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改憲の論点2:歯止めなき衆院解散権の是非 今だから知りたい 憲法の現場から 内閣の解散権は「国民のため」にある 
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投稿者 軽毛 日時 2017 年 1 月 19 日 00:56:45: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

改憲の論点2:歯止めなき衆院解散権の是非

今だから知りたい 憲法の現場から

内閣の解散権は「国民のため」にある
2017年1月19日(木)
神田 憲行、法律監修:梅田総合法律事務所・加藤清和弁護士(大阪弁護士会所属)
 今月20日から通常国会が招集され、自民党は衆参両院の憲法審査会の場で、改憲項目の絞り込みを進めるという。

 憲法改正を論ずるとは、この国の望ましい統治機構の在り方を模索することでもある。憲法改正の必要はあるかないかという入り口の議論ばかりではもったいない。具体的な論点についての議論を重ねれば、たとえ改正に至らなくても、国民の憲法に対する意識や「この国のかたち」について考えが進むはずだ。

 政治家たちが憲法問題を政局化せず正面から論じ、国民はその議論を追いつつ、自らの見識を深めていく。憲法改正論議は私たち国民にまたとない政治教育の場となるだろう。

 各党・議員の発言の中には、興味深い憲法改正の論点が含まれている。いずれも改正するかしないかは別として、そのような議論そのものが議会制民主主義の発展に資するものである。

 前回の「参議院の合区解消」に続き、今回取り上げる論点は、「内閣の衆議院解散権の拘束」だ。
(前回記事「改憲の論点1:参院合区と一票の格差の狭間」から読む)


安倍首相は2014年11月、消費増税の延期を含むアベノミクスへの信認を争点に、衆議院の解散・総選挙に踏み切った。(写真:AP/アフロ)
司法判断が下されてない衆院の7条解散

 「内閣の衆議院解散権の拘束」という論点も重要である。

 現在、衆議院をいつ解散させるのかは内閣の専権事項とされている 。総理大臣の胸の内を忖度して、政治記事の中に「解散風が吹いてきた」のような表現が使われることも珍しくない。解散があるのかないのか、総理大臣周辺の議員が記者と禅問答のようなやりとりをすることもある。

 しかし内閣の解散権が憲法上、どのような根拠に基づくのか、憲法学の世界で長く議論の対象になってきた。

 憲法で内閣が解散できる場合を明示しているのは69条しかない 。

《69条 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない》

 この条文からわかることは、内閣が衆議院を解散できるのは、内閣不信任案が可決されるか、信任案が否決されたときである。戦後 、衆議院の最初の解散はまだ占領下にあった1948(昭和23)年12月23日に吉田茂内閣のもとで行われた。GHQが69条のみの解散に限定されるという解釈を示したため、与野党の話し合いで野党が内閣不信任案を提出して可決し、解散した(なれあい解散)。

 しかし戦後2回目は1952(昭和27)年8月28日、吉田首相が憲法69条によらず、同7条3号を根拠に解散をした(抜き打ち解散)。

《7条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行う。
 三 衆議院を解散すること》

 7条は天皇の国事行為を定めた規定であり、天皇は政治的権能を有しないから、これを根拠に解散することができるのだろうか。衆議院議員の苫米地義三氏は「抜き打ち解散」の無効の訴訟を提起した。だが最高裁は1960(昭和35)年、

《衆議院の解散は、極めて政治性の高い国家統治の基本に関する行為であって、(中略)、その法律上の有効無効を審査することは司法裁判所の権限の外にありと解すべきことは(中略)あきらかである》

 と、いわゆる「統治行為論」を示して憲法判断を回避した(苫米地事件)。ここでも司法はボールを政治に投げ返している。

憲法学では「7条を根拠にした解散も可能」

 憲法学では7条を根拠にした解散も可能としている。

《「天皇が国政に関する権能」という性質を持たないのは、助言・承認権によって内閣が実質的決定権を有するからである。ゆえに、解散権についても、それが天皇の国事行為とされていることから、内閣が実質的決定権を有すると解される》(野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利著『憲法U』)

