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もし中間選挙で民主党が勝利したら、一番困るのは民主党かもしれない 敵はトランプにあらず…(現代ビジネス)
http://www.asyura2.com/18/kokusai24/msg/453.html
投稿者 赤かぶ 日時 2018 年 11 月 04 日 16:00:05: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 



もし中間選挙で民主党が勝利したら、一番困るのは民主党かもしれない 敵はトランプにあらず…
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58275
2018.11.04 渡辺 将人 北海道大学准教授 現代ビジネス


リベラルの敵はトランプにあらず

中間選挙で米民主党が勝利すると悪化するかもしれない問題とは?

その1つは「アメリカのリベラルの混迷」である。

勝利して悪化するとは矛盾に聞こえる。だが、自集団の自己主張だけを野方図に拡大する「アイデンティティ政治」からの脱却は遠のく。

民主党はこの中間選挙で大きな「メッセージ」が編めない中、終盤戦で医療保険における「既往症」問題を慌てて争点化している。

だが、アフリカ系、女性、LGBTなどの有権者の「反トランプ」が何より頼りだ。支持基盤の怒りを受け止めてあげれば彼らの票は獲得しやすい。しかし、そうした勝ち方をすればするほど、各集団は見返りを求め、公共の利益を目指す「市民の連帯」から遠ざかる。

「全体のリベラル政治」を目指したオバマも、1期目に黒人議連に「黒人対策の政策が生温い」「嘘つき」と突き上げられた。選挙中の情熱的な支持基盤ほど、当選後は潜在的な圧力集団になる。

つまり、リベラルの本質的な敵は、トランプのようでトランプではない。

この問題に斬り込んでいるコロンビア大学教授のマーク・リラの最新刊が日本でも刊行された。『リベラル再生宣言』(Once and Future Liberal: After Identity Politics)である。夏目大さんの翻訳で、慶應大学の駒村圭吾教授の解説が所収されている。

          

「リベラルの敵はトランプにあらず、リベラルの内なる壁にあり」という推薦文を日本版に寄せた理由は、従来からリベラル内部の問題がアメリカのデモクラシーの巨大なジレンマと筆者も感じていたからだ。

過度な多文化主義がもたらす分断

アメリカのリベラルが「反トランプ」以外に大きなビジョンを打ち出しにくくなっているのは、「ハイブリッド」大統領のトランプの打ち込む楔のせいだけではない。民主党自身の責任もある。

「民主党が抱える深刻なジレンマ」(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/50806)に民主党が正面から向き合ってきたとは言いがたい。トランプ勝利後、大きな共通利益を語るリベラル再生に中間選挙まで2年の猶予があった。

民主党は「反トランプ」熱に勢いを借りて、「アイデンティティ政治」に惰性で引きずりこまれている。

民主党はもともとニューディール時代までは、伝統的な熟練工を含むブルーカラー労働者層が支持基盤の軸の政党だった。しかし、1960年代の公民権運動とヴェトナム反戦運動で、文化的なリベラル化が進行し、人種マイノリティ、女性、LGBTなどを尊重する政党に変化した。これ自体は何の問題もなく、民主党が誇るべき歴史だ。

問題はその後のレーガン期だった。共和党がレーガンのもとで保守化を強める中で、個人を優先するその風潮にリベラル陣営が巻き込まれ、「アイデンティティ政治」だけが過剰に熾烈を極めるようになった。

「アイデンティティ政治」の弊害をめぐる議論自体は、アメリカでずっと行なわれてきた古いテーマで、今に始まったことではない。

アジア系やヒスパニック系など新しい移民の増大も背景に、1980年代末期から1990年代にかけて多文化主義(マルティカルチュラリズム)が勃興したことが原因だ。

白人ではなく黒人を主人公に据えた歴史教育「アフリカ中心主義」も登場し、エスニック属性の再強調や、「正統」な歴史を再構築する「規範(キャノン)」論争が勃発した。経済格差をめぐる闘争ではなく、文化的な価値をめぐる闘争で、「文化戦争」(カルチャー・ウォー)と呼ばれた。

シカゴ大学の哲学者アラン・ブルームは『アメリカン・マインドの終焉』(原書1987年)で正統の復権を強調し、ハーバード大学の政治学者サミュエル・ハンチントンは人種やエスニック属性の意義を認めながらも「国民意識」を維持する必要性を訴えた。

