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安倍3選後が年金改革「最後のチャンス」、日本の対応は遅すぎる 海外では国民が猛反発…「年金改悪」日本だけがやすやすと
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投稿者 うまき 日時 2018 年 9 月 21 日 14:00:13: ufjzQf6660gRM gqSC3IKr
 

2018年9月21日 八代尚宏 :昭和女子大学グローバルビジネス学部長・現代ビジネス研究所長

安倍3選後が年金改革「最後のチャンス」、日本の対応は遅すぎる


安倍総理の3期目、最大の課題の1つが「年金制度」です Photo:PIXTA

 安倍晋三総理が自民党の総裁選挙に勝利し、2021年まで現政権を維持することが可能となった。今後3年間の経済政策の最大の課題は、増え続ける借金に依存した社会保障、その中でも最大の支出である「公的年金制度の改革」である。

 財政赤字の是正と言えば消費税率の引き上げが焦点となる。しかし、2019年度に引き上げられる予定の消費税率2%の増収分5兆円は、2018年度予算の赤字額(23.8兆円)の2割強に過ぎない。財政赤字の主因である増え続ける社会保障費を賄うためには、消費税率を10%へ引き上げるだけでは不十分であり、今後とも税率を持続的に引き上げなければならない。こうした事態を防ぐためには社会保障費の合理化が避けられない。

 社会保障費の約半分弱を占める公的年金は、老後の生活を支える大きな柱であり、その削減は容認できないといわれる。しかし、公的年金は生活保護のような弱者保護の手段ではなく、「長生きのリスク」を分散するための保険である。これは死亡した人の家族の生活を守る生命保険と正反対の機能であり、早く死亡した人の積立金が長生きする人の年金に回される再分配の仕組みである。

 年金が保険原理にもとづく以上、平均寿命の伸長という「長生きのリスク」の高まりに応じて保険料を引き上げなければ、年金制度は維持できない。ところが厚労省は年金保険料に上限を設定してしまったので、後は給付面の調整しかない。この民間保険では当然な保険収支の均衡を維持するための制度改革が、これまで政治的な配慮から先送りされてきた。これが年金保険財政悪化の主因である。この過去の「年金政策の不作為」のツケを解消することは、長期安定政権でなければできない最重要課題である。

なぜ政府は支給開始年齢の
引き上げをタブー視するのか

 年金保険における「長生きのリスク」を抑制するもっとも普遍的な手法が、年金を受け取れる年齢を平均寿命に連動して引き上げることである。これを「年金の踏み倒し」というのは誤解であり、平均寿命の伸長で自動的に増える生涯給付の増加分を中立化するだけである。

 長寿化は、働き続けられる平均的な年齢の長期化を意味している。一般に日本の男性高齢者の就業意欲は高く、先進国の中ではトップクラスで、高齢女性の就業率も急速に追い付いている。高齢者が働き、税金や社会保険料を払い続ければ、それだけ壮年層の負担は軽減し、経済成長にもプラスの効果がある。もっとも、高齢者の働く能力には個人差も大きく、早期退職の選択肢も設けることが必要だ。

 先進国の平均寿命と年金の支給開始年齢を比較すると、日本の男性の年金受給期間が16年間(女性は22年間)と極端に長いことが分かる。これは日本の厚生年金の受給開始年齢が2025年に65歳にとどまるためである。これに対して他国は67-68歳で、平均寿命までの受給期間がほぼ10年間である。日本と平均寿命に大差のない豪州では、2035年までに70歳への引き上げを2014年に決めたが、これが責任ある政府の本来の姿である。

 これに対して日本では、支給開始年齢が65歳に到達する2025年まで、それ以上の引き上げは検討しないとしているが、それではあまりにも遅すぎる。2018年2月の高齢社会対策大綱では、65歳より後に割増年金の受給を開始する繰下げ制度について、70歳以降の受給開始も選択可能とするとした。しかし、これは平均寿命まで生涯に受け取れる年金給付額を所与としたもので、年金財政の改善には貢献しない。このような目先の対応で、本質的な議論を避けようとすることには弊害が大きい。

