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水道民営化 賛成する自治体、反対する自治体  改正水道法に欠かせない基礎的な調達スキル なぜ日本は海外失敗例を無視するか
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投稿者 うまき 日時 2018 年 12 月 12 日 13:33:09: ufjzQf6660gRM gqSC3IKr
 

水道民営化 賛成する自治体、反対する自治体

橋本淳司 | 水ジャーナリスト、アクアスフィア・水教育研究所代表
12/11(火) 11:30
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イメージ(著者撮影)

改正水道法の成立
 2018年12月6日、第197臨時国会の衆院本会議において、与党などの賛成多数で改正水道法が成立した。公共施設の運営権を民間企業に一定期間売却する「コンセッション方式」の導入を自治体の水道事業でも促進する。

 高度成長期から整備が広がってきた水道管。2016年度時点で全国の約15%が耐用年数の40年を過ぎ、漏水なども多発している。耐震強度が不足した施設も多い。

 そうした老朽施設の取り換えや耐震化の費用が膨らみ、自治体の事業経営を圧迫している。人口減少で水道使用量も減り続け、採算が取れる料金収入を確保できない地域も急速に増えている。

 そうした中、政府が打ち出したのが「コンセッション方式による官民連携」だった。

 コンセッション方式は、行政が公共施設などの資産を保有したまま、民間企業に運営権を売却・委託する民営化手法の1つ。すでに関西空港、大阪空港、仙台空港、浜松市の下水道事業などがこの方式で運営されている。

 その方式が水道事業にも持ち込まれ、実質的な民営化へ門戸を広げることになる。

 しかしながら、海外で民営化した都市では料金の高騰や水質悪化が相次ぎ、オランダの民間団体の調査では、2000〜16年の間に少なくとも世界33カ国の267都市で、水道事業が再び公営化されている。

 政府は「コンセッションは選択肢の1つ。海外のような失敗を防ぐため、公の関与を強めた」と強調するが、野党は「生命に直結する水道をビジネスにするべきではない」と批判。厚生労働省が海外の再公営化の動きを3件しか調べなかったことや、施設の維持管理や災害復旧時の自治体と企業の役割分担に関し、野党は「検証や検討が不十分」と問題点を指摘した。

 政府は国による事業者への立ち入り検査などで監視を強めるとするが、そもそも企業との契約交渉、条例策定などは自治体に任せることになる。

具体的に動き出す宮城県
 今後、議論の舞台は自治体へと移る。

 厚労省によると、浜松市、宮城県、同県村田町、静岡県伊豆の国市が上水道での導入に向けて調査などを実施し、大阪市や奈良市も導入を検討している。

 宮城県はコンセッション方式を基本とした「みやぎ型管理運営方式」を加速させる。「みやぎ型」とは、上水、工業用水、下水の計9事業の運営権を一括して民間企業に売却するコンセッション方式で、2019年秋の県議会に具体的な実施方針を定めた条例案を提出する。2020年秋には事業者を決め、2021年度中に事業をスタートする予定だ。

 宮城県は以前からコンセッション方式に積極的で、国に水道法改正を要望した唯一の県だ。臨時国会では村井嘉浩知事が参院厚生労働委員会に参考人として意見陳述し理解を求めた。

 宮城県では、人口減少が進んで水需要が減り、水道事業の年間収益は20年後に10億円減る。その一方で、水道管などの更新費用は計1960億円かかる。水道料金の値上げは避けられないという。

 だが、コンセッション方式なら、新技術の活用や薬剤などの資材調達費が節減でき、料金の値上げ幅を抑えられると考えている。

 遡ること2017年2月9日、宮城県庁でコンセッション方式を検討する会合が開かれた。内閣府、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、大手商社、金融機関などの担当者約90人が出席した。

 ここではコンセッション方式に前向きな声が上がった。

 コンセッション方式の伝道師と言われた内閣府福田隆之大臣補佐官(当時)は「全国の先駆けとなる」「行政では見えぬノウハウ、付加価値が民間なら見えるものがある」と強調した。

 参加企業からは「安定的収入が見込め、今後伸びる分野と考える。公共サービスを担うことは、企業の社会的価値を高めることにもつながる。チャレンジしたい」という声があった。

