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トランプと習近平、それぞれが抱える憂鬱と貿易戦争の行方 まさに内憂外患だ(現代ビジネス)
http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/302.html
投稿者 赤かぶ 日時 2018 年 8 月 27 日 10:00:54: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 


トランプと習近平、それぞれが抱える憂鬱と貿易戦争の行方 まさに内憂外患だ
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57213
2018.08.27 真壁 昭夫 信州大学経済学部教授 現代ビジネス


23日、米国のトランプ政権は、知的財産の侵害を理由に第2弾の対中制裁関税を発動した。さらに、今後、トランプ大統領は2000億ドル相当の中国からの輸入品に追加関税を課す考えも示している。中間選挙に向けた人気確保のために、トランプ氏の対中強硬姿勢は簡単には収まりそうにない。

米国がさらなる制裁措置を発動すると、中国経済の成長にとって重要な輸出に下押し圧力がかかることは避けられない。その影響はアジア地域を中心に新興国に波及し、世界の投資家がリスクオフに向かう恐れがある。米国経済にも相応の影響があるはずだ。トランプ政権が仕掛ける貿易戦争は世界経済のリスク要因と考えるべきだ。

対外強硬姿勢を強めるトランプ大統領

米国ではモラー特別検察官の指揮のもと、2016年の大統領選挙にロシアが介入した疑惑に関する捜査が進んでいる。21日には、トランプ氏の選挙対策本部長を務めたマナフォート被告に有罪評決が出た。また、トランプ氏の顧問弁護士だったコーエン被告は司法取引に応じ、選挙資金の違法寄付などで有罪を認めた。

中間選挙を控える中、元側近2人の有罪はトランプ氏にとって痛手だ。特に、マナフォート被告はロシア疑惑解明の重要人物とみなされている。今後の捜査によっては、一段とトランプ氏にとって不利な内容が明らかになる可能性もある。トランプ氏は、真綿で首を絞められるような状況に直面しているといえる。

米国内でロシアゲート疑惑の捜査が進行し、トランプ氏への懸念が高まるのであれば、民主・共和党双方の有権者がトランプ氏を批判するだろう。特に、中間選挙にて全議席が改選される下院では、民主党が過半数の議席を確保する可能性がある。実際に下院で民主党が過半数の議席を確保すると、下院で大統領の弾劾訴追案の提訴が成立することもあり得る。

大統領再選を目指すトランプ氏にとって、この展開は何としても防がなければならない。そのために同氏は、中国の知的財産権の侵害等を理由に制裁を課し、ラストベルト地域を中心に有権者からの人気を獲得することを重視している。当面、通商・外交の両分野においてトランプ氏は支持確保のために対外強硬策をとるものとみられる。

中国経済の先行き不安とその波紋

米国が2000億ドル相当の制裁関税を発動すると、総額2500億ドル相当の中国製品に25%の関税が賦課される可能性がある。中国が輸入する米国製品は年間1300億ドル程度だ。第3弾の対中制裁が発動された場合、中国は関税引き上げで米国に対抗することができなくなる。

中国の輸出依存度(GDPに占める輸出額の割合)は約20%だ。中国の輸出全体の20%程度が米国向けであり、米国の追加制裁発動のマグニチュードは小さくはない。すでに固定資産投資の鈍化によって中国経済の減速懸念が高まっている。米中貿易戦争の熾烈化は、そこにもう一つの景気下押し要因が加わることを意味する。

この状況下、中国政府は財政出動によって景気を支える方針を示した。しかし、政府の思うように景気を安定させることは容易ではない。政府が不動産バブルの鎮静化を重視しているにもかかわらず、中国では不動産価格が上昇基調で推移している。その中で財政出動を進めればさらに不動産市況が過熱し、経済の安定感が損なわれる恐れがある。

中国は過剰債務の削減にも取り組まなければならない。成長率を押し上げるほどの財政措置を講じることは難しいだろう。その中で貿易戦争への懸念が高まる場合、中国を中心に新興国経済の先行き懸念が高まり、世界的なリスクオフが進む展開も考えられる。