男性の平均寿命と年金支給開始年齢
https://diamond.jp/mwimgs/3/8/-/img_38b572ead9cc67fabd5a13861c9d76d958540.jpg

年金給付額を削減する
「マクロ経済スライド」の問題点
 厚労省は、既存の年金給付を毎年一定率で削減するマクロ経済スライド制度を2004年に導入した。これは社会保険料の引き上げと同じで、毎年の法改正を必要とせず、自動的に適用される。国会等で紛糾する年金の支給開始年齢引き上げのための法改正と比べて、行政側に都合の良い仕組みである。

 しかし、この削減率は物価上昇率の範囲内でという強い制約があり、これまでのデフレ経済下ではほとんど機能しておらず、年金財政の悪化の主因となっている。それだけではなく、仮に現実に機能したとすれば、基礎年金にも画一的に適用されることから、低年金者にとっては大きな負担増となる、逆進性の大きな制度である。

 これに対して年金の支給開始年齢引き上げも、実質的に年金給付引き下げの手段であることには変わりはない。欧米諸国でも多くの受給者は、減額された早期受給年金を選択している。マクロ経済スライドとの違いは、被保険者にとって事前に何歳まで働くかの選択肢があることだ。これが年金受給者になってからの逃げ場のない給付削減との大きな違いである。

高齢者の雇用機会の確保には、
「同一労働同一賃金」が必須
 年金の支給開始年齢の引き上げには、その年齢まで働ける労働市場の整備が不可欠となる。しかし、これを現行の働き方の抜本的な改革ではなく、高年齢者雇用安定法での企業に対する定年退職者への65歳までの再雇用義務を、さらに70歳にまで引き上げるのは企業に大きな負担を課す、あまりにも企業依存の安易な政策だ。また、とくに大企業と中小企業の労働者間での生涯賃金格差の拡大をもたらす要因ともなる。

 個人の仕事能力の差は年齢とともに拡大する。それにもかかわらず60歳までの雇用を保証し、その時点で一律に解雇する定年制という雇用管理は、他の先進国では「年齢差別」として禁止されている。日本でもこの悪平等な雇用慣行を見直すためには、企業が年功賃金の是正と能力主義人事への転換を可能とするような政府のルール作りが必要とされる。

 今国会で成立した働き方改革法は、本来、同じ業務の労働者には、年齢・性別や働き方の違いを問わず、同じ賃金を保証することで、高齢者にとって働きやすい労働市場とすることを目的としていた。しかし、肝心の同一労働同一賃金に十分な関心が向けられず、単に勤続年数が長ければ高い賃金という年功賃金を正当化する骨抜きの内容になってしまった。(関連記事:『非正規・正規の格差是正が葬られた働き方改革法案の問題点』)

 現行の働き方の改革は、労使の合意に基づくことが基本である。しかし、法律で諸外国のような解雇紛争についての明確なルールを定めることへの反発を恐れた行政の不作為により、今後の企業の改革が妨げられる面も大きい。従来の日本的な雇用慣行を保護するのではなく、多様な働き方に中立的な制度への改革が高齢者雇用を促進するために必要な政府の責務である。
 
 急速な高齢化社会への基本的な対応は、年齢に中立的な社会制度の構築である。安倍政権の3期目は、小手先の対応ではなく、年金支給開始年齢の平均寿命とのリンクや、年齢にかかわらない雇用・賃金制度への抜本的な改革を図る必要がある。これが真のアベノミクス実現の最後の機会となろう。

(昭和女子大学グローバルビジネス学部長・現代ビジネス研究所長 八代尚宏)
https://diamond.jp/articles/-/180246

 
海外では国民が猛反発…「年金改悪」日本だけがやすやすと


2018年09月19日 09時26分 日刊ゲンダイDIGITAL

海外では国民が猛反発…「年金改悪」日本だけがやすやすと
年金改悪を許してはいけない(C)日刊ゲンダイ

地震の予知は至難の業でも、安倍政権がもくろむ年金支給年齢の引き上げは、“前兆”盛りだくさんで分かりやすい。68歳、70歳への引き上げでは済まず、“80歳説”まで、まことしやかに囁かれている。年金をめぐって海外では、国民と政府が大ゲンカをしているのに、なぜか日本の世論はとてもおとなしい。

