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米中貿易協議に関して(在野のアナリスト)
http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/220.html
投稿者 赤かぶ 日時 2018 年 8 月 18 日 01:07:30: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

米中貿易協議に関して
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/archives/53091226.html
2018年08月17日 在野のアナリスト


中国商務次官が訪米し、22日から協議入りするとのことです。しかし事務方の会議であり、23日には米国からの160億$の追加制裁措置が発動されることから、まずはその話し合いから始まるものと予想されます。中国としては景気減速が鮮明になってきて、財政出動による景気下支えと、住宅価格の再上昇を容認するなど、なりふり構わなくなってきており、米中協議でも中国側が妥協する、というのが一般的な見方です。しかし米中貿易戦争の発端である中国の知財などの問題は、そう簡単に片付くものではありません。

口先だけ約束して、とりあえずやり過ごす、ということも中国の対応では多いですが、対米貿易黒字は毎月発表されますし、知財の問題を先送りしても、すぐに貿易問題に切り替わるだけでしょう。米国の要求が多いからこそ、ハードルも高く上げているのであって、それが一度の話し合いで解決できるはずもありません。中間選挙の前に成果の欲しいトランプ大統領が、どこを妥協点としているかも見極めにくく、折り合いがつけられるかも予断を許しません。今回は互いに腹の探り合いになるだけでしかないでしょう。

そんな中、米国防総省が中国軍事動向の年次報告書で、海兵隊にあたる陸戦隊を2020年までに3倍の3万人規模に増強、とします。ただし、これを尖閣と絡めて考えるのは早い。中国はその前に、アジアやアフリカ、南米などで条件付き投資をすすめ、数十年先までの使用権を確保してきた。港や軍事基地など、お金をだして整備した上で、中国がつかう権利を得てきたのです。しかし新興国不安が起きる今、嫌が上にも相手国の政変によって、その権利を何の補償もないまま奪われかねない。つまり中国は、自国の権利を守るためにも陸戦隊を用いてそれらの無為に奪われる権利を、守っていかなければいけません。

一帯一路に代表されるように、中国は様々な国に手を広げてきた。未だに先進国投資が細る新興国から、融資を頼られるのも中国です。逆にいえば、リスクをとって投資してくれるのが中国だけであり、その中国にとっては自分たちの使用する権利など、実利も伴っていなければいけなかった。それを守る戦いを、今後強いられることになるのです。

そうした動きは、恐らく同時多発的におきるため、中国としては陸戦隊を増強するしかない。ただ、中国でも人件費が上がり、人民解放軍のなり手も減少する。何より急速に高齢化がすすむので、徴兵制にしなければ間に合わなくなるかもしれない。人件費や福利厚生の手厚さで人を集めることがムリなら、強制するしかないのです。しかしそうすると士気は低下する。今後、人民解放軍の質の低下が、国際的な問題になるかもしれません。

尖閣諸島周辺に向けた漁船も、今年は日本の領海への侵入は少なそうです。10月後半にも日中首脳会談、という話もでてきましたが、中国としては米中貿易戦争の中で、日本とも関係を深めておきたい。7月貿易統計でも対中貿易が堅調だったように、日本の販路を失うわけにはいかない、というところでしょう。漁民の不満を逸らすより、経済全体の落ち込みをより意識していることが、中国共産党の判断の中に見え隠れするようです。

シャドーバンキングの規制も、締め付けすぎれば景気を悪化させる。地方の債務拡大も、すでにいつデフォルトしてもおかしくない水準、とされる。今はまだ、中国リスクは然程意識されていませんんが、米中貿易協議が頓挫すると、改めて中国の抱える様々な問題が意識されることでしょう。そして新たに浮上する中国の軍事費拡大、という懸念。負債大国が抱える闇、中国では『一万を恐れず、万一を恐れる』とも言われますが、今の中国はまさに『万一』が起きかねず、そのときは新興国不安を加速度的に悪化させる恐れがあることには、注意しておかないといけないのでしょうね。


 

