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米シリア爆撃で北朝鮮核開発に本腰(Japan In-depth)
http://www.asyura2.com/17/warb20/msg/110.html
投稿者 赤かぶ 日時 2017 年 4 月 10 日 15:44:45: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

             米シリア爆撃で北朝鮮核開発に本腰


米シリア爆撃で北朝鮮核開発に本腰
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170410-00010000-jindepth-int
Japan In-depth 4/10(月) 7:43配信


【まとめ】
・トランプ氏、シリア政権放逐の意思なし。

・シリアでは政権軍、IS,イスラーム系武装組織、クルド勢力、反体制派の五つどもえの戦闘続く。

・日本は朝鮮半島情勢最悪のシナリオを想定せよ。

米国がシリアにトマホーク巡航ミサイルを撃ち込みました。本件については、考えるべき点が多く、我が国に対する影響も小さくないと考えます。ついては、長文になりましたが、現時点でのとりあえずの考えを以下のとおり取りまとめました。

1.米国の意図

(1) 先週、ヘイリー国連大使がアサド政権転覆はもはや米国の対外政策の優先事項ではないと述べていたばかりであったことに鑑みれば、シリア軍によるイドリブ郊外ハーン・アッ=シャイフーンへの化学兵器使用への報復としての米軍による空爆には唐突感が付きまとう。米政権は、被害に遭った子供たちを含む民間人への被害を強調するが、トランプ大統領の対外政策の中でも真っ先にシリア人難民受け入れ拒否を実行したことを思えば、シリア人の人権問題を重要と考えてきたかについては疑問符を付さざるを得ない。

(2)今次空爆においてトランプ大統領の最大の目標は、弱いオバマ大統領に自らを対置させ、決断力・行動力のある強い大統領であることのアピールにあったように思われる。2011年以来シリアは内戦に陥っているが、2013年、オバマ大統領は化学兵器使用を「一線を越えた」と評価し、対シリア攻撃を計画した。それにもかかわらず、計画が実行に移されないままに、露による仲介により、シリア政権がCWCに加盟し、OPCWの査察を受け入れることで問題は収束し、結果、米国による武力行使は行われずに終わった。トランプ大統領は、バッシャール・アル=アサドの政権が「多くの一線を越えた(Cross Many Many Lines)」と、オバマ大統領の発言を想起させるような主張をしたが、そこにはオバマ大統領の政策の失敗を強調する意図が見え隠れしている。

(3)「一線を越える」ことが米国による対シリア武力行使を直ちに意味し、米国によるシリア情勢への介入をもたらすことが米国の伝統的な意志であると考えることは困難である。2013年に対シリア武力行使が取り上げられた際、民主党内には武力介入に否定的な意見が多かった。また共和党内には、米国による対イラク武力行使が米軍を泥沼に引きずり込んだ経験から、介入計画が不十分との批判が上がった。なお、報道によればトランプ大統領自身、当時、介入すべきではないとツイートした由である。

(4)今回の空爆を前にし、極めて短い時間でトランプ大統領の考えが変わり、マティス国防長官とマクマスターNSC補佐官主導で空爆が決定されたようだ。トランプ大統領を含む米政権関係者は、この空爆と並行して、「将来におけるアサド大統領の役割は無い」、「すべての文明国家はシリアにおける紛争停止に貢献すべきである」等、アサド政権退陣に向けた国際社会の連携を強調しているようである。しかし今回の攻撃は、米国がハーン・アッ=シャイフーンへの化学兵器による攻撃の拠点となったと主張するホムス南東部のシュアイラート軍用空港の滑走路、航空機、格納庫、レーダー及び対空兵器に限られているようであり、それ以上に拡大する物理的な兆候は見られていない。

また、かつて米軍はイラクやアフガニスタンにおいて大規模な作戦前に慎重にビルドアップを重ねてきたが、シリアに対してはこれまで、米軍の大きな動きは見られていない。したがって、限定された目標以上に攻撃を行い、シリア政権放逐にまで軍事力行使を重ねるかについては、現時点ではその可能性は高くないようにも思われる。