 年金支給開始年齢は、男性は2025年から、女性は30年から、完全に65歳に引き上げられるが、すでに財務省は4月の「財政制度等審議会」で68歳への引き上げを提言している。さらに安倍首相は「人生100年時代」と称して、企業の雇用義務を65歳から70歳に引き上げることを明言している。「高齢でも働ける(稼げる)じゃないか」として、年金支給開始を70歳まで引き上げる魂胆はミエミエ。その後も、何かにかこつけてズルズル引き上げるのは必至とみられる。

 社会保障に詳しい立正大客員教授の浦野広明氏(税法)が言う。

「年金の支給開始年齢は、支払期日です。期日に払わなければ、私人同士なら大きな揉め事です。借り手の懐事情が苦しいとか、貸し手の稼ぎがあるからといって、『払うのを遅らせてくれ』は通用しませんよ」

 海外では“揉め事”が多発している。ロシアでは、女性の55歳を63歳に、男性の60歳を65歳へ年金支給年齢を引き上げる案に国民は猛反発。今月、モスクワなどで大規模デモが行われ、参加者から「プーチンは泥棒だ」「皇帝のように追放しよう」などの声が飛んだ。依然70%程度の高支持率を誇るプーチン大統領も、こと年金に関しては、ロシア国民から“袋叩き”に遭っているのだ。

 8月に就任したオーストラリアのモリソン首相は世論に配慮し、今月5日、老齢年金の支給開始年齢を70歳に引き上げる前政権の計画を撤回。年金受給年齢後も働き続ける人向けの「ペンション・ワーク・ボーナス」などの対策を講じていて、「今や年齢引き上げは必要ではない」と語った。

 支給年齢ではないが、4月には中米ニカラグアで年金支給額の5%減額案に国民が激怒。24人の死者を出す抗議デモなどの果てに、オルテガ大統領は減額案の撤回に追い込まれた。

「年金は高齢者の命綱です。支給開始年齢の引き上げや削減は生活を脅かすものです。それで、国民は命がけで猛反発するのです」(浦野広明氏)

 プーチンは、女性の支給開始を60歳にする緩和策を打ち出した。それでもおさまらないようだが、ロシア国民は強権プーチンを困らせ、譲歩を引き出している。

 日本だけ、やすやすと年金改悪がまかり通ろうとしている。

日刊ゲンダイDIGITAL
関連記事(外部サイト)
年金支給日には店に殺到 風俗嬢もシルバー世代は大歓迎
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https://news.nifty.com/article/domestic/gendai/12136-090129/


 

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1. 2018年9月21日 18:35:41 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1529] 報告
既存の政治を拒む世界 イアン・ブレマー氏
米ユーラシア・グループ社長
グローバルオピニオン
2018/9/14付日本経済新聞 朝刊 
 10年前の2008年9月15日、米投資銀行リーマン・ブラザーズの破綻により、世界は(1929年の大恐慌を経た)30年代以来最も深刻な金融危機に陥った。以降の出来事を振り返ってみよう。破綻を引きがねとする景気後退により、欧州では、ユーロ圏の存続が疑問視されるほど重度の債務危機が起きた。

Ian Bremmer 世界の政治リスク分析に定評。著書に「スーパーパワー――Gゼロ時代のアメリカの選択」など。48歳。ツイッター@ianbremmer
 

 (需要の減退懸念などによる)原油の価格下落は世界の勢力バランスにも変化をもたらし、中東・北アフリカは政情不安の波に相次いで襲われた。(2010年12月に)チュニジアで警察に抗議した若者の焼身自殺をきっかけに、政府への抗議運動が全土に広がり、長期独裁のベンアリ政権が崩壊した。エジプトの当時のムバラク大統領は拘束され、リビアの最高指導者だったカダフィ大佐は反政府勢力に殺害された。シリアやイエメンでは内戦が始まり、今も続いている。

