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石原慎太郎も逆らえなかった東京都庁に巣食う「パワー」の正体 豊洲大赤字 移転中止は絶対あり得ない!地下水「基準」問題真相
http://www.asyura2.com/17/senkyo222/msg/759.html
投稿者 軽毛 日時 2017 年 3 月 23 日 10:48:39: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 


2017年3月23日 窪田順生 [ノンフィクションライター]
石原慎太郎も逆らえなかった東京都庁に巣食う「パワー」の正体

東京都の百条委員会に証人として出席した、石原慎太郎、浜渦武生両氏。責任逃れ発言に落胆したとの声がもっぱらだが、豊洲移転案の経緯や臨海副都心開発の歴史を振り返れば、石原氏の言うような「都知事でさえ逆らえない大きな流れ」が実際にあったことが分かる。(ノンフィクションライター 窪田順生)

石原元知事の責任逃れ!?
百条委員会での発言

 ここ数日、メディアや評論家の間で、石原慎太郎氏と浜渦武生氏の「百条委員会」にガッカリしたという意見がたくさん出ている。


石原元知事の発言を一面的に「責任逃れ」とだけ解釈してしまえば、重要な事実を見逃すことになる。都知事すら逆らえない「大きな流れ」は実際に東京都に存在するPhoto:Natsuki Sakai/AFLO
 確かに、お二方の話は従来の主張通りで、東京ガスの瑕疵担保責任免除がどういうプロセスで決定されたのかというのは、まったく見えなかった。落胆する気持ちは分からなくもない。

 しかし、そういう表層的なところだけではなく、彼らが発した言葉を一つひとつ咀嚼してみると、実は今回の豊洲問題の「元凶」が見え隠れしていることに気づく。

「都庁全体の流れとして、市場を豊洲に移すということは、大きな流れとして決定していて、私も逆らえなかった」(石原慎太郎氏)

「豊洲しかないからという話はあった」(浜渦武生氏)

 これらの発言を、マスコミの多くは「責任逃れ」的なニュアンスで紹介している。

 石原氏就任の直後に市場長に就いた大矢実氏は百条委員会で、自分が豊洲と築地の比較対照表を提示したうえで豊洲がいいと決断し、石原氏が「それでいこう」と言った、という主旨のことを述べている。ということは、自分たちで強引に豊洲移転を決めておいて、土壌汚染が問題になったから急に知らぬ存ぜぬになっているのではないか。そう疑いの目を向ける方も多いだろう。

 私は、石原氏と浜渦氏をかばうつもりなどさらさらないが、お二方は特に間違ったことは言っていない、と思っている。彼らが都庁へやってくるずいぶん前から、東京都のなかに、豊洲へ市場移転をする「大きな流れ」というのが確かに存在していたからだ。

不特定多数の「豊洲移転」論が
いつの間にか既定路線に

 これまでもちょくちょく報じられたが、東京都が「豊洲移転」を匂わせ始めたのは、まだ石原さんが国会議員だった1995年にさかのぼる。

『東京魚市場卸協同組合五十年史』には、市場当局と港湾局が協議し、港湾局から大田区の城南島、江東区の豊洲への移転の可能性を示唆された、という記述がある。

 このあたりを境に、官・民・学が一丸となって「豊洲移転」を持ち上げていく。97年になると、大蔵事務次官から国際開発銀行総裁となった平田敬一郎氏が顧問を務め、学者と若手官僚が集まった「乃木坂研究会」が、「中央卸売市場を晴海または豊洲地区へ移転・整備するためのコンセプトと具体的な計画案」(97/10/02 日経流通新聞)を出した。

 さらに、これに触発されるような形で、98年3月になると、築地市場の卸や仲卸など業界八団体が「豊洲地区(江東)への移転の可能性を検討するよう都に要望」(98/03/10 日本経済新聞)する。

 はっきりとした顔の見えない、不特定多数の「思惑」によって、徐々に築地移転という道は「豊洲」に続くように誘導されていくのだ。

 石原氏が「百条委員会」で豊洲の土地選定について「青島知事からの引き継ぎだった」と述べているように、豊洲移転のレールは石原氏が99年に当選した時点では、既にビタッと敷き詰められていたのである。