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コメント
1. 2018年8月18日 19:03:20 : g0IDi09OCk : UQbDNUnByFU[75] 報告
膨らます 大きく破裂 させるため
2. 2018年8月19日 06:53:18 : jXbiWWJBCA : zikAgAsyVVk[1317] 報告
  ■ 『from 911/USAレポート』第774回

    「2018年『波乱の秋』3つのシナリオ」

    ■ 冷泉彰彦:作家(米国ニュージャージー州在住)

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(冷泉彰彦さんからのお知らせ)

<その1>

もう一つのメルマガ、「冷泉彰彦のプリンストン通信」(まぐまぐ発行)
http://www.mag2.com/m/0001628903.html
(「プリンストン通信」で検索)のご紹介。

JMMと併せて、この『冷泉彰彦のプリンストン通信』(毎週火曜日朝発行)もお読
みいただければ幸いです。購読料は税込み月額864円で、初月無料です。

<お知らせ、その2>

『自動運転「戦場」ルポ : ウーバー、グーグル、日本勢 ── クルマの近未来』
(朝日新書、税込み853円)という本を出版いたしました。皆さまの議論の一助と
なればと思っております。書店等でご覧いただければ幸いです。

http://mag.jmm.co.jp/39/13/310/148670

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 ■ 『from 911/USAレポート』               第774回
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 2016年の9月から10月にかけて、「もしかしたらヒラリーが負けるかもしれ
ない」という見方が出始めていた頃の話です。当時のアメリカの株式市場では「トラ
ンプが大統領になるかもしれない」という話題は、イコール「株安」につながってい
ました。そして、「11月にトランプが勝ったら大暴落が起きる」ということが信じ
られていたのです。

 その頃、言われていたのは「トランプの勝利は、アメリカに取っての Brexit」だか
ら、最低でも10%から15%の暴落は必至だろうというものでした。もっと具体的
には、当時の市場はヒラリー勝利を織り込んでいたわけですし、そもそも「NAFT
A見直し」だとか「貿易戦争」といった「政策」というのは、グローバル経済に最適
化しているアメリカ経済を壊しかねないと思われていたからでした。

 では、実際にトランプが当選したことで、株の暴落が起きたのかというと、そうで
はありませんでした。反対に、株は上昇して行ったのです。きっかけは、2016年
11月8日の晩、当選確実の報道を受けて行った「勝利宣言スピーチ」でした。今か
ら考えると、全く信じられないのですが、「分断から和解を」と訴える格調の高いス
ピーチだったのです。

 このスピーチを契機として、株価は一気に上がって行きました。実は、当確が打た
れたアメリカ時間の8日の深夜(実際には9日未明)に、売買がされていた大きな株
式市場は東京だけで、その東京は「ヒラリー敗北悲観で暴落」していたのでした。と
ころが、東京がクローズする前後でトランプの演説が出て、これを契機に上げに転じ
たのは欧州市場だったのです。明けて9日のNYは全面高になったのでした。

 この「和解のメッセージ」がどうして株高を招いたのかというと、そこには明確な
期待があったからです。それは「ドナルド・トランプ」というのは変人奇人として選
挙戦を戦ったが、それはあくまで勝利のための戦術であって、実際にホワイトハウス
に入ったら、「普通の共和党大統領」として常識的な政治を行うのではという期待で
した。

 その期待は、しかしながら年が明けて2017年1月の就任式で一気に裏切られる
ことになりました。就任演説で、事もあろうに大統領は「アメリカ・ファースト」と
二回叫び、しかも「アメリカ・ファースト・オンリー」という、あくまで自己流の政
策を貫くことを宣言したのです。

 しかしながら、2016年11月に始まった「トランプ株高」は止まりませんでし
た。理由としては、経済のファンダメンタルズが強くなって行く「めぐり合わせ」に
あったということに加えて、規制緩和や減税といった「株高に通じる共和党流の判断」
への期待があったからです。その後、2017年夏にはヴァージニア州で発生した白
人至上主義者のテロ行為について、反対派デモとの「双方に非がある」という大統領
の発言が物議を醸しましたが、これも「経済には直接関係がない」ことから株には影
響を与えませんでした。

