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確定拠出年金制度に残る「3つの大問題」(ダイヤモンド・オンライン) 
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/227.html
投稿者 赤かぶ 日時 2018 年 10 月 31 日 14:15:30: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

確定拠出年金制度に残る「3つの大問題」
https://diamond.jp/articles/-/183828
2018.10.31 山崎 元:経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員  ダイヤモンド・オンライン




確定拠出年金制度に潜む3つの大きな問題

 確定拠出年金は、特に課税される所得のある働く人にとって、「老後の備えに向けた自助努力にあって最も有利な手段」だといっていい。

 企業型の確定拠出年金を導入している会社にお勤めの方は、可能な限り大きな金額で確定拠出年金を利用するのがいいし、勤務先にないサラリーマン(厚生年金はある)及びフリーランス(厚生年金がなくて国民年金のみ)の方は、個人型確定拠出年金(愛称「iDeCo」)を自分にとって利用可能な最大限まで利用することが得な場合が多い。

 もちろん、運用の成否は自分の責任になる。しかし、それ以前に税制上のメリットが大きく、加えて現在の確定拠出年金制度で利用可能な掛け金額以上の将来への備えが必要な人が多いので、「確定拠出年金は可能な限り大きく使う」という原則が正解になる場合が多い。

 しかし、現在の我が国の確定拠出年金には、いくつかの解決すべき問題がある。以下、特に重要な3つの問題を取り上げる(手数料が高い、手続きが不便で遅い、制度が複雑だなどの問題は今回不問とする)。

その1 拠出可能な年齢は65歳未満ではなく70歳未満が適当

 10月29日の『読売新聞』(朝刊)に、政府が確定拠出年金の掛け金を拠出可能な年齢の上限を、現在の60歳未満から65歳未満まで引き上げることを検討しているというニュースが載った。来年の社会保障審議会で検討して、2020年の通常国会に法案を提出するのだという。

 この「方向性」は悪くない。国民が自らの長寿化に対して経済的な備えを持つための制度を整備しようとすることは適切だ。しかし、スピードが圧倒的に遅い。

 近年、日本経済全体の人手不足と人口の高齢化・長寿化を背景に、政府は企業に対して、社員が65歳になるまで雇用の継続を要請している。今や、サラリーマンの標準的な退職年齢は65歳だ。となると政府は、今後、70歳程度までの雇用継続を奨励する可能性がある。

 また、長寿国日本にあって、公的年金を制度としても、財政的にも、より望ましいものにするには、標準的な支給開始年齢を速やかに70歳まで引き上げることが妥当だ。

 リタイア後の寿命は着々と延びているし、多くの高齢者が元気であることと、個人にとっての長寿化の経済的な現実を考えると、60歳を過ぎてから10年程度は老後に備えた自助努力を後押しするべきだ。

 現在の確定拠出年金の「60歳未満」は、もはや「制度的不備」といえるレベルで現実に合っていない。結論は決まっているのだから、社会保障審議会で議論するまでもなく、政治的な判断で掛け金拠出の上限年齢を引き上げるべきだ。個々人の働き方が多様であることを考えると、一気に「70歳未満」まで引き上げることが適当だろう。

 年金制度が目下「60歳」までしか対応せず、やっと「65歳」を検討する一方で、労働行政にあってはリタイアする標準年齢を「65歳」から「70歳」に延長しようとしているというのでは、全くちぐはぐだ。年金を所管する旧厚生省と、労働行政を所管する旧労働省が一緒になって「厚生労働省」にまとまっていることの意味がないではないか。

 厚労省について、「役所が大きすぎて機能しないから分割再編すべきだ」という意見には賛成するが、一つの国で年金と労働が制度的にバラバラであっていいはずはない。

その2 商品ラインナップと教育に問題あり

 確定拠出年金は先に企業型が普及し、個人型(愛称「iDeCo」)の普及が後からになった。企業型は、導入する企業や企業グループによって制度の詳細が異なるのと同時に、運用商品のラインナップが異なる。