(5)米軍によるシリア空爆は、国連において対シリア協議が継続されている中で実施された。米政権は空爆当初、化学兵器使用を防ぐという米国にとり死活的な国家安全保障の国益のために行動したとした。また、国連の対シリア措置協議が長期化する可能性が出てくると直ちに行動し、「これまでのシリアに対する政策はすべて失敗した」と主張し、シリアの化学兵器使用に対し行動したとした。

(6) 空爆翌日には、よりまとまった形で、以下のような主張が行われた。

〇 シリアによる民間人に対する化学兵器使用は明白であり、化学兵器による攻撃を行った施設に対する米国の攻撃は適当である。

〇 今回のシリアによる化学兵器使用の他、3月25日並びに30日にはハマーで同様の攻撃を行っており、行動しなければアサド政権は化学兵器の使用を恒常化させかねなかった。

〇 2013年にアサド政権はすべての化学兵器を破棄することに合意したはずである。ロシアが2013年以来の約束を実施させる責任をとることに失敗した以上、誰か他の者がこれを実現させるべきである。

〇 トランプ大統領は、いかなる政府や主体であっても、一線を越えたならば行動に移す。トランプ大統領はこのメッセージを世界に対して行った。

2.シリア情勢

(1)シリア情勢は混迷を極めており、出口が見えない状況にある。米国の空爆についての議論から逸れることになるので極めて簡潔に言えば、シリアでは、ロシアやイランが支援するアサド政権軍、IS,イスラーム系武装組織、クルド勢力および米国やサウジなどが支援する反体制派が5つどもえで戦っており、いずれの勢力も内戦を終結させ支配権を確立するには至っていない。

しかし昨年12月のアレッポ東部陥落以降、米国支援の反体制派は重要拠点を失った。これに対してアサド政権は勢いを増し、シリアの将来についての国際的な協議の枠組みも、米国やサウジ等の湾岸諸国がはじかれて、露、イラン、トルコ主導に変わってきていた。

(2)空爆直前のアサド政権は、2013年以降最も安定した時期にあった。そのような中で政権側は、敵対する勢力を退け、政権を維持させる方途を模索してきた。しかし、シリア内戦を終結させるほどに強くないこともまた事実であった。5万程度の規模に縮小した政府軍は、露の空爆、イラン革命防衛隊やレバノンのヒズボッラーの支援を受けなければならず、そのような中で支配地域を拡大し、安定させるために、政権側が化学兵器を使用することが必要と判断したとしても不思議ではない。

(3)米軍空爆はかかる状況で行われた。それは、シリア協議で傍流に追いやられた米国が、再びシリア情勢に関与する宣言であり、反体制派への支援ととられるのかもしれない。しかし現実は容易ではなく、今回の空爆は短期的にはシリア中部に勢力を有する反体制派やイスラーム系武装組織を後押しするのみならず、ラッカを拠点とするISにとってもプラスになった。

(4)シリアで5つどもえになっている中、ISのせん滅が先か後かという議論はあろうが、いずれにしてもISを除く4つの勢力争いに一定の結論が出なければ、シリアは安定しない。今回の空爆は、立場を後退させていた米国が支持する反体制派を勢いづかせ、反体制派に対するシリア軍の攻撃拠点にダメージを与えた影響はあろうが、それだけで状況を一変させることは困難かもしれない。

もとより、今回の攻撃をもって米国がシリア内戦終結に向けたイニシアティヴをとり、アサド政権退陣を求めても、現時点でその実現の可能性は極めて低い。更なる米国の関与が反体制派を強化するならば、5つどもえの状況が当面強化され、混迷は深まることになりかねない。

(5)米国の根本的な介入は軍事的にも国際法的にもハードルが高く、米国にとっての泥沼化は、米国内の反発を招くことになろうし、そもそも、米国にそのための戦略が存在するかは疑問と言わざるを得ない。また、反体制派内に信頼できる人物や組織がほぼいない状況も依然として継続している。

