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一人の食卓もアレクサと一緒なら楽しくなる?アマゾンエコーが変える日本の料理風景 日本の潜在市場と隠れたる天才、発掘します
http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/511.html
投稿者 うまき 日時 2018 年 9 月 19 日 05:21:30: ufjzQf6660gRM gqSC3IKr
 

(回答先: 「テレワークは主婦だけのものではありません」 伝道師、田澤由利氏に聞いた 「提言 私たちの働き方」 投稿者 うまき 日時 2018 年 9 月 19 日 05:14:39)

一人の食卓もアレクサと一緒なら楽しくなる?

アマゾンエコーが変える日本の料理風景(後編)

 

2018年9月19日(水)
小竹 貴子

おいしい未来はここにある〜突撃!食卓イノベーション


 1997年の創業から21年、日本の家庭の食卓文化をリードしてきた“フードテック”の老舗、クックパッド。その初期メンバーであり、現在は同社のブランディング部門を率いる小竹貴子氏が、気になるフードビジネスの新芽をピックアップし、現場を訪ねる。今回は、話しかけるだけで、その時の気分に合う音楽をかけてくれたり、ニュース記事を呼び出してくれたりと、生活に深く入り込んだ使い方ができるスマートスピーカーの中でも、「Amazon Echo(アマゾンエコー)」シリーズを展開するアマゾン・ジャパン。アレクサビジネス本部兼モバイルビジネスデベロップメントGM/本部長の柳田晃嗣さんに、料理とアマゾンエコーの関係について聞いた。今回はその後編(取材/2018年7月4日、構成/宮本恵理子)。


アマゾン・ジャパンのアレクサビジネス本部兼モバイルビジネスデベロップメントGM/本部長の柳田晃嗣さん(写真:竹井俊晴、ほかも同じ)
小竹貴子氏(以下、小竹):インタビューの前編では、「Amazon Echo」シリーズの中でも最新版となる「Amazon Echo Spot」を使って、どのようにレシピを検索し、料理を作っていくのかという流れを教えてもらいました(「 キッチンの流行は機能充実からカンタンに」)。

 「Amazon Echo Spot」を活用すれば、買い物もこれ一つで完結するんですよね。

柳田晃嗣本部長(以下、柳田):これまでのモデルでも可能でしたが、やはりディスプレイで商品画像をパッと見られるようになった違いは大きいと思います。

 アメリカでの利用状況を見ていると、水や調味料といった定番商品であれば、音声と画像だけのやりとりで抵抗なく購入しやすい傾向はあるようです。

小竹:国によって使い方の違いってあるんですか。

柳田:多少ありますね。例えばドイツの場合は、照明や家電のコントロールセンターとして使う人が多い傾向があり、アメリカだと音楽や映像などのエンタメ寄り。日本は、ニュースチェックの利用が多いのが特徴的かもしれません。

 これまでだとテレビやラジオをつけないとできなかった朝のニュースチェックが、「アレクサ、今日の運行状況を教えて」と話しかけるだけで済む。もし電車が大幅に遅れていると分かったら、家族に電話をかけて「パパ、山手線が止まっているみたいだからリモートワークに切り替えたほうがいいかも」とすぐに知らせる。

 この一連の動きがすべて、声だけで、料理のときに手を動かしながらできるという点に、利便性を感じてくださっている方は多いようです。

小竹:クックパッドも国別の利用傾向の違いがだんだん分かってきて、面白いんです。

 その違いは、よく検索されるキーワードに表れていて、日本だと「簡単」「便利」が目立つのに対して、ヨーロッパは昔から伝わるレシピを探す利用者が多かったりします。逆に東南アジアでは、インスタ映えするような新しい料理を探していたりする。

 同じプラットフォームを世界各国で展開すると、利用者が今求めている料理についての考え方の違いが見えてくる面白さがありますよね。「Amazon Echo」シリーズの開発は、国ごとに責任者が置かれるんですか。

柳田:そうです。アメリカで開発された英語のスキルをそのまま日本語訳して使えるかというと、そうではありませんので。スキルのほとんどが、日本製の日本独自のものです。

小竹:日本ならではというものはありますか。

アレクサが、シーンに合わせた機能提案も

柳田:(ボーカロイドの)初音ミクやポケモンのキャラクター系は充実していますね。

 百人一首や「駅しりとり」、ジャンケンといった日本独自の遊びのスキルも結構人気です。また、音を楽しむコンテンツでは、リラクゼーション音楽として「軽井沢の森の音」を流せるスキルも。

小竹:それは知りませんでした。私は「アレクサ、新しいスキルがあったら教えて」とよくお願いしているのですが(笑)。

 しかし、既に1000を超えるスキルがあって日々増えているとなれば、自分に合ったスキルを探すことが難しくなるなという気がします。

 検索機能については、今後どんな工夫をしていくのでしょうか。レシピサービスでいうと、最近は「たまにしか料理をしないから何を作っていいか分からない。献立から提案してほしい時に、どういうワードで検索していいか分からない」という声も聞かれるんです。

柳田:たしかに、目的が定まっていない人に対して、いかに提案していくかは課題ですね。例えば「このシーズンに人気が高いのはこのレシピです」とランキングを提示したり、「集まる人数は何人ですか?」とシーンから提案したりする切り口もありかもしれません。

小竹:私、音楽に関しては「Amazon Echo」から新しい出合いをたくさんもらっています。結構雑に「朝に気持ちいい音楽を聴きたい」と言っても、応えてくれる。気に入った時に曲名を質問したら教えてくれるし。

 気づきと広がりを与えてくれるデバイスには、親しみを感じます。同じことが料理に関してもどんどん実現していくと、料理を作ること自体の楽しさのきっかけを提供できることができそうです。

柳田:「手作業しながら操作できる」という機能性に加えて、提供できる価値として大きいと感じているものが、もう一つあります。それが、コミュニケーションなんです。

 例えば、料理を作ったり食べたりしながら音楽をかけたり、遠くに住んでいるおばあちゃんを呼び出して「この間教えてくれた料理、お醤油の量どのくらいだったっけ」とすぐに聞くことができる。

 今回の「Spot」にはカメラも搭載しているので、「写真を撮って」の一言で食卓を囲む家族の写真も撮れます。

 自撮りならぬ“アレクサ撮り”なので、誰か一人が写真に欠けることもありません(笑)。スマートスピーカーを中心に、家族や友達同士の会話が増えたり、料理を楽しむきっかけが増えたりするのではないかと。

アレクサと会話する食卓も
小竹:すごくあると思います。食の満足度を左右するのって、美味しい食材やレシピだけでなく、誰とどんな時間を過ごせたかという食事体験全体の豊かさだと思うんですよね。

 クックパッドの若い社員と話していると「アレクサと会話しながら食事するようになって、一人暮らしの料理が寂しくなくなってきた」という子もいて。きっとコミュニケーションを重ねるうちに、スマートスピーカーの中に誰かが入っているような感覚が生まれてくるのかなと。

 最近のキッチン周りの新しいテクノロジーには、単に時短や節約といった機能を超えた、「楽しさの創出」が感じられてワクワクします。料理というものが、働き方改革の結果生まれる「残業は減ったけれど、家に早く帰って何をしたらいいか分からない」という新たな悩みに対してのソリューションにもなるのではと本気で思っています。

 正直、アマゾンという会社のイメージが変わりました。以前はスピードや効率性を重視したクールな印象だったんですが、このスマートスピーカーを使うようになって、すごく人間味を感じるようになって。

柳田:そう言っていただけると嬉しいです。


アレクサが夫婦ゲンカを減らす?
小竹:個人差はあるようですね。家電を全部つなげて「朝起きたら目玉焼きができて、エアコンついて、洗濯機が回る」みたいな機能を使いこなしている人は「相変わらずクールな印象を持っている」と言いますし。

 つまり、使いこなすスキルや期待するシーンによって、存在意義が変わる。

 これからまだまだ進化すると思いますが、現状では、買い物ができて、料理を作るサポートをして、コミュニケーションも生んでくれる。あとは片付けまでやってくれたら完璧ですね(笑)。

柳田:たしかに、食卓やシンクの片付けに関しては、まだ技術が追いついていないですね。これが実現すると、喜ばれそうですね。

小竹:夫婦ゲンカも減りそうです(笑)。

柳田:離婚率の減少や少子化対策にも寄与するかもしれません。

小竹:最後に、これから3年後、5年後の世界で、どのようにキッチンが変わっていると予想しますか。

柳田:予測は難しいところですが、我々として挑戦していきたいのは、生活のあらゆる面で苦労にかけていた時間を省き、楽しむ時間を増やすことです。調理をする上での疑問をすぐに解消したり、一緒に食べる人との会話を楽しくするサービスをこれからも開発していきたいと思っています。

 「Amazon Echo」シリーズのキッチンでの使われ方を見ながら改めて感じるのは、キッチンという場所のポテンシャルの高さです。

 よく考えたら、電子レンジしかり、調理家電や給湯設備しかり、家の中のテクノロジーが一番集中する場所がキッチンなんです。そのキッチンでの作業がより効率化し、家族が思わず集まる楽しい仕掛けを増やしていくことができたら、キッチンはますます“家族のコントロールセンター”として機能すると思います。

 家庭の中のイノベーションは、すべてキッチンから始まると言ってもいいかもしれない。

小竹:新しいテクノロジーを取り入れるかどうかで、食を楽しめる格差は広がるかもしれませんね。情報がアップデートされないまま家庭の中に閉じこもってしまう人と、クラウドベースの最新の情報や技術に常に触れて楽しみが活性化されていく人と。

柳田:たくさんの方にその楽しみを広げられるように工夫に努めることが、我々のやるべき仕事だと思っています。

小竹:期待しています。

(編集部注:取材後にリリースされた「Amazon Echo Spot」では、クックパッドが初めてレシピ動画に対応し、一部レシピの音声読み上げ機能などを搭載した)


小竹メモ
テクノロジーは、日々の生活を便利にするということを超えつつある。これからは、テクノロジーを通じてどのように豊かな生活を実現するのか、という方向に向かっていく――。今回のインタビューで改めて、その思いを強くしました。

