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「やりがい搾取」の共犯?文科省公認の天職信仰 「民泊」解禁どころか後退へ、経産省の不作為 すべる経産省 シェア後進国
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投稿者 軽毛 日時 2017 年 2 月 28 日 00:24:09: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

「やりがい搾取」の共犯?文科省公認の天職信仰
河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学
大学キャリア教育と成功者の体験談が招いた誤解
2017年2月28日(火)
河合 薫
 今回は「アルバイトにはお金以上の“価値”があるか?」について、アレコレ考えてみる。
 個人的な見解を先に述べると、「ある」と言えばあるし、「ない」と言えばない。
 私は「時給が高い」という理由で、学生時代に家庭教師をしていた。単なる「お小遣い」稼ぎ。それ以上でも以下でもなかった。今思えば、かなり恵まれた学生生活を送っていたのだと思う。
 なので何一つ、バイト、への期待はなかった。家庭教師をすることが、自分にとってどういう意味や価値があるかなんて、微塵も考えなかった。
 だが、実際に家庭教師をやってみるといろいろな出来事があり、子どもに教えることで自分が学び、子どもの家庭で毎週2時間も、面と向かって過ごした経験は私の大きな財産となった。
 とはいえ、それらはバイトをしているときに気付いた価値ではない。
 年を重ね、社会人として仕事をしているうちに、「ああ、あのとき……」といった具合に記憶の箱から引っ張り出され、“価値”あるものとなったに過ぎない。つまり、すべて後付け、である。
 ところが、最近はバイトをする当事者である学生たちが、リアルタイムで「その価値」を考え、バイトをやるうえでの「モチベーション」にする時代になってしまったようだ。
 アルバイト情報「an」と金城学院大学の学生が共同で、次のような動画CMを作成し、物議をかもしているのである。
 カフェのバイトでコップを割り、店長らしき人物に叱られ落ち込む学生。「気にしなくていいよ」と先輩が励ますけど、元気が出ない。
 そこにやってきた常連のお客さんが声をかけた。
「なんか元気そうじゃないね。キミに珈琲を入れてもらうと、いつも商談がうまくいくんだよね。だから笑顔で頼むよ」
「ありがとうございます!」元気になる学生。
「よかったね」と駆け寄る先輩……
「アルバイトにはお金以上の価値がある」
「これ、やりがい搾取じゃん!」
 動画は3本作成されていて、これは「主人公編」だ。残りの2本は全く同じ状況を、「主人公を心配していた先輩」と「内定をもらえなかった学生の客」の視点で捉え、同時に公開された。
 ブラックバイト、恵方巻きノルマ、といった「アルバイト」に関する報道に加え、“やりがい搾取”が問題になっているご時世だ。
 「お金以上の価値」なんてフレーズを使えば、待ってました!と言わんばかりに、ネット界の突っ込み隊が暴れ出す。その予想どおり「あるわけねーだろ」というツイートと共に、一気に拡散し、
「これ、やりがい搾取じゃん!」
「ありえね〜」
「ブラックバイト推進運動か?」
「やりがい、なんて余裕ある時代の話。今の学生は生活のためにバイトすんだよ!」
などなど、批判の嵐となった。
 ……、学生たちが言わんとしていることはわかる。
「バイトで失敗すると、メチャ落ち込む〜」
「うん、折れる」
「自分では一所懸命やってるのに、タルんでるとか言われちゃって〜」
「マジ、折れる」
「でもさ〜、そんなときお客さんから感謝されたりすると、ちょっと元気でるんだよね〜」
「そうそう。こんな自分でも、誰かの役にたってるんだ、ってメチャ救われる〜」
「やりがい!」
「そう、やりがい!」
「うん、やりがいのある仕事って、いいよね!」
「……アルバイトにはお金以上の価値がある……」
 なんてやりとりの末、できあがったCMなのだろう(完全なる私の妄想ですので、あしからず)。
 とかくいまどきの学生たちは、過剰なまでに「失敗」を恐れる。
 失敗とは言い切れないほど些細なことでさえ落ち込んだり、わからないことがあっても「こんなこと聞いたら、ダメなヤツって思われるから聞けない」などと子羊のごとく怯えたり。
 
