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白川前日銀総裁は「デフレ大好き人間」と、著作を読んで納得した 働く高齢者を増やせば将来の労働力不足はどの程度緩和できるか
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/242.html
投稿者 うまき 日時 2018 年 11 月 01 日 19:00:42: ufjzQf6660gRM gqSC3IKr
 

(回答先: 弱気相場入りする米国株、前途覆う「政策手詰まり感」マクロとミクロの投資家に異例の乖離S&P2500割FRB資本要件緩和 投稿者 うまき 日時 2018 年 11 月 01 日 18:52:06)

2018年11月1日 高橋洋一 :嘉悦大学教授

白川前日銀総裁は「デフレ大好き人間」と、著作を読んで納得した

 白川方明・前日本銀行総裁が、2013年3月に退任後、5年半の沈黙を破り、バブル期やバブル崩壊、リーマンショックの際など、日銀時代の経験や中央銀行の役割について書いた本が話題になっている。
『中央銀行―― セントラルバンカーの経験した39年』(東洋経済新報社刊)は、700ページになるが、総裁当時に日銀が公表した論文などからの引用も多く、突っ込みどころも満載だ。
 白川前総裁については、「2%インフレ目標」を金融政策だけで達成するのは困難、と総裁時代からしきりに述べていたことで、現状を的確に「予言」したと評価する向きもあれば、リーマンショック後の「デフレ脱却」を妨げた戦犯と捉える人もいる。
 白川時代の日銀の金融政策をどう評価するのが正しいのか。筆者の評価は、ハッキリ言えば「デフレ脱却を妨げた戦犯」である。
消費増税なければ
「2%物価目標」は実現していた
 まず、2%のインフレ目標だが、それが達成できなかったのは、2014年4月からの消費増税が原因だ。
 消費増税までは、白川氏が抵抗した大胆な金融緩和を、後任の黒田東彦総裁が「異次元緩和政策」としてやった効果で、インフレ率はいい感じで上昇していた。
 14年5月には、消費増税による見かけの上昇分を除き、インフレ率は1.6%まで上がっていた。消費増税がなければ、14年の年内にも2%達成は確実だった。
 しかし、消費増税の影響でより長期的な消費低迷に入り、それとともにインフレ率上昇にもブレーキがかかり、今日に至っている。
 このことは、2015年3月19日付本コラム「『2%インフレ目標未達』の批判は誤解で的外れ」を参照されたい。
 要するに、金融政策だけでインフレ目標2%は達成できたはずなので、当時の白川氏の金融政策に関する「予言」は外れたのだ。
 白川氏の著作や総裁時代の発言から、疑問に思うのは、金融政策は何のために行われるのかをきちんと理解していないのでは、と思わざるを得ない。この点が致命的である。
金融政策は雇用確保の政策
という認識がない
 本コラムで繰り返し指摘しているように、金融政策は雇用を確保する政策だが、白川氏の著作や発言には、雇用の話はまず出てこない。
 また著作では「インフレ目標2%の意味がわからない」という趣旨のことが書かれている。これはある意味で、正直ともいえるが、そういう人が中央銀行総裁だったとは空恐ろしいことだ。
 インフレ目標として「なぜ「2%」なのかという理由は、本コラムでも繰り返し書いてきた(例えば、2017年12月28日付「安倍政権5年間の通信簿は雇用の確保で70点の及第点だ」)。
  最低の失業率を目指しても、ある下限(経済学ではNAIRU、インフレを加速しない失業率という)以下にはならずに、インフレ率ばかり高くなってしまう。そうした下限の失業率(筆者の試算では、日本では2%台半ばから前半)を達成するために最小のインフレ率が2%程度になっているからだ。