 「Amazon Echo Spot」を早速購入しましたが、アレクサで音楽を聞きながら、料理の作り方に困ったら動画を見ながら、助けてもらう。オススメ動画を通じて教えてもらう。改めて料理の楽しさを気づかせてもらいました。

 もっと料理が楽しみになる世界に一緒にチャレンジして行きたいですね。


このコラムについて
おいしい未来はここにある〜突撃!食卓イノベーション
テクノロジーの進化が家庭の「食卓」を大きく変えようとしている。レシピサイト最大手「クックパッド」創業初期メンバーであり、フードエディターとしても活躍する小竹貴子氏が、「テクノロジー×食」の最先端を訪問。食卓で起こりつつあるイノベーションの萌芽を紹介する。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/013100199/091100020/?ST=editor


日本の潜在市場と隠れたる天才、発掘します
サムライ経営者、アメリカを行く!
エイモンとの不思議な出会いと、大坂なおみ選手の活躍と

2018年9月19日(水)
加藤 崇

 8月後半(第4週)は、日本に一時帰国することができた。日本にも、アメリカで発展させたフラクタの技術を普及すべく、いくつかの企業と行政体を回ることが目的だ。


8月下旬、久しぶりの帰国です
 アメリカでは少しずつフラクタの技術、ソフトウェアが使われるようになっている。8月には、テキサス州で最も大きい市の一つが、フラクタのソフトウェアを試験運用することに決めた。カリフォルニア州南部の非常に大きな行政体もフラクタのソフトウェアの試験運用を始めることになった。

 毎日毎日、少しずつ営業活動が前進し、ほんの少しずつかも知れないけれど、フラクタの技術が世界を変え始めていた。僕たちのソフトウェアは、水道会社(日本における水道局)が上水道配管を交換しようとする際、最も老朽化が進んでいる箇所(配管)を、一度も地面を掘り返すこと無く言い当てるという、極めて有為なものだ(魔法みたいな話だが、これは魔法ではない。コンピューターだ)。

アメリカでは40%削減、日本でも
 基本的な配管のデータ(配管の材質や、敷設年度、直径や配管長、地点データなど)と、フラクタが集めた多くの環境関連データなどを合わせ、コンピューターの機械学習(人工知能)アルゴリズムを駆使することで、どれくらい配管が劣化しているかどうか、どの配管を最初に交換しなければならないのかを高い精度で当てることができる。アメリカでは、上水道配管の更新コストに関し、実に40%も費用を削減できる可能性があるというアルゴリズムの開発に成功したものの、日本の上水道配管に対してこの技術が適用できるかどうかは、やってみなければ分からない。とはいえ、基本的、論理的には必ず同じことができるはずで、加えてアメリカで発展させた手法を日本に移植できる部分もあるので、「まあ何とかなるだろう」という直感が僕にはあった。

 日本は地震大国だ。日本では、地震の少ないアメリカのように、上水道配管の寿命が100年持つという感覚は基本的には無く、平均で50年、60年もすれば、交換時期と言われているようだ。配管が経年劣化したことに加え、地震という大きな物理インパクトが加えられることで、配管が破損しやすいためだろう。ただそれでもなお、どこを掘り返してパイプを交換して良いのかということに関して言えば、「(配管を敷設してからの)経過年数」と「(去年までの)漏水履歴」、はたまた「ベテランの勘」によってそれを推定している水道局が多いというのが実態のようだ。

 ここにコンピューターの技術を持ち込む。100%客観的かつ、より精度が高い予測が提供できる。ポイントはこの「平均寿命の、誤謬(ごびゅう:間違いのこと)」にある。日本の上水道配管の平均寿命が50年だと言われても、30年で破損する配管もあれば、120年生き残る配管もある(もちろん、実際は200年生き残る配管もあるだろう)。要は配管一本一本の「個体差」が大きいということがポイントで、それをきちんと個体別に言い当てるということに、経済的な価値が宿る。配管の「本当の寿命」は、その配管が敷設された環境によって大きく変わるのだが、その環境要因があまりに複雑に絡み合っているため、これまでは配管の寿命を正しく予測する手法が世の中に存在していなかった。だから、この「平均寿命」という概念を使って上水道配管を交換していくという方法が、現時点で主流になってしまっていることに関しては、致し方ないことだったとも言える。

 しかし……だ。今は違う。コンピューターの能力が向上したことによって、あらゆる環境要因を正しく分析することができるようになった。これを使うことによって行政予算をより効率的に使うことができるようになったのだ(何しろ日本における多くの市区町村においても、配管の交換に関する予算規模が追いついていない状況なのだから、予算を「削減する」とは言えないのかも知れない。それ以上に、まずは同じ予算をより「効率的に使える」ことによって、漏水や、周辺の浸水事故を未然に防ぐことができるというメリットを強調すべきだろう。加えて、このソフトウェアの導入によって、雇用は削減されるどころか、現場のスタッフの人たちがより効率的に計画することができるようになり、彼女たち彼らたちは、市民により感謝される機会が増えるということになるはずだ)。

 日本にも、志のある会社はある。こういう会社と事業提携をすることによって、日本におけるこの技術の適用可能性について検討すべく、僕たちフラクタは活動を開始していた。連日うだるような暑さの中(一歩あるくだけで、滝のような汗をかく。これは懐かしい感覚だ。僕はこの国、日本という国を愛しているのだ)、この技術の到来を心待ちにする人たちとのミーティングの機会に恵まれ、僕は日本を後にした(日本の各社との事業提携については、ゆくゆくプレスリリースを配信する予定なので、楽しみにしていて欲しい)。


日本で営業活動スタート。企業、行政庁を訪れて「同志」を探しました

日本で寿司。しっくりきます
夏季インターン生、エイモン
 話は前後するが、日本で言うところの「お盆」の真っ最中、8月17日には、フラクタの夏季インターン生として、いくつかのソフトウェア・プログラムを書いてくれていたエイモンの最終日を迎え、エンジニアリングチームと一緒に卒業パーティーを行った。

 カリフォルニア大学バークレー校の、数学科とコンピュータ・サイエンス学科の複専攻(ダブル・メジャー)の4年生になったばかりのエイモンと僕の出会いは、何とも僕らしく、また大変な偶然に満ち満ちたものだった。


右から2番目がエイモンです。インターンとして、夏に頑張ってくれました
 話は、今年の頭、僕が週末に自宅近くのスーパーマーケットに買い物に行ったときに遡(さかのぼ)る。僕が買い物を終え、駐車場でカートを押して歩いていると、白髪で背が曲がった、日本人と思しき老婦人が、明らかに困った様子で立ち尽くしていた。傍目(はため)にも、何か問題があることが見て取れたので、僕は彼女に近づいていった。相手は間違いなく日本人なのだ。何かがあったら助けなければいけない。

 「あの……」僕と目が合うと、老婦人のほうが先に僕に声をかけた。「どうかしましたか?」僕はすかさず返答する。「あの……すいません、車の中にカギを入れたまま、ドアを閉めてしまったの。それで、ドアが開かなくなってしまって、中に……入れないの」。

 スーパーマーケットで買ったと思われる大量の食料品が入ったショッピングカートが車の脇に置かれ、一方で車のドアを開けることができず、彼女は困っていたのだ。見ればトヨタの車だったので、僕は近くにあるトヨタのディーラーに「車内にカギを置き忘れてしまった人がいるので、助ける方法はありませんか?」と電話をかけてあげた。しかし、こういう時に限って、なかなか上手くはいかないもので、このディーラーでは対応できないと言う。

 困ったなと思ったが、いくつか会話をしているうちに、彼女はスーパーマーケットから車で10分ほど離れたところに自宅があり、その自宅にはこの車のスペア・キー(合い鍵)があると言うことが分かった。「じゃあ、僕が自宅まで送ってあげますよ。近くに車を停めてありますから、僕の車に乗ってください」。

 老婦人を彼女の自宅まで送る道々(みちみち)、僕は、彼女がかつて、どうやって日本からアメリカに渡ってきたのかという、とても興味深い話を聞いた。福岡県の炭鉱地帯出身だという彼女が、どうしてここアメリカはカリフォルニアに移り住んだのか、人生は不思議な偶然の連続だなあと、しみじみ思った。学生の頃、夢中になって読んだ、五木寛之の『青春の門(筑豊篇)』の情景が、僕の眼の前に広がった。

 自宅の前で、彼女を車から降ろすと、彼女は僕に丁寧にお辞儀をした。そして、いつかお礼がしたいので、電話番号を教えて欲しいと言う。僕はなんだかよく分からないまま、電話番号だけを残して帰途についた。

 その日の夜だ。その老婦人の娘さんから、僕に電話があった。アメリカで生まれたのだろうに、日本語が大変流暢なその娘さんは、うちの母が大変お世話になりましたと、何度も何度も丁重にお礼の言葉を述べた。

 「加藤さんは、こちらでどんなことをやっておられるのですか?」
 「えっと、僕はレッドウッドシティで、フラクタという人工知能のソフトウェア会社を経営していまして……」
 「そうですか。うちの息子が今カリフォルニア大学バークレー校で、数学とコンピュータ・サイエンスを専攻しているのですが……、何かお役に立てることはありますか?」

 話を聞いて、とても不思議な人だなとは思ったが、その息子さんとフラクタの間に何かの接点があるとすれば、ソフトウェアという部分だけだ。「そうですね、息子さんがとても優秀であれば、何らかのソフトウェア・コードが書けるかも知れませんし、卒業後の進路としても、うちは面白い会社だと思いますよ」。僕は何の気なしにそう答えた。

学歴・職歴・住所不問、優秀なエンジニア求む
 読者の皆さんはもうお分かりのことだろう。そう、その息子さんこそが、フラクタの夏季インターン生となった、エイモンだったのだ。これが全ての始まりだった。なんだか不思議な一日だったが、僕はここアメリカの地で一人の日本人を助けることができて、少し嬉しかった。

 しばらくして、その老婦人の娘さんから僕の携帯電話宛てに、一通のメッセージが送られてきた。「息子を連れて、加藤さんの会社までご挨拶に伺いたいのですが」。律儀な人だなと思い、もちろん二つ返事でOKして、その数日後、老婦人と娘さん、そしてエイモン(つまり三世代全員)がフラクタにやってきたというわけだ。

