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北朝鮮「核ミサイル開発の目標達成」か?『労働新聞』の気になる論評 金正恩氏の「並進路線」の実態(WEDGE)
http://www.asyura2.com/17/warb21/msg/311.html
投稿者 赤かぶ 日時 2017 年 11 月 07 日 11:15:05: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

北朝鮮「核ミサイル開発の目標達成」か?『労働新聞』の気になる論評 金正恩氏の「並進路線」の実態
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/11032
2017年11月6日 礒ア敦仁 (慶應義塾大学准教授)  澤田克己 (毎日新聞記者、前ソウル支局長) WEDGE Infinity


 北朝鮮が公式の立場を表明する媒体である『労働新聞』が10月28日に興味深い署名論評を掲載した。「われわれの国家核戦力の建設は既に、最終完成のための目標が全て達成された段階にある」と主張したのだ。北朝鮮の公式メディアが「目標達成」と報じたのはこの論評が初めてで、その後、「国家核戦力完成の終着点に達した」(朝鮮中央通信11月4日)などという同様の趣旨の言及が行われるようになった。

 北朝鮮はこれまで、核弾頭を搭載した大陸間弾道ミサイル(ICBM)が完成するまで一切の交渉に応じないという姿勢を見せてきた。今回の論評は、国際社会からの警告と制裁を完全に無視して核・ミサイル開発を急いできた金正恩政権の姿勢変化を示唆するものだ。

 『労働新聞』の論評は署名入りが原則で、重要な論評の筆者は限られている。この論評を執筆したチョ・ナムス氏は、そうした重要論説を担当する一人。対米関係のほか、日本や韓国に対する批判的な論評を執筆し続けてきた人物だ。署名論評とはいえ、最高領導者の意向と異なる記事は掲載されない。金正恩委員長の認識を反映していることは確実だろう。

 本来ならば、ICBMの発射実験を追加で1回は行ってから大々的に勝利宣言を出す、という形の方がすっきりしている。日米韓の専門家の間でも、追加実験を行った上で「米本土への核攻撃能力を確保した」と主張し、米国に対話を迫ろうとするのではないかという観測が強かった。中途半端な印象を与える『労働新聞』の論評という形式を取った意図はよく分からないし、トランプ米大統領の対応によってはミサイル発射を再開するつもりかもしれない。ただ、どちらにしても北朝鮮の出方について予断を持たず注視すべき時期に入ったようだ。

       

■変化の予兆は7月のICBM発射から

 北朝鮮の国営メディアの論調に変化が見られるようになったのは、米国の独立記念日に当たる7月4日のICBM発射以降である。北朝鮮メディアの報道によると、発射に際して金正恩委員長は「米帝との長い戦いもついに最後の局面に入った」「独立記念日の贈り物が気にくわないだろうが、今後も大小の贈り物を頻繁に送り続けてやろう」と語った。

 北朝鮮メディアはその後、連日のように祝賀宴会の開催を報じつつ自国の戦略的地位向上を強調するようになった。 8月に入ると金絡謙戦略軍司令官が弾道ミサイル「火星12」4発を米領グアム沖に同時発射する計画があるなどと発言したことが報じられた。トランプ米大統領はツイッターで「北朝鮮が浅はかな行動を取れば、軍事的に対応する準備は完全に整っている」などと威嚇したが、金正恩委員長はこれに対して「愚かで間抜けなヤンキーの行動をもう少し見守ろう」と応じた。米国の反応を慎重にうかがいつつ、肩透かしを食わせようとするような論調が北朝鮮メディアでは続いた。

 9月3日の6回目の核実験の際には、『労働新聞』が1面で朝鮮労働党の常務委員会によって実験実施が決まったと報じた。常務委の開催が確認されたのは初めてだ。外交を担当する金永南・最高人民会議常任委員長や経済を担う朴奉珠・内閣総理も入る常務委での決定であることを強調しようとしたのだろう。外交や経済も含めた長期的戦略をもって核実験に臨んでいることを内外に示したということだ。

 北朝鮮は8月29日と9月15日に北海道上空を通過する形で弾道ミサイル「火星12」を発射したが、その後は本稿執筆時点(11月5日)までミサイル発射などを行っていない。

■9月下旬から民生関連の現地指導を再開

 金正恩委員長自身の動きからも、軍事から民生へのシフトが読み取れる。

    
     化粧品工場を視察する金正恩氏(提供写真)(提供:KCNA/AFP/アフロ)

 金正恩委員長は9月下旬から、リンゴ畑や田圃、靴工場、化粧品工場といった国民生活に密着した「現地指導」を再開した。これらの現地指導は、今春から激減し、7月、8月には一度も行われていなかった。最高指導者が現地指導に訪れる先の分布はその時々の重点項目を示すものであり、核・ミサイル開発に集中して気を張り詰めていた時期はひとまず終わったと考えることができる。

 10月7日の朝鮮労働党中央委員会第7期第2回全員会議(総会)で行われた大型人事も同様の文脈で理解できる。党中央委員会の開催は事前に予告されるのが通例だが、前回から1年5カ月ぶりとなる今回は予告なしでの開催だった。その背景は分からないが、金正恩委員長が突然開催を指示したということであろう。人事のポイントは、「軍人以外の登用」だ。党の政治局委員や委員候補に多くの幹部が抜擢されたが、その顔触れに生粋の軍人は一人しか入っていなかった。ここで昇格したのは、金正恩委員長の妹である金与正氏や新任の宣伝扇動部長、現役の外相、それに経済を担う幹部たちが中心だった。