 いや、移転は決まっていたかもしれないが、これまでも「城南島」とか「晴海」などの名前が出ているじゃないか、そっちへ行かず、東京ガスの跡地なんかに強引に決めたというのは、石原・浜渦コンビに何か利権的なものがあったからだろ、という人もいるだろう。

 もちろん、その可能性もなくはないので、そこはぜひ立派なジャーナリストのみなさんに調査報道で明らかにしていただきたいのだが、一方で、このお二方の力をもってしても覆すことのできない「都庁の大きな流れ」というものが、実際にあったというのも紛れもない事実である。

豊洲新市場誕生を後押しした
東京都の「忖度」の中身

 それは具体的に言ってしまうと、「臨海副都心構想を進めるのなら、新市場を江東区へもっていってあげよう」という、東京都の「忖度」である。

 なぜ、都が江東区の顔色を伺わなくてはいけないのかということをご理解していただくためには、バブル真っ盛りの頃に時計の針を戻さなくてはいけない。

 東京都が「臨海部副都心開発基本構想」をぶち上げたのは87年。ちなみに、石原氏はまだ国会議員として清和会に合流したあたりで、浜渦氏も公設秘書として、永田町のど真ん中にいた。

 都心から約6キロの東京湾埋め立て地(440ヘクタール)に国際化、情報化に対応した副都心を2000年までに建設しようというこの構想は、今からは考えられないほどバブリーな開発規模や費用だった。

 なぜこんな超巨大プロジェクトが可能になったのかというと、都による「調整」がうまくいったからである。

 というのも、実はこの開発の中心となる「13号埋立地」(現在のお台場エリア)は「領土問題」に揺れるパレスチナのような存在だったのだ。結局、問題は以下のように解決した。

「13号埋立地を江東区、港区、品川区が帰属を譲らず、最後は東京都の調停により、江東区7割、港区2割、品川区1割で決着を見たのです」(江東区ホームページ・区政最前線〜区長室から〜平成28年4月)

 この分割案が82年に受け入られたことで、臨海副都心開発構想は大きく動き出した。つまり、東京都にとって13号埋立地の「7割」の帰属を持つ江東区というのは、臨海副都心開発を進めていくにあたって常に顔色をうかがわなくてはいけない存在となったのだ。

「都」が「区」に気を遣うなんてことがあるわけないだろ、と思うかもしれないが、江東区に限ってはある。それを如実に示すのが、87年当時、都心と臨海副都心をつなぐ新交通システム(現在のゆりかもめ)が新橋〜お台場間までしか想定されていなかったことに対して、小松崎軍次区長(当時)が不満をもらして臨海副都心と江東区を結ぶ路線を求めた際に発したこの言葉だ。

「臨海部の埋め立て地は投棄ゴミの通過道となった江東区の犠牲の上に完成したことを忘れてもらっては困る」(87/11/07 朝日新聞)

臨海副都心誕生の「功労者」
江東区への“配慮”

 年配の方は覚えているだろうが、戦後から70年代にかけて「東京ゴミ戦争」というのがあった。都民の生活水準が上がって大量のゴミが出ると、それらはすべて夢の島の最終処理場へ向かったが、通り道の江東区は悪臭などが問題になっていた。都は新たな清掃工場をつくろうとしたが、杉並区が住民の激しい抵抗で拒否。それを受けて、江東区は杉並区からのゴミの受け入れを拒否するという事態に発展した。その時、夢の島へ続く道路に仁王立ちするという力技でゴミ受け入れを阻止をしたのが、先の小松崎区長だ。

 つまり、江東区というのは、臨海副都心開発をしていくうえでの、そもそもの大前提である「湾岸エリアの埋め立て」の最大の功労者であり、同時に最大の犠牲者だったのだ。

 政治や行政が「犠牲者」になにかしらの「優遇措置」を与える、というのは米軍基地のある沖縄や、原発を誘致した自治体を見ても明らかだ。当初、市場の移転先として候補として名前が挙がった「城南島」は大田区、「晴海」は中央区である。「犠牲者」である江東区が優先され、これらの名前が候補から消えるのは、ある意味で当然だった。

