常軌を逸した北朝鮮ミサイル騒動の裏に何があるのか<下>
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/212540
2017年8月30日　日刊ゲンダイ　文字お越し

　　
　　　イージス艦では撃ち落とせない（Ｃ）共同通信社

今度の騒動でハッキリ分かった迎撃態勢という夢物語

　今回の騒動であらためてハッキリしたのは、北朝鮮の弾道ミサイルを撃ち落とす――という日本の迎撃システムが全く役に立たないことだ。

　米国防総省の分析では、北朝鮮は弾道ミサイルを２５０基以上保有しているとされる。北朝鮮が米国を狙うミサイルを撃ち落とすのは論外として、日本を直接狙ってくる場合、現行の迎撃システムではまず、飛来してくるミサイルに対し、海上に配備された海上自衛隊のイージス艦が「ＳＭ３」を、大気圏内では「ＰＡＣ３」という２種類のミサイルをそれぞれ発射して撃ち落とす２段構えの態勢を取っている。しかし、北朝鮮の標的が予測不可能な上、発射後、わずか７〜１０分で日本に着弾する。誰がどう考えても撃ち落とすのは不可能だ。軍事ジャーナリストの世良光弘氏はこう言う。

「そもそも、今回のように高度５５０キロを飛ぶ弾道ミサイルには『ＳＭ３』は届きません。高度２５０キロ程度の中距離弾道ミサイルの場合でも、北朝鮮が単発で撃つのであればともかく、同時多発なら迎撃は難しい」

　要するにミサイル迎撃システムなんて夢物語に過ぎない。とっくに破綻しているにもかかわらず、日本政府は８月中旬に開かれた米国との安全保障協議委員会（２プラス２）で、新たに地上配備型のイージス・アショアの導入を決めたからどうかしている。米軍が韓国に高高度迎撃ミサイルシステム（ＴＨＡＡＤ）を配備した際に中国が反発したように、日本にイージス・アショアが配備されれば中国、ロシアが黙ってはいない。迎撃システムは百害あって一利なしだ。

　　
　　　「存立危機事態」とはムチャクチャ（Ｃ）共同通信社

北が看過できなかったのは小野寺防衛相の真夏の暴言

「北朝鮮に強い圧力をかけ、彼らの政策を変えなければいけない」

　安倍はトランプ米大統領との電話会談で、圧力強化で連携する方針を確認したという。安倍政権はこれまでも、北がミサイルを撃つたび、バカの一つ覚えのように「圧力を強める」と言ってきたが、事態は悪くなるばかりだ。

　今回だって、小野寺防衛相の暴言が北を挑発、刺激したのは間違いない。北が米国領グアム島周辺に新型弾道ミサイルを撃ち込む案を表明したことについて「日本の存立の危機にあたる可能性がないともいえない」と集団的自衛権行使の前提となる「存立危機事態」をチラつかせたことである。

　安保法が国会で議論された当時、安倍政権が強調していたのはホルムズ海峡の機雷掃海と朝鮮半島有事だった。グアムのグの字も出ていなかったのに、存立危機事態を言い出すのはメチャクチャだ。元自衛隊レンジャー隊員の井筒高雄氏はこう言う。

「安倍政権は、トランプ米大統領が今春に朝鮮半島沖に原子力空母カール・ビンソンを派遣した時、自衛隊のイージス艦と護衛艦を共同訓練に参加させていますが、北朝鮮から見れば、共同訓練に続く今回の小野寺大臣の発言は、米国と一緒に戦争します――と宣言したに等しいでしょう。圧力と言っていますが、北朝鮮に戦争する口実を与えているだけです。本来であれば、イケイケドンドンの米国に対し、ブレーキをかけたり、北朝鮮が望んでいる米国との会談の橋渡し役を務めたりするのが日本の役割なのに、米国に盲目的に従っている。これは極めて危険なことで、北朝鮮の核使用を助長しかねず、ひいては対中国、ロシアとの関係も悪化しかねません」