過度の多文化主義が、むしろ民族ごとの分断を強める逆作用の問題は、リベラル派の知識人にも語り尽くされている。アメリカではさほど新味のあるテーマではない。

先鋭化するアフリカ系

それにもかかわらずマーク・リラが今改めて危機を訴えるのは、トランプの出現と無関係ではない。リベラルがトランプの挑発に直球で応じることが、かえって「アイデンティティ政治」の先鋭化を招くからだ。



この運動が過激過ぎることに民主党は頭を抱えてきた。「大半の穏健なアフリカ系もついていけない」と民主党の議会スタッフは口々に語る。黒人票は世代によって分断されている。「親達はブラック・ライブズ・マターのことを暴徒にしてか思ってない」と語る30代、40代の黒人民主党支持者は多い。

バーニー・サンダース上院議員の集会に乱入した事件も有名だ。2015年夏のシアトル演説会では、2人の女性がいきなり壇上に上がり、「言うことを聞かないとイベントを潰す」とサンダースを脇に追いやった。「シアトルは人種差別の街だ」と叫び、ファーガソン事件への祈りを求めた。サンダースは困惑の表情で途方に暮れていた。

たしかにサンダースは人種を論じない。民主的社会主義として、どんな人にも平等に所得格差是正を目指す博愛主義者だ。それが黒人活動家はどうにも気に入らない。

オバマの「人種封印」への反動?

黒人のなかに静かな反発もある。30代の旧知の黒人研究者(政治学)は「彼らのような運動はよくない。彼らはトランプをイービル(邪悪)だと罵るが、そういう汚い言葉を使うべきではない」と述べるが、公の場で批判するのは難しいと言う。

無論、ラディカルなブラック・ナショナリズムは今に始まったことではない。1990年代にはルイス・ファラカンの「ネイション・オブ・イスラム」の運動が旋風を巻き起こした。

「ブラック・ライブズ・マター」の特徴は、白人の若者の活動家の参加者が多いことだ。ツイッターで広がったオンライン運動で、黒人問題に特化した「ウォール街を占拠せよ」分派の色彩が濃い。

2008年のオバマ勝利当時、「黒人大統領」誕生で人種問題が万事解決したかのような言説や幻想も流布された。オバマは自らの多文化的なアジア太平洋ルーツを極力封印し、「人種ニュートラル」路線に徹した。「人種の棚上げ」とも言うべき処世術を政権にも持ち込んだとすれば、人種問題は可視化を抑制されただけで、容易に再燃しても不思議はない。

現に「ブラック・ライブズ・マター」はオバマ政権末期に台頭し、トランプ政権1年目にはシャーロッツビル事件、NFL国歌斉唱問題など人種問題が頻発している。差別主義者ではなくむしろ人種差別に憤りを感じている層にも「公民権運動は支持するが、ブラック・ライブズ・マターは支持できない」という人が増えている。この状況は黒人のためにもならない。

「運動の政治」を否定できるか

マーク・リラが民主党再興のために米論壇で展開している主張には、リベラル派には耳が痛いものの、受け入れ難い論点がある。それはマイノリティの権利を優先する「運動の政治」批判だ。『リベラル再生宣言』には詳述されていない論点もあるので紹介しておきたい。

第1に、アドボカシー目的の選挙参加の否定である。マイノリティ集団の利益を増進させるためには、民主党が選挙で共和党に勝つことを優先すべきだという考えだ。

ただ、アメリカのデモクラシーの特質に、予備選挙を介した政治参与の間口の広さがある。緒戦は広く報道されることから、政治的主張の伝播を目的とした「アドボカシー」候補も多数立候補する。これが草の根デモクラシーを支えてきたのも事実だ。

第2に、現実的な「票差」の扱い方だ。これはリラがアメリカは全体としては保守的な国であると考えていることに端を発している。とりわけキリスト教保守の影響力を過小評価してはならないとリラは示唆する。

集票対象の価値の決まり方とは

「ニューヨーカー」誌のインタビューでリラはこう答えている。

「アメリカ人の4人に1人が福音派だ。アメリカ人の37%が南部に住んでいる。農村に住んでいるアフリカ系アメリカ人は17%に過ぎない」

「トランスジェンダーのアメリカ人は、アメリカ人全体の0.5%以下にしか過ぎない。民主党が熱心に動員しようとしている対象は選挙民集団としての体を成していない」

刺激的に聞こえるが、マイノリティに特化したキャンペーンが福音派キリスト教徒など保守的なアメリカ人をかえって焚き付けてしまうという懸念は一理ある。

しかし、集票対象の価値は票の量的な数では計測できない面もある。ネットワーク、資金力、政治参加の情熱に裏打ちされた政党への忠誠心(例えば公民権運動以降のアフリカ系)はその集団の数とは無関係だ。民主党の集票現場からは異論もある。