 そう考えていくと、臨海副都心構想の進捗とまるで足並みをそろえるように、築地の移転先として「豊洲」が本命になっていくという不可解な動きが理解できる。

 臨海副都心の開発推進を公約にして99年に知事になった石原氏は就任直後、「お台場カジノ構想」をぶち上げる。これが江東区の神経を逆なでした。

 シェアや歴史的経緯で言えば、「13号埋立地」の盟主は江東区になるはずだった。だから、江東区は「臨海部の将来のシンボルゾーンにふさわしい町名になるように」という願いを込めて、「青海」というこじゃれた地名をつけた。しかし、注目の新都知事が「お台場」という表現をメディアに繰り返し用いたことで、あのエリア一帯は「青海」ではなく、「お台場」という港区のイメージが強くなってしまったのだ。

 その後、「ゆりかもめ」は小松崎区長の求めたとおり、豊洲までつながった。パレットタウンや大観覧車のおかげで「青海」も賑わっているが、それでもあの一帯は「お台場」と呼ばれることが多い。

 臨海副都心開発という「大きな流れ」を進めていくなかで、「犠牲者」が冷遇されている現状に鑑みて、東京都庁の内部で「新市場はとにかく豊洲へ」という「忖度」が生まれた可能性はないか。

隠然たる権力を振るってきた
東京都港湾局

 事実、東京都政がこのような「大きな流れ」にめっぽう弱いことを示す事実がある。実は臨海副都心開発構想は91年に頓挫しかけたことがある。バブル崩壊によって地価が下落、地代収入が急激に落ち込んで資金難に陥ったのだ。都議会もノーを突きつけて予算凍結。この一大プロジェクトも幻に終わるのかと思われた時、副知事を委員長として発足した臨海副都心開発再検討委員会が全体のスケジュールを3年遅らせば実現できると言い出した。

 その副知事は高橋俊龍さん。港湾局の出身である。

「お台場カジノ」や「東京ガス跡地」の印象があまりにも強いので、港湾まわりの利権というと、石原氏や浜渦氏がすぐに結び付けられるが、彼らは所詮、明治時代の「東京市」から100年続く港湾開発の、ほんの一時期に登場したプレーヤーにすぎない。

 この連載でもかつて述べたが(「小池知事が豊洲騒動で見せた巧みな情報操作術とは?」参照)、湾岸エリアの事業、先ほど触れた埋立地案件も含めて、すべて港湾局の「縄張り」である。それは豊洲もしかりで、 『「豊洲」という地名も、工事を担当した東京市港湾局が賞金百円で職員から募集して選んだといわれる』(朝日新聞99年9月13日)という戦前からの深い因縁がある。

 東京ガスと浜渦氏の水面下の交渉を追及するのもいいが、この人が交渉にあたる前から、臨海副都心開発の旗振り役をしていた今沢時雄港湾局長が、東京ガスに顧問として天下りし、取締役の席に座っている。

 石原・浜渦コンビのキャラクターの強さについつい目を奪われがちだが、こうして経緯を丹念にたどっていくと、東京都港湾局がしばしば“豪腕”を振るっていたことが分かる。石原氏が言及した、都知事さえも逆らえない「都庁内の大きな流れ」を、単に石原氏の責任逃れと捉えてしまっては、東京都庁の抱える闇をみすみす見逃すことになるのではないだろうか。

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【第79回】 2017年3月23日 安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]
豊洲市場は大赤字!金融の視点で見える事業面での大問題

