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無意味な消費増税対策や“粉飾計画”でなくまともに「財政危機」に向き合え  金子 勝教授(ダイヤモンド・オンライン)
http://www.asyura2.com/18/senkyo254/msg/554.html
投稿者 赤かぶ 日時 2018 年 12 月 05 日 14:45:05: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

無意味な消費増税対策や“粉飾計画”でなくまともに「財政危機」に向き合え
https://diamond.jp/articles/-/187342
2018.12.5 金子 勝:立教大学大学院特任教授・慶應義塾大学名誉教授 ダイヤモンド・オンライン


Photo:PIXTA


 19年10月の消費増税の際に景気の落ち込みを防ぐ目的で、来年度の当初予算からという異例の対策が検討されている。

 予算編成作業は増税対策作りがまるですべてのようになり、肝心の財政再建は脇に置かれてしまっている。「今度、消費税率引き上げに失敗すれば、二度と消費増税はできない」ということからなのだろうか。

 だが、ポイント還元やプレミアム商品券配布で景気を維持しようとしたところで無意味だ。そもそも安倍政権のもとで改定された財政健全化計画自体が、大幅に“かさ上げ”された成長率や物価見通しのもとで作られているからだ。

財政健全化計画の「嘘」
かさ上げされた成長率や物価


 国の借金は2017年度で1087兆円に達する。だが国の財政再建シナリオは実現可能性があるとはいえないものになっている。

 内閣府が「新財政健全化計画」策定に伴い今年7月に出した「中長期の経済財政に関する試算」では、プライマリーバランスの達成時期が従来の2025年から2027年に引き延ばされた。

 しかもそれだけでなく、試算はあちこちで“粉飾”が施された代物だ。

「試算」の数値とグラフは以下を参照していただきたい。
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2018/0709/shiryo_01.pdf

 もともとこの手のシミュレーションは恣意的ではある。経済成長率(GDP成長率)を高く設定し、金利を相対的に低く設定すれば、財政は健全化するようにできる。

 だが安倍政権で改定された計画はかなりひどい。

 健全化計画の前提になっている成長率や物価、金利などの見通しを詳しく見ると、名目経済成長率が来年2019年度に1.7%から2.8%に跳ね上がる一方で、名目長期金利はほぼ0%で推移し、21年度にようやく0.3%になる。

 消費者物価上昇率も2018年が1.1%で、19年度には1.5%、20年度には1.8%になる。21年度には1.9%と、政府が「2%物価目標」で掲げる水準にほぼなり、「デフレ脱却」が達成される。

 それを踏まえ、実質経済成長率は、1.5%前後から21年まで2%に上がっていって、そのままで推移する。

 これは、20年の東京オリンピックの後も現在の異常な金融緩和政策が続く中で、景気が上昇するというシナリオだ。だが、こんな楽観的なシナリオが成り立つだろうか。

 異次元緩和を柱にしたアベノミクスが5年半も続けられてきたが、それでも2%の物価上昇すらも実現できていない。それが、これから先の2〜3年で経済が「正常化」するとはとても思えない。

 試算が発表された翌月に明らかにされた今年4―6月期の実質GDPの速報値は前期比年率でマイナス1.6%となった。3期ぶりのマイナス成長である。米中貿易戦争の影響で対中国輸出が減少し、災害などもあって個人消費が落ち込んだからだ。

 消費者物価上昇率についても、同時期に日銀が発表した展望レポートでは、19年の見通しは0.9%に引き下げられた。試算の1.5%を0.6%ポイントも下回る。

安倍政権の任期後に
急速に正常化が進む?


 奇妙なのは、アベノミクスの成果を政府がこれだけ強調していながら、安倍政権の任期が過ぎる2021年から急に日本経済が正常化して動くというシナリオになっていることだ。

 名目成長率が来年2021年度の3%から23年度には3.5%に跳ね上がっていき、名目長期金利は21年の0.3%から27年度の3.5%まで急速に上がっていく。

 エコノミストや民間のシンクタンクの多くが、少なくとも東京オリンピック後に景気が落ち込むと予想しているのに、しかも、どんどん産業競争力が低下していく中で、どうして名目経済成長率3.5%を達成できるのだろうか。