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 この意味で、インフレ目標は、中央銀行が失業率を下げたいために金融緩和をし過ぎないような歯止めともいえる。逆に言えば、インフレ目標までは金融緩和が容認されるということだ。
 このような基本的なことを認識しないで、日銀総裁をやっていたから、その成果が散々だったのだ。
 雇用確保の観点から、白川総裁時代を評価すると、失業率は、就任時の2008年4月は3.9%だったのが、退任時の2013年3月は4.1%に上がっている。とても及第点はつけられない。
 リーマンショックや東日本大震災があったのは不運だったが、その対応でも落第だ。
円高やデフレが悪いと
思っていなかったのでは
 リーマンショック後の超円高を招いたところに、それが端的に表れている。
 当時、各国の中央銀行は失業率の上昇を恐れて、大幅な金融緩和を行ったが、日銀はしばらくはそれをやらなかった。その結果、円が各国通貨に比べて相対的に少なくなったので、その相対希少性から猛烈な円高になった。
 これで苦しんだ企業は多かった。
 しかし、その「無策」を反省するでもなく、「(インフレ格差を差し引いて修正した)実質為替レートで見たら、大した円高ではないので、それを言うとたたかれるから放置した」という趣旨の記述が著作中にある。
 この記述は、逆に言えば、名目的な円高は大したことないのになぜ大騒ぎするのか、という彼の本心を告白しているようなものだ。
 これには驚いた。変化の実質だけを見て、デフレで実質所得が高くなるからいいだろうという、典型的な「デフレ思考」である。その当時、円高に苦しんだ人は、この白川氏の本音を聞いてどう思うだろうか。
 デフレも円高も、円が、それぞれモノや他国の通貨量に対して相対的な過少状況から引き起こされる現象である。相対的に過少なので、通貨の価値が高くなり、その裏腹にモノの価値が下がりデフレになり、円の価値が高くなって円高になるというわけだ。
 それが怖いのは雇用が失われるからだが、この人には金融政策によって雇用を確保できるという考えがなく、またデフレや円高が悪いものと思っていなかったのだろう。
人口減少は
デフレの原因ではない
 このほかにも、あきれたことはある。人口減少がデフレに影響しているという「デフレ人口原因説」を、著作で長々と書いていたことだ。
 この論は、5年ほど前には一世を風靡したが、今でも人口減少は続いている一方で、デフレは脱却しつつある。だからもう否定されているものだ。
 日銀総裁時代にも、白川氏は「デフレ人口原因説」を展開したが、その時も、主張は破綻していた。
 2012年 5月30日、日銀の国際シンポジウムでの挨拶、「人口動態の変化とマクロ経済パフォーマンス ―日本の経験から―」で、同じ見解を示した。
 その時に、資料として示された「先進国の生産年齢人口変化率とインフレ率の関係」(図表14)のデータについて、筆者は、「国別データの取り方を恣意的にしたもので捏造レベルの問題だ」と、月刊誌『FACTA』2012年7月号で、恣意的な方法を含めて批判したことがある。
 この図表は、今回の著作では出ていないが、それでも同じような見解が書かれている。
「日本銀行はデフレは低成長の原因ではなく、結果であると反論した。この点で興味深いのは先進国における(人口一人当たりの)潜在成長率と予想物価上昇率の関係である(注8)。これを見ると、両者の間には明確な正の相関関係が観察される(図10−5)。」(341ページより引用)と。
 だが筆者が確認したところでは、注8で引用されている「マネーと成長期待―物価の変動メカニズムを巡って」と題した日本銀行のワーキングペーパーには、「米英欧では、中長期の予想インフレ率と潜在成長率が無相関」とされている。
 白川氏の著作の記述は間違っている。著作では、まだ懲りずに、デフレの「人口原因説」を展開しているが、その論拠は怪しいものだ。
 また、白川氏は日本財政についても、危機であると本当に信じ込んでいる。これも著作に書かれているが、筆者には、その見解は信じがたい(2015年2月5日付「国の債務超過490兆円を意外と簡単に減らす方法」)。
「統合政府論」で見れば、日本の財政は問題がないことは、先週の本コラムでも言及したが、今ではIMFでもそういったことを言い始めている。
 いずれにしても、白川氏はまぎれもない「消費増税積極論者」であるようだ。
 だが、冒頭に述べたように、2%のインフレ目標が達成できなかったのは消費増税が原因である。
 白川氏が仮に2014年4月に日銀総裁を続けていたら、日本経済はもっとひどいことになっていただろう。
 というのは、金融政策で2%物価目標は達成できないというくらいだから、金融緩和は「手抜き」だろう。したがって当然のように物価上昇率は2%には届かず、その上、消費増税が行われるので、デフレに逆戻りしただろう。
 こうしてみていると、白川氏はまさに「デフレ大好き人間」なのだと、妙に納得してしまう。
(嘉悦大学教授 高橋洋一)
https://diamond.jp/articles/-/183968


 

2018年11月1日 野口悠紀雄 :早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問
働く高齢者を増やせば将来の労働力不足はどの程度緩和できるか

 これからの高齢者は、年金に頼るのでなく働くことが必要だと、前回(10月25日付け)コラム「年金だけでは老後の生活を賄えない、対処の最善策は就労年数の延長だ」で書いた。
 高齢者が働くことは、経済全体の労働力不足解消の観点からも期待されている。企業は、人手不足対策として、高齢者の雇用を考えているのだろう。
 しかし、以下では、高齢者の就労を促進しても、将来の労働力不足は解消しないことを示す。

日本の労働力人口は、
2040年までに1300万人減少する

 人口の高齢化は、労働人口の減少をもたらす。以下では、将来の労働力人口がどのようになるかを推計する。
 最初に、全体の姿の概要をつかんでおこう。
「労働力調査」によると、2015年における年齢階級別の人口、労働力、人口に対する労働人口の割合を示す労働力率は、図表1のとおりだ。また、年齢階層別人口の推移は図表2のとおりだ。

◆図表1:年齢階級別の人口、労働力、労働力率(2015年)

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◆図表2:年齢階層別人口の推移

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 15年から40年までに、15〜64歳人口が約1750万人減る。したがって、仮に労働力率が76.1%のままだとすれば、労働力人口は1300万人強減る。働く高齢者が増えるので、ある程度は補えるが、労働力の減少は避けられない。
 60年までには、15〜64歳人口が約2900万人減る。したがって、労働力人口は2200万人減る。これに対処するのはきわめて困難だ。
 以上のことを、もう少し正確に計算すれば、つぎのとおりだ。
 将来における年齢別の労働力率が、図表1に示した15年の数字のままで変わらないと仮定しよう。
 将来人口の値(図表2)を用いて労働力人口を推計すると、図表3のようになる。

◆図表3:将来の労働力人口(年齢別労働力率不変の場合)

