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「冷戦1.0」時代と決定的に異なる「冷戦2.0」米中の構造的・長期的対立の中で重要性を増す「新防衛大綱」 
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投稿者 うまき 日時 2018 年 12 月 28 日 09:15:08: ufjzQf6660gRM gqSC3IKr
 

(回答先: 変わる防衛政策、日本は 「矛」を持つべきなのか 田原総一朗の政財界「ここだけの話」日本に厳しい条件を突きつける米トランプ 投稿者 うまき 日時 2018 年 12 月 28 日 08:50:24)

「冷戦1.0」時代と決定的に異なる「冷戦2.0」米中の構造的・長期的対立の中で重要性を増す「新防衛大綱」
2018.12.28(金) 樋口 譲次
「貿易戦争」、今後3か月は両国にとって重要な時期
「貿易戦争」、今後3か月は両国にとって重要な時期〔AFPBB News〕

ペンス演説の本気度を疑った中国
 マイク・ペンス米副大統領が2018年10月に行った中国との対決を宣言した演説(「対中対決宣言」)は、ドナルド・トランプ政権の公式見解であるにもかかわらず、中国は同演説の本気度を疑ったようである。

 ボブ・デヴィスとリングリン・ウェイが共同執筆した『米中の打算と誤算、貿易戦争の瀬戸際へ 』と題するウォールストリート・ジャーナル日本版の記事(2018年11月30日)は、米中貿易戦争に至った経緯を克明にフォローしている。

 その中で中国は、ペンス副大統領の対中対決宣言を、「中国の台頭を抑えようとする米国の包括的な戦略を示すものなのか、中国への圧力を強めるための交渉戦術なのかを議論した」と書いている。

 東西冷戦がそうであったように、冷戦がいつ始まったかは、後になってから分かるものだ。それが歴史である。

 英国のウィンストン・チャーチル首相が、米国ミズーリ州フルトンで「バルト海のステッテンからアドリア海のトリエステまで、ヨーロッパ大陸に鉄のカーテンが降ろされた」と演説したのは、1946年3月であった。

 しかし、世界の人々が東西冷戦の幕開けを実感したのは、チャーチルの指摘から遅れること約3年後、1949年のドイツの分離独立からであった。

 もうすでに、米国と中国との間には、はっきり見えないが、新たな冷戦の始まりが告げられているのかもしれない。

 ペンス副大統領は、11月13日に3度目となるアジア歴訪の最初の訪問国である日本に立ち寄り、安倍晋三総理、麻生太郎副総理兼財務相、日本政府高官らと首相官邸で会談した。

 11月27日のロイター(東京)の報道によると、麻生財務相は11月27日の閣議後の会見で、「ペンス副大統領は来日して同演説の内容について説明した」ことを明らかにした。

 その説明を踏まえての発言と見られるが、麻生財務相は、ペンス演説に見られる対中強硬論は「米国の中国に対する態度をトランプ大統領の思いつきと捉える人がいるが、違う」と言い切った。

 そして、「トランプ大統領だけでなく、米国の東部エスタブリッシュメントの意見と捉える必要がある」と指摘した。

 また、ペンス副大統領による対中対決宣言を重視する必要があると強調し、米中対立は安易に解消せず、長期化が必至との見解を示して警鐘を鳴らした。

 2018年11月17日および18日、パプアニューギニアで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議は、米中の対立で、同会議として初めて首脳宣言で合意できないまま閉幕した。

 11月30日から2日間、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)は12月1日午後(日本時間2日未明)、首脳宣言を採択して閉幕した。

 かろうじて決裂は免れたが、2008年秋の世界金融危機に対処する目的でG20首脳会議が発足して以来、合意文書で保護主義に対抗する姿勢を示せなかったのは初めてで、これも米中対立が原因である。