 築地市場の豊洲への移転については、東京都の小池百合子知事が昨年11月7日に予定されていた移転を延期し、予定されていた9回目の地下水モニタリング調査の結果を待って判断するとしていたが、その結果、基準値の79倍ものベンゼンを検出した地点が含まれるなど、従来移転の前提としていた都のコミットメントが果たせていないことが明らかになった経緯にある。さらに、3月19日に公表された再調査の結果は、更に悪化した部分もあるなど、芳しいものではなかった。
 ところで、豊洲移転の可否を決めるには、この環境基準の問題だけでなく、豊洲移転後の市場の持続可能性という「金融的な視点」も必要である。本稿では、主に金融の視点から見えてくる現実について論考してみたい。
豊洲移転の可否についての
2つの視点
 あらかじめお断りしておくが、筆者は豊洲移転の可否についてはニュートラルな立場である。また、本稿で述べる内容は筆者の個人的見解であって、小池知事ほか誰の意見をも代弁するものではない。ただ単に、既に公開されている資料の解読を試みるものだ。
 そもそも豊洲市場への移転の可否判断は、東京都だけで決められるものではなく、その前提として、農林水産大臣からの移転認可が必要だ(卸売市場法第10条)。では、その移転の認可を得るには、どういう条件が満たされる必要があるのだろうか。
 卸売市場法第10条には、以下のような記述がある(太字は筆者による)。
 (認可の基準)
 第十条  農林水産大臣は、第八条の認可の申請が次の各号に掲げる基準に適合する場合でなければ、同条の認可をしてはならない。
 一  当該申請に係る中央卸売市場の開設が中央卸売市場整備計画に適合するものであること。
 二  当該申請に係る中央卸売市場がその開設区域における生鮮食料品等の卸売の中核的拠点として適切な場所に開設され、かつ、相当の規模の施設を有するものであること。
 三  業務規程の内容が法令に違反せず、かつ、業務規程に規定する前条第二項第三号から第八号までに掲げる事項が中央卸売市場における業務の適正かつ健全な運営を確保する見地からみて適切に定められていること。
 四  事業計画が適切で、かつ、その遂行が確実と認められること。
 ここから読み取れることは、移転の認可を取得するためには、(1)生鮮食料品等を扱う上で適切な場所にあること、すなわち、環境的に問題がないこと (2)事業の継続可能性があること、の2点が必要だということだろう。
 このうち、環境に関しては本稿の目的ではないのでごく簡単に述べるが、そもそも豊洲の土地は東京ガスの工場跡地であったため、現在でも土壌汚染対策法上の汚染が存在する区域(形質変更時要届出区域)に指定されている。土壌汚染対策法は、土壌の特定有害物質による「汚染の除去」ができた場合には、形質変更時要届出区域の指定を解除すると定めているが、その「汚染の除去」が完了するためには、「地下水汚染が生じていない状態が2年間継続することを確認すること」が必要とされている。
 そういうこともあり、都は2014年から2016年11月まで、2年間の地下水モニタリング調査を行なってきたのだ。農林水産省の資料の中には、汚染が存在する区域である「形質変更時要届出区域」について「生鮮食料品を取り扱う卸売市場用地の場合には想定し得ない」と明記されたものもあり(http://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/syokusan/bukai_08/pdf/ref_data04.pdf、別添7に記載あり)、「地上」と「地下」は違うとはいえ、原則として地下をしっかり浄化することが移転認可の条件になり得ると考えることもできる。
 したがって、それを確認するための2年間の検証結果が出る前の昨年11月に市場移転をするという舛添前知事の判断は、明らかに行政手続きを逸脱していたのである。もともとその結果が判明するのは今年1月の予定であった。それから農水省に移転認可の申請をするのだから、正当な手続きを踏むならば、もともと移転は早くて今春以降にしかできなかったはずだ。
 また、土壌汚染が判明している土地に卸売市場を設置するという石原都知事のやや無理筋な判断を正当化し、都民に安心感を与えるため、歴代都知事は、議会と都民に対して「地下の土壌を環境省が定める環境基準以下にする」ということが事実上移転の条件であると繰り返しコミットしてきた経緯にある。そのため、これまで数百億円という巨費を掛けて土壌汚染対策を行なってきたのだ。もちろん、食品を扱う建物内と土壌はコンクリート等で覆われており、土壌を環境基準以下にしなくても必ずしも法令に違反しているわけではない。
 しかし、「安全」と「安心」は似て異なるものだ。たとえば、遺伝子組み換えのトウモロコシは、法令上「安全」かもしれないが、それを「安心」して買う消費者は極めて少ないだろう。歴代知事は、「安全」であることはもちろん、都民の「安心」を確保するために土壌を環境基準以下にするとコミットしてきたのであるから、それが守れずにいる現状、小池知事がいきなり従来のコミットメントを破るわけにはいかないのではないか。もし現状で移転をするというのであれば、都民ないしその代表たる都議会の承認を改めて得る必要があることは言うに及ばない。もちろん、それで東京都が移転に舵を切ることになっても、農水省が移転の認可を出すかどうかは定かではない。
 なお、「築地市場の方が不衛生だ」というような指摘も散見されるが、築地市場は、現在まさに使用されているのであって、今問題にされているのは「豊洲に移転するかどうか」の判断なのであるから、ここで築地のことを議論することは不要であるばかりか、むしろ不適切なのではないか。もちろん、築地市場は、それが使用されている間は、しっかりとした補修等を行なっていく必要があることは言うまでもないし、築地がどうであるかに関係なく、豊洲への移転に問題なければ移転すればいいのであるし、豊洲への移転に問題があるなら移転できないだけの話だ。
大幅なキャッシュフロー赤字の可能性大
豊洲市場に持続可能性はあるのか
 では、農水省の移転認可基準のもう一つである「持続可能性」はどうだろう。
 この問題については、小池知事になって再開された市場問題プロジェクトチーム(市場PT)の席で今年1月と2月に配布された資料( http://www.toseikaikaku.metro.tokyo.jp/shijyoupt05/06_keizokusei.pdf , http://www.toseikaikaku.metro.tokyo.jp/shijyoupt06/06_shijoukaikei.pdf )に数値の開示がある。市場の持続可能性、つまり事業採算の話は、これまで都議会で真剣に話し合われてきた形跡がない。しかし、前述のように、農水省の移転認可判断は市場の持続可能性も考慮に入れてなされるのであり、また、採算が取れない場合には赤字補填のための税金の投入が必要になる。
 まず豊洲市場単独の収支を検討してみよう(図1)。
◆図1:各市場の収支(豊洲市場は開場後概算額・減価償却費を除く)
出典:第5回市場問題PT資料 
http://diamond.jp/mwimgs/7/2/-/img_72f0311d17ac5cfb34bdcd5b4a7a30e1129960.jpg