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 15年との比較では、40年に約1300万人減り、60年には約2300万人減少する。
 15年の製造業の就業者が約1000万人であることと比較すると、これがきわめて大きな変化だということが分かる。
 日本経済は、深刻な労働力不足経済に突入するのだ。
 なお、将来の労働力人口に関する推計としては、いくつものものがある。
 内閣府「労働力人口と今後の経済成長について」(平成26年3月)によれば、13年における労働力人口は6577万人だが、30年には894万人減って5683万人になる(現状維持ケース)。
 私は、『2040年問題』(ダイヤモンド社、2015年)で、内閣府の数字と将来人口推計の計数を基にして、労働力人口の推計を行なった。
 その結果は、25年で6059万人、30年で5834万人、40年で5156万人、50年で4530万人というものだ。上で述べた数字は、これとほぼ同じものだ。

日本の労働力率は欧米に比べて低く
時系列的にも下がってきた

 人口全体が減少するから、労働力の絶対数が減少しても大きな問題にはならないと考えられるかもしれない。
 しかし、そうではない。なぜなら、図表3に見るように、労働力率も低下するからだ。
 他方で、労働力に対する需要は増加する。とくに、医療介護の分野では、高齢者の増加に伴って労働力に対する需要が増加する。したがって、いまのままでは、将来の日本で、労働の需給が著しくタイトになるのである。
 日本の労働力率は、欧米諸国に比べて低い。
 15歳以上について見ると、2016年で、アメリカ62.8%、ドイツ61.0%、スウェーデン72.1%なのに対して、日本は60.0%となっている。
 日本の労働人口比率は、図表4に示すように、13年頃までは、時系列的に見ても下がってきた。その結果、1995年に63.4%だったものが、2017年に60.5%になっている。

◆図表4:労働力率の推移

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 ただし、年齢別に見ると、25歳から64歳までのどの年齢階層でも、労働力率はこの期間に上昇している。
 したがって、経済全体の労働力率の低下は、人口の年齢別比率の変化によると考えられる(注)。
 高齢化が進めば、経済全体の労働力率はさらに低下する。図表3に示すように、年齢別労働力率が不変の場合には、経済全体の労働力率は40年には54.0%、60年には52.0%と、かなりの低水準になると予想される。
 しかし、それなら、主として高齢者の労働力率が上昇するはずだが、実際には、どの年齢階層を見ても、13年以降、労働力率が上昇している。
 むしろ、それまで低下を続けていた15〜19歳、20〜24歳の労働力率が上昇したことの影響が大きい。
(注)労働力率は、2013年から上昇している。これは年金支給開始年齢引き上げの影響であろうか?

高齢者の労働力率を高めても、
労働力不足は解消できない

 将来における労働力需給逼迫に対処するために、高齢者の労働力率を高めることが考えられる。
 65歳以上人口は、現在、約3500万人いる(図表1)。それが、2040年には約4000万人になる(図表2)。
 ところで、この階層の労働力率は、いまは約22%だ。これを約10%ポイント引き上げることができれば、40年における労働力は、図表3で示したものよりは400万人程度増えることになるだろう。
 このことをより正確に評価するため、図表1、2の計数を用い、高齢者の労働力率としていくつかの値を想定して、シミュレーションを行なった。
 そのうち、2つのケースについての結果は、以下のとおりだ。
(1)65歳以上の労働力率を5割引き上げ
 まず、65歳以上の労働力率を5割引き上げて、65〜69歳は64.1%、70歳以上は20.8%になる場合を考える。
 結果は、図表5の(1)のとおりだ。

◆図表5:(1)高齢者の労働力率引き上げ

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 労働力率不変の場合(図表3)に比べると、労働力は、40年、60年で400万人程度増える。したがって、労働力不足は、ある程度は緩和される。
 しかし、そうであっても、15年と比べた労働力は、40年には約880万人減り、60年には約2000万人減少となる。また、経済全体の労働力率も、40年に58.1%、60年に56.1%となって、現在よりかなり低下する。
 こうしたことを見れば、労働力不足問題が解消されたとは言えない。
(2)労働力率を6割に保てるように、高齢者の労働化率を引き上げる
 つぎに、経済全体の労働力率を約6割に保てるように、高齢者の労働化率を引き上げる場合を考える。
 労働力率を65〜69歳は74.8%とし、70歳以上は34.7%とすれば、これが達成できる。
 これは、65〜69歳が現在の15〜64歳と同じように働き、70歳以上も約3人に1人が働くというものだ。
 現実にこれを実現するのはかなり無理かもしれないが、経済全体の労働力低下を高齢者の就業促進だけで実現しようとすれば、このようなことが必要になるのだ。
 この場合の結果は、図表5の(2)のとおりだ。

◆図表5:(2)全体の労働力を60%以上に保つよう高齢者労働力率を引き上げ

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 労働力率不変の場合(図表3)に比べると、労働力は、40年、60年で800万人から900万人程度増える。したがって、労働力不足は、かなりの程度、緩和される。
 しかし、それでも、60年で労働力が15年より1400万人以上減ることは避けられない。高齢者の就労を増やすだけでは、若年者人口の減少には対処できないのだ。
 高齢者の就労促進は、高齢者の所得や生きがいの確保のために重要なことだ。しかし、経済全体としての労働力確保の観点からは、これに頼り切ることはできない。
 労働力確保の観点から重要なのは、つぎに述べる女性労働力率の引き上げと、外国人労働者の活用だ。