 その直後の、米中首脳会談の結果を踏まえ、米政府は、2019年1月から25%に引き上げるとしていた対中追加関税を猶予し、10%のまま据え置いた。

 ただし、技術移転や知的財産、サイバー窃盗なども含めた2国間の通商問題について中国と協議し、90日以内に合意できなければ25%へ引き上げると発表した。

 実は、この一時休戦のシナリオは、米側で当初から計画されていた模様であり、米中双方が、それぞれの国内事情を踏まえ、貿易戦争の激化による国内景気の悪化を避けることで折り合い、対立の先鋭化を一時的に先延ばしした格好である。

 「冷戦」懸念は後退したとの見方もあるようだが、果たしてそうであろうか。

 中国の国家(共産党)主導の経済モデルという根底の問題は一筋縄では解決できず、両国の覇権争いが和解に向かう期待はかけにくい。

 例えば、休戦直後の華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟最高財務責任者(CFO)の逮捕は、5Gネットワークを通じた「国家支援型スパイ」との疑いを持つ米国が、中国政府に国際貿易規範に反する行為をやめさせるための、きわめて象徴的なシグナルと見ることができよう。

 むしろ問題の核心は、米中両国の対立が構造的で、かつ広範な分野に及んでいることにある。

 実際、ペンス副大統領は「中国政府が、政治、経済、軍事的手段とプロパガンダを用いて、米国に対する影響力を高め、米国国内での利益を得るために政府全体にアプローチをかけている」と述べている。

 すなわち、米国は、中国が「(米国の)地政学的な優位性に異議を唱え、国際秩序を(中国)有利に変えようと」しており、そのため、米中は「大きな権力競争」の新たな時代に入ったと認識している。

 そのうえで、トランプ米大統領は、2017年12月に公表された「国家安全保障戦略」(NSS2017)で、米国が中国に対して新たな対外姿勢を取ることを明らかにした、とペンス副大統領は述べたのである。

 「中国に対する新たな対外姿勢」こそ、米国の中国に対する本気度を表すものであり、かつての東西対立を冷戦「1.0」とするなら、今次の米中対立は冷戦「2.0」と表すべき関係にあると言えよう。

米国の「中国に対する新たな対外姿勢」
 トランプ大統領は、ビジネスマンとして成功した取引(deal)の手法を、大統領としても多用していることもあり、「予測不能」な政治家と見られ、また、混乱を引き起こすトランプ大統領の交渉術は超大国の王道から外れているとして同盟国からも好まれていない。

 しかし、米国の「国家安全保障戦略」は、大統領の名で発出される米国で最上位に位置する包括的な安全保障政策文書であり、トランプ政権の行方を占ううえで、「予測可能」性を保証し、好嫌の感情を超えた最も確実かつ重要な指針である。

 実は、2015年2月に、バラク・オバマ政権下で最後に発出された「国家安全保障戦略」(NSS2015)までは、中国はあくまで「協力と注視」の対象とされ、米国の脅威とは見なされていなかった。

 しかし、トランプ政権下のNSS2017では、歴代政権の中国に対する見方を大きく転換したのである。

 そこで、NSS2017において、米国は何を目指しているのかを、改めて確認してみたい。

 NSS2017は、中国(とロシア)を力による「現状変更勢力」、すなわち「米国の価値や利益とは正反対の世界への転換を図る勢力」として名指しで非難し、米国に挑戦し、安全や繁栄を脅かそうとしている「ライバル強国」であると位置づけている。

 そして、中国はインド太平洋地域で米国に取って代わり、国家主導の経済モデルの範囲を拡大し、地域の秩序を好きなように再編成しようとしていると指摘している。

 そのうえで、「我々は新たな対立の時代に入っている」と述べ、米国は中国に対抗して世界各地の係争地域において、米軍の増強や近代化そして同盟国との連携などによってこうした脅威に立ち向かい、「このゲームで米国は勝利する」と宣言している。

 また、NSS2017は、安全保障の見地から経済についても述べ、「強い経済は、米国民を守り、米国の生活様式を支え、米国の影響力を維持する」として米国経済を活性化し、米国の国力と優位を回復する必要性を強調している。