今すぐ世界経済が混乱するとは考えづらいものの、トランプ政権が仕掛ける貿易戦争の波紋は小さくない。


 

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コメント
1. 2018年8月27日 19:21:49 : ZwvGzUDmxc : fXqah0SlEC8[111] 報告
啖呵切る だから退けない トランプは
2. 2018年8月28日 22:11:39 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1336] 報告
米中貿易戦争「本当の闘いは11月の中間選挙後」という見立て ある経済関係者が語った「中国の戦略」
近藤 大介『週刊現代』特別編集委員
プロフィール
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「米中新冷戦」の影響
先週、アメリカ東部時間23日深夜0時1分(日本時間同日午後1時1分)、米トランプ政権が、中国向け追加関税の第2弾を発動した。

USTR(米通商代表)のプレス・リリースにはこうある。

〈 中国のアンフェアな貿易政策に対して、中国製品による第2弾の追加関税を最終決定した。約160億ドル(約1兆7600億円)分の中国製品に25%の追加関税を課す。これは、アメリカの技術や知的財産の強制的な移転という中国のアンフェアな貿易政策に応えたものだ。制裁リストは、7月15日に発表したオリジナルの284品目から、279品目とした…… 〉

279品目とは、半導体、電子部品、プラスチック製品などだ。

一方の中国も即日、かねてから予告していた通り、アメリカ産の自動車、石油化学関連製品、鉄鋼製品など333品目に25%の報復関税を課した。

中国商務部は合わせて、こんなコメントも発表した。

〈 アメリカが23日、勝手に一方的に、中国からの輸入品約160億ドルに、301条の調査に基づいた追加関税25%をかけた。これは明らかに、WTO(世界貿易機関)のルールに違反するものである。

今回、中国は強く反対するとともに、必要な対抗措置を継続せざるを得ない。同時に、自由貿易と多国間貿易を守り抜くため、また自国の合法的権益を守り抜くため、中国はWTOの担当部門に本件を提訴するものである 〉

〔PHOTO〕gettyimages
すでに7月6日には、それぞれ第1弾の追加関税措置を取っている。アメリカは中国製品818品目、約340億ドル分に25%の追加関税をかけ、一方の中国もアメリカ産の農産物など545品目、約340億ドル分に25%の追加関税をかけた。

もはや「米中新冷戦」とも言える状況であり、両国合わせて世界のGDPの4割近くを占めるだけに、今後、世界経済に与える影響は計り知れない。

国際社会全体の問題へ
今回、第2弾となる双方の応酬で、興味深い点が二つあった。

一つは、22日、23日と、中国商務部の王受文副部長がワシントン入りし、マルパス米財務省次官と米中貿易戦争の対応策を協議した。その協議の真っ最中に、双方が追加制裁を発動したという事実だ。

王副部長は北京で、「中国のライトハイザー」の異名を取っている。そんな対米強硬派筆頭の通商問題専門家だが、今回はアメリカに、「アメリカ産の輸入品を増やしますから勘弁してください」と、頭を下げに行ったのである。

それをトランプ政権は、完全に無視するかのように、制裁の第2弾を発動した。このことは、今回の貿易戦争が、単に貿易上の摩擦にとどまらず、米中の覇権争いの様相を呈していて、かつ長期化することを示唆している。

もう一点は、中国がアメリカをWTOに提訴すると宣言したことだ。これによって米中貿易戦争は、「2大国の角逐」から国際社会全体の問題へと広がることになる。

トランプ大統領は過去に、WTOからの離脱の意思を公言している。つまり中国が提訴してアメリカが負けたら、世界のGDPの4分の1近くを占める最大の経済大国が離脱してしまうかもしれないのだ。これはすなわち、WTO体制の崩壊と、ほぼ同意だ。