 とにかく政権在任中は、この健全化計画で財政再建が達成できるかのように帳尻を合わせておくといった感じだ。

 どう見ても、5年半の失敗が急速に取り戻されるとは考えにくい。真実味が著しく欠けているのだ。

 むしろ、成長率や物価上昇が思うように伸びないまま、日銀が国債などを購入し続けて、財政赤字のファイナンスを続けていくことになると考えるのが自然だろう。27年度の財政健全化目標を実現するのは難しいと予想される。

消費増税対策は無意味
数字のつじつま合わせ


 こうした非現実的な財政健全化計画を見直そうともせず、政府や自民党が奔走しているのが、消費増税対策作りだ。

 安倍首相は、これまで、2度の消費税引き上げを先延ばしした。そのポピュリスト的体質から考えて、来夏の参議院選挙前に、また延期を言い出す可能性はなくはないが、今のところ、来年10月に予定されている消費税の8%から10%への増税を実施すると言っている。

 この消費税の増税によって、5.6兆円の増収が見込まれている。そのうち半分は財政赤字の削減(国債発行の抑制)のために、1.7兆円が幼児教育や保育士増員などの少子化対策に、1.1兆円が低所得者の高齢者支援など社会保障費に充てられる予定だ。

 しかし、増税の影響で消費が減退しGDP成長率の数字が落ち込むと、財政健全化目標が達成されないことになるので、当面、計画の数字の信憑性が完全に失われるのを防ぐために、あれこれ対策を検討しているわけだ。

 その1つが、クレジットカードなどを使ったキャッシュレス決済をすれば、増税2%分を超えて5%もポイントで還元する制度(つまり3%消費税減税)を、2020年の東京オリンピックまで導入することだ。

 だがこれだと、カードを持たない人はポイント還元が利用できないことになり、今度は公明党が抜け穴をカバーするために低所得者向けプレミアム付き商品券の発行を提案している。

 一方、自民党の税制調査会(宮沢洋一会長)は住宅ローン減税の拡充や自動車取得にかかる税負担の軽減措置などの検討を始めた。大型の設備投資を行った医療機関の消費税負担の軽減という声も出ていて、まるで「消費増税対策」を名目にしたばらまきオンパレードの様相だ。

 だが本当に効果があるのか、これが恒久化しないか、きちんとした検証が必要である。

 GDP成長率の数字のつじつま合わせのために、消費税の使い道を変えたり、他の税で減税をしたりというのでは、本末転倒である。何より効果が怪しい。

 2014年の消費税率5%から8%への引き上げの際にも、経済成長を損なわないためとして法人税減税が実施された。

 2014年には復興特別法人税の前倒し廃止、15年は法人税率を25.5%から23.9%へ引き下げ、16年は23.4%へ引き下げ、18年は23.2%へと引き下げられている。だが効果は疑わしいものだった。

 この法人税減税に合わせて、租税特別措置や繰越欠損金の見直しや外形標準課税の強化といった課税ベースの拡大も実施されたから、税率引き下げだけで効果を判断するわけにはいかないが、それでも法人税全体では減収になった。

 2018年10月18日に行われた野党5党による合同ヒアリングでの財務省担当者の説明によれば、安倍政権になってから法人税減税による減収は5.2兆円になるという。

 だが結果はどうだったか。結局、この間、企業は内部留保を大幅に積み上げ、企業同士が受け取る配当収入を増やしただけだ。しかも、外国企業が日本への投資を増やす効果があったかどうかも疑問が残る。

成長の果実で
社会保障をまかなえるのか


 悪循環が生じている。

 政府まず社会保障財源が足りないから消費税増税が必要だという。ところが、消費税増税は消費を落ち込ませ景気を悪化させるからという理由で、さまざまな減税措置を導入する。

 こうしていつの間にか、成長で税収を増やして成長の果実で社会保障をまかなうという論理にすり替わってしまう。

 ところが、思ったほどに経済が成長せず、減収効果が効いて税収不足になる。そして、国民に社会保障や福祉の実感が届かないまま、また社会保障の財源不足が強調されるという具合である。
 
 今回の消費税増税で、もうひとつの焦点になっているのは、食料品などの税率を8%に据え置く軽減税率が導入される点である。これに伴う1兆円程度の減収分の財源は一部しか確保されていないまま実施が予定されている。

