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40代で「老害になる人」と「必要とされ続ける人」の決定的な違い/ダイヤモンドオンライン
笹井恵里子
https://www.msn.com/ja-jp/money/other/40%E4%BB%A3%E3%81%A7-%E8%80%81%E5%AE%B3%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8B%E4%BA%BA-%E3%81%A8-%E5%BF%85%E8%A6%81%E3%81%A8%E3%81%95%E3%82%8C%E7%B6%9A%E3%81%91%E3%82%8B%E4%BA%BA-%E3%81%AE%E6%B1%BA%E5%AE%9A%E7%9A%84%E3%81%AA%E9%81%95%E3%81%84/ar-AA1M1j8S?ocid=msedgdhp&pc=U531&cvid=68bde53a0eb74579a7a9be7cfc36eca6&ei=29
陸上スプリント種目の世界大会で日本人初のメダル獲得者の為末大さんは、3大会連続でオリンピックに出場し、男子400mハードルの日本記録保持者でもある。陸上競技では「10年で一定のピークに到達する」というが、自分のスキルが伸び悩んだ時、どうすればいいのか。ノンフィクション作家の笹井恵里子さんが聞いた。(ノンフィクション作家・ジャーナリスト 笹井恵里子)
陸上競技では10年でピークに
研究者も40代でピークを迎える
仕事で経験を積み、さまざまな結果を残してきた。けれども、ベテランになって若い時の「結果」を超えられない――。そのように悩んでいる人もいるかもしれません。
陸上競技では「10年で一定のピークに到達する」というロジックがあります。自己ベストは、13歳から始めると23歳がピークということです。長くても、競技を始めて15年くらいでピークがくる。
研究者の世界でも、例えばノーベル賞は20〜30年前の研究成果が評価され、60歳以降に受賞することが多いといわれます。つまり研究者としては30代、40代でピークを迎えているわけですね。ピークを過ぎても
「消化試合」ではない
ピークを過ぎた時、二つの道があると私は考えます。
ひとつは、それでも「スキルの道」を徹底的に突き進む形です。アスリートや芸能人、俳優の方にはよくみられますが、“技を極める”ということですね。この場合、評価方法も非常にシンプルで、売れるか売れないかです。
もうひとつは「複合的な技の道」。例えば経営者の方は、何かのスキルが突き抜けているよりも、判断力やマネジメント能力、人柄などさまざまな要素がからみあい、複合的な技で勝負できますよね。
スポーツにも、この道があります。もちろん選手は個人の能力が評価されるスキルの道。しかも単独のスキルほどピーク年齢が若いですから、一個の技だけに取り組む100m走のような世界は、年をとると非常に厳しい。
一方でチームで取り組んだり、駅伝チームの監督のような戦略的な業務になるほど複雑性が増し、年を重ねることが不利でなくなります。過去の経験が活きたり、幅広い年代とのコミュニケーションを必要としたりするなど、監督やコーチは「複合的な技の道」といえるでしょう。
研究者もピークをすぎたら「消化試合ですか」と言ったらそんなことはありません。多くの研究者は「次を育てる」「役割を変える」という言い方をして、後進につなげていくのです。
ですから、たとえビジネスの世界でピークを過ぎても、仕事以外の地域コミュニティーの活性化など、自分を活かせる場を見つけられればいいと思うんです。
「後進を育てる」「仕事以外での居場所を見つける」というと聞こえがいいが、実際に自分ごとに置き換えると、組織内での居場所が脇に追いやられていくようで悲しい。
アスリート引退後のセカンドキャリアにも似ているのですが、一番自分を苦しめるのは「自分が持っている物差し」だと思うんです。
新しい物差しを
自分の中に構築していくこと
これがかっこいい、これが素敵なことという軸がはっきりしている人ほど、その物差しからずれ始めると苦しみが生じてしまう。別の素晴らしさを自分の中に構築していくことが大切ですよね。
例えば私は、小学生に体育の授業を行うことがライフワークなのですが、当然今の小学生は私の現役時代なんて知りません。以前はまだお父さん、お母さんがご存じだったのですが、最近は親御さん世代にも認知されていない。
「オリンピアン(オリンピックにおける日本代表選手)が来るぞ!」から、ただの「ハードルおじさんが来る」になっていくわけです(笑)。でも自分がそれを受け入れ、違う生きがいを感じていけばいい。
体育の授業にフォーカスするというのは「スポーツが好きじゃない子にも教える」こと。そこに力を注ぐアスリートってあまりいないんです。だからこれもひとつの新しい経験ですし、少しずつ次世代の選手につないでいけたらと思います。