 なかには、さらなる民営化を求める声もあった。

「料金を官が決めるままならば効果を見い出しにくい」と企業に料金設定を求める意見や、「将来的には市町村が担う家庭への給水も民営化すべきだ。蛇口までの一体的な運営が最適」「県の関与を残さない完全民営化をすべき」という声もあった。

 しかし、現在では県内に懸念の声もある。

 知事を支える宮城県議会の自民党会派は改正水道法成立後に勉強会を開き、県に対し、「外資は経営方針が変わる危険性がある」「宮城県だけが先行している印象」「雇用は守られるのか」などと心配した。

 上水供給の約25%を県から受けている仙台市の郡和子市長は、村井知事が「水道料金の値上がりを抑えられる」と強調している点に触れ「どうしてそうなるのか詳細を教えて頂きたい」と数字の根拠を求めている。

再燃する大阪市
 大阪市の吉村洋文市長はコンセッション方式について「自治体の選択肢が広がる」と歓迎し、老朽化した水道管の管理や更新に利用したいとする意向を示した。

 市内の配水管のうち、法定耐用年数の40年を超過した約1800キロの配水管について、15年のスパンで民間事業者に管理・更新工事にあたってもらう案があるという。

 大阪市では橋下徹元市長時代に、いち早く水道民営化を計画したが、市議会の反対に遭うなどして改正条例案提出を断念した経緯がある。

 水道法改正を機会に、議論が再燃する可能性は高い。

コンセッションを行わない意思表明
 反対に、コンセッションは行わないとする自治体もある。

 国会での改正水道法審議に際し、福井県議会は「水道法改正案の慎重審議を求める意見書」、新潟県議会は「水道民営化を推し進める水道法改正案に反対する意見書」を提出している。

 後者は10月12日、自民党を含む超党派が賛成(公明党は反対)。「必ずしも老朽管の更新や耐震化対策を推進する方策とならず、水道法の目的である公共の福祉を脅かす事態となりかねない」などとしている。

 神戸市の久元喜造市長は、改正法成立後に、同方式を採用しない方針を示した。「優秀な職員が事業を支え、経験やノウハウが継承されてきた。必要な部分は民間委託をするが、基本的には現在の方式を維持することが大切」と述べた。

 青森市の小野寺晃彦市長は「コンセッション方式の導入は考えていない。市の水道は今でも検針などを民間に委託している。官民連携は大きな方向として大事なこと。当面、現状の形でより良い水道事業にするよう努力していく」と述べた。

 秋田市の穂積志市長は、民営化で料金が高騰した海外の例を挙げ、官民連携の必要性は説きながらも「水道事業の根幹に関わる部分については自前でやる」との方針を示している。

 長野県議会は12月7日の本会議で、国などに対し水道事業への民間企業参入に慎重な対応を求める議員提案の意見書を可決。「諸外国では水道事業を民営化した例が多く見られるものの、利益を優先した結果として料金の高騰や水質劣化などの問題が生じている」「コンセッション方式も、自治体の監督能力が低下すれば同じ事態に陥る懸念がある」と指摘し、「水道は国民の命や生活を守る最も重要なインフラ」とし、民間企業の参入については「地方公共団体の実情に配慮しつつ、慎重に対応するよう強く要請する」と求めている。

 自治体の水道経営が厳しいのは事実だが、水は自治の基本。

 もともとコンセッション方式推進は、第1次アベノミクスの「第3の矢」として登場した。旗振り役である竹中平蔵東洋大学教授は、「水道事業のコンセッションを実現できれば、企業の成長戦略と資産市場の活性化の双方に大きく貢献する」などと発言してきた。政府は水道事業に関して6自治体でのコンセッション導入を目指したが(14〜16年度)、事業認可を返上する必要があったこともあり、成立した自治体はゼロだった。

 そこで水道法改正案にコンセッション方式を明記し、前国会(第196回国会)で成立した改正PFI法では、地方公共団体が水道事業をコンセッション方式にした場合、「過去に借りた高金利の公的資金を、補償金なしに繰上償還できる」という特典をつけて優先的に検討することを推奨した。