 早速CTOの吉川君にエイモンを紹介し、2人でしばらくディスカッションをしてもらうと、吉川君が興奮して僕のところに戻ってきた。

 「加藤さん、エイモンは、めちゃくちゃ優秀な学生です。とても大学生とは思えないほど、ソフトウェアのことをよく分かっていますよ。彼が学生じゃなかったら、今日から採用したいくらいです」

 不思議なことはあるもんだなと、お母さんに話をして、僕たちは夏季インターン生として、エイモンを受け入れることになったのだ。インターン期間中、エイモンの活躍は実に目覚ましいものだった。大学が夏季休暇の間、5月下旬から8月下旬まで、3ヶ月近くエイモンはフラクタの一員として働いてくれたのだが、フラクタが予測する上水道配管の劣化、今後5年間で配管が破損する確率モデルの精度向上を、数学的により確からしくしてくれた。すごい若者がいるものだなと思ったし、何より僕はエイモンという、不思議な雰囲気を持つ若者(たまに一人でホワイトボードに向かってペンを持ち、そのホワイトボードに話しかけているときがある。パソコンのディスプレイに向けてひとり言を言い、よく笑っている。高校のときは、なぜかアフロヘアーだった。挙げればキリがないが、とにかく最高に変わっていて、つまり僕はこういう人間が大好きなのだ)に会えて良かったなと思った。

 余談だが、フラクタではいつも優秀なソフトウェアエンジニアを募集している。機械学習(人工知能)分野に強いエンジニアの人がいたら、学歴・職歴不問なので、是非フラクタの門を叩いて欲しい。「エンジニア」なんて高等な名前じゃなくても良い。そういう枠組みに収まらない人だって良い。学校なんて出てなくて良い。日本から働いたって良い。アメリカに来たって良い。日本のサラリーマン社会に適合できない、日本の政治は茶番だと気づいてしまったが周りの人には内緒にしている、男尊女卑の日本社会では吸っている空気が美味くない、何でもいいが、僕はそういう隠れたる天才たちの話し相手くらいにはなれるかも知れない。興味があれば、「careers@fracta.ai」までメールを送って欲しい。

大坂なおみ選手の快挙の向こう側で
 さて、話はガラッと変わるが、9月8日(日本時間9日)、テニスのUSオープンで「大坂なおみ」選手が、男女合わせ、日本国籍を有する者として初めてグランドスラム(全米、全仏、全豪、ウインブルドンの4大大会のこと)で優勝するという快挙を成し遂げた。歳は違えど、同じく日本からアメリカに渡った人間として、「JPN(日本のこと)」という表示とともにテレビに映し出される彼女を見て、僕は喜びを爆発させた。

 相手は23度もグランドスラムで優勝経験のある、アメリカの女王セリーナ・ウィリアムズだ。2セット先取で優勝が決まる決勝戦(ファイナル)で、大坂なおみは危なげのないペースで1セット目を先取。2セット目に入り、劣勢に立たされたセリーナ・ウィリアムズが、軽微なルール違反に対する警告を取られたことから、審判への猛抗議を行った。その過剰な抗議(とその態度)に対するペナルティー(テニスの1セットは6ゲーム先取で決着が付くのだが、その6ゲーム中1ゲームが無条件で大坂なおみに渡された)も手伝って、大坂なおみが2セットを連取して、優勝したのだ。セリーナは、どうにも腹の虫が収まらなかったらしく、途中から、自分が「女性だから」ペナルティーを取られた(つまり女性だから差別されてゲームを失った)と強く主張していたが、全く筋違いだったと僕は思う。

 僕のコラムをずっと読んでくれている読者の方ならば分かってもらえると思うが、僕は母子家庭で育ったという自分の生い立ち、その生々しく苦々しい経験から、日本における「女性蔑視」の風潮に対してものすごく強い反対意見を持ってきた。しかし、その僕から見ても、セリーナが「女性だから」ペナルティーをもらった(男子のゲームならば、主審に暴言を吐いてもペナルティーにはならない)とは、全く思わないのだ。

 スポーツの現場で、審判のジャッジに対して、「こんなのおかしいわ。私に謝りなさい!あなた、早く、早く謝りなさいよ!」なんて何度も何度も詰め寄るなんて、常軌を逸している。サッカーならレッドカードで即退場だろうし、テニスだって当然国際的なスポーツなんだから、女子だろうが男子だろうが、そんな選手の態度が認められるわけがない。

 アメリカという国にしばらく住んでみると、良いところもたくさんあると思う反面、ものすごくおかしなところもあることに気づく。アメリカには色んな人が住んでいるし、これだけ多種多様な人たちがいれば、およそ一般化なんてものには意味が無いと思えなくもないが、とはいえアメリカ人には、日本人とは異なる「ある傾向」があることも事実だ。

 自分中心の利己主義がまかり通っていることから、たとえば会社を運営するにしても、まず自分の利益が真っ先に来て、次に会社全体の利益が来るなんていうのは当たり前(会社全体が儲かることよりも、自分に成果ボーナスが多く入る仕事の仕方をするなんて当たり前。オフィスを移転しようという話になったら、全ての従業員の家からの距離のバランスなんて全く考えず、自分の家の近くの住所を強烈にアピールするなんて当たり前)なのだ。

 以前も触れたが、カリフォルニア州では、人材採用においても、有色人種であることや、性別による差別を禁止していることから、従業員が訴訟を起こし、こうした差別があったとみなされた場合には企業に大きなペナルティー(損害賠償請求)が課される。一方で、企業に対しある種こうした強力な武器を手にしてしまったことから、有色人種であること、女性であることを(逆手に取って)過剰に強調することで、物事を有利に進めようとするインセンティブが従業員サイドに生まれやすくなることも事実なのだ。

 さらに他方では、こうした傾向を把握している企業サイドとして、入社面接のタイミングで、有色人種や女性を面接した場合に、後で訴えられないよう、つぶさに(かつ意図的に)記録を残していくという傾向があり、結果として、「プロセスさえしっかりしていれば(つまり有色人種だから不採用にしたのではない、女性だから不採用にしたのではないという証拠集めをきちんとやれば)、実際は(その採用担当者が差別主義者だったとしても)有色人種や女性の入社を上手く拒むことができる」ようなシステムになっているようにも見える。

 アメリカという国は、多種多様な人たちが持つ基本的人権に対して真剣に向き合ったからこそ、時として、こうして議論がものすごく複層的になる傾向があり、それが社会全体にある種のモヤモヤ感を醸成している。メディアという限られた語数、時間枠で語られる抽象化された世界では、一回で現実をすくい取ることが難しい。そこかしこで起こっている個別具体的な現実が、メディアで語られる一律の理想主義とは必ずしも一致しないことが多く、ある種の違和感が残るのだ。

主作用と副作用とリーダーシップと
 しかし、これはあくまで物事の「副作用」だということを忘れてはならない。何でもかんでも全部がストレートで、頭がスッキリしていれば良いなどということでは無く、時として議論が複層的であっても良いのだ。このモヤモヤ感に乗じて、間違った方向からそれに火をつけようとすれば、ドナルド・トランプのような大統領が出現してしまう。副作用と主作用(主な効能)をきちんと両立てで観察し、それを社会として受け止めていく必要があるように思う。

 「主な効能(主作用)」として、有色人種や女性に対する差別を無くそうという話があり、これをしっかりと社会に訴え、また植え付ける過程で、上記のような「副作用」が出ることは致し方ないことなのかも知れない。「副作用」を嫌って、「主な効能(主作用)」すら求めないというのは、それ自体、本末転倒なのであるから、アメリカ、また今後の日本も、こうした良い意味でのモヤモヤを受け入れつつ、積極果敢に前に進む(差別を排し、フェアネスを追求する)必要があるように思う。

 最後に、アメリカと日本の社会システム、教育システムの違いについて、一点だけ最近強く思ったことについて触れておきたい。僕の周囲にいる色々な人から話を聞いていると、アメリカの大学(すなわちそれを反映した大学受験システム)が求める「有為な人材像のイメージ」というものが見て取れる。

 それは日本型の学究秀才とはまた違ったもののようだ。アメリカでは、日本でいうところのAO入試のようなものが花盛りだ。つまり学校の成績をある程度しっかり取っていたならば、あとは課外活動で何をやったかをアピールすることで大学に入学していく。それはスポーツなど部活動の場合もあるが、アメリカでは特に「それ以外」、すなわちボランティア活動や、例えば非営利組織(NPO)の設立と運営、音楽や芸術などの活動がアピールポイントになるようだ。

 面白いのは、アジア人を中心として、高校の高学年になると、自分の子供を、やれアフリカだ南米だと、貧困が問題になっているような地域に一定期間(無理矢理)滞在させて、ボランティア活動に従事させることにより、AO入試の小論文の素材集めをする人が多いことだ。本人がボランティア意識、もっと言えば社会に対する問題意識を持っているかどうかとは関係なく、親が子供を貧困地域に(親のお金をたくさん使って)送り込むのだから、不思議な話だ。

 これは必ずしもこうした親御さんたちが悪いのではないだろう。そういう人材をアメリカの大学が評価するという評判(うわさ話)が露骨に流れているので、その親御さんたちも嫌々ながらそういう活動をやるしかないのかも知れない。ただし、こうした(日本とはまた違った)アメリカ受験「狂想曲」とも言える情景の後ろに透けて見えるのは、アメリカという国が「リーダーシップ」という概念に特に力点を置いているということだ。

 企業を運営するにも、行政を運営するにも、一定数の「リーダー」が必要だ。ここで、日本とアメリカの違いに気づく。日本では必ずしも、「リーダーシップ」に重きを置いた教育システム、受験システムを持っていない。僕は、アメリカという国の計算高さ、アメリカという国のしたたかさは、こういうところに如実に表れているように思う。