 北朝鮮が米国からの攻撃に備えているのであれば、この時期に外交・経済中心の人事シフトを敷いたりはしないだろう。そもそも党中央委員会を開く必要も、余裕もないはずだ。

 そして冒頭に触れた『労働新聞』の論評である。さらに11月3日の北朝鮮・祖国平和統一委員会のウェブサイト「わが民族同士」は、「水爆とその運搬手段であるICBMまで保有したわが方が今になって米国の白昼強盗さながらの要求に応じることができると考えるなら、それよりさらに間の抜けた妄想はない」という論評を掲載した。米大陸を狙う核ミサイルを完成させたという立場を既成事実とみなすことにした可能性をうかがえるものだ。

■先に核抑止力、後に経済建設が「並進路線」

 金正恩政権は2013年3月、「並進路線(経済建設と核武力建設を並進させることについての新たな戦略的路線)」を新しい国家戦略として打ち出した。これは、経済建設と核武力建設(核・ミサイル開発)を同時並行で進めるというものではない。

 金正恩委員長の発言をよく読むと、それは事実上の二段階論であることが分かる。「平和も、富強繁栄も、人民の幸福な生も、強力な核武力の上にあります」「自衛的な核保有を永久化し、それに基づいて経済強国を建設して決定的勝利を成し遂げましょう。そこに並進路線を提示したわが党の意図があります」などと述べられている。

 つまり、先に抑止力を確保する。それによって平和が確保され、経済建設に集中できる、という論理なのだ。だからこそ金正恩政権は、強い経済制裁にもかかわらず核・ミサイル開発に邁進してきた。叔父の張成沢氏を処刑したり、幹部を突然降格させたかと思いきやすぐに再昇格させたり、金正恩委員長には主として人事政策と関連して「暴走」イメージが持たれやすい。だが、少なくとも「並進路線」については自分なりの論理に基づいた行動で一貫している。

 金正恩委員長は「並進路線」によって、「国防費を増やさずとも、少ない費用で国の防衛力をさらに強化しながら経済建設と人民生活の向上に大きな力を回せるようにする」という展望を示したのである。

■まず核開発を急いだ理由は、リビアの教訓と国内での権威付け

 とにかく核戦力の完成を急ごうとする並進路線が金正恩時代になってから登場した背景には、いくつかの要因が考えられる。核・ミサイル開発の第一の目的が抑止力確保であることは昔から変わらないのだが、金正日時代よりも金正恩時代の方がその傾向を強く見せている。

 第1の理由としては、金正日国防委員長が死去し、金正恩国務委員長が権力を継承した2011年という時期を挙げられる。2003年に核開発計画を放棄したリビアのカダフィ体制は、まさに2011年に崩壊した。金正恩委員長は、カダフィ体制は核開発を放棄してしまったから自分を守ることができなかったと認識している。

 金正恩委員長は並進路線を打ち出した頃、「バルカン半島と中東地域の諸国の教訓」から学ぶ必要を強調し、「核兵器保有国だけは軍事的侵略を受けなかった」と主張した。「中東」はリビアを念頭に置いた発言だ。リビアは核開発放棄によって内戦へのNATO軍の介入を防げなくなり、体制崩壊とカダフィ大佐殺害につながったという認識だ。

 第2の理由は、権力継承時の年齢だろう。金正恩委員長が国のトップになったのは弱冠27歳の時で、現在でも33歳にすぎない。北朝鮮メディアは金正恩委員長の偉大性を国民に周知させようとする大々的なプロパガンダを繰り広げているが、祖父や父に比べれば実績不足は明白だ。それを核・ミサイル開発で補おうとしたことは明らかである。

 北朝鮮の国営メディアは金正恩時代になってから、核実験やミサイル実験の実施を最高領導者自ら命じていることを大きく宣伝し始めた。核・ミサイル開発の成果を金正恩委員長個人に帰属させることによって、「若き指導者が先代も作れなかった核兵器やICBMを開発した」「国際社会は驚き、米国や日本は怯えている」「金正恩委員長はすごいではないか」という宣伝を展開してきたのである。

 金正恩時代の「並進路線」が核・ミサイル開発を優先させる背景には、抑止力確保を急がねばならないという脅えとともに、金正恩委員長の権威付けという国内政治の文脈があった。そのために、これまで外交は後回しにされてきたと考えられる。

■今後を読む鍵は金正恩氏の「現地指導」

 昨年5月に開催された第7回党大会においても「並進路線」が恒久的な路線だと確認された。今年10月7日の党中央委員会全員会議では、「並進路線を堅持して主体の社会主義の道に沿って力強く前進してきたことは至極正しかったし、今後も変わることなくこの道へ前進しなければならない」と表明された。

 あくまでも並進路線を追求するということだが、冒頭に述べたように対米抑止力を確保したという認識に至ったのならば、今後は経済に軸足を移していくことも考えられる。究極的には米国を相手にした交渉を行って自らに有利なディールをまとめたいのだろうが、抑止力が確保されたのならば、朝鮮戦争の休戦協定を平和協定に転換するための交渉を急ぐ必要はない。

 それよりも、核・ミサイル実験を一時的に停止するだけでも対話に応じてきそうなロシアや韓国を相手にすればよいと考えているかもしれない。ロシアや韓国との対話を始めることによって国際包囲網を揺さぶりつつ、米国が無条件で対話のテーブルに着くのを待つというシナリオを考えている可能性すらありそうだ。

 金正恩氏は、初めて「並進路線」について言及した際、その目的を「経済建設にさらに大きな力を注ぎ、わが人民達が社会主義富貴栄華を心ゆくまで享受する強盛国家を建設するため」だと規定した。現在もなお、経済建設の重要性は連呼されている。今後も民生関連の現地指導を主としていくのか、それとも軍関連が再び増えるのか。金正恩委員長の動静報道が情勢を見極めるヒントの一つとなろう。


 

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