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日本から見えない、仏「黄色いベスト」デモの正しい見方
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投稿者 うまき 日時 2018 年 12 月 19 日 13:52:29: ufjzQf6660gRM gqSC3IKr
 

(回答先: 韓国経済は何だかんだで日系企業に依存、切っても切れない事情 投稿者 うまき 日時 2018 年 12 月 19 日 13:51:59)

2018年12月19日 永田公彦 :Nagata Global Partners代表パートナー、パリ第9大学非常勤講師
日本から見えない、仏「黄色いベスト」デモの正しい見方
フランス全土で「黄色いジャケット」または「黄色いベスト」と呼ばれるデモが吹き荒れている
写真:ユニフォトプレス
フランス全土で燃料税引き上げへの反発から11月17日に始まったデモが今もなお続き、一部は暴徒化の様相まで呈している。「市民革命発祥の国」で起きた、日本人にはもうひとつ実感が湧きづらいこのデモの背景や意味を、Nagata Global Partners代表パートナーでパリ第9大学非常勤講師の永田公彦氏が解説する。

 フランスは、火山立国のようなものです。今回の一連のデモも、230年前から続く噴火活動の一環です。しかも、戦後に頻発した数々の大きなデモに比べ、比較的に小規模ということもあり、この1ヵ月間、社会全体も大きく混乱せず平穏を保っています。

 一方、今回の動きは、単なる階級闘争やマクロン政権叩きではなく、深い意味をもちます。これは、長年にわたる複数のプレート間にできた歪みが崩れて起きたものだからです。

 今後は、一部の市民によるデモから、多くの国民を巻き込んだ政治的議論に舞台を移してゆくでしょう。その最大の論点は、18世紀にジャン=ジャック・ルソーが民主主義の理想とした直接民主制の新バージョンも含めて、市民の力を取り戻そうとする機運が高まる可能性が大きいと筆者は見ています。

デモは社会変革の原動力
 市民による政治参加手法の1つであるデモや集会は、日本を含め、多くの民主主義国家で国民に与えられる権利であり公器です。そして、社会を変えるための原動力です。

 特にフランスでは、こうした考えが、大統領から子どもまで絶対的な価値観として共有されています。

 その背景には、歴史的な要因があります。今から230年前、それまで800年以上も続いた王政に、市民が反旗を翻し、街に繰り出し闘いました。フランス革命です。その結果、市民は、国王を処刑するとともに、自由・平等・博愛・人権・国民主権を勝ちとりました。それ以降、この国では、歴史の要所要所で、市民の声の大きなうねりが社会の変革に影響を与えてきたのです。

 また文化的な要因もあります。「カフェのカウンターは、庶民の国会」とバルザックの言葉が象徴するカフェ文化です。これは、国民誰もが、社会的立場(職業、階層、親子、人種…)を越えて、街角、レストラン、家庭などで政治を語る、そして主張を交わすことで社会が進化するという文化的価値観です。

 こうした歴史と文化が根づくフランスの人々は、デモへの参加に罪悪感をもちません。また、社会のルールに従い公的秩序を守る限りにおいて、デモ参加者を、特別視したり、蔑視したりすることはありません。逆に多くの場合、デモ行動そのものに寛容で理解を示します。

デモは日常茶飯事
 こうした歴史と文化から、フランスでは特定の主義主張をもつ人々がデモや集会をする光景は、年がら年中、また全国津々浦々で見られます。参加者は、大統領を含め政治家、警察、弁護士、農民、LGBT、医者、パイロット、バス運転手、鉄道員、教員、中高生、大学生などの社会的立場、階層、職業、年齢もさまざまな人々です。

 また、その目的もさまざまです。政府の政策や政治手続き等に対する反政府系デモ、社会的脅威に対し、問題提起や反発をする反社会系デモ(反テロ、反差別、反パワハラ等)、ある思想や価値観への理解や賛同を促す宣伝系デモ(LGBT、パックス〈同性または異性の成人2名の共同生活のための契約〉、喫煙権等)、特定の喜びや悲しみを共有しようとする共感型デモ(サッカーワールドカップ優勝、国民的英雄の死など)などです。

 これに加え、趣旨の異なる複数のデモが、同時期に並行してあることも見慣れた光景です。今回も、黄色のベストとは別に、高校生による教育改革反対デモ、市民による気象変動対策推進のためのデモ等が同時に行われています。

国民の98%が普段と変わらぬ生活
 日本では、今回の黄色いベスト運動により、フランスは大変なことになっていると感じる人も多いと思います。メディア映えする暴動シーンをはじめ、現場の状況や政府の対応を断片的に伝える報道が多いので、無理もありません。

 しかし、実態は大きく異なります。さまざまな情報を組み合わせて推定できる範囲ですが、国民の98%は、特に変わらぬ日常生活を送っていると思われます。残りの2%(110万人程度)は、デモ参加者、デモの影響で、一時閉鎖や事業悪化を招いた商業施設、飲食店、宿泊施設等の経営者と時短や勤務場所の変更を余儀なくされた従業員等です。

 また、社会全体も平穏で人々も冷静です。その理由は、前述したデモ慣れということ以外に、次の4つの理由があげられます。

 1つ目は、デモの時間と場所が限定的だからです。デモが集中するのは、11月17日から12月15日までの土曜日(5回)。場所も、警察が許可する一部の地域です(パリ及び一部地方都市の中心部と近郊)。

 2つ目には、交通マヒも限定的です。今回のデモには、交通機関のストライキが加わっていないため、ごく一部の地域で、多少の交通渋滞がある程度といわれます。

 3つ目は、デモに潜伏し活動する暴徒(破壊屋、非行集団)に対する社会的な監視と制裁です。毎週土曜日のデモも回を重ねるごとに警察の取り締まりも強化されています。また、デモ参加者も含め国民全体が、彼らの行動への批判と抗議を強めています。