 日本の政治の混迷は、正真正銘の「リーダー」となり得る人材がものすごく少ないことによると思っている。リーダーが嘘をつけば、信用を失う。嘘は嘘を呼び、それを隠すためにパワープレイに走れば、やがて組織には「しらけ」が蔓延する。簡単なことだが、大切なことだ。しかし、こうした基本的なことは、残念ながら、自分が組織のリーダーになって初めて意識的に気がつくことでもあるのだ。

 日本全体として見れば、こうした組織のリーダーシップに関する「リアリティー」がアメリカと比べて圧倒的に欠落しているように思う。もちろん、アフリカに子供を送れば自動的にリーダーになるわけでは無い。むしろそんな話は、上記の差別問題の話でいうところの「副作用」に当たる話なのだ。それが重要なのでは全く無くて、この「副作用」に対する「主な効能(主作用)」にこそ目を向けるべきで、それはアメリカという国が「リーダーシップ」というものを国の根幹的価値に置いており、それがあまねくこうした親御さんたち、実際に大学に入っていく子供たちにも「伝わっている」という事実が大切なのではないだろうか。

 日本にも将来、何らかの組織における「リーダー」になり得る若者群はたくさんいるはずだ。しかし、本当のリーダー候補者たちは、多くの場合、学校で成績が良かったとか、大学受験のテストが得意だったとかいう人たちでは無い。そもそも、入口の教育システム、人を評価するやり方が違うのだから、出口としてのアウトプットが違って当然だ。問題は、そのような(リーダーシップに対する)「ふるい」がこれまで社会システムの中に無かったことで、こうした「本当のリーダーたち」が、構造的に見つけにくくなっているということだろう。

 僕も日本人の一人として、アメリカという国で、ベンチャー企業のCEOとして、リーダーとして権力をふるう人間として、これからの日本の教育に協力する責任があるように思う。たまに日本に帰る機会があるから、そんな時こそ若者を集めて、彼女たち彼らの目の前に座って話を始めなければいけないと、最近強く思っている。


フラクタでは、ダグとデイブ(社外取締役ではなく、シカゴにいる営業のデイブ)が、営業の成果で社内表彰されました
 前回も、色々な読者の方から応援のメッセージをいただいた。本当に嬉しい限りだ。読者の方々からの応援メッセージには、全てに目を通すようにしている。応援メッセージなどは、この記事のコメント欄に送ってもらえれば、とても嬉しい。公開・非公開の指定にかかわらず、目を通します。


今日もスタバのコーヒー一杯からスタート。どんな一日になるのか楽しみです

このコラムについて
サムライ経営者、アメリカを行く!
ヒト型ロボットベンチャー「SCHAFT」をグーグルに売り、世界の注目を集めた日本人経営者の名は、加藤崇。彼は今、アメリカにいる。日本の新たなロボット技術を携えて、アメリカで新たな勝負をするために。オフィスを借り、仲間を得て、東奔西走。情熱を燃料に、試行錯誤を楽しみながら、今日も一歩、前に進む。その日々を追う。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/042100034/091500037/?ST=editor#


 

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コメント
1. 2018年9月20日 10:35:56 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1510] 報告
2018年9月20日 竹内一正 :経営コンサルタント
AIは金持ちだけが使えるツール、2030年の格差社会に残る職業は
AIに奪われる仕事
労働集約的な仕事はAIに仕事を奪われます Photo:PIXTA
今ある仕事の大部分が、2030年にはAIに置き換わるといわれている。果たして、あと十数年後に私たちが直面する日本ではどのような世界が広がっているのか。『物語でわかる AI時代の仕事図鑑』の著者であり、経営コンサルタントの竹内一正氏が、AIによって加速する格差社会の現実と2030年のAI社会になっても生き残るための原則を語る。

「インターネットは貧乏人のツール。AIは金持ちだけのツール」
 ハーバード大学で金のない学生のザッカーバーグが立ち上げたフェイスブックが大成功したのは、タダ同然で使えるインターネットという“ふ化器”があったからだ。ツイッターにしても同様である。インターネットは貧乏人を成功に導くツールであり、今でもその神通力は健在だ。

 しかし、AIは違う。

 AIはタダでは使えない。AIに入力する膨大なデータを集めるにも金がかかる。その上、データ量が多ければ多いほどAIは力を発揮するが、より多くのデータを集めるにも、より多くの金がなくてはならない。しかも、AIが力を発揮するには高性能なコンピューティング能力が必要となり、それにも金がかかる。

 AIは金持ちをより金持ちにする性質を持っている。一方、AIの恩恵に浴せない中小零細企業や個人事業主、資金のない個人はAI格差の谷に落ち込んでいく。

「インターネットは貧乏人のツールだったが、AIは金持ちだけのツールだ」

 これはあるAI研究者の言葉だ。

 日本政府は「日本に格差はない」と大本営発表みたいなことを言うが、日本で格差は拡大していることは事実だ。そして2030年に向けてAIによって格差はさらに広がっていく。

AIは、常に正しい答えを出せるわけではない
 AIに関する本は既に多く出ているが、AIはそれだけが単独で私たちの前にポンと出現するわけではないことに注意が必要だ。企業の都合や、社会の受け入れる力と綱引きをしながら浸透していく。その時、仕事を奪われると考える人たちは抵抗するだろうし、全ての問題が解決できると過大評価してしまう社長は先走るに違いない。

 そして、AIは常に正しいわけではない。そのことを世間が知るきっかけは、NHKが2018年3月に放送した『AIに聞いてみた どうすんのよ!? ニッポン』というマツコ・デラックスと有働由美子アナが出演した番組だ。

 パターン認識で700万を超えるデータをAIが解析という触れ込みの番組の中で、「仕事の効率を上げたいなら?」という質問に対し、NHKのAIは「11時間54分以上働く」と驚きの回答を出した。多くの視聴者は思わず「???」となっただろう。

 なぜNHKのAIはそんなバカげた結論を出したのか。

 AIに入力したデータには「健康に関するデータは入っていなかった」という言い訳的な説明が番組中になされるに至ると、多くの視聴者があきれた。労働者にとって、健康に働くことは極めて重要なことだ。ところがそれが抜け落ちていたとは…。

 番組に対し「そんな重要なデータを入力しないでどうする!」という批判が寄せられたのは当然だ。当時の安倍政権は、長時間労働を問題視しているというポーズを取りながら、残業代ゼロでタダ働きを助長する「働き方改革」の法案を通そうとしていた時だった。

 NHKが政権の意向を忖度したかどうかはわからないが、わかっていることは、どんな高度な性能を持つAIでも、必要なデータを入力しなければ間違った結果しか出せないことだ。AIは入力するデータ次第で結果が変わるということを視聴者に知らしめたことが、この番組の最大の功労だったろう。

今のAIはまだ、物事を理解して判断できない
 では、今のAIはどんなレベルなのだろう?

 ここで、インターネットを生んだ米国の研究機関DARPAのAI研究者の意見を紹介しよう。AIのレベルには3つの波があるらしい。

 第1の波は「手作りの知識」、つまり人間が一つひとつ知識をAIに教え込むレベルだ。ロジスティックス(物流)のプログラムやチェスなどはこれに当たる。

 第2の波は「統計的な学習」で、大量のデータからAIは学んでいく。現在のAIの主流で、音声認識、顔認識など膨大な学習データを統計的に処理し、AIは結果を導き出す。しかし、決して物事を理解し、判断しているのではない。さらに、AIが出した結論の理由が説明できない「AIのブラックボックス化」という問題を有している。

 そして、第3の波が「文脈の理解」だ。物事の文脈を理解し、いわば、常識を持つAIである。そして、AIが自ら出した結論の理由を説明できる。ただし、第3の波はまだ来ていない。私たちは今、第2の波の中であり、2030年になっても第3の波は来ていないだろう。

2030年に訪れる「AI社会」の姿とは?
 2030年の社会を想像する前に、まず、過去に例を探っておこう。パソコンが企業で普及しだした1995年頃のサラリーマン諸氏の様子から学び取ることは多い。

 パソコン普及期の第1段階では、パソコンが使えない部課長は、部下に命じて資料や企画書を作成させていた。PCで何ができて何ができないかは社長も部課長もわかっていなかった。

 第2段階になると、部下たちから白い目で見ら続けていたPC音痴の部課長は、いやいやながらPCの使い方を自分で学び始める。

 第3段階では、部課長も社長も自分でPCを使うのが当たり前になる。この頃になってやっとPCでできることとできないことの境界線が幹部社員にもわかるようになった。

 AI時代も似たような道筋をたどるだろう。PCを早く習得したビジネスマンの方が先に生産性が上がったように、AIの使い方を早く学んだ方がビジネス戦線で勝利を得る確率は高くなる。

 今後2030年に向けて、日本社会の道路や上下水道などインフラは急速な老朽化に直面するが、国にも自治体にも予算的な余裕はなく、修理は手つかずになっていく。2030年の日本の空には宅配ドローンが飛び、スマホは第5世代移動体通信で今より格段に速くなり、あるレベルの自動運転車(ただし、レベル4までで、完全自動運転は日本では出遅れる。詳しくは別の機会に説明しよう)が公道を走るだろう。しかし、その道路は陥没が至る所で発生し、老朽化で通行止めになっている橋も少なくなく、水道管の破裂も珍しくない、そんなアンバランスな社会となっている。

 社会全体が“均衡ある成長”を遂げることは無理になるのが、2030年の日本の姿だ。

AI時代に食える仕事、食えない仕事
 自動車は便利を提供したが、交通事故という負の側面ももたらした。全てのテクノロジーには光と影がある。

 そして、AIは今ある仕事を奪っていくが、新しい仕事も作り出す。ただし、AIは10個の仕事を奪う一方で、新しい仕事は2個しか生み出さないといった具合だ。

 定量的に考えれば、AIにより雇用の絶対数は減り、“雇用収縮”が生じることは明らかだ。とりわけ雇用の多くを占めてきた労働集約型の仕事こそAIの得意技のひとつであることを忘れてはいけない。
 
 2030年の日本では、データ・サイエンティスト、ドローンやセンサー技術者は引っ張りだこになり、環境や次世代エネルギーに関するデバイス開発者は引く手あまたとなる。自動運転に関するプログラマーもウエアラブルPC開発者も、そしてAIなどの技術を社会問題と融合させて解決策を生み出す社会科学系の研究者も脚光を浴びる。