女性の労働力率がスウェーデン並みになれば
労働力が約1000万人増加

 労働力不足に対応することが目的であれば、女性の労働力率を高めるほうが効果はある。
 2016年での15歳以上の女性の労働力率を見ると、日本は50.3%であり、欧米諸国に比べて低い。欧米では、アメリカが56.8%、スウェーデンが69.7%、ドイツが55.6%となっている。
 そこで、女性の15歳以上労働力率を70%に引き上げたものとしよう。
 15歳以上の女性人口はほぼ4000〜5000万人だから、これによって、労働力人口は約800〜1000万人増えるはずだ。
 人口推計の値を用いて正確に計算した結果は、図表6に示すとおりだ。
 労働力率が50.3%にとどまる場合との差は、40年で975万人、60年で821万人になる。
 労働力がこれだけ増えれば、全体の労働力率も上昇する。40年で63.9%、60年で61.8%になる。こうして、経済全体としての労働力率の落ち込みを回避することができる。
 ただし、子育て期の女性の労働力率を高めるには、子育て支援などの政策が必要だ。それは、決して容易な課題ではない。
 したがって、高齢者と女性の労働力率の引き上げだけに頼るのでなく、それ以外の方策も考えなければならない。
 第1は、新しい技術(とくにAI)の導入によって生産性を高めることだ。 第2は、外国人労働者の活用と移民の拡大である。これら問題を日本は避けて通ることができない。
(早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問 野口悠紀雄)

https://diamond.jp/articles/-/183967

 

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コメント
1. 2018年11月01日 19:07:09 : ZzavsvoOaU : Pa801KbHuOM[104] 報告

ボルカー氏が残す警鐘

Financial Times

2018/11/1 2:00日本経済新聞 


 私は10月中旬、心動かされる招待状を受け取った。あの伝説の元米連邦準備理事会(FRB)議長、ポール・ボルカー氏が同氏の自宅で、自分が遺(のこ)したいものについて話したいというのだ。

 ボルカー氏はこのほど、回顧録をまとめた。「Keeping At It」(「がんばり続ける」の意)と題した回顧録は当初、11月下旬の出版予定だった。だが出版社が急に10月に前倒しを決めた。ボルカー氏が病気のためだ。金融界のこの大物は、今とこれからの政策立案者や政治家、有権者、投資家たちと、自分の考えていることや懸念を共有したいと言うのだ。

ボルカー氏は、行政に携わる仕事がいかに重要か今の世代にも理解して欲しいと願っている=AP

 ボルカー氏のメッセージは、実に考えさせられる内容だ。同氏が考えているいくつかのポイントは財政や経済に関するもので、そこに驚きはない。1970年代にFRB議長としてインフレを見事に抑え込み、2008年の金融危機の後には、オバマ政権の経済再生諮問会議議長として、様々な金融制度改革案の作成を手伝った。回顧録では、戦後の国際金融・経済秩序だったブレトンウッズ体制が20世紀後半、崩れていくのに対処するため、ボルカー氏とその他の人々がいかに、様々な政策手段を試してみたかが、生き生きと詳しく描かれている。

 これは部分的には、20世紀の金融政策の革新とその進展についての物語だ。だが、すべてが進化したわけではない。ボルカー氏は、進化どころか後退している分野が3つあると言う。

■50代は死ぬまであと2回は金融危機がある

 まず同氏は、21世紀の中央銀行がインフレ目標2%にこだわっている点――執念にもみえる――に懸念を感じている。物価上昇率が「1.75%か2%か、そんな細かい詳細を憂慮するのはばかげている」と。デフレに伴う危険が過度に説明されており、中央銀行はもっと物価の安定に力を入れたほうがよいと指摘する。

 第2に、この10年間、前例のない量的金融緩和策を実施してきたことで金融システムに生じている様々なリスクを懸念している。「借り入れが増え、負債が膨らんでいる……金利は極めて低い」ことから、51歳である筆者と同世代は、恐らく「少なくとも2回」、さらなる金融危機に出くわすと予想している。

 さらなる金融危機が起きるリスクは、第3の「進化どころか後退している分野」により強まっているという。08年の金融危機で金融機関が貸し出しに慎重になって10年、ここへ来て金融業者は再び悪い習慣に陥り、リスクの伴う投資に走ったり、金融規制を緩和するようロビー活動を展開したりしていると同氏は問題視している。金融危機後、同氏が立案したリスクの大きい自己勘定取引を抑える「ボルカー・ルール」などの規制がロビー活動の対象となっているという。

 これらは重要な警告だ。金融や金融政策を見てきた多くの人は、ボルカー・ルールの導入に前向きではなかった。ボルカー氏の量的緩和に対する見解には同意しない人もいるだろう。だが、金融制度改革が逆戻りし、量的緩和が招いたひずみがもたらす大きな危険についての警告は、全くもって正しい。

■「行政」の重要性を知って欲しい

 驚くのは、彼が次世代に残したいメッセージとしてトップに挙げるのは金融や経済ではない点だ。それどころか「自分としては、パブリックサービス、つまり公務員の仕事の重要性を理解してくれることを何よりも望む」と強調する。

 20世紀には、政府は価値あるものと社会が受け止め、人々の支持を受けるべきものだという考え方が浸透していたが、これが21世紀が進むに従い、特に米国で廃れてきていると同氏は感じている。「私が育った時代は、『良い政府』というのは皆が響きのいい言葉だと捉えていた」と話す。1950年代にはパブリックサービスは尊敬を集める仕事とされ、プリンストンのような大学では「行政」は重要な学問と見なされていた。