 国で作った法律の枠組みはあっても、実際の運用は自治体の判断に委ねられることは沢山ある。

 今後は市民にも自治体の現状や将来ビジョンを共有し、各自治体で前向きな議論が必要になる。

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橋本淳司
水ジャーナリスト、アクアスフィア・水教育研究所代表
水ジャーナリスト、「水と人の未来を語るWEBマガジン"aqua-sphere"」編集長として水問題や解決方法を発信。アクアスフィア・水教育研究所を設立し、自治体・学校・企業・NPO・NGOと連携しながら、水リテラシーの普及活動(国や自治体への政策提言やサポート、子どもや市民を対象とする講演活動、啓発活動のプロデュース)を行う。近著に『67億人の水』(日本経済新聞出版社)、『日本の地下水が危ない』(幻冬舎新書)、『100年後の水を守る 水ジャーナリストの20年』(文研出版)、『水がなくなる日』(産業編集センター)など。

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改正水道法に欠かせない基礎的な調達スキル

目覚めよサプライチェーン
2018年12月12日(水)
牧野 直哉


 先週、改正水道法が成立した。今回の改正の目玉は「コンセッション方式」と呼ばれる、民間の持つノウハウを水道事業に活用する道を開いたことだ。政府は、民間企業の技術や経営にまつわるノウハウを生かし、地方自治体は運営を請け負った民間企業から対価を得られ財政負担が減るといったメリットを強調し新法を成立させた。コンセッション方式の是非は、既に様々な議論が行われている。今回は、コンセッション方式を軌道に乗せて、当初の想定通りに運営し、コスト削減を実現するために必要な準備について述べてみたい。

どのように水道事業に適応させるか
 注目を浴びるコンセッション方式は、地方自治体が行っている水道事業のすべてを民間企業が行うわけではない。水道供給施設は、引き続き地方自治体が所有し、施設の維持管理・運営だけを民間企業が行う。供給される水の品質は、国又は都道府県が地方自治体や民間企業を監督して維持する。値上げが危惧されている水道料金も、国又は都道府県が、地方自治体と運営を任された民間企業が作成する事業計画や料金設定を審査する。供給される水の品質は維持しつつ、民間企業が勝手に料金設定できない束をはめ、水道事業の基盤強化を図るとされる。確かに良いことばかりのように思える。

 コンセッション方式を実現するには、まず民間事業者に設備運営を請け負ってもらわなければならない。民間企業の活用は、請け負ってくれる企業が名乗りを上げ初めて実現する。果たして、手を挙げてくれる企業がいるのかどうか。複数の企業が名乗りを上げたとしても、果たしてどこの企業に発注するのが最適なのか。こういった水道設備の維持管理をベースにしつつ、自分たちの意向に沿った運営を行ってくれるかどうかは未知の領域のはずだ。

まず現状の仕組みを分かりやすく伝える
 一口に「水道設備の運営」といっても、その内容は自治体ごとにまちまちだ。地域ごとに水源が異なり、水質が異なる結果、運営方法が異なっている。したがって、地方自治体は、まず現在行っている浄水方法について、民間企業に分かりやすく伝える必要がある。

 これは、他の公共事業でも行われているし、民間企業の調達現場で行われている基本的なスキルである、要求仕様の確定作業が該当する。新たなスキームで行われる外部リソースの活用であり、仕様書の作成もかなり困難だと想定される。特に、設備の所有権が地方自治体のままで、どのように運営だけを切り離すのか。設備の破損や劣化、突発的な故障に際した責任関係を明確にしなければ、民間企業にとって魅力的なビジネスチャンスに映らないはずだ。もし、水道事業をコンセッション方式で運営を外部へ委託する場合は、まず分かりやすく要求内容を説明する資料の作成が必要である。

これまで培ったノウハウの活用が欠かせない
 そして分かりやすい資料の作成に加えて重要なポイントがある。これまでの事業経験で培った、地方自治体が持っていた技術やノウハウの活用である。施設運営を請け負う民間企業の選定には、まず自分たちが行っていた水道設備管理技術や方法論をベースにして臨むしかない。地方自治体ごとに蓄積されている独自のノウハウを元に、民間企業がもつ新たな技術の導入や、従来よりも費用削減可能な浄水方法の採否を決定していかなければならない。例えば、新たなコスト削減に取り組むにしても、コストは下がったけど水の品質も悪化したのでは、法案成立に反対の立場をとった野党の主張の正当性が証明されてしまう。