 市場問題PTの資料からわかることは、豊洲市場は、開業後、毎年68億円の収入に対して費用が166億円、差し引き約100億円の赤字になるということだ。もちろん、費用の中には、現金流出を伴わない「減価償却費」も含まれているが、その71億円を仮に差し引いたとしても、やはり毎年30億円の赤字(キャッシュフロー赤字)となる。
 しかも、試算の前提として、豊洲市場は水産物で1日2300トン、青果物で1日1300トンの取扱量を想定している。しかし、図2に明らかな通り、築地市場の年間取扱高は年々減少しており、平成14年比で既に3割強も減少しているのである。
 1日あたりに直すと、図2の折れ線グラフのように、現在では築地市場の水産物の取扱量は1日1500トン程度と見られ、豊洲の目標値はそれに比べて50%以上も多いことになる。すなわち、豊洲市場は、開業後、計画通り年間100億円程度の赤字で収まるかどうかさえ甚だ疑わしく、しかもその赤字幅が年々拡大してもおかしくない。もちろん、豊洲市場は築地市場と比べて十分な駐車スペースの確保がなされているなど、優位な点もあるだろうが、それだけで一気に取扱量が50%も増えるとは考えにくい。
 ちなみに、現在の築地市場は年間6億円の黒字、減価償却費を入れないキャッシュベースの収支は年間18億円の黒字である。
◆図2:築地市場の取扱数量の推移(水産物)
出典:第5回市場問題PT資料
http://diamond.jp/mwimgs/6/2/-/img_62f041dec7218f69e6fae2150c471c25337363.jpg
 一方、東京都の市場会計は、図1の11市場を一体として捉えた事業運営をしている。したがって、もし豊洲市場が赤字であっても、他の市場の黒字でそれが相殺できるならば、豊洲市場の持続可能性は保たれることになる。
 その市場会計の今後の推移予想が図3である。
◆図3:市場会計による損益見込み

出典:第5回市場問題PT資料 
http://diamond.jp/mwimgs/f/6/-/img_f621ac26a64828c98588edabd6f5b88b248540.jpg