そのあたりのことを先週、WTOに詳しい方と会って聞いたら、こう答えた。

「WTOの上訴機関には7人の委員がいるが、親中派と目される4ヵ国・地域の委員が、まもなく任期切れになる。そのため、WTOが中国の味方になるとは限らない」

また、中国が最も頼りにしていたEUは、先月早々、トランプ大統領と「手打ち」してしまった。

EUにしても日本にしても、「自由貿易とグローバリゼーション」という観点からは、中国に味方したいところだ。だが、トランプ政権が問題視する中国の社会主義市場経済システム(国有企業の特異な存在など)に関しては、やはり疑心暗鬼でいる。そのため、「中国応援団」とはならないのである。

中国はどうなるのか


トランプ政権は、この後に第3弾として、2000億ドル相当の中国製品に追加関税をかけると予告している。そうなると中国はどうなるのか。また、中国はどうやってこの難題を解決しようとしているのか。

そのヒントとも言えるのが、7月31日に開かれた中央政治局会議だった。この会議は、中国共産党のトップ25人が勢揃いし、ひと月に1回程度開かれている。この時、主に6つの決定を行った。

@「穏中有変」……中国経済の方向を、これまでは「穏中有好」(安定した中に好転が見られる)としてきたが、「安定した中に変化が見られる」に改める。「変化」とは言うまでもなく、トランプ政権との貿易戦争である。★

A積極的財政政策と穏健的貨幣政策……これまでの金融引き締め策を改める。人民元を緩和し、投資を拡大することによって、内需を喚起する。

B「六穏」……就業、金融、貿易、外資、投資、決済期日の6つを安定させる。就業をトップに持ってきたのは、7月に820万人という史上最多の大学生が卒業したためと思われる。政府発表では、6月の失業率は4.8%で、警戒ラインの5%を超えていない。

C「補短板」……いわゆる短所の補強・補填である。特に金融引き締め策によって、地方経済が悪化しているため、鉄道・地下鉄建設を中心とした地方のインフラ投資を拡大させる。

Dレバレッジ率低下政策の堅持……これ以上レバレッジ率(負債率)が上昇すれば、10年前のアメリカのリーマン・ショック時と同様になるので、これを鎮めていく。

E不動産価格統制の堅持……不動産バブルは中国経済最大のリスクと捉え、これを防止していく。
経済学者が非難轟々
8月に北京を訪問した際、まず驚いたのは、「3人幇」なる言葉が飛び交っていて、3人の著名な経済学者らが、「血祭り」に上げられていたことだった。

@胡鞍剛・清華大学公共管理学院教授(65歳)
A金灿栄・中国人民大学国際関係学院副委員長(55歳)
B梅新育・商務部国際貿易経済合作研究院研究員(50歳)

この3人はいずれも、「中国経済はいまや世界一」「すでにアメリカを追い越した」などと吹聴していたという共通点があった。

私は長く中国の学界を見てきたが、中国の経済学者には、3つのタイプがいる。

第一類は、とにかく中国共産党や時の政権に媚びを売って立身出世を目指すタイプ。いわば「習近平の御用学者」だ。その代表格と言えるのが、まるで習近平主席の生き写しのような胡鞍剛教授だった。

毎年、日本の各機関からも招待を受けていたので、日本で最も知られた中国の経済学者の一人だ。私もお目にかかったことがあるが、学者にありがちなエリート臭さがまったくないところが、やはり習近平的だ。ちなみに二人は同い年で、同じ清華閥だ。

第二類は、共産党や時の政権から何らかの役職をもらったりはするけれども、当たらず触らずで、事実だけを淡々と論じるタイプ。同じ清華閥でも、もう一人の著名な経済学者の李稲葵・清華大学中国世界経済研究中心主任教授などが、典型例である。アメリカでMBAや博士号を取った学者に、このタイプが多い。

第三類は、共産党や時の政権にあまり動じず、中国にとって悪いものは悪いと一刀両断するタイプ。ケ小平の改革開放政策の理論作りを行い、88歳の現在も第一線で論調を張っている呉敬琏・中国国務院発展研究中心研究員が典型例だ。

呉氏は2001年の正月、中国中央テレビのインタビューで、「中国の証券取引所は、いわば政府が胴元を務める賭博場のようなもので、先進国とは違う」と発言し、大問題になった。この発言で一時は干されたが、めげることなく自説を述べ続けている。