 コストダウンにまつわる意思決定は、民間企業であっても非常に難しい。しかし、これまでライフライン維持を理由にして赤字に陥っていた水道事業者は、真っ先に運営プロセスにおける費用削減に取り組まなければならない。新たな水道法の精神を実現させ、水道事業を維持させるためにも、コストダウン実現と同時に、水の品質は維持しなければならない。これまで行ってこなかった、品質の維持とコスト削減の両立をいきなり求められるのである。

 もしこれまでの運営方法を、手を挙げた民間企業に押し付け、新技術を「前例がない」とはねつけるのであれば、費用削減は難しいであろう。新技術採否の妥当性検証は、運営する企業と共同して取り組む必要があるだろう。

民間企業のノウハウを導入するには、運営プロセスの見直しが欠かせない
 そしてもう一つ、今回のスキームが機能して、法改正の目的実現を危ぶむ要因がある。国や都道府県が行う事業計画や料金設定の審査である。こういった許認可作業を、機動的かつ効率的に行わなければ、経営環境の変化に追従できず、コスト削減ができない事態が生まれるかもしれない。最終的に水道設備の維持管理を請け負ってくれる民間企業がいない事態に追い込まれてしまうだろう。

 これまで設備の維持管理を行っていた地方自治体だけではなく、水道事業に携わる上位機関として国や都道府県も含め、民間企業のスピード感に合わせた対応をしなければ、新法の精神の実現は難しい。水道供給の現場に変化を求めるのであれば、水道事業の関係者すべてがその変化に追従が必要なのである。

試される地方自治体関係者の覚悟
 今回の水道法改正は、水道管に代表される浄水・供給設備の老朽更新が待ったなしの状況にあり、かつ節水意識の向上と人口減少によって総需要が減少する三重苦の中で成立した。厳しい事業環境の中で、法律改正後の水道事業を軌道に乗せるのは、運営に手を挙げる民間企業ではない。これからも監督する地方自治体の水道事業関係者の奮闘がかかせない。そして運営開始後も、様々な問題に直面するはずである。需要が減退する中で、品質を維持しながら供給を継続するのは、非常に難しいかじ取りを迫られる。

 どんな事業でも失敗する可能性はゼロにはならない。しかし本当の失敗は、その原因を設備運営する民間企業にのみ負わせたときだ。新たな法律は、管理監督の責任を行政が担う。制度のスキームから考えて、運営方法に問題があったとしても、事前にチェックが可能なはずである。この点も、民間企業におけるサプライヤー管理の手法が役立つはずだ。地方自治体側は、厄介な事業を民間に押し付けるといった考えは捨てるべきだ。民間企業が、問題を隠匿しても、見抜く目が欠かせない。水道供給の責任からは逃れられないのである。


このコラムについて
目覚めよサプライチェーン
自動車業界では、トヨタ自動車、本田技研工業、日産自動車。電機メーカーでは、ソニー、パナソニック、シャープ、東芝、三菱電機、日立製作所。これら企業が「The 日系企業」であり、「The ものづくり」の代表だった。それが、現在では、アップルやサムスン、フォックスコンなどが、ネオ製造業として台頭している。また、P&G、ウォルマート、ジョンソン・エンド・ジョンソンが製造業以上にすぐれたサプライチェーンを構築したり、IBM、ヒューレット・パッカードがBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を開始したりと、これまでのパラダイムを外れた事象が次々と出てきている。海外での先端の、「ものづくり」、「サプライチェーン」、そして製造業の将来はどう報じられているのか。本コラムでは、海外のニュースを紹介する。そして、著者が主領域とする調達・購買・サプライチェーン領域の知識も織り込みながら、日本メーカーへのヒントをお渡しする。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/258308/121100168


 


ついに始まった水道民営化、なぜ日本は海外「水道代5倍」の失敗例を無視するのか?
2018年12月11日 ニュース


ついに水道事業を民営化しやすくする改正水道法が成立しました。「貧乏人は水を飲むな」ともなりかねないその問題点と、可決に至った政府の考えを解説します。(『らぽーる・マガジン』)

※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2018年12月10日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

世界は「再公営化」が主流、日本も貧乏人と地方が見捨てられる?
ついに「水道民営化」法案が可決
12月6日、水道事業を民営化しやすくする改正水道法が可決され成立しました。この改正案は今年7月に衆院を通過し、11月に参院で審議入りしていたものです。