 感度の高いセンサーを持つ若者は、“オトナ世界”が、たった一回の失敗でも「ダメなヤツ」「使えないヤツ」とレッテル貼りするのを知っているのだ。
 なので上記の動画が「失敗」から始まっているのは、実に“今”らしいし、先輩を出演させたのも、“仲間至上主義”の学生らしい。と同時に、「しんどいけど、こんないいこともあるよ!」というのも、小さな幸せ探しに長けている今どきの学生らしい、真っすぐすぎるほど素直な演出である。
“結実”した文科省のキャリア教育政策

 そもそも、今の学生は「やりがい」が大好き!
 かつての「好きな仕事探し」「自分にあった仕事探し」は、「やりがい」という言葉に集約され、彼らは「やりがい」という言葉を頻発する。
「CAとお天気キャスターって、どっちのほうがやりがいがありましたか?」だの、
「銀行とメーカーって、どっちのほうがやりがいがあるんでしょうか?」だの、
答えようがない質問を、何度学生からされただろうか。
 なぜ、彼らは「やりがい」にこだわるのか?
 はい、そう教育されたからです! 
 そう。これぞ、大学のキャリア教育の賜物。文科省の下で進められてきた「キャリア教育」が、10年の月日を経て、見事に“花開いた”。
 2006年11月に文科省が作成した「小学校・中学校・高等学校 キャリア教育推進の手引」には、それぞれの発達段階で目標とされるべき「キャリア教育」が示されている。
 高等学校のそれは、
「生きがい、やりがいがあり自己を活かせる生き方や進路を現実的に考える」
「自己の職業的な能力、適性を理解し伸ばしていく」
など。
 書いてある理念そのものには、さしたる問題はない。が、“やり方”が悪かった。その結果、「考える」が「探す」になり、「理解し伸ばす」が「自己分析する」に成り変わった。
 大学が就職への“通過地点”になってしまったことで、どこの大学もキャリア教育に異常なほど力を注いでいることは、改めていうまでもない。
 とりわけ地方の大学は必死だ。大学の生き残りをかけ地元の企業や高校と連携し、キャリア教育を進めているケースも多い。こういった取り組みは学生にとってもプラス面も多く、決して悪いことではない。
 オトナたちが企業、大学、高校の枠を超え、学生のこと、地域のこと、をアレコレ考える。その作業に私も関らせていただいたことがあるが、率直に「いいな」と感じた。
 もちろんこれまで何度も書いているとおり、大学の本業は「学問」と個人的には思っているので、キャリア教育に過剰なまでに力を入れる流れには合点できない部分も多い。だが今回は、ソレをアレコレ考えるのが主たるテーマではないので、そこは「おいといて」先に進める。
 えっと、つまり、地域を巻き込んだキャリア教育は、教科書的に行われる「キャリア教育」と違い、“人との交流”の中で行われ、オトナも学生も「自分たちの住んでる町」のことを考えるので、結果的に、ソーシャル・キャピタルを豊かにするいい試みだと思った次第だ。
すると、学生たちはショックを受ける
 問題は、「人生の先輩」による講義形式のキャリア教育である。
 私自身、何度もやった。講義の目的が「キャリア経験をオトナが話す」というものなので、どうしたって自分のキャリアを振り返り、記憶の箱をこじ開け、「働くということは、お金を得るためだけのものではない」という話になる。
 仕事を選ぶという作業は、人生に多大な影響を及ぼす大切な行為だ。ただ、私の場合、大学を出るときには「キャリア意識」の“キ”の字もなく、結果的に今のキャリアになっただけなので、
「仕事なんてものは、やりたいとかやりたくないとか関係なく、やらなくてはならない仕事が9割。自分のやりたい仕事なんてできるのは、10年たってからだ」だの、
「石の上にも3年」だの、
「何も考えずに目の前のことをやってきただけ」だの、
「目の前のことがきちんと出来ない人が、夢もへったくれもあったもんじゃない」だの、
「好きな仕事というのは、働いているうちに見つかるものだ」だの、
働いているオトナであれば、誰もがわかっている“超現実”を話すことになる。
 すると学生たちはショックを受ける。「そんなこと誰も言ってくれなかった」と。私が話すような“現実”は、ブラックだの、昭和の精神論だと言われ、世間では批判されているのでビビる。
 なので「どうしてもしんどくなったら逃げろ」と、で「どうしても助けが必要になったら、連絡して」と、ひとりの“友人”としてメッセージを伝えると、緊張した顔がやっと和らぐのです。
 つまり、文科省指導のマニュアルに基づき、「生きがい、やりがいがあり自己を活かせる生き方や進路を現実的に考える」という美しいキャリア教育を散々受け、いわゆる成功者”とされる方々が、「やりがい」の重要性を謳い、後付けでしかない「価値」、後付けでしかない「成功体験」を誇示するので、彼らは「夢」を見る。
 「好きな仕事」は探せばあると信じ、「やりがいのある仕事」ができる仕事に就けば、輝かしい人生の扉を開くと期待する。
 そんな“天職信仰”に取り憑かれている若者が量産されている“今”だからこそ、「仕事を斡旋する側」が、「やりがい搾取」をイメージさせるキャッチを使ったらダメ。
 もちろん「アルバイト」というのがン十年前の“学生”にとってもそうだったように、お金目的であることが前提で、「でもね、それだけじゃないよ〜」「働くって、こんなこともあるんだよ」というメッセージを伝えたかっただけなのかもしれない。
 それでもやはりNG。「お金以上」という文言は危険だ。せめて「お金以外」にすべきだった。
もはや、「たかがバイト」ではない
 なぜ、「ブラックバイト」という言葉が生まれたのか? 
 アルバイトをする学生の中には「お小遣いのため」ではなく、「生活のため」に働いている学生も多い。学費はかなり高くなっているし、親の賃金も上がっていないので仕送りも減少した。返済地獄に陥りたくないとの不安から、奨学金申請をためらう学生もいる。
 おまけに、昨今の労働市場を精査すると、「たかがバイト」ではないこともわかる。
 企業はやっかいな「派遣社員」を減らし、手軽な「パート・アルバイト」を増やす方向にむかっているのだ。