 豊洲の開業は平成28年を想定していた。そこで平成28年から先を眺めてみると、経常損益は毎年44億円〜140億円程度の赤字で推移することが見込まれている。しかし、従来の都の説明では、「(先述の)減価償却費を差し引いたベースでは、毎年22億円の赤字〜15億円の黒字で推移するので、市場会計は持続可能である」との結論になっている。
 しかし、ここには様々な数字のマジックがある。第一に、先述の通り、この収支の前提となる豊洲の取扱量が現在の築地に比べて非常に多いと仮定されていること、そして、それが減少しないことになっているのを現実的と見るのかどうかだ。
 では、仮にこの非現実的とも思える取扱量の前提が達成されたとしたら問題ないのだろうか。筆者は、図3の損益見込みを精査し、この表の裏側に隠されている「からくり」を取り除いた実力値で表を作成し直してみることにした(図4)。
◆図4:償却前収支について

http://diamond.jp/mwimgs/9/4/-/img_94956e52b96b9ed1a3748550320491f3302831.jpg

 金融業界では、事業収支の実力値や事業の継続可能性を測る際には、補助金や一時的な損益や、減価償却費など「非現金項目」を除き、逆に、設備の修繕費など、損益に関係なくてもキャッシュフローに影響する項目を算入する。それと全く同様の手法に従うまでだ。
 図4からわかることは、以下の通りだ。
 (1)事業の実力を示す営業利益段階では、豊洲開業後は毎年73億円〜171億円の赤字であり、その赤字は毎年拡大を続ける
 (2)営業損失から減価償却費を除いた「償却前営業利益」は毎年22〜29億円程度の赤字と、一見小さく見えるが、建設改良費と呼ばれる設備投資が毎年50億円かかるため、キャッシュフローは毎年79〜117億円もの赤字となっている
 (3)経常利益には、一般会計からの毎年20億円もの補助金が入っているほか、築地の土地を売却したと仮定した場合の一時的な利息収入が11〜44億円含まれており、これらを控除した実力値で見ると、営業利益と変わらない大きな赤字を計上し続ける
 (4)都の主張では、「償却前経常利益」は「毎年22億円の赤字〜15億円の黒字で推移するので、市場会計は持続可能である」とされているが、実際には、これら補助金や一時的な利息収入を除いた「実力償却前経常利益」は、毎年19〜69億円の赤字であるほか、これに設備改良費を入れると、キャッシュフローは毎年68億円〜126億円の赤字になる
 筆者は銀行勤務時代にはプロジェクトファイナンスを手掛けてきたが、その経験からすると、この事業は大幅なキャッシュフロー赤字であり、しかも、プロジェクションの前提となる市場取扱量の仮定が甘すぎて、単独では到底持続可能とは思われない。毎年のキャッシュフロー赤字は、誰かが埋めなければ市場は持続できない。誰が埋めるかと言えば、それは東京都民の税金ということになる。
大きなキャッシュフロー赤字を
税金で賄うことが許容できるのか
 以上のように、豊洲市場が持続可能かどうかは、ひとえに都民が毎年の大きなキャッシュフロー赤字を税金で賄うことが許容できるかどうかにかかっている。しかも市場は、一度稼働を始めてしまうと、次の50年、100年固定化してしまう恐れが高い。東京都の人口もそう遠からず減少に転じ、税収も減っていくと予想されている。そんな中、東京都が毎年巨額の赤字を補填し続けることが本当に可能なのかどうか、都民ないし都民の代表たる都議会で慎重に審議すべきは当然である。
 仮に、都民が、豊洲市場では土壌の環境基準を満たさなくても良く、かつ、毎年巨額の税金を支払って赤字補填してもいいと言うのであれば、選択肢はクリアである。それで農水省の認可が下りるのであれば、晴れて豊洲に移転すればよい。
 しかし、仮に都民が、環境ないし税金投入のいずれかを許容できない場合はどうするか。現在実際に使用されている築地市場を改修するのか、それとも「第三の道」を模索するのか、その場合、豊洲の土地の再利用、それに関わる都市計画はどうするのか。また、築地の改修は可能なのか。
 小池知事が豊洲移転を一旦ストップしたことが、豊洲市場に係る環境面や持続可能性面の問題点を都民に開示するきっかけとなった。透明性を重視する小池知事らしい判断だ。仮に結果的に予定通り豊洲に移転することになったとしても、そういう問題点があることを都民が十分理解した上で実行されることがとても重要だと筆者は考える。今後、都庁及び都議会において、ファクトを踏まえた実り多い議論がなされることに期待したい。
(ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長 安東泰志)

http://diamond.jp/articles/-/122154?