当メルマガでは、衆院を通過した今年7月時点にもこの話題を取り上げています。

【関連】あまり報道されない「水道民営化」可決。外国では水道料金が突然5倍に

2018年7月5日、水道事業の運営権を民間に売却できる仕組みを導入することなどが盛り込まれた水道法の改正案の採決が衆院本会議で行われ、自民・公明両党と日本維新の会と希望の党(当時)などの賛成多数で可決されました。審議時間はたったの8時間でした。

2018年6月18日、大阪北部地震が発生し、21万人以上が水道の被害を受けたことでクローズザップされた「水道管の老朽化」問題がきっかけとなり、6月27日に水道法改正が審議入りし、8時間の審議を経て7月5日に衆議院本会議で可決されました。

「水道管の老朽化」と「水道法改正」と、どう関係するのでしょう。

“数の論理”で成立した水道法改正について、私たちの命にかかわる問題ですので、一度取り上げたものですが、再度その内容を検証していきましょう。

水道法改正をめぐる「3つのキーワード」
水道法改正に関して、キーワードを確認しておきましょう。

老朽化
人口減少
コンセッション方式
まずは「老朽化」についてです。

深刻な水道「老朽化」
日本の浄水設備の多くは1960年代から70年代の高度経済成長期に建設されたもので、今後も老朽施設の更新需要は年々増加していきます。

現在、耐用年数40年以上を超える水道管は約10万km、これは地球2周半に相当します。更新費用は1kmあたり1億円以上もかかるそうです。

これを早急に対処しなければならないのですが、現状ではかなり困難な状況になっているというのが政府の見解です。

老朽化した水道管の更新のための「資金・人材」が不足しているとのことです。

これまで日本の水道運営は、企業会計原則に基づく地方公営企業法上の財務規定が適用されるため、独立採算で運営されており、原則として、水道料金収入と地方自治体が発行する企業債(地方債の一種)で水道事業の運営・更新費用などが賄われてきました。

基本的には徴収した水道料金で運営や設備の補修などが賄われています。

ここで次のキーワード「人口減少」が出てきます。人口減少により、水道料金収入が減少しているのです。

Next: 人口減少で水道事業維持が困難に?水道法改正に至った経緯は…


「人口減少」で水道事業は赤字へ
人口減少により、水道料金収入が減少しています。

水道事業の大部分は固定費で、人口減少で水道需要が減っても、大きく運営コストが下がるものではありません。

人口減少による水道料金収入減少は、水道事業維持を困難にしているようです。約40年後には水需要が約4割減少すると厚生労働省は試算しているようです。

それゆえ毎年、水道料金は値上げされてきています。日本水道協会の調べによれば、この4年間ずっと水道料金は上がっています。家庭用水道料金の、立方メートルあたりの月額料金は、過去最高の3,228円となっています。

日本政策投資銀行の試算によれば、このままいけば、水道料金は30年後には6割も上がることになるそうです。

水道料金を値上げしても、水道事業者は赤字だそうです。厚生労働省によると、市町村が運営する水道事業は全国で約3割が赤字となっているそうです。

自治体の水道事業赤字は、そのまま私たちが支払う水道料金アップにつながります。老朽化した水道管を更新する費用も、私たちが支払う水道料金に跳ね返ってきます。日本中の老朽化した水道管をすべて更新するには、130年もかかるそうです。少子化が進めば、水道料金値上げもどんどん進んでいくことになりそうです。

人材に関しては、公的運営では人材の流動性が見込めず、高齢化に伴い人材が不足しているというのです。

以上のことから、従来の自治体運営に限界があるとして、民間の力をとりいれることで、老朽化した水道管更新を行っていこう、そのために民間企業を水道事業に参入できるように水道法を改正する必要があるというのが政府の主張です。

水道法改正のポイント
審議されていた「水道法改正のポイント」は以下の通りです。

水道事業者に施設の維持・修繕や台帳整備を義務付け。収支の見通しを公表
国が水道の基盤強化のために基本方針策定。都道府県、市町村の責務を規定
広域連携を進めるため、都道府県が市町村などでつくる協議会を設置可能に
自治体が水道事業の認可や施設の所有権を持ったまま、民間企業に運営権を委託できるコンセッション方式の導入
どこにも水道事業の「民営化」とは書かれてはいませんが、民間企業を選定し、自治体が管理するということは、間違いありません。