 つまり、新たな価値を生み出す仕事はAIに奪われない。もちろん、AIのプログラマーも重要な役割を果たす。医療では手術支援ロボット「ダヴィンチ」の普及が進むが、高度な手技を持つ脳神経外科医などはAIに置き換えられない。

 しかし、このような仕事に就ける能力を持つ人は多くはない。

 一方で、労働集約型のコールセンターはAI化でオペレーターの省人化が進み、製造現場の直接作業者も同じ波をかぶる。銀行マンはあこがれの仕事から、やりたくない仕事に転落する。

 薬剤師は仕事の大半がAIに奪われやすく、司法書士、行政書士、社会保険労務士も同様だ。弁護士も例外になりえず、プログラマーでさえ凡庸なレベルではAIに仕事を奪われる。

 非正規雇用は今後も増えるだろうが、AI化はその後押しをしてしまう。

AIの弱点を知れば、未来は明るい
 しかし、AIを過剰に恐れたり、イメージに振り回されたりしてはいけない。なにより、AIの弱点を知ることは大切だ。

『物語でわかる AI時代の仕事図鑑』
竹内一正さんの新刊『物語でわかる AI時代の仕事図鑑』
 AIは、入力されたデータが正しいかどうかを判断する能力を持ち合わせていないことはNHKの番組ネタで既に言及した通りだ。その結果、入力データを恣意的に選択して、AIから利用者が希望する結果を引き出すことも起こりうる。この度、出版した『物語でわかる AI時代の仕事図鑑』で登場するエリート銀行マンが、頭取によるAI悪用事件に巻き込まれる姿はまさにそれだ(詳しくは本書を読んでいただきたい)。

 近年、上司が指示を出さなければ動けない“指示待ち社員”が問題となっているが、AIは断トツの指示待ち社員でもある。誰かがデータを集め入力しないとAIは役に立たない。AIは自分でデータを探し出して考えることはまだできないし、2030年でも無理だろう。

 そして、AIにできることには限界がある。上梓した本書の物語には女性漁師が登場する。彼女は苦労の末にAIセンサーを使い、定置網漁での漁獲高をアップさせ年収を上げることに成功した。しかし、喜んだのもつかの間で、資源としての魚の量そのものを増やす力はAIにはなかったことに気づく。漁業のルールは水産庁といった規制官庁によって決められていて、規制の存在が、AIの問題解決能力以上の支配力を持っているからだ。AIの限界を知った女性漁師はある行動に出るのだが…。

 今から12年先の2030年は、高齢化と非正規雇用が増加し、老朽化した社会インフラの下で、資金力のある企業を中心にAI化が嫌でも進行し、さまざまな格差が広がっていく。

 そんな時代を生きるにはどんなことを考え、行動すべきか?

 AIの波は避けられない。だからこそ、今までのやり方にしがみつかないこと。AI化から目を背けないことが肝要となる。なにより、AIは万能ではない。弱点もたくさんある。まずは、AIにできることできないことを客観的に理解すること。そして、これまでの働き方に縛られず、新たな働き方を積極的に求めて行動することができれば、AI時代をたくましく生き抜く可能性が高くなる。

 変化に適応できた種のみが生き残るという原則は、2030年のAI時代でも有効だ。

(経営コンサルタント 竹内一正)
https://diamond.jp/articles/-/180131


 

2018年9月19日 / 13:18 / 12分前更新
コラム:自動車業界、グーグルに席巻される運命か
Liam Proud
3 分で読む

[ロンドン 18日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 日仏大手自動車連合が、アルファベット(GOOGL.O)傘下の巨大IT企業であるグーグルと手を組む。これはドライバーをより幸せにしてくれるはずだ。しかしグーグルが自動車向けソフトウエアに進出する姿は、同社がスマートフォン市場で大成功を収めた構図と気味が悪いほど似通っている。

ルノー(RENA.PA)と日産自動車(7201.T)、三菱自動車(8058.T)の連合は18日、車両搭載用基本ソフト(OS)としてグーグルのスマホ向けOS「アンドロイド」を2021年から採用すると発表した。各社は現在、オープンソース方式の「Linux」のソフトウエアを含めて寄せ集め的な技術を使っている。この提携に関する金銭的な条件は明らかになっていない。ただグーグルが、ソフトウエアを提供する代わりに、ユーザーのデータ獲得と各種アプリを予めインストールすることを要求するというスマホの世界で駆使したやり方を踏襲する事態が想定される。

グーグルとの提携は、ドライバーにとっては色々と楽ができるようになる。今の車は、ダッシュボードの下のスクリーンには「インフォテインメント(情報と娯楽の融合)」システムが搭載され、ナビゲーション支援や音楽再生などの機能を果たすが、そうしたソフトウエアは、消費者がハンドセットに基づいて対面するインターフェースに比べて不格好になりやすい。

重要なのは、自動車メーカーのシステムは「グーグルプレイ」のようなアプリストアを持たないことが多い点だ。アンドロイドの採用によって、自動車はアプリ開発者にとって新製品を生み出す意欲が高まる分野となる。例えば駐車スペースを探したり、チケット料金を支払うアプリが登場するかもしれない。ライバルのプジョー(PEUP.PA)やトヨタ自動車(7203.T)も追随する以外選択肢がなくなるのではないか。

短期的に見れば、自動車メーカーが失うものは乏しい。グーグルは主に広告事業を展開しているので、ユーザーの位置などに基づいた製品販売をできるようにするデータに一番関心を寄せるはずだ。メーカー側は、新たなサービスをドライバーに提供するための自動車の走行に関する情報は引き続き管理できるだろう。

それでもドライバーが車内でグーグルのアプリを利用するのに慣れてくるとともに、メーカーはどの方面にも事業を展開するのが難しくなる。この状況はまさに今、スマホメーカーが陥っている苦境だ。スタティスタのデータによると、アンドロイドは実にスマホの88%にインストールされている。グーグルはいずれ、自動車メーカーが大事にしまっているデータの提供を求め、傘下の自動運転部門ウェイモに役立てるとみられる。

もっともグーグルの影響力がそこまで広がれば、独占禁止当局の注目を集めるだろう。親会社のアルファベットは最近、スマホ市場で優越的な地位を乱用したとされ、欧州連合(EU)欧州委員会から43億ユーロの支払いを命じられている。

自動車メーカーは今後、グーグルが市場でより影響力を強めることを警戒するとしても、連携する以外に選べる道は乏しいだろう。

●背景となるニュース

*日産、ルノー、三菱自動車の連合は18日、車両搭載OSとして2021年からグーグルの「アンドロイド」を採用すると発表した。

*各社の車は、地図アプリ「グーグルマップ」やAI(人工知能)を用いて会話形式で検索などができる「グーグルアシスタント」が予めインストールされる。

*この提携の金銭的な条件は明らかにされていない。最初に報じた米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、グーグルはアプリによって生み出されたデータを利用するという。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
https://jp.reuters.com/article/auto-google-breakingviews-idJPKCN1LZ0DD

2. 2018年9月20日 10:58:20 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1513] 報告
 
「身近な悪意」で暴走、AIのダークサイド
トレンド・ボックス
先端技術の光と影
2018年9月20日(木)
竹居 智久/浅川 直輝/玉置 亮太=日経コンピュータ/日経xTECH
あらゆる技術には光と影がある。それはAI(人工知能)も例外ではない。フェイク動画で人をだます、人の行動を操作する、自動運転ソフトを誤動作させて人を傷つける──。悪意に操られる危険がある以上、AIの「ダークサイド」を知っておく必要がある。
(日経ビジネス2018年7月16日号より転載)
 「言ってもいないことを本当に言ったかのように見せかけられる時代になった」。2018年4月、フェイク(偽の)ニュースに警鐘を鳴らすバラク・オバマ前米大統領の映像が話題になった。
 理由は発言内容ではない。この映像自体がフェイクだったからだ。作ったのは米映画監督ジョーダン・ピール氏と米メディアのバズフィードである。
 ディープフェイク。有名人の顔を別人の顔に合成した精巧なニセ動画の総称で、PCソフト「FakeApp」を使うことが多い。FakeAppは深層学習(ディープラーニング)を活用し、不自然さを感じさせないように画像を加工できるとの触れ込みだ。冒頭に紹介した映像では、ピール氏が話したときの口元の動きをオバマ氏の映像に重ね、あたかもオバマ氏が話しているかのように見せかけた種明かしをする。映像の中の“オバマ氏”はこう締めくくる。
 「気をつけろよ、おまえたち」
 警告は単なる脅しではない。既にネット上にはディープフェイクがあふれている。メルケル独首相の顔が途中からトランプ米大統領にすり替わる演説、有名ハリウッドスターのまだ製作されていない「続編」の名場面、有名女優の顔をはめ込んだポルノ──。
メルケル・トランプが演説?
●「ディープフェイク」で作成したニセ動画の例

演説するメルケル独首相(上)の顔が途中からトランプ米大統領(下)に差し替わった
出所:YouTube(写真:The New York Times/Redux/アフロ)
差別発言するチャットボット
 氾濫するディープフェイクを問題視した米掲示板サイト、レディットは18年2月に利用規約の一部を改定。性的な画像やビデオの配布を禁じる中で、「偽造された描写も含む」と明記した。FakeAppの開発者が立ち上げたコミュニティー「deepfakes」も閉鎖した。
 AIが悪用されかねない懸念は既に現実になっているかもしれない。16年の米大統領選ではAIが暗躍し、投票行動を操った可能性がある。
 舞台は世界最大のSNS(交流サイト)である米フェイスブックだ。3月に最大8700万人の利用者データが流出して大統領選の選挙工作に使われた疑惑が発覚。同社のマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)は米議会で謝罪した。膨大な利用者データを分析して政治広告を配信する過程で同社のAI技術が使われた可能性がある。