 そして、2017年12月には早々に大規模な「トランプ減税」法案を、議会で通
すことに成功して、大統領は市場の期待感に応えたのです。その株価が初めて揺らい
だのは、2018年の2月でした。この頃から「貿易戦争」宣言が本格化しており、
市場はこれに敏感に反応して行ったのです。では、株は暴落へ向かったのかというと、
一旦は大きく下げたものの、一進一退となりつつ、再び高値を追うようになって行き
ました。

 30社の平均に過ぎないNYダウ、ハイテク株に偏ったNASDAQではなく、も
っと市場全体を代表する指標と言われるS&Pで言えば、現在の最高値は1月末の
2872ドルで、現在は2850ドルですから、戻り切るまであと一歩というところ
まで来ています。この戻しですが、「雇用も消費も堅調で、ファンダメンタルズは依
然として強い」「大規模緩和からの連銀の出口戦略のさじ加減が絶妙」「中国との間
は最後には対決回避になるという楽観論」の3点セットで来ているのだと思います。

 とりあえず8月13日から17日の週に関しては、そのような雰囲気で来ています。
今週は、トルコの「リラ・ショック」があり、株もそれなりに動揺しましたが、16
日の木曜日に大きく戻したのは、あくまでこの3点セットが強固だということが言え
ます。

 とりあえず8月17日の現時点では、アメリカ経済と市場の状況はそんなところで
す。では、この先、秋口以降もこの3点セットのような「バランス」が効いて、アメ
リカの経済と市場は安定が続くのでしょうか?

 この秋、2018年の9月というのは2008年のリーマン・ショックの「10周
年」になります。早いものだという感覚もある一方で、この10年間でアメリカ社会
も、そして世界も一変したことを思うと、何とも複雑な感慨を覚えます。そんな、こ
の秋ですが、構造的に考えてみて、「波乱」が起きるのは避けられそうもありません。
とりあえず、3つのシナリオを検討してみたいと思います。

 1番目は、トランプ政権が安定し、株価も安定、アメリカの政治・経済・社会がこ
の秋を無難に乗り切るというシナリオです。そのためには、次のような条件が必要で
す。

(1)景気の暗転が起きず、また連銀が年内の利上げを「上げ過ぎず、据え置き過ぎ
ず」の絶妙な判断で乗り切る。
(2)そのためにもトルコの「リラ不安」は早急に収拾がされ、欧州の金融機関の動
揺も軽微、また難民の欧州への押し出しも回避される必要がある。
(3)政権の「ロシア疑惑」は、側近のマナフォート、フリンなどの有罪で「手打ち」
となりトランプ家からは有罪になる人物は出ない。
(4)中国との通商戦争も9月一杯で解決し、11月のブエノスアイレスG20サミ
ットには「しこり」を残さない。
(5)景気の安定ということ、また民主党サイドの「過度の左シフト」の結果、11
月の中間選挙では、上下両院とりわけ下院において共和党は過半数を維持する。
(6)その結果、大統領の弾劾裁判は成立の可能性が消滅する。

 この6点は、相互に関連があると見なくてはなりません。例えば、(3)のロシア
疑惑がどんどん深刻化した場合には、「トランプ劇場」の演出はより過激化して、支
持者を「面白がらせる」必要が出て来ますから、トルコや中国との和解は難しくなり
ます。問題を思い切り「こじらせ」た上で、敵味方の峻別を濃厚にして行く必要が出
てくるからです。一方で、リラ不安や米中通商戦争の激化ということになれば、市場
は持たないでしょう。

 2つ目のシナリオは、「株安が先」というものです。アメリカ経済のファンダメン
タルズは強いと言われています。例えば、大規模小売のウォールマートは史上最高の
決算だというのですが、私にはそれがちょっと引っかかるのも事実です。廉価品中心
のウォールマートが大きく伸びたというのは、消費センチメントが「どこか冷え込ん
できた」兆候なのでは、という疑念も少しあるからです。