 中東などから一時、年間100万人以上の人々が、身の安全とよりよい生活を求め欧州に向かった。移民・難民の流入により、欧州では新たな危機が生まれた。安全とアイデンティティーを失うことへの不安が広がり、政治が一変した。不安を抱き、怒った有権者は、既に確立された政党を拒むようになった。英国は欧州連合(EU)にとどまるか、新しい世界に飛び込むかの選択に直面し、EU離脱(ブレグジット)を選んだ。

 16年の米大統領選挙では、(クリントン元国務長官のような)高い資質と知名度を持つとされるよく知られた候補でなく、押しの強い実業家が選ばれた。トランプ氏は、政府や軍の経験を持たずに選ばれた初の米大統領だ。

 フランスの有権者は17年の大統領選で、政治の主流派を否定した。16年に政治運動「前進(現共和国前進)」を立ち上げたマクロン氏を選んだ。長らく共和党(中道右派)と社会党(中道左派)の二大政党制が続いていたが、ともに初めて選挙に出たマクロン氏に敗れた。

 ドイツのメルケル首相は3月、4選をたぐり寄せたものの、自身の率いる中道右派のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は議席を大きく減らした。(難民の排斥を訴えた)極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が初めて議席を獲得し、最大野党になった。

 イタリアでは3月の総選挙で、中道左派の与党の民主党が後退した。6月、コメディアンのグリッロ氏が始めたポピュリズム(大衆迎合主義)政党「五つ星運動」と、(地域政党の「北部同盟」として結成した)極右政党「同盟」による連立政権が誕生した。

 欧米以外では、メキシコの有権者が7月、新興野党の国家再生運動(Morena)を率いるロペスオブラドール大統領を選んだ(就任は12月)。既存の二大政党、制度的革命党(PRI)と国民行動党(PAN)に属さない大統領の誕生は、1929年以来初めてとなる。パキスタンでは8月、7月の総選挙で勝利したパキスタン正義運動(PTI)の党首カーン氏が首相に選ばれた。球技クリケットの同国代表の主将を務め、92年のワールドカップで初優勝に導いた人物だ。

 次はどの国・地域に目を向けたらいいだろうか。ブラジルでは10月、将来を決定づける大統領選が実施される。世論調査ではルラ元大統領の人気が高かったが、汚職事件を受け収監された。裁判所は出馬を認めず、離脱したかたちだ。現時点で首位を走っている(「ブラジルのトランプ」と呼ばれる極右の)ボルソナロ下院議員は、少数政党を渡り歩いてきた(6日、選挙キャンペーン中に腹部を刺されて重傷を負ったが、意識を取り戻した)。

 古い政治を捨て、新しいものを受け入れるというのが、現在の各国・地域の大きな流れだ。世界中の有権者が(従来の政治家でない)別の人を探している。「今の人以外の誰か」と言い換えてもいいだろう。

 例えば2年後、大切な国を率いるのが誰も聞いたことのないような人になり、政権与党はまだ存在していない政党になるかもしれない世界にどう備えたらいいだろうか。変化のペースはあまりに速く、目が回りそうだ。

 世界中が既知の政治を拒絶し、新しいものを受け入れるというのは、単純な右や左へのシフトとは異なる。米のトランプ氏は右派の移民排斥主義者で、フランスのマクロン氏は中道派、メキシコのロペスオブラドール氏は左派といえる。

 こうした傾向は、人々の不安や怒りを反映している。明日の仕事はどこから来るのだろうか。国境はどのくらい安全なのだろうか。指導者は、それぞれの国の変化の速さに対応できないのではないか。まだたくさんの疑問が渦巻いている。