(出所:厚生労働省)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/022400093/graph1.PNG

 その傾向を踏まえ、先週発表された「2016年分の労働力調査(詳細集計)の速報結果」(総務統計局)を見てみると、学生のバイトが実際に増えていることがわかる。
 正規社員は2年連続の増加だが、非正規は7年連続で増加している。非正規の前年比の増減率を年代別にみると、
「15〜24歳」=4.3%増
「25〜34歳」=3.8%減
「35〜44歳」=2.3%減
「45〜54歳」=3.1%増
「55〜64歳」=0.2%増
「65歳以上」=12.0%増
となっていて、団塊の世代の定年退職などにより増加傾向にある65歳以上の高齢者を除くと、「15〜24歳」の伸び率が最も高い(非正規には、パート・アルバイトも含まれる)。
 また、「ブラックバイトユニオン」のHPによると、「フルタイムで働くフリーターの増加も、学生アルバイトの位置づけを変えた」とし、
「かつては正社員だけがやっていたような責任の重い仕事が、学生アルバイターのような低賃金の非正規雇用労働者にも押し付けられるになってきた。これを、「非正規雇用の基幹化」と言う」
と記されている。
 学生のバイトにノルマを課したり、欠勤に罰金をとったり。そういった問題も、「バイトがたかがバイトではなく、社員並みの労働を期待している」からこそ起きている問題なのだ。
 たかがバイト、されどバイト。
 バイトはもはや、バイトではない。
 「アルバイトにはお金以上の“価値”がある」は、雇う側が決して口外しない“心のセリフ”なのだ。
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このコラムについて
河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学
上司と部下が、職場でいい人間関係を築けるかどうか。それは、日常のコミュニケーションにかかっている。このコラムでは、上司の立場、部下の立場をふまえて、真のリーダーとは何かについて考えてみたい。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/022400093

 


「民泊」解禁どころか後退へ、経産省の不作為

すべる経産省

シェアリングエコノミー後進国に忍び寄る圧力
2017年2月28日(火)
井上 理
 自宅を他人に貸すホームシェアリング、いわゆる「民泊」を国内でも合法的に実現しようと、観光庁を中心に「住宅宿泊事業法案(民泊新法)」の整備が進む。法案は既に自民党による審査に入っており、政府は3月10日前後の閣議決定、今国会での成立を目指している。