 ウォールマートについて言えば食料品が売れているというのですが、乾物はPBも
含めて悪くないのですが、生鮮品は質的に相当落ちるので、それが売れているという
のは、あんまりいい感じがしません。見方として、インフレからの生活防衛という範
囲であれば許容もできるのでしょうが、私が気にしているのは、それこそ今から10
年前、リーマンショックの闇が全米を包んでいた時、かなり良い身なりをした客層が
ウォールマートに殺到していたという異様な光景です。

 もしかしたら消費のセンチメントが下がってきているのでは、そんな感覚があるの
です。航空会社も史上最高の決算というのですが、国内線に乗って大空港の賑わいな
どを見ると、春先に比べて、夏場の勢いはどうも今ひとつのような感じがしてなりま
せん。ネット広告にしても、SNSにしても収益ということでは、伸び悩みの時期に
来ている感じもします。

 そんな中で、仮に9月に連銀が「強すぎる引き締め」に動いた場合、あるいは「ト
ルコのリラ問題」の長期化に市場が耐えられなくなった場合に、それこそ「リーマン
・ショックの10周年」を契機として、市場と景気、雇用が大きく動揺するかもしれ
ません。

 そうなると、それこそ2008年の大統領選の再現で、9月から11月へと一気に
政権与党がモメンタムを失って、今年の場合は中間選挙における共和党の大敗という
ことになる可能性もあります。

 3つ目のシナリオは、「選挙の敗北が先」というシナリオです。景気も株も「だま
しだまし」行って、11月まで大破綻は回避できた、だが、選挙で共和党は大敗して
しまい、そこからダラダラと問題が深刻化、という流れです。

 この順番は最悪です。というのは、仮に「直前まで共和党優勢」で「蓋を開けてみ
たら大敗」ということになると、そのショックが大きいだけではありません。民主党
は、直ちに「大統領弾劾」のプロセスに進む可能性が大きいのです。ちなみに、弾劾
裁判の発議つまり「起訴」というのは下院の司法委員会の決議を受けて下院本会議で
行うので、下院の多数を民主党が取っていれば「できて」しまいます。また上院での
可決には「3分の2」という高いハードルが設定されているのですが、共和党議員の
中にも弾劾に「賛成」という票が出る可能性があり、下院さえ通れば弾劾まで行く可
能性はあると思われます。

 ただし、この大統領がアッサリ辞任するとは限らず、ダラダラと「弾劾のドラマ」
が続くようですと、政治も経済もボロボロになる危険があると思います。更に言えば、
弾劾成立の場合も、大統領辞任の場合もペンス副大統領の昇任ということになります。
その場合に、ペンスとしては「トランプに恩赦を与えない」という冷酷な判断を下し
て、トランプ政治を完全に断ち切り、実現可能な範囲での政治、つまり通常の共和党
的な政権運営をしっかり行えるのかが問われます。

 そこでペンスがウロウロするようですと、弾劾成立の勢いで民主党が更に勢いを増
す、けれども民主党は対立エネルギーの上で突っ走るので、「左シフト」がどんどん
強まり、国民皆保険、最低賃金一律15ドル、移民への市民権付与、労働者の権利拡
充といった政策に突っ走って、市場はこれを嫌い、経済が立ち直らないという可能性
もあるでしょう。

 反対に、2番目のシナリオのように、早めにトランプ経済が崩れ、トランプ政治が
行き詰まる、その場合は、同じように弾劾騒動にはなるでしょう。ですが、民主党に
は「政権運営への真剣な覚悟」が問われますから、実現可能な政策、つまり「頭を冷
やして、やや中道」という姿勢が取れるかもしれません。3番目のシナリオの場合は、
世界経済への影響も含めて、問題は大きくなりそうです。

 株価と景気ということだけで言えば、第1のシナリオ、つまりトランプが「狭いゾ
ーン」の中で現実的な判断をして、中間選挙にも勝ち、なし崩し的に「ようやく常識
的な政権」に移行してくれるのが一番いいのですが、その可能性はかなり低いように
思われます。