麻生大臣は「水道はすべて民営化する」と断言していた
入国法改正は「移民政策ではない」と主張するのと同じように、安部総理は、水道法改正は「水道事業の民営化ではない」と主張しています。

ただ、2013年4月にアメリカのシンクタンクCSIS(戦略国際問題研究所)で行われた麻生太郎財務大臣兼副総理の講演で「この水道は全て国営もしくは市営・町営でできていて、こういったものを全て民営化します」と述べています。

明確に麻生大臣は「水道の民営化」を目指すと断言しています。

民営化ではないとしても、老朽化がすすんだ水道管を更新するには、自治体運営には限界があるから民間企業にやってもらうということは、まちがいありません。

なぜ自治体がダメで、民間企業ならできるのか…まだよくわかりませんね。

「水道法改正のポイント」で注目点は「広域連携」と「コンセッション方式」になります。

Next: 民間に丸投げで解決する? 小さな自治体は「見捨てられる」可能性も…


 
政府の主張は「役人には無理でも、民間ならコスト削減できる」
もう一度、水道法改正の流れを整理しますと、

水道管の老朽化 → 少子化等による水道料金収入低下で自治体の水道業が赤字 → 水道業務に民間企業のノウハウを活用する

というものです。

政府は、自治体よりも民間企業のほうがコスト削減のノウハウがあると言うのです。さらに民間企業を参入させることで競争原理が働いて、さらなるコスト削減が期待できるとしています。

更新コストの削減は、水道料金アップを抑制することにも繋がると政府は期待しています。

はたして、そううまくいくのでしょうか。

小さな自治体は「見捨てられる」可能性も
民間企業は営利団体で、利益を拡大するためにコストを削減します。コスト削減は不採算部分のカットでもあります。その裁量は企業側にあり、利益を優先するあまり、住民サービスが削減されるのではないかという懸念が出てきます。

そもそも人口減少による料金収入減少が水道事業を困難にしているわけで、人口減少が目立つ自治体や、規模が小さな自治体は、民間企業が参入しても、厳しい状況は変わらないでしょう。営利を求める民間企業なら、そういった小さな自治体を相手にしないのではないかということが危惧されます。

つまり人口減少が顕著な小さな自治体は「見捨てられる」ことにならないかということです。

不採算ではありますが絶対に必要な住民サービスこそ、営利を目的としない国や自治体が行うべきではないでしょうか。

このことを前提に、人口増加が見込めない小さな自治体での水道事業を考えてみましょう。ここで「広域連携」というキーワードが登場します。

民営化しても小さな自治体には効果がない?
「広域連携」は複数の自治体を1つのグループとして住民サービスを提供しようというものです。小さい自治体を1つにすることでサービスコストの効率化をはかろうとするものです。

広域連携の意義はよく理解できます。自治体単位という垣根を越えるというものですが、それはなにも民営化する理由にはならないでしょう。

むしろ、広域連携をしても採算性が悪いとなれば、民間企業は切り捨てないかという懸念は残ります。住民サービスを削減しないかという心配は常に付きまとうのです。

厚生労働省側は、水道事業民営化が実現しても小規模自治体には効果がないことを認めています。

コスト削減のため、あえて老朽化した水道管補修を、さらに限界まで引き伸ばすことを、民間企業は考えないでしょうか。

Next: 反対派の意見は? 民営化しやすくする「コンセッション方式」導入へ

民営化しやすくする「コンセッション方式」
もう1つのキーワードが「コンセッション方式」です。

「コンセッション」とは、利用料金の徴収を行う公共施設について、施設の「所有権」は公共主体が有したまま、施設の「運営権」を民間事業者に設定する方式です。

コンセッション方式では、高速道路、空港で実施した例があります。空港の場合、空港の土地は自治体の所有のまま、レストランや駐車場等の運営を民間企業が行います。

民間企業のコスト管理から収益を得るノウハウを活用するというものです。

水道管老朽化対策促進の名目で、市町村などが経営する原則は維持しながら民間企業に運営権を売却できる仕組み(コンセッション方式)も盛り込んだのが、今回の水道法改正になります。