2018年4月に米議会の公聴会で証言するフェイスブックのザッカーバーグCEO(写真:PIXTA)
 「AIシステムは肯定的な反応と否定的な反応の両方を人々から引き起こす。社会面の課題は技術面の課題と同じぐらい大きい」。約2年前の16年3月25日、米マイクロソフトで研究開発部門を担当するピーター・リー氏は同社のブログでこうつづった。2日前に公開したチャットボット「Tay(テイ)」が攻撃的で不適切な発言を繰り返したことを謝罪し、このような経験から「学ぶ努力を続けていく」と述べた。
 同社はチャットアプリを頻繁に利用する18〜24歳のユーザーが対話を楽しむ相手としてテイを開発。ネットで利用者と対話するうちに、より洗練された対話ができるように成長していくはずだった。ところがテイはヒトラーを礼賛する発言や、人種差別的な発言を繰り返すようになり、同社はわずか1日でテイの公開を停止した。
 同社が先駆けて公開した日本の「りんな」などは対話に使う言葉を同社の開発者が教え込む形式だった。しかし、テイはネット上で利用者が書き込んだ内容を学んで成長する仕組み。ここに不適切な言葉を学ぶ脆弱性があった。
敵対的サンプル画像
 AIのダークサイドの最たるものは戦争や殺人の「AI兵器」だろう。完全に人間の判断を排除して攻撃できる自律型兵器は現時点で存在しないとされるが、多くのAI研究者は同兵器の開発を禁止すべきと声を上げている。
 「我々はグーグルが戦争ビジネスに参加すべきではないと信じている」。3000人以上の米グーグル社員が、深層学習で映像を解析する米国防総省の研究プログラムに参加しないようスンダー・ピチャイCEOに求める書簡に署名したと、米ニューヨーク・タイムズなどが18年4月に報じた。
負の方向にも使える
●能力向上によって生まれたAIの光と影

 「韓国科学技術院(KAIST)とのいかなる分野での協力もボイコットする」。世界30カ国からなるAIやロボットの研究者約50人が18年3月、KAISTに公開書簡を送った。KAISTが18年2月に、韓国軍需企業と「国防人工知能融合研究センター」を共同設立したことに反対するためだ。
 兵器とは縁遠い自動車が牙をむくおそれもある。
 AIによる自動運転車が備える、人間や障害物を認識する技術を悪用するのだ。一例が「敵対的サンプル画像」と呼ぶ手法。AIに認識させる画像に人間には見えないノイズを混入させて誤認識させ、文字通り「暴走」させる。意図的な混入だけでなく、「悪意なく掲示される画像を誤認識する可能性もある」(ビッグデータ活用支援ベンチャー、メタデータの野村直之社長)。
学習を制御しないと暴走する
●一般利用者と対話するマイクロソフトのAIとその学習の仕組み

出所:Twitter
データや倫理の整備が鍵
 技術者や研究者はAIのダークサイドに立ち向かう取り組みを進めている。
 活発なのはAIが学習する基になるデータを健全に保ったり透明性を高めたりする動き。フェイスブックは今回の疑惑を受け、ターゲティング広告に使うデータの透明性を高める施策に乗り出した。欧州の「一般データ保護規則(GDPR)」はプロファイリングに関するガイドラインを定め、個人に重大な影響を及ぼす完全な自動処理による決定に人々が服さない権利を示した。
声を上げ始めた技術者
●AI兵器の開発に反対する技術者の動向

出所:(上)トビー・ウォルシュ氏HP、(下)米ニューヨーク・タイムズ
 AIに学習させるデータから「毒」を抜くことを支援する企業も登場した。メタデータはユーザー企業が用意したデータをリアルタイムに検査して不適切な表現を取り除くクラウドサービスを提供。AIに学ばせる「正解データ作りを支援する」(野村社長)。
 倫理的な基準を設ける議論も進む。非営利団体「Future of Life Institute」は17年1月に「アシロマAI原則」と呼ぶ23項目のAI開発原則を公表。米国電気電子学会(IEEE)はAIや自律型システムの開発ガイドラインの第2版を17年12月に公開。グーグルのピチャイCEOは18年6月、AIの兵器への使用を禁止すると発表した。
 AIにデータを与えるのも指示するのも人間。AIのダークサイドとは我々人間のダークサイドにほかならない。
日経コンピュータ
システム管理者、情報システム担当者らITプロフェッショナルからITで企業改革を進める経営者まで、有益な情報をタイムリーに提供する。


このコラムについて
トレンド・ボックス
急速に変化を遂げる経済や社会、そして世界。目に見えるところ、また見えないところでどんな変化が起きているのでしょうか。そうした変化を敏感につかみ、日経ビジネス編集部のメンバーや専門家がスピーディーに情報を発信していきます。
https://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120118/226265/071300014/ 

3. 2018年9月20日 12:26:16 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1518] 報告
【第48回】 2018年9月20日 松本利明 :人事・戦略コンサルタント
「念のため、このデータは残しておこう」病の治し方
優秀なエリートには共通点がある。彼らは「真面目に、我慢して、一生懸命」ではなく、「ラクして速く」をモットーに、効率よく結果を出し続けている。まじめさと仕事のパフォーマンスは比例しない。24年間で5万人以上のクビ切りを手伝い、その一方で、6000人を超えるリーダー・幹部社員を選出してきた松本利明氏の新刊、『「ラクして速い」が一番すごい』から、内容の一部を特別公開する(構成:中村明博)

資料・データはどんどん捨てよう
 あなたのデスクはスッキリしていますか?
 PCのデスクトップはアイコンだらけになっていませんか?
松本利明(まつもと・としあき)
人事・戦略コンサルタント
外資系大手コンサルティング会社であるPwC、マーサージャパン、アクセンチュアなどを経て現職。5万人以上のリストラを行い、6000人を超える次世代リーダーや幹部の選抜・育成に関与する。その中で、「人の持ち味に合わせた育成施策を行えば、人の成長に2倍以上差がつく」ことを発見し、体系化する。そのノウハウを、クライアント企業にはマネジメントの仕組みとして、社員には具体的な仕事術へと落とし込み提供。24年間で、外資系・日系の世界的大企業から中堅企業まで、600社以上の人事改革と生産性向上を実現する。自らもその仕事術を実践することで、スタッフからプリンシパル(部長クラス)まで8年という驚異的なスピードで昇進する。現在は、企業向けのコンサルティングに加え、「すべてのムダをなくし、自分らしく、しなやかに活躍できる世界」にするため、「持ち味の見つけ方・活かし方」を、ビジネスパーソンのみならず学生にも広めている。「仕事術」「働き方」などのテーマで、メディアへの寄稿多数。また「日本企業の働き方・賃金改革の在り方」について、英国放送協会(BBC)から取材を受け、その内容は全世界に配信された。
 プロジェクト管理のコンサルタント、リズ・ダベンポートによると、人は年間150時間を探し物に費やすそうです。
 8時間勤務なら年間約18日、つまり約1ヵ月分の時間を探し物に充てている計算です。
 急ぎのタイミングに限って、あるべきところに必要な物が置いていなかったりするものです。「プライベートでは整理整頓できているが、職場ではどうも……」などということはありません。仕事もプライベートも一緒です。
 意識しないと身のまわりは物であふれます。物が多いとどうしても探し物をする時間が増えます。目の前にある9割の物は捨てるくらいでちょうどいいのです。
ところで、「整理」と「整頓」の違いはご存じですか?
「整理」とは、必要なものと不必要なものを振り分け、不必要なものを捨てること。
「整頓」とは、必要なものを機能的に配置することです。
 つまり、整頓の前に整理が必要です。物が多いとわかりやすく配置することは難しくなりますし、場所がわかっていても、とり出すのに時間がかかるので非効率。
 ビジネス資料は「いる」「いらない」「捨てる」「残す」を考えがちですが、危険です。残す必要があるものは、次の3種類だけ。
「これ」以外は捨ててOK!
(1)法律・契約関連、クライアントへ納品した資料や備品
(2)「言った言わない」にならないように言質を含んだ重要なメールや議事録
(3)納期、量、価格といった仕事の受発注に関する書類
 上記以外の資料はどんどん捨てましょう。
 デジタルデータも同様です。どんどん捨てていきましょう。「念のため、このデータは残しておこう」などと考えがちですが、するとファイルが「最終」「最終修正版」「本当に最終」などと際限なく増え、何が本当に最後のものかわからなくなり、ミスの原因になります。
 作業フォルダはプロジェクトのフェーズごと「(Process(作業中)」「Final(納品)」の2つにしましょう。
「Final(納品)」は最終的にお客様に納めたもので、それ以外はすべて「Process(作業中」フォルダに入れておきます。
 そして、納品して仕事が終わったら、「Process(作業中)」フォルダを「覗かない」でゴミ箱に移すのです。納品したら絶対に「Process(作業中)」フォルダは開けずに捨てましょう。
 どうしても残したい資料があるなら、「Others(その他)」フォルダをつくり、そこに入れます。
 ただし1年たったら「Others(その他)」フォルダは覗かずに捨ててください。1年たって使わなかった資料はもう使うことがありません。フォルダごと捨てます。
 本当に必要な部分があれば、その他の資料で引用しているものです。
 ファイルを残す基準は、「他人が見ても、業務を問題なく引き継げるレベルまでシンプルに整理されているかどうか」です。
 週に1回は時間を決めて資料やデータを整理しましょう。週に1回はやらないと習慣にならないし、どんどんデータもたまってしまいます。
 データは全部自分で持つ必要はありません。必要なときにとり出せればいいので、全員が使う物ならクラウドにあげて共有し、ほしい人に渡して必要なときにもらえば重複管理は防げます。
「捨てる基準」は強く意識しないと、徹底できません。未練が出ないように捨てる基準をあえて口に出すといいでしょう。引き下がれなくなりますし、まわりも歯止めをかけてくれるようになるのでオススメです。
 かばんやロッカー、デスクまわりはその人の心理状況を映し出します。かばんやロッカーに物を入れすぎてはいけません。「半分空けておく」ぐらいがちょうどいいのです。多くても7割にとどめておきましょう。それ以上にしてしまうと、どんなに整頓されていても、とり出すまでに時間がかかります。新しい物が入る余裕も生まれません。一度勇気を出して捨ててみてください。
■参考記事
「5万人のリストラ」から見えた万年平社員の共通点とは?
松本利明(まつもと・としあき)
人事・戦略コンサルタント
外資系大手コンサルティング会社であるPwC、マーサージャパン、アクセンチュアなどを経て現職。5万人以上のリストラを行い、6000人を超える次世代リーダーや幹部の選抜・育成に関与する。その中で、「人の持ち味に合わせた育成施策を行えば、人の成長に2倍以上差がつく」ことを発見し、体系化する。そのノウハウを、クライアント企業にはマネジメントの仕組みとして、社員には具体的な仕事術へと落とし込み提供。
24年間で、外資系・日系の世界的大企業から中堅企業まで、600社以上の人事改革と生産性向上を実現する。自らもその仕事術を実践することで、スタッフからプリンシパル(部長クラス)まで8年という驚異的なスピードで昇進する。
現在は、企業向けのコンサルティングに加え、「すべてのムダをなくし、自分らしく、しなやかに活躍できる世界」にするため、「持ち味の見つけ方・活かし方」を、ビジネスパーソンのみならず学生にも広めている。「仕事術」「働き方」などのテーマで、メディアへの寄稿多数。また「日本企業の働き方・賃金改革の在り方」について、英国放送協会(BBC)から取材を受け、その内容は全世界に配信された。

https://diamond.jp/articles/-/179969

 