 となると、株安が先で選挙敗北がその結果となる「早めの変化」シナリオが「まだ
マシ」であり、ダラダラこのまま進んで選挙で大敗、そこから株と景気のクラッシュ
が始まって、弾劾騒動でそれが悪化しつつ長期化するというのが「最悪シナリオ」と
いうことができると思います。いずれにせよ、リーマン・ショックの「血の底が抜け
るような」経験から10年、この2018年の秋も、アメリカの政治経済は波乱含み
と言えそうです。

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冷泉彰彦(れいぜい・あきひこ)
作家(米国ニュージャージー州在住)
1959年東京生まれ。東京大学文学部、コロンビア大学大学院(修士)卒。
著書に『アメリカは本当に「貧困大国」なのか?』『チェンジはどこへ消えたか〜オ
ーラをなくしたオバマの試練』『場違いな人〜「空気」と「目線」に悩まないコミュ
ニケーション』『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名
門大学の合格基準』『「反米」日本の正体』『トランプ大統領の衝撃』『民主党のア
メリカ 共和党のアメリカ』『予言するアメリカ 事件と映画にみる超大国の未来』
など多数。またNHK-BS『クールジャパン』の準レギュラーを務める。

近著は『自動運転「戦場」ルポ : ウーバー、グーグル、日本勢 ── クルマの近未来』
(朝日新書)
http://mag.jmm.co.jp/39/13/311/148670

3. 2018年8月19日 06:54:52 : jXbiWWJBCA : zikAgAsyVVk[1318] 報告
原油市場は下落トレンドに突入してしまうのか
米国のイラン制裁で主要産油国の協調体制が瓦解
2018.8.17(金) 藤 和彦
イラン大統領、米の「心理戦」批判 制裁再開控え
ドナルド・トランプ米大統領(左、2018年7月18日撮影)とイランのハッサン・ロウハニ大統領(2018年5月2日撮影)。(c)AFP PHOTO / HO / IRANIAN PRESIDENCY〔AFPBB News〕

 米WTI原油先物価格は、7月半ば以降、1バレル=67〜70ドルのレンジで推移してきたが、徐々に下押し圧力が強まっている(米国の原油在庫が大幅増加したことから、8月15日のWTI原油価格は1バレル=64ドル台と6月下旬以来の安値となった)。

 相場の動向を左右する要素は(1)「地政学リスクの上昇」と(2)「原油需要の鈍化懸念」である。

イランの原油生産量は予想ほど減少しない
 まず「上げ」要因である地政学リスクの上昇だが、市場関係者が最も注目しているのは米国とイランの対立であるのは言うまでもない。

 米国政府は8月7日からイラン制裁の一部を再開させた。今回復活したのは自動車や鉄鋼に関するものが中心であり、原油に関する制裁は11月上旬に復活する。

 米国政府はイランに対する制裁を再開させることで、当初目標としていた「イラン産原油の完全輸入停止」には届かないものの、「イラン産原油の輸出量が最大で日量100万バレル削減できる」と予想している(8月10日付ブルームバーグ)。米国の制裁復活を控えて欧州(今年上期の輸入シェア20%)韓国(11%)の石油会社がイラン産原油を手控え始めていることから、イラン産原油の輸出量は徐々に減少し始めており、ピークの日量270万バレルから7月には同232万バレルとなっている。米モルガン・スタンレーは「米国の制裁により今年第4四半期のイラン産原油の生産量は現在の日量380万バレルから最大で同270万バレルにまで落ち込む」との見方を示している。輸出全体の70%、歳入の30%を占める原油輸出量の維持は、イラン政府にとって死活問題である。

 だが、イラン産原油の生産量は市場の予想ほど減少しないとの見方もある。実際に7月のイランの原油生産量を見ても、日量373万バレルとピーク時と比べて5万バレル程度しか減少しておらず、輸出量の減少(38万バレル減)に比べて小幅である。

 欧州や韓国と異なり、イラン産原油の最大の輸入先である中国(26%)は、6月の輸入量は日量72万バレル、7月には同80万バレルとその規模を拡大している。シェア第2位のインド(23%)の7月のイラン産原油輸入量も前月比30%増、前年比85%増の日量77万バレルとなり、過去最高だった。イラン側がインドに対し原油の輸送費用を無料としたことなどがその要因とされている。

