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銀行員が生き残る道は、金持ち客を抱えて他人に渡さないことだ(ダイヤモンド・オンライン)
http://www.asyura2.com/18/hasan126/msg/825.html
投稿者 赤かぶ 日時 2018 年 4 月 25 日 21:14:45: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

銀行員が生き残る道は、金持ち客を抱えて他人に渡さないことだ
http://diamond.jp/articles/-/168512
2018.4.25 山崎 元:経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 ダイヤモンド・オンライン



新しい銀行店舗

 銀行員を含む全ての金融マンに浪川攻氏の近著『銀行員はどう生きるか』(講談社現代新書)をお勧めしたい。

 著者の浪川氏は、1980年代から金融業界を取材されているベテランの金融ジャーナリストで、筆者は個人的に存じ上げている。

 筆者が浪川氏と会ったのは、筆者が信託銀行に勤めていた1980年代後半だった。1991年には『週刊金融財政事情』の記者だった浪川氏に、信託銀行のファンドトラストにおける利回保証と、ファンド間の利益移し(共にもちろん違法である)の問題をどう告発するかについて相談したことがある。

 その後、浪川氏は東洋経済新報社の記者に転じて、長く金融業界の取材に携わった。同社の看板商品である「東洋経済会社四季報」でも、多くの銀行の取材と記事を担当されていたと記憶する。思い起こすと、山一證券に勤めていた筆者に、「山一自主廃業」のニュースを最初に知らせてくれたのも浪川氏だった。

 さて、『銀行員はどう生きるか』とはストレートなタイトルだが、この本で浪川氏は、日本の銀行業界がどのような苦境にあるのかというよくある話だけではなく、主に米国の銀行ビジネスの展開を参考に、日本の銀行がどのような方向に変化していくといいのかを論じている。

 近未来の銀行ビジネスの予想と同時に、将来の希望に対するヒントも提示している点に本書の大きな特色がある。暗い見通しをあおるだけの本ではない。

 銀行の特に個人顧客を相手にするビジネスは、情報テクノロジーを、単にコストカットだけではなく、顧客の利便性を向上し、満足度を高めるために使うことによって活路を開くことができる可能性があると浪川氏は説く。

 なお、金融関連情報テクノロジーは「フィンテック」と呼ぶと調子がいいのではないかと思われる読者がおられるかもしれないが、巷間、「フィンテック」と称されるものは玉石混淆で役に立たないものもあるし、銀行業ビジネスに関係のないものもある。本稿では、銀行が利用する各種のデータ処理やRPA(ロボットによる事務処理)などを「情報テクノロジー」と総称することにする。

 本書の冒頭で先進的な例として詳しく取りあげられているのは、三井住友銀行の中野坂上支店だ。わが国の三つのメガバンクの中で明らかに一歩先を進んでいるのは、三井住友銀行なのだという。

 詳しくは、本書に当たってほしいが、同支店には、通常の銀行支店にあるようなカウンターがなく、カウンターの奥にいる事務処理部隊がいない。支店長自らが顧客を案内し、まるでレストランのフロアマネージャーのような役割を果たしていることが報告されている。

 顧客は、書類に住所氏名などを何度も書かされたり、印鑑を朱肉に付けたりする必要もなく、諸々の手続を進めることができるし、行員は、顧客へのアドバイスに集中する事ができる(筆者注:ただ、アドバイスと称するセールス行為なので、顧客側では油断しない方がいい)。

 情報テクノロジーの利用によって、事務処理周りのコストダウンだけでなく、顧客の銀行利用がより快適なものになり、対顧客へのセールスが内容的にも人数的にも強化される効果がもたらされることになる。

立ち直る米銀、苦境深まる邦銀

 スーパーリージョナルバンクとして知られるウェルズ・ファーゴ銀行を始めとする米銀の多くの支店が、既に同様に運営されており、こうした工夫の効果もあって、リーマンショック後に自信を失いかけていた米銀が、経営的に大いに立ち直って自信を回復していることが、本書では報告されている。

 本書によると、典型的な米国の銀行支店は、銀行員の人数がせいぜい数人であり、カウンターの奥の事務処理部隊がいない。これを可能にしているのは、もちろん情報テクノロジーの活用だ。

 数十人の行員や、派遣社員などを抱えて、支店長には「一国一城の主」の趣がある邦銀の大型支店とは大差の支店像だ。

 わが国でも、将来の銀行員は、一国一城の主的な支店長を目指すことが現実的ではなくなるはずだ。その代わり、今までよりも高い比率で支店長になる事ができるのかもしれない。

 しかし、例えば、本書で報告されるウェルズ・ファーゴの支店の行員たちの給与水準(米国の金融業であることを思うと大変安い)を思うと、今後の邦銀のリテール銀行員は、仮に、勤め先の銀行自体が情報テクノロジーの活用によって生き残ることができて支店長の肩書きを持っていたとしても、かつてのようなステータスのある支店長になることは不可能であり、収入的にも大きな希望を持てないことが分かる。銀行業について「ベストの将来」を想定したとしても、銀行員という職業には、大きな期待は持てない。

 なお、浪川氏は、わが国の地方銀行の経営悪化が、かつての金融庁の想定以上のペースで進んでいて、出口のあるビジネスモデルが見えないという既に広く知られている事実に加えて、収益を支えているとされたメガバンクの国際業務も、ドル資金の調達コスト上昇が圧迫要因となって伸びが止まっていることを指摘している。