 特に中国を睨んで、巨額で慢性的な貿易赤字は許容しないとし、自由で公正、互恵的な経済関係を追求するとしている。

 また、研究、技術および革新の分野で先頭に立たなければならないとして、米国は知的財産を盗用し自由な社会の技術を不当に利用する者から、自国の安全保障の基盤技術を守ると述べるなど、いわゆる経済安全保障の見地から、中国との貿易戦争を予見させる内容になっている。

 2018年7月に始まった米中貿易戦争は、関税措置での制裁と報復の応酬が激しく繰り返されるなか、出口戦略を見出せない状況が続いている。

 しかし、この問題は、中国が「将来的には地球規模での優位を確立し、米国に取って代わろうとしている」との米国の対中認識が示すように、国際社会の首座を巡る米中の覇権争い、すなわち地球規模での地政戦略的支配権争いが基底をなしている。

 米中相互に遠大な戦略の一部であるがゆえに、その構造的、長期的問題の解決が容易でないことだけは明白である。

 そして、貿易戦争は、トランプ大統領が言う「中国に対する新たな対外姿勢」の方針に沿って、通商的・経済的対立にとどまらず、政治、安全保障・軍事、情報、サイバー空間など広範な分野へと拡大する「長く、厳しい対立の時代」、すなわち冷戦「2.0」の始まりにすぎないと見るのが的を射ていよう。

冷戦「2.0」の誘因となった米中の構造的対立点
 そこで、東西対立の冷戦「1.0」と米中対立の冷戦「2.0」の2つの冷戦には幾つかの相違点があるので、冷戦「1.0」と比較しつつ、冷戦「2.0」の誘因となった米中の構造的対立点を明らかにし、その根深さと問題解決の迂遠さについて再確認してみたい。

イデオロギー・価値観:「自由、民主主義などの普遍的価値」対「社会主義および中華思想を背景とした人類運命共同体」

 冷戦「1.0」は、自由主義を標榜する米国を中心とした西側諸国と社会主義を標榜するソ連を中心とした東側諸国が世界を二分し、イデオロギー対立を先鋭化させた戦いであった。

 冷戦「2.0」では、米国を中心とした同盟国・友好国が、自由、民主主義、人権および法の支配という普遍的価値を強調しているのは、それを否定する中国との違いを際立たせ、中国に対する優位性を強調する狙いがある。

 それに対し、中国は、憲法第1条で「人民民主主義独裁の社会主義国家」と規定している通り、実態は別にして、社会主義を標榜している共産党一党独裁の国である。

 現在、世界の国数は195か国(日本が国家承認している国194か国と未承認の北朝鮮)であり、この中で、共産党が政権を担っている国は数か国(モルドバ、キプロス、サンマリノなど)が存在する。

 しかし、社会主義国家、すなわち憲法などで社会主義を国家理念・国家政策として掲げ、社会主義的諸政策を推進している国家は、ソ連崩壊後の現在では中国、北朝鮮、ベトナム、ラオス、キューバの5か国であり、国際社会においては2.5%に過ぎない<絶滅危機種>にまで落ち込んでいる。

 つまり、フランシス・フクヤマが自由民主主義の優位性と普遍性を提起した『歴史の終わり』は、上記の国際社会の現実が実証するところであり、大方の国は中国的政治理念を否定する側に立っている。

 そのためか中国は、冷戦「1.0」型のイデオロギーを前面に押し出した工作を、表立っては行っていないが、「統一戦線工作」の手法を使って巧妙かつ執拗に勢力・影響力の拡大を図っている。

 また、中国は、自由、民主主義などの普遍的価値の対立軸として、中華思想―不平等な上下関係の華夷秩序―を背景とした「人類運命共同体」という理念をグローバルなコンセンサスに変えようと主張している。

 世界各国あるいは諸民族が、各々の主体性などを主張して対等の立場を求めるとともに、国際社会が多極化して行く趨勢の中で、中華思想を隠す手段としての人類運命共同体という理念には、恐怖こそ覚えさえすれ、中国と運命を共にすることなど御免蒙りたいというのが世界各国の本音ではないだろうか。

