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これから日本に「メガ景気」がやってくる 失われた20年で日本企業は最強に
https://president.jp/articles/-/25767#cxrecs_s
2018.7.31 武者リサーチ代 武者 陵司 PRESIDENT Online
「失われた20年」という言葉にいいイメージを抱く人はいないだろう。しかし、経済アナリストの武者陵司氏は、「失われた20年の間に、日本企業はビジネスモデルを大転換させた。ナンバーワンからオンリーワンに戦略を変えたハイテク企業に引っ張られ、これから日本には『メガ景気』がやってくるだろう」と予測する。その根拠とは――。
※本稿は、武者陵司『史上最大の「メガ景気」がやってくる』(KADOKAWA)を再編集したものです。
ナンバーワンを目指して挫折した日本が、オンリーワンで復活する(写真=iStock.com/IgorSPb)
ナンバーワン志向だから日本経済は転落した
もう随分と前の話になりますが、民主党が政権をとったとき、行政刷新会議の事業仕分けにおいて、「二位じゃだめなんですか?」という質問を投げかけた議員がいました。エズラ・ヴォーゲル氏の著書『ジャパン・アズ・ナンバーワン』ではありませんが、かつての日本はとにかく世界ナンバーワンを目指して、さまざまな技術開発を行ってきました。くだんの事業仕分けのやりとりは、スーパーコンピュータの研究分野において、日本がナンバーワンをとる意味があるのかどうかということだったのですが、ナンバーワンにせよ、ナンバーツーにせよ、私に言わせれば、どちらも意味がありません。
確かに、ナンバーワンになることは、グローバルな競争分野においては大事なことかもしれません。しかし、実は、途方もない努力をしてナンバーワンの座を射止めたとしても、技術が日進月歩の世界においては、すぐに逆転されてしまうケースがいくらでもあります。それはハードの性能においても、あるいは製品のシェアにおいても同じことです。ナンバーワンを維持するのは、非常に大変なことなのです。
日本経済はかつて、主要製造業で米国を凌駕し、あわや世界一の経済大国になる寸前まで行ったことがあります。家電や自動車を筆頭に、日本が米国の主要産業をどんどんキャッチアップしたため、それらは軒並み衰退の一途をたどりました。それまでは米国企業が世界的に圧倒的なシェアを持っていた分野を、軒並み日本企業が奪っていったのです。
しかし、日本企業の栄華も長くは続きませんでした。バブル崩壊後の「失われた20年」で、かつて米国製造業がたどった衰退への道を、日本経済もたどる恐れが出てきたのです。
実際、1990年代に入ってからは、アジアNIES(韓国,台湾,シンガポール,ホンコン)や中国の急速な技術面のキャッチアップに加え、大幅な労働コストの格差、他国の最新鋭設備の稼働により生産性上昇スピードで格差をつけられたことなど、どこを見ても日本企業にとって不利な条件ばかりが揃っていました。
そして、平成の間に、伸び悩んだ日本のGDP(国内総生産)は中国の後塵を拝すこととなり、世界第2位から第3位へと後退してしまいました。今後も経済規模ではインドなど、中国に次ぐ新興国が台頭してくる可能性があり、日本のGDPが世界第3位にとどまっていられるのも、いつまでのことなのかと、心許なくなります。
なぜいま日本企業は絶好調なのか
ところが、不思議なことに日本の企業は元気いっぱいです。2018年3月期決算は、純利益ベースで前期比27パーセント増の27兆9615億円となり、2年連続で過去最高を記録しました。日経平均株価は、平成という時代を通じてほとんど上昇せず、名目GDPもほぼ横ばいだったのに、なぜか企業は元気なのです。その理由は、「失われた20年」の間に、多くの日本企業が、ビジネスモデルの大きな転換を図ったからです。
『史上最大の「メガ景気」がやってくる 日本の将来を楽観視すべき五つの理由』(武者 陵司著・KADOKAWA刊)