つまり、第一類の典型のような経済学者が非難轟々というのは、それはとりもなおさず、現在アメリカと互角の貿易戦争を戦っている習近平政権に対する批判なわけである。政府を直接批判できないから、御用学者たちを血祭りに上げているのだ。特に、胡鞍剛教授に対しては、清華大学からの除名運動も起こっていた。

そんな中、私はある中国の経済関係者に、米中貿易戦争についての現状を聞いた。以下は、その一問一答である。

中国が強気に出た理由

「中国にも対抗策はたくさんある」
――北京へ来て意外に思ったのは、いま最大の話題のはずの米中貿易戦争に関する報道が、こちらでは極端に少ないことだ。むしろ日本の方が多いくらいだ。4月に北京を訪れた時は、米中貿易戦争のニュース一色で、「奉陪到底」(アメリカに最後まで付き合ってやろうではないか)が合言葉になっていたのに。

「わが国が最も恐れているのは、アメリカとの貿易戦争によって、中国国内が混乱することだ。混乱を防ぐには、報じない(ようにさせる)ことが一番ではないか。『奉陪到底』は、もう使わない。先制攻撃を仕掛けてきたのはアメリカの方で、こちらは応戦しているのだという事実は、すでに浸透したからだ」

――米中貿易戦争は、第1弾が7月6日に双方340億ドルずつ。第2弾が8月に160億ドルずつ。その後、9月にアメリカが第3弾で2000億ドル分にかけてきたら、中国はどうするのか。

「今回の貿易戦争は、アメリカよりも中国にとって不利だと言う人が多い。それはその通りだと思う。だが、短期的には中国が不利でも、長期戦になればアメリカも相当な打撃を受けるはずだ。中国にも対抗策は多いからだ。

第一に、ボーイングなどから受注している大量の民間航空機をキャンセルする。その分は、欧州のエアバスやロシア製に振り替えていく。

第二に、農産品をアメリカ以外の国からの輸入に切り替えていく。大豆は年間9000万トン輸入し、うち5000万トンがアメリカからだが、ブラジルその他からの輸入を増やせば、代価は利く。

第三に、アップル社のiPhoneをボイコットする。ファーウェイ、シャオミー、OPPO、vivoなど、スマホは中国製品で十分だからだ。

第四に、GM、フォードなどアメリカの自動車会社を中国市場から締め出す。自動車産業も、ガソリン車から電気自動車へ、そして自動運転車という転換点を迎えており、アメリカ製品がなくても十分やっていけるからだ。

トランプは、農家に補助金を出して救済するなどと言っているが、一年はできても毎年はできないだろう。

ともあれ、まずはアメリカと話し合い、トランプの拳を振り下ろしてもらうよう、方法を模索していく」

――中国側は、当初の強気一辺倒から、いまは防戦一方を強いられている。状況判断を誤ったのではないか。

「俗に『樹大招風』(樹が大きくなれば風を招く=出る杭は打たれる)と言う。これは個人的意見だが、中国はあと10年、いや5年でもよいから、ケ小平の遺訓『韬光養晦』(目立たず実力を蓄える)を堅持すべきだったのだ。

中国がトランプに対して強気に出た背景には、二つのことがあったように思う。一つは、昨年11月にトランプが訪中した時の印象がとてもよかったため、トランプが本気で中国に牙を剥いてくるとは想定していなかった。あの時、2535億ドルものプレゼント(中国からアメリカへの投資や購買)を与えて、それでもう貿易摩擦問題は解決したと思ったのだ。

ところがトランプは、北京から戻るや、態度を一変させた。中国からすれば、『あの時の2535億ドルは一体何だったのだ?』という怒りがあった。

もう一つの背景は、習近平政権の第1期5年が、何もかもうまく行き過ぎたことだ。政治的には習主席の一強体制が確立し、経済的にはアメリカの3分の2規模までGDPが拡大した。外交的には『一帯一路』に多くの国が賛同し、軍事面でも科学技術面でも世界ナンバー2の地位を確立した。