平たく言えば、公的機関が商売するよりも、民間企業が商売したほうが儲かるというものです。

ただそれは空港施設や高速道路といった業務には適していても、インフラ整備の中でも国民の命にかかわる水道業務に関して、営利を目的とした民間企業を活用することに、反対派は抵抗しているようです。

政府は、自治体が民間企業の運営をしっかりと管理することを強調していて、不当な水道料金値上げを抑えるために、料金に上限を設けることを決めるとしています。

民間企業を活用することで、地域の雇用を創出することにも繋がるとしています。

水道法改正反対派の意見
反対派の意見では、やはり「不採算事業の切り捨て」を心配する声が大きいようです。営利団体の宿命とも言えることで、企業は“利益の最大化のために動かず、倒産リスクの最小化のために動く”ものです。

道路事業関係者の間には「花の建設、涙の補修」というのがあるそうです。建設事業は華々しいものがありますが、補修事業は地味な作業ですからね。企業にとって見れば「補修は売上ではない」という風潮が、まだあるのではないでしょうか。

民間企業に任せるとコスト削減が期待できるという政府見解にも、反対派は疑問を投げかけています。

競争原理によるコスト削減ということが実際に起こるのでしょうか。水道事業は独占事業と言えます。そもそも競争が行われる事業なのでしょうか。

水道料金の値上げに上限が設けられれば、利益追求のためにサービスの質を落とすのは目に見えていると反対派は指摘します。

自治体は“住民”に目を向けますが、民間団体は“株主”を強く意識するものだという指摘もあります。

なにより水道事業は、民間企業にとって魅力あるものなのでしょうか。公共事業は、談合や癒着は当たり前の世界でもありますからね。

Next: なぜ海外の失敗事例を学ばない? すでに世界「水メジャー」が日本へ

仏ヴェオリア日本法人が出向
2018年11月29日の朝日新聞電子版の記事の一部抜粋です。

水道などの公共部門で民営化を推進している内閣府民間資金等活用事業推進室で、水道サービス大手仏ヴェオリア社日本法人からの出向職員が勤務していることが29日、わかった。今国会で審議中の水道法改正案では、水道事業に民営化を導入しやすくする制度変更が争点となっている。

今回の民営化の手法は、コンセッション方式と呼ばれ、自治体が公共施設の所有権を持ったまま、運営権を民間企業に売却できる。政府は、水道のほか空港や道路を重点分野として導入を推進。下水道では今年4月に浜松市が初めて取り入れ、ヴェオリア社日本法人などが参加する運営会社が、20年間の運営権を25億円で手に入れた。

出典:水道民営化、推進部署に利害関係者? 出向職員巡り議論 – 朝日新聞デジタル(2018年11月29日配信)

「この法案で最も利益を得る可能性がある水メジャーの担当者が内閣府の担当部署にいる。利害関係者がいて公平性がない」とする社民党福島瑞穂議員の質問に対して、内閣府民間資金等活用事業推進室は「浜松市なら問題だが、内閣府はヴェオリア社と利害関係はない。この職員は政策立案に関与しておらず、守秘義務なども守っている」として、問題ないとの立場だと答えたことを報じています。

ヴェオリア・ウォーター社は、フランスの多国籍総合環境サービス会社ヴェオリア・エンバイロメントの水処理事業部門会社で、ウォーター・バロン(水男爵)と呼ばれるスエズ、テムズ・ウォーターと並ぶ世界三大水処理企業の1つです。いわゆる「水メジャー」です。

再公営化される海外事例を学んでいない
海外では、水道事業を民営化した後、様々な問題が生じて公営化に戻す「再公営化」の動きが目立つそうで、2000年から2015年の15年間で、37カ国235都市で再公営化がされているそうです。

前回、このテーマでコラムを書きましたが、そのときの海外失敗例もあわせて、いくつかご紹介します。

水道の民営化の失敗例としてよく知られているのがマニラとボリビアの事例です。

マニラは1997年に水道事業を民営化しましたが、米ベクテル社などが参入すると水道料金は4〜5倍になり、低所得者は水道の使用を禁じられました。

またボリビアは1999年に水道事業を民営化したものの、やはりアメリカのベクテルが水道料金を一気に倍以上に引き上げ、耐えかねた住民たちは大規模デモを起こし、200人近い死傷者を出す紛争に発展しました。