3. 国際社会と日本

(1)米軍による空爆の影響の範囲は、アサド政権及びシリア情勢に限られないのみならず、状況によっては国際社会に大きな影響を与えることが考えられる。

(2)国際法的には、米軍による一方的な攻撃を正当化する根拠は希薄と考えざるを得ない。ティラーソン国務長官がシリア軍によるハーン・アッ=シャイフーン攻撃を批判したときに引用した2013年の国連安保理決議2118号は、たしかにシリアに対して化学兵器の使用や保有を禁ずるものである。

しかしながらこの決議は、強制力の行使にかかわる国連憲章第七章をひかず、25条の加盟国による決議順守義務をひいているに過ぎない。それどころか決議前文において、現在のシリアにおける危機は、2012年のジュネーヴ宣言に基づく包括的且つシリア主導の政治プロセスを通じてのみ解決されることが強調されており、武力行使の根拠にはなろうはずもない。

化学兵器の使用は許容されるべきものではないながら、これが米国の死活的な国益を侵すものと判断されようとも国連憲章の言う自衛権を構成するには至らない。さらに、人道的な武力行使を単一の国の判断で行使することを許容するならば、これは極めて悪しき前例となりかねない。

(3)ハーン・アッ=シャイフーンにおいて化学兵器が住民に深刻な影響を及ぼしたことについては、一定の共通理解があり、事実と言えよう。しかし露は、反体制派が保有していた化学兵器庫にシリア軍が攻撃を加え、その被害が住民に拡大したと主張している。シリア軍が化学兵器を使用したと主張する現時点の米国の根拠は、かつてシリア軍が化学兵器を使用した(と米国が主張する)際に、同じ飛行機が同じ飛行場から飛び立ち、その結果住民に被害が出たからというものであるが、この状況証拠だけでは、双方の議論を終結させる決定的なものにはならないように思われる。

2013年の際にも、議論が空回りし、結局国連の調査ミッションが派遣され、当初使用したと考えられる場所と別な場所で化学兵器使用の痕跡が発見されることになった。本来は空爆以前にミッションが派遣されるべきだが、重要なことはファクトであり、化学兵器の問題を終わらせるためにも、これからでも遅くないので調査ミッションの派遣を進めるべきであろう。

なお一部では、シュアイラート軍用基地の化学兵器関連施設が空爆されたとの報道もあるが、同基地は2013年以来、OPCWの査察監視下にあり、貯蔵庫のようなものが存在するとすれば、後からばれてしまうので、この報道は疑わしいように思われる。

(4)米国の空爆は、アサド政権を支えながら昨年12月以降にはシリア情勢をめぐる国際社会の主導権を握り、化学兵器に関する危機回避のイニシアティヴをとってきたロシアを刺激するものである。ロシア軍はシリア国内に相当入り込んでおり、昨年にはまんまと49年という長期(更新可能)のタルトゥース港租借権まで手に入れた。

また、今回空爆をされたシュアイラート軍用基地もイランと共に使用してきたとされるどころか、昼間には借り受けたサイトに軍事アドバイザーを常駐させていたとすら言われている。ロシアはメンツを丸つぶしされたことに怒りを隠せないようだが、これにとどまらず、主導権を握ってきたシリアをめぐる国際社会の動きやシリア内政における米国の巻き返しに抵抗していくに違いない。

本日の米露外相電話会談では露側から強い抗議が行われ、シリア国内の衝突回避(de-conflict)措置も一方的に凍結されたとのことであるが、来週に予定されているティラーソン米国務長官の訪露は極めて厳しいものとなりそうである。

なお、木村北大名誉教授は常々、米新政権発足時には露に歩み寄るが、国際紛争が発生して両国関係が厳しくなるのが過去4代の米政権のたどった道のりであると述べておられるが、トランプ政権にとっても大きな試練となることであろう。