 

【第166回】 2017年3月23日 高橋洋一 [嘉悦大学教授]
豊洲移転中止は絶対あり得ない!地下水「基準」問題の真相


重要な石原氏「地下水発言」
「基準」こそ混迷の要因だ

 3月20日、都の百条委員会に石原慎太郎氏が出席した。豊洲への移転を決めた責任を認める一方、当時の都庁幹部が重要局面では知事の了解を得ていたと証言していることについては「担当者に一任し、記憶にない」とした。

 ただ、豊洲移転は、青島都政からの引き継ぎであったことを明らかにした。また、地下水に厳しい基準を課したことは認めたが、小池都知事にはその基準にとらわれずに豊洲への移転を決断してほしいとも述べた。

 マスコミは「新しい事実が出なかった」と、石原発言を非難するが、筆者は、この石原氏による地下水発言こそ重要だと思う。これまでマスコミは、地下水から「基準」以上の有害物質が検出されたという記事を報道してきた。この「基準」こそ、豊洲問題の混迷の主たる要因だからだ。

 そのカギは以下のとおりだ。これまで、東京都の専門家会議の主張は明確であり、豊洲の地下水から環境基準を超える物質が検出されたが、安全性に問題はないという。

 ただし、一般の人はこれに困惑する。「基準」以上なのになぜ問題にならないのか。その理由は明白だ。

混迷の要因は地下水の基準
報道はあくまでも「環境基準」

 それは、マスコミが報道している「基準」とは、あくまでも「環境基準」であって、「安全基準」ではないのだ。

 環境基準は、環境基本法で定められた、人の健康の保護及び生活環境の保全のうえで維持されることが望ましい基準である。

 具体的に地下水の環境基準は、そのまま飲めるほどきれいなものである。もちろん、それが望ましいのはいうまでもない。環境基準はあまりにハードルが高いので、実際にはそれを満たしていない所は都内では多い。

 筆者は東京の山手出身であるが、筆者の周りでも50年程前までは井戸水が飲めた。ところが、有害物質が指摘されはじめ、都より井戸水から水道水に変更するように指導された。今では、23区内で井戸水を使うのは珍しくなっており、湾岸地区で井戸水を使うところはないだろう。

 具体的に、東京の地下がどうなっているのかの一端は、東京都のホームページに出ている。そこには、状況調査の結果、土壌の汚染状態が指定基準に適合しない土地については、要措置区域または形質変更時要届出区域として指定された結果が出ている。都内の至るところで指定されている。その中には、築地も豊洲もあるが、そこでの環境基準は満たしていないだろう。

地下水を飲まないのなら
環境基準は大きな問題ではない

 筆者は、この表をラジオ番組で紹介したが、一緒に出ていたアナウンサーの自宅の近くにも環境基準に適合しない汚染場所があったと驚いていた。筆者の自宅近くで開発された場所も載っており、多くの人が、身近の場所が指定されていると思う。いうまでもないが、通常は何もしなくてもいいが、問題があっても適切な対策をすれば、安全基準を満たしその地上では安全に生活もできる。

 環境基本法の環境基準を超えたらすべてダメかというと必ずしもそうではなく、土壌汚染対策法が最終的なよりどころとなる。

 土壌汚染対策法では、有害物質について「地下水摂取リスク」と「直接摂取リスク」を管理するとされている。たとえば、ベンゼンでは地下水摂取リスク基準は環境基準と同じ数値であるが、直接摂取リスク基準は定められていない。

 また、シアンの地下水摂取リスク基準は環境基準と同じ「不検出」であるが、直接摂取リスク基準では一定量は許容されている。ヒ素の地下水摂取リスク基準は環境基準と同じ数値であるが、やはり直接摂取リスク基準では一定量は許容範囲だ。