経済:「資本主義市場経済」対「社会主義市場経済」

 冷戦「1.0」は、資本主義市場経済と社会主義計画経済との対立であった。

 1947年7月、米国が発表したヨーロッパ経済復興援助計画としてのマーシャル・プランを西側諸国は受け入れた。

 一方、これを拒否した東欧諸国は、ソ連を中心に、コメコン(COMECON、経済相互援助会議)を結成して対抗した。

 この結果、ヨーロッパ諸国の経済体制は大きく2分され、お互いに経済圏(ブロック)を作ったため、経済の依存関係は希薄であった。

 冷戦「2.0」では、経済の相互依存が深化した中での、資本主義市場経済と社会主義市場経済との対立になっている。

 米中両国は、双方にとって最大の貿易相手国である。米国の貿易総額に占める対中貿易総額の割合は年々高まっており、近年の米中経済関係における関心の一つは、米国の対中貿易赤字であり、2017年の米国の貿易赤字の46.3%を占めている。

 また、米国は第4位の対中直接投資国である一方、中国は米国債の海外引受分に占める割合が第1位であり、両国の経済依存関係の深さは疑う余地もない。

 米国の対中貿易赤字はひとまず差し置くとして、それでもなお、米中貿易戦争に発展した理由として米国が指摘しているのが、主に次の4点である。

@技術移転の強制
Aサイバー空間での知的財産の窃盗
B外国企業に対する規制の強化・乱用
C利益を度外視した(中国)国営企業に対する補助金の供与

 また、「一帯一路」構想と表裏一体をなすアジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設など、米国が主導した国際秩序に対する挑戦が顕著になっており、経済面における「ライバル強国」として警戒心を強めている。

 これらは、いずれも社会主義が許容する限度での市場経済、言い換えれば、共産党指導型の市場経済という矛盾したあり方に問題の本質がある。

 それこそが、米国からの非難の的となった中国の不公正な商・貿易慣行が貿易戦争へと悪化した真の理由である。

 この点に関しては、米国のみならず、日豪印、そしてEU諸国の共通認識となっており、中国との経済の相互依存の中で、特にインド太平洋地域においては、日米豪印4か国がパートナーシップを強化する地経学的対立という構造に発展している。

政治外交:「米国主導の国際秩序」対「中華的新秩序」

 冷戦「1.0」は、自由主義と社会主義との間の体制の優越競争であった。

 米国は、世界の共産主義化を標榜するソ連の勢力拡大を恐れ、それを防止するために、ソ連を中心とした共産圏諸国に対して政治、経済、軍事などあらゆる面で封じ込めるべきであるとした、「封じ込め政策」を外交政策の基本とした。

 冷戦「2.0」では、いずれの国も、中国との経済面での協調・関与関係を維持したいという側面と、中国の覇権的拡大の動きに対して安全保障上、警戒・ヘッジすべきだという側面の両面を持っている。

 このように、協調要因と対立要因との間で揺れ動く葛藤ないしはジレンマが共通の課題となっていることから、冷戦「1.0」と同じ「封じ込め政策」への誘惑は、注意深く排除されている。

 第2次大戦以降、米国は、多国間の安全保障システムや国際通貨システム、自由貿易システムなど、世界の秩序を維持し国際社会を円滑に機能するために不可欠な、いわゆる国際公共財(グローバル・コモンズ)を創造するコストを負担し、維持する役割を果たしてきた。

 いま中国は、「公正かつ合理的な国際政治経済新秩序」、すなわち<中華的新秩序>を構築することを外交政策の目標とし、米国主導で作られた既存の世界秩序に挑戦している。

 また、中国は、<中国の夢>としての「中華民族の偉大な復興」を国家目標に掲げているが、これに対して、トランプ米大統領は「偉大なアメリカの復活」で受けて立っており、「大国の興亡」としての覇権闘争リスクの長期化が懸念される。

 他方、トランプ大統領は「アメリカ第一主義」を掲げているが、あくまで国際主義を基調としている。

 一方、中国は東シナ海や南シナ海を「中国の海」に変え、排他的に独占しようとしている。

 また、「一帯一路」の沿線国で展開している「債務の罠」外交が示すように、帝国主義的あるいは植民地主義的行動が顕になっており、両国の外交的アプローチにおいては、国際主義と帝国主義・植民地主義との対立軸が表面化している。