またネットによって「ニッチ」(小さいマーケット)がたくさん生まれました。かつてのようなテレビに出ている人が国民的スターというわけでもなく、息子がすごいと思うYouTuberを私は知らないですし、私が見ているものも息子にはわからない。世代や趣味嗜好(しこう)によって「これがいい」というものが異なり、多様になりました。
つまりビジネスをやる以上、他者評価は欠かせず、お客さんを喜ばせなければなりませんが、自分が若い頃に素晴らしいと感じていた以外のマーケットもあるということです。
人生終盤にかけて
分かれる2つの道
為末さんは、ビジネスでピークを過ぎた後だけでなく、人生終盤にかけても二つの道があると考えている。
人生終盤は「何かを獲得して何者かになっていくか」「自我を無くしていくか」の二つの道があると思うんです。自己啓発の書籍も、だいたいこの二つのパターンに分かれるのではないでしょうか。どちらを選ぶかは個々の好み。
私は自我を消していき、削ぎ落としていって空っぽになっていくというか、実は中身は何もありませんでしたというほうが好きで、そういう風になりたいなと思っています。
例えば自分が軽んじられた時に腹が立つのは、自分があるから。若い頃は軽んじられると嫌だから、“重たい自分”と思われたくて頑張るというところが少なからずありました。それもひとつの道です。
でも、年を取ると周囲の自分に対する扱いも、自分自身の置かれた環境に対する捉え方も難しくなっていく。その時に自我が消えていけば、何があっても「いいですよ」と穏やかに柔軟な対応できるし、大げさかもしれないですが何者にもなれる。
自我を捨てた先にも
成長や成熟がある
大半の人は前者の「何者かになる」ほうが気持ちが落ち着きやすいのかもしれない。私もそうだ。でも年を重ねるごとに何かを追求して手に入れる生き方に苦しさを感じるなら、別の生き方もあると思えば、気持ちがラクになる。
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会社組織ではビジョンやミッションがあり、そこでリーダーシップを発揮する人は「何かを獲得して何者かになっていく」というパワーが強いと思います。だから「まあまあ、いいじゃないか」という自我を無くしていく姿勢は「成功を諦めた人生」「降りた人生」のように感じるかもしれません。
でも、自我を捨てた先にも成長や成熟があって、企業に、また社会に貢献していくことができるんじゃないかとも思います。
「ハードシングス(Hard Things)」という「明快な解決策が存在しない困難」を示す言葉があります。私はハードシングスには2種類あると考えていて、ひとつは何か具体的な大変なことがあり、それを頑張って乗り越えた時に得られる自信です。こういった人は「やればできる」という強い信念をもち、人生を進んでいく。先の話でいえば、何者かになる方向でしょう。
「何かを獲得して何者かになる」道は
老害になるリスクも
そしてもうひとつは、具体的な大変なことはないけれど、頑張っても頑張っても、誰にも見向きもされない不遇な困難です。自分は何かになりたかったのになれていない、誰も自分のことを気にしていなくてまるで機械のように淡々と仕事をする日々――けれどもこのハードシングスを経験した人は自我が解けて柔らかくなり、中は空っぽなのに深みがある。
だから人の話をきちんと傾聴できたり、トラブルや問題解決能力が高かったりするかもしれません。組織の中で「あの人がいると何だかチームがうまくいく」「会議室でその人がただ頷いているだけでみんなの心が落ち着いていく」というような、数字には表れにくい貢献をしていくでしょう。
一方で、「何者かになる」ということは、「自分は正しい」という強い信念が必要になるので、能力が高ければいいですけれど、そうでない場合は「もしかして、自分はいない方がいいんじゃないか」という気づきに至らず、老害になって周囲の人の力を奪ってしまう可能性がある。
何者かになれなくても
あらゆるものを受け入れていく道も悪くない
アスリートの世界にいた為末さんが、「自我を無くしていく道」を選ぶのは意外だ。
私は、自分がすごく弱いんじゃないかと思う時があります。本来は弱くて繊細な文学少年が、うっかり足が速かったばかりに「体育会の世界」に紛れ込んでしまったみたいな(笑)。表面上はマッチョでも、内面はそうじゃないから、逆に自分の弱さを見ることが多かったかもしれません。だから強いものより弱いほうにシンパシーを感じますね。
個人的な痛みや苦しみを味わっていくほど、弱さへの共感があり、人の気持ちがわかります。ピークを過ぎても、何者かになれなくても、中身が空っぽになってあらゆるものを受け入れていく道もまた悪くないと思いますね。
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