 「しかし今や『良い政府』という言葉は、あざけりの対象でしかない」と嘆く。大学は実践的な行政教育を事実上、捨ててしまっており、代わりに「政策」に焦点を置いている。ボルカー氏のように何十年も行政に携わる仕事をして、高額報酬を得られる機会を棒に振るような学生は今はほとんどいない。

 この風潮を変えようと、同氏は、行政に関する教育をもっと重要な位置づけにするプロジェクトを立ち上げたが、「うまくいっていない」と言う。「このプロジェクトのために超富裕層から資金を調達できると期待したが駄目だった。彼らは政府は小さい方がいいという考え方で、政府がどっちを向こうが気にもしていない。今の時代、必要なのに支持が得られない」

 これは憂慮すべき事態で、ほとんど議論されることがないからこそ、ボルカー氏の警鐘は重要だ。実際、地球温暖化から教育まで様々な問題に対処するため、あるいは自由市場が抱える問題点の解決法を選ぶためだけにでも、力ある行政が米国に必要な時があるとしたら、それはまさに今だ。

 しかし、作家でありジャーナリストのマイケル・ルイス氏が近著「The Fifth Risk」の中で書いているように、トランプ米大統領政権は、よく言っても、政府の様々な機能に関心がないし、最もひどい場合には行政府に対し故意に敵対的な対応をしている。

 こうしたトランプ政権による行政府への無関心と敵意は目に見えて危険を作り出している。例えばトランプ氏による最近のFRBに対する攻撃は、FRBの信用を損ねる恐れがある。ルイス氏の著書は、そこまではっきり見えない脅威にも言及している。例えば、無関心が原子力セクターに与える危険な影響などだ。

■我々には次世代の「ボルカー氏」が必要

 ボルカー氏の回顧録が出版されることで、政府の信用、人気、力を高めるためにどうすべきかという問題に関心が集まることを願おう。ボルカー氏の功績をいろんな人が語り合えば、行政をもっとエキサイティングなものにするためのプロジェクトに資金を出す人たちが現れるかもしれない。我々には、次世代の「ボルカー氏」のような存在が必要だ。

 しかし、91歳のボルカー氏は、自分がパブリックサービスを巡る議論を見届けられるかどうか疑問に思っている。筆者が胸につかえたものを感じつつ、ようやく同氏の自宅を去ろうとした時、彼は「私の言うことに耳を傾けてくれるとよいが、みんな聞いてくれるだろうか」と言った。嘆かわしい事態だが、これこそ我々が今、取り組むべき課題だ。

By Gillian Tett

(2018年10月26日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/

(c) The Financial Times Limited 2018. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.


 

非正規労働の中高年に、学び直しのチャンスを
気鋭の経済論点
人手不足解消と競争力強化の二兎を追え
2018年11月1日(木)
星 貴子=日本総研調査部副主任研究員
人手不足が叫ばれているが、取り残された存在がいる。中高年の非正規雇用労働者だ。公的な教育支援制度を充実し、彼らのスキルアップを図ることが、社会全体のメリットにもなる。
(日経ビジネス2018年8月27日号より転載)

星 貴子[ほし・たかこ]
日本総研 調査部
副主任研究員
________________________________________
1985年早稲田大学卒業後、91年日本総合研究所入社。システム開発関連部門、調査部アジア研究センター、同IT政策研究センターなどを経て、2006年から現職。
 155万人──。これは、2018年4〜6月期で、正規雇用の職を希望しているが非正規に甘んじている中高年労働者の数である。介護などを主な理由として挙げる者も含むが、この数字は、16年の新社会人の数を上回る。
 本稿では35〜54歳を中高年と定義する。人手不足が叫ばれる中、就労経験の乏しい若者が引く手あまたな一方、自らの経験や能力を生かし正規職で働く意志のある中高年が、非正規雇用として存置されている。
 非正規労働者をめぐる状況は厳しい。下の図のように、正規労働者であれば、役職定年や早期退職の年齢層が含まれる55歳以上を除き、年齢が上がるに従い賃金は上昇する。一方非正規では、30歳以降の賃金は頭打ちだ。
中高年になるにつれ正規と非正規の賃金差が広がる
●正規雇用と非正規雇用の月額所定内給与の差

