政治と官僚の在り方が問われた佐川氏の証人喚問。かつて霞が関に勤務したＯＢたちの目にはどう映ったのか。

国民や部下守らぬ姿勢　有川博・日本大教授（元会計検査院局長）

　政権と財務省を守り、国民や部下を守らない姿勢が貫かれており、疑惑は深まった。理財局長就任前の国有地貸し付け・売却の特例について首相夫妻や官邸の関与を否定した根拠も不明だし、改ざんに関して首相夫妻らの関与がなかったことだけ明言したのも矛盾だ。

　公文書では貸し付けや売却についての部分で改ざんが行われ、会計検査院もだまされた。偽の書類で検査を受けるのは検査妨害だ。「交渉記録を廃棄した」という過去の国会答弁はルールについて言っただけ、という説明も理屈になっていない。信頼回復にはほど遠い証言だった。

公務員魂まったく見られず　寺脇研・京都造形芸術大教授（元文部科学省大臣官房審議官）

　公務員の信用失墜行為に対する説明を期待したが、公務員魂がまったく見られなかった。自殺した近畿財務局職員への思いを尋ねられた返答に注目したが、刑事訴追と無関係なのに、言葉が出てこなかった。「上」ばかりを見てきた証拠だろう。

　喚問で佐川氏は、（首相官邸の指示や関与を否定させる趣旨の）自民党議員の質問を受けるうちに「政権を守る役割」を理解し、証言していたように見えた。誰が何のために改ざんを行ったのか、まったく明らかにならなかった。今後、さらに関係者の国会招致を進めるべきだ。

証人喚問より党首討論を　竹中治堅・政策研究大学院大教授（元旧大蔵省官僚）

　旧大蔵省は「省庁の中の省庁」とも称され、日本は官僚主導の政治といわれた。だが、選挙制度改革、省庁再編、公務員制度改革を通して政治の仕組みが変わり、首相の権限は確実に強くなった。忖度（そんたく）という言葉が流行したのは、権力構造が変わったという認識が世間に定着したからではないか。政治構造が変化した以上、その分だけ国民に対する政府の説明責任も重くなる。佐川氏は証人喚問で慎重な姿勢を崩さなかったので財務省の調査報告に期待したい。一方で、「決裁文書書き換え問題に関与していない」としている首相自身が党首討論をするなどして、徹底的に国民に説明していくことが必要ではないか。

https://mainichi.jp/articles/20180328/ddm/041/040/112000c

安倍政権に不利な証言をすべて差し控えた佐川証言は、さらに疑惑を招いたと思う。