第3に、「運動の政治」との決別だ。リラは「運動の政治」(ムーブメント・ポリティクス)は人々を「政治的立場の面で過激化させ、お互いに政治的な厳しい基準を相手に押しつけ合いがちになる」と主張し、「運動の政治」自体を否定している。

1960年代以降、「運動の政治」によって社会変革を目指してきた民主党リベラル派には、存在価値そのものを否定されたように受け止められかねず、大胆な指摘である。

「アイデンティティ政治」と不可分の集票

リラの主張は、民主党の政治家やスタッフなど「現場」には理想論に過ぎないと受け止められている現実もある。それはアメリカの選挙政治が「アイデンティティ政治」と選挙上、既に不可分の関係にあるからだ。

アメリカの政党は伝統的にエスニック集団を選挙民として重視してきた。候補者とコミュニティとのリエゾン行為を「エスニック・アウトリーチ」と呼び、選挙過程のみならず議員の日常的選挙区対応においても定着している。

とりわけ民主党内ではマイノリティ層をどれだけ取り込めるかが支持基盤固めの優先課題だ。民族意識、人種意識にアピールし、各集団が政治的影響力を拡大するインセンティブを引き出す「取引」でもある。

つまり、アメリカの選挙政治は「アイデンティティ政治」と表裏一体で発展してきた。 選挙政治の周辺にいた集団を次々と選挙に参加させることを通じて, アメリカ政治の民主化を促進することに貢献したことも事実だ。

また、1970年代以降の地方政党組織の衰退、郊外化、人口動態変化のほか、政党ではなく候補者が自前で選挙運営をする「候補者中心選挙」などアメリカ特有の政治変動への適応でもあった。

しかし、対立とイデオロギー的分極化の増幅という副作用があった。

先住民DNA騒動が示すもの

民主党の政治家が安易に「アイデンティティ政治」で票を取ろうとする問題は、エリザベス・ウォーレン上院議員の「先住民DNA騒動」でも露見している。

先住民の血が入っていると主張してきたウォーレン議員に対し、トランプ大統領は「ポカホンタス」と小馬鹿にしてきた。先住民かどうか真偽も問われてきた。そこで10月半ばにウォーレンは遠い祖先に先住民がいるとしたDNA鑑定を突如公開した。

だが、先住民の「チェロキー・ネーション」からはDNA鑑定について「不適切で間違っている」と反発された。部族は独自の基準を持っており、部族の市民の名誉を傷つけるものだと先住民の指導者が声明で痛烈な批判を加えたのだ。

民主党のベテラン戦略家が「同じ実力なら女性であることは今の民主党では武器」と断言するように、民主党ではマイノリティに近いことは有利だ。候補者自身がマイノリティであれば尚更いい。ウォーレンも「マイノリティ」であることを政治的に利用できればという下心があったのは事実だろう。だが、はからずも先住民文化への理解不足を露呈してしまった。

ウォーレンは嬉々としてDNA鑑定の結果をビデオ映像で公開したが、選挙キャンペーンの「生い立ちビデオ」風だったことから、自分の大統領選挙のためかと揶揄され、中間選挙前に何をしてくれるのだと民主党内にも批判がある。

マーク・リラの「脱アイデンティティ政治」論は、マイノリティの権利の軽視と誤解され、現時点では異端的な「暴論」として左派メディアには集中砲火を浴びている。

中間選挙で仮に民主党が大勝し、それがジェンダーや人種のパワーのおかげと総括されれば、民主党の「アイデンティティ政治」依存は不可避に強まる。ウォーレンと同じように「アイデンティティ政治」を梃(てこ)に大統領の座を狙う候補も既に動きだしている。

「このままでは民主党は、サンダースの社会主義か、アイデンティティ政治か、しかなくなる。少し負けるぐらいが、党の方針を反省する気運にはちょうどいい」と小声で話すリラの同調者の民主党スタッフもいる。

リラの処方箋が米民主党内で浸透するかどうかは、長期的にはアメリカの選挙政治やデモクラシーのあり方にまで関係する大きな試金石になる。

(つづく)


 

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