 もっとも「7条解散説」が一点の曇りもなく論理的に明快かというとそうでもなく、日本憲法学の権威である故・芦部信喜東京大学名誉教授は著書の『憲法』の中で、

《この問題は、そもそも憲法の条文の不備に由来するもので、どの見解(注・解散を根拠づける論理)が正当であるかを決めることは難しい》

と指摘し、樋口陽一東京大学・東北大学名誉教授も結論は常識的に妥当としながらも、その論理的問題点を指摘している。

 7条解散が政治的慣行として確立しているのは、衆議院の解散がリアルタイムに民意を反映する効果があると考えられたからである。議会が常に解散の脅威にさらされている方が、議員たちに常に民意を意識した行動を取らせることが可能になるのではないか、との考え方だ。

 たしかに日本では、野党が重大な案件について、内閣に解散をして民意を問え、と要求することも多い。だがヨーロッパでは自由な解散には批判が寄せられ、議院内閣制のモデルであるイギリスも2011年に解散権を制限する法律を制定した。

 では内閣総理大臣が解散権を憲法69条に限らずに行使できるとして、その限界はないのだろうか。裁判例では1986年の衆参同日選挙について、国政上、国民に改めて信を問うべき場合に当たらないので憲法15条1項・3項、42条、47条等に違反すると裁判が起こされたケースがある。だが名古屋高裁は翌年、衆議院の解散は「統治行為」に当たると最高裁判例を踏襲し、選挙に関する事項は法律事項(憲法47条)であり、選挙の基本理念を侵害しない以上、公選法に同日選禁止規定を設けるか否かは立法政策の問題だとするなどして、訴えを退けた。

「総理大臣の胸先三寸でご破算」とはいかがなものか

 憲法学では、69条に縛られない内閣の解散権を認めつつも、一方で、党利党略、内閣の一方的な理由による解散はやはり不当だとして、総理大臣の解散権行使が許されるケースとして、「69条の場合」「総選挙の争点でなかった新たな重大な政治課題に対処する場合」「内閣が基本政策を根本的に変更する場合」などに限るべき、としている。

 これまでの憲法審査会で民進党の武正公一氏は前回の衆議院解散を「『いまのうち解散』とされたことは解散権の乱用」と発言している。

 また法学や政治学などの専門家でつくる「立憲デモクラシーの会」も、前出のイギリスの例を引きながら解散権を見直すべきだとする見解を公表した。

 内閣(総理大臣)には69条の場合に限定されない自由な解散権があるとして、それが無制限にいつでもOKというのは、憲法学云々を脇に置いても直感的に疑問がおきないだろうか。衆議院選挙は多大な費用と人手が要る。そうやって国民が総動員して投票したものが、敢えて言えば総理大臣の胸先三寸でご破算になる、というのはどうなのか。

 内閣の解散権が69条にのみ限定されないとしても、党利党略にもとづく恣意的な解散は許されないということは、7条の「国民のために」という文言からも理解されよう。このような憲法の精神を尊重してきた慣行を「憲法的習律」という。

 内閣の解散権の行使についてどのように考えるのか。この機会に各政党、各議員に今一度確認したい。

*1月20日公開「改憲の論点3:抑止力としての憲法裁判所の意義」に続く


このコラムについて

今だから知りたい 憲法の現場から
日本国憲法が揺らいでいる。憲法解釈を大きく変更した安保法が国会で成立し、自民党はさらに改憲を目指す。その根底にあるのが「押しつけ憲法論」だ。だが日本国憲法がこれまで70年間、この国の屋台骨として国民生活を営々と守り続けてきたのも事実だ。本コラムでは、憲法史上に特筆すべき出来事が起きた現場を訪ね、日本国憲法が果たしてきた役割、その価値を改めて考えていく。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/120100058/122800011

   

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コメント
 
1. 戦争とはこういう物[1779] kO2RiILGgs2CsYKkgqKCpJWo 2017年1月19日 13:51:28 : 9PG0M0b68Q : jKnbezZWN40[422]
 憲法論議など本質的に始まっても居ない。
真剣に論議するなら、前大戦の責任主権者の廃止問題から論じなければならない。
前大戦を起こした反省に基づく平和主義に手を付けるなら、前主権者の追放は必須となるはずだ。
現在「祖父は戦犯被告」のア㋭そーりが進めたがる所謂「改憲」とやらは、再軍備の言い訳でしかない。
本音は「戦前をトリモロス」事としか考えられない。

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