注:厚生労働省「賃金構造基本統計調査(2017)」を基に編集部作成
 バブル崩壊後の景気低迷で非正規化が進む。終身雇用、年功序列を基本としていた時代は、企業が労働者の能力開発を担っていた。だが長引く不況下では、企業は正社員に対する教育投資も控えた。非正規社員にはなおさらである。彼らは社内で十分な教育機会も得られず、また金銭的に外の教育機関に通うことも難しく、能力開発の機会を失ってしまった。
 だが、見方を変えると、彼らは「金の卵」かもしれない。就職氷河期にぶつかり非正規になってしまったが、もともと学力の高い人も多い。また、非正規だとしても同じ職種に何年も従事して基本的なスキルを身につけている人もいる。
 彼らを戦力化するうえで、改善しなければならないのが、日本の公的な能力開発支援制度だ。伝統的に企業が従業員の教育を担ってきたため、公的制度の使い勝手が悪いのだ。
北欧では「有給」で教育休暇
 大きな問題の一つが、在職者向けの制度が少ないこと。例えば、ハロートレーニング(公的職業訓練)の対象者は、主に求職中の失業者、未就労の新規学卒者などだ。正規・非正規にかかわらず、在職者には利用しづらい。
 さらに、企業ニーズに合致していないのも問題だ。ハロートレーニングなど公的な支援制度では、行政や公的機関がプログラムの作成、審査を担う場合が多く、企業や産業界が関与するケースは少ない。
 では、どのように制度を整備すればよいだろうか。参考にできそうなのは、北欧の制度だ。北欧では、「能力開発は労働者の権利」という考えが社会に根付いている。就労状態や年齢にかかわらず、誰でも学び直せる制度が整っている。その中でも先進的な取り組みをしているスウェーデンとデンマークの例を見ていきたい。
北欧では、労働者が学び直しやすい
●デンマーク、スウェーデンの支援制度の特徴
1 教育訓練のための休暇を取得できる。その間の賃金も保障される
2 在職者でも職業訓練を受けられる
3 企業が職業訓練プログラム作成に参画し、時代のニーズに即したものを提供する
 支援制度の特徴は3つある(左の表を参照)。1つ目は、教育訓練を受けるための休暇を取得できることだ。例えばデンマークでは、一定の条件はあるものの、年間14日の有給教育休暇が取得できるうえ、訓練の費用は雇用者が負担する。国際労働機関(ILO)有給教育休暇に関する条約を批准しているスウェーデンでは、職場復帰後は最低でも休職前と同じ賃金と処遇が保障されている。日本の産前産後休暇や育児休業に近いイメージだ。
 また、在職中か否かにかかわらず受講できるのも特徴だ。スウェーデンでは無料。デンマークの場合は有料だが、就業者の場合は企業負担、失業者は受講料免除のため、実質無料といえる。
 さらに、プログラムも企業ニーズに合致させている。両国では、企業や産業界もプログラムを評価し、必要な場合には改廃している。毎年、スウェーデンでは4割、デンマークでは1割弱が入れ替わるなど新陳代謝がよい。
 以上を踏まえ、日本が取るべき策を考える。まずは北欧同様、能力開発を労働者の権利としたうえで、現行の制度を労働者にとって使いやすくすべきである。就労状態にかかわらず、希望する人が利用できるようにする。
支援の重複解消で財源確保
 また、制度の重複を解消することも重要だ。現状では、生活困窮者、求職者、在職者にそれぞれ別々の支援がなされているが、重複もある。これを一本化する。就労状態による区分ではなく、基礎、中級、専門コースといったレベル別の区分にすれば、自分に合ったコースを受講できる。
 さらに、支援プログラムの評価に企業や産業界が参画し、プログラムを企業ニーズに合致させることも必要だ。地域ごとに求められる知識やスキルが様々であることを考えれば、経済圏ごとに実施する選択肢もあろう。
 最後に筆者が提案したいのが、「正規雇用を保障する教育訓練制度」の構築だ。下の図のように、企業とハローワークが、「受講者が既定のプログラムを期限内に修了した場合に正規雇用する協定」を結ぶことで、非正規労働者のスキルアップと就職を保障する。企業の参加を促すため、税制優遇措置なども検討すべきだ。
訓練終了後に正規雇用を保障
●著者が考える教育訓練システム

注:日本総研作成の図を基に編集部作成
 「財源はどう確保するのか」という意見もあるだろう。実は、現状の支援制度はそれぞれ他の制度と重複している部分も多い。省内の複数の局が似たような制度を提供しているからだ。縦割りを見直せば、財源は確保できる。
 労働人口が減少する中で中高年の非正規労働者を放置すれば、彼らはいずれ生活に困窮する高齢者となり、社会保障費が増大する。
 また、世界中で技術革新が進み国際競争が激しくなる中では一人ひとりが学び、スキルを伸ばすことが不可欠だ。とりわけ層の厚い「正規で働く意志がありながら放置されている非正規中高年層」がスキルアップできれば、社会全体への貢献も大きい。
(構成=白井 咲貴)


このコラムについて
気鋭の経済論点
社会的な課題に対して私たちはどのように対処していけばいいのか。経済学の視点から分かりやすく解説するコラムです。執筆者は、研究の一線で活躍する「気鋭」の若手経済学者たち。それぞれのテーマの中には一見難しく感じるものもありますが、意外なところに経済学が生かされていることも分かるはずです。

https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/101700172/082400035/

 

2. 2018年11月01日 19:07:38 : ZzavsvoOaU : Pa801KbHuOM[105] 報告
学業重視の「通年採用」は日本企業に馴染むのか
就活ルール「廃止」で大学はどう動くのか?(1)
2018.11.1(木) 児美川 孝一郎
大手町の経団連会館。就活ルールの「廃止」で、学生や大学はどうなるのだろうか。
(児美川 孝一郎:教育学者、法政大学キャリアデザイン学部教授)

 去る2018年9月3日、経団連の中西宏明会長は、定例記者会見において、2021年卒(現在の大学2年生にあたる)より、これまで経団連が定めてきた就活ルール(正確には、会員企業に求めてきた「採用選考に関する指針」)を廃止する意向であると表明した。

