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英EU離脱の「グダグダ劇」を日本が笑えない理由
http://www.asyura2.com/18/reki3/msg/626.html
投稿者 中川隆 日時 2019 年 9 月 17 日 09:01:32: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

(回答先: 大英帝国復活へ 投稿者 中川隆 日時 2019 年 9 月 10 日 01:30:50)

英EU離脱の「グダグダ劇」を日本が笑えない理由
中野剛志 2019.9.13
https://diamond.jp/articles/-/214650?display=b

9月9日、欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)に関してEUと合意できなかった場合に、EUに対して離脱の延期を要請するよう英政府に義務付ける法案が成立しました。ボリス・ジョンソン英首相は、10月末の期限までにEUとの合意がなくとも離脱を強行することを公約してきましたが、この法案の成立により、公約の実現はいっそう難しくなったと考えられます。(評論家 中野剛志)

議会制民主主義の模範国は
なぜ機能不全に落ったのか

 英国の議会は、近代の歴史において、議会制民主政治の模範とされてきました。その英国の議会が、2016年の国民投票によってEU離脱が決まってからというもの、ほとんど機能不全と言いたくなるような混迷に陥っているのです。
 
 このEU離脱を巡る英国の政治の混迷は、実は、我々日本人にとっても決して他人事ではない、ある歴史的に重大な問題を提起していると私は思います。それは、「民主主義が破壊される」という問題です。どうして、民主主義が破壊されるのでしょうか。大衆煽動的なポピュリスト政治によってでしょうか。違います。民主主義を破壊するもの、それは、グローバル化なのです。

 このことを理解する上では、米ハーバード大学のダニ・ロドリック教授の議論が参考になります。ロドリック教授はグローバル化、国民国家、民主主義の三つは「トリレンマ」の状態にあると論じました。「トリレンマ」とは、三つの選択肢のすべてがいっぺんに成立しない状態のことを言います。つまり、グローバル化、国民国家、民主主義の三つを同時に実現できないというのです。したがって私たちは、次の三つのうちのどれかを選ぶしかありません。


民主主義とグローバル化
どちらを制限するのか

 (1)もし国民国家を維持したまま、グローバル化を徹底するために各国の制度上の違いや参入障壁をなくすのであるならば、各国の民主主義による制度の自己決定権は制限されなければならない。

 (2)もし国民国家を維持したまま、各国の民主主義を守ろうとしたら、グローバル化は制限されなければならない。

 (3)もしグローバル化を徹底し、かつ民主主義を維持するというのならば、国民国家という枠組みを放棄し、グローバルな民主主義を実現しなければならない。

 この3つのうち、(3)の「グローバルな民主主義」というのは、とうてい実現しそうにありません。だとすると、現実的には、民主主義の制限=(1)か、グローバル化の制限=(2)のいずれかひとつです。

 日本では、「グローバル化」を歓迎すべきものと考える人は少なくありません。その一方で、「民主主義」を否定する人もほとんどいない。しかし、グローバル化と民主主義とは、実は、両立しないのです。

 さて、EUを「ヨーロッパレベルのグローバル化」と考えると、EUと民主主義とは、両立しないということになります。英国のEU離脱を例に、具体的に説明しましょう。

EUは民主的な
制度ではないという事実

 まず、理解しておかなければならないことは、「EUは民主的な制度ではない」ということです。EUの意思決定は、各国の有権者による選挙の洗礼を受けていない欧州委員会や加盟国の指導者たちによってなされます。そのような民主的正統性に乏しいEUの決定に、EU加盟国は従わなければなりません。それは、非民主的なEUによって、加盟国の民主的な意思決定が制約され、その国の国民主権が制限されるということを意味します。

 実際、ある世論調査によれば、16年のEU離脱を巡る国民投票の際、離脱派が離脱の理由として挙げたのは、第1位が「英国に関する決定は英国内で行うべきという原則」、第2位が「移民と国境の管理」でした。


トップの理由となった「英国に関する決定は英国内で行うべきという原則」とは、国民主権の原則にほかなりません。そして2番目の理由である「移民と国境の管理」についても、同様です。

 英国では、08年から5年間で実質賃金が8%も低下していました。他方で、低賃金労働者が移民として流入し続けており、その純増数は15年には33万人を超えるに至っていました。この移民の流入が実質賃金を押し下げる圧力になっていたことは、否定しがたいでしょう。

 しかし英国はEUに加盟している限り、移民を制限したくてもできません。英国の国民は、EU加盟によって移民と国境の管理に関する主権を失っており、賃金の低下を止めることができないのです。

 したがって、EUから離脱するということは、英国の国民主権を回復するということを意味していました。しかも、そのEU離脱という民主主義の回復を、国民投票という最も直接的な民主主義的手段によって決めたのです。ところが、恐ろしいことに、国民投票という、言わば究極の民主主義によって決まったはずのEU離脱が、いまだに実現できていないのです。

ジョンソン首相は断固として
民主的に振る舞っている

 そもそも、離脱にはEUとの合意を必要とするという時点で、すでに英国の民主主義はEUに制約されています。したがって、ジョンソン首相が「合意なき離脱も辞さない」と主張しているのは、「英国国民の決定は、EUの制限を受けない」という断固とした民主主義の表明と理解すべきでしょう。

 ところが、その「合意なき離脱」を、英国議会は容認できませんでした。その理由は、言うまでもなく、「合意なき離脱」が政治的・経済的な混乱を引き起こすことが予想されるからです。例えば英国の企業は、すでにEUのルールに従って、工場や支店を立地したり、貿易や投資を行ったりしています。それが突然、「合意なき離脱」によってルールが変更される、あるいはルールが不明確になるような事態になれば、そのための調整に要するコストは莫大なものとなります。「合意なき離脱」が英国の議会で拒否されたのは、そのためです。

 つまり、「合意なき離脱」に伴って生じる調整コストの大きさが、その実現の妨げになっているというわけです。これが意味することは、いったんEUに加盟すると、その国家はEUの制度や利害関係に依存するようになってしまうので、事実上、離脱できなくなってしまうということです。EU加盟によって、英国国民は、自国に関することを自分たちで決める権利を失ってしまった。現在の英国のEU離脱を巡る混迷の本質は、この点にあります。

日本もいずれ英国のように
自国で決められなくなる?

 同じことは、EU加盟だけでなく、グローバル化一般についてもいえます。これまで日本は、グローバル化を疑うことなく、進めてきました。ということは、いずれ日本も現在の英国のように、自国に関することを国民が民主的に決められなくなる事態に陥ることでしょう。

 例えば日本は昨年、出入国管理法を改正し、本格的な移民の受け入れへと舵を切りました。今後は英国同様、外国人労働者の流入による弊害が大きくなり、流入を制限せざるを得なくなる時が来るかもれません。しかしその頃には、日本企業は外国人労働者なしではやっていけなくなっているでしょう。また、大量に流入してしまった外国人労働者を管理・制限するための行政コストも小さくないでしょう。あるいは、国際世論による批判を惹起するというリスクも考えられます。

 その結果、外国人労働者の流入を制限したり、移民の受け入れ以前の状態へと戻したりすることは、事実上、不可能になってしまうでしょう。このようにして、グローバル化は、国民が祖国の未来を自分たちが望むような姿にする権利(国民主権)を奪い去るのです。

 グローバル化は民主主義を破壊する。民主主義の破壊を阻止しようとする民主主義もまた、グローバル化が破壊する。この取り返しのつかない恐ろしい事態を象徴的に示しているのが、現在の英国政治の混迷なのではないでしょうか。


 

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