 要するに、土壌汚染対策法では、地下水を飲まなければ、環境基準をクリアしなくてもいいわけだ。さらに、直接摂取リスク基準は、土壌汚染が存在すること自体ではなく、土壌に含まれる有害な物質が人体の中に入ってしまう経路(摂取経路)が存在していることを問題とするので、この経路を遮断するような対策を取れば問題ないとなる。この対策のキモは、コンクリート等により物理的に遮断すること、つまり封じ込めである。幸いなことに、豊洲市場には十分な地下空間(地下ピット)が存在する。そこで厚いコンクリート工事を実施して建物内の安全を確保するのが最善手であろう。

 このため、専門家が「環境基準を満たさなくても、安全基準を満たせば安全性に問題ない」と言うわけだ。

 事実、小池都知事も、おそらく地下で環境基準を満たしていないところもあると想定される築地市場においても「コンクリートで遮蔽しているので安全」と言っている。豊洲でも同じロジックにより、安全といえるだろう。

科学的見地で「安全」ならば
「安心」を得るのが政治家の役目

「安全」という観点から見れば、新しい豊洲市場のほうが古い築地市場よりはるかに安全である。例えば、築地市場は開放系になっており、外から物質、生き物が中に容易に入ってくる。このため、ねずみ等も多く不衛生という意見が多い。また、耐震性から見ても、豊洲市場のほうが安全である。

 これに対して、小池都知事は、豊洲市場は「安全」であるといいながら、「安心」でないという理由で、豊洲移転にストップをかけている。科学的な見地から「安全」であることが確保されたら、都民から「安心」を得るように努めるのは政治家の役目だろう。また、それはマスコミの責務でもあるだろう。

 こうした点から、小池都知事とマスコミは、築地市場と比較しても豊洲市場が「安全」であることを広く都民に知らせるべきである。その上で、「安心」を得られるようにすべきだ。

 以上は、「安全」性の観点から見て、豊洲市場が築地市場より優れているということであるが、経済的な観点からも、豊洲市場のほうがいいといえる。

「そもそも論」として、ある事業について、中止するのがいいのか、継続するのがいいのかを意思決定する際、経済学の「サンクコスト」概念が役に立つ。投下した資本のうち、事業の撤退や縮小を行っても回収できない費用のことをサンクコスト(sunk cost=埋没費用)という。それまでにどれだけコストをかけたかを気にしても仕方ない。その後にかけるコストと得られる便益を対比させ、その後のコストが大きければ中止、便益が大きければ継続となる。

サンクコストは膨らむ一方
豊洲移転中止はあり得ない

 サンクコストを築地移転に適用してみよう。都議会に提出された資料によれば、豊洲市場の整備費(コスト)は、3926億円(2011年2月)、4500億円(2013年1月)、5884億円(2015年3月)と、時を追うごとに膨らんでいる。その内訳を見ると、建設費は990億円→1532億円→2752億円、土壌汚染対策費は586億円→672億円→849億円である。

 もっとも、今の時点で豊洲市場はほぼ完成しているので、これ以上、コストをかける必要はない。その便益は、一定の安全基準を満たせば、少なくとも4000億円以上、普通は6000億円以上であろう。有害物質の出たとしても、コンクリートで遮蔽するなどにより、安全面で問題なくすることは今の技術で可能である。安全対策費用で6000億円を超えない限りは、サンクコスト論から、豊洲を利用するという結論である。

 ということは、今の段階で豊洲移転中止はあり得ないわけだ。これはわざわざサンクコスト論を使わなくても、今の豊洲市場に安全対策を施して使わないのはもったいないという常識でもわかる話だ。

(嘉悦大学教授 高橋洋一)
http://diamond.jp/articles/-/122164
 

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コメント
 
1. 2017年3月23日 11:38:36 : MpDEIVgNks : 5Q94bm6tEZA[115]
>安全対策費用で6000億円を超えない限りは、サンクコスト論から、豊洲を利用するという結論である。

設備は、毎年の利用コストや減価償却もある(6000億円の便益に、今後の利用費用も含まれていれば別であるが)。別に市場が利用しなくても、別途設備土地を利用できれば、実際の負担は(豊洲を卸売市場にしない)もっと少なくなるだろう。そのもくろみ計算をしてもよいのではないか。


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