安全保障・軍事:「力による平和」対「力による現状変更」

 冷戦「1.0」は、欧州が主戦場であり、西側の北大西洋条約機構(NATO)と東側のワルシャワ条約機構(WTO)による2大軍事同盟間の対立という基本構図を呈した。

 キューバ危機があったものの、米ソの戦略核戦力による「恐怖の均衡」が、世界大戦の発生を抑止する一方で、朝鮮戦争やベトナム戦争など米ソ(中)の代理戦争としての局地的戦争が発生した。

 冷戦「2.0」において、トランプ大統領は、「力による平和」(peace through strength)を標榜し、一方、中国は、東シナ海や南シナ海でみられるように「力による現状変更」勢力と見なされている。

 このため、インド太平洋地域を焦点とした中国の海洋侵出への備えが、今世紀最大の安全保障上の課題であるとの認識が広がっている。

 中国は、米中太平洋分割管理構想(G2論)のもと、対米「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」戦略によって米国の軍事的プレゼンスを西太平洋から排除して、同地域に中国の地域覇権を確立しようとしている。

 また、「真珠の首飾り(String of Pearls)」戦略でインド包囲網を形成し、海洋を重視しつつ、陸路、海路の両方向から経済圏・勢力圏をヨーロッパへ向けて伸長する「一帯一路」構想を強力に推進し、グローバルな覇権拡大を目指していると見られている。

 これに対して米国は、いわゆるエアーシ−バトル(ASB)構想と、これを裏づける「第3次相殺戦略(OS)」をもって、中国の軍事的野望を抑止する構えである。

 また、日米豪印によってコンセンサスが得られ、インド洋と太平洋の連結性を強めた「自由で開かれたインド太平洋戦略」によって、中国周辺海域(領域)を取り巻く広域安全保障ネットワークを強化しようとしている。

 一方、中距離核戦力(INF)全廃条約の締約国である米国は、条約の定めに従って、射程が500キロ(300マイル)から5500キロ(3400マイル)までの範囲の核弾頭および通常弾頭を搭載した地上発射型の弾道ミサイルと巡航ミサイルを廃棄した。

 さらに、オバマ大統領の「核兵器のない世界」の方針を受けて、各種トマホークのうち、核搭載海上発射型巡航ミサイル「トマホーク」を退役させた。

 中国は、INF全廃条約に縛られないため、平成30年版「防衛白書」によると、148基の中距離弾道ミサイル(IRBM)/準中距離弾道ミサイル(MRBM)を保有している。

 その結果、米中間の中距離核戦力には大きな格差が生じていることから、米国の日本などに対する核の地域抑止(「核の傘」)が無効化しているとの危機感が高まり、そのため、地域紛争発生の可能性が懸念されている。

 このように、日本の核抑止体制は<破れ傘>の状態であることから、わが国の弾道ミサイル防衛(MBD)能力の強化と米国の核による地域抑止の早急な回復は大きなテーマである。

 また、「自由で開かれたインド太平洋戦略」に基づく対中共同抑止戦略を具体化し、実効性ある戦略に育て上げることも喫緊の課題として突きつけられている。

社会・文化・言語などのソフト・パワー
「革新的創造力」対「孔子学院」

 冷戦「1.0」は、ブロック経済の影響などもあり、東西両陣営では、それぞれの文化圏、言語圏が形成された。

 その間、ソ連は、東欧衛星国や中央アジア諸国などに対して移民政策を採ったこともあり、ロシアの政治社会制度や文化、ロシア語などが東側陣営内で拡大した。

 冷戦「2.0」では、米国と中国のソフト・パワーが、国際社会でどのように受け入れられるかが、関心の的であり、対立点でもある。

 これまで国際秩序維持のための国際公共財の創造者・提供者であった米国に対抗して、中国が掲げる「中華的新秩序」によって何がもたらされるのかは、今日まで明らかになっていない。