3月20日に、全国人民代表大会が閉幕した。習主席は憲法改正で自らの任期を取っ払い、省庁を改編し、ほしいがままの幹部人事を断行した。つまり2期目の習近平政権が始動した時点で、習政権に死角はゼロだったのだ。

もともと習主席の『原点』は、1996年の台湾海峡危機(初の台湾総統直接選挙で、台湾独立派の李登輝総統の当選を阻むため、人民解放軍が威嚇演習を繰り返したが、アメリカ軍の2隻の空母に駆逐された)を、現場で体験したことだ。あの時に、中国は国産にこだわって強国にならなければいけないと確信したのだ。だからこれからは強国の精神で進んでいくとした。

ところが、習体制が完成した二日後の3月22日に、トランプが突然、中国に対して貿易戦争を『宣戦布告』してきた。そこでわが国としては、『奉陪到底』を合言葉に、徹底抗戦に出ることにしたのだ。習主席の周囲の幹部たちも、『アメリカの方が先に音を上げるに決まっています』と吹聴した……」

「十分妥協点を探れる」

「これが今回の貿易戦争の真実だ」
――それが、3回にわたる大臣級協議でも、米中双方の溝は埋まらず、トランプ大統領の態度はエスカレートしていった。中国側の代表は、習近平主席の中学時代の同級生である劉鶴副首相だが、劉副首相の力量に、疑問の声が上がっている。

「劉鶴副首相は、生真面目な学者出身で、トランプ政権のような海千山千の連中との交渉には不慣れだった。それでも、中国は今後とも、『表看板は劉鶴、裏看板は王岐山(副主席)』という二枚看板で進んで行く。これは個人的な意見だが、誰が中国側代表になっても、結果はそんなに変わらないだろう」

――それは、どういうことか?

「当初、われわれが考えていたのは、これはトランプのハッタリだということだった。トランプは商人だから、最初に相手に対して吹っかけ、その後、『討価還価』(値引き交渉)に出てくる。すなわち、最初の発言はあくまでも『言い値』にすぎないと判断したのだ。

だが、実際には、アメリカは非常に戦略的に中国叩きの計画を立てていることが分かってきた。中国は市場規模ではすでにアメリカを追い越し、資金力では五分五分の力を蓄えた。アメリカにまだ追いつけていないのは、技術力だけだ。だがまもなく、最先端技術を手にするだろう。

アメリカは、そのことに危機感を抱いたのだ。現在の中国は、20世紀のソ連の軍事力と、日独の経済力を合わせた以上のパワーでもって、アメリカに挑戦してきている。このままでは、アメリカの先端技術とドル体制を基軸とした世界秩序は、中国に取って代わられるかもしれない。世界中がアメリカ国債を買わなくなるかもしれない。

アメリカは、いま中国を叩かないとアメリカの時代は終わると判断したのだ。中国が進める『一帯一路』は、ブレトンウッズ体制を根本から変革することが裏の目的だと、アメリカは見ているのだ。だからアメリカは、AIIB(アジアインフラ投資銀行)に参加しないし、日本にも入らせない。こうしたことが、今回の貿易戦争の真実だ」

――それならば、短期間には、つまり11月6日のアメリカの中間選挙までには、米中貿易戦争は解決しないのではないか?

「その通りだ。ファーウェイとZTEを事実上、アメリカから締め出したが、そういったことをどんどんエスカレートさせていくだろう。

アメリカという国は、自国の覇権を維持するために、どんなことでもやる国だ。リーマン・ショックの後、ユーロがドルに取って代わろうとするや、ギリシャ危機を煽ってEUを弱体化させた。

中国が日本、韓国とFTA(自由貿易協定)を結ぼうとするや、石原慎太郎(都知事)をワシントンに呼んで、釣魚島(尖閣諸島)を東京都が買うと言わせて、中日関係を破壊させた。それで中国は、韓国と先にFTAを結んだら、アメリカは今度は韓国にTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)を配備して、中韓関係を破壊した」

――それはあまりに「謀略論」に思えるが……。ともあれ再度聞くが、今後どのようにして解決を図っていくつもりなのか?

