★阿修羅♪ > 経世済民130 > 861.html
 ★阿修羅♪
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
「100年安心年金」を机上の空論からホンモノにするための手立て(ダイヤモンド・オンライン)
http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/861.html
投稿者 赤かぶ 日時 2019 年 2 月 06 日 15:02:15: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

「100年安心年金」を机上の空論からホンモノにするための手立て
https://diamond.jp/articles/-/193138
2019.2.6 八代尚宏:昭和女子大学グローバルビジネス学部長・現代ビジネス研究所長 ダイヤモンド・オンライン


今夏、5年に1回の公的年金の財政検証が行われる。「100年安心年金」を実現するため、机上の空論に近い今の年金財政の枠組みに必要な視点とは何か(写真はイメージです) Photo:PIXTA


5年に1回の財政検証が迫る
年金財政の持続性は確保できるか


 今夏は、政府の定めた5年に1回の公的年金の財政検証が行われる。これは、急速な少子高齢化の進行の下で、年金財政の持続性を確保するための仕組みである。

 現行の年金財政の枠組みは、(1)保険料の上限を固定、(2)基礎年金の給付費の半分を国庫負担、(3)100年間維持されるという積立金、(4)財源の範囲内で給付水準を自動調整するマクロ経済スライドという4本柱からなっている。

 この年金財政の枠組みは、過去の年金給付の増加に応じて保険料を引き上げる方式から、現役世代と高齢世代のバランスの変化に合わせて給付面で調整する「確定拠出型」への転換と称される。もっとも、給付水準が際限なく引き下げられることを防ぐため、年金給付の現役サラリーマン世帯の平均賃金との比率(所得代替率)が公約の50%を下回らないよう、給付及び負担の在り方について必要な対応を行うのが財政検証の目的という(参考:厚労省資料より)。

 しかし、こうした制度は机上の空論である。第一に、高齢者の持続的な増加で年金給付は、過去20年間で毎年平均して1.2兆円増える一方で、長期デフレの下で賃金が増えず、保険料収入はほとんど増えていない。第二に、年金給付の増加は自動的に国庫負担増となり、税収が停滞する中で赤字国債の増加となる。第三に、肝心のマクロ経済スライドが「インフレにスライドする年金給付の増加額の範囲内で調整」という欠陥品であり、これまで十分に機能していない。このため100年持つはずの積立金も、2001年のピーク時から減少した後、最近の株高もあって2017年にはようやく回復した状況だ(図)。



 それにもかかわらず前回の財政検証では、積立金の運用利回りが、なぜか今後急速に高まり、積立金が膨れ上がるという空想的なシナリオを描くことで「100年安心年金」の建て前を維持した。今年の年金検証では、果たして現実的な制度改革を用意しているのだろうか。

 厚生労働省は年金の受給開始を75歳へ繰り下げる選択肢の検討を始めている。これで毎月の年金額は、65歳開始に比べて2倍程度に増えるという。しかし、これは加入者の平均寿命まで受け取る期間が短縮することで、生涯の年金受取総額は変わらない。また、年金財政にもまったく影響せず、およそ「年金改革」とは呼べない代物である。

 そもそも、この選択肢を誰が利用するのだろうか。現行でも65歳以降の繰り下げ受給の制度があるが、その利用者は加入者の1%に過ぎない。これは「長年保険料を負担した年金を、受け取る前に死んでしまうと大損」と国民が考えるからで、70歳以上ではなおさらである。仮に繰り下げ受給を選んだ高齢者が働けば、保険料収入分は増えると考えるのも間違いで、70歳以上は保険料免除である。

 何よりも詐欺的なのは、現に75歳まで働き、繰り下げ受給を選んだ者は、実際には看板の「2倍の年金」を受け取ることが難しいということである。これは在職老齢年金という、高齢者が受け取る賃金の額に応じて年金給付が削減される、ちょうど生活保護制度のような仕組みがあるからだ。これが75歳までの繰り下げ受給時にも適用され、増えるのは削減された残りの年金分だけである。年金が2倍になるのは、75歳までほとんど働かない高齢者の場合であり、「高齢者就労の呼び水に」というのは誇大な宣伝と言える。

反発を恐れる政治と行政の怠慢
年金支給年齢を70歳へ引き上げよ


 なぜ、このような意味のない年金改正が、大きく宣伝されるのだろうか。それは抜本的な年金改革である年金支給開始年齢の引き上げをしないことの目くらましだからだ。日本の年金の給付水準は国際的に見て低いと言われるが、給付期間の長さは極端に長い。厚生年金(男性)の支給は2025年までに65歳に引き上げられるが、それでも平均寿命の80歳まで15年間も年金を受け取れる。