(5)前述の通り、今回の空爆には国際社会、就中、北朝鮮に対する「一線を越えたら、行動する」というメッセージが含まれている。このようなメッセージを携えた行動を見せつけたからこそ、米中首脳会談の前半部では、米側が主導権を握り、中国に行動を促すことができているのであろう。北朝鮮は反発を見せているようだが、言葉とは反対に、政府・軍首脳の心中には穏やかならざるものがあるはずだ。

(6)しかしながら、今回の空爆が直ちに東アジア情勢を解決に導き、あるいは米主導で動かすことを約束するものにはならず、注視が必要である。今回の空爆は、前述の通り、シリア情勢を動かす上で重要だが不十分で決定的なものにならなかった。同様に、中国に対しても、北朝鮮に対しても、ショックを与えるには十分であろうが、それが将来における中国の北朝鮮に対する根本的な姿勢の変化や、北朝鮮による行動パターンの変更をもたらすと断ずるのはあまりに早い気がする。

特に、かりに米国がシリアに対して深入りすることになれば、二正面はできなくなると北朝鮮が考える可能性が出てくる。逆にシリアに対する攻撃がこれで終了すれば、シリアにおける米国の立場は失われ、計画なき空爆に対する内外の批判にトランプ政権がさらされる可能性もある。ショックを用いる手法で米中首脳会談において主導権をとるやり方も一つではあるだろうが、いかにも近視眼的で、大国としては珍しい博打のような手法に見えてならない。

(7)国際社会の米国による武力行使に対する評価は様々だが、英国やサウジのようにシリア情勢ではじかれた国々はおおむね米国の攻撃を支持し、逆の立場の国々は批判的な反応を示している。EUなどは、日本と同様に武力攻撃そのものを支持することを避けつつも、人道的な立場を強調しているようである。それぞれの国々が自国の国益に沿った反応を示しているのは当然であろう。トルコなどは、シリア国内に部隊を駐留させ、状況に応じて露と米の間を行ったり来たりしてきたが、今回の空爆では、Safe Heavenやノー・フライゾーンの確立を求めるなど、クルド勢力駆逐に有利で且つシリア政府の動きを止めることに利益を見出しているようである。

(8)日本政府は今回のシリア空爆に際し、空爆を支持するのではなく、その「決意」を支持するという巧妙な言辞を用いた。予測の難しいトランプ政権の立場をおもんばかったということもあろうが、それ以上に、ますます緊張の度合いを強める北朝鮮情勢をめぐり、米国の北朝鮮に対する強い立場を抑止力として維持させることを意図しているのであろう。

しかしながら、最終的な武力行使の「決意」は必要であろうが、国際法を味方に付けるべき我が国にとって、国際法がないがしろにされた状況を甘受することは適当であったのだろうか。シリアにおける道筋と戦略を明確にしないままでの攻撃は、短期間で終われば米国を当てにしてきた反体制派の期待を裏切ることになる一方、再び反体制派が力をつけてくれば群雄割拠の状況が長期化し、その「つけ」はシリア国民に押し付けられて難民問題がさらに深刻化するかもしれない。それどころか前述の通り、シリアに拘泥すれば、逆に北朝鮮は、二正面作戦が困難と考えて、時を稼ぎながら、対米抑止力の強化に努めて核開発と長距離ミサイル開発に力を入れるかもしれない。

平和的なシリア問題の解決に国際社会が本腰を入れられるような環境作りに日本も乗り出す必要が高まったと言えるのではないか。また北朝鮮については、「飴と鞭」の使い分けが最も彼らに理解できる言葉と考えるところ、脅しで終わらせるのではなく、北朝鮮が受容でき、中国も最終的に乗ることできるような枠組みを動かすことが重要ではないか。なお、北朝鮮情勢のみならず朝鮮半島情勢は流動化しており、邦人退避を含めた最悪の場合のシナリオを真剣に検討すべき時が来ているのかもしれない。

大野元裕(参議院議員)
 

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