 イラン産原油は、販売努力に加え、通貨リヤル安により価格競争力の上昇などが追い風となって、発展途上国を中心に新たな取引先を確保できる可能性がある。

 米国政府は「イラン産原油の著しい削減が制裁回避の条件である」と輸入国に声高に主張しているが、2012年の際も、イラン産原油の輸入国は半年ごとに「著しい削減」の実行を証明することで制裁は免除されていた。「著しい削減」とはいえ、その基準は曖昧であり、少量でも前期に比べて原油輸入が減少していれば制裁は発動されることはなかった。今回も同様の運用になるのではないだろうか。さらに、「主要産油国が協調減産を続けていることから、前回に比べてイラン産原油の代替品が比較的容易に見つかる」との指摘もある。

懸念された米国とイランの軍事衝突
 8月に入ると市場では新たに「米国とイランが軍事衝突する」との懸念が生じた。イランが米国の制裁が開始される直前の2日にペルシャ湾で海上軍事演習を開始したからだ。例年秋に行われる演習がこの時期に実施されるのは異例であり、ペルシャ湾で展開中の米艦艇への連絡もなかった(軍事演習は突発事案が生じることなく無事終了した)。

 イランの最高指導者ハメネイ師は8月13日、トランプ大統領が前提条件なしにイランとの首脳会談に応じる考えを示したことに関連し、「米国とは戦争もしないし、交渉もしない」と断言した。専門家は「米国がイランへの制裁を復活させても、両国関係が急速に緊張することはなく、現状維持が続くだろう。双方とも相手に対する言葉での批判は過激なるだろうが、軍事衝突は望んでいない」と考えている(8月7日付日本経済新聞)。

「革命防衛隊が機雷を撒くなどしてホルムズ海峡を封鎖する」との憶測もあるが、そうなればイラン自らの原油輸出にも大きな支障が生ずることになり、イラン側が取り得る選択肢だとは思えない。

増加している世界の原油生産
 米国とイランの対立を尻目に他の主要産油国は着実に増産している。

 1カ月前に「供給不足に陥る可能性がある」と警戒していた国際エネルギー機関(IEA)は8月10日、「サウジアラビアやロシアなどの産油国が生産を増やしたことから世界的な原油供給懸念が後退した」と認識を改めた。

 世界最大の原油生産国であるロシアの7月の原油生産量は日量1122万バレルとなり、過去最高を記録した2016年10月の水準に肉薄している。世界第3位のサウジアラビアの原油生産量も6月に日量1049万バレルと急上昇した(7月の原油生産量は日量1030万バレルと下落している)。また米国の原油生産量も、頭打ちの傾向があるものの、過去最高に近い水準を維持している(直近の生産量は日量1080万バレル)。

 IEAの8月の月報によれば、7月の世界の原油生産量は前月比30万バレル増の日量9940万バレルとなり、IEAが想定している今年の世界の原油需要見通し(日量9915万バレル)を既に上回っている。

原油価格を引き下げる米中貿易摩擦
 需要面に目を転じると、世界最大の原油輸入国である中国の状況が芳しくない。

 中国の7月の原油輸入量は日量848万バレルとなり、6月(836万バレル)に続いて低水準となった(5月の原油輸入量は920万バレルだった)。このことが市場参加者の不安心理を煽り、原油価格は前日比3%超減の大幅安となった。このところ中国の原油輸入を牽引してきた民間製油所(茶壺)が、原油高や消費税課税の厳格化により精製マージンが縮小し輸入を手控えるようになったことがその要因だ。茶壺の苦境は今後も続く可能性が高い。

 米中貿易摩擦が激しくなることで中国の原油需要はさらに鈍化するとみられる。報復関税の応酬は中国側にとって不利とされている。貿易戦争による実体経済への悪影響は徐々に出始めているが、金融市場(株式や人民元など)では既に顕著である。世界の大手金融機関で組織する国際金融協会は8月7日、「中国の人民元相場の大幅下落が大規模な資本流出を招き金融市場に混乱をもたらす恐れがある」と警戒を呼びかけた。