　圧力だけに頼る安倍政権の対北朝鮮政策は完全に失敗しているのだ。

　　
　　　号外も出た（Ｃ）ＡＰ

安倍首相の「もう対話は通じない」「断固たる措置」という虚勢と危うさ

　トランプ大統領は２９日、北朝鮮の弾道ミサイル発射について「国際的な振る舞いとして最低限の基準に対する侮辱」と非難する声明を発表。その上で「あらゆる選択肢がテーブルの上にある」と、軍事的手段も排除しない姿勢をあらためて示した。

　これまでもトランプは、北朝鮮に対し「世界が見たことのないような炎と怒りに直面するだろう」などと強い言葉で挑発してきた。そういう米国を「完全に認識が一致」と支持し、「もう対話は通じない！」「断固たる措置を求める」と拳を振り上げているのが安倍だ。

「米国も日本も政権の支持率が下がり、内政問題を抱えているから、北朝鮮の危機をことさら煽って政治利用している面がある。問題は、それに国民が乗せられてしまうことです。米国の世論調査では６割の国民が『北朝鮮の脅威は外交交渉でコントロールできる』と答えるなど冷静ですが、日本は朝から晩までミサイルの脅威を煽るメディアの騒ぎようを見ていると心配になります」（孫崎享氏＝前出）

　危機を煽り、勇ましい言葉で“敵”を非難して求心力を高めるのは古今東西の為政者が利用してきた手法だ。だが、緊張感が高められる中で、ささいなことが「偶発リスク」に発展することもまた歴史が示す事実である。

　ミサイル迎撃が不可能な以上、日本政府がなすべきことは火に油を注ぐような言葉で虚勢を張ることではない。必要なのは衝突を回避するための外交努力だろう。「国民の命と安全を守る」とは、そういうことではないのか。

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「安倍政権はこれまでも、北がミサイルを撃つたび、バカの一つ覚えのように「圧力を強める」と言ってきたが、事態は悪くなるばかりだ。」

― 上海*海鴎《民主主義破壊者を許すな》 (@haiou4b1) 2017年8月30日

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「ミサイル迎撃が不可能な以上、日本政府がなすべきことは火に油を注ぐような言葉で虚勢を張ることではない。必要なのは衝突を回避するための外交努力だろう」

― 上海*海鴎《民主主義破壊者を許すな》 (@haiou4b1) 2017年8月30日

■４億円を恵んだメディア買収、虚しき大量の軍事費の投入（https://t.co/33ukQRAEwE）　『常軌を逸した北朝鮮ミサイル騒動の裏に何があるのか<下>』（https://t.co/OgAJpucmOX）／「今度の騒動でハッキリ分かった迎撃態勢という夢物語」