 世界のつくり直しが始まったといえる危機から10年がたつ。不安の結果が、政治的に混乱した世界といえる。今後も似たような状況が続くのは確実だ。
 

加速する世界の多極化 ケント・カルダー氏[有料会員限定]
グローバルオピニオン
2018/9/7付

国連の地位低下に歯止めを ドミニク・モイジ氏[有料会員限定]
グローバルオピニオン
2018/9/21付


 
米国経済の構造問題から目をそらすな
社説
2018/9/18付
 2008年9月のリーマン・ショックから10年を経て、米国は力強い経済成長を取り戻した。しかし所得や資産の格差拡大、高齢化の進展といった構造的な問題が解決したわけではない。

 米経済を真の意味で再生するには、大型減税や規制緩和のほかにも様々な政策が要る。トランプ米大統領が「偉大な米国の復活」を望むなら、貿易や移民の制限にかまけている余裕はない。

 17年の家計所得の中央値は実質ベースで前年比1.8%増の6万1372ドルとなり、1967年以降の最高を更新した。景気の着実な回復に伴って、中間層の懐が温まっているのは心強い。

 それでも米国の格差は拡大する一方だ。上位1%の高所得層が握る富の割合は、89年の30%から2016年には39%に上昇した。これに対して下位90%の低中所得層が抱える富の割合は、33%から23%に低下している。

 「アメリカン・ドリーム」の象徴のひとつである持ち家の比率は64%で、04年のピークを5ポイント下回っている。起業のバロメーターといわれる企業の開業率も10%にとどまり、1977年より7ポイント低い水準で低迷している。

 米国の景気回復局面が戦後最長の10年に近づき、主要国の中でも好調さが際立つのは確かだが、これでは手放しで喜べない。教育制度の改革や職業訓練の強化、安全網の見直しも視野に入れ、成長の果実が広く行き渡るような政策を練り直す必要がある。

 高齢化への対応も欠かせない。16歳以上で働く意志のある人(就業者と職を探す失業者)の割合を示す労働参加率は62%台で、2000年の67%台をピークに低下傾向をたどっている。1946〜64年に生まれたベビーブーマー世代の相次ぐ退職が主因だ。

 米国では毎日1万人のペースで、ベビーブーマーが65歳を迎えている。移民、女性、高齢者の労働参加や年金・医療制度の改革などが避けて通れない。

 トランプ政権の大型減税や規制緩和が、景気の回復を後押ししているのは否定できない。生産性の上昇などを通じ、米経済を中長期的に底上げする可能性もある。だが貿易や移民の制限は成長の基盤をむしばむ公算が大きい。

 トランプ氏が構造問題から目をそらし、誤った政策に走れば、大きな代償を払うことになる。好況に浮かれている場合ではない。


 

無視できない豪州の警告  本社コメンテーター 秋田浩之

秋田 浩之 Deep Insight 本社コメンテーター2018/9/21 2:00 日本経済新聞 電子版
 日本政府内でいま、極めて敏感な案件として、極秘裏に議論されている問題がある。安全保障上の理由から、米国の政府機関などが使用を禁じた中国の2大通信機器メーカーについて、日本の主要な通信インフラからも除外するかどうかだ。
 対象になっているのは華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)。いずれも巨大なグローバル企業であり、日本から締め出すことには慎重論もある。
 割安の両社を排除すれば、通信インフラのコストが上がってしまうほか、中国が猛反発し、両国関係が再び冷え込みかねない――。慎重論としては、こんな声がある。安倍晋三首相は10月に訪中しようとしており、いまは外交上、微妙な時期でもある。
 そうしたなか、日本が注目すべきできごとが、南半球のオーストラリアで起こった。
 まもなく移行する次世代高速通信「5G」のシステムについて、豪州政府が8月23日、ファーウェイとZTEの参入を禁じる決定に踏み切ったのだ(「ファーウェイ、ZTE 豪が5G参入禁止」参照)。重要情報が中国側に漏れかねないことが理由だ。中国のスパイ行為にかかわっているといわれたに等しい両社は疑いを否定し、中国政府も強く反発している。
 豪州はいまの第4世代(4G)では、5割超の通信設備にファーウェイを採用している。にもかかわらず5Gから両社を排除するのは、行き交う情報量が桁違いに多く、サイバースパイの脅威が極めて深刻になるからだ。
 似たような懸念は米英でも指摘されているが、米政府といえどもここまで厳しい措置はとっていない。ファーウェイとZTEの使用が禁じられているのは米政府機関および、米政府と取引がある米企業だけだ。
 対中強硬策の先頭に立つことになるだけに、豪州政府内では事前に激論が交わされたという。「猛反発した中国から、重い報復を受けかねない」。一部の省庁からはこんな反対論が出たらしい。
 そこでターンブル首相(当時)は米英など主要国に当局者を送り、各国のスパイ機関からもひそかに情報を集めた。そのうえで「排除やむなし」と判断し、反対を押し切った。後任のモリソン氏もこの措置を支持している。
 日本からみると、驚かざるを得ない決断だ。なぜなら貿易を中国に大きく依存する豪州は従来、日米よりも「中国寄り」の姿勢をとってきたからである。