 最後に、次に示すように、今回のデモが、比較的小さいものにとどまっているからです。

わりと小さい今回のデモ
 政治に対して国民が街頭で気軽に声をあげる国の政府は、楽ではありません。18世紀から歴代の政権は、さまざまなデモを通じ国民の怒りを受けてきました。こうしたデモの中には大規模なものも多くあります。次の図1は、先の大戦後に起きた参加者100万人以上の大規模デモの一覧です。


 これを見ると、2つのことがわかります。1つは、大規模な反政府デモは、現マクロン政権以前の各大統領時代にも、繰り返し起きている。2つ目は、今回の黄色いベスト関連デモ参加者は、約78万人です(11月17日〜12月15日の土曜日計)。このように、経済的な打撃は比較的大きいとされるものの、参加人数と社会生活への影響面では、わりと小粒ということです。

劣等生と優等生が逆転して10年が経過
 下の図2にあるとおり、ドイツ(黄線)は、95年から05年まで経済成長率でフランス(青線)の後塵を拝しました。低成長に加え、高失業率、経常収支赤字のトリプルパンチを受け、欧州の劣等生又は病人とまで言われていました。しかし、2003年、大胆な構造改革を断行しました(シュレーダー改革――労働市場の柔軟化、産業の新陳代謝を高め、法人税等の軽減などを通じ、企業が高い収益をあげられる環境を整え、雇用の増加を目指す)。これが主な要因となり、経済が浮揚し、劣等生から優等生となりました。

 一方、これとは逆にフランスは、88年に4.73%あった実質経済成長率が、その後下降し続け、93年には遂にマイナス成長になります。こうした背景の下、95年に年金等の社会保障費改革を皮切りに、歴代の政権が、経済浮揚とその財源確保のために国民にとって痛みとなる改革を繰り返します。

 しかし、その度に大規模なデモが発生し、政府側も改革案の撤回や変更を余儀なくされてきました(図1)。これが浮上のためのブレーキ要因となり、この10年、経済や財政面でドイツに離され続けています。そこで、リテラシーの高い人々を中心に多くの国民が、改革は待ったなしと認識するなか、抜本的な改革の必要性を訴え誕生したのがマクロン政権です。しかし今回も、黄色いベストという、小規模ながらも新しいタイプの市民運動の圧力に対し、同政権も改革案の一部譲歩を余儀なくされました。


黄色いベスト参加者の正体
 黄色いベストを着て今回の一連のデモに参加する人は、全有権者の2%未満と限定的です。

 ただし、デモには参加していないが、「黄色いベストへの所属意識を持つ人」の数は、全国で1000万人いるとの推定データもあります(ELABEによる緊急調査より)。これは、全有権者の20%にあたり、潜在的なデモ参加者数とも捉えられます。

 複数の専門家によると、暴徒は別として、デモに参加する人の多くは、貧困層(生活保護対象者や完全失業者など)よりも収入が高い低所得者層とみられています。最低賃金かそれより少し高い給与を得て、人により公的手当も受けるが、毎月の家計が苦しいという人々です。その多くは地方に住む白人系国民で、低学歴層の人たちといわれます。

 また先週末には、この黄色いベスト集団に新しい動きが見られました。それまでのデモは、リーダー(代表者)不在で組織化されていない個人の集合体でした。ところが、ここにきてフェイスブック等のSNSを通じ、大きく2つの組織が立ち上がりました。「黄色いベストの自由」と「フランスの怒り」です。

運動は新たな局面に発展
 黄色いベスト運動参加者の組織化は、フランス社会にとって4つの大きな意味があります。

 1つは、政府と参加者との直接対話の実現です。政府は、今回の一連のデモに対し、通達や交渉の窓口がありませんでした。今回の組織化により、話し合い相手(代表者)が特定でき効率的な対応ができるようになりました。

 2つ目は、デモから個別のテーブル交渉に話し合いの舞台を移せることです。これで、デモの鎮静化と同時に、秩序立った対応ができるようになります(現に、先週土曜日のパリ市内でのデモ参加者数は、それまでの4回のデモに比べて激減。その大きな理由の1つが、「黄色いベストの自由」が、パリ市内でのデモ参加を控えるように、全国の傘下メンバーに呼びかけたからといわれる)。

 3つ目は、2年前にマクロン自ら立ち上げた政党「共和国前進」が掲げた「既存の政党政治ではなく市民の力で国を変えよう」という理念と、今回できた2つの黄色いベスト運動組織の理念が一致していることです。現にマクロン氏も、彼らとのオープンな直接対話を提案しています。こうした機会を通じ、彼らを自陣営に取り込み、迫りくる極右や急進左派のポピュリズム政党への対抗軸を固める利点もあると思われます。

 代表民主制(国民が国会を通し間接的に政治参加)はもとより、直接民主制(国民が直接的に政治参加)のあるべき姿を、国民の間で広く議論できる環境が整ったことです。議論は、18世紀のジャン=ジャック・ルソーを皮切りに、これまで国内で、政治家や知識人の間で議論されてきたものに囚われるものではない。また、2015年に部分的に導入された制度や古くからスイス等が導入する制度に囚われない。そして、前述の黄色いジャケット市民団体「フランスの怒り」が提案するような、ネット技術も使い、新しい発想で議論しようというものです。

 このように、今回の黄色いベスト運動は、一連のデモをきっかけに、市民の手による将来の新しい政治と社会の体制づくりに向けたステージに移りつつあります。こうしたプロセスや議論の内容・結果は、EUや世界にも影響を及ぼす可能性もあり、今後の動きが注目されます。
https://diamond.jp/articles/-/188745  

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