 また家計消費の低迷とともに、消費税増税の増収効果が落ちている可能性があり、結局、見込み通り5.6兆円の税収が確保できるかどうかも疑わしい。

 そうした状況下で、軽減税率が本当に必要な政策かどうかはきちんと考えておかねばならない。

軽減税率で
逆進性緩和の効果は疑問


 現在、軽減税率に関しては、外食やケータリングと食料品との区別、包装紙や容器はどうするか、食品と物品がセットになっている商品はどう扱うか、など扱いの不公平や手続きの煩雑さが問題になっている。

 だが、問題の本質はこうした実務上のことではない。食料品や生活必需品に軽減税率を設ける理由は、所得の低い者ほど負担が重いという「逆進性」への対処である。

 だが、そもそも軽減税率を導入すれば、逆進性が緩和されるのかどうか、その効果自体は疑わしい。

 実際、2010〜11年にかけて、イギリスの有名な財政研究所(Institute of Fiscal studies)が発表した「マーリーズ・レビュー(Mirrlees Review)」では、食品や子ども服に関する付加価値税の軽減税率やゼロ税率は鈍い効果しかなく、廃止すべきだと提言した。

※Mirrlees ReviewはDimensions of Tax Design(2010)とTax by Design(2011)からなる。

 理由は2つ。1つは、ずっと低所得の人もいるが、若いときに低所得でも年齢が上がると所得が高くなる人もいる。生涯所得で見れば、ずっと逆進性が働く時期が続くとは限らず、所得再分配効果は低くなるという点だ。

 もう1つの理由は、高所得の人は高い食費を支払っており、高所得者ほど軽減税率やゼロ税率の効果が及ぶことである。

 それゆえ、「マーリーズレビュー」は軽減税率やゼロ税率を廃止し、その税収増加分で、失業手当や税額控除、あるいは低所得層への所得支援や住宅手当を行った方が、所得再分配効果が上がるとしている。

 この結論を活かすとすれば、効果が鈍い軽減税率やゼロ税率の導入は見送り、この分も含めて、消費増税の増収分は全額を社会保障や福祉に回すべきである。

 それがもともと、今回の消費増税を当時の民主、自民、公明が約束した「3党合意」の趣旨だったはずだ。

 ちなみに、一部の論者から、金融緩和をさらに行い、「貨幣発行益」で社会保障をまかなうというポピュリスト(大衆迎合)的な主張が語られているが、これもまともなやり方とは思えない。

 今の異次元緩和策で、日銀が国債を購入することで金融機関に大量の資金を供給しているが、この量的金融緩和(つまり財政赤字)によって、社会保障費をまかなうことで、低所得の人たちを支えようという。

 だが、これは格差をかえって拡大する。金融緩和を続ければ、株や不動産のバブルを作り出し、一部の富裕層と外国人投資家を潤すだけだからだ。

 今の格差拡大は、一様に生じているのではない。中位の所得層の割合が継続的に低下しながら、ごく一部の富裕層の富の増大が突出する形になっている。

 調査会社「ウエルスX」の報告書によれば、2017年で3000万ドル(約33億円)以上の資産を保有する「超富裕層」が多く住んでいる都市では、香港、ニューヨークについで東京が3位になっている。

 こうした状況で、「貨幣発行益」のような持続可能性のない「財源」で社会保障をまかなっても、決して人々の将来不安はなくならない。国民を愚弄するような主張は慎まなければならない。

 少子高齢化時代に社会保障の拡充のために今回の消費税増税が避けられないというなら、増収分の全額を社会保障や社会福祉へ充当し、納税者に負担増の恩恵が及ぶようにすべきである。

 消費税の逆進性を緩和するということでも、それが筋である。

財政再建は
税体系や歳出の抜本見直しで


 その一方で、財政赤字の削減を目指すためには、税体系全体の見直しか、歳出の見直しが必要だ。

 いくつかすぐにできる改革がある。まず、より簡素で中立的な法人税への見直しが必要だ。

 これだけ内部留保が積み上がる状況の下では、今なお60兆円もある繰越欠損金の優遇措置をさらに見直し、また企業が受け取る配当が法人税率より低い源泉分離20%の所得課税が適用されている配当益金不算入や依然として大きい租税特別措置の見直しなどを行うべきだろう。