 米国側はこれまでのところ影響を受けていないが、今後も無傷でいられるだろうか。

 中国政府は8月8日、「米国政府の関税措置に対抗し、23日から米国からの輸入品160億ドル相当に25%の追加関税を課す」と発表したが、当初輸入関税追加のリストに入っていた米国産原油は最終的には除外された。中国商務部はその理由を「中国は石炭から天然ガスへの転換などエネルギー消費の構造調整を行っており、石油や天然ガスの輸入を増やすことが必要だ」と説明している。だが中国の石油会社は、先行きの不透明感から米国産原油の調達に消極的になっている。割安感から2016年以降、米国産原油の輸入を積極的に増加させてきた石油石油化工(シノペック)は、今後、米国産原油の輸入を停止することを決定した(8月3日付ロイター)。

 米国産原油の中国向け輸出量は過去最高だった3月の日量45万バレルから7月は23万バレルにまで減少しており、米国内の在庫増加圧力は高まりつつある。ドライブシーズンが過ぎ原油需要が軟調となり始めるこの時期に在庫が増加すれば、原油価格が大幅下落し、好調を維持する米国の金融市場(ジャンク債や株式)に打撃を与えることになる。

 世界の原油需要の3割を占める米中両国の経済が減速するリスクがあることから、原油価格上昇をリードしてきたヘッジファンドは原油価格の下落を意識するようになり、保有する米WTI原油先物と北海ブレント原油先物のポジションの合計は2016年以来の低水準となっている(8月6日付ブルームバーグ)。

 米国によるトルコに対する制裁も、原油市場の新たな攪乱要因となりつつある。米国政府は8月10日、トルコで自宅軟禁されている米国人牧師の釈放をトルコ政府に強引に認めさせるためトルコ産の鉄鋼・アルミニウムに対する追加関税を引き上げた。だが、これによりトルコの通貨リラが急落、金融危機が欧州や他の新興国市場に波及し(8月13日付ブルームバーグ)、原油需要のさらなる鈍化を招くとの懸念が高まっている。

 7月に7%下落した原油価格だが、原油価格を下支えしてきた主要産油国の協調体制が米国のイラン制裁により瓦解してしまったことから、今後は本格的な下落トレンドに入ってしまうのではないだろうか。

サウジ皇太子、名実ともに権力を手中に
 最後にサウジアラビア情勢についてコメントしたい。

 サウジアラビア政府は8月6日、同国の人権状況をカナダ外相が批判したことに激怒して一方的にカナダとの国交を断絶した。このことはサウジと同盟関係にある欧米諸国やベテランのサウジウォッチャーにも衝撃を与えた(8月8日付フィナンシャル・タイムズ)。イエメンへの軍事介入をはじめ人権問題に関して国際的な批判を浴びているサウジアラビア政府は、カナダに対して過剰反応を示すことで今後一切批判を受けつけないとのメッセージを打ち出そうとしているかのようだが、実権を握るムハンマド皇太子の強硬な外交姿勢を問題視する声が一層高まっている。

 2017年6月にカタールと一方的に断交し、その後ドイツ政府がイエメン問題を批判したことを理由に政府プロジェクトからドイツ企業を締め出したことなどを踏まえ、最新の米国の外交雑誌フォーリン・ポリシーは記事の中でムハンマド皇太子を「傲慢で未熟な人間だ」と痛烈に批判した。

 その皇太子が名実ともに権力を手中におさめる時期が近づいているようだ。

 サルマン国王は7月30日、夏季休暇を過ごすため、紅海沿岸に建設中の新未来都市NEOM(ムハンマド皇太子の肝いりの構想)に到着した(7月30日付ロイター)。欧州や北アフリカで夏季の大半を過ごすのが通例であるサウジアラビア国王が、今年は急遽建設されたNEOM内の宮殿に滞在するという異例さから様々な憶測が流れていたが、8月13日、「サルマン国王の病状が悪化したため、国王専門の医療チームが現地入りしている」との情報が飛び込んできた。

 内憂外患を抱えるムハンマド皇太子への王位継承は果たしてうまくいくのだろうか。

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