「1979年に中米が国交正常化を果たした時、一部のアメリカの強硬派は、こう主張した。『中国と国交を結び、中国の発展を助けてはならない。そうすれば中国はいつしか巨竜と化し、アメリカに対して牙を剥くだろう』。その時にこう主張していた人々が、再び『それ見たことか』と声を上げ始めている。

いま想定しているのは、11月のアメリカ中間選挙は、貿易戦争の終わりではなく始まりだということだ。中間選挙が終わり、アメリカが冷静になって初めて、本格的な交渉が始まる。その後、一年で交渉をまとめるのが当面の目標だ。つまり、2020年秋の、トランプが再選を賭けた大統領選挙まで、この問題を引きずらないということだ。

いまわれわれは、日本とドイツがどうやってアメリカとの貿易摩擦を解消していったかを、深く研究しているところだ。それにしても、日本人とドイツ人というのは、クソ真面目な民族だと思う。幸い中国人は、頭がもっと柔軟だ。そしてトランプも、決して真面目なタイプではない。中国とアメリカは、十分妥協点を探れると信じている」

1年3ヵ月ぶりの日中財務対話

とってつけたような「微笑」
おしまいに、日中関係についてもひと言、言及しておきたい。
米中貿易戦争が激化するほど、中国が日本に微笑外交を行うという現象が起こっている。今週31日には、1年3ヵ月ぶりの日中財務対話を開くことが、急遽決まった。日本からは麻生太郎財務相以下、幹部がズラリ参加する。
ついこの間まで、中国側は「もはや日本との財務対話など考えていない」などと冷たかったのに、手のひらを返したような恭しさなのだ。
8月12日には、日中平和友好条約締結40周年を迎えたが、個人的には、こうしたとってつけたような友好は、あまり望ましいものとは思わない。
だが、9月20日に自民党総裁選挙を控えた安倍晋三首相も、9月11日〜13日にウラジオストクで行われる東方経済フォーラムで、習近平主席との日中首脳会談を望んでいる。日本も中国を「政治利用」しているのだから、文句を言えた立場ではないが…。
ともあれ、日本にも多大な影響を与えるこの米中貿易戦争、これからも引き続き論じていきたい。

本文で述べたアメリカとの貿易戦争以外にも、近未来の中国には、様々な問題が重くのしかかってきます。ご高覧ください!

【今週の推薦新刊図書】

『安倍晋三の真実』
著者=谷口智彦
(悟空出版、税込み1,620円)
26日に、安倍首相が鹿児島で、3選に向けた出馬宣言を行い、事実上の自民党総裁選挙が火ぶたを切った。そんな中、スピーチライター(内閣官房参与)という立場から、安倍首相を論じたのが本書だ。「首相官邸で働くということは大変だ」とつくづく思った。まさに裏方の世界満載の奇書、いや稀書だ。

 


米中貿易戦争のウラで、いま中国で起きている「ヤバすぎる現実」
もう限界…報道されない現場の悲鳴
週刊現代講談社
毎週月曜日発売プロフィール
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米中貿易戦争でアメリカとつばぜり合いを続ける中国。アメリカに対して強気姿勢を見せているウラで、じつは中国国内では新しい問題が次々に勃発している。日本のメディアが報じないそのヤバイ現実を、『未来の中国年表』著者の近藤大介氏が明かす。

アメリカが最も恐れていること
米トランプ政権が、中国製品に関税をかけたり、中国からの投資に規制をかけようとしたりと、「なりふり構わぬ」格好で、中国を潰しにかかっています。

なぜトランプ政権が、このような行為に及ぶのかと言えば、それは「未来の中国年表」を見ると一目瞭然です。「未来の中国年表」とは、「人口はウソをつかない」をモットーに、人口動態から中国の行く末を予測したものです。

現在の米中両大国の人口を比較すると、中国は、アメリカの約4.2倍の人口を擁しています。

経済規模(GDP)については、2017年の時点で、63.2%まで追い上げています。このペースで行くと、2023年から2027年の間に、中国はアメリカを抜いて、世界ナンバー1の経済大国となるのです。