その根拠として、日本の企業収益が劇的に上昇していることを挙げておきましょう。企業の営業利益を対GDP比で見ると、11.9パーセントという過去最高の水準に達しています。また、日銀短観による製造業大企業の経常利益率は、2017年度は8.11パーセントと予想されていますが、それはバブル景気のピークだった1989年度の5.75パーセント、リーマン・ショック直前の景気がピークだった2006年度の6.76パーセントをも大きく上回っています。
ここで、このような疑問を抱く方もいらっしゃるでしょう。日本の名目GDPはここ二十数年、ほぼ500兆円で横ばいであったにもかかわらず、なぜ企業収益だけが顕著な増加を見せているのか、と。
それは、多くの日本企業がナンバーワンではなく、オンリーワンを目指すようになったからです。これこそが、日本企業のビジネスモデルの大転換といってもいいでしょう。かつての日本企業は、とにもかくにもナンバーワン志向でした。1980年代までの日本は、導入技術と価格競争力により、世界の製造業主要分野においてナンバーワンの地位を獲得しました。銀行の総資産世界ランキングでも、日本の都市銀行がずらりと上位を独占していたことを覚えています。まさに、ジャパン・アズ・ナンバーワンの時代でした。しかし、このビジネスモデルは、米国による日本叩き、超円高、韓国などアジア諸国企業による模倣と追撃により、完全に通用しなくなりました。
かつて日本が支配した液晶、パソコン、半導体、テレビというデジタルの中枢分野において、今や日本企業のプレゼンスは皆無といっても過言ではないでしょう。ましてやスマートフォンになると、日本製品の世界シェアは惨憺たんたる有様です。個人がメインユーザーとなるデジタル製品の分野において、日本は完全に世界の後塵を拝しているとしか、いいようがない状況です。にもかかわらず、前述したように、日本企業の業績は過去最高といってもいいくらいに堅調です。この現実を見て、「???」という人も多いでしょう。
日本企業はいったい何で稼いでいるのか
では、日本企業はいったい何で稼いでいるのでしょうか。日本企業が稼いでいるのは、「周辺と基盤の分野」です。たとえばデジタル機器が機能するためには、半導体などの中枢分野だけではなく、半導体が処理する情報の入力部分をつかさどるセンサーや、そこで下された結論をアクションにつなげる部分のアクチュエーター(モーター)などのインターフェース、すなわち周辺分野が必要になります。この周辺分野の製品製造に、日本企業は強みを持っているのです。
また、中枢分野の製造工程を支える素材、部品、装置などの基盤でも、日本企業は極めて優れた製品を提供しています。これこそが日本企業の強みであり、ナンバーワンではなく、オンリーワンで成功を収めている最大の理由です。たしかに日本は、パソコンの頭脳にあたるCPU(中央演算処理装置)の開発競争では敗れましたが、その周辺および基盤の分野において、圧倒的な強みを持っているのです。
このことの最大のメリットは、価格競争にさらされるリスクが極めて低いことです。CPUや半導体は、世界的に価格競争が非常に激しい分野です。半導体といえばかつては日本のお家芸のようなもので、世界の半導体シェアの50パーセントを日本企業が占めていましたが、今や8パーセント程度までシェア率を減少させています。最後に残った大手半導体メーカーである東芝ですら、半導体部門の売却を余儀なくされました。
日本にしかできない技術を用いる
50パーセントものシェアを握っていた1990年当時に比べて、為替レートは大幅な円高になり、日本の半導体は世界市場における価格競争力を失いました。もちろん、その間に台湾などアジア新興国が半導体市場に参入し、競争が一段と激化したことも、価格競争に一段と拍車をかけました。
いずれにしても、半導体そのものは厳しい価格競争にさらされ、日本の半導体メーカーにとっては、儲からないビジネスになってしまったのです。このように半導体自体の価格競争は激しく、利幅の薄い商売になってしまいましたが、日本がオンリーワンとして認められている半導体の周辺ビジネスは、そもそも日本にしかできない技術を用いているので、価格競争にさらされずに済んでいます。