 この民泊新法について、一般には「民泊解禁へ」と報じられている。だが実態は解禁どころか、その逆。むしろ、国内に根付きつつある民泊が後退しかねない。

 民泊業界からは、「シェアリングエコノミーという新産業の振興を後押しすべき経済産業省は何をやっているのか」との恨み節も聞こえてくる。そのはず、民泊に関して経産省は何もやっていないに等しい。まずは、経緯をおさらいしよう。


日本では届け出のない「闇民泊」が急増している。写真は外国人に人気という大阪府内の物件(写真=山田 哲也)
 一般人が自宅を旅行者に貸すとしても、現状では旅館業の登録やフロントの設置などを義務付けている「旅館業法」の順守が求められる。だが、インターネットやアプリを介して気軽に貸し借りできるプラットフォームが世界的に普及。自宅を貸す「ホスト」の多くは旅館業法を無視した違法状態にあるのが実情だ。

 こうした状態を改善し、ホストが貸しやすい制度、宿泊する「ゲスト」が安心して利用できる制度を作ろう、というのが、そもそも民泊解禁の議論の発端だった。

 2013年、国家戦略特区諮問会議は、特区で民泊を解禁する方針を示し、昨年から東京都大田区など一部自治体では、旅館業法が定めるフロントの設置や、一部の提出書類を省いても民泊として営業可能となった。次いで、全国的な解禁に向けた作業が進む。これが民泊新法だ。

 ところがこの法案は、民泊を推進したい勢力からすれば目を疑うような内容であることが最近、明らかとなったのだ。

世界の趨勢の逆をゆく日本の民泊新法

 新法はまず、ホスト(住宅宿泊事業者)への規制を定めている。都道府県知事への届け出を義務付け、かつ、ゲストへの宿泊サービス提供の上限を年間180日以内と定めている。加えて、「外国語による説明」「宿泊者名簿」「年間提供日数の定期報告」「標識の掲示」といった適正な遂行のための措置もホストに義務付けている。

 これに眉をひそめるのが、民泊世界最大手のAirbnb(エアビーアンドビー)だ。エアビーが民家などへ送った宿泊者数は2008年の創業以来、世界で1億5000万人を超えた。同社の関係者はこう漏らす。

 「世界の多くの都市では、年間上限までは無届け・無許可で営業可能。法案は一般人ホストからするとガチガチ。シンプルで誰にでも分かりやすく、利用しやすい法律にはなっていない。例えば70歳のおばあちゃんが亡くなった旦那の寝室を気軽に貸せるような制度ではない」

 例えば英ロンドンでは年間上限90日まで、米フィラデルフィアでは同90日、仏パリでは同120日までであれば、無届けで自由に自宅をゲストに貸すことができる。オーストラリアでは民泊を法律の適用除外とする法案が通り、一切の規制が排除された。ポルトガルでは届け出が必須だが上限規制などはなく、ゲスト向けのオンライン登録制度も極めて簡潔のため、物件数が急増しているという。

 しかし、日本の新法は、こうした世界の趨勢と逆行するように、一般人のホストに対して過剰な負担を強いるものになっている。すべてのホストに届け出を義務化するだけでも世界からしたら珍しいのだが、その他の義務付けも壁が高い。

 最たるものが、標識の掲示。詳細は煮詰まっていないが、住宅宿泊事業者の届け出番号や氏名、連絡先などが書かれたステッカーのようなものを、玄関などの見える場所に掲示することを義務付ける方向で議論が進んでいる。「ひとり暮らしの女性はどうするのか。危険ではないのか」。そういった声に、法案を担当する観光庁の官僚は「仕方がない」と答えたという。

 国内でも民泊仲介のトップをゆくエアビー。そこに掲載されている都内の物件数は1万7000超、大阪府内は1万2000超あるが、その多くが無許可で旅館業法の規定違反と見られる。一般人ホストは、旅館業法が定める煩雑な登録作業を回避しているからなのだが、新法が施行しても、これでは結局、無届けの違法民泊物件が減らない、との指摘が民泊の現場からは噴出している。