 もちろん、地銀・メガ双方で、高コスト体質に加えて、長期金利を抑制する金融政策で利ざやが圧迫されている国内業務の状況は大変厳しい。

 また、浪川氏は、邦銀の経営者が顧客のデータに関して意識が低かったことを的確に指摘している。例えば、コンビニエンスストアで公共料金や税金が支払えるようになることを、かつての邦銀は、細かな事務作業を要する訪店客が減る事態としてむしろ歓迎していたが、気づいてみると、個人の公共料金の支払い及び税金の支払い実績といった信用判断にとって極めて重要なデータを失っていた。競争戦略上、何とも不用意であった。

 ちなみに、浪川氏のかつての勤務先が発行する金融業界の老舗の業界誌『週刊金融財政事情』の最新号である4月23日号の特集のタイトルは、「アマゾン・エフェクト」だ。「アマゾンが変える経済のあり方」、「『バンク・オブ・アマゾン』の計り知れない影響力」、「金融界にイノベーションをもたらすアマゾンサービス」といった論考が並ぶ。銀行員は、浪川氏の本に加えてこの号の「金財」も読んでおくといい。

 なお、脇道にそれるが、この号の「金財」のコラム「新聞の盲点」は、「FFGと十八銀行の経営統合巡り、金融庁と公取委が対立」と題して、ふくおかフィナンシャル・グループと十八銀行の経営統合が、公正取引委員会の判断が障害となって進まない問題が取り上げられている。

 両官庁双方に言い分はあろうが、このレベルの地域金融機関の統合ができないようでは、地域の金融機関の多くで長期的な存続の目処が立たない。店舗・人員の削減、給与抑制などの統合後のリストラ計画を提出させて、このメリットを顧客との取引条件に還元させる金額を事前に約束させるような形で(もちろん、実施状況を金融庁がチェックする)、双方の顔を立てつつ早期に認めるような方法を模索すべきではないだろうか。

生き残りの道は金持ち客の取り込み

 業務や立場を情報テクノロジーに置き換えられ、対顧客への営業により多く動員され、その上、高い報酬は望めそうにない邦銀のリテール営業マンにとって、唯一の活路をズバリ言うなら、富裕客を「個人として持つ」こと以外にない。

 普通の顧客との取引は、今後情報テクノロジーに取って代わられて、銀行員個人の出る幕はどんどん小さくなるし、テクノロジーの利用に関しても銀行間に競争が働いて、それほど儲かるものにはならない。加えて、個々の顧客に対して自分以外の別の銀行員が対応することが可能だ。

 一方、経済の状況から見て、日本でも貧富の格差が拡大することは確実だろう。

 金持ち以外を相手にしても、今後のリテール金融ビジネスは儲からない。特に、人間が手を掛ける業務領域にあっては、それ以外のビジネスに活路があるとは考えにくい。

 金持ちに「個人として」がっちり食い込んで、仮に自分が職場を変わる場合には、顧客と資産がついてくるような状況を作ることができると、銀行員は個人としての人材価値を持つことができるようになる。端的に言って、顧客を連れて転職したり、独立して金融的なサービス・ビジネス(例えば、証券仲介業者となって「IFA」を名乗ったりすることなど)で稼ぐことが可能になる。

 現在、銀行は富裕客の多くと取引を持っているし、彼らの金融行動について豊富なデータを把握している。銀行は、富裕客と近づくチャンスが相対的に多い職場だと言えるだろう。

 ここで心掛けてほしいことが二つある。

 一つ目は、銀行員として人事的なポイントを多く稼ぐことができる商品(顧客にとっては100%ダメな商品である)を売るのではなく、顧客にとっていい商品を売って、銀行にではなく、顧客に評価されるように努めることだ。ここでは戦略的な意識の転換が必要だ。

 目先の人事評価や、営業目標の数字を追って、将来「自分の手の内に入った客」になるかもしれない大事な顧客を銀行に売り渡すのはつまらない。

 もう一つ肝心なのは、自分の客になった富裕顧客を、同じ銀行内のライバルに渡さないことだ。「お客様には誰でも対応できるようにしましょう」、「顧客にはチームで対応しよう」といった甘言に乗って、大事な客を漫然と銀行の客にしたり、行内のライバルの担当客にしたりするのは人が良すぎる。

 本当は、ライバルから客を奪うことが手っ取り早い顧客と資産の獲得法であったりもするのだが、そこまでやれとは言うまい。

 しかし、銀行経営が外国の金融機関をまねるのだから、銀行員が外資系金融機関の金融マンのやり方をまねても悪くはあるまいと考えるなら、「悪い人」になることが成功への道であることがほぼ確実だ。

 この辺りの事情は、同じ講談社新書で、杉山智一「プライベートバンカー驚異の資産運用砲」という少し前に出た書籍に詳しく書いてある。金融マンには、運用法よりも社内の駆け引きの方が参考になるはずだ。

 なお、顧客の立場で銀行及び銀行員とどう付き合ったらいいのかについては、同じく講談社現代新書の拙著「信じていいのか銀行員」を参考にしてほしい。

 前書きの冒頭で「『とんでもない! 銀行員を信じるような人になってはいけない』というのが本書のメッセージだ」と結論を書いておいたのだが、情報テクノロジーが進歩しようと、銀行員の愛想が良くなろうと、この結論には何ら揺るぐ要素がない。

(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)



 

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