 中国は、経済力と軍事力は紛れもない世界強国になっている。

 しかし、華夷秩序の中華思想、自由、民主主義などの普遍的価値に対する否定的な政治社会体制、新たな国際公共財のための具体的提案の乏しさなどの面から見て、今後、中国が、新グローバル・ガバナンスの創造者となって国際社会におけるリーダシップを発揮できるかどうかについては、極めて悲観的な見方が多い。

 他方、米国について、ヘンリー・キッシンジャーほか著『中国は21世紀の覇者となれるか?』(早川書房、2011年、84頁)には、以下の記述がある。

 米国は、史上初のユニバーサル国家になったのです。世界中あらゆる場所から、あらゆる肌の色、信条、宗教の人々を引きつけ、彼らの才能を解き放ち、ユニバーサルな夢を築き上げたのです。・・・確かに、私たちは経済を立て直さなければなりません。・・・(しかし)自由で開放的な社会に対する信頼を失ってはならない、・・・ということです。

 このように、米国は、自由で開放的な社会を作り、「アメリカン・ドリーム」への憧れで世界中から人々を引き寄せ、また、革新的・創造的可能性という膨大な資産を持つ国家としてイノベーションの最先端で世界をリードしている。

 一方、中国は、オリジナリティーに真の価値を見出さず、コピーに終始する後追いを続けている。

 これからの中国の課題は、社会や経済にイノベーションを起こし、ユニークな思想、独創的な新製品・新技術、新しいシステムを作り出す力を身につけなければならない。

 しかし、それを妨げている収奪的な政治制度、国有企業を中心とする産業構造、思想や表現の自由を認めない市民社会、土地の公有制などに対して、「創造的破壊」を促す動きは全く見当たらない。

 むしろ中国は、「習近平思想」によって社会統制を強化する方向に向かっている。

 中国が、根本的な政治改革を回避し、現行の政治社会制度が続くならば、中国には革新的・創造的可能性は芽生えず、いつまで経っても国際社会に影響を与えるイノベーションは起こらない。

 そして、経済の永続的な発展も、世界をけん引する魅力的な構想力を持つことも不可能に近いと言えるのではないだろうか。

 中国は、中華文化の象徴として「孔子学院」を世界中に輸出している。

 現在、世界500か所以上に開設されている「孔子学院」は、中国語教育を行うとともに、中華文化の宣伝と中国との友好関係の醸成を目的とした活動を行っている。

 その一方で、親中派(中国シンパ)を育成する「統一戦線工作」の一環としてのソフト・パワー戦略と見られ、その約40%が米国に集中し、学問の自由を阻害しているとして、ここ数年批判の声が高まっている。

 言語は文化の基本を形成するが、中国語の言語構造(漢字システム)は欧米諸国をはじめ、その他の国の人々にとっては極めて難解である。

 英語は、産業革命やIT革命をそれぞれ主導した英国と米国の数世紀に及ぶ覇権を通じて世界言語となったが、中国語が英語に取って代わるには幾つもの高いハードルが待ち構えている。

 英「エコノミスト」編集部による『2050年の世界』(文芸春秋、2012年)は、その第5章「言語と文化の未来」で、「英語の一極支配は続き、中国語は世界言語とはならない」と予測している。

 他方、文化の面においても、グローバル化の波に乗って、世界的に広がった米国の文化的影響力を排除できる魅力ある文化が中国に存在するのか、そもそも中華文化とは何か、という基本的問いかけに対して明快な答えが返ってくるかは疑問である。

 つまり、中国は、中国発の技術的革新、文化的影響力あるいは中国語などによって、世界的に膨大なソフト・パワーを提供する米国を凌駕するという目標の達成には、非常に険しい挑戦を強いられることは、間違いないところである。

日本のとるべき途は?
新防衛大綱が左右する冷戦「2.0」の行方
 以上、日米などの西側諸国と比較した中国の異質性と、中国が経済、外交、安全保障などあらゆる分野で戦略的攻勢、すなわち覇権的拡大に出ている実態を明らかにした。