当時のボリビア・コチャバンバ市の平均月収は100ドル程度で、ベクテル社は一気に月20ドルへと値上げしたのです。大規模デモは当時の政権側は武力で鎮圧されましたが、その後、コチャバンバ市はベクテルに契約解除を申し出ると、同社は違約金と賠償金を要求してきたそうです。

この違約金ですが、今回の改正で、日本の自治体は民間企業と「20年間」という長い機関の契約を結ぶことになります。

当然、不都合による途中解約だと違約金が発生します。

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「貧乏人は水を飲むな」もありうる
外資が参入してきて水道料金を引き上げ、水道料金が支払えない低所得者層は水が飲めずに、衛生上よくない水を飲んで病気になるケースがみられ、民間の水道事業者が利益ばかり追いかけたことにより、「再公営化」が世界の潮流となりつつあるという指摘もあります。

この外資企業と言われるのが「水メジャー」と呼ばれる企業で、2強と呼ばれるのがスエズ・エンバイロメント(フランスや中国、アルゼンチンに進出)とヴェオリア・エンバイロメント(中国、メキシコ、ドイツに進出)です。

フランスのパリでは、1980年代に民営化した後、30年で水道料金が5倍になったことで、2010年に再公営化したそうです。

米国アトランタでは、企業の人員削減で水処理が不十分になり、茶色の水が出るという水質低下が見られたという例があります。

他にも、老朽化放置で漏水率が上がっている都市もあれば、鉛が溶け出して水道汚染事故が起きているところもあるようです。コスト削減による補修工事延期の結果です。

私たちの命を海外企業に預けていいのか?
人間が生きていくうえで必要なのは「空気」と「水」…。

老朽化した水道管の更新を急ぐことは重要で、それは災害対策の一環としても大事なことでが、それがコンセッション方式による民間企業活用が良いのかどうか、水道料金の右肩上がりの値上げだけでなく、安全面としてでも、私たちはもっと関心を持つべき法案だと思います。

この「再公営化」の海外事例に関しては、政府は235例中3例だけ分析検討しただけで、水道法改正案を可決させました。

「ダム建設」は引き続き推進か
ちなみに、ダムを建設すると水道料金は上がります。横浜市では不必要と言われた宮ケ背ダム建設時で、水道料金は値上がりました。

厚生労働省は、人口減少で水の需要は減ると言い、国交省は水不足で治水のためにダム建設は必要と訴えています。予算は国交省に付くので、ダム建設は続き、私たちの水道料金は上がるようです。

その予算を厚生労働省の水道事業に回せば、全国の老朽化した水道管更新を、私たちが支払う水道料金値上げだけに頼らないで済むはずです。その予算は2300億円だそうです。

世界で水をめぐる戦争が起きるとしたら、水需要が膨らむ中国は負け組みとなり、ツンドラ氷河を利用できるロシアは勝ち組になるそうですよ。これは全くの雑学です。

いずれにしても水道法改正は可決されました。

(続きはご購読ください。初月無料です<残約6,200文字>)

ファーウェイ・ショック
今から6年前の2012年10月、米下院情報常設特別委員会が「中国の通信機器会社であるファーウェイとZTEによりもたらされる米国の国家安全保障問題に関する報告書」が出されています。

当時の両社従業員に聞き取り調査を行った結果「中国には、悪意のある目的のために、電気通信会社を通じて、米国で販売される中国製の電気通信の構成品およびシステムに、悪意のあるハードウエアまたはソフトウエアを埋め込む可能性がある」と報告しています

https://www.mag2.com/p/money/598498

 

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コメント
1. 2018年12月13日 19:02:49 : 82xViKsNP6 : jGZW8kme9gs[80] 報告
わざと無視 ゾンビにカネを 回すため
2. 2018年12月15日 23:15:46 : LY52bYZiZQ : i3tnm@WgHAM[-9998] 報告
ローマ倶楽部 水道の民営化【NET TV ニュース】国家非常事態対策委員会 朝堂院大覚 ゲスト:和田聖仁、大山グレース 2018/12/15
.
JRPtelevision
2018/12/15 に公開
https://www.youtube.com/watch?v=NDAzII2SDZs

[18初期非表示理由]:担当:混乱したコメント多数により全部処理

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