 組織としての正式決定ではないとしていたが、さすがに突然の表明であり、企業、大学、政府の関係各方面には、賛否は別としても、いささか電撃的なニュースとなった。今回の記事では、就活ルールの廃止が、現在の大学や大学教育に与える影響について考えてみたい。

賛否の声と落としどころ
 いきなり論評に入る前に、先の経団連会長による記者会見以降の事態の推移を確認しておこう。就活ルール「廃止」の表明に対しては、すぐさま各方面から多くの反応があった。

 まず、企業側の反応は、大企業を中心として、解禁時期などのルールがあったとしても、すでに実質的には守られておらず形骸化している、そして、外資系や経団連の非加盟企業との優秀な人材の獲得競争に備えるためにも対応が必要だという理由で、「廃止」を歓迎する声も上がった。しかし、一方、中小企業などからは、大企業の「通年採用」が常態化することは、自分たちの採用活動にとって死活問題であるとして、就活ルールの維持を求める反応が多数を占めた。

 また、表面に大きく出ることはなかったが、たとえ大企業であっても、人事担当者などからは、通年採用が当たり前になると、新卒の採用にかかる労力やコストがこれまでの比ではなく大きくなると、憂慮を表明する声も伝えられた。

 他方、大学側からは、就活ルールの廃止が、学生の就職活動の「早期化」と「長期化」を促すことになる点を危惧し、そのことが、学生が留学やさまざまな社会体験などに挑戦する機会を奪い、学業の妨げにもなると、おおむね反対の声が上げられたと見てよかろう。

 こうした論議が湧き上がる最中、政府は、さすがに2021年卒からの就活ルール廃止は唐突であり、学生にも社会的にも混乱を引き起こしかねないとし、また、就活には一定の秩序とルールも必要であるとする立場から、経団連ではなく、新たに政府が主導する形で就活ルールを定めていく方針を提示していた。経団連も、政府が主導する形での就活ルールについては、それを認める意向を示した。

 結局、経団連は、10月9日の定例記者会見において、就活ルールの廃止を正式に発表。就活ルールを取り仕切る役割から降りることを明確にした。ついで、10月15日、政府は、関係省庁連絡会議(内閣官房、文科省、厚労省、経産省に加えて、経団連、大学側の代表である就職問題懇談会も参加)の初会合を開き、政府主導で今後のルールづくりを行っていく方向に歩みを進めた。

 そして、当面の決着は、2021年卒については、現行の就活ルール(大学3年3月に説明会解禁、4年6月に選考解禁)を維持し、2022年卒以降については、あらためて議論する、そして、ルールを守らない企業に対しても罰則などは設けないというラインに落ち着きそうな気配となった。

開けられた「パンドラの箱」
 以上のような経過をどう見たらよいか。

 経団連会長による突然の「廃止」表明から、わずか一月ちょっとの間での決着。混乱を生まないという点では上首尾だったのかもしれないが、この間、関係者のあいだで十分な議論が尽くされたようには、残念ながら見えない。

 しかも、出てきた結末は、音頭取りの役割を引き受けるのが、経団連から政府へと変わったとはいえ、少なくとも2021年卒に関しては、現行の就活ルールがそのまま維持されるということである。ということは、今後の就活も、これまでと同じような流れになるのだろうか?

 おそらく、そう考えるのは、楽観的すぎるのではないか。やはり、いったん開けられてしまった「パンドラの箱」は、そう容易には元に戻らない。

 もちろん、これまでの就職協定などの就活ルールは、およそ「作られては破られ、そして中断や廃止に追い込まれる。しかし、再び必要性を主張する声が高まって、あらためて作られる」といった歴史を何度も繰り返してきた。

 ただ、今度ばかりはどうなるのか、にわかには判断しにくい。それは、グローバリゼーションの進行下での「日本型雇用」の将来がどうなっていくかという点とも密接に結びついている。

 もちろん政府が音頭取りを始めた以上、今は未定とされている2022年卒以降についても、一定の就活ルール(「目安」と言ったほうが妥当かもしれない)は残り続けるかもしれない。

 しかし、当のルールなるもののグリップ力は、次第に落ちていくのではないか。場合によれば、政府も匙を投げてしまうような事態が起こらないとも限らない。その時、大学にはどのような影響が及ぶのか。これが、今回の記事で考えてみたい論点である。

想定しうる変化の方向性
「本来、就活ルールはどうあるべきか」という「べき」論を展開するのは、ここでの目的ではないので、今後の企業の採用活動がどう変化するのかについての「推測」から入りたい。

 もちろん、一寸先は闇であり、未来のことは誰にも正確には分からない。景気動向の変化によって、現在の「売り手市場」が一気に成立しなくなり、むしろ企業側にとっての「買い手市場」が再来することだって十分に考えられるので、以下で述べることは、あくまで現時点での、しかも多分に「憶測」を含んだ判断にほかならないことは断っておきたい。

 さて、想定しうる変化の方向性は、端的に言ってしまえば、就活ルールの効力が低減する(場合によれば、ルールが無くなる)ことによって、時期を定めて新卒を一斉に採用するという「新卒一括採用」が縮小し、代わりに、いわゆる「通年採用」が拡大するというシナリオであろう。