― AS (@ActSludge) 2017年8月30日

常軌を逸した北朝鮮ミサイル騒動の裏に何があるのか
<上>https://t.co/IESo1GgVv1
<下>https://t.co/TYeD4NVszs

領空侵犯うんぬん以前に、北朝鮮のおんぼろミサイルが制御不能になって日本に落ちる可能性がある発射なのがまず問題だ。

― 李ミャオ李�Eと野嶋剛の嘘が暴かれる。 (@LiarLiMiao) 2017年8月30日

コメント
1. 2017年8月31日 21:36:21 : 0CejVRban6 : urcdmA9xc1s[4935] ▲△▽▼ 「迎撃システムは百害あって一利なしだ。」 もう買うのはやめましょう。古来から有名な武器商人の盾と矛ですよ。
2. なか[165] gsiCqQ 2017年8月31日 21:57:12 : QKf5KF2pLc : 5AJ1JcbcMCo[51] ▲△▽▼ EMP兵器の実験もしていたってよ
3. 2017年8月31日 23:33:13 : LY52bYZiZQ : i3tnm@WgHAM[-4503] ▲△▽▼ どの時点でやるのかは分からないが、正直、北朝鮮から核実験を一発喰らうと日本の現レジームは死に体同然になる。そして日本として交渉を含めそれを防ぐ手立てはほとんどないようにも思える。護憲の問題にしても国連憲章と憲法の関係、そして常に変動する国際関係や地政学の状況を抜きにしては語れないのだからある決まった一国の観念思考を押し通そうとするだけでは限界がある。その欠点が丸見えになってジ・エンドを迎えることになるかどうか？
4. 2017年8月31日 23:53:51 : M624UWUzPU : jevXez2M@iY[63] ▲△▽▼ 北朝鮮危機を求めているのは日本であってアメリカではなく、既に米朝は秘密裏に交渉しているという話もある。それを聞いて外務省が日本孤立を恐れて戦々恐々としているってね。
5. 2017年9月01日 01:18:03 : AS9CeUvNQo : k0er6O4CXv8[1] ▲△▽▼ 　多摩散人です。 　９条は戦争を放棄しており、戦争になった場合にどうするかは憲法には書いてない。戦争は憲法の想定外の事態だ。だから、憲法の範囲外で、必要なことは何でもやればよい。戦争になれば、憲法は一時棚上げだ。 　また平和になったら、平和憲法のお蔭で平和になったと言って、拝んでいればいいではないか。
6. 2017年9月01日 06:31:24 : QDaB4sXzx2 : fq29LomBP7Q[1] ▲△▽▼ 現政権めった斬りの日刊ゲンダイ ならではの突っ込みに拍手
7. 2017年9月01日 07:30:33 : jFqIwWp6no : xZYHNU_LKCk[1] ▲△▽▼ 　多摩散人です。 　飛んでくるミサイルをこちらからミサイルで撃ち落とすなんて、失敗の可能性が高い上に、やたらに金がかかるに決まっている。止める必要はないが、もっと確実な対抗法も併用したらよい。 　アメリカからトマホークを買って、北朝鮮のミサイル基地を叩けばいいんだよ。
8. 2017年9月01日 09:14:12 : 34ezwitPAI : n8rObToHP9Y[73] ▲△▽▼ アメリカと日本を比べると、象と蟻である。 その蟻が、象に対しどうこう言うレベルにあらず。 蟻は蟻の本分を守って、百歩後ろに下がっておれば良い。 Trump大統領は、希に見るアメリカ国民第一標榜の大統領、過去のどの大統領より素晴らしい人物である。 その一つ、TPPを即座に、脱退したではないか。 これにより、日本は、ビザ無しで入り込む海外激安労働者を、ストップして貰ったのだ。 結果、日本国民をも救済してくれたのである。 その偉大なる大統領に、対等で物言える安倍ではあるまい。 身の程を知って貰いたい。 さて北朝鮮は、アメリカだけで、日本は眼中にないのだ。 安倍のやることは、日本にミサイルが落ちない限り、声も鐘も鳴らす必要はない。 全て象が対応してくれる、それも的確に。 Trump大統領は、国民側大統領、安倍は極右利権側大統領、政治信条が根底から違うのだ。 このため、Trump大統領は、あることないこと支配層から言われているが、一般国民には、最高の人物なのである。 戦争を仕掛け武器を買って、政治献金で金を得たい安倍政権とは、土台からして違っている。 重ねて言うが、北朝鮮は、日本を眼中に入れていない。 もし眼中にあるなら、日本の原発一基破壊で、事足りるからだ。 高価なミサイルなど、使うわけがない。 またアメリカとも戦争できない、戦争すれば、一瞬であの世行きになることを知っている。 結論、北朝鮮が核実験をしたとき、アメリカは直ちに現体制を、破壊し、民主政権を造る。 今は、その時期把握中なのである。 日本など、何処にも顔を出す状況にない、変な状況判断、全て捨てて、安心して暮らして良い。 それよりも加計疑惑に、安倍対野党、全力を注げ。
9. 新共産主義クラブ[4476] kFaLpI5ZjuWLYINOg4mDdQ 2017年9月01日 09:45:35 : vRtFVQWVNw : 5uuJCtWOtKM[14] ▲△▽▼ >>7さん ＞アメリカからトマホークを買って、北朝鮮のミサイル基地を叩けばいいんだよ。 　 　北朝鮮のミサイルは全て移動式で、敵基地攻撃の対象になるようなミサイルサイロは、持っていないと思う。

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