先端技術分野に関しては、アメリカにとってさらに深刻です。

国連の世界知的所有権機関(WIPO)によれば、各国の先端技術の指標となる国際特許出願件数(2017年)は、1位がアメリカで5万6624件ですが、2位は中国で4万8882件と肉薄しています。

しかも企業別に見ると、1位が中国のファーウェイ(華為)で4024件、2位も中国のZTE(中興通訊)で2965件。

3位にようやくアメリカのインテルが来て2637件となっています。トランプ政権がファーウェイとZTEの2社を目の敵にしているのも、アメリカの焦燥感の表れなのです。

Photo by GettyImages
これに加えて、消費に関しては、14億中国人の「爆消費」が世界経済を牽引していくことは、「未来の中国年表」から見て、間違いありません。5年後には、中間所得者層が4億人を突破し、彼らの「爆消費パワー」は、計り知れないのです。

例えば、世界最大の電子商取引企業アリババ(阿里巴巴集団)は、毎年11月11日を「消費者デー」に指定して、24時間の特売を行っています。

昨年のこの日の売り上げは、1682億元(約2兆8000億円)に達し、これは2016年の楽天の年間取扱額に、ほぼ匹敵する額です。

中国でアリババのライバルである京東も、6月1日から18日までを「消費者デー」に定めて、同様の特売を行っています。今年のこの期間の京東の売り上げは、1592億元(約2兆7000億円)に達しました。

このように、近未来の世界のマーケットは、まるで中国という巨大な掃除機に吸引されていくかのように動いていくことになります。それは、日本企業もアメリカ企業も同様です。

3000万人独身男の憂鬱

急増する「空巣青年」問題
それでは、近未来の世界は中国の天下になるのかと言えば、必ずしもそうではありません。EU28ヵ国、ASEAN10ヵ国のそれぞれ2倍以上の人口を擁する中国は、悩みもまた2倍以上(?)と言えるのです。

たとえば中国は、1978年に始まった改革開放政策に伴って、「一人っ子政策」を、2015年まで続けました。憲法25条に「国家は一人っ子政策を推進実行する」と明記し、違反者には厳しい罰則を定めました。

21世紀に入って、「一人っ子政策」の弊害が多方面に表れてきましたが、その最たるものが、いびつな男女差です。

特に農村部では、どうせ一人しか産めないなら男児を産もうということで、さまざまな方法を使って男児を産んだため、子供の男女比が120対100くらいまで開いてしまったのです。

国連では107までを「正常国家」と定めているので、中国は明らかに「異常国家」です。

その結果、2年後の2020年には、結婚適齢期の男性が、女性より3000万人も多い社会になります。中国では「3000万人独身男の憂鬱」と題した記事も出ています。

彼らは「剰男」(余った男)と呼ばれていますが、嫁を探しにアフリカまで出かける「剰男」も出ているほどです。

さらに、結婚を半ば諦めた「空巣青年」も急増中です。親元を離れて都会で一人暮らしをし、スマホばかり見て引きこもっている若者を「空巣青年」と呼ぶのです。

若者に関して言えば、2022年に大学の卒業生が900万人を超えます。中国の大学生は昨年9月現在、3699万人もいて、世界の大学生の2割を占めます。日本の約13倍の学生数で、経済規模は日本の2.5倍もないので、就職先がまったく足りません。

若年失業者が増すと、反政府運動などを起こすリスクも増すので、中国政府は必死に起業を勧めています。昨年は、年間600万社以上が創業し、1351万人の新規雇用を確保したと誇りました。

2人で起業した企業が600万社できれば、それだけで1200万人の雇用を確保したというわけです。

ところが、600万社がその後、どうなったかについては、発表がありません。おそらく、死屍累々の状況が生まれているはずです。それでも、「その日の就業」を最優先するという究極の自転車操業社会です。

「421家庭」の悲劇

「マンション離婚」がとまらない理由
2024年になると、年間600万組が離婚する時代になります。つまり1200万人で、これは東京都の人口に近い数です。ちなみに日本の離婚件数は21万7000組(2016年)なので、中国では日本の27.6倍も離婚していくことになります。