 また、個人型についても、取り扱う金融機関ごとに運用商品のラインナップが異なっている。

 そして、多くの確定拠出年金にあって、

(1)運用商品の数が多過ぎる
(2)確定拠出年金に不向きな運用商品がラインナップされている
(3)運用方法と運用商品について適切な情報提供がなされていない
 
 といった問題がある。

 ごく例外的に、確定拠出年金を導入する事務局が、優れていた企業の企業型確定拠出年金にあって、(1)(2)(3)の問題がほぼクリアされているケースがあるが(筆者の知る限り、企業年金を確定拠出年金に全面移行することを決めたソニーの確定拠出年金は優れている。導入時に事務局がよく考えたのだろう)、多くの企業型確定拠出年金及び個人型確定拠出年金のほとんどにあって、上記の3つの問題が指摘できる。

 20を超えるリスク資産運用商品があるようなケース、手数料が高いアクティブファンドがラインナップされているケース、税制上のメリットが十分活かせないバランスファンドが複数あって、投資教育でそうしたファンドに誘導されるケースなど問題が多い。

 企業型では、会社が制度を導入する金融機関グループに、制度設計や商品選定を「丸投げ」した場合にこうした問題が起こりやすい。

 端的に言って、金融機関にとって収益性の高い(手数料の高い)商品に加入者を誘導しようとして、このようなラインナップになる。加えて、加入者教育を同じ金融グループが行うために加入者が手数料の高い商品に誘導されて、しばしば選択を間違える。

 個人型の制度を提供する金融機関が、不適切な商品を多数ラインナップするのも同様の下心があるからだ。

 しかし、運用商品の数が増えるとそれだけ教育や情報提供が大変になるし、教育自体が不可能な商品もある。例えば、相対的にいいアクティブファンドを「事後的に」ではなく、「事前に」選ぶ方法などそもそも確立されていないのだから、十分な教育ができるはずはないにもかかわらず、手数料の高いアクティブファンドをラインナップしておくことは不適切だ。

 企業型確定拠出年金を導入している企業は、加入者である社員に対して、制度を導入した金融グループと利害関係のない独立したアドバイザーによる運用方法と、運用商品選択に関する教育、そして情報提供をぜひ行うべきだ。

 社員の利益を犠牲にして、金融機関に余計に稼がせることは、長期的に見ると企業の人件費の有効活用を損なうし、もちろん社員にとっての厚生も低下する。

 個人型の確定拠出年金にあっても、心ある金融機関は顧客に適切な情報を提供すべきだし、商品ラインナップを整理・改善する方策を考えるべきだろう。

その3 特別法人税を決着させよ

 確定拠出年金の利用者にとって、「まさか、ないだろう…」とは思うものの、不安な材料として、現在2020年3月末まで課税が凍結中の年金積立金に課税される特別法人税1.173%(国税1%+地方税0.173%)が復活する可能性がある。

 特別法人税は1999年度から凍結され、これまで数度にわたって凍結が延長されてきたが、これが復活すると、確定拠出年金が原則として60歳になるまで資産を引き出せない制度であるため、加入者にとっては「逃げ場がない」状況となって、積み立てた資産に対して高率の税金が課されることになる。

 金融業界及び確定拠出年金の関係者は、「行政は、まさかそのようなひどいことをするまい」とほぼ一致して思い込むことによって、その可能性の実現を考えないことにしようとしているように見えるが、「嫌な不確実性」は消えたわけではない。

 確定拠出年金に加入するかしないかは、将来にかかわる意思決定なので、制度的な不確実性はできるだけ除去することが望ましい。

 一方、確定拠出年金は、拠出時に所得控除が適応され、運用期間中に運用益に非課税で、受け取り時にも退職所得控除や年金等控除の対象になり税制上の優遇を受ける税制上非常に有利な制度だ。

 税金の専門家の中には、「あまりにも有利なので、例えば年率0.1%といったレベルで特別法人税が復活しても、バランス上おかしくない」という推測を述べる方もいる。そうした政策には賛成しないが、バランスだけを考えるなら、一理ある意見なので、不気味だ。例えば、特別法人税をごく低い税率に改定して適応・復活するなら、不確実性は減る。

 しかし、筆者は、運用機関が0.01%単位の運用管理費用削減競争に経営努力する中で、上記のような課税を行うべきではないと考える。税収への影響は、確定拠出年金の掛け金の額を決める際に織り込むのが合理的だろうし、老後の資産に対して課税を強化したいなら、例えば富裕層への資産課税などで行う方がいいだろう。

 ともあれ、特別法人税の問題は凍結の延長を繰り返すのではなく、決着をつけるべきだ。

 もちろん、「廃止」がシンプルであると同時に最も望ましい。

(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)


 

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