 話はこれで終わらない。新法は新たに、エアビーなどの仲介業者への規制も盛り込まれる。この新たな規制により、エアビーが事実上の撤退に追い込まれる可能性すら出てきた。

 新法はまず、エアビーのようなホストとゲストを仲介する事業者に対して、観光庁長官への登録を義務付けている。さらに、「信義・誠実に義務を処理」「不当な勧誘等の防止」といった適正な遂行のための措置も義務付け、守られない場合は立ち入り検査や登録の取り消しといった行政処分が課せられることになる。

 適正な遂行のための措置をどう読み解くのかにもよるが、エアビーは数万件ある違法物件の多くを削除せざるを得ない状況に追い込まれる可能性がある。そうなれば、エアビーは日本市場から撤退を余儀なくされるかもしれない。法案はそうした含みを残した。

 表向きは「民泊解禁」の顔をしながら、実態は「民泊後退」、もしくはエアビーの締め出しを迫る新法。なぜ、こういう帰結になろうとしているのか。理由は明白。ホームシェアリングという新たな市場に怯えるホテル・旅館という旧市場。そこと蜜月にある観光庁が法案作成の主体だからである。


シェアリングエコノミーの関連省庁と関係図。民泊は観光庁と厚生労働省の主導で新法制定が進む

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/022400113/022700002/p3.png

 民泊の利用が進むいずれの海外の国・都市も、ホームシェアリングという新市場をいかに健全に育てるか、を主眼に制度を整えてきた。ところが日本では、旧市場をいかに守るか、という議論が先行している。

 実は、国土交通省傘下の観光庁だけではなく、衛生面で監督する厚生労働省もホテル・旅館業界と蜜月。観光庁は厚労省と密接に連携しながら法案準備を進め、前提となる委員会・検討会などでは、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)などの業界団体が徹底抗戦を仕掛けていた。

 新勢力に怯えるホテル・旅館業界の顔色をうかがいながら新法を作れば、規制・後退色の強いものとなるのは自明。結果、新市場の勢力からすれば、極めて難解で利用しにくい制度となってしまいそうなのだ。

 こうなってしまった遠因として、もう一つ、「経産省の不在」も挙げられる。エアビー関係者は言う。

 「当初は新産業の振興を担う経産省に大きな期待を寄せていたが、結局は何もしてくれない。もはや、経産省に行くことはほとんどなく、もっぱら観光庁や厚労省と付き合っている」

経産省不在の政策議論

 経産省は、シェアリングエコノミー協会という社団法人を監督している。協会には、シェアリングエコノミーに関連する国内ベンチャーのほか、エアビー日本法人や、ライドシェア世界最大手、米ウーバーテクノロジーズの日本法人、ウーバージャパンも名を連ねる。

 だが、新産業の監督官庁である経産省は、民泊新法にほとんどかかわることができずにいる。

 やったことと言えば、シェアリングエコノミー協会と連携する形で、「シェアリングエコノミー促進室」の設置に手を貸したことくらい。促進室は、内閣官房傘下のIT総合戦略室内に設置され、その役割を「情報提供・相談窓口機能のほか、自主的ルールの普及・促進、関係府省等との連絡調整、ベストプラクティスの紹介、その他のシェアリングエコノミーの促進に関する取組を推進」としている。

 要するに、シェアリングエコノミーに関連する事業者や個人向けの「相談窓口」。民泊新法に関する委員会や検討会は、観光庁と厚労省の主導で進められ、本丸の政策議論について経産省は蚊帳の外だった。

 なぜ、経産省は新産業の創生を前に、すくむのか。

 「経産省がやると出ていけば、(観光庁などの)他省庁は頑なになるんですよ。例えば経産省が『民泊研究会』を作ってやるといったら、もう絶対に話が先に進まない。経産省がダイレクトに行って物事が遅くなるなら、行かないほうがいい。僕らは、シェアリングエコノミーを推進するという目的を達成すればいいんです」