 たとえば2015年10月、米軍が駐留する北部ダーウィンの基地に近い港を99年間、中国企業にリースする契約を結んだ。外交筋によると、中国の脅威にあまりに無神経だとしてオバマ政権(当時)が怒り、抗議する騒ぎになった。
 さらに同年、豪州は中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)を支持し、創設メンバーにも参加。AIIBと距離を置く日米との間にすきま風が吹いた。
 こうした豪州がなぜ、米国よりも強硬な対中措置をとるまでに至ったのか。ひとつには近年、中国と疑われるサイバースパイが相次ぎ、国防省や気象局、防衛産業が標的になってきたことがある。
 しかし、日本が着目すべきなのは、もうひとつの理由だ。内情を知る豪州の安保専門家によると、判断の決め手は、中国が17年6月に施行した国家情報法だった。
 これは国内外での情報活動を強めるため、中国が設けた法制度。豪州当局が入念に精査したところ、「運用によっては、中国の民間企業に対し、当局が情報収集への協力を強いることができる」という結論になったのだという。
 この結論通りなら、仮に、両社が中国のスパイ活動とは無関係だとしても、国家情報法にもとづき、今後、中国当局に協力させられる危険がある。
 強大になる中国への対応について、豪州からくみ取れる教訓はサイバー問題だけではない。ここ数年、同国は中国から「内政干渉」の脅威にさらされ、警戒感が広がっている。
 最近、騒ぎになったのが、上院議員が中国富豪から資金をもらい、南シナ海問題で中国政府を支持する発言をしていたスキャンダルだ。実態が暴露され、議員は昨年12月、辞任に追い込まれた。
 中国の企業・団体から多額の献金が主要政党に流れているほか、10〜18年、ファーウェイが12回にわたり国会議員の視察旅費を負担していた実態も明るみに出た。
 豪州の大学にも中国から多額の寄付が流れ込んでいる。「台湾問題などで反中的な発言をした教授に、中国大使館などから圧力がかかるケースが出ている」(名門大学の教授)
 危機感を抱いた豪州の情報機関は与野党や大学にひそかに接触し、危険を強く警告。ターンブル首相(当時)は今年に入り、外国の利益を代弁する政治活動に届け出を義務付けたほか、外国からの政治献金も禁じる法案も出した。ファーウェイ、ZTEとの「絶縁」は、こうした懸念が重なった末の決断だったのである。
 両社への対応をめぐっては、英政府も安全保障の懸念を表明しているが、日本は今のところ、何も措置はとっていない。
 20年の東京五輪・パラリンピックに向け、日本も5Gに移ろうとしている。通信インフラを更新するにあたり、安全保障上、どのような考慮が必要になるのか。日本政府は企業に正確な情報と判断を示すべきだ。その意味で、オーストラリアの事例は参考になる。
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秋田 浩之
本社コメンテーター
外交・安全保障
長年、外交・安全保障を取材してきた。東京を拠点とし、北京とワシントンの駐在経験も。北京ではケ小平氏死去、ワシントンではイラク戦争などに遭遇した。著書に「暗流 米中日外交三国志」「乱流 米中日安全保障三国志」。
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