 他の先進国では、日本よりも平均寿命が短く、支給開始年齢が67-68歳のため、平均で10年間である。他の先進国並みの受給期間とするためには、世界でトップ水準の日本人の平均寿命を考慮した70歳支給の検討を速やかに始めるべきだ。

 こうした大盤振る舞いの年金は、日本人の平均寿命が傾向的に伸びているにもかかわらず、高齢者の反発を恐れて必要な調整を行わなかった政治と行政の怠慢である。支給開始年齢の引き上げは、「実質的な年金給付の削減で年金不信を生む」というのは誤解である。それは生涯に受け取れる年金総額が平均寿命の伸長で自動的に膨れ上がる効果を「中立化」する手段に過ぎない。

 他の先進国でも法定の年金支給年齢まで働き続ける人は多くなく、早期に減額された年金を受け取り、引退生活に入るのが普通である。たとえば米国の法定支給開始年齢は67歳だが、一般的な年金の受給年齢(中央値)は62歳である。年金収支の均衡を基準とした法定の支給開始年齢の下で、各自が自分の都合で引退時期を決められる、弾力的な仕組みとするべきである。

欺瞞的なマクロ経済スライド
このままでは年金制度が危ない


 厚労省は、面倒な法改正が必要な支給開始年齢の引き上げよりも、現行制度の下で自動的に働くマクロ経済スライドによる給付の抑制で十分という。しかし、これはデフレ下では発動できない。なぜなら1%以上のインフレにスライドして増える年金給付から0.9%分だけ年金給付を減らす。そうすると見かけの年金受給額は減らないから、年金不信は生じないという。これはあたかも高齢者にはインフレを調整した年金の「実質価値」という概念を理解できないかのような論理である。

 それだけではない。今年の年金検証では、「年金財政のバランスを保険料負担ではなく給付面で調整する」という現行制度の建て前を維持するなら、マクロ経済スライドの調整幅を、0.9%からさらに引き上げなければならない。そうなると高いインフレが見込めないうちは、デフレ下でも発動できるようなマクロ経済スライドへと法改正しなければならない。その場合、低年金の受給者にも一律に適用されるため、大きな政治的抵抗を受けることは必然だ。すでに過去に実施されたような超党派の議員立法で、年金引き下げ阻止が行われる可能性も少なくない。

 高齢世代の給付水準を調整する仕組みはドイツやスウエーデンでも導入されたというが、それは両国とも高齢化に対応して年金の支給開始年齢を引き上げてからのことだ。平均的な死亡リスクが高まれば、生命保険料は引き上げなければならない。これと同様に、平均寿命が伸びれば、年金保険料の引き上げか給付の削減がなければ、保険収支の均衡は維持できない。高齢で働けなくなった後に年金の実質的な価値が引き下げられるのと、働けるうちに老後の生活に備えて何歳まで働くかを決めるのと、どちらが望ましいと言えるのだろうか。

 厚労省にとって最優先の課題は、平均的なサラリーマンが70歳まで、無理のない形で働ける柔軟な労働市場の形成である。単に企業の負担で70歳までの雇用を義務付けることは、そうした恩恵を受ける正規社員と非正規社員との格差をさらに拡大させることになる。実効性がある同一労働同一賃金を普及させることで、企業が年齢にかかわらず喜んで労働者を雇えるような雇用システムの構築が必要とされる。

 日本人の長寿化というメリットを最大限に活用するための基本は、それに見合った年金の支給開始年齢の引き上げである。これを恐れて、長寿化の分まで給付を削減するマクロ経済スライドという安易な手段に頼ることこそ、日本の年金制度のぶち壊しとなる。

(参考:西沢和彦「高齢者就労と年金制度を巡る論点」

(昭和女子大学グローバルビジネス学部長・現代ビジネス研究所長 八代尚宏)










 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
1. 2019年2月06日 19:01:23 : aPd8HhulI2 : llWc5WIRbxw[76] 報告
絵に描いた 餅に導く 詐欺政府
2. 2019年2月10日 22:55:59 : srcY9WV4LU : Ep9S1LxdNyU[6] 報告
> 他の先進国では、日本よりも平均寿命が短く、支給開始年齢が67-68歳のため、

こういう場合、平均寿命ではなく、一定年齢以上の平均余命を使うべきだよなあ。

▲上へ      ★阿修羅♪ > 経世済民130掲示板 次へ  前へ

  拍手はせず、拍手一覧を見る

フォローアップ:


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法

▲上へ      ★阿修羅♪ > 経世済民130掲示板 次へ  前へ

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
 
▲上へ       
★阿修羅♪  
経世済民130掲示板  
次へ