安倍晋三首相が文在寅（ムンジェイン）韓国大統領の年頭記者会見に反発し、平昌（ピョンチャン）冬季五輪の開会式（２月９日）を欠席するのでは？−−という観測が一時、流れた。

　だが、衆院代表質問初日の２４日、首相は開会式出席の意向を明らかにした。決断の経緯について永田町と霞が関で聞いた。

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　外務省高官の感想。

　「総理のご心境はわかりませんが、行かないという選択肢は終始なかったと私は思っています。行かないとなれば、世界は『やっぱり慰安婦問題がネックなんだ』『まだ終わってないんだ』と見る。終わったはずの問題を再び『問題化』してしまう。総理はそこを意識されたと思う」

　「産経（新聞）が、首相はネガティブ（欠席）って書いたでしょ。あれで（首相は後ろ向きだという）イメージができちゃったんじゃないですかね」

　産経が１面トップで「首相、欠席へ」と報じたのは１１日。前日、文大統領が記者会見で、慰安婦問題の日韓両政府合意は「受け入れ困難」と述べた。

　産経は２４日、首相単独会見を特報、「首相出席」と修正した。だが、安倍政権と親密な産経の揺れは、首相自身の揺れ−−という見方が広がった。

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　官邸の高官の感想。

　「総理とのやりとりの中で『行かない』という話は聞いたことがない。そういう判断は初めからなかったと思いますよ。隣の国なんだし、日本には在日（韓国人）の方もたくさんおられる。ウチ（日本）も（２０２０年、夏季）オリンピック。『行かない』なんて言ったら、子供のアレ（ケンカ）ですからね」

　「ただ、行く時期については、パラリンピック（の開会式＝３月９日）に行ったらどうだ、と言ってきた人はいた。だけど国会（参院予算委が予想される）がありますからね」

　日韓合意を尊重しない韓国大統領発言に「納得できない」日本人が７８％（毎日新聞２２日朝刊）。

　だが、同じタイミングで首相の開会式出席の是非を聞くと、朝日新聞で「出席した方がよい」の５３％に対し、「そうは思わない」が３０％。産経・ＦＮＮ調査でも「出席すべきだ」４９・５％に対し、「出席する必要はない」が４３・１％。

　首相は行くなという世論は、圧倒的でないどころか少数派である。

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　米国はペンス副大統領が平昌へ赴く。だから首相も追随−−という解説があった。正しいか。外務省高官が苦笑して言う。

　「ハイレベル（の日米事務協議）で、通常案件と同じ会話の流れで（米国側から）『こうした方がいいのでは？』という示唆はありましたよ。でも、だから従ったわけじゃない」

　１９８０年、大平正芳首相はカーター米大統領の求めに応じ、モスクワ五輪不参加を約束。対米追随、スポーツへの政治介入と批判を浴びたが、当時は冷戦のピーク。日米関係の質が今とは格段に違う。

　１４年２月、安倍首相はソチ五輪開会式に出席した。米欧首脳が、ロシア国内の人権問題などを理由として欠席したのに。

　この対応の評価は複雑だが、対米協調の陰で対米自立も進んでいる。

　「韓国疲れ」は日本の現実だが、日本人は韓国に仕返ししようなどとは考えない。日本は、外交上の不満を五輪に絡め、首相があてつけに開会式を欠席するような国ではない。

https://mainichi.jp/articles/20180129/ddm/002/070/111000c