 経産省幹部はこう話す。すくんでいるわけではなく、シェアリングエコノミーを推進するための、あえての戦術が「攻めない」というわけだ。しかし、それでは「攻める」連中にやられてしまう。

 22日、自民党は民泊新法の審査に入ったが、ホテル・旅館業界に近い議員からの物言いが相次ぎ、了承は持ち越しとなった。前述のように民泊業界の現場からはかなり厳しい法案なのだが、「宿泊提供の年間上限を30日以下にすべき」と主張する旅館業界を擁護する声が噴出した。

 さらに新法が定める年間上限の180日はあくまで、国としての上限。自治体はこの上限を条例によって低くすることができる建て付けになっているが、旅館業界に近い自民党議員からは「条例で制限できるという法的根拠を法律に盛り込むべき」といった声も出たという。

 これでは、「宿泊提供の年間上限はゼロ日」という自治体が出かねない。政府の規制改革推進会議が翌23日に開いた会合では「民泊の普及を阻害する可能性がある」との指摘があった。シェアリングエコノミー協会も同日、声を上げる。

 同協会は23日、「民泊新法の在り方に関する意見書」を公表。「住宅宿泊仲介業者(プラットフォーマー)は登録制にすべきではない」「宿泊提供の上限日数制限に反対する」「標識の掲示は家主の個人情報をさらし、家主自身の安全を脅かす」などと表明した。

 しかし、経産省は例によって黙したまま。現状、アクションを起こすことができていない。ところが、安穏としてはいられなくなる事態が海の向こうで起きつつある。

米国勢の圧力、尻ぬぐいするのは経産省


グーグルなどが加盟する米最大のIT業界団体、インターネット・アソシエーションが2月24日(米国時間)に公表した声明文
 米グーグルやフェイスブックなどが加盟する米最大のIT業界団体、米インターネット・アソシエーションは米国時間の24日、日本のシェアリングエコノミー政策を痛烈に批判する声明文を公表した。照準は、民泊新法。以下、内容を抜粋する。

 「今、ホームシェアリングのプラットフォーム事業者を規制する動きが広がっている。仮に誤った規制がまかり通れば、せっかくのイノベーションと経済成長が阻害され、後退しかねない事態につながる」

 「日本政府の方針には、登録されたプラットフォーム事業者に厳しい義務を課すことによって、日本国内、そして他国でホームシェアプラットフォームの運営を目指す事業者を排除する可能性が含まれている。これは競争と消費者の選択を大幅に制限するばかりか、イノベーションの妨げとなる」

 「日本の政府がシェアリングエコノミーを公的に支援すると表明しつつ、同時にプラットフォーム事業者の自発的な抑制を検討するという矛盾をはらんだ動きだ」

 これとは別に、「民泊新法の内容が、世界貿易機関(WTO)協定違反の疑いがあるとして、既に米大使館などが動いている」(業界関係者)という話も出てきた。エアビーのような仲介業者を締め出すような規制は、外資の自由参入を認めるWTO協定に背いている、という指摘だ。

 米国の環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱で、今後、米国との2国間貿易交渉が本格化する見込みだが、こうした「インターネットサービス業の排除」についても米国が槍玉に挙げる可能性がある。そうなれば、尻ぬぐいをさせられるのは経産省である。

 何もしないことが戦略と評価されるのか、それとも「不作為」と断罪されるのか。少なくとも新勢力は、経産省の「介入」を待望している。


このコラムについて

すべる経産省
 政権を支える内閣官房だけでなく、他省庁へも数百人規模で人材を送り込む経済産業省。首相の安倍晋三も、経産省やその出身者に信任を寄せる。彼らがこの国を「統べる」存在といっても過言ではないだろう。しかし、活躍の舞台は広がれど、担い手である官僚の視野は狭く、結果が「スベる」ことも少なくない。深掘りすると、「判断を誤る」「攻めない」「守りきれない」「見ていない」という課題が見えてくる。一方、経産大臣の世耕弘成は「担当外、民間にも介入する」と、積極姿勢を打ち出す。ニッポンの産業が復活し、世界で勝つために、経産官僚は何をすべきか。自動車、電機、エネルギー、シェアリングエコノミーとあらゆる産業政策を検証する。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/022400113/022700002/
 

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