 また、米国と中国の対立は、構造的であることから、冷戦「2.0」が長期化の様相を呈することを指摘した。

 その中で、日本がとるべき途は、まず日本の立ち位置を再確認し、中国の異質性と覇権的拡大の実態を深刻に認識して、米中の構造的・長期的対立に備えることである。

 日本は、自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値を理念として掲げている国(「国家安全保障戦略」)であり、それらを否定する中国とは対極に位置している。

 その立ち位置を明確にして、日本は、普遍的価値や戦略的利益を共有する米国との同盟関係を深化させるとともに、オーストラリア、インドなどの友好国やASEAN(東南アジア諸国連合)各国との協力関係を強化し、わが国の安全およびインド太平洋地域の平和と安定を実現する覚悟を持ち、揺るぎない決意を示さなければならない。

 経済問題は、複雑である。なぜなら、冷戦「2.0」は、冷戦「1.0」とは違って、経済の相互依存が深化した中での対立だからである。

 前述の通り、米国のみならず、日本もまた、中国との経済面での協調・関与関係を維持したいという側面と、中国の覇権的拡大の動きに対して安全保障上、警戒・ヘッジすべきという側面の両面をもち、協調要因と対立要因との間で揺れ動く葛藤ないしはジレンマが課題であるからで、「政冷経熱」と言われるゆえんである。

 中国経済は、すでに峠を越え、経済成長の減速と国内消費の落ち込み、生産年齢人口の減少と賃金の上昇(人口オーナス)、外国企業に対する支配・規制及び課税の強化、環境問題(汚染)への対応など、中国進出のデメリットが増大している。

 今後、冷戦「2.0」が強まれば、米中間の確執は、経済から、政治外交、そして安全保障・防衛へと問題の重点が移ることになろう。

 そうなると、日中関係も「政冷経熱」から「政冷経温」、「政凍経冷」へと事態悪化の傾向が強まるだろうから、それを想定したシミュレーションを行い、中国からの脱出・移転を含めた周到な準備が必要になろう。

 また、その間、例えば、「一帯一路」構想に参入する民間企業に対して港湾整備など軍事利用の恐れがある案件に関しては、しっかりと歯止めをかけるなど、経済も安全保障を考慮した対応を迫られることになる。

 外交では、長期的視点から日本の国益を追求するため、国際協調主義に基づく積極的平和主義の下、国際社会の平和と安定および繁栄の実現に日本が一層積極的な役割を果たし、日本にとって望ましい国際秩序や安全保障環境を実現することが課題である。

 なかでも重要なのが、エドワード・ルトワックが『戦争にチャンスを与えよ』(文春新書、2017年)で強調している「同盟がすべてを制す」を強力に推進することである。

 ルトワックは、ある国(中国)が戦略的なアクションを起こせば、近隣国家は敵対的であれ、友好的、中立的であれ、必ず何らかのリアクションを起こし、他者の介入が意図せざる結果を生む。

 この「戦略のパラドクシカル・ロジック」の中で、すべてを軍事的方法で解決するのは不可能であり、大戦略レベルにおいては、「同盟」によって敵対的な他者を減らし、消滅させることが、軍事面での活動以上に決定的な要因となる、と説いている。

 日米同盟は、国家安全保障の基軸である。

 日本は、普遍的価値や戦略的利益を共有する米国との同盟を一段と深化させ、また、インド太平洋地域で重要な役割を果たすオーストラリア、インドをはじめ、ASEANや中国の「一帯一路」構想の沿線国、さらには、本地域で戦略的利害を共有する英国やフランスなどのNATO/EU加盟国などへウイングを広げる必要がある。

 そして、インド太平洋地域を中心に、グローバルに広がる同盟・友好国のネットワークを構築することが重要である。

 冷戦「2.0」の最大のテーマは、安全保障・防衛であり、冷戦を熱戦化させない抑止が最大の課題である。

 12月18日に閣議決定された新防衛大綱( 「平成31年度以降に係る防衛計画の大綱」)で述べている通り、抑止を主眼とした日本の防衛目標を達成する手段は次の3点に集約される。