北京や上海などの大都市では、離婚率はすでに4割に達しています。離婚率が5割を超えるのもまもなくです。

逆に結婚件数は5年で3割減っているので、中国は近未来に、年間の離婚件数が結婚件数を上回る最初の国になるのではという懸念も出ているほどなのです。

Photo by iStock
なぜこれほど離婚が多いのかと言えば、その大きな理由として、やはり「一人っ子政策」の弊害が挙げられると思います。

彼らは幼い頃から、「6人の親」に育てられると言います。両親と、両親のそれぞれの両親です。

祖父母が4人、親が2人、子供が1人であることから、「421家庭」という言葉もあります。そのため、男児なら「小皇帝」、女児なら「小公主」と呼ばれ、贅沢かつワガママに育つのです。

そんな彼らが結婚しても、我慢することが苦手で、かつ便利な両親の実家が近くにあるため、容易に人生をやり直してしまうのです。

さらに、中国特有の離婚も急増中です。それは「マンション離婚」と呼ばれるものです。

マンション投資が過熱すると、価格が急騰して庶民が買えなくなるため、政府は2011年以降、「ひと家庭に1軒のみ」といったマンション購入制限令を出してきました。

それならば「離婚してふた家庭になれば2軒買える」というわけで、「マンション離婚」が急増したのです。そのため、例えば北京市役所は「1日の離婚届受け付けを1000件までとする」という対策を取っているほどです。

2025年になると、中国は深刻な労働力不足に見舞われます。15歳から64歳までの生産年齢人口に関して言えば、すでに2015年頃から減少しています。

労働力の絶対数が減り続ける上に、一人っ子世代は単純労働を嫌うので、大卒者の給料よりも単純労働者の給料のほうが高いという現象が起こってしまうのです。

中国政府は、労働力不足の問題を、AI(人工知能)技術を発展させることでカバーしようとしています。世界最先端のAI大国になれば、十分カバーできるという論理です。

「未富先老」が流行語


超高齢化社会・中国の末路
しかし、労働力不足はある程度、AI技術の発展によって補えたとしても、来る高齢社会への対処は、困難を極めるはずです。

国連の『世界人口予測2015年版』によれば、2050年の中国の60歳以上人口は、4億9802万人、80歳以上の人口は1億2143万人に上ります。

「私は還暦を超えました」という人が約5億人、「傘寿を超えました」という人が、現在の日本人の総人口とほぼ同数。まさに人類未体験の恐るべき高齢社会が、中国に到来するのです。

しかし現時点において、中国には介護保険もないし、国民健康保険すら、十分に整備されているとは言えません。そのため中国では、「未富先老」(未だ富まないのに先に老いていく)という嘆き節が流行語になっているほどです。

実はこの未曾有の高齢社会の到来こそが、未来の中国にとって、最大の問題となることは間違いありません。日本に遅れること約30年で、日本の10倍以上の規模で、少子高齢化の大波が襲ってくるのです。

そうした「老いてゆく中国」を横目に見ながら、虎視眈々とアジアの覇権を狙ってくるのが、インドです。インドは早くも6年後の2024年に、中国を抜いて世界一の人口大国になります。

しかも、2050年には中国より約3億人(2億9452万人)も人口が多くなるのです。15歳から59歳までの「労働人口」は、中国より3億3804万人も多い計算になります。

Photo by iStock
2050年のインドは、中国と違って相変わらず若々しいままです。

つまり中国にしてみれば、21世紀に入ってようやく、長年目標にしてきた日本を抜き去ったと思いきや、すぐにインドという巨大な強敵を目の当たりにするのです。

中国は2049年に、建国100周年を迎えます。その時、「5億人の老人」が、しわくちゃの笑顔を見せているとは限らないのです。


近藤大介(こんどう・だいすけ)
中国・朝鮮半島取材をライフワークとする。25冊目の新著『未来の中国年表 超高齢大国でこれから起こること』(講談社現代新書)が好評発売中
「週刊現代」2018年7月14日号より

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