 また格差の是正を考慮するなら、金融所得への分離課税や軽減措置を見直すべきである。高所得者への最高税率の付加税率も検討に値するだろう。

本当の財政危機とは何なのか
産業衰退と貿易黒字の減少


 もちろん、経済成長率が上がらない状況が続けば、財政再建はますます遠のくというのはその通りだ。その意味で本当に問題なのは実は産業の衰退だ。

 事実上の財政ファイナンス政策になっていて、金融緩和をやめるにやめられないまま長く続けてきた間に、産業衰退が一層進んでいる。

 本来なら淘汰されるゾンビ企業が残り、また産業の新陳代謝が進まない。時代遅れの原発再稼働に突き進み、リニア新幹線や東京オリンピックの建設ブームに頼っていては、東京オリンピック後には経済成長率が落ち込むのは避けられない。

 産業競争力が低下することで最も問題が深刻なのは貿易黒字の縮小である。

 図を見てみよう。リーマンショックで円高に振れて貿易収支が赤字になった後、為替レートが元に戻ったが、貿易黒字はかつての半分以下にとどまっている。

◆図表:貿易収支と為替レート



 しかも、貿易黒字の約7割は自動車が稼ぐ「一本打法」の競争力だ。かつて高い世界シェアを誇っていたスーパーコンピューター、半導体、太陽光電池、液晶製品、携帯音楽プレーヤー、カーナビなど見る影もない。

 このことは、「アベノミクスがあと3年続けば日本の産業衰退が一気に露呈する」(『ダイヤモンド・オンライン』2018年9月18日)に書いた。

 日本の産業衰退は1986年の日米半導体協定以降に始まったが、今やなけなしの自動車でさえ、年明けから始まる実質上の日米FTA交渉で、為替条項で円安誘導を抑えられ、関税か米国生産への切り替えなどで、輸出を抑えられる可能性が出てきている。

 さらに世界で起きている電気自動車(EV)転換や化石燃料輸入を大幅に減らすエネルギー転換に立ち遅れれば、2020年代半ば以降に貿易黒字が消えていく危険性がある。

 高齢化で国内の貯蓄も減るので、国内での国債が消化できなくなる。その時に、日本は本当の「財政危機」に直面する。

 現在、外国人投資家が持つ国債の割合は1割を超えてきている。これが2割、3割となった状況で、国債格付けを下げられたら、日本国債の投げ売りが起き、収拾がつかない財政危機に陥れられてしまう。

 1990年代初めはAAAだった格付けは下がり続け、今はシングルAでとどまっているが、それがBに移行していけば、財政危機は現実化していく。

 粉飾の財政健全化計画で糊塗して、消費増税対策に狂奔している余裕はない。2027年を念頭に財政健全化を考えるなら、この最悪のリスクを真剣に考えなければならない時期に来ている。

(立教大学大学院特任教授・慶應義塾大学名誉教授 金子 勝)










































 

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コメント
1. 中川隆[-13717] koaQ7Jey 2018年12月05日 14:54:12 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-21697] 報告
この人の発想は既に時代錯誤になってるんだよ。
早く隠居するのが自分の為だな:

「日本の未来を考える勉強会」ー貨幣と経済成長ー 
平成30年3月7日 講師: 中野剛志 - YouTube動画
https://www.youtube.com/watch?v=PIVG7XDGrH4

第2回「日本の未来を考える勉強会」ー貨幣と租税ー 
平成29年4月27日 講師:中野剛志 - YouTube 動画
https://www.youtube.com/watch?v=Zc9-Y5jiIO4



[18初期非表示理由]:担当:混乱したコメント多数により全部処理

2. 2018年12月05日 16:36:30 : nnpJUF0oAQ : Y42115Vg@18[3] 報告
無理無理
何をしたって日本の債務は減りっこない
方法はほとんど一つしかない
その方法がとられる日まで借金は膨れ続けるよ
3. 2018年12月05日 16:37:22 : 5DrWKdS2To : o9w2Y5DSTWs[50] 報告

家の借金を増やし続け「成長戦略」とかを論じる痴呆政治家たち・・・狂っているニッポン社会
でも、それで大儲けする連中が「成長」する、、、

日本も、かつては赤字国債はゼロでした、、、それで立派に経済活動を発展させてきた。
今の日本は、後は野となれ山となれ・・・・放射能も借金もみんな未来の子供たちに背負わせる・・・・アホたれニッポン人

国の借金問題を大争点にする政党はありません・・・票にならないからでしょうね(;´д`)
不甲斐ない私たち大人たち(;´д`)

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