを踏まえると、F-35のDCA能力獲得時期が早まることは、危機時に取りうるオプションを広げるという意味において日本の安全保障にもプラスに作用するだろう。


図表1 米国の核戦力態勢と日本に与える影響(筆者作成)

INF条約をめぐる米ロの攻防

 第四に注目されるのは、上述したロシアのINF条約違反に対抗して、米国もINF条約に縛られることなく、同水準のミサイルシステムを新規開発するかどうかという点だ。INF条約とは、1987年に米ソ(露)二国間で締結された史上初の特定兵器全廃条約である。同条約に基づき、両国は核・非核にかかわらず、地上発射型の射程500〜5500kmの弾道ミサイル、巡航ミサイルを全廃しており、現在でも新たなINFの生産・実験や発射基の保有が禁止されている。

 ところが、ロシアは2007年頃からINF条約に違反する巡航ミサイルの実験を行っている疑いが強まり、2014年には米国務省による軍備管理のコンプライアンスに関する年次報告書の中で、ロシアが条約に違反するGLCMを有しているとの評価が公に下された。そして2017年3月には、セルヴァ統合参謀本部副議長が議会公聴会において、「ロシアは当該GLCMを既に実戦配備しており、(中略)それは欧州にある我々の施設のほとんどにリスクをもたらすもので、(中略)脅威を与える目的でロシアが意図的に配備したと考えている」と証言するに至っている。


図表2 INF条約違反とされるロシアのGLCM(射程2000kmと推定)が各地に配備された場合のイメージ
(出展:Steven Pifer,"Multilateralize the INF problem," Brookings, March 21, 2017.)

 これに対し、米国の国防コミュニティでは上記のコンプライアンス報告が公表された2014年頃を境に、INF条約の今日的意義をめぐる戦略論争が活発化してきた。当時それらの主張は、戦略環境に対する現状認識や、INF条約対象国を米露以外に広げて条約の多国間化を図ることへの実現可能性に対する評価の違いから、従来通り条約を堅持すべきとする「INF条約堅持派」と、条約の脱退やINF水準のミサイルシステムの再配備を検討する戦略的柔軟性を確保すべきとする「INF条約脱退派」とに大別されていた。しかし2017年に入り、ロシアによるGLCM配備が確実となったことで、上記の論争は「条約堅持派」の前提を踏まえつつも、「条約脱退派」が提言してきたような、積極的な対抗手段を検討すべきとの議論がより受け入れられるようになってきている。

 既に米議会では、ロシアのINF条約違反に米国としてどのような対抗措置をとるべきかの議論が具体化されており、FY2015-16国防授権法は、INF条約を遵守しつつも、国防省と統合参謀本部は米国と同盟国を守るため、各種攻撃・防御手段を検討し、彼我の情報評価を議会と同盟国に報告・提供することを義務付けている。セルヴァ副議長は「検討内容の詳細は機密事項」として公表していないものの、現在議会で予算化が進められているFY2018の国防授権法案では更に内容が具体的になり、「法案成立後120日以内に、国防長官は、トマホーク、SM-3、SM-6、LRSO、ATACMS(陸軍戦術ミサイルシステム)を射程500〜5500kmの核・非核両用の地上発射型・移動式ミサイルに改修するためのコストとスケジュール、実現可能性を検証するとともに、同種のシステムを新規開発する場合と比較考慮して議会に報告すること」を義務付け、その報告を経て研究開発予算6500万ドルを授権するとの条項が盛り込まれている。

 ただし、同条項が認めているのは、あくまでINF条約に違反しない範囲での研究開発だ。また、国務省やホワイトハウスでも「ロシアのGLCMを相殺するには、航空機や水上艦・潜水艦から発射するミサイルでも十分であり、米国が進んで条約を脱退するメリットはない」との声も根強い。しかしそうした声を押しのける形で、米国がINF水準の地上発射型ミサイルシステムを再開発・再配備していく方向に進んでいくとすれば、西太平洋正面においても米陸軍や海兵隊が長射程の対地・対艦攻撃能力を保有する可能性を広げ、チョークポイントの封鎖や列島線防衛への貢献を拡大する余地が生まれてくる。またINF問題は、日本が導入を検討しているイージス・アショアの潜在的な拡張性にも間接的に関連している。この点は、後述するトランプ政権のミサイル防衛見直し(BMDR)の方向性と合わせて考察することとしよう(後編へ続く)。


 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

▲上へ      ★阿修羅♪ > 国際20掲示板 次へ  前へ

フォローアップ:


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法

▲上へ      ★阿修羅♪ > 国際20掲示板 次へ  前へ

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
 
▲上へ       
★阿修羅♪  
国際20掲示板  
次へ