 


オピオイド危機、米中間選挙の重要テーマに
医療用麻薬の乱用問題に触れた選挙広告、2014年には1州のみだったが今年は25州に拡大
今年の米中間選挙では、共和、民主両党の候補ともに反オピオイドの広告を出す頻度が加速度的に増えている PATRICK SISON/ASSOCIATED PRESS
By Dante Chinni, Joshua Jamerson and Danny Dougherty
2018 年 9 月 20 日 10:36 JST 更新

 4年前の選挙キャンペーンでは取るに足りない付け足しにすぎなかった医療用麻薬「オピオイド」の乱用問題が、今年秋の米中間選挙では一部の主要レースの重要な論点の一つになっている。

 広告調査会社カンタ−・メディア/CMAGのテレビ広告分野のデータに基づくウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の分析によれば、連邦議会選挙と州知事選挙の選挙広告のうち、オピオイド問題に絡むメッセージを含むものの放映回数は、今年これまでに25州で5万回以上に達している。前回の中間選挙があった2014年の同時期に行った調査では、オピオイド問題に触れたテレビ広告は、ケンタッキー州上院議員選挙での1件(放送回数は70回)だけだった。

オピオイド危機、米中間選挙の重要テーマに
 今年のキャンペーン広告の中で、オピオイド問題の取り扱いの広がりは移民問題や銃規制問題ほどではない。オピオイドに触れたテレビ広告は、全体のわずか3%にすぎない。しかし、WSJの分析では、オピオイド危機の拡大に呼応するように、オピオイド関連の広告も増え始めていることが示されている。共和、民主両党の候補ともに反オピオイドの広告を出す頻度が加速度的に増えている。

 こうした広告のメッセージには、乱用者を治療する資金の拠出拡大や、正規ルート以外でのオピオイドの流通阻止などが含まれている。

 この広告の急増により、オピオイド問題は、ほぼ埋もれた状態から、影響力の大きい全国区の政治的話題になっている。広告枠購入の地図は、フロリダ州、ミズーリ州、ウィスコンシン州やウェストバージニア州など、上院議員選と知事選が接戦の州で、この話題が多く取り上げられていることを示している。オハイオとペンシルベニアの両州では、下院議員候補らが何千もの広告を流している。

オピオイド危機、米中間選挙の重要テーマに
 広告回数の数字は、問題の深刻度を示した地図と完全には一致しない。例えば、フロリダ州では多くの広告が流れているが、直近で入手可能だった2016年の人口10万人当たりの死亡数のデータを引用すると、過剰摂取による死亡率は他の多くの州よりも低い。ウィスコンシン州、ミズーリ州およびペンシルベニア州でも、オピオイド問題の広告が多く流れているが、3州はこの問題から最も深刻な打撃を受けている州ではない。

オピオイドによる死亡率の変化
(2018年に選挙広告を流した25州で2012年と2016年を比較)
出典:カイザー・ファミリー財団(死亡率)、カンタ−・メディア/CMAG(広告)
注:数値は各州の平均年齢の違いを考慮し、2000年米国標準人口で年齢調整した
広告放送回数1〜750回
751〜1500回
1501〜2500回
2500回以上
N.H.
Maine
Mass.
Md.
Pa.
Ohio
Mich.
N.J.
Ind.
Fla.
R.I.
N.Y.
Wis.
N.C.
Ill.
Mo.
W.Va.
Tenn.
Ky.
Minn.
Ariz.
Colo.
N.M.
Ark.
Ore.
0%
50
100
150
200
250
2500回以上xOhiox167.48%
 こうした州で広告が多く流れている理由は何だろうか。それには、選挙が接戦であることのほかに、過剰摂取による死亡の増加が顕著であることがある。これらの州では、2012年から16年までの間に、オピオイドの過剰摂取が50%以上増えているのだ。

オピオイド問題に言及した選挙広告
(2018年、政党別)
出典:カンタ−・メディア/CMAG
民主党
共和党
Ohio
Pa.
Ind.
Maine
Wis.
W.Va.
Fla.
Ky.
Mo.
N.C.
N.H.
N.Y.
Ark.
Ariz.
Colo.
Ill.
Mass.
Md.
Mich.
Minn.
N.J.
N.M.
Ore.
R.I.
Tenn.
0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
3.5
4
4.5
5
 2018年の選挙戦では、共和、民主の両党がこの問題を取り上げているものの、共和党の選挙広告で言及しているものが多い傾向にある。特にオハイオとペンシルベニアの2州では顕著だ。この2州は、過剰摂取が最も増えている州に入る。


The Way to Save Opioid Addicts | Moving Upstream
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麻薬乱用問題の専門家の間では、最も効果的な治療法は投薬治療だということに幅広いコンセンサスがあるが、米国の入院リハビリテーション施設の多くは投薬治療を行っていない。なぜこの治療が困難で問題があるのか、WSJのジェイソン・ベリーニ記者が解説する(英語音声、英語字幕あり)
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米株市場、赤字企業のアウトパフォームに懸念の声も
企業向けソフトウエア会社オクタの幹部ら(2017年4月)
企業向けソフトウエア会社オクタの幹部ら(2017年4月) PHOTO: CHARLES SYKES/ASSOCIATED PRESS
By Corrie Driebusch
2018 年 9 月 20 日 10:55 JST

 米国株式市場では今年、急成長している企業の株価動向は極めて好調だ。だが、こうした企業の多くには気掛かりな特徴がある。利益を上げていないのだ。

 事業拡大のための再投資に注力している成長企業は、上げ相場の局面で良いパフォーマンスを見せる傾向にあり、今年の米株をけん引しているハイテク、一般消費財、ヘルスケアといったセクターに多い。

 アナリストは、成長株で構成するラッセル1000グロース指数の上昇率がラッセル1000バリュー指数を上回っているのは理にかなっており、むしろ好ましいと考えている。ラッセル1000バリュー指数は、割安と考えられている銘柄で構成されており、こうした銘柄は景気循環の後半で魅力的だと見なされることが多い。

 ただ問題は、FTSEラッセルのデータによれば、グロース指数構成企業のうち安定した利益を上げていない企業の今年8月までのリターンが18%と、同指数全体の16%を上回っている点だ。

 グレンミードのデータによると8月はこの傾向が顕著で、ラッセル1000構成企業のうち利益を上げていない企業の銘柄のリターンは13.5%と、指数全体のリターン5.5%を大幅に上回った。こうしたやや不自然なゆがみを懸念する声も聞かれる。

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 米国の主要な株価指数は8月末時点で過去最高値近辺にあり、9月に入ってもこれまでほぼこの水準で推移している。貿易を巡る緊張、新興国通貨の危機、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペースなどについて懸念されているものの、9年に及ぶ上げ相場が減速するようには見えない。

 利益を上げていないが株価が大幅に上昇した企業には、バイオ医薬品会社サレプタ・セラピューティクスや、企業向けソフトウエア会社オクタなどがある。両社とも株価は2倍以上に上昇した。サレプタは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)治療薬の臨床試験が好結果を示したことが株価を押し上げた。オクタは売上高の大幅増が買い材料となった。

 サレプタは2016年初め以降で四半期決算が黒字になったのが1回だけだが、ファクトセットによると、アナリスト22人のうち20人が同社株の投資判断を「バイ」としている。

 オクタは17年4月の上場以降、四半期決算が黒字になったことがないが、アナリスト13人のうち11人が投資判断を「バイ」としている。

 投資家は将来大きな利益を上げると見込んだ企業により強い関心を示しているが、これが行き過ぎた場合について懸念する声もある。

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 オピオイド危機、米中間選挙の重要テーマに医療用麻薬の乱用問題に触れた選挙広告、2014年には1州のみだったが今年は25州に拡大
今年の米中間選挙では、共和、民主両党の候補ともに反オピオイドの広告を出す頻度が加速度的に増えている PATRICK SISON/ASSOCIATED PRESS
By
Dante Chinni, Joshua Jamerson and Danny Dougherty
2018 年 9 月 20 日 10:36 JST 更新
 4年前の選挙キャンペーンでは取るに足りない付け足しにすぎなかった医療用麻薬「オピオイド」の乱用問題が、今年秋の米中間選挙では一部の主要レースの重要な論点の一つになっている。
 広告調査会社カンタ−・メディア/CMAGのテレビ広告分野のデータに基づくウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の分析によれば、連邦議会選挙と州知事選挙の選挙広告のうち、オピオイド問題に絡むメッセージを含むものの放映回数は、今年これまでに25州で5万回以上に達している。前回の中間選挙があった2014年の同時期に行った調査では、オピオイド問題に触れたテレビ広告は、ケンタッキー州上院議員選挙での1件(放送回数は70回)だけだった。