この周辺分野の強みを具体的に挙げると、たとえば半導体の素材となるウエハーは、日本メーカーの独壇場です。日本企業は、一番市場が大きいエレクトロニクス機器の本体で、世界ナンバーワンのシェアをとることには失敗しました。しかし、周辺と基盤の分野において、他国の追随を許さないほどの高い技術力を身につけ、見事に生き延びているのです。日本企業の強みは、余人をもって代えがたいところにあるのです。
希少性で価格支配力を強める日本の技術
このように、オンリーワン戦略によって価格競争に巻き込まれることなく、独自の成長ビジネスモデルを展開している日本企業、なかでもハイテク業界においては、これから数十年ぶりに、極めて高い成長率をともないながら、投資対象の首位に座る時期が到来しそうです。なぜなら世界的に、IoT関連投資が活発になるからです。
インターネットを介して、あらゆるものがつながる、IoT時代に向けたインフラストラクチャー構築が、いよいよ本格化してきます。加えて中国が、すさまじいまでの勢いで、ハイテク投資に邁進しています。中国は巨額の投資を継続的に行うことで、経済成長が維持されている国ですが、言い換えれば、投資を止めた時点で経済成長が止まり、ただちに景気後退に陥る恐れがあります。
その中国が、ハイテクに照準を絞って巨額な投資を始めていることの意味を、私たちはよく考える必要があります。このことは世界的にハイテク業界への資金流入が、今後もしばらく続くことを意味しています。それは、「ハイテクブーム」というにふさわしいほどの、大きな流れになるでしょう。そのハイテクブームにおいて、日本は極めて有利なポジションに立っています。
前述したように、日本のハイテク産業は、新たなイノベーションに必要な周辺技術、基盤技術のほぼすべてを兼ね備えているからです。ハイテク産界において、日本のライバルともいうべき中国、韓国、台湾、ドイツは、ハイテクそのものに投資してはいるものの、その周辺や基盤は技術・商品の多くを日本に依存しています。つまり、日本のエレクトロニクス企業群は、このイノベーションブームの到来に際して、最も適切なソリューションを世界の顧客に提案・提供できるという、唯一無二の強みを持っているのです
ディスカウント合戦の中で強みを発揮
さらにいえば、半導体製造のように大量の資金が投入される中枢分野は、極めて激しい競争にさらされ続けます。現在、中国がハイテクセクターに多額の投資を行っているのは、この中枢分野における業界標準とシェアを取りに行こうとしているからです。ただし、多額の投資をしたからといって、必ず勝者になれるとは限りません。敗者になってしまったら、莫大な投資は無駄になります。実に苛烈な競争なのです。特に中国はこの中枢分野における支配力を強めようとして、国家資本を国有企業を通して半導体と液晶に大量に投下しており、価格競争の主役になり始めています。
あちらこちらでディスカウント合戦が繰り広げられ、最後の最後には、どこにも勝者がいなくなるという悲惨な状況になることも、十分に考えられます。こうなったときに、ますます強みを発揮するのが、日本なのです。前述したように、ハイテクの中枢分野において、日本はすでに負け組となり、多くのハイテク企業は、もはやこの分野に収益を依存していません。日本が今、強い競争力を維持しているのは、希少性が高く、価格支配力が維持できる、オンリーワンの分野なのです。
武者陵司(むしゃ・りょうじ)
武者リサーチ代表
1949年長野県生まれ。1973年横浜国立大学経済学部卒業、大和証券入社。企業調査アナリスト、大和総研アメリカでチーフアナリスト、大和総研企業調査第二部長などを経て97年ドイツ証券入社。調査部長兼チーフストラテジスト、2005年副会長、09年武者リサーチ設立。
(写真=iStock.com)
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