@我が国自身の防衛体制
A日米同盟の強化
B安全保障協力

 まず、わが国自身が自主防衛力を強化することが第一である。しかしながら、中国の強大な軍事的脅威に直面するわが国の平和と安全は、核ミサイルの脅威までを考慮に入れた場合、わが国一国では確保できない。

 そのため、日米同盟の強化、特に米国の核による地域抑止の回復、域内外のパートナーとの信頼・協力関係の強化、実際的な安全保障協力の推進により、アジア太平洋地域の安全保障環境を改善し、わが国に対する直接的な脅威の発生を予防し、削減しなければならない。

 そこで、安倍晋三総理のイニシアティブで構想されたのが、「自由で開かれたインド太平洋戦略」である。

 本戦略の目的は、「自由で開かれたインド太平洋を介してアジアとアフリカの「連結性」を向上させ、地域全体の安定と繁栄を促進する」とされ、米、豪、印との間でコンセンサスが得られている。

 これまでの「自由で開かれたインド太平洋戦略」に関する議論では、日米豪印を4本柱として、基本的価値や戦略的目標・利害を共有する努めて多くの国・地域を有機的に連結した多国間主義による安全保障ネットワークを構築することが考えられてきた。

 オーストラリアの独立系シンクタンク・ローウィー研究所が発表した「アジア国力指数2018」(Lowy Institute Asia Power Index, 2018)によると、2030年頃の日米豪印(総合)と中国(一国)の国力指数を比較すると、「2.7対1」となる。

 国力の面からも「自由で開かれたインド太平洋戦略」の有効性あるいは抑止可能性が裏づけられている。

 さらに、前にも述べたが、日米などと基本的価値観を共有し、インド太平洋地域に強い戦略的な利害関係をもつ英国とフランスを本構想に加え、「4本柱」を、さらに英仏が提供する「2本の支柱」によって補強できれば、安全保障のアーキテクチャーが一段と強化される。

 そして、日米印豪と英仏によって構築される「4+2」の安全保障協力体制を基盤とし、台湾やフィリピン、マレーシア、ベトナム、シンガポールなどの力を結集すれば、中国の海洋侵出の野望を抑え込む、国際的な多国間枠組みを一段と強化・発展させることができる。

 つまり「4+2」構想は、インド太平洋地域における対中安全保障戦略に強靭性と優越性を与え、その目的達成に大きく寄与するのは間違いないのである。

 筆者が所属する日本安全保障戦略研究所は、すでに『中国の海洋侵出を抑え込む―日本の対中防衛戦略』(国書刊行会、2017年)を上梓し世に問うている。

 今後、「自由で開かれたインド太平洋戦略」が、新大綱によって防衛・軍事戦略の立場から裏づけされ、肉づけされ、強化されることが大いに期待される。

 そこではまず、領域警備の態勢強化が喫緊の課題である。

 とういうのも、ロシアのクリミア半島併合に見られるように、サイバー攻撃やプロパガンダ、特殊作戦などを巧妙に組み合わせた「ハイブリッド戦」によって、軍事機能や国家機能が混乱・低下した隙を衝いて、戦う前に、領土を掠め取られてしまう恐れがあるからだ。

 中国が尖閣諸島を焦点として東シナ海で仕かけている「グレーゾーンの戦い」は、まさに「ハイブリッド戦」に類似した事態である。

 その延長線上で、中国は、対日侵攻シナリオをエスカレートさせる恐れが十分にあり、早急に警備態勢を強化しなければならない。

 そのうえで、中国の本格的な侵攻に備えるため、ゲーム・チェンジャーとして、宇宙・サイバー・電磁波領域でわが国の優位性を追求することが重要である。

 同時に、領土保全能力と機動・展開能力、海空領域における対処能力、総合ミサイル防衛(MD)能力、スタンド・オフ防衛能力など従来の領域における能力強化を図りつつ、それらを含めた全領域を横断的に連携させるシステム化・ネットワーク化に予算を振り向け、破壊的イノベーションによって大胆な方向転換を図ることが切に望まれる。

 その取り組み如何が、冷戦「2.0」の行方を左右することになると言っても過言ではない。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55051  

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