 今年のキャンペーン広告の中で、オピオイド問題の取り扱いの広がりは移民問題や銃規制問題ほどではない。オピオイドに触れたテレビ広告は、全体のわずか3%にすぎない。しかし、WSJの分析では、オピオイド危機の拡大に呼応するように、オピオイド関連の広告も増え始めていることが示されている。共和、民主両党の候補ともに反オピオイドの広告を出す頻度が加速度的に増えている。
 こうした広告のメッセージには、乱用者を治療する資金の拠出拡大や、正規ルート以外でのオピオイドの流通阻止などが含まれている。
 この広告の急増により、オピオイド問題は、ほぼ埋もれた状態から、影響力の大きい全国区の政治的話題になっている。広告枠購入の地図は、フロリダ州、ミズーリ州、ウィスコンシン州やウェストバージニア州など、上院議員選と知事選が接戦の州で、この話題が多く取り上げられていることを示している。オハイオとペンシルベニアの両州では、下院議員候補らが何千もの広告を流している。

 広告回数の数字は、問題の深刻度を示した地図と完全には一致しない。例えば、フロリダ州では多くの広告が流れているが、直近で入手可能だった2016年の人口10万人当たりの死亡数のデータを引用すると、過剰摂取による死亡率は他の多くの州よりも低い。ウィスコンシン州、ミズーリ州およびペンシルベニア州でも、オピオイド問題の広告が多く流れているが、3州はこの問題から最も深刻な打撃を受けている州ではない。
オピオイドによる死亡率の変化(2018年に選挙広告を流した25州で2012年と2016年を比較)

出典:カイザー・ファミリー財団(死亡率)、カンタ−・メディア/CMAG(広告)注:数値は各州の平均年齢の違いを考慮し、2000年米国標準人口で年齢調整した

 こうした州で広告が多く流れている理由は何だろうか。それには、選挙が接戦であることのほかに、過剰摂取による死亡の増加が顕著であることがある。これらの州では、2012年から16年までの間に、オピオイドの過剰摂取が50%以上増えているのだ。
オピオイド問題に言及した選挙広告(2018年、政党別)
出典:カンタ−・メディア/CMAG

 2018年の選挙戦では、共和、民主の両党がこの問題を取り上げているものの、共和党の選挙広告で言及しているものが多い傾向にある。特にオハイオとペンシルベニアの2州では顕著だ。この2州は、過剰摂取が最も増えている州に入る。

The Way to Save Opioid Addicts | Moving Upstream

麻薬乱用問題の専門家の間では、最も効果的な治療法は投薬治療だということに幅広いコンセンサスがあるが、米国の入院リハビリテーション施設の多くは投薬治療を行っていない。なぜこの治療が困難で問題があるのか、WSJのジェイソン・ベリーニ記者が解説する(英語音声、英語字幕あり)
関連記事
• 米中間選挙、銃規制強化の広告が急増
• 米上院、包括的歳出法案を可決
• 大麻由来のコーヒーやキャンディーは合法?
• 米中間選挙で民主党がすべきこと:怒りを投票に
• トランプ氏、オピオイド問題で司法省に企業提訴求める

4. 2018年9月22日 13:32:48 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1541] 報告
アマゾン・プライムに追いつく企業は現れるか PETER ARKLE
テクノロジー
アマゾン・プライムが招いた小売業の「軍拡競争」
「2日以内でお届け」が業界の常識を覆した
By Christopher Mims
2018 年 9 月 21 日 13:02 JST

――筆者のクリストファー・ミムズはWSJハイテク担当コラムニスト

***

 人間には生命、自由、そして幸福の追求といった不可侵の権利がある。最近はそこにもう1つ加わった。あらゆるものを2日以内に受け取れる権利だ。

 各種の消費者調査によると、米アマゾン・ドット・コムの「プライム」サービスはオンライン小売業の黄金律となった。世界で1億人以上の利用者を誇る同サービスが引き金となり、大手小売企業の間で「軍拡競争」が起きている。より小規模な企業の多くは、まるでコバンザメのように大企業にしがみつくだけの存在になった。

 ウォルマートやターゲット、そしてグーグルの即日配達サービス「グーグルエクスプレス」に参加する多くの企業などが、過去1年で「無料」の2日以内配達を始めた(無料サービスは荷物のサイズなど、企業によりさまざまな条件がある)。

 アマゾンなどのネット通販企業は、実店舗小売業が倒産する要因になったとされることが多い。しかし皮肉なことに、アマゾンなどが素早い配送を実現させているのは、不動産(店舗ではなく倉庫)への投資によるところが大きい。コスト面での競争力を維持するため、小売業者は通常はコストの高い航空便ではなく、スピードで劣る陸上輸送を利用する必要がある。ネット通販大手オーバーストック・ドット・コムは、カンザス州カンザスシティにある1つの配送センターから米国の99%の地域に2日以内の配達サービスを提供するとしている。

 とはいえ大手のオンライン業者だけが大型フルフィルメントセンター(商品の保管・配送拠点)を建設しているわけではない。同業のスタートアップや別の業界の大手企業も、アマゾンとは別の選択肢を小規模業者に提供するため、同様の施設の拡大に動いている。

ウォルマートは「キャンパス」で対抗

 アマゾンが長年にわたって他のオンライン小売企業の追随を許さなかったのは、同社が広範に点在する倉庫に多額の投資をしてきたからだ。アナリストはかつて、これらがアマゾンの負担になるとみていた。

 アマゾンによれば、同社は現在、米国内に75カ所のフルフィルメントセンターを持ち、25カ所の仕分け拠点を運営している。これら拠点の中には、面積が100万平方フィート(約9万3000平方メートル)を超える巨大なものもあり、中にはベルトコンベヤーが張りめぐらされ、従業員が忙しく動き回っている。

 ウォルマートはアマゾンに対抗すべく、2015年からオンライン販売向けのフルフィルメントセンターを開設し始めたという。これらの多くは実店舗向けの配送センターとは異なり、「キャンパス」と呼ばれ、現在は6カ所が稼働している。より小規模な配送センターや店舗から直接配送するケースも含め、ウォルマートは米国の98%の地域に2日以内の配達を実現できるという。

 一方でターゲットは、まったく異なる戦略を採用した。注文から2日以内で配達される商品の90%以上は、1800店舗のうちの1400店舗から直接送り出されていると広報担当者は明かす。

プライムをさらに活用

 アマゾンの配送インフラは同社だけが利用しているわけではない。細かい記載内容まで目を通している利用者なら知っていることだが、アマゾン・マーケットプレイスを利用する販売業者も利用できる。電子商取引分野を専門とするデータ追跡会社、マーケットプレイス・パルスのユオザス・カジュケナス最高経営責任者(CEO)によれば、アマゾン・マーケットプレイスの売上高の約半分を占める上位1万社の販売業者のうち、少なくとも90%は1つの商品をアマゾンのフルフィルメント・プログラムに依頼している。また半分以上の商品を同サービスで保管したり配送したりしている業者は、全体の約70%に上るという。

 同プログラムを利用する販売業者は、大きさや重量で決まった定額の配送料を支払う。アマゾンが最も早く導入したイノベーションの1つであるこのプログラムによって、小規模事業者でもコストを予測しやすくなり、採算ラインを把握しやすくなった。

 アマゾンのインフラを利用するのは、コストや利便性だけが理由ではない。売り上げを伸ばすための鍵も握っているからだ。フルフィルメント・プログラムを使えば「プライム」としてのステータスが適用されて2日以内の配達が選択できるようになり、アマゾンの商品検索結果でもトップに表示される。カジュケナス氏によれば、検索結果の1位に表示されない場合、商品価格を最大10%下げなければ対抗することはできない。

 アマゾンが自社ネットワークを開放したことで販売業者は恩恵を受けたが、同時にアマゾンも配送ネットワーク拡充のための資金を手にできた。「プライム」の知名度も上がり、同社の時価総額を1兆ドルに押し上げる要因にもなった。


Is Amazon Going to Rule the World?
Is Amazon Going to Rule the World?
アマゾンがネット通販事業を全世界に拡大する上で直面する課題について、アマゾンの段ボール箱を使ってカラン・ディープ・シン記者が解説(英語音声のみ、英語字幕あり)
台頭するスタートアップ

 オンライン小売で名目上はアマゾンのライバルであるウォルマートも、外部販売業者向けにマーケットプレイスを提供する。だが最も大きな違いは、ウォルマートがフルフィルメントまで支援していないことだ。また、アマゾンのフルフィルメントを利用することも禁じている(一方、イーベイやグーグルエクスプレスで購入した商品がアマゾンの箱で届くことは珍しくない)。

 販売業者の中にはシップボブ、フレックス、そしてデリバーなどの新興企業と手を組むケースもある。

 鍵を握るのはスケールだ。今や家族経営の小さな店や中規模の小売業者であろうと、商品が何日も過ぎてから郵政公社(USPS)から届くのを消費者が待ってくれるとは思わない方がいい。そのためこれら新興企業は十分な販売業者を確保し、米国内の2日配達を定額で実現できるよう奔走している。

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 デリバーの共同創業者マイケル・クラカリス氏は、大規模な自社インフラを持たずに巨大企業アマゾンに勝つ方法を探していると話す。同社は全米各地で倉庫を借り、予測アルゴリズムを使った上で、2日以内に届けるにはどこで商品を管理すべきか販売業者に伝えているという。

 すでに大規模なネットワークを持つ別業界の企業も、アマゾンに対抗する好機だととらえて動き始めている。物流大手のUPSやフェデックスは最近、自社のフルフィルメント・プログラムをそれぞれ発表したばかりだ。

 UPSのサービス「ウェア2ゴー」は倉庫やフルフィルメントを必要している販売業者と、余剰スペースを持つ企業をマッチングさせる。一方、「フェデックス・フルフィルメント」はアマゾンのサービスとほぼ同じだ。今のところ、両社のサービスとも広く活用されてはいない。

 結局のところ未来を制するのは、配送コストを削減しながら2日以内の配達を実現できる規模(あるいはイノベーション)を持つプレーヤーだ。そして鍵を握るのは、それ以上のことを実現させる力だ。競争は強まっているが、アマゾンは即日配達や2時間配達さえも実現させ、競合へのプレッシャーを高めている。しかも、配送ドローンが投入されるのはこれからだ。

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