 ここまでは分かりやすい。が、問題は、この先である。

日本的慣行に反する「通年採用」
 そもそも「通年採用」とは何なのか。

 字義どおりに理解すれば、企業が、必要な時に、必要に応じて、人を採用するという仕組みであろう。

 欧米諸国をモデルとすれば(そもそも「新卒一括採用」という慣行がない国では、通年採用が当たり前なのだから、「通年採用」という概念そのものが成立しているのかどうかも怪しいが)、通年採用において採用の候補となるのは、新卒者には限らず、既卒者も含まれる。大学生であれば、通常は在学中だけではなく、卒業後も求職活動を続ける。そして、採用選考の際の基準は、企業側の必要に応じて募集がかけられた「職」を遂行できるだけの能力を持っているかどうかである。

 そこでは、日本型雇用のように、長期雇用を大前提としたうえで、将来の「伸びしろ」(潜在的能力)を判断して採用するといったことは起こりえない。だから、通年採用とは、本来、新卒者や若年者にとっては厳しい労働市場なのである。

 それゆえにこそ(少々、脇道に逸れるが)、通年採用を行っている国々の大学生は、確かによく勉強する。日本の学生たちのように、経団連会長から「日本の大学生は勉強しない」などと、なじられることはない。それは、欧米諸国の企業は、採用の際、学生が大学で何を学び、どんな能力を身に付けたのか、それが募集した「職」にマッチしているのかをきちんと評価するからであり、だからこそ、学生たちも必死になるのである。

 その意味では、「大学で何を学んだかは不問」といった採用を堂々とやり続け、就活のために学生の時間と労力を多大に奪ってきた日本企業には、大学生が勉強しないことを嘆く資格などはないと思うのだが。(この点は、経団連会長も、9月25日の定例記者会見で「企業側も採用にあたり学業の成果を重視してこなかった点は大いに反省すべきである」と明言している。)

(話を元に戻して)いずれにしても確認しておくべきことは、こうした意味での欧米型の「通年採用」は、それがいいか悪いかは別として、新卒採用、長期雇用、企業内教育、内部昇進制といった日本的な雇用慣行とは、かなりの部分で相容れないものであるという点であろう。

「通年採用」の日本型?
 では、今後は日本企業も、こうした欧米型の「通年採用」へと移行していくのだろうか。

 確かに、「日本型雇用」の見直しは、多くの企業にとって課題として意識されている懸案かもしれない。しかし、そうした課題に、どの程度の範囲で、どんなスピードで取り組んでいくのかは、企業ごとに事情が異なるだろう。少なくとも、この10年といったタイムスパンで、一気呵成に欧米型にシフトしていくような企業は、そう多くはないと想像できるのではないか。

 とすれば、「新卒一括採用」の縮小の後には、どんな「通年採用」が登場してくるのか。

 要するに、それは、きわめて特殊日本的な形である「新卒採用の通年化」ということなのではないか。現在でも、少なくない企業は、春から夏にかけての時期だけではなく、秋以降にも新卒採用を実施している。また、経団連の就活ルールには従わずに、大学3年生や2年生へと新卒採用を前倒ししている企業も存在する。今後は、これが、より一般化するということである。

 採用のメインターゲットは「新卒」であり、選考の際に評価するのも「潜在的能力」であるという構造は変化せずに、就職活動の期間だけが大学生活全体へと間延びする。

 もし、こんなことが起きてくるのだとすれば、それは、大学教育にいかなる影響を与えることになるのか。この点について、次回に論じたい。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54507

http://www.keidanren.or.jp/policy/2018/015.html
採用選考に関する指針
一般社団法人 日本経済団体連合会
2018年3月12日改定
企業は、2020年度入社の大学卒業予定者・大学院修士課程修了予定者等の採用選考にあたり、下記の点に十分配慮しつつ自己責任原則に基づいて行動する。

なお、具体的に取り組む際は、本指針の手引きを踏まえて対応する。


1.公平・公正な採用の徹底
公平・公正で透明な採用の徹底に努め、男女雇用機会均等法、雇用対策法及び若者雇用促進法に沿った採用選考活動を行い、学生の自由な就職活動を妨げる行為(正式内定日前の誓約書要求など)は一切しない。また、大学所在地による不利が生じないよう留意する。

2.正常な学校教育と学習環境の確保
在学全期間を通して知性、能力と人格を磨き、社会に貢献できる人材を育成、輩出する高等教育の趣旨を踏まえ、採用選考活動にあたっては、正常な学校教育と学習環境の確保に協力し、大学等の学事日程を尊重する。

3.採用選考活動開始時期
学生が本分である学業に専念する十分な時間を確保するため、採用選考活動については、以下で示す開始時期より早期に行うことは厳に慎む。

広報活動 : 卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降
選考活動 : 卒業・修了年度の6月1日以降

なお、活動にあたっては、学生の事情に配慮して行うように努める。

4.採用内定日の遵守
正式な内定日は、卒業・修了年度の10月1日以降とする。

5.多様な採用選考機会の提供
留学経験者に対して配慮するように努める。また、卒業時期の異なる学生や未就職卒業者等への対応を図るため、多様な採用選考機会の提供(秋季採用、通年採用等の実施)に努める。

以上
採用選考に関する指針 (PDF版)
「採用選考に関する指針」の手引き (PDF版)(2017年4月10日改定)
「労働政策、労使関係、人事賃金」はこちら

3. 2018年11月02日 20:32:01 : UGd5uG6y2Q : _7yrpMxYnqY[735] 報告
嫌悪感 剥き出しにして 「デフレ好き」

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